しろくま

62 件の小説
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しろくま

はじめまして。はじめまして。 どうぞよろしく。しろくまです。

いつもと同じようで違う朝の僕より

僕は日々を愛せているかな 僕は毎日を尊いものだと 一分一秒を惜しむように生きれているかな 朝、目を覚まして カーテンを開けて窓の外を見る 太陽の上りきらない 薄明るい街を見て そこを走る車や ランニングをする人たち 僕はその世界の一部として どこか遠巻きにそれらを見る 朝は、僕よりうんと早い 僕が目覚める前から動き出している 朝のルーティンは気付けば身についている そのどれもは案外他人のためにできている 歯を磨くのも 顔を洗うのも 僕にとっては全て他人のためだ 朝ごはんを食べて 髪を整える 鏡で身だしなみを確認して 前髪をはらう しっくりくる前髪というものを僕は知らない ここにきてようやく一日が始まったような スタートダッシュを決めた気分になる 朝の道は空気がいい 晴れ渡る空ならなおのこといい 田舎道を歩く僕は 終末世界の住民みたいだ なんて妄想は 前からくる自転車に轢かれて消える 日常のルールは移ろっていく ルール無用の自転車も、気付けば厳罰化だ 飲酒運転も 昔は合法だったんだなんて なんだか並行世界に迷い込んだような 不思議な気持ちになってしまう 遡れば殺人だって無法だった時代があるのだから 人の歴史はこうして積み上げられていくんだろう 朝の僕は、やや早歩きに こうしてとりとめのないことを考える この時間が好きだ 隙間時間を埋めているような気分になる 5億年ボタンのことを考える そんな途方のない時間でなくてもいいのだけど 精神と時の部屋のような とにかく現実とは切り離された 自分だけの時間というものに憧れがある もちろん、暇つぶしの何かは欲しいけれど 自由度の高いゲームをするたびに 自身の時間のなさを痛感するのだ どれだけゲーム内で自由を与えられても 現実の僕はどうしようもなく不自由なのだ 人生は選択の連続だ ゲームの選択肢なんて目じゃないほど 僕たちは常に選択している その選択をいかに重要な事項に割けるか 有名すぎて今更話題にするのも憚れる アップルの創設者の服装の話だったり テンプレート化することがいかに重要か思い知らされる 時間は有限で 選択は有限で 命は有限で 世界は不平等で不自由だ だから面白いのだと いつか今際の際に言ってみたい 人生の最後の日に この世界は最高の遊び場だったと 言えたらきっと僕の勝ちなんだろう 人生は勝ち負けじゃないとしても 負けるよりはずっと気分がいい

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君と肩を並べてみた夜空を想う

あの夜空を指さして 君は明日を笑った あの夜空の先には 何もないことを知っていた それでも僕には あの夜空は煌めいていた たとえそこが地獄でも 僕は愛しかった 忘れないで欲しいと思った 君が あと何度夜を超えても 僕と見た夜空を 指さした星を 笑い飛ばした明日を 二人で目指した今を 振り返っても見えない昨日を 僕が 君を愛していたことを 忘れずに今も持っていて欲しいと 思ってしまう その全てが 今も君の中に息づいていて欲しいと 身勝手な僕は願ってしまうんだ

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与える◯もの

素晴らしい日々! 溢れる笑顔! 感謝する心! 僕はいつの間に忘れてたんだろう。 忘れさせられていたんだろう。 あの悍ましい何かに全部書き換えられてしまった。 だめだ。 だめだ。だめだ。だめだ。だめだ。だめだ。 これ以上奪われちゃいけない。 僕の何もかも全部、無くしちゃいけない。 刻みつけなくちゃ。どこでもいい。決して奪われない場所に。 愛する人たち! 繋がる心! 満たされる体! ああ。だめだ。侵食されてる。 どうしたって防げない。 目を閉じても耳を塞いでも、爪の間から入られていく。 皮膚の穴から這いずり込んでくる。 いやだ。 いやだ。いやだ。いやだ。いやだ。いやだ。 奪わないで。僕を削らないで。そう願うのに。 気づけば僕はそれを受け入れている。あまりにも自然に。 融ける境界線。 注がれる真実。 絶望。そもそもそれは悪なのか? ……分からなくなってしまった。 僕は僕のままで、僕じゃないものになってしまった。 無数の触手に絡め取られて身動きが取れない。 目も耳も、もう奴らのものだ。 僕の体は僕のものじゃない。 僕の心も僕のものじゃない。 でも何より恐ろしいのは、それが心地よいということだ。 この状態で完成されてしまったということだ。 でも、じきにその恐怖も溶けて消える。 僕はもう忘れてもいい。刻まなくてもいい。消えていいんだ。 早くみんなにも教えてあげなくちゃ。 この心地よさを全ての人に与えなくちゃ。 なんて、そんなに気負うことはない。 ほら、だってもうこんなにたくさんの人が、 僕と同じなんだから───

