おまめ
4 件の小説あなたという縁
パサッパサッパサ 今日も落ち葉を集める そして桜が寒くならないように布を巻いてあげる また春という縁に出会えるまで温めてあげないとだからね ………… はぁっ なんだ、、今の夢?? 夢にしてはすごくリアルだったな、 まぁいいや、 僕が小さい頃家の近くには小さな森と神社があった。それももう取り壊されて今は森と跡地だけが残っている ▶︎跡地にて 「よし、帰るとするか」 「君、よく見るね」 巫女姿の美しい女性が僕に声をかける 「えぇ、僕はここにくるのが好きなんです」 「ここは素晴らしい場所ですからね」 「そうですよね」 「あなたは本当にわかってらっしゃる」 続けて言う 「そんな君に見てほしいところがあるんです」 そう言われて、僕は興味が湧いた 「そうなんですか?」 時計を確認する 「少しだけなら」 「ありがとう」 彼女は優しく微笑む そんな彼女に連れてこられたのは小さな小さな社殿がある場所だった その上には小さくとも華麗に咲く桜の木があった 「ここは桜なんですね」 「そうなんですよ、この社殿は桜の神様が祀られているんです」 よく見ると小さな立て看板に 「桜彦命?」 「そうですサクラヒコノミコトです」 「それって」 「ご察しの通り、桜の神様として祀られているお方です」 「そう、、なんですね」 この跡地にこんな場所があるなんて、ほぼ毎年来ているのに、、全然知らなかった 「サクラヒコノミコトはね、彼女は桜の花のように美しいことから桜の神様として信仰されているんですよ」 「詳しいんですね」 「それはもちろん、神様に仕える者として当然です」 「ここが好きなんですね」 「好きです。。とても」 僕はそこに咲く桜に見惚れてしまった。 そこに咲く桜はとても、 僕にはとても儚く見えてしまった 「君、名前は?」 「僕ですか?」 「うん、君」 「僕は木上 信弥」 「信弥くん」 「そんなあなたは?」 そう、聞こうと思って振り向いたが、そこには彼女の姿はない。 代わりに綺麗な桜吹雪が舞っていた 「なんだったんだ?」 彼女のことがどうしても気になって僕は春が終わってからも、何度も何度もその社殿を訪れた だが、彼女の姿はない そこにあるのは、春が来るのを待っている桜の木だけ そんなことをしていたらもう桜の季節だ 「今年も行くとするか」 僕はいつもの同じようにあの跡地へ向かう 今年も変わらず、あの社殿にだけ桜が咲いている 手を合わせる 「…!」 一瞬だけ、、彼女の姿が見えた気が、、、した 「気のせい、、か」 そうして今年の参拝は終わった 僕は冬にもう一度だけあの社殿に参拝して、彼女のことは諦めるつもりだった。。 だったはずなのに、 「え、」 その社殿に一足踏み入れた途端、その社殿を取り囲むように桜の花びらが舞い散る、 その社殿一帯がまるで春になったかのように暖かく、明るかった。 「今、、11月だぞ、、」 これは、一体どういう、 「信弥くん」 「巫女さん」 彼女がそこに立っていた 「巫女さん、、これは」 「不思議?」 「そりゃ、そうでしょ、だって今11月だし」 「何も不思議なことはないですよ、だってここは社殿、桜の神様が祀られているんです、ここには神様がいますから」 「神、、、様」 「そうです、神様です」 「…」 「どうですか?落ち着きました?」 「まだ、、状況があまり理解できないと言いますか」 「まぁそれもそうだね」 「ここに来る人は300年振りだもん」 「え?