拓未

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拓未

七話「墓参り」

     九条詩織の死亡から二年後 家族全員が揃った時に撮れた写真を眺めていると2階にいる姉貴が話しかけてきた。 「真斗〜!詩織の墓参り行くよ〜!行く準備できてるの?」 真斗が口を開く 「あぁ…できてるよ、行くか。」 詩織の墓の前で手を合わせていると姉貴が話かけてきた 「もう、どうしたのよ? ぼーとしちゃって…体調でも悪いの?大丈夫?」 どうやら5分ほど同じ体制で手を合わせてぼーとしていたそうだ 「別にそんなんじゃねーよ… なんなら…二年前ぐらいからか、熟睡はできないにしても呪いが少し軽くなった気がするぐらいだよ…」 「二年前か…」 「わりぃな、嫌なこと思い出さしちまって…」 「ううん、大丈夫…真斗はどう思う?」 「何が?」 「詩織…真斗の背中にいると思う?」 「姉貴霊感あるのに見えねーのかよ」 「うん、どれだけ見てもいないの」 「何かの呪いに縛られているか、そもそも取り憑いていないか」 「ぜってーいる… あの時意識ぶっ飛ぶ寸前詩織の体に触ったんだ…もう冷たくなってて石みたいに固くなってて息してなかった…」 「そっか…じゃあやっぱり詩織の霊体は真斗に取り憑いてるんだね」 「聞いてるかー?いんなら出てこいよ」 「ほんと、真斗のこと大好きだったもんねお姉ーちゃんも会いたいなぁ」 「そろそろ返事してくれよ…」

