大福伯爵

56 件の小説
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大福伯爵

本と大福がとにかく好きな大福伯爵です。え?共食いだって?そんなの知らね。 Twitter @75tcYbDHoMkzt0H

告白1

「ずっと前から好きでした。付き合って下さい」  僕がそう言ったのは喧騒な居酒屋でのことだった。  愛を告げるにはあまり似つかわしくない。  僕の発した言葉はすぐに周囲の音に掻き消された。だが、目の前の女性には届いたと確信があった。  彼女の目に確かな驚きがあったからだ。   「え…」  彼女は戸惑いが隠せない様子で言葉を発せずにいた。 「こんな場所で言うつもりじゃなかったんだけど…」  今いる賑やかな居酒屋は2軒目だ。  1軒目は僕が予約していた店で個室の居酒屋だった。  本当はそこで告白をするつもりだったのだが、2時間という時間制限の中で告白をするタイミングを逃してしまったのだ。  店を出た後でなんとか彼女と2軒目に行くことになり、入った店が今いる賑やかな居酒屋なのだが…  完全に店のセレクトを間違えた。  周りを見れば仕事帰りのサラリーマンたちや男同士、女同士というグループが多い。  隣との距離もかなり近くて、大きいわけでもないのに隣の人の声が聞くつもりがなくても聞こえてきた。  そんな状況でも僕は告白に踏み切った。  何故なら彼女の終電まで1時間もなかったからだ。  今更この店を出て3軒目に行く余裕もない。  だから、こんな場所で僕は思い切って告白をしたのだ。 「本当はさっきの店で言うつもりだったんだけど…」 「…」 「ごめん…こんな場所で…」 「…」  僕は恥ずかしさや申し訳なさで独り言のように言葉を繋いだ。 「えっと…」 「ありがとう」  僕の独り言が途切れたときに彼女のそんな小さな声が聞こえた。   「この前のことも覚えてる」  それは1ヶ月ほど前に僕の友達も含め3人で行った飲み会のことだ。  その飲み会が行われたきっかけは、その友達と2人で飲んでいた時の僕の一言だった。 『俺さ、実は〇〇のこと好きだったんだよね。今でも…多分』  酔った勢いを借りたことは確かだった。  でも、どうしても言いたかったことだ。  その僕の一言で運命の歯車がカチッと動き出したような気がしたことを今でも覚えている。

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継続

 目を覚ますと12月23日だった。  仕事から帰ってきた僕は簡単な食事を作り、シャワー浴びてベッドに入った。  寝るつもりはなかったが、横になりたかったのでベッドに寝転がったのだ。  そして、気がつくとスマホの時計は1時35分となっていた。  疲れていた僕はうっかり寝てしまっていたのだ。  そのときに僕は気づくNoveleeを更新していないということに…  Noveleeで投稿を始めて50日と少し。  100日は続けようと思っていたが、今日で途絶えてしまった。  思い出せばこの50日で様々ものを投稿した。  日記のようなものや考えた物語。  全く思いつかないときも考えて考えてようやく書いたものもある。  感想を貰うたびに嬉しかったし、明日の投稿も頑張ろうと思えた。  それが今日あっけなく潰えてしまった。  とても悲しいし、悔しい。  気持ちも萎えてしまった。  投稿は続けるつもりだが、毎日は投稿しなくなるかもしれない。  ごめんなさい。

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あだ名

「テッキーこれお願い」  同じ職場の女性社員があだ名で呼ばれていた。  僕は最近転職したばかりでどうしてそう呼ばれているのか分からなかった。  女性の名前にテッキーに関係性のある文字はない。  漢字も関係がなく、読みにもそれらしきものはない。   「あの、どうしてテッキーって呼ばれているんですか?」 「あぁ、それはねテキサスのテッキーだよ」 「テキサス?」 「私ね、一年前まではテキサスに住んでたの」 「え?!」 「少し前まではパティって呼ばれている子がいて、私とその子でよくテッキー&パティってタッキー&翼みたいに呼ばれてたな」 「その人はどうしてパティだったんですか?」 「前職がパティシエだったから」  あだ名が安直過ぎると思ったがそれは言わなかった。

