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10 件の小説僕は昨日恋人を殺した
冷たい雨が降りしきる暗い夜、街の喧騒から離れた一角で彼女と出会った。彼女の瞳は漆黒で暗い俺の瞳と違って明るく、希望に満ち溢れていた。彼女は国家の秘密を抱えるスパイ。僕は彼女を殺すためのアサシン。結ばれることは決してない。そう思っていたのに彼女と過ごす時間が増えるにつれ、僕の心は揺れ動いた。彼女は僕を愛おしそうな目で見つめた美しい瞳を揺らしながら 僕は組織に報告することも忘れ、気づけば彼女に夢中になっていた。最悪の状況を想像もしないで呑気に。ある晩のこと、彼女と街を歩いていたときだ。どこからか銃声が鳴り響いた。 目の前で鮮やかな血が散った。 「報告が無いと思えば、色目に騙され役目を放棄しているとはな」 彼女は撃たれた。僕のせいで、呑気にしているせいで。 アサシンなのに気配にも気づけずに、恋人なのに彼女も守れずに。 彼女は腹部に弾丸を撃ち込まれたのにも関わらず、 「ここままだと貴方も殺される」と彼女は僕の手を引いた。 逃げて逃げて、彼女は力尽きたように地に倒れて、 組織から逃げなければならない僕は彼女の死を悔やむ暇もなく、 国外に逃げた。逃げて逃げて逃げた先で悔しくなって、泣きそうになって吐きそうになって、自分を殺したくなって、気づいた。悪いのは彼女でも僕でもない。 国だと。この残酷な世の中だと。それからは政治家を殺して周り、 彼女に対する贖罪を試みた。
感情破損
昔から泣けなかった。 母が入院したとき姉も弟も「母さんが死んじゃう」と泣いていた。 父も、影でこっそり一人で泣いていた。それなのに 僕は病気で管に繋がれたままの哀れな母の姿を見ても 『死んじゃう』なんて思ったけど涙がでてこなかった。 母は何とか一命を取り留めたが、高校生になった春、 ずっと家族同然として飼っていた犬が突然死んだ。 高3だった姉も中2の弟も、母も父も子供のように泣いていた。 それでも僕は涙を流せなかった。涙を流せなかった僕を見て、 姉が「姉が心配してないの?最低」と言葉を吐いた。 心配はしていた。していたのに涙がでなくて、僕はなんでこうなんだろうとトイレにこもって吐き続けた。 吐き続けても収まることはなく、周りから嫌な目で見られることも無くなることは無かった。爺ちゃんが死んだ。 病気で死んだ。やっぱり家族は泣いていて、親戚も泣いていたのに 僕は泣けなくて、『変な子とか、感謝していないのか』と 叔父さんや叔母さんにも言われた。だけれど婆ちゃん は泣いてなくて、僕の手をしわくちゃな温かい手で包み、 「泣けないから何さ!婆ちゃんが泣かせたる」と励ましてくれた。 その数日後に婆ちゃんも爺ちゃんの後を追うように亡くなった。 親戚の皆は泣いてなかった。あんなに泣いていたのに、 「ほら、あの人ちょっと頭おかしいからさ」 「自分の旦那が亡くなったのに泣いてなかったしねぇ」 その言葉に僕はムカついて、叔母さんを平手打ちした。 「アンタ!叔母さんに何するん」親戚が僕の周りを囲んで 罵声を浴びせた。「泣くことがそんなに偉いのかよ」 僕は長年思っていた言葉を吐き捨て、トイレに逃げ込んだ。 ぽろぽろと涙が溢れてくる。「あぁ、これが泣くってことなん」 婆ちゃんは命を持って俺に涙を教えてくれた。 『婆ちゃんが泣かせたる』その言葉だけ引っかかった。
身を捧げるのも本望
小学校の頃、中学生のヤンキーに絡まれてた俺を 小さな体で必死に助けた男の子がいた。 その男の子はボロボロの体で変な笑顔を向け、 「今日からおれとおまえは心友だ!」と言った。 今思えば、子供ながら初恋だったと思う。 そんな強い少年が泣いていた。母親が死んだからだ。 俺はそんな子の背中を撫でながら「大丈夫、俺が一生傍にいる」なんて嘘を吐いた。それから中学も高校も仕事も全部一緒にした。 傍にいると誓ったからだ。そんな彼にも恋人ができた。酷く特殊な癖を持つ女だ。その女に会う度あいつは怪我をしていて、「大丈夫や」なんて言った。どうやら女と別れられないらしい。 あいつの生々しい傷跡を見る度心が痛くなった。ある日あいつはいきなり姿を消した。連絡も着かへんし、置き手紙もLINEもしないから場所が分からん。