SEN
18 件の小説推し二人の限定が一気に来た
どうも、今日のプロセカの新イベ情報を見て外にいるのに周りとか気にせず飛び跳ねた豆腐です。 自分はニーゴ箱推しで特に奏と絵名が好きなんですよ。はい、来ました限定。ありがとう神運営。この時を待っていた。溜め続けた七万の石を解放する時が来た。 いや本当に最高。プロセカ始めて一年半と少し、今が一番気分が上がってます。 あの奏がスポーツをするとかもう泣きそう。昔と比べて本当に余裕ができたんだってマジで感慨深いし、絵名と一緒に行くのがもう可愛い。おそらくプロセカキャラ運動能力ワーストツーのお二人ですからね。もうてんやわんやでかわいい絵面が見られることでしょう。 以上、嬉しすぎて発狂た豆腐が勢いで書いた日記みたいなものでした。
田舎民ってつれぇ
もう何週間も前の話だけど、ワートリの一番くじあったじゃないですか。それ欲しかったんですけど、田舎民なんで気軽に行けなくて、でも早く行こうと努力して始まって一週間後にようやく対象店舗に行けたわけですよ。 まぁなんとなくタイトルでわかると思うんですけど、引けなかったんですわ。2店舗回って両方スカ。一週間経ってるから妥当?もっとはやく行け?それは、そうなんですが…… と某ペンチメンタルのモノマネは止して、いやマジで田舎民なりに努力したんですよ。でも行くかってなって徒歩で行ける人が羨ましいなって、まぁそんな愚痴。
マスターのコーヒーは超不味い
アンティークな雑貨で飾られ、静寂に包まれた隠れ家的喫茶店。そこの窓際の席で斜陽に照らされて一人コーヒーを飲む。誰もが一度は憧れるシチュエーション。しかし、完璧に見えるその光景には一つの欠落があった。 「まっず……」 肝心のコーヒーが超不味いのだ。正真正銘比喩でも何でもなくこれは泥水だ。ここまで不味くコーヒー淹れられるのはもはや才能ではないか。 スーツを着た女性客は顔を顰めて深くため息をつき、カップをテーブルの上に置いた。 彼女の名前は深山梨華(みやまりっか)近寄り難い冷淡な鋭い三白眼。長く続けたデスクワークのせいで猫背ぎみな姿勢で座り、長い黒髪は最低限の手入れしかされておらず光沢を失っている。日々の仕事でストレスを抱える社会人。それが深山梨華の現在だ。 仕事の昼休憩でこの喫茶店に足を運んだものの、案の定出てきたのはこの超不味いコーヒーだけだった。 「味を改善しようとは思わないんですか」 「それだと客が増えてしまうだろう?」 深山の棘のある物言いはとても喫茶店のマスターとは思えない理由で受け流された。 カウンターに体重をかけて唯一の客である深山を見つめている彼女は、この喫茶店のマスターの楠木悠里(くすのきゆうり)。なぜが常に白衣を着用している茶髪ボブカットの謎の多い人物だ。 吸い込まれてしまいそうなほど黒い瞳は彼女の興味の対象を逃さない。外回りも多いため健康的な肌色の深山とは対照的に、彼女の身体は触れたら折れてしまいそうなほど細く、放っておいたら溶けてしまいそうなほど白かった。 「客が増えるって、それに何の問題があるんですか」 「私がこの喫茶店をやってるのは道楽だからさ」 「お金に困ったりはしないんですか」 「株で一生分稼いだよ。私は既に隠居人なのさ」 そうさらりと言ってのけた彼女に、深山は少しムッとした。 生きるための金を稼ぐために今日も懸命に働く彼女にとって、楠木の態度はあまり気分がいいものではなかった。 「あぁ怒らないでくれよ。私は別に自慢をしているわけでも、働いてるキミを馬鹿にしてるわけでもないんだ」 「それは分かってます。何回か話してあなたの性格はそれなりに理解しましたから」 深山がこの喫茶店を見つけたのは一ヶ月前。休みの日にたまには体を動かそうと散歩をしていた時だった。