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六話 「別れの挨拶」

酒呑童子が口を開く 「百と数十年…しばしの間に“起源の死霊”が戯れておる様じゃのう」 悪路王が口を開く 「面白れぇじゃねーか!蹂躙するか?」 酒呑童子が首を横に振る 「真斗の成長にはあと、数年の刻が必要じゃ」 悪路王が微笑する 「へっ、お前はそいつに過保護すぎんだよ」 酒呑童子は涼しい顔で 「妾が見惚れた男じゃぞ?当然じゃ」 悪路王は嬉しげに 「まぁ、開戦の狼煙は上がったってとこだな!?       だったら俺は…」 悪路王は真斗の首元を掴み、悪路王の目元まで掴み上げる。 「更なる呪いをお前にくれてやる… この先待っているのは“死”か“鬼”か好きな方を選べ… まぁ、どちらに行っても終着点は…        奈落の底だ…」 殲滅司令部 「九条隊員が頭部を損傷!!霊気が急激に低下!!一般市民も巻き込まれています!!」 「守れ!!ぜってー死なせんじゃねーぞ!!」 「第五殲滅部隊の医療班は!!?」 「現着まで残り40分!!間に合いません!」 「深川公園に災害級がまだ二体も残ってる!第六殲滅部隊は!!?」 「現着まで残り36分!!すぐの合流は不可能です!!」 「九条隊員は中級!!浅田隊員は上級なんだ!!災害級と戦わせるなんてウチらの責任だろ!!クソッ、今あそこは危険エリア!一般レスキューも入れられない!!探せ!!凪さんがじっとしてるはずないし…第四殲滅部隊が…霞隊長がやられるわけねぇ!!最短で医療班もそっち行かせっから!!だからそれまで踏ん張っ…」 「九条隊員の生命反応が…消滅しました…」 「え…?い、今…なんて?」 「だ、第四殲滅部隊…九条隊員の生体反応が消滅しました…」 「う、嘘…だろ…?んなわけ…ねーじゃん…九条隊員の…娘さんだぞ…?」 司令部が絶望に満ちたこの状況で速報が入る 『緊急事態発生!緊急事態発生!東京都区で侵略レベル40オーバーの災害級が国防プログラムLevel3を破壊!対象が街を破壊し進行中!災害規模の死傷者と被害が発生!複数体で深川公園に接近中!接触までおよそ359秒!』 「深川公園って…」 「浅田隊員と九条隊員がいるところ…」 「ふ、複数の災害級があと6分で接触…?」 「もう…防衛の手立てが…ありません…」     一方、浅田雄大は… 「おっと!!」 金髪の男の凭从影は雄大の攻撃を軽々と避ける 「へっw反応が遅れ始めてんじゃねーのかァ!!?」 「はぁ…はぁ…」 雄大の息が乱れ始める 金髪の凭从影が口を開く 「4体相手にした後だもんなァ?へばって当然か…まぁ安心しろ、お前を殺した後あっちの奴らも皆殺しだ」 雄大が金髪の凭从影を睨みつける 「させるワケないだろ」 (詩織の霊気が消失した…無事なのか…?綾香は…?真斗は…?あっちの状況はどうなってる…?) 必死で立ち向かってくる雄大を小馬鹿にした様子で 「残念だったな凭影?お前にとって俺は相性最悪!    お前の異能力には致命的な欠点がある        それは距離だ! どれだけ精巧なカウンターでも跳ね返りを避けられりゃ打つ手ねーよなァ!!!」 雄大が口を開く 「キミに忠告されるいわれはないよ」 金髪の凭从影が口を開く 「知ってんだろ!?異能力ってのは自分の霊気を燃料に発現する!! 俺とお前とじゃ、持って生まれた総量が違うんだよ!!! 打ち返すたびに減ってんぞ!!お前の貧弱な霊気がなァ!!」 「くっ…」 (僕の霊気は…他の隊員と比べても少ない…) 比嘉とバディで任務に行った時のことを思い出す… 比嘉が口を開く 「霊気尽きてんだろ?後はバディの俺に任せろって」 雄大が首を横に振る 「大丈夫…まだ、やれるから」 「へっ、またぶっ倒れても知らねーかんな!」 金髪の男の凭从影が口を開く 「諦めろ、俺は遠距離特化の浮遊系だァ!!!浮遊系は霊気を元素に変換し、飛行も可能な系統!!俺の元素は風…これで八発目!!行くぞゴラァ!!       干蛇螺(カンダラ)」 (恵まれた凭影じゃない…生まれ持った才能も…人より秀でた資質もない…僕の戦いはずっと…敗北から始まってた…)      浅田雄大の走馬灯 綾香が口を開く 「浮遊系?何それ?雄大にも苦手とかあるの?」 雄大が相槌を打つ 「僕、中距離戦までしか向いてなくて…昨日も比嘉を心配させちゃってさ…」 「ふーん、大変だね。殲滅部隊って」 雄大は微笑しながら口を開く 「人の役に立てて隊長になったら綾香とも結婚出来る、天職だと思うけど?」 綾香は顔を赤くしながら、そっぽを向く 「結婚してあげなーい」 「あははっ、それは困ったな」 「……雄大…」 「ん…?」 「絶対…死んじゃだめだよ」     「異能力…胡蝶の夢…」 金髪の男の凭从影が鼻で笑う 「はっ、また馬鹿のの一つ覚えかァ!?」 (馬鹿の一つ覚え。それでも…) 「少ねぇ霊気で足掻いても無駄なんだよ!!」 (それでも…) 「この一発でお前の霊気はゼロだァ!!」 (それでも僕は…)    浅田雄大の走馬灯 真斗の声がどこからか聞こえる 「俺雄大君のこと兄ちゃんだって思ってっから!」 詩織の声がどこからか聞こえる 「雄大君、血が繋がってなくても家族だよ!」    例え何回打ちのめされても…   敗北に染まった人生だったとしても…     受け入れてくれた皆んなに…     かけがいのない家族の為に… 綾香の笑い声が聞こえる 「あははっ、二人とも雄大のこと慕いすぎだってば!!」       この笑顔だけは…  命に代えても守り切らなきゃダメなんだ!!!  第三形態(サードタイプ)拒絶(リジェクト) 金髪の男の凭从影が口を開く 「オラオラオラァ!!!吸収も遅くなってるじゃねーか!!!燃料切れかァ!!?」 雄大が口を開く 「燃料ならまだ積んでるさ」 「アァ!!?とっくに空っぽだろーがァ!!んなもん何処にあんだよ!!」 「家族を守ると決めた覚悟の中にだ!! うお゛ぁ゛ぁ゛ぁあああーーー!!!      はぁ…はぁ…ぐっ」 雄大の体がふらつき、雄大はその場に跪く 金髪の男の凭从影は雄大の方へと向かってくる 「ケッ!!もう、打ち返す霊気も残ってねーのか… 敗者ほど醜いものはねーなァ… 跪いて命乞いでも、する気か?」 「………」 「まぁ良い、腹減ったからなお前は俺に大人しく俺に… 脳を差し出せ!!」 殲滅司令部 「浅田隊員の霊気が急低下!!災害級凭从影との衝突で敗色濃厚です!!」 「くそっ!!このままでは二人とも!!!」 (敵は災害級…上級隊員がここまで応戦できただけでも…) 「街への災害の拡大も止まりません!!!」 「司令官!国防プログラムLevel4の起動許可を」 「なっ!!?あれは政府の認可が降りてない試作段階だ!許可できるはずが!!」 「じゃあ、ウチらはなんのためにいるんですか!!」 「宮野くん…」 「街に被害を出して… 隊員の中にスパイがいることも見抜けなくて… 中級隊員や上級隊員をunkownや災害級と戦わせて!! ここで状況を言い合うだけで別部隊も送り込めない… そんなの…いる意味なんてないじゃないですか!!」 「葵さん…」 「国防プログラムLevel4を起動すれば、少なくとも区民の安全は担保されます!」 「し、しかし!!だからと言って無許可で使用するなど…」 司令部にサイレンが鳴り響く 「今度はなんだ!!?」 『東京都武蔵野市でハザードパーセプション(危険認知)!』 「武蔵野市!?葛西隊長の娘さんが入院している病院です!!」 『防衛レベル60オーバーの国防戦力が霊気を解放!』 「こ、国防戦力!!?味方か!!?誰だ!!?三人のうち誰がそこに現着している!!?」 「モニター映します!!!」  異能力…呪逝解剖(ベイン・ディゼクション)    宮野が口を開く      「凪さん!!!」        解剖出力8% 殲滅司令部の職員たちが焦り出す 「ちょっ、かかか葛西隊長が!!! いいい異能力を発現しています!!!」 『防衛レベル60オーバーの国防戦力がアルティメットを発動!!』 司令官が口を開く 「国家指定の“国防兵器”だぞ!!?葛西隊長から政府への申請は!!?異能力発動の承認は得ているのか!!?」 「むむむ、無許可で発現しているものと思われます!!」 「じょ、冗談…だろ…?」 『“VIRUS(ウイルス)兵器”始動までの予測時間10秒…9…8…』 (国防戦力級の隊長三人はそれぞれが“国防戦力”に分類されてる!!凪さんのCRISISコードは“VIRUS(ウイルス)兵器”!!憑依させた死霊の呪いであらゆるウイルスを培養し、伝染させるんだ!!) 「死霊何体分だ…!?」 「ふ、不明です!!」 (凪さんは13歳以降…自分に憑依させた死霊たちを一度も出してない…) 葵は昔、凪が任務に行った時のことを思い出す… 葵が口を開く 「今、何体憑依させてるんですか?」 