赤ずきんちゃん
11 件の小説赤ずきんちゃん
こんにちは!Webには初投稿となります、赤ずきんちゃんです。 高校三年生になりました!性別は女です。 たま〜に更新するかもなので、良かったら覗いてやってください。 皆様の作品はどれも面白いものばかりで、これから沢山拝読できるのが楽しみです。 仲良くしてください! よろしくお願いします! 良かったらフォローして気軽にコメントください♪
試し読み!お久しぶりです。
前世ってあるのかな。自分の知らない自分がいたっていうのは少し怖いな。 でも案外面白いんじゃないのか。もしかして、天才画家ピカソだったり。日曜画家のルソーは嫌だな。貧乏人のまま死んじゃうなんて、いくら歴史に名を残したからってまっぴらごめんだよ。 そうだ。ナポレオンがいい。生きているうちから称賛されて、名誉も地位も財産も手に入れて、おまけに美しい女性を妻にした。最後は、絶海の孤島で死を迎えるんだけどね。 なんて。 ふと、そんなことを考えたのは、最近流行りの漫画の読みすぎのせいだろう。 手に持ったスクールバックをぶらつかせながら、戸田悠は帰路を急いでいた。 地面からゆらゆらと熱気が立ちのぼり、大粒の汗が額に浮かんだ。 歩く道は人一人さえ見当たらず、ひっそり閑としている。足音が石畳によく響く。 見回すと、昔ながらの木造建築がぽつぽつ並んでいた。歴史を感じさせる風情ある街並みは、至る所に緑が溢れていた。 玄関先で紫陽花が見事に咲いている。秋を感じるようになれば、紫苑やススキが通りを彩るだろう。悠の住む場所は、季節によって異なった顔を見せた。 悠が家に着くまであと少し。 今日は珍しい四時間授業だった。
♡ꔛꔚ伯̷爵̷家̷の̷奇̷妙̷な̷客̷人̷た̷ち̷
炎天の空に、誰かの叫ぶ声が聞こえた。 隣にいた彼女が、居住いを正したのが分かった。 「ラン。今の声を聞いた?」 戸惑いながらも、私はこう返す。 「ええ。すごく大きな悲鳴だったわ」 何かを考え込んだ表情がみるみる変わり、ぱっと花が咲くような笑顔になった。 「きっと……事件だわ!ラン、行きましょう!」 ここは、伯爵家が所有する海辺の別荘。 私の手をぎゅっと掴み、廊下を駆け抜ける少女。 絹のようにたおやかな金髪を、その美貌の上に溢れさせている。 エメラルドグリーンの瞳は好奇心を一杯にたたえ、今にも事件の真相を探り出そうとしていた。 ふと、心の奥底で抱いていた疑問が泡のように浮かび上がった。 ねえ、と問いかけてみたくなった。 あなたはいったい何者なの? 本当に私と血が繋がっているの? 三日前に出会ったばかりの、私の従兄弟に。 「 I 私の知らない私の従兄弟໒꒱·゚໒꒱·゚」 私が海岸に佇んでいると、羽根が真っ黒い、大きな鳥の群れがバサバサと飛び去っていった。 なだらかな曲線を描いた海岸に波が当たっては砕けていく。 水の透き通ったところが白く泡立てられる。 海辺一体は、まるで一面に雪を降り積もらせたようだった。 領地のトレードマークになりつつある真っ白い砂は、地元の人々によって瓶詰めにされ、近くの売店で旅行客へのお土産として売られている。 (ずっとどこか遠い所に行きたいと願ってたけど、ついに来ちゃったんだ――) 遠くで小さな影となった船が揺れている。 暖かさに瞼が重くなっていく。 まだこんなにも日差しがきつくなかった頃。 私は長らく学校に行けておらず、母はクリニックやカウンセラーを探しては次々に訪ね回っていた。 何に疲れていたのか、自分でも分からないまま、心と身体が朽ちていった。 人の繋がりの濃さには驚くばかりだが――私の祖母は、この海辺を治めている伯爵夫人と親しい間柄にあったらしい。 そんな私たちを見ていた彼女は、せっかくの長期休暇に入ったことだし、リフレッシュも兼ねて海を眺めてきなさい、と申し出てくれた。 そして今、ここにいて、柔らかい波の響きを静かに聞いている。 