雲丹丸 音夜
27 件の小説無題
何も無い。 何も無いんだ。 でも、辛い。助けて
旅記録
「行ってきます」 何十年も営んでいた古いカフェに、一人の旅人が現れて、 僕の人生は変わった。 必要最低限の荷物と、旅人がくれた本、そして小さな勇気を持って、お店を後に旅を始めた。 始めたんだけれど。 「おなか………すいた……」 店を後にして一週間。ちゃんとした食事を口にしてない。食べたものといえば、旅支度をする時にバックパックに入れた、牛という生物の干し肉だけ。あとは、雨水をろ過した飲み水。 多分、今の僕はとても醜い姿をしているんだろう。 「カロリーミート……食べたい…」 僕が開発した栄養補助食、カロリーミート。そのまま食べてもご飯変わりに出来るから、つい食べてしまう。 数日前に底を尽きてしまい、そのタイミングで旅を始めてしまったため持っていくことが出来ず。 「あのおじさん、こういう時、どうしてんだろ……飢えに、身を任せてる、訳ないよな」 バックパックの中を漁っても、贅沢なものは何も入っていない。 干し肉だって、いつ底を尽きるか分からない。 苔色のロングコートのポケットから、地図を取り出す。 目指している街まで、後3km。 無理だ。 歩けるはずがない。 「………どうしたもんか」 そばにあった岩に座り、空を見上げる。 身体全体に当たる日光の温かさが空腹感も何もかもを忘れさせる。 眠っていた。 目を覚まして、辺りを見渡す。綺麗な夕焼けが広がっていて、少し肌寒い。 今日中にはなんとか街まで着いておきたい。溜息をつきながら、重い腰を持ち上げて、歩き始める。 「パルサに着いたら、美味しい料理でも食べたいなぁ……ダメだ。こんなこと考えてると余計にお腹が空く」 口の中であふれてくる涎を飲み込んで、歩みを早める。 パルサはこの世界で唯一たくさんのヒトが集まる街だ。 食事に娯楽、なんでも揃っている街。 早く、たどり着きたい。 そこにあるホテルで、ひと休みしたい。 にしても、寒いな。 昨日はこんなに寒かっただろうか。 たしかに、ここら辺一体は、朝と夜の寒暖差が激しい。 でも、こんなに寒さを感じたのは今日が初めてな気がする。それに、眠い。 昼にちゃんと眠ったはずなのに。 お腹が空いた。 寒い。 喉も乾いた。 寒い。 眠い…………………………………… 「ん……」 なんだろう。 暖かい。 こんなにあったかいの、久しぶりな気がする。 ここは、どこ。 美味しそうないい匂いが、ふんわりと香ってる。 パルサに、無意識のうちに、着いたのかな。 ゆっくりと目を開ける。 「目、覚めたか?」 聞き覚えのある声。 誰だっけ。 思い出せそうなのに、思い出せない。 「まさか、君が旅を始めたとは。 倒れてるとこ見た時にビックリしたさ」 思い出した。 この声。 「俺のこと覚えてるかい?君がやってた珈琲に、突然お邪魔した者だよ」 「たび、びと……さん?」 そうだ。この声、このちょっと渋みのある声。 前にお店に来てくれた旅人だ。 「旅人?……あぁ、あの時は名前を教えていなかったな」 男の人が、僕の目をしっかり見て口を開く。 「俺の名前は、ジョーンだ」
ループ
夜。 暗くて、暗くて、静かで、一人ぼっちなんだって、よく分かる。 でも、寂しくない。 一人だから、したいことができる。 布団に入ると、暖かい毛布に包まれて眠気が私を迎えに来る。 微睡む意識の中で、今日の反省をする。 今日は、これ出来なかったなぁ。 あの時は、こう言えば良かったかもなぁ。 なんで自分は出来ない事ばかりなんだろ。 ほんと、嫌だな。 自分なんて、嫌い。 そんな夜を、繰り返していく。
君に会うまで
初めて見た時、すぐに話しかけなきゃって思った。 なんでだろう。 でも、話しかけなきゃ、絶対後悔するって思った。 話しかけたのはいいんだけど、いきなりでこの言葉は気持ち悪かっただろうな。 「LINE交換してくださいっ!!!!」 挨拶もなしに、最悪すぎる一言目。 でも、交換できてうれしかった。 その時は、あんまり話せなかったし、あとからゲーム友達になるなんて想像もしなった。 その子が、集まりで自分の斜め前に座ってて。 自分がたまたま後ろからその子のスマホのホーム画面を見てしまって。 それが、自分もやってるゲームのキャラだって気づいて。 運命を信じるつもりは全くないけど、でも本当にそんな気がした。 運命なんて言う言葉で表せないくらいに嬉しかった。 今では、ゲーム友達になって、時々一緒にそのゲームする。 けどその子は、最北端に住んでいるから、ゲームは一緒にできても通話がいつも繋がりづらい。話したい事いっぱいあるのに、いつも話せれないままゲームが終わってしまう。 本当は直接会いたい。 会いたいけど、会うのも厳しいかもなって思ってた。 そしたら、この前、会わないかってその子からLINEがきて。 自分さ、半年も待てないって思ったよ。 でも、同時にどんなつらいことも頑張れる気がした。 どんなにつらくて、暗くて、最悪な気持ちになってもなんだか君に会うためだったら乗り越えられる気がする。 後、五か月後。 やっと、やっと、君に会える。 明日も、明後日も、生きるのが楽しみで仕方ない。 だって、君に会えるから。
