袋田 森双

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袋田 森双

自分の為じゃなく人の為に生きるのだよ たいだ もりすごと申します 私のみさくんがお気に召したかね?

嗚呼、撫子よ

嗚呼、愛しき撫子よ 何故お前はそうなのだ いつも無下に扱っては 私の気持ちを振り回す 私の手綱を掴むのは それ程に容易ではないはずなのに 嗚呼、恋叶わぬ撫子よ 何時だってお前はそうだった 嗤うお前のその瞳に 私は常に映らない 嗚呼、撫子よ ただ君に泣く

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嗚呼、撫子よ

生為ノ最適解

人とは、何らかの許しが無ければ生きていけないものであると、常々、私は考えている。例えば、猫や犬。奴らは昨今、急増の道を絶たずに進んでいるが、それは、愛おしい、愛くるしいが故に生きていると言える。ただ、そうなると害虫の類。百足や蜚蠊何かは、何が為に生きているのか。それは、全く持って人と変わらない。醜く、汚らわしく、嫌悪ばかりされている、そんな奴らが生ける理由は、他の者から嫌われる為なのであると、私は思う。人間は、自分が相手よりも優れていないと、自分がどうしても許せなくなる生き物である。かと言って、その気持ちを表立たせることは決してない。言うなれば虫よりも醜い生物なのだ。そんな風に生きていられれば、どれほど楽なのかは、今、これを読んでいる貴方が一葉にお分かりであろう。 人は、人に責任を押し付けてしか生きられないのだから、一人で抱え込む事なんてしなくていいと、私は思う。今が苦しいのであれば、先ずは、他人に自分を委ねてみては如何かね。

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生為ノ最適解

本懐

私が、私でなければ 貴方を、傷つけずに済んだ 私が、私でなければ 貴方は、私を愛していた 私が、私でなければ 貴方に、そんな言葉を使わせなかった 私が、私でなければ 貴方が、貴方を嫌いにならなかった 私が、私でなければ 貴方だって、幸せになれた 私が、私でなければ 貴方まで、失う事はなかった 私が、私でなければ 貴方にも、愛してもらえた 私が、私でなければ 貴方を、愛する事は無かった 私が、私でなければ 貴方を、本気では守れなかった 私が、私でなければ 貴方を、こんなにも想う事はなかった 私が私でなければ

