よよ
64 件の小説よよ
静かで心に灯る物語を。 中学三年生にございます。 フリーイラストは、@matata-tatabi様の描かれたものを使わさせていただいているときがあります。 受検が終了いたしました。
「よよ」より
お久しぶりのよよです。 受検が今日にて終わりました。 皆様に応援をいただき、最善を尽くしてまいりました。 よよでの活動を永久休止すると言いましたので、これにて終了させていただきます。 そして皆様にお詫びしたいことがございます。 よよ以外にもアカウントを作っており、存在を黙っていたため交流させていただいた方を騙すような形になってしまい、誠に申し訳ございません。実は一時の迷いでアカウントを作ったまま、再ログインのパスワードを忘れてしまい、もう一度入ることができなくなって次第です。「よよ」としての話ではなく、ただ物書きとして書きたかったという自分勝手な理由で、皆様を振り回してしまったことを心よりお詫びします。 アカウント名 「かさね」 「よはなば」 区切りをつけまして、高校生では「Us」というアカウントで活動していきたいと思います。 では中学生最後の私から、「よよ」として。 舟は此処に在らず。 友は此処に在らず。 知も優もすべて此処に在らず。 涙は此処に在らず。 親は此処に在らず。 海は此処に満ちる。 生は此処に満ちる。 主は此処に在り。
こんこん、泣いていたのはだぁれ。
「分かってるよ」は嫌いだった。 分かってない、のサインだから。 ただ、私を宥めるための言葉だと思っていた。 あとに続く見当違いの「応え」の始まりだった。 何度、貴方に「分かってないくせに」と言ったでしょうか。 「分かってないくせに言うなよ」と嘆いたのでしょうか。 「分かってくれない」ことにどれほど傷ついたでしょう。 どこかできっと、貴方がわかってくれると、 私は醜く押し付けていたのです。 貴方の心はそれに気づいて、 でも分からないからと言葉だけでも受け止めようと、 私を受け止めようと慣れない手つきで抱きしめてくれていた。 貴方が「分からない」ことを「分かっていない」のは私だった。 分かってくれないことを諦めきれないのは私だったの。 伝えたくて、私が思いきり投げたボール。 受け止めようと前に出された貴方の腕と少し丸まった指先。 きっと、そのボールの勢いが強かったのだ。 貴方は受け止めようと構えすぎたのだ。 だから、貴方は突き指をして。 「大丈夫だよ」と私から離れていく。 理解してもらえるように最大限の努力をしたのか。 理解してもらう努力はしたのに、アイツは理解しなかった、と。 私のエゴを押し付けていないか。 ほんとうに貴方は受け止めようとしていたのか、を疑い、 受け止めなかった貴方を悪人として私の中で苦しめていないか。 押し付けてばっかりだったんだ。 いい母親でいること。 いい父親でいること。 理解のある友人でいること。 結局、比較した「いい人」を探し求めていた。 ごめんなさい。 今更、誤ったって私が突いた傷口は膿んだままでしょう。 ただ貴方の優しさを。 私は私のまま解釈してしまっていたの。
東に泣く朝よ。
静寂が冬の襲来を告げる。 少し前まで、蝉が鳴いていたそこには、 もう茂る葉など、一枚もない。 夕日が指揮の最後を振り、 敬虔な蝉は惜しむことなく愛を囁き終えた。 コウモリは客席よりそれを知り、夜の戸を叩く。 もう冬は此処にいた。 夜もその腕を広げ、 終わりかけの線香花火のような朝を、 愛おしそうに抱きとめている。 きっと、夜は全ての温かさを朝にだけ渡したから、 朝以外の全てが、凍てついてしまうのだろう。 朝が少し冷たいのは、 温めてくれていた温もりが離れていく時だったからだろう。 私たちは、愛に包まれている。 冬も、春も、秋も、春も。 健やかなる日も、涙が枯れない日にも。 その愛はあまりにも大きいのだ。 見えなくなってしまう。 地軸が傾き、季節が生まれたのならば。 きっと、愛の大きさを生命に知らしめるためだ。 宇宙という広大なその未知に、 確かなるものをその手の中で温めたかったのだ。 ーー冬には、雲すら凪ぐ。 その「静」は穏やかに、流れていく。 「静」を保ったまま、空に還る。 雪とも雨とも呼べぬ何かが、降り注ぐ。 温かさなど、ひとかけらも残さないその何か。 湿った風が懐かしくなってきたこの頃。 ずっと座り込んでいたせいか、体も冷えてきていた。 しんしんと。 しんしんと。 終わりは、やってくる。