本音かぁ
いつかは静かに暮らしたい。 心がザワザワしてない日常が欲しい。 心友が欲しい。 なんでも話せる関係っていいよね。 私の願いはいつになったら、叶うかな。
次会うときは、丘の上
青い地球と、満点の星空がよく見える丘。 その丘の上で、ボクとアリサは 「ボクッ!!ライラっていう!!」 「え?」 「おまえ、なまえ、なに?」 「へ?名前……私の?」 「うん。おしえて」 「あ、えっと、私の名前は、アリサだよ」 「アリサ!それ、なんていう?」 「?あ、これ?この花はリンドウって言うの。素敵な色でしょ」 「リンドウ……あれは?なんていう?」 「あの木のこと?あれはサクラっていう花を咲かせるの。一年のうちでほんの一瞬しか咲かないの」 「ふーん……」 「ライラくんは、お花好きなの?」 「んーん。オレは、ずっとパパからたたかい、ならってる」 「そう、なんだ」 「アリサはたたかい、すきか?」 「私は、好きじゃないかな。でも、お花は好きよ」 「じゃあ、オレも!オレもおはな、すきになる!」 「え? ふふっ、じゃあお花について教えてあげるね」 「やった!つぎも、ここ?」 「そうね。じゃあ、約束しましょ。手を出して?」 「本当に行っちゃうの?」 「……あぁ。でも、勝利したら、やっとお前と…アリサと…」 「……………行かないで……ライラがいなきゃ、私……」 「っ…アリサ……………必ず生きて帰ってくるから」 「………約束。お願い。約束しないと、ライラはすぐに忘れちゃうから」 「そうだな。オレ、忘れっぽいもんな。アリサにはそれでいっぱい迷惑かけたよな」 「ある時は、大事な約束をすっぽかして他の友達と遊びに行ってたよね」 「あれは……ほんとにすまない……」 「ふふ……………………………………ねぇ、生きて帰って。帰ってくれないと、私、一生怒る」 「アリサ。手、出して」 Let's pinky swear that we'll meet again (また会うって、指切りしようよ) 「アリサ、ただいま」 「おかえりッ……!」
最初からやり直せたらなぁ
産まれる前からやり直せるなら、私はこの世に生まれたくない 私は私自身が嫌いだから、この世に存在して欲しくないと自分でもおもう。 一体いつになったら、心置きなく命を投げ出せるのかずっと考えてる でもそればかり考えるのは辛い だから、初めから存在しなければ良かったのだ そうすれば、こんな気持ちになることもないし、誰かのことを考える必要も無い 初めからやり直せるなら、私は自分の存在を無いものにしたい 誰でもいいからさ、私の存在を、命を、消してくれたら、いいのになあ
私の体験談
私は、物知りだねとよく言われます。 でも、自分からしたら、別に勉強をした訳でもないので、いったいなぜ自分が物知りと言われるのか分かりませんでした。 自分が知ってる情報をただ口に出しただけです。 でも今になって分かる気がします。 たぶん、適当に見つけた情報を謎にずっと覚えていたんだと思います。たまたまテレビで見た、スマホで見たことをずっと覚えているんです。 「このアニメ知ってる?」 「あ、それ知ってるよ」 「なんか、君ってなんでも知ってるよね?この前見せたアニメも知ってたし」 (たまたまYouTubeで見かけただけなんだけどなぁ) 「そうかなぁ……」 友達や家族と会話してると必ずこんな風な会話になります。 こんな感じで、体験談みたいなのがあれば教えてください
スターランナー①
