烏丸
22 件の小説あの頃は飲めなかったコーヒーと
高いビルの屋上で自販機の缶コーヒーを飲んでいた 口の中にはほろ苦さが広がっていた 小さい頃はただ遊んでばっかりで 怒られて、泣いて やんちゃで親には迷惑ばかりかけたなと 昔の思い出に浸りながら缶コーヒーをちびちび飲む スマホの通知が鳴り続けている 五月蝿いので投げ捨てようとしたが 下にいる人に当たっては危ないと思い 後ろに投げ捨てた 気がついたら大人になっていて 働かなくちゃいけなくて 毎日パソコンとにらめっこして 上司に媚びへつらって 遅くまでパソコンで仕事をして 家に帰っても寝て起きたらすぐ仕事で やりたくて買ったゲームはどこかに埋もれた 大人になったら自由になるものだと思ったていた だけど現実はそうじゃなかった 縛られて痛めつけられて 涙は枯れてもう流れなかった 独りで泣いたアパートの一室には戻りたくなくて ふらっと街を歩いていたら見つけた廃墟ビルに入って 階段を登って屋上へたどり着いて 高い所から見渡す景色に浸るのが最近の癒やしだった しかしついに古い階段は登っている途中で崩れてしまった もう戻れないのだと 自分に言い聞かせて屋上へ向かった もう後ろは振り返らなかった 錆びついたドアを開けるといつもの屋上が迎え入れてくれた 何を考えるわけでもなくただ足を動かして 錆びれたビルのギリギリに立つ 突風が吹いたら落ちてしまうな なんて冷静に考えている自分がなんだか笑えた 結局何も得られなかったなと 枯れたはずの涙が最後に悲痛の声を上げる 目を閉じて 微かに吹いている風を背中で感じる 突風が吹いた 流れるままに倒れていく 頭を強く打った 目を開けるとそこは赤染まった空だった 死んだのかと思った ここは天国か、いや地獄だろうなと身体を起こす するとそこは、あの錆びれたビルの屋上だった あれ、確か突風が吹いて落ちたはずじゃ 痛むところは後頭部と背中とお尻だった どうやら後ろに倒れてしまったらしかった もういい、帰ろうと思い錆びれたドアを開ける その瞬間“もうここへは来るなよ”と言わんばかりに 風が背中を強く押した 少しよろけたがなんとかバランスを立て直す ふぅ、と息を整えるとスマホの音がドアの向こうで鳴り響く そいえばと思い取りに戻ろうと錆びれたドアに手をかけるが なぜだか開かなくなっていた 何度やっても、力いっぱい回そうとしても その錆びれたドアは開かなかった 仕方なく諦めて階段の方を見る そして登るときに階段が壊れたことを思い出す どうしようかと、冷や汗が流れ出す しかし、なぜだかわからないが 階段は“壊れていなかった” あれ、おかしいなと思いつつも 早く帰ろうと、慎重かつ足早に階段を下る するとガタンと大きく揺れ 下りきったばかりの階段は崩れてしまった まるで“これで屋上までは来れないな”と言わんばかりのタイミングだ なんだかこのままビルごと倒壊してしまうのではと 走って廃墟ビルをあとにした その時はビルが崩れ落ちることはなかった 後日ニュースを見て歯磨き中の歯ブラシを落とした 「こちらが現場の元廃墟ビルです。今朝突然このビルが倒壊しました。幸い住宅は近くになかったので、怪我人や倒壊による被害は無かったようです。」 もちろん、あのビルのことだった 背筋がゾッとしたがすぐにおさまった うがいをした後、辞表を持って会社へ向かった
窓際の君へ
いつも貴方は窓の外を見ていますね ずっと窓の外の何かを見つめていますね 貴方の目には何が映っているのですか 先生に注意されるほどには窓の外に魅入られていますね きっととても素敵なものがそこにはあるのでしょうね でも最近は少し考えてしまうんです もしかしたらそこには何も無いのではないかと 窓の外を見ているのではなく 教室の中を見ていないだけなのではないか 不安になってしまうんです ある時ふらっと窓から飛び降りてしまいそうで 想像できてしまうから怖いんです まるで窓の外に吸い寄せられるように消えてしまいそうで なので誰もいない教室でシミュレーションをしています 飛び降りかけた貴方の元へダッシュしてその手を取ることを 先生に見つかった時は言い訳を必死に考えて すいません今は私の話ではありませんでした それでえぇっと 貴方が窓から飛び降りることが無いように祈っています 何度練習しても届きそうにありませんでしたから 最近は貴方の方を見つめ過ぎていて今度は僕が怒られてしまいました 今でも貴方は窓の外に視線を置いて ただひたすらに何かを見つめていますね 今度席替えをした時は 窓際のあなたの後ろに座りたい そしたら声をかけられるかな
