だked/海月の一味。

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だked/海月の一味。

前向きに生きる。そして小説は好きに描く。そして忽然と連載を諦める事がある……。

あるふぁいなる

あるふぁいなる 第十四話 眩しい日差しが目を眩ませ、青い海と白い砂が広がる場所。 自分達の住む街の駅から数駅離れた程度の場所。 僕達は四人で海へとやって来ていた。 僕とりゅうりゅうは更衣室を出た少し出た先の砂浜で、恵美さん達を待っている。 夏なだけあって、海にはかなりの人が海水浴にきている。 僕達は女子二人とは違って、簡素な海パンしか身につけてない。 がっつり用意して来た二人に少しだけ申し訳無かったが、恵美さん曰く。 「それでもいいんじゃない?互いにがっつりだと目立つ」 との事なので安心した。 しばらくすると。 「時雨。お待たせ」 後ろから声が聞こえ、僕は振り返る。 そこに居たのは、以前の水着専門店で着ていた青色のビキニを身につけた恵美さんだった。 相変わらず似合いすぎていて、僕は目のやり場に困ってしまう。 狼狽えながら答える僕に、恵美さんがくすくす笑っている。 「ふふん。やっぱり好印象……嬉しい」 そう言うと、僕は恵美さんに尋ねる。 「そう言えば、遥は?」 「あー……『水着に袖を通すのがきついよー』って駄々を捏ねてたけど、もう少しで来るよ」 呆れたのか、笑っているのか分からない表情で言う。 すると更衣室の中から、見知った顔が現れる。 「うぅ……恥ずかしいよぉ」 顔を真っ赤にして水着姿で現れる遥。 僕はチラッと、りゅうりゅうの顔を見る。 「……」 「……」 りゅうりゅうと遥はしばらく無言で見つめ合っていた。 びっくりするくらい気まづい沈黙が流れている。 すると恵美さんがりゅうりゅうの背中を叩き、耳打ちする。 「ほら龍也。お嫁さんが困ってるよ」 「え……あぁ……えっと……」 りゅうりゅうは困ったように頭を搔く。 僕もその姿を見届ける。 「えっと……良いと思うよ。やっぱり似合ってる」 「そ、そう……?ありがとう……」 遥がフリフリと体を恥ずかしそうに揺らす。 僕と恵美さんは思わず微笑む。 「さて。いつもの大根役者が揃ったところで」 恵美さんが息をつき、大きく広がる青い海を指差す。 「泳ご」 全員がそれを「おー」と言って肯定する。 それぞれが潮の味のする水の中へと足を踏み入る。 恵美さんがとても恥ずかしがっているのを見て、潮水を顔面にぶちまける。 「うぎゃぁぁぁああ!?」 目に潮水がかかった遥は、両目を手で覆って叫んだ。 僕はそれを見て笑っていると、左目にしょっぱい何かが飛んできた。 「いだっ……!?」 僕は飛んできた方向を見る。 そこにはいつの間にか手に水鉄砲を持った恵美さんが、僕に銃口を向けていた。 「ふふん。ダイナミック不意打ち─海ver.─」 「いったぁ……もう、恵美さん」 僕は目を擦りながら恵美さんに言う。 ふと彼女の顔を見ると、とても楽しそうに口角を上げているのが分かる。 それに釣られて、僕も自然と口角が上がってしまう。 りゅうりゅうも遥も楽しそうだった。 暫く楽しんでいると、僕と恵美さんは飲み物を買いに行くために自販機へと向かった。 「海って楽しいね」 「うん。僕も久しぶりに来たけど楽しいね」 そんな会話をしていると、自販機の前で二人の男が近寄ってきた。 チャラそうなアクセサリーを付けた色黒の男達だ。 何だか嫌な予感がした。 僕は咄嗟に恵美さんを背中に隠す。 男達が話しかける。 「ねぇねぇ。そこの白髪さん。ちょっと俺らと遊ぼーよ」 とてもニヤニヤした顔で言う。 俗に言う"ナンパ"というやつだ。 確かに恵美さんは白髪で、人間離れした美貌を持っている。 更衣室から出た際も、かなり視線自体は感じていた。 チラッと恵美さんの方を見る。 彼女はびっくりするほど、顔に不快感を露わにしていた。 僕は何とか声をあげようとすると。 「邪魔だよ」 小声で言われ、肩を捕まれて突き飛ばされる。 突然の事に僕は転けそうになる。 恵美さんが僕を心配そうに見つめる。 そんな彼女に、色黒の男達が「行こうよー」と言いながら近づく。 僕は途端に体中が熱くなる。 「…………おい」 思わずガラガラになった声で言う。 色黒の男がイラつき気味に僕の方に振り返り……戦慄した。 恵美さんも僕の顔を見て少し眉を上げる。 「……恵美さんは僕の友達だ……だから……近寄るな」 僕が男達を睨みながら言うと、男達はすぐさま逃げ帰る。 しばらくその場に人のはしゃぎ声だけが聞こえ始めた。 僕は深く呼吸すると、恵美さんに近づく。 「だ、大丈夫だった?恵美さん…………恵美さん?」 恵美さんが僕の方を見てキョトンとする。 そして口を開く。 「……本当に、貴方時雨なの?」 「え……?えっ!?ぼ、僕は時雨だよ!?」 「ほ、本当に?私の名前……わかる?」 「恵美さんでしょ?静月恵美さん!」 「な、何で分かるの……怖い」 「えぇっ!?」 あまりに唐突な事に僕は慌ててしまう。 急に僕との記憶が消えてしまったのだろうか。 「いや……あまりにも時雨に見えなかったから……びっくり」 「そ、そうなの……?」 「うん……でもありがとう時雨……助かった」 恵美さんはとてもにこやかに笑ってみせる。 僕はそれにドキッとした。 続く