隅の澄み
瞠目すべし、我ら。 神を嘆くな。 お前は不幸か、多幸か。 ひとになれぬか、なれるか。 塵ほどどうでもいいこと。 お前らは人間である。 ひとであるかはお前らが決める。 青い血は流れない。 醜く、しぶとく、美しい血のみである。 欲せよ、醜悪に。 綺麗さは綺麗さに対抗しうるものだ。 欲に綺麗さなどいらぬ。 言葉に美しさなどいらぬ。 相手に落とし込むための重力と、 繋ぎ止めるだけの糸の長さだけが要る。 行動原理など、置いてきてしまえ。 今、お前が何を想ったのか。 合理的を求めるも、 思慮することを選ぶのも、 ソレに反するものを嫌だと感じるお前の感情が理由だ。 人間には、イエス、ノーで答えられる問いなど、 何千年も前に解かれ、残ってなどいない。 残っていても全て、お前の中に解答があるだろう。 故に瞠目せよ。 複雑怪奇のこの世の中を。 なんと入り乱れているのか。 何千、何億という法則が成り立ち、 人々はそれに乗って移動する。 蜘蛛の巣の、露ひとつぶと同じだけ。 偶然に、必然に。 とても澄みわたった、何かが在る。 引き留められた。 心の臓を潰されかけた。 精神を狂わせ、 永年の安穏をもたらす。 この世界の、 何処かの国の、 何処かのガードレールの、 少し大きくはられた蜘蛛の巣。 人間の社会とは、 始まりから見れば、たったのそれだけである。 たったのそれだけだから、 わたし一人のちっぽけさに震え、 相対的な命の重さに泣き喚き、 世界の大きさに首を垂れ、 少し離れたところでたまたま見えた、 光を透かす蜘蛛の巣に目を細めるのだ。 我らはずっとこの世界に、 瞠目し続けていた。
クツをツクって、ククっと笑った。
学校に対する思いを綴ります。 よければ、見ていってくださいませ。 よよは、学校が好きだ。 行くのは面倒くさいけれど。 派閥とか色々あるし、イジメもないわけじゃない。 空気が悪かったり、問題はたくさんある。 でも、好きだ。 ヒトを知れるから。 嫌いなひとは嫌いなひとなりにナニカがあった。 それは家庭環境だったり、 その人自身のパーソナリティだったり。 性格は正当な理由にはならない、と言われるけどね。 私はひとの「性格」そのものが大好きなんです。 すぐにマウントを取ってくるひとがいる。 陰口を言うひとがいる。 チガウことを許さないひとがいる。 でも、それって性格と直結する行動かな。 そのひとの目を見て。 悪口を言っているとき、その目を貴方が見つめて、 その人が目を逸らすなら、自分が少し悪いことを言っているって、 ちゃんと、どこかで自覚しているの。 ニヤッと笑って、コソコソ話し出したら、諦めていいから。 「チガウ」ってね。 相手の行動で自ら認めるから、居場所をなくすものになるの。 誰かがそんな風に扱っても、 君は「チガウ」にこだわっちゃいけない。 息の仕方を気にしちゃ、息ができなくなるのと同じ。 ひとりひとりチガウは、とても難しいこと。 認めるのはとても難しい。 だから、行動の属性に振り分けて自分を守るの。 「陰キャ」、「陽キャ」。 自分から名乗ってちゃダメじゃない。 貴方自身が自分を差別してどうするの? 学校嫌だ。 居場所がない、っていうけどね。 誰も最初から、居場所なんて持ってないよ。 みんな、放浪の戦士なんだ。 道の脇にあった、陶芸教室に。 たまたま、集まったひとたちなだけ。 でもそこに立ち止まった時間が長くて、椅子を探すの。 あぁ、疲れたなぁって。 座って、話を聞ける場所はないかなぁって。 それが居場所。 私は椅場所って呼んでいる。 気づいてほしいの。 教室に優先座席とか、ないよね。 もう配置されている。 譲らなくても、譲られなくとも座れるその場所。 だから、その椅子分が君の椅場所だ。 他の人もその分だけが椅場所だ。 みんな、ソレしか持っていない。 交友関係はね。 