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本懐

逃避郷

序章 「放浪」 それは未だ、夏の暑さが残るかたわれ時の事である。 浅見 蒼太君は高校生であり、ただ、それ以外のことは何も覚えておらず、自分が何の為にその都に来たのかは分かっていない。そこで、一体どう言った出会いがあるのかも。 彼が放浪し、彷徨い、行き着いたその都の名は“逃避郷”(とうひこう)と言う。欧州で用いられた建築技術で、白い外壁の家々に夕日の沈みかけている海の反射光が橙色に煌々輝く静かな都市である。そこでは、生きるという行為に嫌気がさしたり、理想や目標が見当たらない者達が逃げてもいい場所とされている“無人の都”なのだ。 浅見君はきっと、何かから逃げてきたり、諦めたりしたのでは無い。それだけは直感的に彼も分かっている。だから、この都に行き着いてしまった理由を探すべく、彼は逃避者達に語りかける。 「何故、貴方はこの都へ……?」 一章 「勇気ある豚」 何処からか1匹の豚が都へやって来た。 片方欠けた耳には番号札、泥に塗れたその後ろ足には焼印が、 きっと農場から逃げて来た家畜なのだろう。 「何故、貴方はこの都へ?」 浅見君は質問した。 「私は革命を起こすために、この土地へ来た」 豚はそう言った。 「私たちの様な食物連鎖の下層に居る者には生きる権利がない。どう生まれたとて虐げられ、躾られ惨めに生きていくことを強要される。私の子供も、私と同じように修羅の道に進むのなら、私は、革命の為にこの命を賭す。」 豚の言葉には確かに、しっかりとした意思があった。だが、分からいでは無い。浅見君も、同じ立場であれば首を縦に振ること以外何もしないだろう。しないはずだ。ただ、それは彼が家畜であった場合の話である。彼は、食物連鎖の頂点。“人間”である。彼が記憶喪失で無いなら優しい言葉をかけたやも知れない。 否、「豚野郎め。」と罵声を浴びせたやも知れない。 今の浅見君には断定出来る程強い言葉を持ち合わせてはいなかった。 同情。ただ、それだけが心の中にあった。 「何故、この場所へ一人で逃げてきたので?」 浅見君は、続けて尋ねた。 「逃げてきたのではないわ。」 彼女は、疲弊している腰を下げ言った。 「私には夢がある。人類と戦い、勝利するのは難しいかもしれないが、決して諦める事は無い。」 彼女の眼には曇り一つ無い、それは覚悟の眼差しであった。 浅見君は、ゆっくりと口を開いた。 「…どうするつもりかね。」 彼女は言った。 「私たちが立ち向かっても人間達には歯が立たないわ。だから、奴らを困らせてしまおうと思うの。」 浅見君は、はて?と口にしたつもりは無いが、彼女は浅見君の顔を見て、訳を理解していない事を理解した。 「私たちが立ち向かうには規模も大きすぎるの。さすがに無謀だわ。だから、私の国に居る仲間達をここに連れてくるの。」 彼女は、静かな怒りを常に見せていた。 「一国から家畜が消えてしまえば、人間達は飢餓に陥るわ。それが私の戦い方よ。」 彼女はどこか誇らしげで、話に夢中になり興奮したのか、鼻からはふごふごと音が鳴っていた。 浅見君は、彼女がどこの国で生まれ、どんな環境で育ったかなどは知る由もなかったが、彼は心配になって聞いてみた。 「…そうしたら、その国の無実の子供たちや病気で苦しむ人達はどうなるのかね。」 そこで初めて、彼女の顔がくぐもった。 「つまりは、君がしようとしている事は、君が忌み嫌う人間がする“殺し”をするつもりという事で間違いはないね。」 彼女は、問い詰められて何も言えていない。 「君が起こそうとする革命を、私は止めはしないが、その崇高な行動に伴って現れる不幸を、君は黙って見ていられるのかい。」 彼女は言う。 「…覚悟の上よ。」 浅見君は、冷静である。 「誰しもが君たちの事を虐げているとは、私は到底思えない。何故なら、私は君たちに感謝と尊敬の念を常に持ってきたからだ。食事や生活に君たちは絶対に欠かせない、大切な存在なのだよ。」 それは、嘘偽り無い、彼の本心そのものであった。すると、彼の脳内では映像が流れた。それは、ボロの様な小屋で家族と思われる人達と貧相な飯を食べている光景だった。きっと過去の記憶なのだろう。浅見君は鈍痛を手で抑えるように頭を抱え、続けて言った。 「この世で君達が居ないなんてありえないのだよ。それにはすぐ気づく筈だ。何故なら、君達は多くの人に愛されているのだから。」 彼女はハッと顔を強ばらせた。 「気持ちだけではきっと伝わらないだろう。だから、ここは敢えて言葉を使わせてもらおう。」 彼の言葉で、既に、彼女の目尻には涙が溜まっていたが、彼は休むことなく続けた。 「いつもありがとう。君たちのお陰で私たちは生きれているよ。 ありがとう。」 彼女はぶわっと泣きじゃくっていた。今まで掛けられたことは無かった、それはごく普通の当たり前の言葉。 “感謝”である。 話し終えた頃には、浅見君の頭痛も無くなっていた。 それから数日、ただ長く続く夕日に照らされているだけの彼女を見た浅見君は、彼女に何をしてやれるだろうと、深く考え込んでいた。 そして、彼女は浅見君に声をかけた。 「貴方の言う通りだわ。私達の運命は、きっと何者にも変えられない、強固なるものだものね。故郷へ戻るわ。私の命で誰かが救われるなら。」 彼女は帰郷への決勝を進めていたのだった。 浅見君は考えた結果、こんな事を聞いた。 「君、名前は?」 彼女は首を傾げながら 「そんなものはないわ。」 と言う。 浅見君は言った。 「なら、私が付けてあげよう。」 浅見君は、腕を組みながら、拳を顎に当て左上の方を見る。 「…美しく守り続けると書いて美守(びしゅ)と言うのはどうかね。」 そうすると彼女は、否、美守は嬉しそうに笑顔になり 「素敵な贈り物をありがとう。貴方の事、絶対に忘れはしないわ。」 と、蹄をかっかと鳴らし、あの日来た道をまた戻っていく。 「さようなら。ありがとう。さようなら。」そう言うと美守の背中は段々と消えていった。それはまるで、大いなる海の向こうで、日が沈んでいくように。

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逃避郷

快幸論

幸せの定義とは何かね。 美味なる物、食した時か。 否。 吾が蒲団の中で眠りにつく時か。 否。 其れは、人が、死せる時に死す、瞬間に訪れる。 人には、選ばざるを得ぬ権利がある。 死には、数百を有無に超える種類がある。 これ程までに、幸せな事は他に無いだろう。 何故なら、私達に残された時間には、 自分達に相応しいものを考える為の余命があるのだから。

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快幸論