『海なんていつ以来かしら』と母は久しぶりに微笑みを見せ、申し訳なさが胸の中で渦巻くのをどうしようもなかった。 すうっ、と息を吸いこんで深々と吐き出す。 田舎の、混じり気のない爽やかさは、一陣の風となると体中を吹き抜けていった。 心地よさに思わず頬が緩む。 とにかくこの夏は、時間に囚われないゆったりとした時を過ごして、早く元気になれるよう努めよう――。 私の未来は、時を永遠に止めてしまった美しい絵画の中で、少しずつ、何かが変わり始めている気がした。 そう心に誓ったはずが、まさかこの、海と砂とお城だけが見える穏やかな場所で、あんなことが起こるとは思いもしなかったのだ。 「ラン!ドアの鍵を閉めるのを忘れずにね――!それからあまり遠くへ行き過ぎないこと」 扉の向こうから、母の声が響いてくる。 私はまさに出かけるところだった。 母の言いつけに軽く相槌を打ちながらも、これからする遊びの計画について思いを巡らしていた。 心がふわふわと空を舞っている気がして、思わず微笑みが漏れた。 底の見えない鞄から、鍵リングをなんとか探し出し、あたふたとしながらドアの戸締まりをする。 私たちが伯爵夫人から借りている別荘だが、15ヘクタールは軽く超えており、広大という言葉がとても相応しく、部屋は30個備え付けられていた。 ひたすらに長い廊下を歩く。 歩き、突き当たりに出た所で、バドラーやメイド達のための裏口階段を見つける。螺旋階段を降りる。ひたすら降りる――。 裏の玄関から、身を投げ出すように外へ出た。 「やった!自由だ……。これで、ベッドでごろごろしてるお母さんに、いちいち物を運ばなくても済む!あの部屋、とっても可愛いけれど、どこか窮屈なのよね……」 この数日間、母は私にあれこれ指図していた。
伯爵家の奇妙な客人たち 全ての解決編
貴方と共にいられるのなら何処だって良かった。 例え、底の見えない深い青の中だろうと、魔物が襲いかかってくる古の森だろうと、貴方が生きてさえいればそれで良かったのだ。 幾人もの手が灯火に重なり、紅い血の色が透けて見えるようだった。低く、唸るような誰かの泣き声が混じり入る。数人で力を合わせて引っ張ると、ボートの底が濡れた砂の上を滑りだす。中に入った重みに耐えられないのか、木の板が軋む嫌な音がした。 あれは、あの夜の記憶だった。雨だれが窓をぽたぽたと穿ち、曇り空が見えていたあの晩のことだ。 「メグ、また外を見てるのね。でもランスロット様は帰ってこないわ。だって今日は、、ねえ?」 夜の底が深い。柔らかなリネンのシーツに膝を崩しながら、一心に窓の向こう側を睨み付けるようにしていた。穏やかな海がそこにある。その、ため息を織り交ぜた灰色の上ー小さな光でもいい、何か人が動き回っている証がほしくて、私は眠ることをしなかった。 「馬鹿なメグ。あれだけお互いを思い合ってるように見えたのに、結局はこうなっちゃう運命なのね。でもしょうがないわよね、身分の差って、生まれながらの格差ってこんなもんだわ」 ランプから溢れる光が目障りだったのだろう。夢の世界に引きずり込まれながらも、私のルームメイトであり同僚は、ぶつくさ文句を絶やさなかった。 「ほんと、、馬鹿なんだから、、」 彼女がふっと意識を手放したのが分かった。 私の夜目は眠ることを知らない。むしろ冴え冴えとしていると言った方が良いかもしれない。 「ランスロット様。私の」 しばらくして、透き通った水面の続く先に小さな灯りを見る。どおん、と地響きの揺れが空気を伝い、続いて、空に明るい火花が散った。あれは結婚式を行うクルーズ船だ。 私は彼を愛し、彼は私を愛した。そんな彼が、今日、あの美しい船の上で私ではない女性と婚姻を結ぶ。 ランスロット様。私がこう呼ぶ彼の出生は、伯爵家の長男という由緒正しきものだ。 美しい夜の黒髪。薄い色の瞳は理知的で、彼の愛情が深まると優しく眇められる。ただの孤児に過ぎなかった私をメイドとして迎え入れ、家族の一員のように扱ってくださった。 メグという愛称も、彼の優美な唇がはじめて呼んで下さった。