仔真白はお留守番
翌朝、腹部に暖かみを感じながら目を覚ます 「おはよう…仔真白〜…」 「ニャー」 安物のソファはやはり固くて、慣れたとはいえ身体が痛くなる 重い身体を起こして、ササッと顔を洗い仔真白のご飯を用意する そして、ぐーたらおばけを3発ほど叩いてから、朝ごはんを作り始めた 安かった鮭と、これ以上お冷ご飯を増やすわけにはいかないので、パンにした へにょへにょと起きてきた姉貴の前にお皿を置く 「食べたら荷物片付けて帰れよ」 「うん、うん、うn…」と寝そうになるので無理に顔を洗わせる 「姉!ふっかぁぁぁぁ…頭痛い…」 「結局全部飲むからだって、止めたのに」 「今日も休みだもんねぇ…うぇぇ…」 とりあえず飲み物をすすめて「食べれる分だけ食べな」という 「あんた、鮭にこのパン…鮭にはご飯でしょ、うぇぇ…」 「文句あるなら食べんでよろしい!」そういうと、「いやいやいや、食べますよ食べます」 ゆっくりと食べ始めた 仔真白も食べ終えて、僕のあぐらの中へフィットする 「ニャー」 「美味しかったかぁー?今日のは、この酒臭い人が奢ってくれたご飯だぞー」 「酒臭いとは失礼な…」 「臭いわ、実際仔真白も寄ってかないし」 「たし…かに、今度はマタタビの香水付けてくる…」 なんて会話をして、姉貴の荷物の片付けを手伝い、見送りについた 「また来るね~」 「猫缶かスイーツでも持ってきてくれたらな」 「りょぉぉかぁぁいぃ」 ...................................................... 「行かないのか?」 「タクシー待ってるんじゃん」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 朝からとても疲れた日曜日の始まりだった 今日は昼前からバイトだというのに ちなみに、家から徒歩10分程で着く所にある喫茶店で働いている 大学もあまり取ってなく暇過ぎて死にそうだったのが、仔真白と出会ってから変わった バイトが嫌なわけでもない、ここに越してきてからずっと良くして貰ったお店だから 出来るなら毎日でも働きたい…といえば嘘だが、感謝は本物だった 店長さんに仔真白のことを伝えて、仔真白の写真を代金に、バイトを極力減らしてもらっていた 仔真白をひとり家に置いていくのにはまだ怖かったから 最近は仔真白もこの家に慣れてきたみたいで、どこでもスースーと寝ているのをよく見る これなら数時間留守にしても大丈夫だと判断して、バイトに復帰する次第だった 「カランカラン」 「いらっしゃいませぇ、って、あ、そっか、今日からバイト復帰できるんだったか、」 「久しぶりに会って早々人の事を忘れたみたいに、」 「俺も物忘れが来たか…」 「物じゃありませんし、忘れないでください」 「じゃあ、いっくんはオーダーとかお会計とか、前と同じ内容で頑張ってくれよ!」 と、なんとも言えない会話を終えて、制服に着替える 何週間ぶりとはいえ、店長もひどい人だ、たしかに送っていたのは仔真白のみの写真だが、人を忘れるとは… 着替えを終えて店に出るのと同時に、お客さんが入ってきた 「いらっしゃいませ!こちらの席にどうぞー。」 久しぶりの接客ではあったが大した苦もなく、仕事をこなせた バイト仲間の人と一緒に休憩の時間を貰っていた時 「ねぇねぇ、子猫の写真見せて!」 とせがまれたので、スマホに映し出す 「かわいい…マッジで…かわいいじゃん…こんな天使を拾ったって…どんな得積んだのよ…」 「そんなこと言われても、まぁでも、甘えてくれるし、かわいいよ」 なんて会話が気づけば休憩の9割を超えていた 「ごめんね~、休憩使わせちゃって、お詫びといっては何だけど、うちにある猫のおもちゃ持ってきてあげるよ」 「猫飼ってるんですか?」 