マスターのコーヒーは超不味い

 アンティークな雑貨で飾られ、静寂に包まれた隠れ家的喫茶店。そこの窓際の席で斜陽に照らされて一人コーヒーを飲む。誰もが一度は憧れるシチュエーション。しかし、完璧に見えるその光景には一つの欠落があった。 「まっず……」  肝心のコーヒーが超不味いのだ。正真正銘比喩でも何でもなくこれは泥水だ。ここまで不味くコーヒー淹れられるのはもはや才能ではないか。  スーツを着た女性客は顔を顰めて深くため息をつき、カップをテーブルの上に置いた。  彼女の名前は深山梨華(みやまりっか)近寄り難い冷淡な鋭い三白眼。長く続けたデスクワークのせいで猫背ぎみな姿勢で座り、長い黒髪は最低限の手入れしかされておらず光沢を失っている。日々の仕事でストレスを抱える社会人。それが深山梨華の現在だ。
SEN
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なろうとカクヨムで連載中の作品の裏話てきなものをSS風で投稿していきます ちなみにこれ https://ncode.syosetu.com/n0296gx/