伯爵邸の奇妙な客人たち
炎天の空に、誰かの叫ぶ声が聞こえた。 1932年 午後一時半のことである。 浜辺に数人の水死体が発見された。 どれも、湿った昆布や海藻をドレスのように纏い、肩には大きな爪痕を刻まれていた。 この死体は随分と昔のものであるらしく、身元は確認されていない。 一体、彼らはどこからやって来たのか。 暗い海の底から、昔の亡霊の手が現れて、再びあの悪夢を甦らせる――。 同じく1932年、初夏。 伯爵家が所有する海辺の別荘。 私が海岸に佇んでいると、羽根が真っ黒い、大きな鳥の群れがバサバサと飛び去っていった。 なだらかな曲線を描いた海岸に波が当たっては砕けていく。 水の透き通ったところが白く泡立てられる。 海辺一体は、まるで一面に雪を降り積もらせたようだった。 領地のトレードマークになりつつある真っ白い砂は、地元の人々によって瓶詰めにされ、近くの売店で旅行客へのお土産として売られている。 (本当に来ちゃったんだ) 遠くで小さな影となった船が揺れている。 暖かさに瞼が重くなっていく。 まだこんなにも日差しがきつくなかった頃。 私は長らく学校に行けておらず、母はクリニックやカウンセラーを探しては次々に訪ね回っていた。 何に疲れていたのか、自分でも分からないまま、心と身体が朽ちていった。 人の繋がりの濃さには驚くばかりだが――私の祖母は、この海辺を治めている伯爵夫人と親しい間柄にあったらしい。 そんな私たちを見ていた彼女は、せっかくの長期休暇に入ったことだし、リフレッシュも兼ねて海を眺めてきなさい、と申し出てくれた。 そして今、ここにいて、柔らかい波の響きを静かに聞いている。 『海なんていつ以来かしら』と母は久しぶりに微笑みを見せ、申し訳なさが胸の中で渦巻くのをどうしようもなかった。 すうっ、と息を吸いこんで深々と吐き出す。 田舎の、爽やかな混じり気のなさは、一陣の風となると体中を吹き抜けていった。 心地よさに思わず頬が緩む。 とにかくこの夏は、時間に囚われないゆったりとした時を過ごして、早く元気になれるよう努めよう――。 私の未来は、時を永遠に止めてしまった美しい絵画の中で、少しずつ、何かが変わり始めている気がした。 そう心に誓ったはずが、まさかこの、海と砂とお城だけが見える穏やかな場所で、あんなことが起こるとは思いもしなかったのだ。 エピソードI 「ラン!ドアの鍵を閉めるのを忘れずにね――!それからあまり遠くへ行き過ぎないこと」 扉の向こうから、母の声が響いてくる。 私はまさに出かけるところだった。 母の言いつけに軽く相槌を打ちながらも、これからする遊びの計画について思いを巡らしていた。 心がふわふわと空を舞っている気がして、思わず微笑みが漏れた。 底の見えない鞄から、鍵リングをなんとか探し出し、あたふたとしながらドアの戸締まりをする。 私たちが伯爵夫人から借りている別荘だが、15ヘクタールは軽く超えており、広大という言葉がとても相応しく、部屋は30個備え付けられていた。 ひたすらに長い廊下を歩く。 歩き、突き当たりに出た所で、バドラーやメイド達のための裏口階段を見つける。螺旋階段を降りる。ひたすら降りる――。 裏の玄関から、身を投げ出すように外へ出た。 「やった!自由だ……。これで、ベッドでごろごろしてるお母さんに、いちいち物を運ばなくても済む!あの部屋、とっても可愛いけれど、どこか窮屈なのよね……」 この数日間、母は私にあれこれ指図していた。
赤ずきんちゃんの手抜き日記 最近忙しくて小説書けない😂