社会の荒波に揉まれて疲れていた彼女は、癒しを求めてここの扉を開いた。 最初は内装の凝りようと落ち着いた雰囲気で当たりの店を見つけたかと思ったが、いざ注文して出てきた物は泥水コーヒーと暇を持て余して絡んでくるマスターだった。 「でもあなたの行動に理解はできません。喫茶店を開くだけ開いてあとは何もしない。それは何が楽しいんですか」 「違うよ。私が楽しんでいるのはここに来る客との対話さ」 カップを回して温くなったコーヒーを弄ぶ彼女の問いに、楠木は首を横に振って勘違いを訂正した。 カウンターから体を離し、深山が陣取るテーブル席にゆっくりと向かいながら語り始めた。 「コーヒーの味も、店の繁盛も私にとってはどうでもいい事なのさ。ただ、人と話すという事において隠れ家的喫茶店がちょうど良かったというだけで」 楠木は自然な流れで深山の向かい側に座り、両手を組んで肘をつき、ジッと彼女の目を見つめた。たったそれだけの仕草があまりに妖艶で、深山は目を逸らしてしまった。 「時に深山くん。面白い人間とは何か、わかるかい?」 「芸人とかですか」 「もー、すぐそうやって適当言う」 目も合わせずぶっきらぼうに返答され、楠木は頬を膨らませて不貞腐れた。 「私は知りたいと思わせる人だと思う」 「はぁ」 「面白いと言っても様々な種類がある。人を笑わせて面白い、興味深い学説に惹かれて面白い、熱いスポーツを見て面白い。でもその中で共通しているのは知りたいという欲求だ。 面白いと思ったスポーツについて調べるし、芸人のプロフィールとかテレビには出てるかとかを調べるし、学説なんかは語るまでもない」 深山は楽しそうに語る楠木をボーッと眺めながら不味いコーヒーをなんとか完飲しようとしていた。残念ながら楠木の語りはあまり深山の興味を引くものではなかった。深山がさっさと不味いコーヒーを完飲して仕事に戻ろうと思った時だった。 「そこでふと思ったのさ。恋もまた同じではないかと」 「うっく……」 コーヒーの不味さではなく、楠木からまさか恋の話題が出るという意外さからえづいてしまった。 上品でクールに育てられた彼女はなんとか吹き出してしまうことを防ぎ、恨めしそうに楠木を睨みつけた。この人は何が面白いのだろうか。深山は楠木の不可解な言動に眉をひそめた。 「おっ、やっと興味持ってくれた。恋に食いつくなんて、やっぱりキミも女の子だねぇ」 どう見ても不愉快そうな自分を見て嬉しそうに笑う楠木に、深山は何だこの人と勘ぐる。さっきからこの人について色々考えているが、振り回されるだけで正しいと思える解答は完成しなかった。 「それで、どういうことなんですか」 深山は口に残っているコーヒーを飲み込んで楠木の言葉の意味を聞いた。彼女はようやく深山が興味を持ってくれたと喜び、前より増して楽しそうに話し始めた。 「恋愛漫画とかドラマでよくあるだろう?惚れた対象のことを知るために尾行したり、周りの人間に聞き込みをしたりさ。それは間違いなく知りたいという欲求から来るものだ」 「まぁ……そうですね。でもそれがあなたの話と何と関係があるんですか。私にはあなたが恋愛に興味があるようにはとても見えません」 「そこだよ深山くん!」 深山の抱いた疑問に、楠木は勢いよく立ち上がって露骨な反応を見せた。突然のことで深山の手が揺れてコーヒーがくるりと波打つ。 脈絡があるのかないのかわからないことを一方的に話し、自分の世界に引き込もうとするその姿を見て、深山は改めてこのマスターはマッドサイエンティストタイプの人間だと思った。 「君はどっちなんだい」 「……はい?」 深山はその質問の意味が理解できなかった。そんなことお構いなしに、楠木はどうなんだいどうなんだいと目を輝かせている。 