「飼ってた…かな、」 「あっ、すいません…」 「今じゃ実家に帰んないと会えないんだよー、留守の間に部屋が大爆発っていうのが続いてね、実家に預けてるの」 「えぇ、紛らわしいこと言わないでくださいよ…」 「あっはっはー!」と笑う姿を見て、なんとなく元気が出た気がする 遅くなってしまった、久しぶりのバイトだからと気張りすぎてしまった 急いで帰ろうと、着替えを済まして入口に行こうとすると、店長に呼び止められた 「いっくん、とてもお得な案件があるんだけど、どうかな?」 「なんですか?まさか…壺!?」 「違うわ!仔真白ちゃんの話に決まってるだろ!」 「決まってるんですか…それで、お得というと…?」 「仔真白ちゃん、人にはある程度慣れてるんだよな、だから、うちの看板猫になってくれないか?」 「それ本気で言ってます?」 「大マジさ、ほら、ここの経営は悪いとは言わないが、決して右肩上がりじゃないだろ?」 本気でその提案を疑ったのは、あまりいい気になる内容では無かったからだろう 姉貴にも会い、出逢って間もなく僕になついてくれた仔猫は、まぁ医者を除けばまともな方だろう だが、やはり何人もお客さんが来る所にうちの猫を置くというのは なんだかいい気にはならなかった 「考えておきます…」 そう言って足早に店を出て、仔真白の待つ自宅へと向かった 玄関を開けると黒いスリッパの上に、白い毛がついていた そのまま部屋へ行く 「仔真白ー!帰ったぞー!良い子にしてたかー?」 これに返事は無かった 安物のソファの上ですやすやと寝ている仔真白を見つけて安心した よくある荒れたティッシュや壁の爪とぎなど、そんな形跡はなかった 部屋を少し歩いていると、仔真白が目を覚ました 「ニャー」 と僕の足元に寄り添ってスリスリしている 「今ご飯用意するからなー」 といえば、さっきよりも大きな声で 「ニャーー!」と鳴いた 久しぶりのバイトで体力的にも精神的にも疲れてしまったので 料理なんてする気力もでず、冷凍食品で済ませることにした 最近の冷凍食品はすごいなと感動しつつ、さっさとお腹を満たした 仔真白もご飯を食べ終えて、僕のあぐらの中にフィットする 少しゆっくりしたあと、仔真白をそっと降ろし、服を持ってお風呂に向かった 暖かい湯船に使っていると、店長の話が脳裏に浮かんだ 「まだ早いな…」 お風呂からあがると、仔真白はソファの上でくつろいでいた 腰を下ろして仔真白に聞いてみる 「お仕事してみるか?」 こんなことを猫に聞くのもお門違いかもしれないが 本人、本猫の意思も尊重はしたいし、過度なストレスもかけたくなかった なにそれ?と言わんばかりに首を傾げる姿が可愛かったので写真に収める 満腹になったりお風呂に入ったりしたおかげで、すっかり身体はおやすみモードなので 安物のソファで深い眠りについた モゾモゾと仔真白がすぐ近くで移動したと思ったら、僕のお腹の上に乗ってきて 何も言わず、写真を撮り、今度こそ眠りについたのであった
セピアノ音色
子供の頃からピアノを習わされた 父親がちょっと有名なピアニストとして売れていて その倅ということで平日は二時間、土日はそれ以上やらされた 父親は厳しく僕を育てた 英才教育だのなんだのと、とにかくなんでもやらされた 母親はそんな父親と打って変わって優しかった 厳しい練習の最中に、「美味しいお菓子を貰ったの」といって 休憩する時間を作ってくれた だからそれでも楽しくピアノを弾けていた そんな僕の優しい母親は病気にかかった 大丈夫だろうかと心配する間もなく、母親は亡くなってしまった そこから父親は以前よりも厳しく練習にあたった 手が痺れても、腕が千切れそうになっても ただ永遠とも思える時間の中で、ピアノを弾き続けた 手を休めたら怒鳴られた、殴られた そしてピアノを弾かない数分間があれば、また殴られた 「ピアノを弾け。お前は天才なんだ。有名になって舞台の上で演奏をするのだ。それが出来ないのならお前は私の子などでは無い」 毎日嫌になるほどそう言われ続けた やりたくなくても、やらなきゃいけないと思わされて 嫌だと思っていても、ピアノの前に座っていた そんな地獄が続いて何年か経ったある時 初めて演奏のコンクールの舞台に座っていた 結果は、、優勝だった 自分の演奏が一番なんだと、今までの地獄が報われた気でいた 舞台を降りて父親の元へ向かうと、開幕一言目に 「なぜもっと上手くできない?」 