指を思いっきり挟みました。クローゼットを閉めようとしたら、あら、あらら、じくじくと指を痛みが這い上がって来て、気がつけば中指が真っ赤になってました。 みなさんも急いでクローゼットを閉めないようにね! ああ、眠い、、、。最近、睡魔と食欲と、人間の三代欲求と絶えず格闘している気がします。 でも眠いものは眠いし、甘いものだって食べたくなります。 高校生になって、初めて倫理を習いました。 お〜めんどくさいって思ってたんですが、結果、まあ奥が深くて興味深い科目ですね! 私たちが今、当たり前とする心理的概念の数々、、なんとなんと、古代ローマでは当たり前ではなかったのですね! プシュケーって魂って意味なんですね!知らなかった! まあ学校は楽しい場所です。知らなかったことを学べるし、仲のいい友人と会話を交わしたり、もうすぐ運動会もありますし。 この時代で、日本に生まれて、そして私として生きられて最高に幸せです。 勉強は大変ですが、受かりたい大学のためなら、後悔はしたくありません。 怠惰な心を捨て、日々の積み重ねを大切にすると誓います笑 幸せになりたいのなら、努力する 最後まで決して諦めない 不屈の精神って、剣よりもペンよりも強いんだなあって、最近しみじみ思います。 あ。もう寝なきゃ! 手、痛かったなあ、、まあ明日には直ってるでしょう。 では、皆さんもハッピーライフを!
祈りなんて信じない
望む物はここに。 心の奥底から切に願ったものの全ては、君に。 君が全部与えてくれたから俺はもう何もいらなくなっていたんだ。 そうか、と腑に落ちたような感覚と共に、これまでバラバラだったピースが一つの完成形を描いた。 ふわり、と突然の視界を彩るその鮮やかな色彩に、目を丸くしていた君。 君が見たのは、歓喜に溢れた民たちが投げた、空色に散った花びら。 世界の全てを慈しむような微笑みも、息子をあやす時ふと落とした眼差しも、記憶に映る彼女はどれを切り取っても眩しさに溢れている。 胸をかき乱す温かな感慨に、張り詰めていた頬が緩む。 いつの頃からだったか俺の心に住まう神は消えた。 当て所なく彷徨い、人生で最も祈りを捧げたあの夜、神は死んだのだ。 幾度なく唱えた祈りの言葉を、唇の裏でなぞっていく。 主よ (神などいるのだろうか) 我が主よ (確かに一度は信じた) あなたの御心のままに (こうして俺は犠牲者となった) 絶えず湧き上がってくる心の声を押し殺し、意識を一心に祈りへと捧げた。 犠牲を伴って、醜く変わり果てた自身と引き換えに得るもの、得たもの、もういらない。 祈りはきっと届かない。 ガラス張りの天井の吸い込まれそうな程もっと先に、紺碧に浮かぶ月明かりを見る。 だが、願うくらいならと考えを改める。掬われない祈りなんて信じない。 惑う心を満たすのは、君と俺たちの子供だけで良かった。 うっそりと嗤い、夜の闇に眼を開いた。
月に堕ちたセレーネ
拝啓 私の愛しきセレーネへ。 この塔は間も無く燃え尽きるでしょう。 業火に包まれながら、その長い歴史に終止符を打つでしょう。 全てが焼け尽くされ灰になれば、私たちのこの秘密は決して犯される事がなくなります。 セレーネ、私たちは共に長い道のりを歩みましたね。 悠久のなかではほんの僅かな、けれど確かに永遠を秘めていたであろう、私たちの幸福な時間です。 温かくて優しい、人生の一幕がここに下ろされました。 さあ、セレーネ。 実の所を言うと私、未だにあなたが誰で何者なのか分からないんです。 それも実在する魔法のように、どうして私の目の前に現れたのか。 何者かがあなたという人物を宙に浮かせ、象だけをすっかりくり抜いてしまった様に、私はあなたのことを知らないのです。 あれ程、深い緑と鮮やかな薔薇に覆われていた「レアリアスの塔」は、いまや灰の残骸と化しています。 時折ひんやりした風が吹きつけ、私たちの思い出の地を洗ってゆきます。 愛してるわ、セレーネ。 だからどうか一つだけ許してくれないかしら。 