「……どっちって、何のことですか」 「君が私を面白い人間と見ているのか、恋慕の対象として見ているのかだよ」 楠木は小馬鹿にするように「話を聞いていなかったのかい?」と言い放ったが、深山はそれどころではなかった。 突然面と向かって私はあなたが好きなんですかと聞かれて焦るのは当然だが、深山は何か別のところに過剰に反応しているように見えた。けれどその「何か」の正体は掴めない。思考回路は謎の妨害電波に狂わされてショート寸前だ。 「知らないですよそんな事。そもそも私はあなたなんかに興味ありません」 「それは苦しい言い訳だね」 謎の焦りを覚えた深山の早口での返答を楠木がバッサリと切り捨てる。席から立ち上がり、慌てる彼女を無視して隣に座った。そして遠慮なく顔を近づけて耳元で囁いた。 「10回」 「えっ」 「深山くんが私の店にきた回数だ」 「なんで数えてるんですか。気色悪い」 「仕方ないだろ、あまりにもキミの行動が不思議だったんだから」 喫茶店に何度も訪れる事がそんなに不自然だろうか。そう考えて首を傾げる深山に、楠木はドヤ顔でこう言い放った。 「私の店にはこれまで50人ほどの客が来たけど、リピーターなんてキミ以外にいないんだよ」 耳元で囁かれた事実が、深山の行動の意味を浮き彫りにする。焦りを隠せない深山を見て、楠木はさらに畳み掛けた。 「コーヒーは不味い。メニューも全然充実していない。そんな喫茶店に何故たった一ヶ月の間に10回も来ているんだい? 私は考え、そして結論を出した。もしやキミの興味は喫茶店ではなく私にあるのではないかと!」 楠木はドラマの名探偵の如く堂々とした物言いで深山に自分の推理を突きつけた。 深山は俯き、楠木からは表情を隠す。コーヒーに映る彼女の顔からは色を窺うことはできなかった。 「……そんなわけないです。私はここが静かな場所だから来てるだけです」 突き刺さるように冷たかった彼女の口調は見る影もなく、今の彼女の口調は幼い子どもが大人に言い訳をする時のように弱々しかった。しかし、楠木の推理の否定だという事には変わりない。 「キミは強情だねぇ」 楠木は絶対に正解の推理を頑なに受け入れようとしない深山に頭を抱えると同時に、弱ってしまった彼女を見て、少し追い詰めすぎたかと反省した。 深山はもう話そうとしないし、コーヒーにも一切手をつけない。しかしこのまま帰してしまうというのは、彼女の好奇心が決して許さなかった。 その時、楠木は深山が自分をどう思っているかを知ることができる妙案を思いついた。 「すこしこっちを向いてくれないかい」 「……今度はなんですか」 弱って頭が回っていないのか、深山は言われるがまま顔を上げた。その瞬間だった。 楠木はおもむろに深山の唇を奪った。 あまりにも突然だった。けれども深山は抵抗しない。 柔らかい唇が触れ合い、身体に熱が伝う。その熱に浮かされるまま深山から力が抜けていく。 それを察知した楠木は無防備な手の指を絡め取り、激しく高鳴るお互いの命の鼓動が聞こえるほど身体を密着させた。 鳥のさえずりさえ聞こえない真昼の静寂の中、激しく高まる熱で目的を忘れてしまった楠木は、無防備に晒された甘い果実を欲望のまま貪った。 そして高まり続けた熱は臨界点を突破し、同時に二人の唇は名残惜しそうに離れた。 それは悠久の時とさえ思えた。しかし、秒針は時計に刻まれた数字二つ分しか動いていなかった。 「……かわいい」 耳まで唐紅に染まり、突然の楠木の狼藉に対する驚きや、ファーストキスを奪われた怒りや、情熱的な接吻での快楽やらで涙目になってぐちゃぐちゃになった深山の顔を、楠木は人生で一度も使ったことなかった言葉で賞賛した。 「いきなり何するんですか!」 