無題

およそ50回目であろうアラームの音でやっと目が覚める。 起き上がって大きく欠伸をすると、くたびれた布団から抜け出して顔を洗う。そして、適当に髪とかを整えたら、必要な荷物とスマホを持って外に出る。 イヤホンをスマホに繋げて、スピード感のある音楽をながす。誰とも話すことなく電車に乗り、駅を出て、途中でコンビニに寄り、少し薄暗い路地裏に入り込む。 ここからは、音楽を消す。 イヤホンもしない。 いつ誰に狙われるか分からないから。 両サイドには全てに飢えた人達がネズミのように地面を這いつくばり転がっているが、それには目もくれず、ただひたすらに道を歩き続ける。 そして随分と歩いた先に、だいぶ古びている2階建ての建物が見える。 後ろに誰もついてきていないことを静かに確認して建物の中に入る。 「お、今日も重役出勤やなぁ」 階段を登った先にある扉を開くと、特にこちらを見ることも無く新聞を読んでいるこの会社の社長の天信さんがそういった。 「今日は何回目のアラームで目が覚めたん?30?」
雲丹丸 音夜
雲丹丸 音夜
知識も、経験も、文章力も未熟な癖に小説家になりたいクズ