本当にささやかな願いです。 あなたのことを時々思い出しても良いかしら? この記憶を守るのは、あなたが教えてくれた一つの鍵で十分です。 それさえあれば、きっとこの幸福をきっと守り抜いて見せるでしょう。 今、私の目の前に広がる光景も、私が守らなくてはならないものです。 全ては愛するものを守るために。銃を片手に暗い路地を駆け抜けながら、幾度なく朝と夜を繰り返しています。 でも、もう私は恐れたりしません。 卑屈になることも、もうやめにしましょう。 愛しています、セレーネ。 だから、最後に一つだけ言わせてください。 「貴方と出会えたこと、その全てが本当に幸福でした。私をたくさん慈しんでくれてありがとう」 さようなら。 漆黒の闇の中で、きらきらした丸いものが光りました。 ああ、これが思い出なのかしら、と思わず見惚れてしまいます。 それは全ての始まりの日を写していました。 その金粉が舞うような煌めきに惹かれて、私は徐々に入り込んでいきました。 時を遡ること二年前の春。 酷く頭が痛んで、私はその気怠さから顔をしかめました。 ずっと、どこか冷たいところで横たわっていたような、とにかく長い眠りから覚めた時の心地でした。 どうやら、白く乾いた意識の淵で彷徨っていたようです。 「う……ん……」 重い瞼を持ち上げようと、鼻から息を吸い込みます。スッと鼻腔を通り抜ける、私の知らない甘い香り。 それから白い光が斜めに差し込んできます。 一体ここはどこなのでしょう。 瞼の裏では暖かい色が一面に広がっています。 不意に、誰かに耳元で囁かれた気がして、私の意識は水面へと引き上げられました。 そこは居間ほどの大きさをした、やや薄暗く静まり返った部屋でした。 白く綺麗な天井。 反対に、壁紙は長い年月によって古び、あしらわれた小さな草花が朽ちようとしていました。 何かを隠すかのように、天井だけが張り替えられているようです。 甘さを含んだ香りの正体は、すぐにこれだと見つけられました。 花です。 血潮のように赤い薔薇でした。 気怠く甘い匂い、と一言で表すのは余りに陳腐でしょうか。 とにかく、この部屋にはそぐわない新鮮さで、緑と雨の香りも混じっていました。 私が眠っていたベッドのすぐ横、そこには植物が所狭しと並んでおり、特に薔薇が多く生けられていました。 部屋の構造にも目をやります。 薄い日の光に透かされ、窓はドアと対局の場所に嵌め込まれていました。 「本棚もあるわね……。まるで誰かが暮らしているように妙な生活感があるのね。でも私の知らない部屋だわ」 恐る恐るベッドから身体を出して、裸足の指を床につけました。 「ゆりかごだ。どうしてここにあるんだろう。少し埃っぽいのが気になるけれど、人肌の触れた温かさが残ってる……。使われていたのかしら?私は……」 そこまで口にした所で、頭の片隅が酷く朧げなことに気がつきます。 自分の意識と記憶の間に、まるで白い紙を一枚挟んだかのようです。 下書きすらされていないキャンパスが、空白が、私自身にまつわる情報の全てでした。 再び、あの脳髄を焼けつけるような痛みが、頭全体を支配し始めます。 これ以上思い出すな。その先を決して覗き込んではいけない。 もしその暗がりを伺えばーーお前は―― いけない。 このままでは、悪魔の囁きによって夜の闇に堕ちてしまうでしょう。 いつのまにか、首筋には無数の粒が光っており、身じろぎをすれば、滑らかな皮膚をすべり落ちていきました。 左の頬を手のひらで包むようにして、浅く、吐息のような呼吸を繰り返します。 影が、不穏な静けさを抱えながら、忍び寄るのを拒みます。 「駄目だわ。ここがどこかも分からず、悪夢に引きづり込まれるなんて言語道断。しっかり……するのよ。そうだ、窓の外はどうなっているのかしら?錠がかかっていなければ、手っ取り早く外へ出られるかもしれないし」
秘密の花園 私の楽園
