雲丹丸 音夜

35 件の小説
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雲丹丸 音夜

知識も、経験も、文章力も未熟な癖に小説家になりたい 表MBTIは論理学者 裏MBTIは提督

一緒に生きる

なあ、待てよ。 待てって。 俺も今からそっちにいくからさ そう言って男は、柵を乗り越えた。 が、 女を、強く、強く、抱き締めてこう言った。 「一緒に行こう」 男と女は、その後どうなったのかは分からない。 でも、ある人がこんなことを言っていた。 「最近、ものすごく妙なカップルを見かけるんだ」 「女の人は、死んだように感情ひとつ顔に出さないのに、男の人はずっと笑顔で女の人に何か語りかけてんだ。ま、俺もあまり深くは語らないようにしとこう。こういうのは、そっとしておくのが一番だ」

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赤命

夢を追いかけて。 夢を追いかけて。 追いかけて。 追いかけて。 追いかけて。 その目は何を映したのか、何を映してきたのか、もう分からない。 パンが一欠片、口の中。 面白みのない味だけが口内を埋め尽くす。 「おいしかった」 感情のない言葉が空を切った。 地下鉄を乗り継いで、着いた場所。 見覚えがあるビルに、見覚えがあるホームレスのおじさん。 あ、見覚え、ではなかった。 いつも、いつも、通ってる通勤ルートに映る背景だ。 ここは、多分、現実。 いや、現実。 目的地まであと少し。 歩いているその横で、ギターの弾き語りをしている人が目に入る。 かわいそう。 そう思った。 でも、いいな、とも思う。 頭にこびりついた。 人の影。 朝に見た弾き語りの女が、頭にこびりついて離れない。 忘れようとすればするほどに、赤く光った、細い糸が、私の記憶を遠い過去へと引っ張り戻す。 そこには、見覚えがあるだれかが、哀しそうな顔をして立っていて。 辞めて。 もうやめて。 お願いだから、もうやめて。 あんな自分も、こんな自分も、もう見たくない。 傷つくのは、もうたくさん。 だから、もう、やめて。 私を今に、戻して。

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自分にとって

自分にとって、「死」とは、睡眠みたいなものだと思います。 ある日の仕事のとき。 訪問したお客様が飼われていた犬が、何ヶ月か前に亡くなられたことを聞きました。 その時、お客様は自分にこんなことを言いました。 「まるで寝ているみたいでしょ。今にも起きそうじゃない?」 息一つしていない犬の写真を私に見せながら、そう言いました。 そのとき、確かにって、心のどこかで腑に落ちました。 写真を見ていると、確かにそう思うんです。 名前を呼んで、起きてって声を掛ければ、今にも目を開けて、自分の方を見てくれそうで。 いつか、犬も人間も、いや、全生物が死なない世界が来ればいいのにって、そう思ったことを今でも覚えてます。

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ただ、

一滴。 たった一滴の汗が、君の横顔を伝って流れていく。 そして、地面に落ちる。 なんで、なんで、見とれてしまう? ただ、一滴。 ただ、一滴、君の横顔に汗が流れただけなのに。 別に特別でも、何でもない。 君は、流れる汗を拭きながら、この世で見たこともないような爽やかな笑顔を見せる。 私の顔に風が吹く。 ああ。 そして、気付く。 私、君のことが好きなんだ、って。 君のことが、好き。 好きなんだ。 好きで、好きで、たまらない。 「あの…良かったら、お友達になりませんか?」 どんな答えが返ってきたかは………

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甘い

甘い。 甘い。 甘い。 見てるだけで、甘さを感じる。 なのに、口内で舌を掻き回しても、その甘さは十分には得られない。 暑い日にアイスクリームを食べる、君。 アイスとそれを食べる君の唇を見ている、ただ、それだけで。 不思議な高揚感と、甘さを感じる。 寒い冬の日に、風に吹かれ、寒いと言いながら、その美しい艶やかな髪をなびかせる君。 それを見て、君の髪の毛、一本一本の美しさと繊細さを想像してしまう。 ただ、それだけで、溢れ出る高揚感と甘さを感じる。 甘い。 甘い。 甘い。 甘い。 甘くて、甘くて、甘くて、甘くて、どうしようもない。 僕の片思い。