雲みたいなものだよ。 ずっと同じ空を一緒に回ったり、 風にすぐにカタチを崩されてしまったり。 バチバチ静電気で、自分たちから壊したり。 学校は青空教室だ。 君は息ができる。 ブツリに縛られちゃいけない。 心の空間だけは、四次元でいなくちゃ。 よよは学校が好きだ。 マウントを取る人は取る人なりに、 マウントを取りながらも、勉強を教えてくれる。 自分の気持ちを満足させるために、 貴重な時間を、物分かりの悪い私にも使ってくれたりする。 陰口を言う人は、言う人なりに、 その人を、よく見ている。 ナニカ悪いところは、ないかと探しながら。 いいところを見つけて、舌打ちをしている。 素直じゃないところも、可愛いね。 チガウことを許さない人は、許さない人なりに、 その人がチガウ理由を探そうとする。 それはその人を知ろうとすること。 でも、言葉が強くて、自分を守るのに精一杯で、 傷つけた自分が「チガウ」ことに、ベッドの中で泣いている。 本当に悪い人は、悪い。 君はちょっと優しさをもらったから、とその人のことで、 ずっと、気に病むってことはしなくていい。 優しさをもらったことは、 君を縛る約束にしちゃダメだ。 ね、不思議でしょ。 学校だけで、こんなに語ってしまう話があるの。 やっぱり、よよは学校が好きだ。 でも、この「好き」に強制力も、 罪悪感を抱えさせる理由にもなってほしくない。 私は「チガウ」の。 だから貴方も「チガウ」よ。 貴方と私がチガウだけ。 みんなチガウのかたまりだから、 チガウは私の「好き」の言い換え。 大好きだよ。
かたーりまーす
よよ、の小学生の話をしようと思う。 私が通った小学校は市のモデル校だったらしく、 何かとレベルが高いやらうんたらくんたら、 とりあえず周りがうるさかった。 しかし、だ。 インフルエンザの生徒がいない、という理由で新聞に載った。 いや、ね。うちのクラスにインフルエンザの子いたんだけど。 という話は置いておいて、 私は優秀だった。自分で言うのもアレだが。 勉強面においてというわけでない。決して。 そしてある意味、厄介児だった。 机に座らせば、永遠と喋り続け、 遊ばせれば、友達を煽りまくる。 先生のコンプレックスを、ピンポイントで 「なんでぇ?」と無邪気に聞いて、 親に一時間正座させられたのはいい思い出である。 そして、私はすぐに自慢をする奴だったらしく、 (今もそうだが) 何かと面倒くさいタイプである。 いや、どこが優秀なん?と訊かれると、 態度はCだ。 優秀要素はなかった。 しかし、よよは学んだ。 とりあえず怒らせて、測ればいいんじゃないか、と。 気づいた時、私は大体知り合いや友人を怒らせていたので、 もう一度怒らせる手間は省けた。 そして、平穏な日々を手に入れた。 事は私が小三の時にやってきた。 少林寺拳法をやっている男の子と友人になったのである。 私はソイツとよく喧嘩した。 殴り合い、蹴り合い、その他諸々。 しかし、言い合いはしなかった。 嫌いなものが一緒で、言い合うものがなかったからである。 彼はその拳法のわざを喧嘩するときに、絶対使わなかったが、 どうしても、殴るときに上手く力が乗ってしまう。 私はその喧嘩で強くなった。 不名誉なことに、髪を振り乱して喧嘩する様から、 ゆばーば、と呼ばれるようになってしまった。 そして、怖がられた。 解せぬ。 こんなに可愛いのに。 私はテストが大嫌いで、 悪い点数をとっても何もないのに、 テストに対して、驚くほど恐怖を抱いていた。 そのおかげで、テストにはほとほと困り果てるということを、 中学ではなくすことができた。 十年やった、器械体操をやめ、 陸上部に入り、 走り幅跳びをし、心が折れ、 砲丸をし、記録なしを叩き出して、 もう一度幅跳びをし、 もう一度砲丸を投げた。 市で二位をとれた。 そして、円盤投げに手を出し、 都道府県単位で、五位をとれた。 そこまでに、尽きない涙を流した。 努力を中途半端にした、悔しさである。 受験は絶対にこうなりたくない。 なるもんか、と意気込んで、 今、コレを書きながらお菓子を食べている。 なんとも解せぬ話である。
In.