貴方だけを求めて、今日も私は旅に出かける。 春風が心地良く頬を撫でていく。 新作の赤いバッグを肩にかけ、私は通りを歩いている所だった。 ベージュ色のトレンチコートを羽織れば、すっかり春の装いに生まれ変わる。 風に色は存在しないけれど、もし見ることが出来たならばどんな色かしら、と時折考える。 きっと、暖色と寒色の入り混じった斑目模様になっているんだろう。 まるで今の私のように。 ガラス張りのショーウィンドウを物色しながら、私はとある一つのものを探していた。 あるもの、を思い浮かべただけで、生きるためだけに動いていた心臓がとくとくと高鳴るのを感じる。 確かここら辺の通りのはずだった。 あるもの、が存在するのは自前に調べてあるのだ。少し奥まった路地へと進めば、たちまちレトロチックな風景へと打って変わる。 小さな緑の寄せ植えがいくつもあり、それは花壇で出来た細い道のようだった。 不意に、ちりんと軽い金属音がたった。 「あっ」 その小さな響きを私の耳は掬い上げた。 細くうねりながら伸びた道の先、そこに陽光を反射する金色の何か。 恐る恐る近づけば、それは金属製のドアプレートだった。 Opening 開店中 路地裏の壁と一体化して気がつかなかったが、そこには確かにドアがある。 恐らく、ここにあるものが用意されているに違いなかった。 期待感と不安の入り混じった心地で、私はドアノブに手を伸ばした。 やや薄暗い室内に、オレンジ色のライトが灯る。 数台のテーブルが所狭しと並べられており、何人かの人影があった。 奥の方のソファに沈みながら、私はその時をいまかいまかと待ち侘びていた。 その忍耐力も半ば尽きようとしていた時、そっと、テーブルに何かが置かれた。 甘く、冷たくひんやりと。 綺麗なガラスに収められたそれは――。 「さっすが、伝説のアイスクリーム屋さんだわ〜。オープンしてこんなにすぐ人気になるなんて。でも、その理由が来てみて分かったわ」 舌全体に広がるひんやりとした感触と、程よい絶妙な甘さが、口の中で溶け合っていく。 思わず頼が緩む。 懐かしいような愛おしいような、安らぎを与えてくれる美味の感覚だった。 さてもう一口頂こう、と銀色のスプーンを握り直す。 私の目の前に置かれているのは、最近出来たばかりだという店のご自慢のアイスクリームだ。 レトロチックな店内に合わせられた、古紙を使ったアイスカップ、店のロゴマーク入りの銀色に煌めくスプーンたち。 店の一つ一つが愛おしくて、指先でアイスカップを優しく撫でた。 私のお気に入りは、定番のミルクアイスにラムレーズンを添えた物だ。 初めて入る店だった為ラムレーズンがない可能性を否めなかったのだが、見事に用意してくれていたらしい。 さく、とスプーンをアイスに入れていく。 「ん、美味しい」 広がる濃厚なミルクの味に、うっとりと頬が溶けそうになる。 見事な上品さ、それでいてしっかりと食べ応えのある味に、私の舌は虜になった。 お次は、盛り合わせのこちらを頂こう。 ハッと息を飲む。 口内から鼻腔まで、ラムレーズンの爽やかな風味が突き抜けていく。 味わうように噛み砕いたレーズン、まろやかな感触、その全てが一寸の狂いもなかった。 何かが振り切れると同時に、頬を温かい感触が伝っていく。慌ててハンカチを目元に当てがう。 脳髄が薄れるような感覚に、私の心はアイスクリームで満たされたしまった。 駄目だ。 こらえなさい、アイスクリームが濡れてしまうわ、と自分を叱る。 そしてふと、頭をゆっくりと上げた。 気がつけば、店中の視線は、私一点に集まっていた。 黒髪の艶やかな女性、仕事に勤しんでいた若い男性、初老の優しそうな夫婦ーー。 皆がそろってこちらを向き、変なものを見たような顔つきをしていた。 ――頬に熱が上るのを感じながら、ゆっくりとアイスクリームに向き直る。 