一話「残酷」

「もう二年も経つのか」 静かな午後、雪が降る空が街全体を真っ白に染めていた。窓際に立つ彼の声は、誰に語りかけるでもなく、ただ部屋の空気に溶け込んでいった。 埃をかぶった古い写真立ての中には、笑顔の妹と二年前の自分が並んでいる。それを見つめる瞳には、懐かしさと後悔が潜んでいた。時が過ぎても色褪せない記憶が、胸の奥で静かに囁く。 彼はゆっくりと椅子に腰を下ろし、指先で写真のガラスをなぞる。「二年……でも、まるで昨日のことみたいだな。」
拓未
拓未