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汚れちまった色恋に2

汚れちまった色恋に2 第十三話:記憶 同時刻。 僕は今日電車で遠出する予定があった。 その帰りの電車の中で僕は座りながら揺られている。 何だか眠たくなりそうだ。 「……ちょっと寝ようかな」 僕はそう言うとそっと目を閉じた。 十駅以上離れているから、少しくらい眠っても大丈夫だろう。 しばらく揺られていると、僕の耳元に何か声が聞こえた。 「……先輩?」 「…………んぅ?」 僕は目を覚まし、隣を見る。 するとかなり至近距離で僕を見つめてくる少女の姿があった。 あと数センチで鼻同士が触れそうな距離に、僕は一瞬戸惑う。 「うわっ!あ、あれ?えっと……確か」 よく見るととても既視感のある顔だった。 少女は無表情のまま答えた。 「結城玲香です。この前電車の中で会った」 「あ……そうだったね!ごめん。忘れちゃってた」 「大丈夫です。慣れっ子ですから」 彼女はそう言って顔を伏せる。 その横顔は少し悲しそうだった。 そして彼女と出会った時の事を思い出して、僕は申し訳ない気分になった。 「ご、ごめん。君の事……思い出せなくて」 「平気ですよ。思い出せなくても当然です」 「う、うん……」 僕は非常に悲しい気分になり、話題を変えようと必死に考えた。 「あ、あのさ。れ、玲香ちゃんの事をちょっと教えて欲しいんだ」 「え?私ですか?」 「うん。会話してたら何か思い出すかも知れないし」 そう言うと、彼女は目を丸くして長考する。 何を話せばいいか分からないとでも言いたい様な表情だ。 どうしよう。 彼女の為を思って切り出した話題だったが、逆に困らせてしまったのだろうか。 「あ……は、話しずらかったら別に無理にとは……」 「……いいえ。私の話と言っても、特に面白い話が無いので……どうしようかと」 「べ、別に些細な事でも良いよ!」 「……ええっと。では私の昔話でもしますか」 すると彼女は昔を懐かしむような口調になる。 「……私は小学生の時から……まぁ嫌われましたね」 クスクスと笑いながら、彼女は言った。 対照的に僕は複雑な心境となってしまう。 「見ての通りの根暗な性格ですし、影も薄いので、"嫌われている"が大袈裟でも、好かれてはいませんでしたね」 「そ、そうなんだ」 「両親もまぁまぁ放任主義だったので……ていうか。正直要らない存在って言われましたからね。『中絶するのも金がかかるから産んだだけ』ってお父さんに言われましたから」 「……」 僕は息を飲んだ。 自分の娘に対してなんて事を言うのかと思ったが、それをバカ正直に言っても良いのかも分からない。 言ったところで何かが変わるのかも分からない。 だから必死に気持ちを抑えた。 「先輩?」 「え、あぁいや……その……なんて言えば良いか分からなくて」 「……やっぱり先輩は優しいですね」 玲香はニコリと静かに微笑んだ。 僕はその微笑んだ顔をじっと見つめてみる。 もしかしたら、何かを思い出すかも知れなかったから。 すると彼女は首を微かに傾ける。 「……大生先輩?」 瞬間、脳内にノイズが走った。 ノイズと同時に流れてきた断片的な言葉に、僕は一瞬視界が記憶の波に呑まれた。 『……きで…………輩』 顔が見切れた少女の記憶が、僕に向けて話しかけてきた。 意識が戻った時……僕は何故か手汗をかいている事に気づく。 慌てて服で手汗を拭うと、玲香の方を見る。 彼女は首を傾げながら僕の方を見つめる。 「……先輩?」 「あ……いや……ごめん。何でもない」 「そうですか?何だかボーッとしてましたけど」 「う、うん。ごめんね。疲れてたみたいでさ」 「そうですか。ならもう話は終わりますか」 玲香がそう言うと席から立ち上がり、僕に背を向ける。 「あ……その」 「先輩……また会えたら良いですね」 彼女はそう言うと、次の停車駅で音も無く静かに降りて行った。 続く