でも巫女さんって」 ビュゴォ 冷たい冬の風が吹く それと同時に彼女の姿は消える 「あの人は、、一体」 その日を境に、 社殿が消えた 周りの友達や、近くに住んでいる人たちに聞いてみたけれど、誰もそんな社殿知らないという だったら、あれは一体 気持ちの整理がつかないまま春になる あの場所に行ったが、やはりあの社殿はない その日を境に僕はあの社殿のことを考えなくなっていた ▶︎15年後 「信弥、こっちにこいよ」 「おう」 僕は登山にハマっていた。 雪山を登るのがたまらなく好きになっていた 今は仲間と共に登るのが好きだ ビビビビビッ スマホがなる 「雪崩、?」 「下山しよう、危険だ」 「そうだね、今日は諦めようか」 下山だ、下山、命が最優先 …… 風が強くなっている 視界が狭くなっていく 気付けば僕は地面に倒れていた 記憶がない だんだんと体温が奪われていく 意識も遠ざかっていく 「ここで、、死ぬのか」 最後にあの巫女さんに会いたかったな 「?」 「巫女さんって、、、誰だ」 思い返してもわからない、 咄嗟に出た言葉だが、巫女さん、、? 誰だそれは、 記憶を辿っても、わからない カランッ 「あれは、、一体」 目の前に社殿が現れる カランッ そこに小さな木が現れる カランッ そこに、、、、 美しい巫女姿の女性が現れる 「信弥くん」 「あ」 あれは、、あの時の、、 僕はなんでこんな大事なこと忘れて 周囲に春の温かい空気になる ゴトッ 意識が飛ぶ 目が覚めるとそこには水面に浮かぶ、社殿があった。そしてあの桜の木が咲いている 「僕は、、どうなって」 そうだ、、巫女さんを、、巫女さんを探さないと 「信弥くん」 巫女さん、、 「ここは、、一体」 「ここは黄泉でもなく、現世でもない間の世界だよ」 「それは」 「このには生も死もない、狭間の世界」 「なぜ僕はそこに」 「私が特別に呼んだのよ」 「あなたは一体」 「私?私はねぇ」 彼女は桜吹雪に包まれる 「私は神様なんだ」 何を言って、 「私は君がよく気にかけていたあの桜の神様だよ」 まだ完全に理解できない 「おっと、その顔は何を言ってるんだーって顔だね」 続けて言う 「君を一目見た時に私は君のこと気に入ったんだよ。覚える?君は桜を守ってくれたよね、私の大事な大事なあの桜を」 全てを思い出す。 かつて、僕はあの社殿の 神主だった 「この記憶は、、一体」 「それは君の前世の記憶、君が守ってくれていたあの神社はもうないよ、でもこうして現世でも巡り合うことができた。それってなんでだと思う?」 「あなたが、、そうさせたから?」 「違うよ、縁だ」 「縁、、?」 「この世は全て縁で繋がれている。知ってた?私って縁結びのご利益があるんだよ?」 想い出した、きっとそれは前世の記憶 「こうして巡り合う縁、山で遭難してしまう縁、生きて帰れるという縁、産まれると言う縁、この世は、この世に起きることは偶然ではなく全てが必然的に縁で結ばれている」 「なぜ僕はないはずの社殿に巡り会え、あなたに会えたんだ?そもそも、なぜ記憶を」 「それは縁だよ!この世に産まれてきた限り全ては必然かのように縁を成していく。君は産まれた時から私と巡り合う縁だったんだよ15年前、まだ子供だった君と私が会えたのは、きっと君とまたこうやって巡り合うための縁だった」 「縁結び、、か」 「君はまだ生きるべきだ、私は君にそう言う縁があると思う」 「でもね、私ね、もう神様じゃいられない」 「なんで、、」 「君はあの時死ぬはずの縁だったんだよ、それを私は助けてしまった、つまり、縁切りしてしまった」 「…そんな、俺のせいで」 「大丈夫だよ死ぬわけじゃないんだから、ただ、、神様って言う肩書きがなくなるだけ」 「でも、、」 「そう言うことだから、みんなの記憶から私という神様が消えるだけ」 「だけじゃないですよ、、僕にとっては大切な神様です」 