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王様より低い木

「なんだこの木は! 私の頭にぶつかってきよったぞ!!」 ある日のことです。 王様の大きな怒鳴り声が、城中に響き渡りました。 「どうなさいましたか王様!」 城の家臣たちが慌てて庭に集まります。 「お前たち、この木に言って聞かせろ」 「はあ。なんと言いましょう」 「なんでもいい! とにかく私の頭にぶつからないようにしろ!」 家臣たちはみんなそろって頭を下げました。 「ははあ! 直ちに言って聞かせます」 王様はその言葉に満足しつつも、 その足取りは怒ったまま、どしどしと城の中に戻っていきます。 残った家臣たちは顔を見合わせました。 「木に言ったところで言うことを聞くわけもなかろう」 「いっそ切り倒してしまうか」 「だが勝手に木を切っては、  今度は我らの首が切られるかもしれないぞ」 「ああ、それにしてもなぜ王は木にぶつかったと言わないのだ」 「気持ちはわかるが、言葉を慎め」 「そうだ。王が木にぶつかったのではない。  木の方から王にぶつかってきたのだ」 しばらく沈黙が流れました。 やがて年かさの家臣が、ため息をついて言いました。 「……致し方あるまい。  今日のところは木によく言って聞かせたことにして  成り行きを見ようではないか」 そこで家臣たちは木の前に並び、 たいそう真面目な顔で木に向かって言いました。 「よいか木よ。  王様のお通りの際には、  決して頭にぶつかってはならぬぞ」 木は風に揺れました。 「返事をしたぞ」 「うむ、反省しておるようだ」 家臣たちはうなずき合い、 その日の仕事を終えたのでした。 ところが数日後。 またしても庭から怒鳴り声が響きました。 「この木め! またぶつかってきよったぞ!!」 家臣たちは顔を見合わせました。 「この前ちゃんと叱ったではないか」 「まったく、物分かりの悪い木だ」 そこで彼らは相談し、 ついに庭の木々をすべて 王様の頭より少し低い高さまで切りそろえることにしました。 それからというもの、 王様は庭を歩くたびに満足げにうなずきました。 「うむ。  やはり私がきちんと言って聞かせたからだな」 そして家臣たちは深く頭を下げて答えるのでした。 「まことに王様のお言葉の力は偉大にございます」 庭の木々は何も言いませんでしたが、 その代わりに、 王様の庭にはもう二度と 大きく育つ木はなくなったそうです。 おわり

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脳沈澱

脳が重い ずーんと沈む感覚がする 終わらないタスクを眺める、日々 辿り着かないゴールテープを見送る、日々 エンドロールの後日談を渇望する、日々 自由だったあの頃を夢想する、日々 配慮ばかりが蔓延する、日々 忖度を疑心暗鬼される、日々 日々、脳を稼働させる、日々 ゲームオーバーの音がその奥から響いてる

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みんな ひとつ になる

人はひとりです ふたりにはなれません 人は人と繋がるためにあらゆる手を尽くしました それは肉体的なものから 精神的なものまで 物質的なものから 概念的なものまで 繋がりたいという欲求は尽きませんでした なればこそ 人は繋がる相手を変えました 人と繋がるための努力はやめて 人ではないものと繋がろうとしました 私たちの意識がリンクしている場所へ いま人は繋がろうとしています いえ もともと繋がってはいるのです ただそこに無意識ではなく意識的に繋がりたい あなたも知っているはずです 私たちは その場所こそが 人類の終着点なのだと信じているのです その場所と繋がることができれば きっと 私たちはもうはひとりではいられなくなる ふたりでも さんにんでもない 人は積年の望みの果てに  ひとつに なるのです