貴方がこんなに素敵なのが悪いのよ、と小声で悪口を言い、でもやっぱり好きなことに変わりは無かった。 甘く、冷たくひんやりと、舌に触れた感触はとろけるようなまろやかさ。 最後の一口を食べ終え、私は名残情しげに立ち上がった。 甘く優しい夢の詰まったショーケース。色とりどりの照明が、まだ知らないアイスクリームを照らし出している。 お札を取り出す片目に、視線はそちら側へ引き寄せられてしまう。 会計を終えた時、私は唇を持ち上げた。 にっこりと店主に向かって微笑む。 「また来るわ、ありがとう」 ドアを押し開けると、カランコロンと温かい音が聞こえてきた。 絵に描いたような、何処までも透明な空色が、私を出迎えていた。 別れは出会いの始まりと言うでしょう? ふふ、今日も幸せ。 最後まで読んでくださってありがとうございます😭 次回作はカレーと旅人のお話です。長編へ向けてしばし息抜き中ですが、食べ物を書くのって意外と楽しいですね! 急いで書いてしまったため、やや心理描写が破錠気味ですが、、。 ではまたお会いできれば光栄です。
赤ずきんちゃんの連載 お試しバージョン
黒夜の魔女 〜漆黒の花嫁リリューシュカ 時は16世紀。舞台は架空のラトビア王国。 「王も貴族も聖職者さえも、黒夜の魔女には抗えない」 新しい王妃様を迎え、パレードの準備などで一層賑わう王国にて、巷ではこんな噂が流れていた。魔女、女はある日突然現れるのだそうだ。 生地の下が薄っすらと透けて見える優美なデザインの黒い衣装を纏い、流れるような金髪を持ち、その瞳は海の奥底を覗いているかのよう。 文字通り絶世の美女であるらしく、だが、その素性は恐るべきものらしい。 「女はいつのまにか生活に入り込んでいる。まるで、初めからそこにあった花瓶のように違和感すら抱かない。 だが月日を重ねるうちに、私たちは頭の片隅が酷く朧げなのを感じ始める。それで、お終いだ。 とある一家は忽然と姿を消し、変わり者の老婆は変死体で発見された。後になり、老婆の体は医療機関にて解剖されることになった。 すると驚くべきことに、彼女の死因は病であると診断が下された。14世紀、かつて猛威を振るったペスト、それに近しいウイルスが彼女の体を犯していたというのだ。 だが、老婆が亡くなる一日前、彼女はかかりつけの病院を訪れており、その時体には何の異常もなかったと証言されている。 亡くなっているのが発見されたのは、翌朝の十時ごろだった。その間にウイルスが活発化し、丸一日もたたず亡くなってしまうとは、実に不可解であった。 隣の部屋に住まう女は、こう証言している。 『彼女が亡くなる二日前ほどからだったかしら?彼女の家に若い女が訪れていた気がするの。名前?……分からないわ、後ろ姿をちらりと見ただけだったから。彼女、ご家族がいなかったはずだから珍しいなあって思ったの。 え?もっと詳しく?……ごめんなさい、何だか物忘れが酷いみたいで、その時に関する記憶が妙に曖昧なのよ。ただ、彼女の家に入っていく後ろ姿は、全体的に黒かったわ。 そしてそう……流れるような金髪をしていた』 こう語った女もまた数日後に亡くなっている。 黒夜の魔女、彼女のことを決して口にしてはならない。 ここ最近の一般的な噂では、『死に至せる病をもたらす』のだとか。 人類の歴史が構築されて以来、われわれは常に病と格闘してきた。この平和なラトビア王国にも何やら不穏な空気が流れている。 一体、魔女とは何者なのか。まだそれを知るものはない。」 幕開けは、一人の少女が両親を弔うシーンから始まる。 ルーミリア・シュゼット 十歳 下級議員の父親と町の小さな店を営む調香師の母に育てられていた。しかし、大規模な伝染病が流行り始めたことで、両親を亡くしてしまった。 真っ直ぐな黒髪にマリンブルーの瞳が愛らしい少女。 「お父さん、お母さん。私一人になっちゃった。雨の降りしきる冷たい夜、もう手を握ってくれる人はいない。