凪が口を開く 「忘れた。いちいち数えてねーよ」 (それでも自我を保ち続ける唯一の生命体…) 「ば、ばら撒かれるぞ… この国の中枢に… とてつもないほどのウイルスが…!!!」 「急げ!!街に被害が出ねぇーように!凪さんがそれを気にせずに戦えるように!!大至急結界で包囲しろ!!」 『国防戦力のアルティメットに伴い東京都武蔵野市、練馬区、杉並区、世田谷区、西東京市、三鷹市、小平市、小金井市に緊急避難勧告を発令!職員は直ちに国防プログラムを実行してください!』 凪が口を開く 「葵、聞いてるな?」 「は、はい。聞いてます!!」 「誰も死なせるな。unkownだろうが災害級だろうが守り抜け」 (九条隊員と浅田隊員のことを心配して!!) 「その為に必要なものは総動員しろ」 (で、でももう打ってが…九条隊員も…浅田隊員だってもうぼろぼろで…) 「もし、あっちの戦場に雄大がいんなら浅田雄大を信じろ」 「え…?」 雄大が金髪の男の凭从影の腕を掴む 「待ってたよ」 「あ゛?」 「脳を餌にして油断したキミが近づいてくるこの瞬間を」 「お、お前!!どっからその霊気が!!!」 (完全にガス欠だったはずだろ!!!) 「代償と引き換えに未来から」 「み、未来だと!!?」 「キミの攻撃…まだ、食べただけで吐き出してなかったね」 葵が口を開く 「もう、動けないはずなのに…浅田隊員が反撃に!!?」 凪が口を開く 「大事なもんは目に見えねぇ、選択に迷ったらあいつを見ろ」 (でも、もう…今の浅田隊員の霊気じゃ…) 「その戦闘から、痛みから、泥臭ぇダサさから、あいつの覚悟を感じ取れ」       「覚悟…?」 「第四殲滅部隊浅田雄大は諦めるのを知らねぇ男だ」 第四形態(フォースタイプ)自動反撃(オートカウンター)     この攻撃を獏にあげます 金髪の男の凭从影は焦り出す 「なっ!!!まっ、待て!!離せ!!」 (こんな至近距離で食らったら!!!) 葵が口を開く 「霊気はもう底をついてるはずなのに!!何処にそんな力が!!」 金髪の男の凭从影は焦り口調で喋る 「お前じゃ届かねぇ!!俺にも!他の災害級たちにもなァ!!」 雄大は凭从影の腕を逃がすまいとさらに力を加える 「気にするな!!届かない分は命を削って補えば良い」 「うぎゃあああァァーー!!」 雄大の放ったカウンターは金髪の男の凭从影に直撃し、体は木っ端微塵に消えてなくなった。 「あ、浅田隊員が下級4体と…さ、災害級1体を殲滅しましたーー!!」 殲滅司令部全体から歓声があふれる 「まだだ!まだ九条隊員のエリアが残ってる!!!」 (災害級の群れの接触まで残り二分!!) 凪が口を開く 「人命を最優先にしろ、国民も隊員も死なせるな被害を最小限に留めろ」 (国防プログラムLevel4の起動の許可さえ出れば…!!) 「葵…好きなように動け、全責任は俺が取る」 「はっ、はい!司令官、いいっすよね!!?」 「あ、ああ!許可する!!」 「総員直ちに国防プログラムLevel4起動開始!」 「「「了解!!」」」 ガグラを含めた三体の凭从影は葛西凪の前で跪き苦しみ出す 「あが…あがが……」 ガグラの横にいる女の凭从影が苦しみながら口を開く 「か、葛西凪が来るなんて…」 ガグラも苦しみながら口を開く 「聞いて…ねぇぞ…」 凪が口を開く 「ア゛ァ!?お前らの狙ってんの俺の娘だからぁ」 ガグラの横にいる男の凭从影が苦しみながら口を開く 「ぐぅぅ!!バ、バケモノめ…!!何つー異能だ…」 ガグラが焦り口調で口を開く 「クックソが…こんなウイルス俺に効くわけ…」 凪は空気が凍るような冷たい口調で話し出す 「実験体(モルモット)がいちいち吠えんな     まだ8%しか出力してねーぞ      リンネは何処だ?」 ガグラが震えながら口を開く 「教えるわけ…ねーだろうが…」 「そうか…」 「VFSの場所は…?お、お前ら鈴鹿御前を何処に隠した…?」        「温羅の呪腕」 凪がそう唱えると、周囲に漂っていたウイルスが彼らの元へと集まり始めた。それらは次第に形を成し、やがて巨大な腕となって現れる。その腕は勢いよく伸び、ガグラとその隣に立っていた男の凭从影を勢いよく掴み上げた。 「へ…?」 ガグラたちはなにが起こったか把握できず困惑している次の瞬間…… 「がぎゃッ!!!」 ガグラと男の凭从影を握りつぶす 凪は空気が凍るような冷たい口調で話し出す 「聞いてんの俺なんだけど?いちいち吠えんなって言ったよねぇ〜」 女の凭从影が口を開く 「娘がこの病院にってことは…ガハッ!ガハッ!…昨日リンネ様が始末したのが…お前の女か」 「おい、実験体(モルモット)こっちは気が立ってんだ…前頭葉解剖すんぞお前」 女の凭从影は苦しみながら笑い出す 「ぐがぁ…!!ははっ…そうか…そりゃ傑作だ… お前の娘がレア個体“未完の憑依系”だってことは…リンネ様も把握してる…アタシらが死んでも…ガハッ!!ガハッ!! 何回でも…何千回でも別の凭从影が攫いにくんぞ… 歓喜の瞬間だ…! お前もそう思うだろ…? お前の娘は醜い蟻から純然たる凭从影にアップデートされる…! 妻も失い娘も奪われるんだ…! 蟻の主にはおあつらえ向きな結果だ…!」        「解剖出力18%」 女の凭从影が腑抜けた声を出す 「へ…?」 「あ〜あ〜もう声も出なくなっちまったなぁ」 「ア゛がガがァ…ぐ、ぐるじ…」 「お前だけ生かすつもりだったが…面倒くせぇなぁ…      やっぱ死んどけ」         「あなた…」 (この霊気は…麻衣!!俺を止める為に…) 「あの凭从影を生かして遥香を守ってくれようとしてたんでしょ?」 (その可能性を…消すとこだった…) 「昨日、お帰りって言ってあげられなくて…ごめんね…」 (なに…言ってんだ…) 「朝行ってらっしゃいも言えなくて…ごめんなさい…」 (そうか…俺は昨日からずっと…この声が聴きたかったのか…) 「あの時俺が…そばにいてやれたら…」 麻衣は首を横に振る 「ううん…」 「あいつらから麻衣を…守ってやれたら…」 「そうじゃない…今までたくさん守ってもらったよ…保健室でスポーツドリンクをもらったあの日から…あなたはずっと…大切な時間を私の為に使ってくれた…」 凪は二人で一緒に過ごした時間を思い出す 「お弁当作って来たの!な、凪君と一緒に食べたい!」 「て、テスト勉強…一緒にどうかなって…」 「私のわがままをいっぱい聞いてくれた…」 「お気に入りのヘアピン凪君にあげる!お揃いにしよ?」 「また、実験してる〜w今日のお弁当ハンバーグだよ〜」 「両親がいない私に…居場所を作ってくれたのはあなたよ 私に生きる意味を与えてくれたのはあなただから…だからね…あなたと一緒にいられて麻衣はとっても幸せでした!」 「俺も同じだ…」 「遥香の事…お願いね…」 「ああ…」 「あと、真斗君のことを…導いてあげて」 「ああ…わかってる… …麻衣…?」 「…ん…?」 「俺に憑依するか…?」 「あなたとの“約束”があるもん…私はそれを全うします」 「…分かった。“武霊具”」 そう唱えると凪の左手に注射針のようなものが銃口についた銃のようなものが現れる 「あ゛ぎゅるる…」 女の凭从影に凪は近づく、そして首元にその針を差し込む 「混種ウイルスでお前の意識を改ざんする…ついでに体も楽にしてやんよ。」 女の凭从影が口を開く 「ウッ…アタシ…アタシが…葛西遥香をコロした…誤って…コロしてしまった…」 「そう巣に戻って伝えてこい」 「“未完の憑依系”はもういない…アタシが…コロしたから…」 麻衣が口を開く 「ありがとう…遥香の未来を繋ぎ止めてくれて…」 凪が口を開く 「隊長だが親父だ…それだけのことだ…」 「最後だからもう少しだけ…ありがとう言わせてほしいな…振り返らずに聞いてね」 「ハンバーグ美味しいっていってくれて、ありがとう… ずっとヘアピンつけてくれてありがとう…  いつも家族を大切にしてくれてありがとう…    最高のパパでいてくれてありがとう…         あとね…          あと…     私を選んでくれてありがとう…       大好きだよ!凪君!!        じゃあ…行くね…」 (俺は…何か…してやれただろうか…麻衣にくれた分を…返せてただろうか…)         「麻衣…」       凪は後ろを振り返る 「もう…顔ぐちゃぐちゃだから振り返っちゃダメって言ったのに…幽霊だって泣いちゃうんだよ?」 「最後だろ?これくらい大目に見てくれて…口で言うのは得意じゃねぇ…けど…見送りの言葉だ…自然と口からでやがる…        愛してる…」   二人は抱き合う、そして涙を流す    「もっと一緒に…いたかったよぉ…!」     「離れてても…ずっと一緒だ…!」        麻衣は頷く         「うん!」       「じゃあな、麻衣…」         「さよなら」