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あるふぁいなる

あるふぁいなる 第十三話 ある日。 俺は久しぶりに帰って来た実家で、寛いでいると。 恵美が声をかけてきた。 「兄。明日ちょっと一日いないから留守番できる?」 「あぁ、構わんが……俺を留守番も出来ないやつだとでも?」 「"目には目を。歯には歯を。念には念を"って言葉あるじゃん」 「俺はもういい歳の大人なのだが」 俺がそう突っ込むと、恵美は「まぁまぁ」と俺を諭す。 俺が間違っているのだろうか。 相も変わらず恵美の思考は全く読めない。 「遊びにでも行くのか?」 「うん。時雨達と海に行ってくる」 「そうか。海か。楽しんで来い」 そう言って俺はスマホを開く。 恵美にも一緒に遊びに行く友達が出来るとは。 大変喜ばしい。 「……ん?待て今なんと?」 「ん?"うん。時雨達と海に行ってくる"って」 「う……みだと?」 俺は息を飲んでしまう。 しかも、時雨……? 確かその男は、この前駅で会った。 「……その時雨以外には、誰かいるのか?」 「ん?遥って言うプロのエンジョイ勢の女の子と。その子とうぶらぶ中の龍也」 「お……おう?」 中々個性的な友達に恵まれたものだ。 恵美が幸せそうなら、俺はそれで良いが。 「……ま、まぁ。怪我にだけは気をつけろよ」 「ん。ありがと。留守番よろしく」 「ああ。任せとけ」 俺がそう返答すると、恵美は自室へと引っ込んで行った。 すると、恵美の使っているゲーム機の隣にあるカセットケースを見る。 すぐ近くには、何かのメモも散らかっている。 "Big brawl粉砕兄弟"という名前の格闘ゲームのカセットケースだ。 メモに書かれているのは、『めざせランキング二桁』と言うヘナヘナした文字。 「……これ、俺が前にハマってたゲームか」 昔、恵美にも教えたことがあるが、その時はそこまでハマらなかった記憶がある。 俺も飽きてしまったからここに置いていってしまったが。 まさかランキングまで気にする程になるとは。 「……友達の影響なのかもな」 普段の恵美なら、絶対にこういうゲームはハマらない。 駅でのやり取りでも思ったが、恵美の成長が見れて俺は凄く喜ばしい。 「そう言えば兄。仕事場は良いの?」 「おわっ!?急に背後を取るな」 唐突に後ろから声を掛けられてしまい、俺は腰を抜かしそうになる。 「仕事場は後輩に任せているから大丈夫だ」 「そう?兄の店、倒産しない?」 「する訳が無かろう。職場はそんなに簡単に倒産しない」 「ふーん。兄、接客とか出来るの?」 「接客業では無いが……客との交流くらい出来る。ただ……客に笑顔で接客するとビビられるのは何故だ」 「あー……ファイト」 とても哀愁の漂う顔で見つめられた気がする。 「まぁ。客との交流くらいは普通に出来る……一部のやつを除いてな」 「一部のやつ?」 「あー……クレーマーという訳では無いんだが……いや、あれはクレーマー……なのか?」 「恵美は知らない」 俺はそう言うと少し思い出した。 俺の店にほぼ毎日やって来る、幼なじみのある女性を。 その頃、優太の店にて。 私はあいつの店の前に、たどり着く。 黒いサングラスを掛けて、パパラッチへの対策も完璧に出来ている。 あいつ以外には絶対にバレる訳が無い。 「ふふん。今日こそ、あいつに……ギャフンと言わせてやる……よっし!」 私がニヤニヤしながら、店に入る。 と思った時。 「いらっしゃい……あれ?いつも来てくれてるお客さんですか?」 あいつとは違う店員さんが、声をかけてきた。 「え、ええ」 「今日は先輩いないから、あんまり話せないと思うけど……」 「あ、はい……」 私はそう言われると、適当に弁当を購入して店を出る。 ビニール袋をギリギリと握り締めて言う。 「何でいないのよあいつ……それに……私顔覚えられてたのに…………何で売れないし知られてないのよー!」 私─火野七鳳(ひのなとり)は悲痛の叫び声を上げる。 続く