正気を取り戻した深山は楠木を突き放し、鞄を掴んで逃げるように店を出た。 「あっ、お金」 「つけといてください!」 まだ体に残る熱で意識がはっきりしない楠木のぼやきを、深山は叫ぶように返事をしてから乱暴に扉を閉めた。また静寂が帰ってくる。しかしその空間に熱は無く、寂寞が漂っていた。 「……また来てくれるんだ」 一人残された楠木は、深山の返答で無性に心が躍っていた。自分の推理を確かめる方法として彼女はキスを選んだ。 そして深山の無抵抗と最後の言葉が答えを教えてくれた。それに加え、楠木自身の心の正体さえ露わにした。 「楽しみだな……」 彼女の胸中に渦巻く、心地よい熱を大切に抱えて柔らかい笑みを浮かべた。 彼女の他人への興味は自分への無関心の裏返し。自分が何を思っているかなんてどうでもよかった。しかし、いつの間にか胸に抱いていたこの恋心がこんなにも心地よいものなら、自分を知るというのも悪くないと思えた。 唇をそっと撫でて立ち上がり、カウンターに並ぶコーヒー豆を眺める。 深山が来た時だけでもおいしいコーヒーを提供しよう。惚れた相手に良いところを見せたいという、彼女にしてはあまりにも普通すぎる欲求からスマホでコーヒーについて調べ始めた。 二人のための花の園で、テーブルに残されたコーヒーからは薄い湯気が立ち上っていた。
今月のテニプリの焼肉回の感想
ネタバレ注意 やっぱり許斐先生のギャグは最高だぜ。セルフパロをあんなに上手間に使える作家はいないって。 特に好きなシーンは乾汁の世界的な不味さで全員が本気を出すとこ。天衣無縫の極みが三人、バルクの二人、ボルクの一人ハウリングと絵面が凄いことに。 あとジーニアス10が波に呑まれるとこ。「交渉で一口ずつにしたよ」からの「ジーニアス10が波に呑まれた!」って勢いで腹抱えて笑った。しれっと蘇ってる平等院も好き。 焼肉奉行同士、兄弟の絆を得た大石とアマデウスのシーンのナニコレ感もいい。 こういうの見ると、こいつらちゃんと中高生なんだなってなるよね。テトリスわからんのにパズル焼肉やろうとするボルクとか、お前そんな茶目っ気あったのかってなった。 テニプリの行くとこまで行った超人スポーツの世界観をちゃんと受け入れらるようにする力、あの数のキャラを全員魅力的に仕上げるキャラメイクの力、どれも作家の端くれとしては憧れます。 次回はとうとうスペインとご対面。新テニもラストスパート。許斐先生なら絶対面白い展開にしてくれるっていう信用があるので、スペイン戦も期待してます。 ちなみに僕の最終戦オーダー予想は S3 遠山金太郎 D2 大曲&木手 S2 徳川カズヤ D1 跡部&入江 S1 越前リョーマ です。もう尖った予想はせず、王道展開ならこうだなって感じにしました。木手と大曲のペアはスイス戦の伏線回収です。大曲もジーニアス10の中で目立った活躍ありませんし、ここで見せ場かなと。確実に出そうなのは、リョーマと徳川。次点で本気を見せてない入江。 まぁ許斐先生がわざわざオーダー予想企画なんてするくらいですから、本当にぼくたち読者の想像の遥か上を行くんでしょうけど。その上で面白い展開にする。いい意味で裏切ってくれるのが許斐先生ですから、すごく楽しみにしてます。
エンジョイかガチか