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五話「命滅覚醒」

詩織は全身の痛みに耐えながらも、歯を食いしばり、彼女は立ち上がる。そして自分の間合いにいる化け物を“朧火”でなぎはらう。 「逃げ道がないことくらいわかっています…逃げれないなら…逃してくれないんだっら…」 (「脳が壊れる瞬間まで狩って狩って狩りまくるんだよ」 比嘉先輩との話が脳裏をよぎる) 「お願いお兄ちゃん…詩織に力を貸して!!最後まで…戦います!!」 リンネが隣にいる女の凭从影にしゃべりかける 「あのガキ、動物系か…」 女の凭从影も詩織を実験動物でも眺めるみたいに観察する。そして、リンネに話しかける 「まだ、獣人化は出来ないみたいね」 詩織は上空に移動し、リンネを含む凭从影に対し、広範囲に青い炎を放つ 「青焔神威!!」 詩織は呼吸が乱れ出す 「はぁ…はぁ…」 しかし…詩織が放った青い炎はリンネがはった水の壁に消えていく 「ぐっ…!み、水のシールド!!」 女の凭从影はリンネに話しかける 「この子、“未完の憑依系”じゃなかったわね」 「ああ、だがこれで絞れた…ただの人間だと思って見過ごした昨日のガキ…あれが“未完の憑依系”だ」 「あの子のお母さん…異能力も憑依系も知らなそうだったのに〜。私たちの目を欺くために…ううん、娘を奪われないために異能力使わなかったんだ〜」 「こっちは蟻を始末する」 「ええ、あとは病院を襲撃するガグラ達の仕事!ふふっ昨日のあの子どんな凭从影にアップデートしようかしら♪」 そんな会話をしている間、詩織は敵の攻撃をくらっても、ものともせず自分の間合いにいる凭从影を殲滅する。だがそれと同時に、詩織は身体を動かせば動かすほど彼女の服は赤く染まっていく 「はぁ、はぁ、残りあと…古谷さんを含めて四体、あの水で攻撃されたら…呪いで動けなくなる…だから…攻撃される前に…脳を潰される前に!!     最大火力の一撃を!!」 詩織は手のひらから同時に三種類の炎を発現させる 女の凭从影は興味津々な様子で詩織の異能力を観察する 「ん…?三種の炎?」 イオリも口を開く 「何この霊気」 詩織がリンネらに三種の炎を放とうとした次の瞬間   詩織の目の前に白いものがちらつく 「え……?雪が…降ってきて… あぐあ゙あっ!!!痛いっ!!うぐっ…!!うあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あああ…!!!」 詩織の様子をみてリンネが無表情で口を開く 「呪いか…」 女の凭从影も口を開く 「あら…可哀想〜凭从影には呪いなんてないのに〜」 「痛いッ痛いッ!!あ゙あ゙あ゙あ゙ああー!!!」 古谷がニヤニヤしながら詩織に近づく 「ぎゃっはっはぁ〜!!呪いで冷たいもの触れないんだっけ〜!?あとみせてなかったけど僕さぁ〜少しの間だけこんなことも出来ちゃうんだ〜 異能力…視覚化(ビジュアル)剣を創造(クリエイト)!」 じゃあな、九条詩織wお前はここで脱落だああー!」 「い…いや…」 詩織は目を閉じる 剣が何かに突き刺さる音が響き渡る 「は…?」 古谷の腑抜けた声で詩織は目を開ける、そこにいたのは… 「ぐっ…!!ぐがっ…!!!」 「お、お前は…!」 「遅くなっちまった…悪ぃ詩織…一人で辛かったな」 詩織は涙を流しながら口を開く 「お、お兄…ちゃん…!来て…くれたの…?でも、あ、脚が…」 「ははっ、こんなの気にすんな何ともねぇーよ!」 真斗は自分の脚に貫通している剣を抜き取り詩織にフードをかぶせ、抱える 「掴まれるか…?ほら、家に帰るぞ…」 「うん!」 古谷は笑いながら口を開く 「誰かと思えば“黒の亡霊”だっけ?出来損ないの兄じゃ〜ん!?」 リンネが反応する 「兄?」 「そこどけよッ!」 古谷は真斗の背中を蹴り上げる 「ぐっ…」 蹴られた衝撃で真斗の体制が崩れる、崩れたことにより上空から降ってきた雪が詩織の顔をかする 「あぐぁっ!!!」 真斗はポケットにしまってたハンカチで詩織の顔を拭う 「痛てーよな?すぐ屋根があるとこ行こうな!」 (ぐっ…脚が…!そんなこと考えてる場合じゃねぇ!詩織の肌に雪が触れるのはそれこそ刃物で刺されてんのと変わんねぇ) その真斗の姿をみてイオリが口を開く 「どう考えたらこの状況で逃げられると思ったんだろ?」 (俺には異能力なんてねーし、戦う術もねー!) イオリが出した化け物が真斗に攻撃をする 「ぐはぁっ!!」 (でも、妹が苦しんでいる時に、無条件で手を差し伸べらんねーならそんなもん、      兄貴じゃねぇ!! 逃げることしかできねーなら俺は今、それをやるだけだ!!) リンネが巨大な氷柱を手のひらで作りながら口を開く 「空虚の再会は済んだか?気が変わった俺がやるお前がそのガキの兄なら始末しておく必要がある」 真斗はリンネに喋りかける 「どうして詩織を!!なんでお前らは人間を襲うんだよ!!?」 リンネは淡々とした口調で 「絶望とは“知る事”だ、何も知らずに死ね」 「ぐっ」 (詩織だけは…詩織だけは守らねーと!!) 真斗は詩織を庇うように覆い被さる 辺り一面ゆきが降り積もっていくなかリンネの声が響き渡る      雷焉 一瞬何か光ったと思いきや二人の悲鳴が響き渡る 「うぐあ゙あー!!」 女の凭从影が口を開く 「あら、今度は直撃」 イオリも口を開く 「脳も壊れたね」 真斗が体に力を入れようとするが (か、体が…動かねぇ…) イオリが顔をしかめる 「生きてるし、あいつなに?」 女の凭从影が口を開く 「でも、二人とも始まっているわ“影の離脱”」 リンネが口を開く 「死霊の魂を宿す者が脳を破壊された場合、影は肉体を離れ肉体は数秒後で死後硬直を終え残骸と化す躯となって散れ」 真斗がかすれた声で詩織に話しかける 「詩織…海見に行こうな…」 「え…?」 「いつか入ってみてーって…いってたろ?」 「連れてって…くれる…?」 「ああ、帰ったら屋上で…雪だるまも作らなきゃな」 「うん…お兄ちゃんと一緒に…作る…」 「詩織…」 「ん…?」 真斗の瞳から大粒の涙が次々と溢れ出した。その涙は頬を濡らし、止めどなく流れ落ちていった。 「こんな兄ちゃんで…ごめんな…」 「もう…昨日も同じこと…言ってたぁ…」 「こんな誕生日に…しちまってごめん…」 「ずっとこのお守りが…勇気をくれてたんだよ…」 詩織が首から下げているお守りに目が行く 「これって…ははっ…まさかあの日からずっと首から下げてたのか…」 「ずっとこのお守りが…勇気をくれてたんだよ…」 「え…?」 「お兄ちゃんが詩織の事…ずっと守ってくれてたんだよ…」       一年と三ヶ月ほど前 「ねぇお兄ちゃん、神社に来て何するの?」 「あー、ちょっと用があって嫌だったか?」 「えへへ、私はお兄ちゃんと一緒に出かけられるなら何処でもいいのです!」 「そっか……おっ、あった!」 「お守り?」 「詩織来週から殲滅部隊入んだろ?」 「え!?プレゼントしてくれるの!?」 「好きなの選んでいいぞー」 「うん!」 「怪我とかしねぇように健康のお守りとか…」 「ん〜、あっ!!詩織これにする!!」 詩織が手にとったのは縁結びのお守りだった 真斗は困惑する 「え?な、何故に縁結び…?彼氏でも出来たのか?」 詩織が頬を膨らます 「違うよ!!知らないの!?縁結びの本来の意味?」 真斗は首をかしげる 「え?男女の縁を結ぶって効果とかじゃねーの?」 「まぁ、そういう意味もあるけど…それだけじゃないんだよ? 縁結びはね色んな縁を結んでくれるんだよ!それは恋人限定じゃなくて…友人関係や家族も入るんだって!!だから、これからもずーっとみんなと一緒にいられるようにこのお守りにする! だって一緒にいられるってことは健康ってことだもん!」 「それお守りのキャパ超えてね…?」 「超えてないもーん!」 詩織は真斗に買ってもらったお守りを首からさげる 「ねえねえお兄ちゃん!似合ってる?」 真斗は笑い出す 「お守りの主張強すぎんだろw!普通バックとか財布の中に…」 「ここがいいの!このお守りは詩織の一部なのです!」 「バカにされても知らねーぞ…」 「だってお兄ちゃんが買ってくれたの嬉しいんだもーん!」 「そっか、詩織…殲滅部隊入部おめでとう!」 詩織は満面の笑みで口を開く      「ありがとう!」 「お兄ちゃん…いつも守ってくれて…ありがと…」 「ちげーだろ…俺がこんなんだから…詩織に負担ばっかかけちまって…」 「いつも優しくしてくれて…ありがと…」 詩織がどんどん冷たくなっていくのを感じる真斗 「詩織…?」 「目…見えなくなって…きちゃった…」 「え…?おい…詩織?」 「さっきから痛みも…感じなくて…」 「詩織もう少ししたら兄ちゃん足動くようになっから!そしたらあったかいとこ行こう!なっ!!?」 「最後にお姉ちゃんにも…会いたかったなぁ…」 「何言ってんだ!!最後じゃねーって!!」 (何で動かねーんだよ…!!どうして妹が泣いてんのに…助けてやれねーんだよ!!!) 「お兄ちゃん…いつも詩織のお兄ちゃんでいてくれて…ありがと…」 詩織の頭をそっと撫でる 「んなの…当たり前だろ…」   「お兄ちゃんは…詩織のこと好き…?」       「ああ…大好きだ…」      遠くから姉の声がする       「真斗!!詩織!!」 「あ…お姉ちゃんの声…えへへ、詩織もお兄ちゃんのこと…だいす すると、細長い氷柱が真斗と詩織の頭部を貫通しそのまま地面に突き刺さる 「がはああっ!!!」 姉はその場で立ち尽くす 「え…?」 リンネが口を開く 「耳障りだ、喚くな」 (しお…り…?なんで…こんなに…冷てーん…だよ…姉貴…詩織を…連れて帰…れなく…て…ご…め……) 「ま…さ…と…し、し…お…り…?脳を…真斗と詩織が脳を…!!!ひぐぅ…ひゔうう…        真斗…        詩織… や…だよ……こん…なの…い゙やあ゙あ゙ああーーー!!」 リンネはイオリに話かける 「用は済んだ、あと始末たのんだぞ」 「はーい」 リンネが女の凭从影に話しかける 「ネネ、帰るぞ」 「うふふ、可愛い声で哭いてるわね❤️」 赤いフードを被った男(ガグラ)が口を開く 「マジでいんのか〜?“未完成の憑依系”なんてレア個体が」 ガグラの右にいる女の凭从影が口を開く 「生捕りとかダルいし…人体実験させてよ」 ガグラの左にいる男の凭从影も口を開く 「いなかったら病院ごと破壊だな」 すると、そこに白い白衣を纏った男が病院の前で立ち尽くしていた ガグラが口を開く 「ん?こいつ霊気放ってんじゃねーか凭影か?」 白衣の男が口を開く 「あーハズレか……リンネ連れてこいリンネ」 ガグラが声を荒げる 「あ゙あ゙!?」 「二回も言わすな、俺いま気が立ってるからさぁ〜!」 ツノが生えた女とツノが生えた男が真斗からでてくるそしてツノが生えた女が地面に横たわった真斗の隣に座り、口を開く 「真斗、今日まで妾の呪いによう耐え忍んだ。妹を救ってやれゆことには悔いが残る…じゃが、」 ツノが生えた男も口を開く 「フッ、お前と“血盟”を結べる奴が再び現れるとはな」 ツノが生えた女が口を開く 「妾の呪いは異質じゃ…力を得るには契約を果たさねばならん、少なくとも十と三年生きておる限りは妾に霊気を献上し続ける事…そなたが死するその瞬間まで憑いた悪霊は一度の守護もせぬ事…」 ツノが生えた男が口を開く 「霊気を奪われて呪われるだけの人生はどうだ?まぁ、後者はたった今解けたがな」 綾香が涙を流しながら口を開く 「しゅ、酒呑童子に悪路王…真斗の影と最初に取り憑かれた悪霊が…で、出てきて…う、ゔゔぅぅ…」 悪路王が口を開く 「普通はもって数日…それを十五年もしなねぇーとか面白れぇ依代だ」 酒呑童子が口を開く 「故に契約は果たされた…真斗…先天的に影を宿した者…その者が覚醒する契機は三種類ある」 綾香は困惑する 「え…?でも昨日…二種類って…」 酒呑童子は自分の指を切り血を真斗の口に垂らし、口を開く 「妾の異能は特別じゃ      “命滅覚醒” そなたは滅びて創めて“百式の異能”を手にし再生する」