これが出場者の中で最も秀でた者に向けられるセリフとは思えなかった 普通の子供ならこんな言葉をかけられれば反抗するだろう 優勝したのにどうして。褒めてくれたっていいでは無いか。 しかし僕が無意識に漏らした言葉は、そんなものとはかけ離れていて… 「ごめんなさい」 父親は僕の事を睨みつけたあと、自分の歩幅で早々と車へ歩き出した 車の中でも説教は止まらなかった 「罰として家に着いたら6時間以上は練習に励め。絶え間なく練習をしろ。音が途切れたら罰を与えるからな」 と、優勝で飾られた胸の勲章は、いつの間にか自分で外していた それから家に着いて、無理やり部屋に押し込まれた 罰を受けたくない一心で必死に弾き続けて練習をする 空腹の音が響いても、それを掻き消すように鍵盤を指で押し込む 6時間が経過した しかし、それを言い訳に鍵盤を押すのを辞めてしまえば、また怒られてしまう もうやめていいと言われるまで鍵盤を押し続けた 6時間と少し経った頃にドアが開いて父親が入ってきた その手にはどこかで買ってきたお弁当があって 「もういいぞ」 と一言いい、机にお弁当を置いて部屋を出ていってしまった 僕は温められたお弁当をひとりでゆっくりと食べた それから数年が経った 僕はいくつものコンクールに出場し、いくつもの優勝を重ねていき、かつての父親よりも名の売れたピアニストになっていた スポットライトを当てられ登場し、暗い方へ頭を少し下げたあと、黒い椅子に座り、白と黒のボタンを押し続け、立ち上がり、また暗い方へ頭を下げ、退場する この作業の繰り返しをし続けていた 父親は僕に対して何も言わなくなった ふと考えてしまった 僕は何をしているのだろうと 昔撮った母親との写真を見て思ってしまった そして黒い箱のようなものに触れて考えた 何をしたかったのだろうか なぜ僕はこれに触れ続けているのか 1時間、2時間、3時間とその場に立ち尽くして考えていたが 結局の所答えは出なかった ドアの開く音がして父親が部屋に入ってきた 「次のコンクールは$@&?/~%_]#?$£*+€」 何を言っているのかわからなくなった 「わかった」 とだけ言って黒い箱に向き直す 本当は何も分かっていない けれど白黒の板を押し続ける 今も、ずっと…
髪彩への恋1
第1話 出会いと偶然 親の都合で最近転校した高校 これまでにも何度か転校しており、友達を作ろうなんて意欲も薄くなっていた。 そんな場所で異様に避けられている一人の女子生徒が居た。 その人は窓側の一番後ろの席で一人、いつも本とにらめっこしていた。 異様な雰囲気さえ感じる姿に僕は少し“怖いな”と感じていた。 しかし運が悪いのが生まれつきの性であり 座席はその人の隣になっていた。 ある日、教科書を忘れてしまった。授業についていくので精一杯なのに教科書が無いと辛いので意を決して話しかけてみた。 「あ、あの、教科書を忘れてしまって、見せてくれませんか」 話をしたのは初めてでは無かったが、なんだか目を合わせられなかった。 “ガタッ” 驚いて声が出かけたが、なんとか堪えた。そしてゆっくり隣の人を見る、通常机と机は離れているのだが僕の机と隣の机は触れ合っていた。 教科書が二人の机の間に置かれて、まるで何も起きなかったかのように時間は流れ始めた。 隣の人をチラッと見ると、黙々とノートにメモを取りながら授業を真面目に受けていた。 教科書を見せてくれている以上ありがたく見させてもらう以外の選択肢もなく、授業に集中し始めた。 チャイムが鳴った。隣の人は教科書を閉じ、机を静かに戻すと次の教科の支度をして机に突っ伏してしまった。教科書を見せてもらった時にお礼を言えなかったのでありがとうと伝えたかったが、隣の人は“そんなものはいらない”と言わんばかりにゆっくりと肩を揺らしている。 そんなこんなで一日が終わり帰りの支度を済ませ帰路につく。隣の人の事がモヤモヤと頭の中をめぐり気が付けば遠回りをして帰っていた。 そして偶然にも公園を見つけて視線を向ける。 「こんなとこに公園なんてあったんだ」 引っ越してきた時に、街に慣れておこうと思い新居の周りを散策ついでに歩いていたのだが、この場所には来たことがなかったのでなんとなく見入ってしまった。 