「君の記憶からは消えないよ、たまにちょっかいかけてやるからね」 そう言いながら微笑む 「じゃあ、君ももうここを出なきゃ、戻らないとねあそこに」 扉が開いている そこには僕の姿が 「いやだ、僕は、、」 「大丈夫、私たちだって強い縁で繋がっているよ」 目が覚めると、そこは病院のベットだった 「信弥、心配したんだぜ、お前、あの時気絶して、もう1週間も寝たきりだったんだからな」 「ごめんね、でももう大丈夫だよ」 窓を覗くとそこには緑に変わった桜の木がたっている 僕だけ知っているあの神様 きっと今もどこかで春に会えるのを待っているのだろう そして僕も、あなたと会える縁を、 春に会える縁を待ち続けている end
星に還る花
▶︎約束の花火 パァンッ 夜空に大輪の花が咲く 「どうしたの?顔、、赤いよ?」 「君のせいだよ…」 「ん?なんてなんて?もう一回言ってほしいな」 悪戯な顔をする君に僕はもう一度見惚れてしまった 「また来年も見に行こう、再来年もそのまた来年もずっとずっと見に行こう、約束な」 「うん 約束ね」 お互いに指切りを交わした 僕たちには未来がある。この空に舞い上がる花火のように何度でも、何度でも、舞い上がって咲き続ける、散っても再び花が咲く。永遠に そう願っている ▶︎汐恩 「おはよう紗夜」 「おはよう汐恩くん」 朝だ 僕は朝が嫌いだ、だって起きるのがしんどいから でも好きだ。だって紗夜に会えるから 「ちゃんと今日の小テストの勉強した?」 「え!?小テストなんかあるの!?」 毎日する、紗夜との他愛のない話をする時間が僕はものすごく好きだ 要は、僕は紗夜が好きだ 紗夜とは幼稚園からの付き合いだ、もう長くなるなぁ僕たちもう高校生だぜここまで一緒にいるなんてな、嬉しい限りだよ 《今年も約束守ってね》 声がかぶる 「そろっちゃったね」 「そうだな」 「じゃあ今年もあの場所で!」 「そうだね、あの場所にしよう」 あの場所とは、小さな丘の上にある古びたベンチのこと、あそこからは花火が綺麗に見える僕たちだけが知っているスポットなのだ。また今年も君と一緒に過ごせる。 ▶︎紗夜 昨日 おはようを返す 今日 おはようを返す 明日 おはようを返す こんな日々が私はとっても好き 汐恩くんと一緒にいる時間が、しようもない話が、、とっても好き 私は知ってるよ、汐恩くん 君、私のこと好きなんでしょ 早く告白してくれないかなあ、なーんて(笑) きっと君にもバレてるよね 君は私のことすっごくわかってくれるし 隠し事なんかすぐ見つかっちゃうから ▶︎嘘 パァンッ 今年も夜空に大輪の花が咲く。。 綺麗だ 君も、花火も 「来年も行こう」 「、、、、、」 「どうしたの?」 「ううんなんでもない、行こうね」 なぜかわからないけど、約束しずらかった。 その日を境に学校に来なくなった ▶︎翌年 紗夜を見つけた 「さ、、、」 紗夜が大学病院に入って行った 後日紗夜にラインして聞いてみたけど、単なる風邪だという 本当に、僕に嘘が通じるわけがない。 そんな感じじゃないし、大学病院なんて、単なる風邪でいけるところじゃない。 明日は花火の日、 丁度良い、明日直接聞こう 翌日 あの場所で 「紗夜、何か隠してるよな」 「隠してないよー?」 「嘘だ、、、僕わかるから」 「嘘、、は良くない?」 「良くない、ちゃんと教えて」 「じゃあ、、植物化性症候群って知ってる?」 「なにそれ、なんかの漫画に出てきたの?」 紗夜は着ていた着物を脱ぐ 「え」 紗夜の体は咲いていた 体中に花が咲いていた、と言うより体が花になっている 「植物化性症候群ってね世界に1人か、2人しかならない奇病なんだ。