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四話「約束」

空は紫と橙が溶け合うころ真斗は深川公園に向かうため走っていた 「詩織!!くそ、詩織に電話が繋がらねぇ!!気温が下がってきやがった!頼む詩織!逃げてくれ!」 同じころ綾香も深川公園に向かい走っていた (詩織と真斗と連絡がとれない!!危ないから雄大が行くなと釘刺してたけど大人しくまってるはずがない!!相手は凭从影…私が真斗より先に着かなきゃ…詩織と真斗が!あったあそこの公園だ!!え?何あれ…なにかいる!!) そこには4体の凭从影が道を塞いでいた そのうち一人の凭从影が口を開いた 「ここは立ち入り禁止だ…人間!!」 隣にいる女の凭从影も口を開く 「美味しそうな…脳…」 綾香は凭从影に口を開く 「どいて」 「誰に命令してんだぁ!?中で仲間が遊戯中だ!」 「お前は見張りの俺たちに脳だけ置いて死ね!」 (何でこんな奴らが…!!いつから…私たちは…人間は…こんな奴らの食べ物になったの!!?) 綾香は最近のニュースを思い出す 『千葉県市の路上で六体の遺体が見つかりました。何も激しく頭部を損傷しており…』 『連日の死亡事件ですが我々人類の脅威になる知的生命体が存在している可能性が高く…』 『今週だけで9852名ものの方々が命を落としました。この戦後最大の危機に我々は国家指定の“特殊殲滅部隊”を結成し、未知なる生物と徹底抗戦することを国民に誓います!』 綾香が、口を開く 「妹が中にいるの…通して!」 一体の凭从影が猛スピードで突っ込んでくる 「俺様に命令してんじゃねぇっていって…いってんだろーが!」 綾香はその攻撃をすばやく交わし、その凭从影に回し蹴りをする 「時間がないの!どいて!はああっ!!」 しかし、凭从影は綾香の攻撃を止める 「なんだぁ?この蹴りの威力は!!?」 (やっぱり、凭从影には…通用しない…!!) 「つーかお前の頭、よく見りゃ影があるじゃねーか!髪染めて隠してたのかぁ?」 「違うし」 「じゃあ、なんだ?お前凭影だよなぁ!?獲物みーっけ!!」 そういい凭从影は綾香の腹部に一撃をいれる 後ろにふきとばされる 「ぐはっ!!!ゲホッ!ゲホッ!」 「お前覚醒前か、なんで異能力を覚醒させねぇ?」 「それを否定するために…髪を染めてるの…」 「あ?」 「朝起きて鏡を見れば絶望するから…呪いのことを考えると死にたくなるから…」 「なんだ?その理由は?」 「あんたにはわからないわ…女に生まれたの…男を愛したいし、愛されたいに決まってるでしょ?    だからこの呪いを否定するために…     私の視界から影を消すために…        女でいるために…     髪を染めてるのよ!!!」 「くだらねぇ、寝言は死んでから言え!!脳を潰してやるよ!!」 「ぐっ!速い!!避けられない!!」 「異能力…胡蝶の夢…第三形態(サードタイプ)、拒絶(リジェクト)」 気がつくと雄大が綾香の前に立っていた。 凭从影の攻撃が飛んでくる。 雄大が異能力を発現する。すると、攻撃に使用しようとした凭从影の腕が雄大の間合いに入った途端に突然消える 「なっ、俺の腕が…消えた!?なんだ!?このサークルは…?」 「第四形態(フォースタイプ)、自動反撃(オートカウンター)この攻撃を、獏にあげます」 すると消えたはずの腕が凭从影の頭に突き刺さる 「グッグガーー!の、脳をやられた?!なんだ今の攻撃は…!!?」 綾香は口を開く 「雄大!?なに…?今の…?」 雄大が口を開く 「遅くなってごめん。もう、大丈夫だから」 ほかの凭从影も雄大に攻撃をしかけようとする その様子をみて雄大を守る素振りをみせる 「雄大!あいつらの攻撃がくる!早く逃げて!」 雄大が口を開く 「綾香、俺は殲滅部隊の隊長になるまで逃げないよ」 「え?」 (子供の頃の僕は…何一つ取り柄なんてなかった…)       十年ほど前 「おい弱虫!!化け物女っていえよ!」 三人のいじめっ子が雄大を取り囲み暴行を加えている 雄大が口を開く 「い、いやだ…」 いじめっ子の一人が口を開く 「あいつは幽霊がみえる化け物女だぞ!?」 「ちがう…綾香は化け物女じゃない…と、取り消して…」 (チビで…非力で…) 「チビで非力なお前に発言権なんてねぇーの!」 そういい、雄大の顔を踏みつける 「がはっ」 (ずっと、バカにされ続けた…) 「おまけに疫病神!あいつに告ったアユトもダイキも帰りに万引きしたって捕まったんだよ!」 「ちがう…それは…」 「は?なんであんな化け物女の味方してんの?」 「苦しんでるから…」 「はぁ?」 「綾香がそれで一番苦しんでるから!!!」 「意味わかんねー、化け物女っていわねーならどうなるかわかって…」 「あんたたちなにやってんのよ!」 綾香の怒声が響く 「やっべッ、化け物女だ!!に、にげろッ!おれたちも捕まっちまうぞ!」 綾香が雄大に手を差し出す 「あんた、また叩かれてたの?」 「ははっ、一言で追い返すなんて…やっぱり綾香はすごいね…」 (お父さんとお母さんが行方不明になってから僕はお父さんとお母さんの上司だった人…綾香のお父さんに拾われた…) 綾香の父が口を開く 「ウチで一緒に暮らそう、まぁ…ちょっと賑やかすぎる家だけど…」 綾香が口を開く 「ほら立てる?帰るよ!」 (そこで会った同い年の綾香は…僕にないものを全部持ってて…) 「うん」 (凄く眩しくて…いつの間にか…好きになってた…) 「あんた異能力者なのにね…どうしたものか…」 「ははっ、僕の異能は僕の悪夢を食べてもらえるだけでなんの役にも立てないから…ただ一日中眠いだけ」 「その能力真斗にも分けてあげてー」 (でも綾香はずっと…影で苦しんでて…) 「ていうかあんた、化け物女って言えばよかったでしょ?」 (顔には出さないけど…縛られた呪いに絶望してて…) 「言わないよ」 (だから、僕は誓ったんだ…) 「だって、好きだから」 「え…?」 (綾香が女の子の幸せを感じていられるように…いつか“幸せ”って笑ってもらえるように…) 「僕は綾香のことが大好きだから!!」 (どんな目にあっても…犯罪者にされても…僕だけはずっと…真っ直ぐな気持ちを言い続けるって…誓ったんだ…) 綾香が頬をあからめながら急いで雄大の口を押さえる 「バ、バカッ!!そんなこといっちゃダメって知ってるでしょ!?」 「んんん…!!」 「もう…弱虫のくせに…」 (それと、もう一つ、決めたこと…) 「強くなったら…?」 「な、なにっ?」 「もし僕が殲滅部隊の隊長になったら結婚してくれる?」 綾香は頬をさらにあからめる 「ちょっ、バカ!!いきなり何言ってんのよ!?あんたみたいなチビで弱虫が隊長になれるわけ!!」 「もし、なったらって話」 「もう…呆れた…好きにすれば?」 「ははっ、やった!」 (だから僕は…何の取り柄もない僕は…誰よりも努力していつか絶対綾香につり合う男になるって…) 「約束だからね!」 (決めたんだ!) 警察が雄大にはなしかける 「キミ、置き引き犯の顔に似てるね?ちょっと交番まで来てもらえるかな?」 「え…?えええーー!!??」 それから僕の異能力は何段階も進化を遂げた 綾香が口を開く 「雄大あんた…また強くなったの?」 「一日六時間の特訓を欠かしたことはないけど?」 綾香は苦笑いをする 「え…?そんなに…?努力しすぎにも程があるでしょ…」 そんな話をしてる間にもう一体の凭从影が攻撃してくる。 