病院で入院中だった俺はその事をあいつの友人から聞いて、病院をこっそり抜け出し、探しに行った。 女の家にいたあいつは、病院から抜け出した直後の俺を見て酷く驚いた泣きそうな顔をしていた。その顔が昔見た顔に似ていて、安心させたくてどうにか笑顔を作り、「大丈夫」と言った。 今にも女は部屋に入ろうとしてくる。咄嗟にあいつを窓から逃がし、体調が悪くてもう歩けもしない俺は、「あいつに手を出さない」ということを条件に女と過ごすことにした。あいつは心配して俺を呼び止めた。再開した時に。怒った顔を向けながら。 「一緒にいたい」その言葉を噛み殺しながら、心配した目を向けるあいつに大丈夫やと言って女の元に帰った。 あいつは俺を助けてくれたヒーローやったから、 あいつの為に死ねるなら本望やし、あいつの為に怪我を負うも本望 そう思いながら今日も俺は女の機嫌を取り、喜んで身を捧げる。
決別
3歳のときから20年も共に過ごした友人が 他の女と過ごすと言った。 その女は俺の元カノであったし、よく暴力を起こして、 相手を自分のモノにしたいという癖がある地雷女だった。 もちろんそれを許せなかったし、なんでその女と一緒に過ごすのか理解ができなくて問い詰めると、 「金も持ってるし、可愛いし、飯美味いから」とあいつは言った。 「そんな理由で俺と離れるのかよ」俺がそう言うとあいつは、 いつもみたいに「お前俺のこと好きなん?」って茶化すのじゃなくて、真面目な顔で「お前のこともう好きじゃないから」と冷たく言う。今まで俺に何年も付き纏い、好きだ好きだと一途で犬のようにしていたあいつが他の女にしかも元カノに取られる。 想像しただけで吐きそうだ。1度だけ元カノに束縛されたことがあって、入院中だったのにも関わらず俺を助けに来たときも、真っ青な顔で「大丈夫」と言っていたあいつは、真っ青な顔で俺の肩を小突いて、「大丈夫」と言って女の元に去っていった。
シュミレーション仮説
「私たち人間が生きる現実世界は、実は高度な文明をもつ何者かによるシミュレーションに過ぎない」とある科学者言った。 そうかもしれない。簡単に言えば、シュミレーション仮説とは 私達が様々なゲームを人間の娯楽、知能向上の為に作ったように、 私達が現実世界だと思っている世界は 誰かがゲームとして作った世界なのではないかと言うことだ。 私はこの理論に凄く興味を持った。何故なら今スマホのキーボードを打ち、小説、読み物を自分や周りの人の娯楽、知能向上の為に書いているからだ。今までの数々の主人公、例えば、実験体の子供達や愛を求める主人公もそうだ。 彼等はそれを現実世界だと話の中で思っているのかもしれない。私達のように。誰か、人間よりも遥かに上の存在、例えば神や仏、もしかすると宇宙人かもしれない。 そんなモノ達が私達を創造し、ゲームのCPUのように扱っているのかもしれない。
アイサレタイ
愛されたくて厚化粧をするかのように 作り笑いをした。 愛されたくて香水を撒くかのように 猫撫で声で喋った。 それでも愛されない私は何をしたら良いのだろう。 逆に私と違って口も悪いし愛想もないし ブスなあの女が何故愛されているのだろう。 何故あんな笑い声もうるさい豚みたいな、 目付きも悪い魚みたいなあの女が好かれるのだろう。 それが本当に理解できなかった。 私は私という人格を殺し、私は私という名前を捨てたのに、 ここまでしたのにも関わらず何が足りないのだろう。 あぁー愛されたい。アイサレタイ
この作品には題名がありません
妬ましかった。他人がものすごく。 努力を詰んだのは私。優れているのも私。 なのに何故、何故私より下のお前らが讃えられるのだ。 私の方が才能があるのに。何が悪かったのだろう。 私の物語のどこが貴方に刺さらなかったのか。 構図も、表紙も、キャラ設定も、文章力も 全部私が優れているのに、伝えたいことが伝わらない。 そうか、貴方のように書けば優れるのだ。 そうして書いた。参考にしつつ書いた。書き終わって気づいた。 本当にこれは私の書きたかった物語なのだろうか。 構図も、表紙も、キャラ設定も、文章力も全部、 私のモノじゃない。私が望んだ物じゃない。 だから、この作品には題名がありません。
夢を才能によって壊された