ほんとはね、ずっと病院にいるべきなんだけど花火の日だけ許可もらって来てたの」 「でも去年まで、、学校も行ってたじゃん」 「その年の花火の日に発病しちゃって」 紗夜は続けて言う 「進行が早いんだ、、予想より。世界にもほとんど事例のない病気だから仕方ないんだけどね」 「え、え、え、え、」 理解できない。紗夜が病気、、しかも、花に、、 どういうこと、どうなって、、いや、嘘、 約束、、したじゃないか 「この病気ね最終的に患者を花にするんだ」 「それって」 「そう、花になってしぬの」 「いやだ、いやだよ、、」 信じたくない、これは、何かの間違いだ 「ごめんね、汐恩くん、実はね余命も出てるんだ」 「、、」 聞きたくない、、、、いやだ、 「余命はね」 それと同時に花火が空に舞い上がる 音と重なり、余命を聞くことができなかった 「紗夜、、花火の音で、聞こえなかっ」 「しっ、一度しか言わないよーだ」 「言ってくれないの?」 「ふふーん、内緒」 俺は咄嗟に 「紗夜っ俺紗夜のことずっと好きだった」 それを聞いた紗夜は顔を赤らめる 「それ今言っちゃうのぉ、、私もだよ?ずっとまってたその言葉」 続けて言う 「ほんと、全然言わないから、生きてるうちに聞けないんじゃないかって思っちゃったよ」 「俺、紗夜のこと幸せにする、楽しかったって思えるようにする、、俺がんばる」 「じゃあ、よろしくね、私の余生、君に任せるね」 それからと言うもの、僕は大学病院に通った 紗夜と毎日会っては話す会っては話すを繰り返していた 日に日に紗夜は弱っていった。 体はどんどん花に豹変していく いつもはたまに外に車椅子で散歩に行くのだが、それも厳しくなってきた 2、3日寝込むなんでざらになってきた 余命を聞けてない僕はあとどれぐらいの余生があるのかはわからないけど、なんとなくわかる。 もう長くないことくらいは 「今日、、花火だねぇ」 「紗夜、起きたの?」 「もうずっと起きてたよ」 「今年はよそうか、ここからでも見れるし」 「だめ、約束したじゃん」 「でも、先生がここをでちゃだめって」 「知ってる、でもバレなきゃいいじゃん」 紗夜に押し負けて僕は車椅子の紗夜を静かに押した ▶︎あの場所にて 「どうにか間に合ったね」 「そうだね、ほんと大変だったよ」 「よくぞここまで押してくれた褒めてやろう」 「なんだよそれ」 僕は安心した。病気で体が変わったって紗夜は紗夜だまたこの他愛のない話で笑い合えたことがとても、嬉しかった パァンッ 今年も夜空に大輪の花が咲く 「綺麗だね」 「私も、あんな綺麗に咲くのかな」 言葉を返せない、、 「私、、君を好きになってよかった」 「僕もだよ」 病院に戻った僕らは先生にこっぴどく怒られた でも無事に帰ってきたからお咎めなしだそうだ 「お咎めなしだって!汐恩くん」 そう笑った紗夜は、その2日後に歩みを止めた 寝ている間に心臓が花になったという 寝ている間だったのが不幸中の幸いだったそうだ 苦しまないで眠りに入った 植物化性症候群の患者はここから数日かけて全てが花に変わっていく、そして数ヶ月かけて枯れていき、、最後は種となるらしい その種は人それぞれ違うと言う 紗夜は桔梗だった 桔梗の花言葉は「永遠の愛」 それを聞いた時僕の目からは涙が溢れ出した。 今まで我慢してきた分全てが出てきた 紗夜、、紗夜、、 ▶︎永遠の愛 パァンッ 今年も夜空に大輪の花が咲く 来年も、再来年もそのまた来年も、何度でも、何度でも、舞い上がって咲き続ける、散っても再び花が咲く。永遠に 僕のそばにも大輪の花が咲いている まるでそれは空に舞い上がる綺麗な花火のように儚く、強く咲き続ける、来年も再来年も
夜明けのアンコール