もう、幸福を分けるように温もりをくれる人もいないわ。一人で生きるのは寂しい」 ルーミリアの家はそう裕福でなかったため、墓地は薄暗い森の中にあった。確かに葬儀は済ませたはずだが、あまりにショックだったためか、彼女の記憶は朧げだった。 そもそも、ルーミリアはあまり人と関わったことがない。 父と母の職場は町にあったが、彼女自身が外に連れ出されることは滅多になかった。そのため、人生の大半を森のはずれの家で過ごしており、狭い世界の記憶しかない。 ある日突然、両親が街で病気をもらってきて、あっという間に亡くなった。 今思えば、両親はルーミリアを外に出したくながっていたように捉えられる。 その時、背後で草の踏みしめられる軽い音が立ち、気がつけば一人の女が立っていた。 黒い優雅なドレス。煌めく金髪が背中に流されて、瞳は海の奥底のような深い青。 若い女だった。 最後まで読んでくださってありがとうございます😭 これはいずれ連載を考えている作品のプロットです。
春に死せる君と、冬の皇子の僕
「大丈夫よ、きっとまた会えるわ。春はすぐそこに来ているのだから、ね?」 俯いた青年へ向かって、白く細い指がそうっと持ち上げられて、優しげな感触をもたらしていった。幾分か痩せ細ってしまった割には暖かく、切なげな病床の匂いを宿していた。床から伸びたその腕は、たちまち抱擁するような動きを一瞬描き、不意にやめた。 頭を抱いて貰えるのだろうか、と待ち受けた青年は、その頭部はいつまで経っても抱きしめられることはなく、大いに落胆した。つい、と少女の指は艶やかな黒髪に覆われた頭を逸れ、もう映される筈のない瞳に、最後の輝きが讃えられる。 ほとほとと積りに積もった雪が、冬の日の静かな煌めきによって、しとしと溶けゆく音。 長い間氷という膜に覆われていた地面が姿を表し、地上はうまれたての班目模様になろうとしていた。 長い長い冬が終焉を迎え、誰もが待ち望み焦がれた暖かな春…まるで本国の妃のように淑やかで軽やかな季節がやってくる。四角く切り取られた窓がひとつ、冬の日の新鮮な煌めきを取り込んでいたが、少女の周りにあるのはそれのみだった。 指が青年の頭部をすり抜け、窓の光に透かされ、少女は外の景色をゆっくり貪るように見つめた。 はた、と視線が定まったかと思えば、はらはらと温かい水滴が頬を伝っていく。 まるでこの国で過ごした全ての時間を懐かしみ、浄化し、次の世界へ持ち去ろうとしているようだった。 「ねえ、私幸せだったわ」 ぽつりと少女は不意に溢した。青年の、恐ろしいまでに目鼻立ちの整った顔に微笑みかけながら、ゆっくりと噛み締める。 「色々あったわね…ずっと一緒に居られれば良かったのだけれど。でもきっと貴方と出会えたこと、私の陽炎のように仄暗い人生の中で、最大の幸福だった。ありがとう……愛してるわ」 少し長い眠りにつくから暫しお別れするとでも言うように、何気ない仕草で少女は青年をふっと見やった。光に透かされた指先は今度こそ青年の頭部へ。限りある力全てを込めて、最後の抱擁を交わし合う。 いつの間にか雪はすっかり溶け、少女の待ち望んだ、だが決して見ることのなかった春が訪れていた。青年ははた、と自身の空っぽになった腕の中に、視線を落とした。何かに亀裂が入るような、硬い殻が欠けゆく音がした。 少女の温もりと涙は消え失せ、残された青年だけが、果てのない焦燥感を胸に一人孤ぢた。 「死ぬな、死なないでくれ」 「さよなら」 声にならない絶叫が喉を破いてしまいそうだった。 大丈夫よ、きっとまた会えるわ。春はすぐそこに来ているのだから、ね? 少女に会えなくなってから幾つ春が巡っただろう。いくら待ち続けても少女が青年の腕の中、温かな温度を分け与えることはもうない。そんなこと青年だって重々分かっている。 ただ誰よりも、深く深く、もう今はいない少女のことを愛していた。