将来の夢は小説家になること。 稼ぎがないから駄目。才能なんてないでしょ。 将来は稼げる仕事につきなさい。 姉と比べてあんたは勉強できないね。 勉強なんてしたくないもん。 そんなこと昔は思わなかった。 少なくとも勉強をして医者になったり、警察官になったり 夢はあったはずなのに、目の前で憧れの人がチラつく度、 LIVEして稼ぎたい。YouTubeで稼ぎたい。 小説を投稿して稼ぎたい。 自分の声で稼ぎたい。思いで稼ぎたい。 そう思うようになった。 でも才能がないから駄目です。賢くないから駄目です。私の歌唱力がもっとあるなら。 金持ちに生まれていたら、 高校に入らなくても家の仕事を継ぐだけで稼げるなら。 絵の才能があったら、文章力に秀でていたら、 もっと何か変わっていただろう。 才能がないから夢を壊された。 しょうもないやりたくもないことしか選択肢がなかった。 勉強をして、いい職業につく決められた運命。 才能があれば、女優にでも子役にでも歌手にでも、 小説家にでも絵師にでもなれただろう。
1年きりの猫
恋人が死んだ。飲酒運転の車に跳ねられた、 頭を打って、搬送途中で亡くなった。不慮の事故だった。 まるで夢を見ているようなまま彼女の葬式が終わり、ベットに座る そんなとき、窓の傍で猫の鳴く声がした。尻尾を揺らし真っ直ぐこちらを見つめる猫は汚れのない白い毛が青空に映えて凄く綺麗だ 「お前、誰ん家の猫?」その猫は透き通った淡い水色の目で 2回瞬きをして去っていった。 それから毎日不思議な猫は窓の傍にやって来るようになった。 寒いときも暑いときも1日も欠かさず毎日、毎日。 ある日、猫がお腹を空かせているのではないかと思いたって、 人生で初めてキャットフードと鯖缶を買ってみた。 猫は今日も窓の傍にやってきて、ガサガサとビニール袋を鳴らす 俺の手を見ながら、いつものように尻尾を揺らしていた。 「猫、お腹空いてるだろ。これ食べるか?」 鯖缶を開け、猫の口元へ持っていく。猫は少し警戒しながらも 美味しそうに鯖缶を食べ始めた。 猫は丁寧に鯖缶を食べ終わり、手で口元を綺麗にしている。 「猫ってこんな器用なんだなぁ、人間みたいだ。」 白猫の綺麗な毛を眺めながら、その毛に手を伸ばそうとしたが、 猫は窓から降りて去っていった。猫は毎日やってきたが、 一向に撫でさせてくれない。まだ警戒されているのだろうか。 今日は彼女の命日で、しかも丁度1年目になる。 流石に今日は彼女のことを思い出してしまい、 なんで彼女が、と涙を流した。すると猫は初めて窓から部屋に入ってきて、俺の手に自身の頭を擦りつけて、にゃーと鳴いた。 猫のふわりとした毛が凄く心地よい。ひとしきり泣いたぐらいのところで「大丈夫?」とどこからか声がする。 誰だと思って顔をあげて辺りを見渡しても誰もいない。 「ここだよ!ここ!」と先程と同じく高い声が聞こえる。 ふと猫を見下ろした。「あ!やっと気づいてくれた。」猫が喋ったという驚きから猫から距離をおく。「酷いなー。せっかく会いに来てあげたのに。」と少し怒った声で喋る猫、その口調にどこか懐かしい思い出を思い出す。「私ね、生まれ変わったら絶対、猫になりたいな。」突然不思議なことを言い始めて、なんでと聞くと、彼女は「なんとなく!」と悪戯げに笑った。 そして『会いに来た』と猫の言った言葉を思い出す。 もしかして、彼女が猫になって会いに来たのかもしれないと思って、猫に話しかけようとしたとき、猫は姿を消した。『いつも見守っているからね』という彼女の声が聞こえた気がした。もしかしたら、彼女が1年という制限時間を条件に神様に頼んで 猫になって逢いに来てくれたのかもしれない。
水面下
飛び込んだ。白い泡に包まれた。視界が青になって、 思考とは裏腹に身体は呼吸をしようともがいた。 服が水を吸い重くなると、いくらもがこうとも 陸に上がることができない。冷たい水が寒かったけれど、 心は落ち着いていた。水に反射する太陽の光が神秘的だ。 誰がが走ってきた。その人は手を伸ばしたけれど、 少しだけ私に届かなかった。本当に少しだけ。 声が聞こえた。叫び声のようなものだ。 自分ごときにその人は助けを呼んでいるらしい。 馬鹿みたいだなぁ。と渦巻く思考。 走馬灯のようなものなのか、その中でぼんやりと思った。 そういえば、人間の感覚で最後に残るのは聴覚らしい。 嘘だと思っていた。