しかし、その攻撃も雄大が展開したサークルに飲み込まれる 雄大が口を開く 「悪夢しか食べることしかできなかった、この異能力がいつの日か現実世界で僕に迫る危機を食べてくれるようになった…さらにその先には…第四形態は“自動反撃”半径一メートル以内に侵入した如何なる攻撃も喰らい尽くし、そしてこの一言で反撃に転じる。“この攻撃をバクに捧げます”」 「ギッギヤヤー!!」 その凭从影はその場に倒れ込む 綾香が口を開く 「す、凄い…」 雄大が口を開く 「綾香ここは僕に任せて!」 「うん!」 「綾香は詩織のところに早…zzz」 「いや、寝るな戦闘中だよっ!!」 「異能力…十戒」 「十戒って…!!!」 リンネの後ろにいる女の凭从影は不満そうにリンネに話しかける 「あら…三明の剣は使わないのね…久しぶりに見たかったのに…」 「直接手を下す必要もない…     5の戒…雷焉」 リンネの放った雷焉は上空から詩織にめがけて降り注ぐ 詩織も素早く反応し、自分の頭上に炎のシールドを張る。 雷焉は詩織のシールドに激しく衝突したが、その威力は予想以上で、シールドは揺らぎはじめた…詩織はシールドの崩壊を防ぐために、頭上に炎のシールドを集中させた… しかし、頭上にしかシールドで防いでないことが凶とでてしまう… なぜなら、雷焉は地面にも降り注がれており、その余韻が詩織を襲う 「ぐっ…あ゙あ゙あ゙あああーーー!」 「ほう、炎のシールドで直撃は避けたか」 すると、リンネの後ろにいる金髪の男の凭从影がはしゃぎ出す 「おっ!あっちにもデケー霊気ぶち上がってるじゃねーか…そいつは俺の獲物だ!!とるんじゃねーぞイオリ!!」 リンネの後ろにいる片目が変容した男の凭从影が口を開く 「はぁ…また勝手な行動を…行きませんよ、勝手にしたらどうですか?」 金髪の男の凭从影はイオリという凭从影に 「あっそ!後で来ても遅いからな!!」 と言い捨てて、霊気が立ち昇っている方に飛んでいく。 詩織はその場に崩れ落ちる 「力が…入らない…」 リンネは視点を古谷に向ける 「古谷…私の計画にお前の異能力は必要だ挽回のチャンスをやる…トドメをさせ」 「はい!!リンネ様!」 一方、第四殲滅支部では… 「第四殲滅部隊、九条隊員と浅田隊員が応戦中です!」 「古谷隊員がスパイだったなんて…くそっ、なんでもっとはやく気づけなかったんだ…」 「今は悔やんでる場合ではない…敵の個体数と侵略レベルは?」 「個体数は8、侵略レベル31…下級4中級3上級1です。」 「チッ!数が多いな!至急霞隊長に連絡!出動を要請しろ!!」 「だ、第四殲滅部隊通信途絶です…!!」 「なに…?!や、やられたのか…?」 「じゃ、じゃあ凪さん!凪さんに連絡して!」 「葛西隊長も通信が繋がりませんッ!」 「なっ!一体なにが…!!?」 「ざけんな!!敵の目的はわかってる!九条隊長の不在を狙われてんだよ!VFSだけは絶対に奪わせないからな!!」 「嘘…何これ…?」 『東京都でハザード・パーセプション 侵略レベル60オーバーのunkownが出現』 「ろ、60!?ア、unkownだと!!?」 「昨日現れた個体と同じか!?」 『加えて東京都三カ所で侵略レベル40オーバーの災害級を複数体確認。職員は直ちに国防プログラムを実行してください!』 「複数体の災害級が三カ所にって…こ、こんなの…」 「街が…消し飛ぶぞ!」 「あ、一カ所は病院が狙われています!!ここって葛西隊長の娘さんが入院しているところじゃ…!」 (侵略レベルは普段霊気を抑えてるあいつらが戦闘時にだけ放出する霊気を感知して危険度を数値化したもののこと1〜19は下級、20〜29は中級、30〜39は上級にランク分けして隊員の等級と合わせてるでも…災害級はこっちの副隊長、いや一部の隊長クラスとさえ同等…unkownに至っちゃ更にその2ランクも上…未確認も含めてこの世に6体いるといわれている死霊の頂点…“悪童六鬼”を影にもつ、最悪の凭从影…今の人類じゃ…対処不可能な生命体だ!) 「第五、第六殲滅部隊にも出動を要請します!」 「くそっ、凪さんマジでなにやってんだよっ!」 古谷が詩織に話しかける 「あははは、君が僕たちに勝てるわけないじゃんw」 「古谷…さん…?さっき凭影になるって…」 「バッカじゃないの〜!?協力するわけないし!リンネ様がいらっしゃる風を感じたんだよ!」 (騙されて…たんだ…) 詩織は麻痺した自分の身体に再び力を入れようとする 「ぐっ…!」 必死で立とうとする詩織をみて古谷が得意げに話す 「無駄w無駄w!ね〜知ってる?!リンネ様が悪童六鬼だってこと!!怖いよねw?地縛系、動物系他の系統も全部そう!6体ぜ〜んぶ凭从影だよ!?“起源の死霊”をもたない凭影…いや、醜い蟻どもに勝機なんてないからぁ〜!!」 「そ…そんな…」 (ひ、比嘉先輩に聞いたことがある…死霊の頂点に君臨する悪霊が6体いるって…その中の一体の異能力が…十戒…) その時、兄…真斗との走馬灯をみる 「危なくなったら逃げろ。約束な」 (にっ、逃げなきゃ…このままじゃ…) 詩織が逃げようと判断したその時… 「異能力…才華転生」 リンネの後ろにいる片目が変容した男の凭从影が異能力を発動する… すると…2mを超える人の形をしていたであろう怪物が大量に地面から這い出てくる。そして瞬く間に詩織の周りを取り囲む 「くっ…」 「必要なら1000体増やす? …あ、飛んでも無駄だから」 「せ、1000体!?……キャッ!!」 詩織がその言葉に唖然としているとその怪物から物理攻撃をうけ後ろに吹き飛ぶ (に、逃げれない…) その時、比嘉先輩との走馬灯をみる… 「九条、早く食わねーと麺伸びんぞー!」 詩織は涙を浮かべながら口を開く 「また…一人、隊員が亡くなりました…比嘉先輩はなんで普通にしていられるんですか…?」 比嘉は困ったような顔をしながら口を開く 「えー?重い重い…!空気重いから!!」 「は、はぐらかさないでください!!」 比嘉は自慢げに 「あいつ上級2体やったらしいぜ?ヤバくね?」 「そ、そこじゃないです!どれだけ倒しても凭从影は増え続けて…その度に隊員の命が奪われてて…こんなの私…」 「想像してみ?」 「え?」 「もし凭从影の前で自分の最期を悟ったらどーする?」 「か、考えたく…ないです…」 「ははっ、オモロい答え!」 「じゃあ、比嘉先輩は…どうするんですか?」 「んなの決まってんだろ?脳がぶっ壊れるその瞬間まで狩って狩って狩りまくるんだよ! その一撃がその道を歩く少年の明日を作ってるかもしれねぇ…そのダッセー最期が仲間の意志を奮い立たせるかもしれねぇ」 「仲間の意志ですか…?」 「ああ、分かってると思うけど俺たちは圧倒的弱者だ!国の未来を護ろうなんて不明瞭にもほどがある…だから今日、今日の一日だけ!殲滅部隊五六人の少ねー命を積み重ねて明日に繋ぐんだ!!それが365回続きゃあ一年は街の人たちが笑っていられる!」 「さ、365人もいないじゃないですか…」 「ははっ、小せーことは気にすんな」 「なんですかそれ…」 「九条?」 「はい…」 「いつも仲間の死に慣れろっつってわりーな… 先逝く仲間を誇ってやれ!」 どこからか電話のアラームが聴こえる… 「比嘉…先輩…?」 「お前らが見知らぬ少年少女の今日を護ったんだぞってな!」 (……………比嘉先輩の言葉の意味…わかりました… お兄ちゃん… 約束守れなくてごめんなさい… でもまだ…あきらめてないから!) 「うぐぅ…うぐぐ…私は殲滅部隊の隊員…戦わなきゃ…この街の人々を護らなきゃ…!皆んなが安心して…暮らせるようにするのです…」 古谷は呆れた形相で口を開く 「そういうクサいのいらないって〜今すぐ脳を潰してあげるから」 「もう一つ…お兄ちゃんと約束したから………      約束…したんです……     だからまだ…死ねません!!」