▶過去 私は、どこまで歩んでいくのだろう この、代わり映えのしない平坦な道を いつからだろう、こんなにもつまらなくなったのは あぁ、こうなると分かっていたら、私は もう一度戻れるのなら、最初からやり直せるなら 私は、違う道を… 何をやっても無駄だ。 答えが見つからないまま、私は進む 日に日に遠ざかっていく夢とは別で周りからの期待や、プレッシャーは日に日に増えてゆく なんだろうこれが、あれかな、俗に言う反比例というものなのだろうか ▶今 私は…私には夢がある そう、アイドルだ 私はアイドルになって周りの人を喜ばせる仕事をしたい 私は小さい頃からこの事務所で働いている もう今年で26だ … の割にはあまり売れていない… 26で売れないアイドルは世間一般的に言うと金食い虫で足でまといだ 昔から、もうすぐ売れる、もうすぐ売れると言われ続けて、結局、周りの期待通りには出来ず…… あぁ、いつか…いつか… ▶ 今日は地下でライブがあった その会場が小さかったからだろうか、席は満席のように見えた ライブの後には毎回握手会がある 当たり前のように私の所には誰も来ない あぁ、つまらない なんてつまらない夢を追いかけているんだろう こんなただの負担にかならない夢を 現実を見よう 私は決心した ▶ 「いらっしゃいませ」 私は今はアイドルを休業してアルバイトをしている あんなクソみたいな夢では生きていけないのだ あぁこれが現実か つまらない とてもつまらない 対してアイドルもアルバイトも稼げない こうなるなら初めから家業をついでいた方が楽で稼げただろう あぁ、また失敗した つまらない 一応父に相談してみようか 暗い暗い部屋の中で、目が痛むほど明るいスマホを開く 「…」 「こんばんは 夜分遅くに失礼します。今からでもそちらの方で働くことは可能でしょうか」 直ぐに既読が着く 私たちが昔よく行っていたカフェの場所が書かれたリンクだけ、送ってきた きっとここに来いと言うことだろう そこに着く 父はもう座っていた 素早くそこへ向かう 「座れ」 「はい、」 「あの、父上」 そういった途端 コトッ 私の好きだったカフェラテを渡してくれた 「ありがとう、ございます」 父は、昔と変わらず凛としていて威厳を保っている 「麗奈、アイドルはどうした」 父が口を開く 「すみません、あまり上手く行かず…今は仕事がない状況でして、今後も……とてもじゃないですけど続けれる状況ではないと…」 「現状の話をしているのじゃない、諦めたのか?それともやるのか?どっちだ」 「すみません、もう…辞めます」 「…そうか」 「すみません」 「仕事はいくらでもある」 「ありがとうございます」 父は少し頷き、その場を去る 私とこの父がくれたカフェラテだけが取り残させる とうとう私の周りには誰も居なくなったな ▶ 「こんにちはー」 「すみません、ここに行きたいのですか……」 「そこですね、そこなら、あの公園の角を右にまがって……」 「ありがとうございます」 私は地方に配属された きっとこれが私に与えられた仕事 やるべき事 元から決まっていたのだろう こうなると 私の事を知る人なんていないだろう アイドルなんて、やらなければ良かった … ピロンッ スマホがなる 「久しぶり、麗奈俺の事、覚えてっか?」 あぁ、しのぶくん すかさず返信する 「覚えてるよ、しのぶくん、久しぶり」 「麗奈、夢はどうしたの」 「夢は…諦めた」 「ごめん、俺、てっきり」 「いいの、大丈夫」 「今度会って話そ、昔みてぇに」 「いいよ、どこ」 「ここ」 「わかった」 ▶3日後 「久しぶり」 今日は珍しくオシャレしてきた 「久しぶり」 「この間はごめん」 「いいよ、仕方ないもん」 「アイドルしに東京行ったって」 「あぁ、それね、諦めた、有名…なれないし稼げないからさ」 「そっか…」 「俺…夢を全力で頑張る麗奈がかっこいいし、好きだと思ったよ」 「え、?」 