「やれるな?」 父からのその一言を、今でも覚えている。 俺の名前を世界に広めたきっかけの言葉。 それでいて、俺という人の存在意義を無くしてしまった言葉。 俺はもう、この宇宙で、生きる意味がない。 ここには、“時”という感覚がない。 なので、今が何年か聞かれても答えられない。 でも、ここには、沢山の人の命がある。 生きている人の命。 死んでしまった人たちの命。 それらが、まるで、重力のようにここの人たちの背中に重くのしかかっている。 「休暇が欲しいな」 隣を歩く同期のフィリップが静かにそう零した。 「そう言えば長らく休暇取ってなかったな」 「だろ? はぁ、どうしてこんなブラックな所で働いちまったんだ、オレは」 「家族を世話するためだろ」 「そういう意味じゃなくてさ。なんであんな分かりやすいオイシイ話に乗っちまったんだろうって話」 あぁ、そうか。フィリップはスカウトでここに来たのか。 知ってはいたことだけど、改めて聞くと自分がやはり皆とは違うものであることを実感した。 「家族の世話つったって、中々家に帰れないんじゃ意味ねぇよ。金だけ仕送る生活にはもう飽きたさ。」 「そうか……」 俺には、はっきり言ってその感覚が分からない。 分からなくて、当然か。 「その点お前はいいよなぁ。 家族みんながこの職場ー国家宇宙機関ーで働いてるんだから。」 「そんな事ないよ」 「無くはねぇだろ。 俺だったら嬉しすぎて毎日仕事が楽しみで仕方ないのに。」 家族と仕事をしているシーンを想像しているのか、フィリップがニヤける。その顔を見て、俺は自分の父親を思い浮かべた。 厳しい顔つきで、冷たいコンクリートのような目付き。 フィリップのような慈愛に満ちたものはなく、自分の息子を本当の息子と思っていないような視線。 口を開けば、出る言葉は「愛してる」とか「大丈夫か?」じゃなくて、「今日の任務はお前一人でもできるな?」。 多分この人は俺の本当の父親ではない。 そう言い聞かせて自分を納得させた。 納得させなければ、強く願ってしまうから。 「一度でいいから愛を言葉で伝えて欲しい」って。 「おーい。 大丈夫か?タクト?」 顔をまじまじと覗き込まれながら声をかけられて、意識が現実へと戻る。 あれ、なんで、俺。 あんなクソ親父のこと考えてんだ。 「どしたどした?ぼーっとするなんてお前らしくねぇな。疲れてんのか」 「……かも……な」 ものすごい歯切れの悪い返事だったな。自分のことなのに他人事みたいにそう思った。 「疲れてんだったら、休むに限るぞ。ちゃんと休息は取れよ。もうすぐ幹部選挙も始まるみたいだし。お前、今年出るんだろ?」 フィリップの質問され、俺は黙ってしまった。 幹部選挙。 国際宇宙機関で十年に一度開かれる選挙。 立候補したもの同士、トーナメント制で戦闘を行い最後に勝ち残ったものが、この機関の幹部になれる。 幹部なれば一瞬で金持ちになり綺麗な女にも恵まれる。 男性たちにとってそれは夢のような最高の話であって。 それを理由に幹部を目指す人は少なくはない。 でも、幹部候補に選ばれるには条件がある。 「いいなあ。幹部。金持ちになれるらしいし。ま、戦闘経験が浅い俺には、夢みたいな話だけど」 幹部になる為には、最低でも10年の戦闘経験が必要で、基準を満たさないものは幹部候補に選ばれない。 「でもまあ、2年でこの役職まで上り詰めたんだろ?もしかしたら飛び級とか有り得るんじゃないか」 「茶化してんのか?お前だって世の中そう上手くいかないことぐらい分かるだろ」 フィリップに腕をつつかれ、二人で笑う。 「もうこんな時間だし、昼メシ食うか」 「だな。今日はどんなメニューかな」 「スコーンだけは出ないでくれ。オレ、嫌いなんだよ」 フィリップが顔の前で両手を合わせて、祈るようにそう零す。 そんなフィリップを見てたら、つい言葉が滑る。 「あ、さっき通りすがりの人が今日のメニューにスコーン入ってるって言ってたような」 「…………本当か??」 フィリップが歩みを止めて怯えたような目で俺を見る。 俺はそんなフィリップの顔を何秒か見つめた後に、歩き出して小さく言う。 「……な訳ないだろ。メニューなんて知るか」 「はぁ!?おま、騙したな」 フィリップの声を聞きながら、盛大に笑う。 ああ、こんなテキトーでくだらない時間だけが、ずっと続けばいいのにな。 窓から見える真っ青な地球を見て、そう思った。
I don't even have a clue about you
退け そこを退け 私はお前なんか眼中にもない 道端で飢えた獣みたいに這いつくばって 気持ち悪いのよ おまえのその目つき その言葉 私の心を動かす言葉なんて一つもない あら、私がそんなに羨ましい? こんなにも美しくて、強い私がそんなにも羨ましい? 馬鹿ね。 勝手に地べたで妬いてればいい。 私はそんなお前の前を歩いてやる。 どう? 最悪な気分でしょ。 でも、私は最高な気分よ。 だって、レッドカーペットを歩いてるんだもの。 お前たちの怒りや嫉妬が、レッドカーペットを歩く私を照らすスポットライトよ 私のためにライトを照らしてくれてありがとう おかげで、私の美しさがさらに際立つ ねえ、いつまでそこで私を眺める気? 気づいたのなら、動いたら? 私はあなたを待たない あなたを待つほど暇じゃない だから、お前は私を超えることは出来ない 一生ね