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18度目

誕生日でーす 皆さんこんにちは! この度12月21日、私だkedも。は18歳の誕生日となり、晴れて日本の成人男性の端くれとなりました! Noveleeも始めて中々時が経って、特に面白くも無い作品を数々投稿してきました。 そんな作品をも評価してくださる読者様に、感謝しても仕切れません。 Novelee内でもお友達ができましたし、私は結構幸せ者なのかもしれませんね! さて、堅苦しい話はこれくらいにして、せっかくなので(?)コメントにて質問コーナーを行おうと思います! ガチガチの個人情報とかじゃなければ基本的には答えようと思うので、良ければコメント欄に何か聞きたい事を記載してください! それでは、これからも私の小説をご贔屓に! (終始日本語が不安だぜ)

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汚れちまった色恋に2

汚れちまった色恋に2 第十一話:憧れと嫉妬 私は何故か今日は遠回りしたい気分になり、駅から少し離れた街に来ている。 時々来ている場所で、人が大袈裟に多い訳でも無く、静かな雰囲気の場所だから好きだ。 するとスマホから通知音が鳴る。 お母さんだ。 『ごめー!ボク今日少し遅く帰るからさー。優太と一緒にテキトーに済ましといてー!』 「…………」 私はすぐに「分かった」とだけ返信すると、スマホをポケットにしまう。 私はやる気がいまいち起こらず、宛もなくプラプラと歩いていた。 その時。 「……あれ?」 私は目の前にいる人に見覚えがあり、近づいてみる。 「え……一誠君?」 「ん?……あれ?彩葉さん帰ったんじゃ無かったんすか?」 「い、いや。まだ暇だったから……ここって」 一誠君がいた店を見る。 ギター専門店。 そう言えば一誠君は軽音楽部のボーカルをやっていると言っていた気がする。 「ギターやってるの?」 「うっす。ギターボーカルっす」 「へぇ!凄いね!弾き語りとかできるの?」 「……まぁ。出来ますけど」 「へぇー……いーなー」 私が思わず呟くと、一誠君が少し間を空けて言った。 「……やりましょうか?」 「え?い、いいの?」 「いいっすよ。減るもんも無いですし」 彼はゆっくり歩き始め、「場所変えますか」と言う。 私達は二人で並んで歩くと、人気の無い公園に着いた。 中々広い場所なのに、静かで人がほとんどいない。 一誠君がベンチに座ると、背負っていたギターケースからギターを取り出した。 「わ、アコギだ」 アコースティックギター。 エレキギターと違って柔らかい音が出るような印象のギターで、私はたまに弾き語りの動画を聞いている。 一回自分でも弾こうかと思っていたが、値段が高くて断念した。 「んじゃ。適当にやりますね」 「あ、うん!よろしく」 一誠君が一つ深呼吸をすると、ギターを弾き始めた。 緩やかなリズムの弦の音に、とても穏やかな一誠君の歌声。 初めて聞いた彼の歌に、私は胸が苦しくなった。 演奏が終わると、一誠君は一度深呼吸をする。 私は拍手した。 「凄いよ一誠君!歌もアコギも上手だね!」 「……そっすかね?まだまだっすよ」 「やっぱりギターボーカルってかっこいいよね……憧れちゃうな」 私は思わずそう言ってしまい、途端に恥ずかしくなってしまう。 だけど一誠君はあまりそれには反応せず。 「そっすかね。まぁたしかに俺も憧れで始めたんですけどね」 「へ、へぇ。やっぱりそう言う憧れから始めるのもいいよね。結構始めて長いの?」 「まぁ……長いっすね。習い事とかでもやってはいるんで」 「す、凄いね。そこまでやってるんだ?」 「まぁ……その……言ったら変ですけど」 一誠君が少し迷い躊躇いながらも言う。 「……割と本気で……プロとか目指してるんで」 「……へぇ」 一誠君の戸惑いながらの本気の発言に、私の心臓がズキンと音を立てる。 理由は何となく分かる。 "憧れ"と"嫉妬"だ。 「……全然変じゃないよ。寧ろ凄いと思う」 「……そうっすかね。まぁやる事しか無いと思ってますけどね」 大きくて明確な憧れに向かって、まっすぐ突き進む姿勢に行動力。 そして努力によって実る実力。 私にはほとんど無いものだ。 それが……凄く羨ましい。 「……私も……そんなに」 「え?」 「あ、ううん。なんでもない……私そろそろ帰るね」 「あ、うっす」 「今日はありがとうね……」 私はそのまま帰ろうと彼に背中を向ける。 だけど、その足を止めてしまう。 どうしてなのか分からない。 家に帰らないと行けないのに、体が言う事を聞いてくれない。 「彩葉さん?」 一誠君が尋ねると、私は振り向いた。 すると彼は驚いた。 「……なんで……泣いてるんすか?」 いつの間にか、視界が霞んでいた。 続く