今目の前にある公園は初めて引っ越しをする前によく行っていた公園と似ていたからだ。別にどこの公園も似たようなものだと思うだろうが、意外と特徴があるもので、遊具の違いであったり砂場があるかどうか、ベンチや木々の数など大きく違ったりする。 そんな公園を前に立ち尽くしていると人の声が聞こえた。別に公園に人がいることはおかしいことではないが“にゃー”と声が聞こえたので、つい気になってしまった。 公園の入口の手前側にベンチがあり、声の主はそこに居た。しかし僕は咄嗟に身を隠してしまった。そして一瞬視界に入った光景を頭の中に映し出すと、もう一度確認しなくては。と静かに確認する。別に焦っている訳では無い。決して。 そこには可愛く鳴いてされるがままに撫でられている猫と、オレンジ色の髪の毛の女の人がいた。しかも、通い始めた高校の制服なのだ。 「かわいいねーネコちゃーん」 と甘い声で熱心に猫を撫で続けていた。しかし、髪を染めるのは指導対象だったはずだし、こんなに目立つ髪色の人を見たことがなかった。心の中で(アニメのキャラかよ)と色々考えていると 「誰かいるんですか」 そう冷たい声が飛んできた。いるのかどうかを聞いているとうよりも誰なのかを聞いていたので、恐る恐る姿を出し必死に弁明をしようとした。 「ごめんなさい、除き見しようとかそうゆうのじゃなくて、制服が通っている高校と同じものだったので気になって、」 頭を下げて弁明(謝罪)をし終わるが、相手は声を発さない。少し顔を上げて見ると思わず「えっ」と声を漏らした そこにいたのは、教科書を見せてくれた隣の席の人だった。そして何故かじーっと僕を見つめている。もう一度謝罪しようとすると 「見た?」と冷たい声が発せられた。 「僕も猫は好きだし、同じような事したこともあるから、えっと、誰にも言わないので許して下さい」 深々と頭を下げながら、それではと後ずさりしようとすると 「それもそうだけど。そうじゃなくて。その、髪の色、見たか聞いてる。」 この時を境に、憂鬱で仕方なかった僕の生活は、少しずつ彩られていった
あぁ私やっぱダメだ
わかってる わかってるんだほんとうは 彼みたいな人に惚れてはいけないことも もう何度目かもわからなくなってしまった どうして悪い男の人ばかりに惹かれてしまうのか もう十分私は傷ついたはずなのに 心の底はなにも変わっていなかった 本当に自分が嫌になって 自分を自ら傷つけて 痛みを感じて涙を流して独りが寂しくなって 結局彼のもとへ向かってしまうんだ 彼にとっては私はなんでもないのだろう 何人もいる相手のひとりなのだろう けれど私には彼しかいないから どんどん好きになってしまうのだ こんな負のループで私は朽ちていくのかもしれない あぁなんて哀れな生き物なのだろうか 親が聞いたら悲しむだろうか 高校の友達が聞いたらお腹を抱えて笑うだろうか いや、そんな事はないともわかってる 親とも縁を切られてしまった 私はすべてを今の彼に捧げてしまったから 高校に友達なんて呼べる人はいなかった 夢ばかり見て現実から逃げていたからだ 仕方ないといえば仕方ないのかもしれない 結局悪いのは彼ではなく私なのだから 本当に私は私が嫌いでならない 今こんなことを考えている自分も嫌いで こんな状況を生み出した私も嫌いだ 親のことを嫌う訳でも恨むわけでもない 私が親でも同じ対応をしたかもしれないとわかっているから だから悲しくなってしまう 自分が惨めでならない いっそのこと死んでしまおうかと彼に話せば 彼は私には甘い言葉をかけてくれて 弱い私はその甘い言葉に簡単に乗せられてしまう 何回か彼に苦しめられ涙を流して捨てられた女の人を見たことがある 私はそれを見てなんて思ってしまったと思う? 彼に嫌気が差して彼のことを嫌いになった いやそんなことはありえない 私には彼しか居ないから 常に彼に嫌われないようにしなければならない つまり私は “あんな風になってはいけない”と考えたと同時に “彼が私だけのものになることに一歩近づいた”と 不思議と口角が上がってしまった 自分が怖くなってしまった なぜ私はこんなにも辛い思いをしているのだろう あなたは答えがわかっているのだろうか。 