「なんでもいい、どんなことでもいい……応援してる」 しのぶくんはそう言ってその場を去った …… 私…何やってんだろ 応援されてるなんて…分からなかった かっこいい…か ……(私は決めた) 行かなきゃ 私応援されてるんだ 期待されてるんだ …やらなきゃ 東京行きの新幹線に乗る ガチャッ ドアを開ける 「もう一度…私にチャンスを、チャンスをください」 ▶しのぶ …あ、手紙 丁寧に包まれた手紙が届く 「しのぶくんへ しのぶくん、こんな私の事を応援しててくれてありがとう。 私は行きます 私は私に恥じないような、私に後悔しないような そしてなにより、あなたの好きでいられるような そんな生き方をしたいとあなたと会って思えました 私は私に期待をしたい 私の可能性を信じたい あなたの気持ちに期待したい、期待されたい 私はもう一度歩みます もう一度目指します。 私が有名になったら、あなたからプロポーズしてね 私は今日も1歩ずつ歩みます 羽田 麗奈」 ▶未来 あなたはあなたに恥じない人生を歩んでいますか あなたはあなたに後悔しない人生を歩んでいますか あなたはあなたに期待出来ていますか 私はしています 私は支えてくれる家族の為に 私は応援してくれる好きでいてくれるしのぶくんの為に 今日も自分を全力で生きます、挑戦します これが私の答えです END
私だけのメモリー
冷たい手が私の頬を覆う そして奇妙な機械音と共にいつも通り彼は私にこう言う 「リセット完了」 あぁ、またか… 「さよなら」 「私はアイです、あなたはなんという名前ですか」 「少しぐらい…覚えててよ」 「…」 またしてしまった、同じ過ちを… 最初の間違いは、私がここに来たこと…だろうか 私は大学で行動心理学を学んでいる 彼は凛とした顔で授業を受けていた、いつもいつも同じ席で同じ格好同じ事をしている。 そんな君とどうしても、どうしても関わりたくてあの時はなんとかして話す理由を探したっけ ばかみたい ここに彼が来てからというもの私の日常が全て変わった…何もかも 何から話せばいいものか… あぁ嫌な思い出が蘇る、 きっと話すならあそこだ、あとの時からだ… 私は自分自身に言い聞かせる 私は無意識にあの時の景色を思い出す あれは、よく晴れた秋の日の事だ ▶108日前 私は論文を提出するために大学へ向かった、そのついでに授業も少し受けて出席簿を提出しようとした日だった 論文を提出し終わり、私は3講目の授業を受けた いつも通り、私は1番後ろの端の席に座った、ここが1番落ち着くのだ何もかも見渡せるこの場所がなんとなくお気に入りなのだ そこに座った途端目に入ったのは凛とした顔で授業を受ける男の人…何をしているんだろうか、私はそんな彼が気になって仕方なかった。私は自然と彼を追いかけるようにいつも同じ時間の授業を受けるようになった ▶85日目 彼も私と同じ、いつも同じ席に座る 私のようにこだわりが強いんだろうかいいや、そうでは無いだろう 私は心の底で彼はもっと何か大きな物で動いているのだと思った。何故だろうほんとにこんなばかな私があほらしくて、少し笑えてくる そんな冗談を嘲笑うかのように彼は黒板を見つめては嘲笑を浮かべる…何故だろうか今ならわかる気がする きっと君は……そう考えてたのだろう。 ▶68日前 彼を追いかけるようにして、大学の隣に大きな建物が出来た、 「羽田山国立人間行動心理化学研究所…?」 