スポーツやゲームなど、いろんなことに言えることだけど、カジュアルにゆるーくやるのが1番楽しい気がする。好きだからこそガチでやるし、それが楽しい人もいるけど、大体の人間はこう考えてると思う。 自分のことだと、スポーツはサッカーやってた。友達と仲良くやるのは何も考えずやりたい事やればいいから楽しいけど、他のチームとの試合だとそうもいかない。結局自分の肌に合わないってだけの話だろうけど。 ゲームだと、好きなキャラを使いたいけど他の強キャラ使った方が勝てるってのが該当するかな? カードゲームのガチ環境を見るといつもそう思う。そのテーマで純正デッキを作るより、混ぜ物した方がよかったり、使いたいカードのためにデッキを作ってたら、別にそのカードじゃなくていいし、下手すれば他のカードを使った方が良かったりするやつ。 別に勝ちたいからそのデッキを組んだり、そのキャラを使ったりするならそうすればいいけど、それを強要するのはよくない。弱くても使いたいなら使えばいい。 僕は別に楽しむことだけが至高と言ってるわけじゃない。ガチの人が勝つために本気で考えてるのは尊敬してる。別に僕がそういうタイプじゃないってだけ。 要するに住み分けが大事ってわけ。ガチの人にもっと遊び心を持てというのも良くないし、エンジョイ勢にもっと効率的にやれと言うのも良くない。どっちが良くて、どっちが悪いとかじゃなく、人それぞれなんだから。 でも完全に分けるのは少し勿体無い。ガチ勢もエンジョイ勢もそのゲームが好きってところは共通してるんだから。 エンジョイ勢が使いたいキャラをたとえ弱くても使おうとすれば、ガチ勢は絶対にやらないコンボとか生み出す。ガチ勢はそれを見て楽しむ。エンジョイ勢は弱いとされる好きなキャラでガチ勢を倒せたら嬉しい。 そういう楽しさがあるから、分けるとこは分けつつ、寄り添うとこは寄り添っていこうって思うわけ。 以上、遊戯王マスターデュエルをやって改めて考えたことでした。
復帰勢デュエリストの戦慄
最近マスターデュエル始めて、カードがまだ全然集まってないから小学生環境みたいなデッキを使ってる。そんな中ミッションでデュエルライブを見るというのを見つけて、現代の環境ってどんなもんかなーと覗いてみたら、知らないカードが大量に出てきてデッキぶん回して後攻ワンキルを決めるという完全にヤムチャ視点になったよ。誘発とか妨害札無かったからかもしれないけど、それでもあまりの訳わかんなさに度肝抜かれた。たった数年でこんな変わるもんなんだなぁ。
創作の時間感覚
もうすぐなろうで連載してる作品が書き始めて1年になるんだけど、その作品の時間は一か月も経ってないって気付いて「………何……だと……」ってなった。まぁその後修行期間で二、三か月ぶっ飛ばす予定なんだけど。 こう言う現象ってままありますよね。創作って、基本日常の内容が濃いからめちゃくちゃ長い時間経ってるような気がしても、思い返すとほんの数ヶ月程度って。 「昔からの友人くらい仲良いけどこいつら知り合ってほんの数ヶ月なんだな……」 こう思うと少し面白い。ワートリの修と遊真とか、ダイの大冒険のアバンの使徒達とか。 以上、今日作品の時系列の整理をしてたら思ったことでした。
ハッピーバレンタイン その3
「ベータちゃんと一緒に作らなくてよかったの?」 「はい。……こういうの作ってるところ見られるのはちょっと恥ずかしくて」 はたまた別の場所で、美術部のフロウとベータの幼馴染のマイヤはマカロンを作っていた。机上にはピンク、オレンジ、イエローの色とりどりの生地が並んでいた。 「あとはガナッシュを挟むだけだね」 「そうですね。アイリスさんも手伝ってくださってありがとうございます」 「いいのよ。どっちも本命っぽいし、応援したくなっちゃっただけだから」 「「なっ……!」」 「あれ?違ったかしら」 明らかに動揺する二人を揶揄うようにアイリスは笑った。フロウとマイヤは顔を見合わせて、観念したのか大きくため息をついた。 「主催者なのにわざわざ手伝ってくれたのはそういう事だったんですね……」 「若者の恋を応援する企画だからね」 アイリスは楽しそうにウインクした。