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バチェラー

 見ようと思っていて見れていなかったバチェラーをイッキ見した。  今回のバチェラーは前回のバチェロレッテで選ばれる側として参加していた黄皓(こう・こう)さんだ。  今回のバチェラーは個人的には一番過激のように思えた。  黄さんはすぐに女性にキスをし、されて、女性と同じ部屋で一夜を共にしたりもしていた。(後に女性が何もなかったと言っていた)  今までのバチェラーも確かキスはしていたがこんな頻度ではしていなかったし、部屋に連れ込むなんてしなかった。  黄さんの行いに関して賛否はあるだろうが、僕はエンタメとして楽しめた。  最後に選ばれた女性は意外だと思ったが、末永く幸せであってほしいと願うばかりである。

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馴れ初め

「お前を末代まで祟ってやる…」  彼女に初めて会ったとき言われたのがこれだった。 「お前の代で滅ぼしてやる」  これは次に会ったときに言われた。  3度目のときは確か… 「今すぐにでも…」  だったかな?   そんな僕たちは今日結婚する。  どうしてそんなことになったのか、だって?  男女の馴れ初めを聞くってのは野暮じゃないか?  まぁ、一つ言うとすれば…  人生ってものは何が起こるか分からない。  殺意を抱くほど嫌いな相手でも好きになる可能性は0ではない。  要するに諦めるなってことさ。

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石焼き芋

「いしや〜きいも、やきいも〜」  スーパーに行こうと玄関を出るとそんな声が聞こえてきた。  TVなど聞いたことのあるフレーズだが、生で聞くのは初めてだった。  食べてみたいなと聞くたびに思っていたが、僕の家の周辺には来ていなかったらしく叶わなかった。  僕はこの際だと思い、声のする方へと向かった。 「わらび〜もち、わらびもち〜」  僕は知らなかったが石焼き芋の人はわらび餅も売っているみたいだ。 「早く来ないと〜行っちゃうよ〜」  僕はそれを聞いて少し笑ってしまった。   (そんなこと言うんだ) だんだん声が近くなり、車道を見るとそこには軽ワゴンがかなり遅いスピードで走っていた。  軽ワゴンのガラスにはわらび餅と張り紙が貼っている。   (石焼き芋じゃないんだ)  僕は左右を確認して車道へ入り、軽ワゴンに声をかけた。 「こんにちは」  いかにも好々爺という人が顔を出した。 「あの焼き芋買いたいんですけど」 「焼き芋ですね〜」  そう言うとおじさんは出てきてトランクを開けた。 「今日は、焼き芋とわらび餅、あとぜんざいもあるよ〜」  そう言うとおじさんは鍋の蓋を開けた。すると、ぜんざいの甘い匂いが漂ってきた。 「わらび餅、ぜんざい、焼き芋で1000円」  好々爺然としているがしっかりと宣伝は忘れない。  僕はまんまと罠に嵌った。 「じゃ三つセットで」 「お兄ちゃんは初めてだから細長いやつを一本プレゼントだよ〜」  細長い焼き芋を一つ多めに入れてくれた。  こういうものの相場が分からないが1000円とはなかなか高いと思う。  飲食店で1000円払えばそこそこのものが食べられる値段だ。  僕は家を帰ると中を見る。  わらび餅が中ぐらいのフードパック一杯一杯に入っていた。  ぜんざいもそこそこの量があり、  焼き芋は僕の拳ぐらいのものが一つと細長い茄子ぐらいのものが一つ入っている。  なかなかの食べ応えはありそうだ。  まずは焼き芋を食べる。  ホクホクで甘くて美味しい。  拳ぐらいある焼き芋はそこそこ食べ応えがあり、パック一杯に入ったわらび餅とぜんざいは食べれそうにない。  明日のおやつにでもするとしよう。  