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三話「形勢逆転」

「ぐぅ…うぐぐ…こんな力を…隠し持ってやがったなんて…!」 「青炎は私の意志に呼応して無限に形状を変化させます」 「ど、どうなってる…!?中級の強さじゃねぇ…!!」 「こうならない為に…昨日…ぼ、僕の異能力で計測した筈だ…!一体何が…!!」 「いぬっち、寝てたんじゃないですか?」 「か、影が寝たぐらいで僕の異能力に読み違えなど!!」 「冗談です。覚えておいてください。血の極地…九条家の血統は“衝動“によってその力を大きく変化させます」 「しょ…衝動…だと…!!?」 「凭从影殲滅が私の任務です。それと、比嘉先輩と遥香ちゃんのお母さんを殺したあなた達を…私は絶対許しません!」 「くそっ…!!この僕が!!こ…こんな小娘に…!!」 「異能力…朧火…」 「その力が僕にあれば!!その炎さえ僕が扱えれば!!お前如き一瞬で焼殺してやったのに!!」 「青焔蒼天!!」 「ぐぎゃアアアーー!!」 「う…うぐがぁ…」 (ギリギリ異能力で僕自身の残像を視覚化して直撃は避けたけど…このままじゃ…………… ん?…こ、この風!!それにこの雲は!!) 「た、頼む…命だけは…脳だけは潰さないでくれ…」 「……………」 「他の奴らに言って…もうやめさせる…!!そ、その後僕も凭影になって君たちに協力するから!!」 「……本当ですか…?」 「ほ、本当だ!僕は人間の心をもってる!凭从影に脅されてただけで本当は人殺しなんかしたくないんだ!」 「わかりました…今から第四殲滅支部に連絡して身柄を拘束します…それで良いですね?」 「ああ…も、もちろんだ!」 詩織がスマホを取り出したその時…… 突然、冷たく鋭い風が空の果てから猛然と吹き荒れ、周囲の空気を一瞬で凍らせるような冷気が流れる…その冷気の中から大量の凭从影が静かに現れ、不気味な沈黙と冷たい気配が周囲を包み込んだ。 そのうちの一人が、空気を切り裂くような静寂の中で口を開いた 「古谷、笑えん状況だな」 「リンネ様!!」 「まぁ良い、下がれ」 「時間稼ぎ成功ぉ〜!九条詩織…僕の勝ちだぁ〜!」 「え…?」 リンネの後ろにいる女の凭从影も口を開く 「あら…やっぱりあの子、強いのねぇ」 「上空に…た、大量の凭从影が…!!!」 詩織が動揺する中リンネが口を開く 「何も喋るな。死ね      異能力…十戒」

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二話「償い」

(はぁ…もう朝なのか…俺、九条真斗っていうんだけど…俺は50体以上の悪霊に憑かれまくっている超絶不幸な人間なんだよね…まぁ、そのせいで悪夢と金縛りで寝れないんだよな……しかも、毎日…) 自分の身体にブツブツと愚痴を言いながら今日も身体を起こし、洗面所へ向かう。 洗面所で身支度を整えていると階段を下る音が聞こえてくる。 「お兄ちゃんおはよー!」 (朝の挨拶をかわしてくる妹。いつもと違うところは昨日泣き腫らしたからか目元が赤いことか…) 「おはよう詩織!目…大丈夫か?」 「ん。ありがとう…もう大丈夫!そんなことより朝ごはんの用意手伝うよ!朝ごはん何にしよっか?最近、パン多かったし、たまには白ご飯もいいかもねー!」 午前中は妹と朝食をとったり、リビングで団欒したりした… その時も、元気に振る舞う妹の姿をみて…俺は口を開いた 「詩織…。別に無理して元気なフリしなくて良いんだぞ?」 詩織は首を横に振り、口を開く 「……フリじゃないよ。慣れろって言われてるの…殲滅部隊のメンバーはね、いつも死と隣り合わせだから昨日笑って話してた人が突然居なくなるの…そういうの何回も経験してるから…だから朝起きたらリセットするって…決めたんだぁ…」 「そっか…」 (詩織はそんなに強くねぇ、小さい時から泣き虫で人見知りで…なのにこんなに無理して…) 「詩織が死んだら、お兄ちゃん泣いてくれる?」 「縁起でもねーこと言うな……夢叶えるんだろ?」 「冗談だよ!冗談!!ふふっ」 詩織はニコニコしながら俺の顔を凝視してくる。 「どうした?俺の顔になんかついてるか?」 「いや…私。お兄ちゃんの妹でよかった!って思って」 「急にどうしたんだよw!いつも、そんなド直球なこといわねーだろ?」 トゥルルル... トゥルルル... 「あ、古谷さんから電話だ…ごめん、お兄ちゃんちょっと出るね。はい、九条です。」 「あ、詩織さん。政治家を殺したもう一体の凭从影を発見したよ!人間が襲われてる!複数で群れてて僕一人じゃ、危なくて!深川公園なんだけど…今から来れないかな!?」 「え…深川公園ですか…でも、今からお兄ちゃんと…」 「うん!こいつらが比嘉先輩を殺した可能性もある!ここで逃すわけにはいかないから!」 (パートナーからの緊急招集に応えるのは絶対事項の一つ…) 「わ、分かりました…すぐに向かいます!」 詩織はスマホをポケットに入れ玄関に向かう 「ごめん、お兄ちゃん。古谷さんに呼ばれちゃった。」 「断れねーの?」 「え…?あ、うん…」 「ごめんね、せっかく詩織のために時間開けてくれたのに…」 「そうじゃなくて、予報でいってただろ?夕方になったら雪降るんだぞ?そうなったら詩織、呪いで動けなくなるだろ?」 「大丈夫、絶対それまでには終わらせるから!」 「危なくなったら逃げろ、約束な!」 「うん!約束!じゃあ行ってくるね!お兄ちゃん!誕生日会の準備して待ってるぞー!」 トゥルルル... トゥルルル... 妹を見送った後、自分のスマートフォンも鳴り出す 「俺のスマホも鳴ってるし…姉貴?今大会中なんじゃ…」 自分のスマートフォンをスクロールし、電話にでる。 「もしもし?」 すると取り乱した姉が電話にでる 「真斗!大変なの!!遥香ちゃんが!!遥香ちゃんがっ!!!」 「え……?」 病院:葛西遥香病室 病室には、差し込む太陽の光と心電図の単調な音が静寂を際立たせ、遥香が無言で外をを見つめる中、重苦しい空気が息苦しく垂れ込めていた。 そんな中、遥香は口を開く 「…………何か言ってよ…」 真斗も口を開く 「ああ…遥香の父さん夜には来れるって言ってた…」 「うん…」 弱々しく返事をする遥香 「傷…痛むか?」 「平気…ママが守ってくれたから…」 「そっか…」 遥香は布団の上で微かな震えを伴いながら、布団をぎゅっと強く握り締め、口を開く 「私さえ、いなきゃ…逃げれたのに…私さえいなきゃ…ママは戦えたのに…泣いてただけで…何も出来なかったの…冷たくなっていくママにありがとうも言えなかった…私さえ…私さえいなゃ……!!」 「俺が…合わせてやる!! 叔母さんの霊体もう肉体から離れちまってたけどいつか絶対見つけ出して…もう一回合わせてやる」 遥香は涙を拭いながら口を開く 「本当…?」 「ああ…だから“ありがとう”はもう少し胸の中にしまっとけ」 「うん…」 真斗も涙を流しながら口を開く 「つーか…大切な人がいなくなるってこんな感じなんだな…こんなに…辛くて苦しいんだな…」 「なんであんたが…泣いてんのよ…」     さらに十年前… 遥香の母、葛西麻衣は真斗に話しかける 「真斗君、今日から遥香のこと宜しくね」 すると…真斗は突然苦しみ出す 「うぐっ……」 麻衣は真斗にかけよる 「真斗君…?大丈夫?」 真斗は麻衣からはなれる。すると、苦しそうにうずくまる 「はなれて!俺から…ゴホッ、ゴホッ、おぇぇ」 (悪霊の呪い…呪いに体が耐えられてない…) すると、真斗は血まで吐き始める 「ガハッ!ガハァアアアッッ!!」 (胃液も出し尽くして血を吐くなんて…間違いないこの呪いは……) 麻衣は真斗を抱き締め、体をさすり始める 真斗は抵抗し、離れようとする 「なにやっ…汚れちゃうって…きたねーからはなれて!!」 「汚くなんかないわ。治るまでこうしてよ?」 「俺に近づいたら…おばさんにも…悪霊が…」 「全部おばさんに、憑依させていいのよ」 その言葉をきいて真斗は抵抗するのをやめる (え…?お、俺の呪いを軽くするために…?) 「なんで?なんでそこまで…」 「真斗君は遥香の命の恩人!恩人を苦しめるやつはおばさん許さないんだから!」 「ガハッガハッ、俺は…別になにも…」 「遥香の呪いはね…定期的に霊を憑依させないとどんどん体調が崩れていくの…だから生まれつき病気ばっかりで…入院してた日のほうが多いくらい。もうダメかもって思ってた…毎晩泣いてたの…娘を救えないかもって…でも、病院に真斗君が来てくれたあの瞬間…神様っているんだって思ったわ…」 「お、俺についてる悪霊…ひょういさせただけだし…」 「遥香にとっては…それが命の灯なのよ?」 真斗はキョトンとする 「………?」 「真斗君が、繋ぎ止めてくれたの。だから、おばさん遥香と真斗君のためなら喜んで命を差し出すわ」 「叔母さん…ほんとに命懸けで…遥香をまもったんですね…」 遥香が口を開く 「耳から…離れないの…ママの最後の言葉…」        昨夜 「は、遥香…よく聞いて…終わりが見えないこの争いを…凭从影殲滅を成し遂げるのは真斗君かもしれない…遥香…真斗君を守ってあげて…」 遥香は自分の母が長くないことを悟りその場で泣き崩れる 「うっ、うぅっ…」 麻衣は遥香の頭をなでる 「泣かないの…辛い死が…希望に変わる瞬間だってあるんだから…」 「なんだよ…それ…んなわけねぇーだろ…希望なんてねーし…俺なんか呪われまくってるだけで…無価値で無意味な…ただのガラクタでしかねぇ…」 「それでもママは…そう言ったの…」 「あと…詩織ちゃんの誕生日なのに…ごめん…」 「そんなこと…考えなくていいって…詩織ちゃんといてあげて…それと雄大くんに連絡できる?」 「…ん?あ、ああ。」 「私とママを襲った凭从影の名前…一体だけだけどきいたの…伝えてほしい…」 「古谷…茶色い髪で…20代ぐらいの男…」 「は??し、詩織があぶねぇ!!」 「おい、綾香!危ないから来るなって言っただろ!」 「雄大は黙ってろ!真斗の電話聞いてじっとしていられるわけないでしょ?」 「敵は異能力者なんだ!僕に任せ…グーーーzzz」 綾香は雄大の頭を叩く 「走りながら寝るなっ!」 「痛って!!ちがっコレは呪いのせいだって!!」 「あんた一人で行かせたらそこら中で寝るでしょ?着くのに何時間かかると思ってんのよ!」 「グーーーzzz」 綾香はもう一度雄大の頭を叩く 「話聞け!!このチビッ!!」 「あだっ!!もうキミより背高いよっ!!ったく、結婚したら恐妻確定だし…」 「しない!付き合ってもないのに毎日毎日何言ってんのよあんたは!」 「え?僕絶対綾香と結婚するけど?」 「ただの幼馴染!少しは学習しろ!私を好きになったら捕まるってなんか言ったら…」 「あー、僕そういうの気にしないから」 「は?」 「そんなもんが怖くて男やってないし」 綾香は少し頬をあからめる 「もう…」 すると、急に雄大の腕が掴まれる 「へ…?」 「キミ、ひったくり犯に顔似てるね?ちょっと署まで連行してもらおうかな?」 「いや…僕じゃないです…!!しかも、今それどころじゃ…!!綾香助けてぇぇーー!!」 綾香は署に連行される雄大をみながら 「ふんっ、呪い乙!」 というのでした。 詩織、古谷と合流 「はぁはぁ…古谷さんお待たせしました!」 「ごめん、詩織さん。急に呼び出しちゃって」 「いえ、それより凭从影はどこにいますか?」 「しっ、あそこに!」 古谷さんが指を刺す方向から複数人の悲鳴が聞こえる。そしてそこには凭从影が三体いた。 「人が襲われてる!助けなきゃ!!」 「僕は大型の2台をやります!詩織さんには女の凭从影を任せてもいいですか?」 「わかりました!異能力…朧… がはぁぁっ!!!」 詩織は技を出すために詠唱をとなえ始めたその時…頭部に痛みが走る。 「ゲホッ、ゲホッ、古谷…さん…?どう…して…?」 (ヤバイ…頭がクラクラする…) 「うふふっ、あんた上手くやったじゃない」 「え?どういう…こと…?」 「彼はこっちが送り込んだ私達のスパイよ」 「スパイ…?う、うそ…」 「危険因子を滅ぼす為のね〜」 詩織は古谷と凭从影を睨みつける 「あら…?私たちと戦うつもり?あんたに背負えるとでもおもってるの?」 「背負う?」 「呆れた…知らないなんて」 (は、速い…!!) 「私たちに敵対した自分を恨みなさい!!脳を真っ二つにしてあげるわ!!はあああっ!!!」 (私の攻撃を…かわしただと!?) ところが背後に古谷に回り込まれ、背後から攻撃をうけてしまう。 「ガハッ…はぁはぁはぁ…」 「ゴォォォォォーー!!!」 「ぎゃっははっ!!ビックリした!?信じられないよね〜!!?コンビ組んでた僕が君たちの天敵!!凭从影だったなんてさぁ!!昨日君の家から帰ってたらさぁ…比嘉先輩にバレちゃって…」 「え…?」 「だから…殺しちゃったwだって、比嘉先輩君の家に向かってたし…途中で電話までしようとしてたからさぁ!!」 詩織は動揺する 「古谷さんが…比嘉先輩…を…?」 「あはは、俺が比嘉に勝てるわけないじゃ〜んwリンネ様だよ!だって君にバレたら今日の計画、台無しになっちゃうでしょ〜!あと、もう一体も始末していただいたっけ?」 すると、女の凭从影がケラケラと笑い出す 「ははっ、娘を守って死んだあの母親かw」 「……誰…ですか?」 すると古谷はにやけた顔で話し出す 「ん〜…だけだってなぁ…葛西…ん〜」 詩織の顔が青ざめる 「え…?それって…」 「わすれちゃったw」 「遥香ちゃんの…お母さん…」 「んん〜?誰それ〜?しーらないw」 「私が…仇、とりますね…」 「異能力…朧火!!」 朧火は巨大な凭从影に命中する 「グハァーーー!!」 「ガ、ガウナヴ!!こ、この小娘!!ガウナウを一撃で…!!」 「私の異能力は…寒さ、冷たさへの耐性を失う代わりに三種の炎を扱うことが出来る…もう、許しません!火焔時雨!!」 火焔時雨はもう片方の巨大な凭从影に命中する 「グガァーーー!!」 「一つは火炎、マグマの物理炎」 「ムーンビースト!!こ、コイツ…強い…!!」 「もう一つは黒焔幻想!!」 詩織がそう唱えると女の凭从影が苦しみ出す 「ぐあーーーっ、なんだ!!?視界が!!!」 「私がイメージした幻影に溺れる黒焔です。」 「や、やめろ!私の、私の脳を喰らうなぁっ!!!」 「そして…朧火は、この合図と共に破裂します。 ……爆ぜろ」 「ぐあーーっ、」 「黒炎に火炎!?幻影以外の炎も隠し持っていたのか!!!」 「新人に手の内を見せるほどバカじゃありません。」 そして、詩織は青い炎を出す。 「なん…だと…!!?青い…炎…!!?」 「古谷さん…犯した罪を、償う時間です。」