此れは誰にも贈らぬ。 何にもならないとする。 故に此れを見た者よ。 存在しないものとして、理解せよ。 生は此処にあり。 死は凝視したり。 故に我らは怯える。 生は個々で震える。 死は償いにはならず。 青は深く。 夜は更け、 ただ一つの炎が消えようとす。 沈むのは朝。 「もし、お前よ」 闇に消えるのは存在。 我は今、何処にも属さない。 この身の不安定さをひとは不安と呼ぶ。 そのいのちの震えごと、見失う、 ただの遭難者になり得た。 我、そして存在せぬ。 確認して応えるのは死のみ。 またお前が享受するのは虚無のみ。 美しき本音たち。 磨かれた玉石。 その差を知らぬ者たち。 踏みしめられたか、そうでないか。 ひとは、その本音を守ろうと血を捧げる。 救われたいものよ。 曲線を描く練習をせよ。 人の手は丸みを是とする。 故に直線は掬われず。 不満を踏み越えるな。 それを抱えて夜を越えてはならぬ。 ひとを怒りの宛先とすれば、 お前は誰よりも先に誰かからの悪意で割れていくだろう。 器は時として、厚く。 何よりも薄い。 不満を捨てられないのなら、目を閉じろ。 書き殴れ。 それを他人に見せるべからず。 より推敲して、怒りを作品に変えろ。 よって、我は遭難者なり。 怒りの矛先を知らず。 幸せの見つけ方を忘れ、 地面につばを吐き、 この世を呪った。 我は遭難者なり。 この世の不満を語り、 己を泥に堕とす。 底を知らぬまま、堕ちたことすら分からぬまま。 必死に体勢を整えようと、 他人、世を罵るもの。 それ、我となる得る。 そして、此れを虚無に還す。
dessin
白身、ほろほろ なみだ、ぽろぽろ 溢れちゃった、きもちたち。 あぶれちゃった、わたしたち。 ほろほろ、ぽろぽろ。 探しちゃった、よろこびたち。 叩いちゃった、かなしみたち。 ぽこぽこ、ぷくぷく。 おなべが鳴いたよ。 ほうれん草がしぼんだよ。 あぁ、だれかが「かんしゃく」起こしちゃった。 決まりをまもるキッチンタイマー。 止まってくれない韓国ドラマ。 隣のひとが弾くチェロの音。 カップの影が少しずつ移り変わっていく。 木枯らしが吹いた。 頬をはたく乾いた手。 静かに沈んでいく日常たち。 お前の声を聴かせておくれ。 ほろほろ、ほぐれていく。 ぽろぽろ、こぼれていく。 私のいのちさん。 どこにいるの。 いのちさん、いのちさん。 ふわふわ飛んでいかないで。 掴む私ごと、飛ばさないで。 樹木のように。 ずっとそこにいて。 わたしじゃ、あなたを閉じ込めておけないから。 わたしのいのちさん。 あなたが根を張って。 頑張れ、頑張って。 みずは涙でいいの? 土はわたしの積もっていくきもち。 肥料はほんの少しのよろこび。 光はどうするの? 涙に反射した日の光分だけ。 それだけでいいの? 私が泣きすぎて、根が腐ったのね。 だから、飛んでいってしまうんだわ。 みずを蒸発させる光はないものね。 だって、暗闇で泣いているもの。 静かな闇のなか。 あなたも呼吸、しているのね。 ほろほろ、泣いているのね。 ぽろぽろ、嗚咽を堪えて。 しろみざかな。 わたしのなみだ。 ほろほろ、ぽろぽろ。 わたしのいのちさん。
pluie