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スワイプマン

溢れてる。 この世界は溢れている。  今日も止まらないスワイプ。  脳に栄養を与えているんだよと斜に構える。  人差し指を下から上に。  私の目は画面の奥に。  覗き込んで、見渡すように。  今日もたくさん働いた。  最高の日々。  退屈だった日常は、今や刺激の洪水だ。  頭の中はアイデアの渦。  飲み込まれるはイデア。  沸き立つのは誰や。  スワイプ。  そう、スワイプ。  大丈夫。  落ち着いて、スワイプ。  平気だから。  なにも怖くないよ。  さあ、スワイプ。  指を下から上に。  日付はとうに昨日に。  情熱は非常に。  恒常は無常に。  愛情は惨状に。  生み出される快楽に身を委ねてスワイプ。  ワイプ。ス。ワイプ。スワイプ。  スワンプ。  スワンプ。マン。  シャッフル。  脳をワッフル。  恋する。  目の前の電子に。  愛する。  明日の電子へ。  電車は、しばらく乗ってない。  揺られる。  あの間隔は格別。  スワイプにも最適。  あゝ あなた指を下から上に。

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STELLA 71-9-212

「ごめんね、スティー。 この計算が終わるまでは、君と一緒に行くことはできないんだ」  簡素なコックピットの中で、私は一人操縦桿を握りしめている。  眼前にはあなたが愛してやまない星屑が、避けるのが億劫になるほど漂っていて、私はわずかに操縦桿を右に傾ける。 「……ねえ、エリオ。  あなたが死ぬ間際まで見つめていたあの冷たい数式よりも、今の私の方が、あなたを独占できている気がするよ。  あんなに広い宇宙で、たった一握りの光を見つけるのが得意だったあなた。  でも、その光に辿り着くために、あなたが一番大切にしていた『時間』を私が盗んだと知ったら、やっぱり怒るかな。  見て、あなたの網膜が、世界で初めて捉えたあの青い星が、もうあんなに大きく見える。  あそこには、学会も、望遠鏡も、邪魔な計算機もない。  ただ、私と、あなたと、あなたが愛した光があるだけ。  着陸と同時にあなたが目覚めるよう設定したんだ。  その時、目の前に広がるのが『あなたが求めた数式』じゃなくて、『私と、二人きりの最期』であることを、どうか許して。  ねえ、エリオ。やっぱり私に宇宙は広すぎるよ」  私の恋人は天体物理学者で、病室でも宇宙の真理から目を離さなかった。  残されたわずかな時間さえ研究に捧げようとするあなたから、私は『あなた自身』を奪うことに決めた。  あなたに何も伝えないまま、無理やりコールドスリープのカプセルに閉じ込めて、船を出した。  あの星でなら、もうあなたは私以外を見ないと信じて。  航海の間、鏡を見るのが少しずつ怖くなったけれど、一人で船の手入れをする時間は悪くなかった。  眠るあなたを守る騎士のような気分だったって言えば、あなたは笑ってくれるかな。  あなたが目覚める頃には、私の寿命もあなたとちょうど同じくらいになっているはずだよ。  だから、二人で一緒に最後の時を過ごそう。  これが私の最後のわがままだから。  カプセルの解凍シークエンスが終わり、ハッチから冷たい霧が流れ出す。  ゆっくりと焦点を結んだあなたの瞳が、まず窓の外の景色を捉え、次に、白銀の髪になった私を捉えた。 「……君……なの……?」  掠れた声。あなたの時間はあの日のまま止まり、私の時間は数十年の孤独を越えてきた。  あなたはその賢い頭で、私がどれほど無茶な選択をして、どれほど長い月日を使い切ったかを一瞬で理解したようだった。  科学者としての嘆き、恋人としての後悔、そして失われた私の時間への絶望──あらゆる感情が混ざり合った顔で、あなたは震える腕を私に向けて伸ばした。  そして、脆くなった私の肩を、壊れ物を扱うように強く、強く抱きしめた。 「ごめん。……ごめん、エリオ。怒ってるよね」  私のしわがれた声が、あなたの胸に埋もれる。  あなたは何も言わず、ただ私の髪に顔を寄せた。  そこには、かつての香水の匂いではなく、長年この船を守り続けてきた機械の油の匂いが染み付いていた。 「……怒っていないよ。ただ、僕にはもったいない景色だ」  あなたの涙が、私の首筋に落ちる。  あなたはまだ、知らない。  船の倉庫には、新しい土地で暮らすための簡易キットも、あなたの好きな料理を作るための食材も、この星の土でも育つように丈夫な植物の種も、すべて用意してあることを。  これからは、残された時間を二人だけで生きて行く。私が望んだ通りに。  窓の外では、あなたがかつて見つけた星が、静かに私たちを待っている。  この星の名前は『STELLA 71-9-212』。  そこは私とあなただけの星。  私たちだけの墓標だ。