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あるふぁいなる

あるふぁいなる 第十二話 僕はある日、りゅうりゅうに尋ねてみた。 「りゅうりゅうは、なんで遥と付き合う事になったの?」 純粋な疑問だった。 言っては失礼かもしれないけど、りゅうりゅうと遥にはあまり共通点が見つからない。 確か二人ともゲームが好きだった気はしたけど、性格は正反対だった。 なのに何故付き合う事になったのかが、僕には分からなかった。 「……そうだなぁ。結構昔の話になるけど」 りゅうりゅうが懐かしそうに呟く。 「時雨。俺が遥と知り合ったのはね……三年前なんだ」 「……え?」 僕は思わず声を上げる。 僕達は今高校二年生。 その三年前ということは、中学二年生の時。 だけど、遥とりゅうりゅうは全く違う中学だ。 すると、僕の頭に浮かんだのは。 「……もしかして、ネット?」 「んー……まぁ、間接的にそうってところかな」 僕は驚いた。 まさかネットで初めて会ったとは思わなかった。 「だ、だけど、現実で会ったのは去年とかなんだよね?」 「うん」 「いくらなんでも……ネットだけでそこまで仲良くなれる?」 「あー……ネットって言っても」 りゅうりゅうは苦笑いしながら言う。 「オンラインゲームでって感じ?」 「お、オンラインゲーム?」 いよいよ訳が分からなくなってきたので、僕は更なる説明を乞う。 彼曰く、当時彼のハマっていたオンライン対戦ゲームがあり、彼はそこそこ上のランキングに居たのだという。 そのゲームにはフレンド申請機能というものが存在し、上位勢からも沢山フレンド申請されていた。 「……もしかしてその一人に?」 「うん。遥がいたって事」 りゅうりゅうはランキング十二位で、遥は三位だったらしく、なんなら対戦経験もある。 ちなみにりゅうりゅうは遥に一度も勝てた事が無いらしい。 遥は高一の時から生粋のゲーマー気質ではあったが、それは中学でも同じだったようだ。 「高一の時に、このゲームの事を話題にしてね、フレンド登録しようって思って確認したら、既にフレンドだったって事」 「……凄い偶然だね」 「ね。その時は俺も驚いたよ。まぁ、一番驚いてたのは遥だったけどね」 りゅうりゅうがクスクス笑う。 元々同じゲームをやっているからなのと、同じ学校でもあるから、話が合いやすかったのか。 「そうなんだ……ある意味、運命の出会いだったって事なのかな?」 「まぁね。でも、時折思うんだ。遥のパートナーが俺なんかで良いのかなってさ」 「あー……僕も遥もあんまり経験が無いから分からないけど……前の水着選びでりゅうりゅうに選んで欲しかったのは……それくらい信頼してるからじゃないかな?」 「……まぁそうだね。遥に見合う男にならないとね」 りゅうりゅうが微笑する。 一方その頃。 「へっくしゅ!」 アタシは静月さんと一緒にオンライン対戦ゲームをして遊んでいた。 唐突なアタシのくしゃみに、静月さんが首を傾げる。 「遥、花粉症?」 「……いや。アタシ花粉症今の時期に無いし……噂かな?」 「ふーん?遥、そういうの信じるタイプなんだ?」 「ま、まぁ」 アタシはゲーム画面を見つめながら苦笑いする。 そして不意に、このゲームの事を思い出す。 「そう言えばこのゲーム……」 「ん?」 「あ、これはね実は……」 アタシは静月さんに説明した。 これがきっかけで、たっつんと出会い、付き合う事になった事を。 すると静月さんは「ひゅう」と口笛を鳴らす。 「ネットワールドでの運命の出会い……甘くて良いね」 「甘……っていうか、静月さんって結構こういう話好きなの?」 「ん。恵美だって年頃の乙女だからね。こういう甘い話は大好きだよ」 「へぇ。確かに乙女かも」 「但し、甘過ぎるチョコは苦手」 「あぁ。そうなの?」 「うん。だからホワイトデーは基本的にリリースしてる」 静月さんが「ふふん」とドヤる。 「……じゃあ静月さんはさ。誰かと付き合いたいとか思わないの?」 「……ぬーん。恵美には正直良く分からない。恵美は誰かに好かれる様な性格でも無いし……別にそこまで人気者でも無いし」 ゲーム画面から一切視線を離さないで言った。 そんな事は無いと思うけどと、アタシは心の中で言う。 静月さんは結構綺麗な見た目をしているし、変わった性格ではありつつも、嫌われる様な要素はほとんど見当たらない。 やろうと思えば全然モテそうだけど……。 「まぁ、静月さんにはしぐがいるもんね」 「え?」 「なんでもー。それよりランキング戦は順調?」 アタシは小声で言った事を無理やり誤魔化す。 静月さんは画面を見せる。 「え、ランキング258位!?」 「ん。ひたすら進めてたらこうなったよ」 「えぇ……始めて一週間くらいだったよね?」 静月さんのセンスの高さに驚いてしまう。 そしてアタシは、静月さんに言った。 「……お互い頑張ろうね」 「ん?うん。ランキング上位同士」 「そうじゃなくて……まぁいいや」 アタシはため息をつきながら、静月さんとグータッチを交わした。 続く