年上の余裕というやつのせいだろうか、そのおちゃらけた態度をうざいというより、頼れるという方に受け取ってしまう。二人は少し頬を膨らませはしたが、怒る気にはならなかった。 ガナッシュを挟み終わり、包装をデコレーションしている時、フロウはふと気になったことをアイリスに聞いた。 「さっきから楽しそうに作ってますけど、アイリスさんって誰に渡すんですか?」 「ん、夫によ」 「へぇ、夫……えっ、既婚者だったんですか!?」 「ふふっ、そうなのよ。うちの夫の話聞きたい?」 「あっ、遠慮しときます……」 この人の性格上話し始めたら長いだろうと予測し、フロウはやんわり断った。 お菓子作り開始から時は経ち、作り終わった生徒達は片付けをして去って行く。そして全員が立ち去り、先程までの盛り上がりようが嘘のように静まりかえった会場でアイリスは一人で窓から学園の様子を眺めていた。 「懐かしいなぁ」 元戦争孤児。そんな過去がありながら今の幸せがあるのは、エリアステラ学園という居場所を与えてくれた学園長と、孤児時代からずっと一緒で、今の夫であるブルーのおかげだ。だから少しでも恩が返せるよつに、ここの生徒達のためにバレンタインイベントを毎年行なっている。 女子同士で交換する子、意を決して告白する子、十人十色の様相がなんとも学生らしい自由さを見せてくれて微笑ましい。私も昔はああだったと感傷に浸っていると、後ろから声をかけられた。 「渡しに行かなくていいのかい?」 「学園長」 赤い包装紙に包まれた箱を手に持った学園長が立っていた。 「もう少し見ていようかなって思いまして」 「そうかい。君もそんな歳なんだね」 「ふふっ、時が経つのは早いですね」 アイリスは窓のほうに向き直した。しかし、その視線は下にいる生徒たちではなく、空に向いていた。 「……ここにいる子たちは幸せ者です」 「そうだといいがね」 「そこはもっと自身ありげに言ってくださいよ」 「私もそう言いたいがね、ここを出た子、今ここにいる子が全員幸せとは言えないじゃないか」 アイリスは知っていた。学園長がこの学園を作った目的も、この学園の名前の由来も。 「私もブルー君も幸せですよ。アリーゼさん」 だから、この言葉を伝えようと思った。アリーゼの表情はアイリスからは見えない。しばしの沈黙の後、アリーゼはようやく口を開いた。 「ありがとう」 受け取った言葉を噛み締め、アリーゼは素直な感謝を伝えた。それを聞いたアイリスは、振り返って満足げに笑った。 「来年もまたやりましょう」 「そうして貰えると嬉しいよ。みんな楽しみにしてるんだ」 恩人の役に立てた。そんな確信を得たアイリスは部屋を出た後、スキップしながら自分の夫の待つ喫茶店に向かった。
ハッピーバレンタイン その2
「へぇ、かぐや様と櫻子さんの国にはバレンタイン無いんだ」 場所は変わって別の班。そこでは霊術研究部のかぐやとエリィとマリィ。陸上部の櫻子が一緒にクッキーを作っていた。 「えぇまぁ。うちの国は外国との貿易とか禁止してたから」 かぐやと櫻子の出身地「陽元」は最近開国したばかりのため、まだ海外の文化には疎いのだ。 「でも、最近は外国のイベントとかやってるらしいよ。クリスマスとか、ハロウィンとか」 「節操なさすぎない?」 「良くも悪くもうちの国は吸収が早いから」 櫻子の言葉に呆れたようにため息をつくと、グッグッと力強く生地をこねた。 櫻子は陸上部全員、かぐや達は霊術研究部全員と果てしない数作らなければならないので、当然生地も大きくなる。小柄なかぐやでは傍から見ればきつそうに見えるが、霊術で身体を強化した彼女はこの中の誰よりもタフなので、実は一番この役に適しているのだ。 こねた生地を薄くのばし、型をとっていく。人型、ハート型、星型etc……様々な型をとって焼いていく。