航路を示せ。 揺蕩う旅人よ。 目を閉じ給え。 地獄の妖女ども。 首を傾けろ。 世界は逆向きにはならぬ。 歓声を上げろ。 傍観者たち。 目一杯の拍手を要求する。 我は役者。 我は旅人。 只人よ、目を背けるな。 主は只人。 主は臆病者。 酒に慰められる寂しさよ。 伽藍堂のその日常。 嗚呼、幸せだと自らに刷り込ませるのか。 地団駄を踏め、餓鬼ども。 一丁前に世界を語る前に。 教養だけがお前らの価値になり得るには、 少々、足りぬのではないか。 大人の関心よ。 故に集まるな。 子供は、恵みを受けないと生きていけない。 子供自ら、勉学のみを価値とさせるな。 泣き喚け、娘息子ども。 息を殺すな。 親と同じ空気の濃度だ。 息苦しさは、金魚のいない水槽にでも還しておけ。 分かち合え、恋人たち。 その寂しさを。 互いの目を見よ。 画面には、目は宿らぬ。 悟ったふりをするな。 お前の知っていることは小さい。 寂れた劇場の前で、 チョーク片手に怪物の絵を描く子供の話を。 お前は決めつけてはならぬ。 話を聞き終わるまで、その先を予想してはならぬ。 その頬に触れ、 揺れる命に慄然とするだろう。 定型化した問い、疑問。 全てが崩れ去る。 泥の上に建てた城だ。 築いたのは、飽和した世界への関心か。 随分と皮肉で狭い話だ。 子供がいるからどうした。 お前は子供を窘める存在か。 実に狭い。 実に短絡的。 逆上までするのなら、愚かの三拍子だ。 存在すら認識させない、 憎き怪物どもめ。
みをもゆ
芸術を語る作家がいた。 ソレは狂気であり、何よりの安定である。 かつて芸術家だった作家は言った。 ソレより心を削るものはない、と。 作家は誰よりも芸術を知っていたが、理解をすることを拒んだ。 抽象が危ないと察知したからである。 具体的ではない、を「細かさに丸みを帯びさせる」と、 捉えたときの喪失感を覚えていた。 作家は、芸術家である。 それは芸術を生み出すのではない。 芸術家の心を、先読みすることである。 またはその先を知ることだ、 弱冠十五歳のときに作家は芸術家が一生のものではないと悟った。 他人に優越を感じぬよう、卑下することを学んだからだ。 その優越と傲慢さで、そのとき持っていた芸術を壊すと、 彼は恐れていた。 彼は誰よりも孤独な天才たちを知っていた。 その独白を受け入れる言葉を持っていた。 ソレら全て、 彼が知っている答えであったからである。 年月とは罪深い。 本来ならばただ文を書くのが上手いだけの男を、 一丁前の作家に仕立てあげたからである。 過去の芸術家たちが残す血の呻きは、無駄ではない。 けれど、血の呻きは血の呻き以外の何物にもなれぬ。 現実は浮いていない。 どの角度で見ようと、 美しく表現しようと、 その本質は何一つとして変わらない。 故に現実を浪漫で覆い尽くしたとき、 分かっているように、芸術で語り始めれば。 お前の見えているものが虚無になる。 浪漫で隠されたフィルターを知らず、 その虚無感に絶望する。 身を守るために磨き上げた言葉たち。 すべて、感動するように。 理想の郷を表現するための小説と。 現実を混同するなかれ。 ソレを「今」に引き摺り込むな。 余韻さ余韻のまま。 浸るだけで終わらせるべし。 中途半端な芸術に。 お前は身を食い尽くされる。 「芸術」そのものの単語に憧れを抱けば。 お前は知ることはできても。 理解が追いつかないまま朽ちていく。 故に誤るな。 年齢は何も問題にはならぬ。 経験もすべて、 優越を感じる材料にはならぬ。 誰よりも、自分の心を語ることを是とせよ。 人の心を語り尽くしたと満足したとき。 お前は誰よりも虚しいその心を知るだろう。 浮いた軽さは捨てないまま、 それでも樹木のように根を張るのは。 ソレ自身に周りをも巻き込む重力がないということである。