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あるふぁいなる

あるふぁいなる 第十一話 水着専門店にて。 「遥、これとか似合いそう」 「え、えぇ!?これ、なんか派手過ぎじゃない?アタシにはちょっと……」 遥と恵美さんが棚に置かれたレディースの水着を手に取りながら言う。 一方、僕とりゅうりゅうはと言うと、そんな彼女らの横で複雑な表情を浮かべるだけだった。 「ぬーん。埒が明かないね……なら、ボーイズチェックをしてもらおう」 「ぼ、ボーイズチェック?」 「ん。ほら時雨と龍也。出番だよ」 恵美さんが僕らを手招きする。 恵美さんと遥が水着を手に持って試着室の前に立つ。 右側に恵美さん、左側に遥が入る。 「それじゃさっきの通り、時雨が恵美ので、龍也は遥のを審査してね」 「う、うん」 そう言うと恵美さんは試着室のカーテンを閉めた。 りゅうりゅうと二人きりになって、僕は彼にこう言った。 「なんだか、緊張してきちゃったや」 「そうなのか?」 「う、うん。りゅうりゅうはしないの?」 「んー……してると言えばしてるかも」 「ほ……ほんとに?」 「まぁ」 僕にはとてもそう見えない。 そして暫くした時、試着室のカーテンが開かれる。 僕は恵美さんの姿を見てドキッとした。 「どうよ時雨。恵美のナイスバディは」 「……えっと……その……」 僕は反応に困ってしまう。 恵美さんの選んだ水着は、上下青色のビキニだった。 水着のフィット感もそうだが、恵美さんの華奢で色白な体にかなり合っている。 目のやり場に困ってしまう。 「えっと……に、似合ってると……思う」 「ふふん。この反応は好印象だ。嬉しい」 恵美さんが目を細めて笑った。 何気に恵美さんが素直に笑っている顔を見るのは初めてかもしれない。 僕が少し驚いていると、隣の試着室から遥が顔だけカーテンから出した。 「ね、ねぇ静月さん。やっぱりアタシ恥ずかしいよ……」 「何を言う。遥、そんなにチキンじゃお嫁に行けないよ」 「お、お嫁って大袈裟な……」 「はい。カーテン開けるよ」 「あっ!ちょっと……」 遥の訴えを無視して、恵美さんは試着室のカーテンを開ける。 彼女が身につけている水着は、全体的に藍色に近いワンピースだ。 遥は顔を真っ赤にしながらチラチラとりゅうりゅうの方を見る。 僕はりゅうりゅうに「出番だよ」と耳打ち。 りゅうりゅうが「あー」と言いながら頭を搔く。 「……に、似合ってると思うよ。遥」 「そ、そう?なら……嬉しい…………けどもう無理っ!」 遥が勢い良くカーテンを閉めた。 りゅうりゅうは頭をポリポリと搔く。 「……難しいね」 「いや。龍也は良くやってたよ。らぶらぶに近づいた」 「だと、いいね」 りゅうりゅうはそう言うと微笑んだ。 その後。 「……はぁ。疲れたよぉ」 遥が片手に水着の入った紙袋を持ってゲンナリとしている。 「おつかれ、遥」 「うぅ……静月さんは色々強引過ぎるよぉ」 遥が恵美さんに言う。 りゅうりゅうが笑って言う。 「まぁまぁ。二人ともちゃんと水着買えたんだから良かったんじゃない?」 「う、うん……に、似合ってたんだよね?」 「うん。似合ってたよ」 「そ……そう?」 遥が顔がニヤけそうになっているのを堪えている。 恵美さんがそれを見て僕に耳打ちしている。 「らぶらぶに近づいたね」 「そ、そうなのかな?」 僕にはいまいち分からなかったが、確かに二人は上手くいってるようにも見えた。 そう言えば、この二人ってどういう経緯で付き合う事になったのか知らないな。 今度機会があれば聞いてみようと、僕は思った。 「それじゃあ。海に行く時に楽しみにしよう」 そう言うと恵美さんは少しワクワクした様子で言った。 続く