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一話「残酷」

「もう二年も経つのか」 静かな午後、雪が降る空が街全体を真っ白に染めていた。窓際に立つ彼の声は、誰に語りかけるでもなく、ただ部屋の空気に溶け込んでいった。 埃をかぶった古い写真立ての中には、笑顔の妹と二年前の自分が並んでいる。それを見つめる瞳には、懐かしさと後悔が潜んでいた。時が過ぎても色褪せない記憶が、胸の奥で静かに囁く。 彼はゆっくりと椅子に腰を下ろし、指先で写真のガラスをなぞる。「二年……でも、まるで昨日のことみたいだな。」 俺は二年前妹を亡くした。 二年前 ニュース「昨夜未明、都内で三人の政治家が何者かに襲われ、死亡しました。いずれも、激しく頭部を損傷しており、連日発生している怪事件と…」 夜の都会で、ネオンの光が冷たいアスファルトを照らす中、必死に逃げる女の足音が狭い路地裏に響き渡る。 「はぁ…はぁ…、なんで…私がこんな目に…」 「なんでってw口封じのために決まってるでしょ?」 「や、やっぱり…三人の議員を襲ったのは!?うっ…」 服が血で滲んでいく 「皆まで言うな。もっとも、わたしが始末したのは二人だけだよ。」 「じゃあ…残り一人は…?、あなたは何者なの…?」 「何者…?そうだな…人間の脳をエサとする者とでも言っておこうか。これからお前の脳も存分に味わってやる!!」 そう言うと男の腕が鋭利な刃物へと変形していく… 「ひぃっ…」 その時… 猛スピードでなにかが急接近する気配を感じる… 「ん…?ふん、抵抗勢力の蟻か…」 (私も気配がした方向に意識を向けるそこに立っていたのは中学生ぐらいの女の子だった。特徴的なものといえば…首から縁結びのお守りを下げていることかな…) 女の子は男に鋭い視線を向け、口を開く    「異能力…朧火」 彼は鼻先から小さく息を漏らし、口元に薄く嘲るような笑みを浮かべながら 「くだらん。どうせ下級………」 すると…突然、炎が彼の身体を包み込み意識が朦朧としはじめる 「なっ、かっ、体が燃えて!!!がっ、がぁぁーー、なんだ!?何処だここは!!?」 女の子は淡々とした口調で説明し出す 「朧火には三種の炎があります… その内の一つが幻影…触れた人は私がイメージした幻影を見るのです。」 男は何かから、逃れようとするかのように身を震わせながら口を開く 「お、俺をくらうな!!たっ、助けてくれ…!!頼む。」 怒りと軽蔑が混じったような視線で女の子は口を開く 「精神を内部崩壊させます。被害者と同じ苦しみを味わってください。」 「あがっ、ぐ…がぁ…」 男はその場に倒れ込む、彼女はテキパキとその男を拘束し始める。 その男を拘束し終わると、彼女の緊迫とした表情が和らぐ 「ふぅ、任務完了っと! …………あっ!あの…だ、だだ、大丈夫ですか…?け、怪我してますよね?」 と心配したように声をかける………      室外機に… 「それ…室外機よ…?」 私の言葉を耳にした瞬間、少女の身体は思わず硬直した。 「…え?………はっ!すいません私、目が悪くて…さっきコンタクト落としてしまったらしてくて…」 その行動に自然と笑みが溢れる 「ふふっ、ありがとう!それよりあなたは?」 すると彼女はおどおどとしながら 「えっ…と。と、通りすがりの一般人っということで!」 「私の命の恩人よ?そんな緊張しなくていいのに!」 彼女は頬赤らめながら口を開く 「ひ、人見知りなので…」 私は私の鞄の中を漁り始める 「紙とペンはっと!ちょっと、この水筒持っててもらえる?」 すると彼女は困った形相で 「え?、あ、ごめんなさい。私冷たいものが触れなくて…それより、救急車呼びますね!」 「病院には一人で行けるわ!後でお礼がしたいから…ここに連絡先を…って、え?いない?」 ピッピッ…トゥルルル…トゥルルル…ピッ 「第四殲滅支部九条詩織、任務遂行しました!」 電話先からは温かみのある優しい声に、くすっと笑ってしまうような軽やかなユーモアが混じった男の声が響いてきた。 「ははっ、ご苦労様!政治家を殺したもう一体の凭从影は今探しているから。家に帰って休んでいいぞ!」 「りょーかいです!」 玄関を開ける音が室内に響き渡る 「詩織!おかえり〜」 「あ、お姉ちゃん!ただいま〜!あれ?お父さんとお母さんと雄大君は?」 「父さんと母さんは出張だってさ!しばらく帰ってこれないらしいよ。雄大は殲滅部隊の仕事よ!留守番頼むってさ!あれ?後ろの人は?」 「古谷さんだよ!第四殲滅支部で先月からコンビ組んでる方」 「詩織も仕事だったの?」 「うん、帰りに凭从影が出たって連絡があったから…あと、古谷さん晩御飯用意してないみたいでウチで一緒に食べれたら嬉しいって!」 「すいません、厚かましいお願いをしてしまいました。」 「気にしないで!もうすぐで夕飯できるんで一緒にたべよ!」 「ありがとうございます。この綺麗な人が総合格闘技中一から五連覇中の詩織のお姉さん、九条綾香さん?」 詩織が誇らしげに相槌を打つ 「そうです!しかもオールワンパン!」 「驚いた、その華奢な体の何処にそんな力が…」 「またぁ、異能者には勝てませんから」 「早くお姉ちゃんも異能力解放して入隊しよーよ!」 「やだやだ、解放したら今より呪い強くなっちゃうし女の呪いぜーんぶ奪われる呪いとかお姉ちゃんムリ!」 「確かに君と結婚出来なくなっちゃうもんね」 「ないない、とは腐れ縁だって」 古谷が口を開く 「君ってもしかして第四殲滅部隊のエース!浅田さんのことですか?」 詩織が返事をする 「はい。君とお姉ちゃんは同い年でラブラブなんですよ?」 綾香は恥ずかしげに詩織を止める 「ちょっ、ちょっと詩織!とは何もないってば!」 「へへ、いいなー幼馴染!」 「父さんが拾ってきてウチで同居してるだけでしょ?さ、古谷さん座って!」 「あ、はいお邪魔します」 詩織がキョロキョロと周りを見渡す その様子をみて綾香が口を開く 「真斗ならキッチンよ、晩御飯作ってるわ」 「ありがと!」 詩織がキッチンに向かい真斗をみるとそのまま飛びつく 「お兄ちゃん!!詩織も一緒に作るッ!」 「ぐへっ、いきなり飛びついてくんな!あぶねーだろ?」 「ごめんなさい」 「丁度ご飯できたから運ぶの手伝ってくれるか?」 「はーい」 「いただきます!」 古谷が口を開く 「本当に美味しい…中3でこんなに料理ができるなんて尊敬です!」 真斗が口を開く 「まぁ、姉貴と詩織に手伝ってもらいながらですけどね。それより今日戦ったんだろ?怪我とかしてねーか?」 詩織が口を開く 「うん、平気だよ!でももう一体がまだ見つかってなくて…あっ、でも!今比嘉先輩が頑張って探してくれてるから大丈夫だよ!」 綾香が口を開く 「ほんと大変よねぇ、殲滅部隊の仕事なんて…お姉ちゃんぜったいやりたくないもん」 古谷が口を開く 「そういえば、チラッと職場で聞いたんですが真斗さんって異能力者なのに異能力が使えないって本当ですか?」 真斗が返事をする 「そうですね。」 「後天的な覚醒もできないんですか?」 「そうなんですよね…霊感もゼロなのに、50体以上の悪霊に取り憑かれて呪われまくった最悪の人生送ってますねw」 「呪いだけが発動して力は得られない…そんな話聞いたことありませんね…」 「“黒の亡霊“存在価値がないから他の異能力者からはそう言われてるらしいです…って、近くね?」 詩織が口を開く 「ん?なにが?」 古谷が笑い出す 「はは、あの人見知りの詩織さんがお兄さんにはベッタリなんて知りませんでした!」 「そうですか?普通ですよー?ね?お兄ちゃん!」 「それじゃあ、ご飯食えねーだろ…」 「あっ、そうだ!もし良ければ、お兄さんの覚醒種別を確認しませんか?」 綾香が口を開く 「えっ?そんなこと出来るんですか?」 「皆さんは異能力者として覚醒するタイミングが二種類あるのはご存知ですよね?」 詩織が口を開く 「契約覚醒と生誕覚醒のことですか?」 「はい!ある言葉を口にするまで覚醒させない後天的な目覚めのことを契約覚醒と呼び、もう一つは詩織さんみたいに生まれた瞬間に異能力者として目覚めることを生誕覚醒といいます。特に契約覚醒は霊感が強い人に稀に発生する超レアケースですね!」 「でも、お兄ちゃん霊感ないし、どっちも当てはまらないんだよねぇ…」 綾香が口を開く 「どうすれば、覚醒種別をしれるんですか?」 すると古谷はカバンから紙を出してきた。 「僕の異能力は視覚化、あらゆるものを視覚化することができまして…詩織さんちょっとこの紙の上に手を置いてみてもらえますか?」 「こうですか?」 「はい。契約覚醒なら赤の手形、生誕覚醒なら青の手形が数秒間残ります。当然、詩織さんは生まれた瞬間から異能力者なので青の手形になります。」 「でも指が親指と人差し指しか映ってないですよ?」 「あー、これは今の詩織さんの強さを表した等級です。親指だけなら“下級”、親指と人差し指が映ったら“中級”と言った感じです」 真斗が口を開く 「え?詩織、中級って凄くね?」 「14歳で中級はエリートコース間違いないですね!」 「さすが、マグマの魔王の悪霊を従えてるだけあんな…」 古谷が口を開く 「綾香さんもやってみますか?」 綾香が返事する 「うん、やるやる!」 「あ、でもまだ異能力覚醒させてないけど…」 「ええ、その場合でも反応しますし、等級も覚醒させた時の初期値で映し出されますから!」 「へぇ〜、古谷さんの異能力優秀〜!」 「綾香さんの手形は赤になる筈ですね」 その場にいた全員が口を開く 「え?」 真斗が口を開く 「赤は赤だけど…指…三本写ってません…?」 古谷が口を開く 「そ、そんなバカな…!覚醒時から上級クラスの強さなんて…これ、全異能力者の中でも上位10%に入りますよ…」 真斗と詩織は口を開く 「ええーーー!!!?」 「姉貴…チートすぎだろ!!何食ったらこうなるんだよ」 「お姉ちゃん今すぐ覚醒して殲滅支部に入って!」 「やだ!命令されて戦うとかめんどくさいー!」 古谷が動揺しながら口を開く 「即戦力どころか…これ、各戦力の隊長クラスの可能性も…すぐ入隊の手続きを!」 「やだやだぁぁ!!お姉ちゃん女として生きていたいのっ!!はやく真斗やってってばぁ!!」 真斗が口を開く 「はいはい、ったく、規格外にも程があんだろ…」 詩織が口を開く 「でもお兄ちゃんが契約覚醒者かどうかわかるってことですよね?」 古谷が口を開く 「はい!赤でなく、真っ白のままだったら、残念ながら普通の人間ということになります。」 真斗が口を開く 「どうか普通の人間ってことで、俺についてる悪霊全部どっか行きませんかね〜…」 そのようなことをいいながら紙の上に手をかざすと… 親指だけ映った黒色の手形が浮き上がってきた。 「え…?」 「へ…?」 「なんか…黒くね?」 「古谷さん、えっ…と…黒の場合は…?」 「いや…黒なんてありませんから…私にもさっぱり…」 「親指だけってことは…強さは下級ってことですよね?」 「はい。めっちゃ弱い可能性大です…」 「あー、これ…俺についている悪霊が悪さした感じかも…俺、不幸なことしか起きねーし…」 詩織が笑いながら口を開く 「ぷっ、あはははっ!!!流石お兄ちゃん!期待を裏切らないw」 「るせー」 綾香も口を開く 「この前だって、体重計乗っても数字が暴れ回って最後♾️になってたもんねぇw?」 「気にしてるこというなー」 古谷も口を開く 「なんか……すいません。こんな不幸な人が…ぷぷっ…この世にいるなんて知らなくて…ぷぷぷっ」 「笑うのこらえきれてないですよ…」 「ご、ごめんなさいw悪気はないんです!美味しいご飯もいただきましたし、今日はこれで失礼します!ブブっ、ご馳走様でしたーー!!!」 「あっ、逃げた!!」 「俺のこと笑いに来ただけじゃねーか」 「古谷さんに悪気はないから許してあげて?」 「別に怒ってねーよ!毎日こんなんばっかだし…」 トゥルルル…トゥルルル… 「あっ、比嘉先輩から電話だ!」 「あぁ、詩織の上司か!?」 「なんだろ…仕事の電話かな?あっ、電話切れちゃった…」 詩織は電話を掛け直すが… 「ん〜…出ない。明日はお兄ちゃんとお出かけするのに…急な仕事入れられたらどうしよう…」 「その場合断れないのか?だって明日は詩織の誕生日だろ?」 「ん〜、なにもありませんように。お兄ちゃんとお出かけできますように!……よし!お兄ちゃんご飯食べよー!」 「いや…これじゃ食えねーだろって…」 ご馳走様でした! 「そういや、明日の夕方雪降るらしいな…」 詩織が嬉しそうに返事をする 「ほんと!?お兄ちゃん一緒に雪だるま作ろ!!」 「いや…お前、雪触らねーだろ?」 「臨時ニュースをお伝えします。本日の19:00頃、東京都江東区富岡八幡宮で激しく頭部を損傷した男性の遺体が見つかりました。亡くなったのは比嘉祐二さん21歳とみられ、警察は…」 「え…?ひ、比嘉先輩…?」 「比嘉先輩ってさっき電話がかかってきた…?富岡八幡宮ってウチの近所じゃねーか!しかも、頭部を損傷って、これ…」 「凭从影だ…うそ…比嘉先輩が…あんなに強い比嘉先輩まで…凭从影に…」 詩織の目に涙が溢れる 「嘘だ…こんな簡単に…皆んな死んで行くなんて…殲滅部隊は…たった56人しかいないのに…相手の数は何百もいて…毎日毎日頑張ってるのに…私たちの状況は…いつだって悪化していくだけ……お兄ちゃん悔しいよぉ…」 「詩織…」 「私たちじゃ…守れないのかな…?学校の友達も…この街の人たちも…みんな殺されちゃうのかな…政治家も警察も…全部凭从影に…奪われちゃうのかな…?」 (何だよ…これ…詩織はまだ中学二年生だぞ…?あいつら十四歳になに背負わせてるんだよ!?) 「私の願いはね…二つしかないの…凭从影を殲滅させてみんなが安心して暮らせるようにする事と…屋上でお兄ちゃんと、雪だるま作ること…私、呪いで冷たいもの触れないし…どっちも難しいけど…どっちも無理かもしれないけど…でも…叶えたいのぉぉぉー!!!」 (……妹が、苦しんでる。顔を歪めて、涙を流して、助けを求めてる…でも…俺には何もなくて…妹を助ける術も、力も、知恵も、手段も…俺は…何一つ持ち合わせていなくて…詩織の重荷を肩代わりする為の…スタートラインにすら立ててねぇ…) 「詩織…こんな兄ちゃんで、ごめんな…」 ニュース“都内でまた襲撃事件” 頭部に酷い損傷を負い死亡したのは母親の葛西麻衣さん、娘の葛西遥香さんも重症で病院に搬送されました。未だ犯人の行方は分かっておりません。

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