わかっているなら頷くくらいしてくれてもいいのではないだろうか。 そんな状態じゃまともにはなせないだろうけども。 まぁいいんですよ。もうね。 やっとこの時が来たんですから。 このパーティを選んでよかったと思います。 あなたの女の人が全て集められるこの素晴らしいパーティを。 どう思いますか。あなたの可愛がっていた女の苦しんで死んだ顔は。 私は美しいと思います。あなたの為に頑張った化粧ですから。わたしもやりましたし。 やっぱりどうでもいいです。 私が興味があるのはあなただけ。 最後はどんな甘い言葉をかけてくれるのかな。 「わたしは かれのからだに ないふをさした」
あの夏を思い出させて
気づけば夏になっていた いや、正確には梅雨なのだが もうすでに外は暑い 日焼け止めを塗らねばと思ったり そんなことを考えながらあるところへ向かう 昨日は一日中雨が降っていて その水たまりが道端にあったりなかったりする 下り坂をゆっくりと歩いていく そのずっと先に見えるのは 「キレイな砂浜と海」だった やはり歩くと少し遠いので自転車を使えばよかったなと 道が平らになったところで後悔しつつ 少し広い砂浜を抜ける 波の音が微かに聞こえる サーサーと、静かに、でも確実に そこに有り続けて鳴いている 靴を脱いだ 砂浜に素足をのせるとじわじわと熱を感じた あの時もこのくらいだったか、それ以上か 今でも鮮明に思い出すことができる だからこそ、こんなにも哀しい気持ちになってしまう ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 私にはひとりの友達がいた その子はとても大人しかった 真面目で、一生懸命で、可愛くて、格好良くて 私は彼女のことを好いていた 彼女も私のことを好いていた よく一緒に遊んだりした とはいっても、海沿いの田舎町に遊べる場所なんてなく 本を読んだり、ボードゲームをしたり、お話する程度だった そんな毎日を心底楽しいと感じていた ある日、遊び終わって解散し、家で夕ご飯を食べていたとき 彼女の家から電話があった 彼女は家に帰っていないらしく、知らないかと聞いてきた 私は家を飛び出した 彼女を見つけ出そうと思った 靴を履くのも忘れ、足の裏から少し血が流れていた しかしそんな事は気にならず、一心不乱に下り坂を走った なぜだろうか 遊んだ場所もいくつもある 彼女の家の近くに居る可能性だって十分ある だけど足は勝手に、目の先の砂浜と海へ向かっていた 砂浜に足をつけると辺りを見回した 息も荒くなり、足は血まみれ それに気づかないくらいに彼女のことを必死に探した 結論から言えば彼女は砂浜には居なかった 居なかったのだ砂浜“には” そのもう少し先に彼女は立ち尽くしていた 夕陽も沈んで星が見え始める空の下 そこに彼女は立っていた もう砂浜は熱くない ただ小石を踏むと強く痛むくらい そんな一本道を私は走った 彼女のことを。彼女の名前を叫んで走った すると彼女は振り向いてくれた 私の方を見てくれた あぁ良かったと安心した 海を見つめているその背中は なんだか居なくなってしまいそうくらい寂しく見えたから 居なくならないでくれて安心した 本当に良かったと思った そして一歩一歩彼女へ近づいていった 彼女のもとまで残り20歩程度のところで彼女は私の方へ身体を向けた そして私の目をじっと見ていた そこまではゆっくり、でも着実に歩めていた足が なんだか動かなくなってしまった そして彼女も動かなかった 足元の水面が揺れた キレイな波紋を描いて揺れていた 月の灯が私達をまるで当たり前かのように照らしていて 私は目の前の光景にひどく怯えていた いつもは可愛くて格好良くて、そんな彼女が 哀しそうで、切なそうで、弱々しく、そして小さく見えた 息を呑んで私は彼女の方へ足を一歩踏み出した すると彼女も足を動かした 私から逃げるように どうしてだろうか、一体なぜ離れていくのか 私は彼女の名前を呼んだ 彼女はただ黙ってそこに居た “何故泣いているの” 輝く月のように美しい涙が彼女の頬を濡らす 彼女を抱きしめようとして、近づこうとして 彼女は海水が膝につく程度沈んでいって 私をわかりやすいように拒んだ 話を聞こうとした