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汚れちまった色恋に2

汚れちまった色恋に2 第十話:傷跡(しんそう)を辿る"後編" 「やった所で無意味な事を、変わりたいなんて虚しい夢を持たずに、陰キャらしく生きていった方が生きやすいんじゃないってこと」 ゲラゲラと笑いながら彩葉に言う奴らに、私は憤りを感じた。 クラスでかなり感じ悪い女子に声を掛けられた時点で何かあるんだと思っていた。 彩葉は何でも無いとは言っていたが、反応的に何か隠しているのは分かった。 だからこっそり着いてきてみた結果がこれだった。 私には許せなかった。 「あんた達!」 怒りのあまり私は叫びながら彩葉の元に歩み寄る。 彩葉が目を見開いて私の方を見る。 「り、凜々花ちゃん!?」 「ん?何あんた?……あぁクラスの」 女子達が私を睨みつける中、私は声を荒らげて言った。 「さっきから聞いてみればあんたら……彩葉は一人でどれだけ悩んで頑張ってるのか知ってるの!?クラスに貢献する為にどれだけの事をしてるのか……あんたらには分かるの!?」 私は堪らずに叫ぶ。 すると女子が一瞬固まると、すぐに大声で笑い出す。 「え?知らないよ他人の努力なんかさ。それに私は別に、学級長さんにアドバイスしてあげてるだけだよ?努力しても何も出来ないような陰キャにさ、目立つ仕事は酷だろうから辞めればってさ。周りにそれなら迷惑もかけないよって」 そう言うと、私と彩葉を除いた女子達が全員笑い出した。 その上擦った笑い声に、私は目眩がした。 体が怒りの余り熱くなっている。 「……けんな」 「あー?」 「ふざっけんな!」 私はリーダーの女の子の顔面を思い切りぶん殴っていた。 バキッという音が鳴り響き、そこにいる全員が怯んでしまう。 「あがっ!?ちょ、ちょっと何すん……がっ!」 私はリーダーの言う事を無視し、怒りが静まるまで殴り続けた。 ほとんどその時の記憶は無かった。 リーダーの子が怯えて逃げ出して行った時、私は我に返った。 「「……」」 彩葉と私は暫く沈黙していた。 すると彩葉が口を開いた。 「……り、凜々花ちゃん」 「大丈夫。私は平気だよ……彩葉は怪我してない?」 「う、うん。私も平気だけど……」 「……あーあ。何やってんだか。私」 私は何故か清々しい気持ちになった。 「り、凜々花ちゃん!その……ありがとう。助けてくれて…………それと、黙っててごめん。凜々花ちゃんに迷惑をかけたくなかったの」 「……知ってる。そんな事だろうと思ったよ」 私はそう言うと小さく笑ってしまう。 どんな理由があろうとも、私がやった事はいけないことだ。 多分、ただでは済まされないと思う。 だけど、私の心には後悔は無い。 だって……。 その翌日。 私の手元に一枚の書類が届いた。 『2-A岡野凜々花(おかのりりか)さんは、本校の生徒に暴力行為をおこなったため、自主退学処分とする』 堅苦しい文章を簡略化したらこんなものだ。 「…………」 私は反応に困ってしまう。 私がやった事に間違いはないのに、どこか納得の出来ないところがある。 引っかかる事はあるけれど、私はそのまま学校を退学する事となった。 そして、現在へと至っている。 続く