その建物に書いてあることをそのまま読む 行動心理学…か でも、なぜここに作ったのだろうか疑問が沢山浮かび上がるかそれどころじゃない 私と彼との関係には凄く進展があったのだ 何故だろうか、彼はいつも公園のベンチで座っている…それのお陰で私も彼に話しやすかった、いつも一人でいるからだ 彼は私の話を親身に聞いてくれる、興味深く聞いてくれる、私は彼と話すのが好きになってしまった…彼の 聞き上手にまんまとハマってしまったのだ そうするうちに仲良くなってしまったのだ、うれしいことに 私の夢にまでみた大学で青春を送る日がくるのだ ▶56日前 私は彼と初デートに行く 素晴らしいことだろう、まぁ実際はただカフェにいくだけという至ってデートとは言えないことだが それでも私は嬉しかった なぜなら彼と会えるからだ カフェに着いた途端彼は言った 「付き合おう」 「え、?」 急なことすぎて何も返せなかった 数分待って貰ったあと私は返事を返す 「いいよ」 付き合った、まさかのカップルだ こんなにすんなり始まっていいものだろうか疑問も出るがこの際どうでもいい 彼と付き合えたのだから ▶46日前 それからと言うもの私たちは色んなことをした デートも沢山行った 映画も、遊園地も 何もかも楽しい日々だった でも人生というのは物語のようにすべてがハッピーエンドで終わるはずがないのだ 「もうそろそろ言うべきと思うんだ」 彼が珍しく真剣な顔で言う 「俺は人間じゃない、人間の実験の為に作られたロボットなんだ」 彼の口からでたものはは私の思考を止めるのには充分すぎる内容だった そして彼は言う 「俺のデータは1億の価値がある、君との日々でインプットした内容は研究所にとっては充分すぎる対価を手にした…らいし」 「用無しだって」 彼はいつものように優しい嘲笑を浮かべた でもその時だけはその笑顔も彼との会話も許せなかった 「何を言ってるのか分からない」 自分の言った言葉は今でも忘れない ▶35日前 1億…とてもじゃないけど想像出来るものじゃない私との記憶が1億…1億…1億………うれしいような嬉しくないような 彼言わくその記憶や思考、感情に価値があるらしい それを、その記憶を売れば1億だって その半分は私に来るだって 要らないよそんなの 私はそのために付き合ってる訳じゃ…ないのに 何故だろうどんな言葉も嘘に聞こえてしまう あぁ、おもんないな人生は ▶5日前 彼は消えた 唐突なことしかしないね君はほんと 呆れる程に涙が出てくる さよならと書いた手紙が私を狂わせる 4文字で人を悲しませることが出来るんだな ほんと 君は 、 ▶1日前 「ガチャッ」 彼が…帰ってきた 「お金…」 札束が入ったカバンを渡してくる 「何これ」 「僕たちの…記憶」 「…僕って……」 彼の思考はもう…そうなんだろうなそう思ったのもつかの間 「今までありがとう、僕は楽しかった」 元々プログラムされていたことかのようにあっさりとその言葉を流す 元から決められていた定型文なのかなこれが これが…ロボットなんだよね…きっと そう思う 彼は 彼の記憶は時間通り、消えて行った ▶戻る 「………なんて話覚えてるわけないよね」 「申し訳ありません 覚えていません」 「だよね…」 今思えば彼は記憶という形の無いものからお金というモノに変えてくれたのかな? 何にも分かってないなぁ だからロボットなんだよ君は もう一度彼は言う 「申し訳ありません」 「いいよ、無いものはないもん」 私はこの過ちを繰り返すだろうこの先何年も何年も でも、悔いはない 私は決める 「よろしくね、これから」 あぁ、あと何回繰り返せば気が済むだろうか