なにがあったのか、なにを考えているのか 悔しいけれど、私にはわからないから しかし何度聞いても答えはなかった ただ静かな波の音が聞こえるだけ 私の頬もいつの間にか湿っていて それでも私の視線は彼女へと注ぎ続けた 一瞬でも目を離せば消えてしまうかもしれないから 私の足も海水に飲み込まれていて 全身が冷えていくのを感じた 私よりも深い所にいる彼女はもっと寒いのだろうと どうすれば良いのかわからずに立ち尽くしている私の心は 勝手に締め付けられていた だけど勝手に手が彼女の方へ伸びていって いや、手を差し伸べて 「帰ろう」 そう声が出た ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ そこからのことはあまり覚えていない しかし、彼女は無事だ 今も私の隣で美味しそうにアイスを頬張っている 「美味しいね」そういって微笑んでいる 大事にならなくてよかったと、今でも思う なんとなく覚えているのは、あの後キレイな砂浜で彼女が私の胸の中で泣いたことだ 何故こんなことをしたのかと訪ねても答えてはくれず ただ泣き続けているのをどう励まそうかと、とても困惑していた 終わり良ければ全て良し。とはよく言ったものだが まぁ結局はそうなのだろうと感じている 終わりが最悪の状況になってしまえば 取り返しはつかないし、後悔は根深く残ってしまうだろうから 今回はよかったと、本当に安心している 彼女の両親と少し話す時間があって そのときに、もうこのことは話さないと決めた だから彼女には何も言っていない ほとんど覚えていないらしいので、誤魔化しておいた まだ私達の夏は続いている 坂の上からキレイな砂浜と海を眺めながら 私もアイスを頬張った
もう言葉は要らないから
付き合い始めた頃はさ 「思った事はお互い伝えあって、改善していこうね」 って言ってさ 毎日いっぱい話して、毎日が楽しくてさ いつの間にか悪いことじゃなくて良いことを伝え合ったりしてさ そのたびに私達は心から笑ってさ 悪いことしたり、ルール破っちゃったらすぐごめんなさいって言って 結局大きな喧嘩なんて一度もなかったよね 本当に楽しかったなぁ 写真だっていっぱい撮ったよね きれいな風景を撮ろうとしたら、毎回目の前に来て映ったり 記念日って言って買ってきてくれたお花の成長を撮ってると、ピースを入れてきたり それこそ、花が咲いたというか、満開のような毎日だったね もっと時間が経ったときにはさ 言葉で伝えないでもやりたいことが伝わるようになってさ そんな毎日がちょっぴり寂しく感じたりもしたけどさ より仲良くなった証だって思ったら、それもまた楽しく感じたりしてさ あの時やった、「テレパシーっ!」ってやつ、未だに思い出すと笑っちゃうよ ………… 私、何か悪いことしたかな 始めた時みたいに、ゆってくれていいんだよ 今だって完璧に考えてることが分かるわけでもないしさ やっぱり言葉にしてくれなきゃ分かんないや ごめんね、なんか未練タラタラで 私だけ引き止めたりして、鬱陶しいよね 最期にありがとう… さようなら。
ハルシガツ
春になりました しかしながら実感が湧きません 教室から見える景色に桜がありません 建物が高いので下にあることはあるのですが見えません 春らしい気温なのかわかりません 朝はまだまだ寒いので冬気分です たくさん歩けば暖かくなるので春かもしれません クラスが変わりました これが春なんだとも思えません 面倒なだけのシャッフルです テレビの番組が変わりました 4月から始まるものは春というより節目だと感じます 本当に春になったのでしょうか ある程度離れれば桜が咲いています それを見れば春だと感じるのでしょうか 遠いので歩きたくありません 面倒くさがりなのは変わりないので 自分はたいしてへんかしていません 強いて言うなら2年生になったことくらいです 特に何も感じません 実感することがありません この季節は一体何なのでしょうか 小説でいえば巻数が変わるところでしょうか しかしそれは大した変化ではありません 次の巻を開けばなんの景色も変わりません なんだかよくわからない季節です 夏は暑いので夏です 特に夏休みが楽しみです まだまだ先ですがね 冬は寒いので冬です クリスマスやお年だm、お正月が楽しみです 秋はなんでしょう 春と同じでよくわかりません この中途半端な季節がわかりません 気温が丁度いいといえばそうですが 特徴がわかりませんね 嫌では無いのですが やっぱりなにか欲しいです 何を言いたかったのか忘れてしまいました ひとつ言うならアレですね LHRは暇です
