小野。

6 件の小説
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小野。

08🫡頑張ります💪

哀情

世紀の大恋愛をしました。 これまでは、一ヶ月すら続かなかった私が、 あなたとは、半年も一緒にいたんです。 すごいでしょ? そして今日がその半年の記念日。 けれど、 大好きだったあなたは、たった一夜のうちに、 私の世界から、静かに姿を消しました。 本当に、大好きだったの。 来月にはお泊まりの約束もしていたのに、 昨日の夜まで、笑い合っていたのに。 どうして、すべてが閉ざされてしまったの? インスタも、LINEも、あなたへと続く道が消えている。 昨日、「好きだよ」って言ってくれたのに。 私、なにか間違えたのかな。 同性だったから? それとも、遠距離だったから? わからないまま、胸の奥が静かに軋む。 心配で、寂しくて、泣きたくないのに、涙が滲む。 それでも私は、夜の底にしがみついている。 本当に、あなたが好きだった。 今でも、どうしても、諦められない。 あなたの写真どうしても消せそうにないや ねえ、明日になったら—— 奇跡みたいに、あなたから返信が来る気がしてしまうんだ。

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絶望

朝、目を覚ますと、髪が網のように絡まり合っている。 指を通そうとすればするほど、 ほどけるどころか結び目は固くなる。 外に出れば、風を切って自転車を漕ぐたびに、 小さな虫たちが顔に突撃してくる。 あれは偶然ではないのかもしれない。 世界が、わざわざ私を選んで、 小さな不快を投げつけている気がする。 ひと息つこうと立ち寄った店では、 いつも買っていた大好きなお菓子が棚から消えている。 「製造終了のお知らせ」という短い貼り紙は、 小さな訃報だ こうして一日が始まる。 髪は絡まり、虫はぶつかり、お菓子は消え、 心はじわじわ磨り減っていく。 世の中、小さな絶望で満ちている。 それでも私は生きている。 それが唯一の希望なのかもしれない。

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親友

あれほど仲が良かったのに。 私とあなたは小学校から同じ時を過ごしてきた。 毎日、同じ道を歩いて、同じ砂を踏んで、同じ夕焼けを見た。 同じ先生に怒られて、同じように泣いて、同じように笑った。 高校に入ったら、離れた。私には夢があったから。 それでも、私とあなたは遊んだ。やたらと遊んだ。 夏休みなんて、ほとんど毎日、朝から晩まで。 私たちはただの親友を越えた何かになっていた。 喧嘩もした。互いに拒絶した。 それでも、また近づいた。 気まぐれでくっついたり離れたりする鉄くずと磁石みたいに。 楽しい夢は、必ず終わる。 私は高校をやめた。あなたもやめた。 バイトを始めて、金を稼いだ。 その金で遠くへ行って、見よう見まねで化粧して、髪を染めた。 私たちは、大人になりたくて仕方なかった。 やがて、あなたはバイトに行かなくなった。連絡はない。 遊びの誘いには返事をするくせに、仕事の話になると無言。 そして、金を借りるようになった。 最初は千円。次に三千円。 やがて三万円。 金額が膨れるたび、あなたのまわりの人間が減っていった。 けどあなたは気づかなかった。 可哀想だと思った。本気で救ってあげたいと思った。 でも、あなたは聞いてくれなかった。 金は人の価値観を腐らせる。 恋愛は人の思考をねじ曲げる。 ごめんね。 私は、ここであなたを切り捨てる。 私があなたを嫌いになってしまう前に。 あなたが楽しい思い出で終わるように。 To the friend I once loved.

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蜻蛉

彼はふらりと現れた。 私の目の前で、羽をバチバチ鳴らしながら。鬱陶しい、と思った。 けれど、手を伸ばして追い払う勇気はない。 触れたら壊れてしまいそうで、それ以上に、触れたくなかった。 細く、赤い体。 昼間の光を受けて、かすかに光る。 大きな目玉で部屋を見回し、見境もなく窓に突撃する。 あぁ、そこは閉まっているのに。何度も、何度も。 やがて羽音は遠のき、静寂が訪れた。 部屋が急に広くなったようで、胸の奥がざわつく。 耳を澄ませても壁時計の音だけがやけに大きく響くだけだ。 私は椅子から立ち上がり、部屋の隅をのぞいた。 カーテンの陰。ずっと掃除もしていなかった。 あなたは、クモの巣に絡め取られていた。 羽を震わせてもがき、そのたび糸はきしみ、さらに絡まる。 やがて、動かなくなる。 細い体はまだ赤く、美しかった。 私はただ見ていた。 助けようとは思わなかった。 残されたのは、張り詰めた糸と、乾き始めた赤い骸だけ。

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恍惚の人

あなたは恍惚の人。 あなたが好きだった。 眠る時も食事をする時も私はあなたを思う。 息をする間を惜しんで私はあなたを思う。 病に伏しても、だれかに罵られても、私はあなたを思う。 あなたがほかの女を腕に抱く時も、 知らない女と笑う時も、 ずっとずっとずっと。 この愛情は最早狂気。 異常なのは分かっている。 気味悪がられるのも。 それでもやめられない執着。 私は私が怖い。 愛情を超えた感情を抱いてしまう醜く歪んだ私が。 私自身が。 それでも私はあなたを思う。 この心臓を抉ってあなたの掌に置きたい。 この鼓動を、あなたに聴かせたい。 そしたらあなたはどうするのですか。 他の女を抱くように優しく抱きしめますか。 それとも足で踏み躙りますか。 いや踏み潰されてもいい。 あなたの手で壊されるのならば私に後悔はない。 操れぬ感情に身を委ねて。 私は思うままにあなただけを想い続ける。

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明け方、其故、愛

あなたを見た瞬間に脳の中で何かが切れた。 今日もいつもと変わらない日々。 毎日働いて、たまの休みに家事をして。 すぐに過ぎ去る週末とすぐに訪れる月曜の憂鬱。 この暗闇に消えてしまいたい、とまで思った。 夜になれば、機械の光を浴びて、意識をゆっくり腐らせる。 だからこそ衝撃だった。 濃い化粧に派手な刺青。 剃られた眉とパーマのロン毛。 美しくて美しくてたまらなかった。 気が付けば貴方の軌跡を必死に遡っていた。 ひとつ残らず。全部。 時が過ぎるのさえ忘れて。 ああ、明け方だ。 今日も私は仕事に出向く。

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