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死金

死金 ※この話はフィクションです。 二年前。今はもういないおじいちゃんは私にこう言った。 「自殺なんて贅沢な事。お前には勿体ねぇよ」 当時の私には全く理解が出来なかった。 自慢では無いが、確かに私は昔から自殺願望が強かった。 毎日のように「死にたい」と口にし続けて生きてきた。 だけどふと私はおじいちゃんの言葉の意味が気になった。 それをある日私は大学の先生に尋ねてみた。 「不謹慎かも知れねぇけど。"お金"で例えてみたら分かりやすいかもな。人ってのは生まれて命って言う"金"を持つだけでだいぶ尊いもんなんだ。それを簡単に使い切っちまうのは贅沢で勿体ないって事を言いたかったんじゃねぇか?」 それを聞いて私は、何とも言えなくなった。 本当にそれがおじいちゃんの言いたかった事なのかは、もういないから分からない。 だけどだから私は、分からないからこそ。 生きていこうと心に決めた。

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死金

あるふぁいなる

あるふぁいなる 第十話 ある日、僕のスマホに送られて来た恵美さんからのメッセージ。 『明日、ちょっと買い物行くから付き合ってくれない?』 僕はそれで近くのデパートの前に来ている。 すると僕の前にうっすらと恵美さんの姿が見える。 「やほ、時雨」 「おはよう恵美さん。買い物って言ってたけど何買うの?」 「まぁまぁ。まだ役者が揃ってないから」 「え?役者……?」 僕が不思議に思い尋ねると、近くに停車したバスから見慣れた顔ぶれが出てきた。 「あ、遥にりゅうりゅう!」 「や、やほ。しぐ」 遥が何か恥ずかしそうな表情で言った。 一方のりゅうりゅうは何がなんなのか理解してないような顔をしている。 それを確認すると恵美さんが満足そうに頷く。 「よし。大根役者は揃った」 「大根なんだ……確かにここのメンバー演劇の経験ないと思うけど」 「じゃあ遥。現場に案内して」 「現場って……わ、分かったよ。でも、本当にしぐ達も連れてくの?」 「うん。だってこういうのって男子連れてった方が効果あるんじゃ ないの?」 「そ、それはそうかもだけど……あーもう……」 遥が顔を真っ赤にしてブンブン首を振っていた。 僕はりゅうりゅうに耳元で静かに尋ねる。 「ねぇ、りゅうりゅう。遥に何かあったの?」 「んー?別に俺はあんまり心当たり無いけど」 「そうなんだ。まぁ、とりあえず行ってみる?」 「そうだな」 僕達はそう言うとデパートの中に入って行く。 恵美さんと遥が前で話しながら歩いている。 意外と恵美さんは転校したてなのに、他の人とも馴染めている。 遥は元々仲良くなりやすい性格ではあるが。 馴染めているようで僕は良かった。 すると二人が足を止めた。 「さて。二人とも、着いたよ」 「うん……え、恵美さんここって……」 「ん?見ての通りだけど……?」 恵美さんは首を傾げる。 僕は店の看板を見て目を丸くする。 "水着専門店" 「……えっと……?」 「時雨、言ってたじゃん。海に行こうって。だから二人でその水着選びをしに来た」 「あー……言ったね……だけど、僕とりゅうりゅうは何で?」 「あー。それはね。遥が言い出したの」 「え!?ちょっと!?」 遥が困惑したように言う。 「え?だって遥言ってたじゃん?『たっつんに選んで貰いたいの!』って」 「い……言ったけど!今言うのは違うじゃん!」 「じゃあいつ言うの?今でしょ」 「そんな事言ったって……」 遥がうじうじしているのを見て、恵美さんがため息をついた。 「はぁ。それじゃあいつまで経ってもらぶらぶになれないよ?うぶらぶ止まりだよ?」 「う、うぶらぶでも良いじゃん」 「それじゃあ恵美がつまらない」 「え、えぇ……なんでアタシの事なのに」 「友達の恋愛は応援したい。うぶらぶじゃなくて両者公認のらぶらぶにしたいの」 「んー……まぁ言いたい事は分かりました……」 「ん。遥、らぶらぶまで頑張れ」 と、二人が話しているのを聞き、隣のりゅうりゅうが困った様子で頭を掻く。 僕は苦笑いしながら言う。 「……頑張ってね。りゅうりゅうも」 「うん……といっても俺はどうすればいいんだか」 僕らが二人で笑い合う。 すると恵美さんがこっちを向く。 「と、言う事で水着選びを手伝って欲しいって事」 「な、なるほど。僕らから見て似合ってるものにしたいって事?」 「ん。流石、時雨は物分りが良い。遥のを龍也が。恵美のを時雨がって感じ」 「あー……え、待って恵美さんも買うの?」 「ん?そうだよ。この流れ的に」 「え、あ、あー……分かった」 僕は少し反応に困ってしまった。 恵美さんの水着を……僕が選ぶ? 途端に緊張してきてしまう。 「じゃ、れっつごー」 そう言って恵美さん達は店へと入って行った。 続く。

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