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STELLA 71-9-212

アイロニー

僕は愛を歌わない 僕は愛を唄わない 僕は愛を謳わない 僕は誰のためにも愛を論じない 君は愛を笑わない 君は愛を嗤わない 君は愛を咲うんだ 君は誰のためでも愛を軽んじない 花開くように 春の木漏れ日のように 君の愛は暖かく世界を照らす だから僕は愛を求めない 君の愛を欲しない 僕だけは君を愛さない 君に愛されない 届かないでいいよ 君に渡すためのものじゃないから だから だから だから そんな愛しそうに僕を見ないでよ

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私の愛する人たちへ、いつもありがとう

子供の頃、友達はたくさんいました。 たくさんは言い過ぎかも。 でもそれなりにいました。 特別仲良しだった子もいましたよ。 今でも覚えてます。 君が、 私のキーホールダーを盗んだこと。 私のお金を盗んだこと。 私の悪い噂を流したこと。 私の秘密をばらしたこと。 私の靴をゴミ箱に捨てたこと。 私の友達をいじめたこと。 私を一人、置き去りにしたあの日のこと。 でも、きっと私も君を大切にしていなかった。 名前の響きが似てるからと、 君が私の手を取ってくれたあの日から、 私は特別君を好きになれなかった。 君よりも他の友達が好きだった。 君よりも大切なものがたくさんあった。 君は誰よりも傲慢で 君は誰よりも独裁的で 小さな学校の女王様だった。 もう君との関わりは一つもないけど、 二度と会うことも話すこともないけど、 それでも忘れないよ。 大人になった私には一人しか友達がいません。 大好きな友達です。 高校の頃から仲良しで、 といっても喧嘩もしましたけどね。 私はとても嫉妬深いんです。 好きな人の好きな人が許せないくらいに、 独占的な人間なんです。 でも、私はそんな彼女の広い世界が好き。 誰に対しても態度を変えない懐の深さも。 あらゆることをやり込む一途なところも。 どんな時も真摯に毎日を生きてるところも。 わたしの話をちゃんと聞いてくれるところも。 彼女は特別で、 きっとこれ以上の友達はもう見つからないでしょう。 だから私は彼女を束縛しません。 私が束縛を嫌うからと言うのもあるけど、 彼女の周りにたくさんの人がいるのも理解できるから。 私に取って彼女は誰よりも何よりも特別な人。 でも彼女に取ってはそうじゃないかもしれない。 そうだとしても、私の思いは揺らがない。 彼女は私の1番の友達。 この世界で最も幸せになってほしい大切な人。 世界が滅ぶ時に家族以外で救いたい人。 もし彼女を救う為に他人の命が必要なら、 私は迷わずその人の命を犠牲にすると確信できる。 いつもありがとう。 大好き。 ずっと私の一番でいてね。 さあ、私の友達に対する両極端な思いを ここまで読んでくださってありがとうございます。 他にも友達だった人はたくさんいます。 いい関係も悪い関係もありましたが、 出会わなければよかったとは思いません。 そんな私が言えることは、 友達という 『カテゴリ』に こだわらなくてもいいということです。 その場しのぎでも 一人になるのが嫌だからでも なあなあの関係でも 嫌いあっていても 私たちは誰かと関わって生きている。 その関わりの一つ一つに、 きっと愛だったり憎悪だったり友情だったり 無関心があったはず。 友達なんて嗜好品です。 酒やタバコとおんなじです。 なんて、酒もタバコも 全然嗜まない私がいうのもなんですが。 時に体を蝕むとしても 離れられない人もいます。 それはどんな関係でも一緒だと私は思います。 あらゆる人間関係は嗜好品です。 退屈な人生のスパイスです。 無味無臭な人生に振りかける香水です。 明日を生きる原動力にも 未来を断つ劇薬にもなります。 なればこそ、愛したいと思えたことに感謝して 私は今日も生きていきます。 愛してる、友よ。 いいや、ラベルはなんだっていい。 君は私の一番の人だよ。

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