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ローストビーフ2

 仕事が終わった僕は寄り道せずに真っ直ぐ家へ向かった。  待ちに待ったローストビーフを食べるために!  家に着いた僕は一目散に冷蔵庫へ向かい、寝かせていたローストビーフを取り出した。  だが、まだ食べるわけではない。  冷蔵庫に入れていたことで肉が冷たくなっているので常温へ戻す必要があったからだ。  ローストビーフを切って、中の色合いを見てみたいが今切ってしまうとせっかくの旨味が逃げてしまうので切るわけにはいかない。  今はただローストビーフに思いを馳せひたすら待つ。  1時間半ぐらい経ち、ラップに包まれたローストビーフを触ると冷たさは感じられない。  常温に戻ったようだ。  時は満ちた…約束の時だ!  僕は息を止め、包丁を入れた。  ローストビーフが崩れないように慎重に切っていく。  −−−トン。  包丁がまな板を叩いた。  ローストビーフを断ち切ったのだ。  僕は恐る恐る断面図を見た。  こんがりと焼けた肉の断面には綺麗なピンク色が広がっていた。  もうすでに美味しい。  僕は高揚しながら切り進めていく。  全て切り終えた僕は皿に盛り付けていく。  常温に戻るのを待っていたときに茹でていた野菜を盛り付け、ローストビーフ用のソースを作ってたのでローストビーフにかけた。  席につき、いただきます!  ローストビーフを一切れ箸で掴み、口へ運ぶ。  すると、口の中で曲が生まれた。  肉の外側の歯応えと中のとろけるような柔らかさ。  噛むと出てきた肉汁が口に広がった。  全てが独立しており、自分の存在を主張しているが、特製ソースが指揮者となり、協奏曲を作り出している。  最高だ!  お肉の革命や!  万歳お肉!  僕はすぐにアンコールを要求し、ローストビーフをまた口に運んだ。  一切れ目より更に柔らかい。  僅かな切ったときの厚さの差で食感が変わっている。  同じローストビーフでも、一切れ一切れに個性があり、違う音楽を奏でた。  10切れ以上あったローストビーフはあっという間になくなった。  ご馳走様。  とても美味しかった。  また作ろうと思う。  今日はローストビーフを切るときに少し厚めに切ってしまったので今度作るときはもう少し薄く切りたいと思った。  

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ローストビーフ

「美味しそう」  僕がそう溢したのは、仕事の休憩時間に料理系のYouTubeを見ていたときだった。  画面に映されているのは、ローストビーフだった。  外は食欲がそそられるような綺麗な焼き目がついており、中は薄いピンク色をしている。  ローストビーフ特有の茶色とピンク色がお互いを高め合い視覚から美味しさを伝えようとしているようだった。  ローストビーフに魅了された僕は仕事帰りにローストビーフの材料を買った。  動画の内容通りに肉に塩を振り、暫く寝かせ、それから肉を丁寧に時間を計りながら焼いていく。  焼き終わったらワインを入れて酒蒸し状態にし、時を待つ。  蓋を開けるとワインと肉のジューシーな香りが広がった。  肉を取り出し、キッチンペーパーで包み、その上からさらにラップで包んだ。  そして一晩寝かせる。  一晩寝かせなくてもいいらしいが寝かせた方がおいしいと言っていたので、一晩寝かせることにした。  かなり楽しみにしていたがローストビーフを食べるのは明日になる。  明日の晩御飯を目指して明日の仕事も頑張ろうと心に決めた。

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aiko

 歌手のaikoさんの結婚が発表された。  それもなんと去年に結婚していたという。  僕はaikoさんが好きで歌手の中では一番好きと言っていい。  アルバムも持っているし、最新の曲もすべてチェックしている。  最近は行ってないがカラオケに行ったときなんか9割がaikoさんの曲だ。  年末年始に行われるCDTVの年越しライブ中に流されるaikoさんのnew year CM は、僕の年末年始の恒例行事にもなっている。  結婚のネットニュースが流れてきたときだって本当にたまたまaikoさんの曲を聴いていた。  心が震える歌をありがとう。  悲しく切ない歌をありがとう。  暗い気持ちを吹っ飛ばす歌をありがとう。  ご結婚おめでとうございます!!  今度こそライブ行きます!     

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仕事帰り

 2021年も残すところあと僅かだ。  年末年始には友達と遊んだり、実家に帰って家族で食事に行ったりなどする予定を入れている。  待ち遠しいが着々とその日は近づいている。  だが、それまでに土曜出勤が二回あると考えると気が滅入りそうになる。  2021年はあと1ヶ月もないが果てしなく遠く感じた仕事帰りだった。

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