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青りんご

青リンゴが、ある。 艶々輝く青リンゴが、たくさんある。 青リンゴは、そこにいた。 そこにいて、ただ、そこにいて。 ひとつは、上手く熟れた。ひとつは、赤いペンキを塗られた。 ひとつは、齧られた。 それはもう、無様に。 ひとつは、果汁を絞りに絞られて、最後には潰された。 果肉も果汁も、齧られ、飲まれ、 そのまま知らないだれかの喉を通って、消えた。 味わわれることもなく、消えた。 ほかの青リンゴは、それを見ていた。 見て、悲しい顔をして、心のどこかで、安心してたりして。 多種多様の青リンゴ。 あ、またひとつ、青リンゴが手に取られた。

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生きる

生きるって難しい。 いや、生きること自体は簡単。ただ、呼吸をすればいい。そうすれば、生きられる。 でも、“ちゃんと生きる”ことは、難しい。 そもそも、“ちゃんと”が分からない。 世の中の皆が求めてる、“ちゃんと”が分からない。 それが分からない自分は、出来ない自分は、社会人として、人間として、終わっている。 そう思う。 ほんとに、そう思う。

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母親

あなたが見てきたそれは、本当にあなたの母親ですか? 貴方が見ているそれは、本当の母親────────── あなたが見ている────────── 貴方が────────── あなたは、何が見えていますか?

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チャプター②

なんだこの感覚。 知ってるようで、知らない。 なんだ、これ。 胃の中から何かが、込上がる。 ダメだ、飲み込まなきゃ。 あれ、立てない。 力が、入らない。 意識が、 遠くなって………………… 記憶が戻ってきた頃には、俺は黒い服を着て葬式にいた。 おばあちゃんは家の中で躓いて、テーブルの角に頭をぶつけ出血多量で死亡。 そう医者が言っていた気がする。 おばあちゃんが家で倒れてるのを発見して、お母さんに電話をかけた。お母さんは、腰を抜かして漂う匂いのせいで吐いていた。お父さんは、込み上げる吐き気を我慢していたのか、何も喋らずに救急車を呼んでいた。 俺は、ただその流れを、ぼーっと見つめていた。 見つめていたんだと、思う。 どうにもここら辺の記憶が曖昧で。 そして、お葬式。 お葬式が終わった後、葬式に来ていた人達の泣き声や話している声で、頭の中の靄が消えたように目の前がハッキリとしてきた。 「タクト………帰りましょ………」 意識が戻ってすぐに見たお母さんの顔は、沈んでいた。 お父さんは、ずっと無表情だった。 俺は、そんな自分の親の背中を、ただ、じっと見つめていた。 折角の夏休みが、黒く塗りつぶされた。 おばあちゃんの身辺整理。家の片付け。両親が、忙しくなったぶん、俺が出来る範囲での家事をやることになって。 ほんとに、最悪 おばあちゃんの葬式から1ヶ月後。 もう、少しずつ、お母さんも立ち直り始めていた。 「ただいま〜……やっと家の片付け終わった〜」 「洗濯、やっといた……」 「ありがと〜。助かる〜」 そう言いながらお母さんは、スーパーで買ってきたものたちを冷蔵庫に詰めていく。 俺は、特に反応もせずに部屋へと向かった。 スマホを開けば、相変わらず、クラスメイトの楽しそうなストーリーばかりが流れてくる。 俺は、ぼーっとそれを見つめてため息をついた。 「なんで、俺ばっかり……」 そんな問いに、答えはない。 夕食の時間、メインのハンバーグに箸をつけたところでお母さんが俺の名前を呼んだ。 「言い忘れてたけど、明日おばあちゃん家の整理、手伝ってね」 「えぇ、なんでだよ……」 「私とお父さんだけじゃ、人手が足りないのよ」 「仲のいい親族にでも頼めばいいじゃん」 「そうしたいんだけどね……おばあちゃん変わり者だし。中々快くやってくれる人いないのよ〜……私も、本当はやりたくないんだけどね。家ごと燃やしちゃえばいいのに」 俺は、また小さくため息をつく。 肯定も否定もせずに、ハンバーグを一口食べる。 それを見たお母さんは、肯定と受け取ったのか「じゃ、明日はよろしくね」と話を無理やり終了させた。 俺、いいよとか、一言も言ってないんだけど。 お母さんを睨んだけど、お母さんはテレビに集中していて、気づいていなかった。

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肯定も、否定も、

死にたい そっか。 そうなんだね。 今の気持ちを伝えてくれて、本当にありがとう

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