量が量なので焼くだけでかなりの時間がかかるため、その空き時間でエリィがマドレーヌの生地を作り始めた。 「そういえば、バレンタインってあげるお菓子には何かしらの意味があるのよね」 「そうですわね。例えばクッキーは「あなたとは友だちです」で、私が今作ってるマドレーヌは「もっと親しくなりたい」ですわ」 「そうなんだ。じゃあ、そのマドレーヌは誰にあげるの?やっぱりマリィちゃん?」 「ま、まぁあそうですけど……」 「ふぅーん、ヘェ〜、そっかぁ」 「茶化さないでください櫻子さん。マリィとは幼馴染なんですから、これくらいはしますよ」 少し照れながらそう弁解するエリィだが、櫻子にはその顔が恋する乙女のようにしか見えなかった。微笑ましい初々しさに、一つしか歳が違わない後輩がいつもより可愛く見えた。
ハッピーバレンタイン その1
「これより毎年恒例、バレンタインお菓子作りをはじめます!」 『おー!』 エリアステラ学園南区第三地区にある情熱荘。普段はスポーツや芸術に打ち込む者達が集うこの場所で、さまざまな思いを抱く女子達が一堂に会していた。 「あのOGの人毎年来てるの?」 「やり始めたのがあの人だからね」 壇上に立って堂々と音頭をとる女性を、ベータとメアリは見ていた。 「ふふっ、アイリスくんは相変わらずだねぇ。大人しそうで、意外なところで度胸がある」 「うわぁ!急に出てこないでください学園長!」 ぼーっと説明を聞いていた二人は、突然間に現れた学園長ことアリーゼに驚いて飛び退いた。期待通りの反応だったのか、学園長は満足そうに笑った。 「いやいやすまない。でもまぁ、同じ班なのだから仲良くしてほしいね」 「そうなんだ」 「あなたにお菓子作りなんてできるんですか?」 「酷い言いようだね。私だってお菓子作りの経験くらいあるさ。というか、年季で言えば私の方が上なんじゃないかい?」 このバレンタインお菓子作りは情熱荘にある三つの調理室で行われている。そして、机ごとに班を割り振って(一緒になりたい人の希望は出せる)お菓子を作る。材料は各個人が事前に希望していたものが配られる。もちろん、追加での持ち込みも自由だ。 「そういえばベータ。マイヤちゃんとは一緒じゃないの?」 「うん。何をあげるかは交換の時のお楽しみにしたいんだって」 諸々の事情で仲違いをしてしまい、そこから学園で再会を果たし、仲直りをしてからはじめてのバレンタイン。ベータは日頃の感謝を伝えるべく張り切っていた。 「メアリはアルトに何あげるの?」 「そうね……って、いつ私がアルトにあげるって言ったのよ!」 「じゃああげないの?」 「えっ、そ、そりゃあげるけどさ……」 メアリの顔は真っ赤になって、話す声もボソボソと弱々しくなっていく。相変わらずわかりやすいなと思いつつ、ベータはニヤリと笑った。 「いやはや、青春だねぇ」 「茶化さないでください。そう言うあなたは誰に渡すんですか」 「私かい?タイラーくんと私の親友のぶんを作ろうと思ってね」 「あなたみたいな人でも親友と呼べる人がいるんですね」 「わーお、超失礼。私が心読めるからってちょっと傷ついちゃうぞ」 「相変わらず心にもないことをペラペラ喋りますね」 (やっぱりメアリって学園長嫌いなんだ) アルトが好きなメアリは、過去に一度アルトの心に酷い傷をつけた学園長を嫌っている。 学園長も自分に非があるから、それは仕方ない事だと割り切っているし、メアリも学園長が悪いところばかりではないとわかっているので、こういった絶妙な距離感を保っているのだ。 「はい、説明は以上です。それでは皆さんお菓子作り頑張ってくださいね!」 アイリスの合図と同時に、会場に集った者たちが一斉にお菓子を作り始めた。