サポーターの加護で冒険者
ある王国のはずれに男の子が生まれました この世界では、生まれた時に神様から“加護”というものが与えられ その男の子には“サポーターの加護”が宿りました 男の子はすくすくと成長をして、冒険者になりました しかし、彼の加護はサポートが主なので、パーティーを組まなければなりません 依頼の紙を眺め続けて、やっと見つけた薬草採取 王国を出てすぐ近くの森で取れる薬草なので 報酬は少なくてもやるしかありません そんな毎日を過ごしていたサポーター君 いつもの様に薬草採取をしていると、突然ゴブリンが一匹現れました サポーターなので武器は上手く扱えません しかし、やらなければ殺されてしまう 自らを奮い立たせて薬草採取用のナイフを握る ゴブリンはサポーター君に飛びかかる だけどやっぱり怖くて目を瞑る 突然「おりゃぁ!」と力む声が聞こえ サポーター君は恐る恐る目の前の光景を確認する そこには、同じ背丈ぐらいの、赤髪の女の子が立っていた その手には血のついた剣、足元には倒れたゴブリン 「大丈夫?」 そう声をかけられたサポーター君は、少し顔を赤くした 恥ずかしかったのか、それとも。 まぁなんやかんやいろいろあって、赤髪の女の子はおなじ冒険者だと分かり ふたりでギルドに向かっていた 歩いている時はとても静かで、とても気まずかった 依頼報告を終え、僅かな報酬を受け取り振り返ると、そこに赤髪の子がいた サポーター君はなにか用でもあるのかと聞こうとしたが、ハッとして 「助けていただきありがとうございます!」と手持ちの財布を差し出した 命の恩人なのに、それを忘れて何か?と尋ねようとしていた自分が愚か者だと気づいた 「手持ちはこれしか無くて、明日も働きますので、その依頼報酬を差し上げますから」 と、もじもじと話していると、赤髪の子が不思議そうに頭を傾げた 「ただ助けただけなのに、どうしてそんなにお礼をしようとするの?」 サポーター君は一瞬口を開けてぽかんとしていたが 「あ、あなたは、命の恩人なので、こ、これくらいのお礼は、必要だと、」 赤髪の子は「んー」と悩んだあと、ハッと何かを思いついた様に笑い、大きな声で言った 「私は剣聖の加護を持っているんだ!人助けなんて当たり前のことなのだよ!」 本人の加護は本人しかわからない。他人には見えたりしない。つまり嘘も吐ける。 赤髪の子はサポーター君の手を取り、ギルドから走っていきました また王国を出て、近くの森の先、きれいな川が流れる場所へ連れて行かれた そこでいきなり立ち止まって、サポーター君の肩を強く掴んで言った 「どぉしよぉ、見栄張っちゃったぁぁ」と泣き崩れた グスンと泣き崩れた彼女を、サポーター君は座れる所まで連れていき 落ち着くまで付き合った、そして気がつけば夕方 「ほんとは、“剣聖”を目指してる剣術使いなんだよぉ」 と、泣き出しそうな顔で言う サポーター君は、思わず笑ってしまった 「わ、わらったな!」と怒らせてしまったので、理由を伝えた 「最初は、なんてすごい人なんだ!って思ったけど、思ったよりも可愛くて、つい、、」 そういうと、彼女は顔を赤くした?夕日に照らされただけかもしれないが 「そういえば、君の加護はどんなものなんだい?非戦闘系だとは思うんだけど」 サポーター君は、サポーターだと答えようとした しかし、思い切って嘘を吐いてみた 「支えし者」 これは何百年も昔の勇者率いるパーティーの二番手だった人の加護だ 味方にあらゆるバフをかけ、デバフを無効化し、支えることのできる加護 「え、えぇ!?」と後ろにぶっ飛んで木に頭をぶつけた赤髪の子 「なんてね。嘘だよ。ただのサポーターだよ」 冒頭でも伝えた通り、この世界では生まれた時に加護が与えられる それに、ひとつだけ伝え忘れていたことを言う 加護は人の手で変えることは出来ないが 加護は“進化”する