珠那
12 件の小説危険な学校生活
私は高校生活をそれなりに楽しんでいた。 校内には食堂もあり、みんなが自由に過ごすことのできる空間もあった。 私には1人の親友がいた。"撫子"。その子の兄はどこかのお店の旦那様。とても仲良くさせていただいていた。 私は学生の身でありながら、ある組織に入団していた。撫子の兄が率いる、なんというか、マフィアのような団体だ。勿論、撫子はそのことを知らない。私がその組織にいる理由は2つある。1つ目は、私が特別な力を持っているということ。2つ目は、撫子を守れと旦那様からの命令があるからだ。旦那様は1つ年上の高校2年生。私の方が学年も一緒だし、性別も一緒だからなにかと都合がいい。 そんなことを振り返りながらいつも撫子と学校生活を楽しんでいる。 撫子は特別な力を持っている。それゆえ、狙われやすい。 そんなことを、校庭を見ながら考えていた。 「ねえ、しゅなちゃん。一緒にご飯食べない?」 「ん、いいよ」 昼休みになるといつもこうして話しかけてきてくれる。そして屋上に行き、校庭を見ながらパンを食べる。 「今日はここでいい?」 「ええ」 雨が降っていたので、今日は窓から校庭を見ることにした。 「しゅなちゃんはいつも、校庭を見ているわね」 「そうかな?」 「ええ、いつも。どうして?」 「それは…」 言えない。それは、旦那様とすぐに連絡を取るためであった。今日はいないが。 「…みんな、遊んでいて楽しそうだなって思って…」 「そうよね! 今度頼んでみましょうか?」 「い、いいよ見るだけで」 そう?と言いながら美味しそうにパンを食べる。この子が狙われる理由がわかる気がする。 「あ、飲み物買ってくる。何がいい?」 「私、ココアがいいです」 「おっけー」 そのまま自販機でココアとコーヒーを買い、あの場所に戻ってくると、 「撫子?」 あの子の姿がなかった。全身が総毛立つ。なんで? 最近は何も起こらなかったのに。 「撫子!」 名前を呼びながら校舎内を駆け巡った。そして、 「撫子⁉︎」 黒い影に首を掴まれた撫子を発見した。 「しゅな…ちゃん? ……に、げて、」 「っ、今助ける!」 双剣の神器を発動させた。それを使い、呪文を唱えようとするが、 「まぁて、この子がどぅなっても、いいのかぃ?」 黒い影はそう言いながら片方の手を剣に変えて撫子を突き刺そうとする。 「どうした、しゅな!」 「っ、旦那様! ごめんなさい、撫子が!」 そうこうしているうちに撫子が壁の中へと沈んでいってしまった。 「くそっ!」 私は自分の無力さに失望した。 「大丈夫だ。絶対に助けよう」 「…すみません。私が目を離した隙に、こうなってしまって」 「いや、お前のせいではない。大丈夫だ」 励ましてくれてはいるが、内心はそんなこと思っていないだろう。 私たちは出陣するために体を早く休ませた。だが、その隙を狙い、またくる可能性があるので、1人、自分の家に戻っていた。 夢を見た。本部が闇に落ちる夢を。慌てて起き、本部へと急いだ。正夢になってしまっていた。急いでエレベーターに乗る。2階につき、勝家様が倒れているのをみつけた。 「勝家様! 大丈夫ですか?」 「しゅなか、大丈夫だ。少し寝ていただけだから」 「そうで、ございますか…」 寝ていたのか。心配したのに。 「あ、今の状況は?」 「この最上階にボスがいる。不覚にも落とされてしまってね。今から行くのかい?」 「はい」 「やめておけ。女が倒せる相手ではない!」 「嫌です!私のせいで撫子が捕まったのに、その私がそばで見ていろと? そんなことは死んでもできません!」 「……なら、無理はするな。ダメだと思ったらここを出なさい。私もついていきます」 「…ありがとうございます」
放課後 図書室にて
午後は部活動見学の時間だから、帰宅部の私はいつ帰っても良いのだ。 …だが今日は委員会の仕事が入っていた。 「あ、お久しぶりです、茉理さん、柊君。急に呼び出しちゃってごめんね」 いつも通り階段を登り、図書室のドアを開け入っていくと、そんな穏やかな声がした。 「久しぶり、月見里先生。どうせやることないから」 月見里真白。若い国語教師だ。先生とは去年からの付き合いで、私と先生が同じ曜日担当になり話したところ、意気投合。それから砕けた様子で会話をしている。 以前、 「私相手なら良いけど、他の先生方にはちゃんと敬語使うようにね?」 と、言われたことがある。本当だったら自分に対しても使って欲しいと思っているらしいが、これまでの私を見ていて無理だと悟ったらしい。 「じゃあ今日、これを手伝ってもらおうかな〜」 先に司書室へと入っていき、ひょっこり顔を出し、「こっちに来て」と合図をした。 言われた通りそこに入っていくと、大きな箱に大量の本が入っていた。 「これ全て新着本なの。100はゆうに超えてると思うんだけど…」 見てみると、傷ひとつついていないとても綺麗な本が…約120冊はあった。 「えっ…もしかして、これ全部…?」 「ええ。補強と判子、今日中に全部終わらせようと思って!」 「いや、さすがにそれは無理。補強だったら全部できそうだけど…」 「でも4時間あればいけるんじゃない?あ、柊君は部活あるなら行っても良いのよ?」 「いや、俺今日は呼ばれてないんで、大丈夫です」 柊は部活には所属していないが、選手が休んだ時、助っ人として入るのがちょくちょくあるらしい。そういえば、翔も前に言っていた。 「あいつがいるとすげーゲームしやすいのに、なんで部活に入らなかったんだろうな。柊がいるのといないのとじゃ、全然違うっていうのに…」 器用なんだろうな、きっと。そんなところが、柊の良いところだ。 そんなことを考えながら、じっと柊を見ていた。すると、私が見つめていたことに気づいた柊は、変な顔をし、「何してんだ、さっさと入れ」と言いながら蹴り入れた。私を。そのせいで少し足が赤くなってしまった。 「え、酷い! 足痛むんだけど!」 「じゃ、ちょっと行ってくる」 私のことなど少しも気にせず、気使わず、司書室から出て行った。 「ちょっと、どこいくの⁉︎」 「どこって、館内の掃除をするだけだ。茉理は先生と一緒に補強でもしてろ。すぐ終わらせてくる」 そう言い、颯爽と走って行った。箒とちりとりを持って。なんともいえない、変な絵だった。図書館内を走る、箒とちりとりを担いだ青年。笑える。 「さあ茉理さん、やっていきましょうか」 「うん。えっと…まずは補強からで良いんだよね?」 「ええ。このフィルムを…」 箱の中から出したのは、大きさの異なるフィルムの束。大量にある。 「大きさがそれぞれ違うから、本ごとに合ったフィルムを使ってくれれば良いから。やり方は…前教えたよね。覚えてる?」 「うん、大丈夫。あれ結構好きだった」 「そう。なら、よさそうね。じゃあ、頑張っていきましょう」 「お〜う!」 まずは、その本に合ったサイズのフィルムを選び、高さに合わせて貼っていく。カバーを外すことがないように、丁寧に。これをどんどん他の本にも施していく。柊が帰ってくる頃には、2人で約20冊ほどは終わっていた。 「おっ、かなり速いな。これなら予定より早く帰れそうだ」 「そうなの。茉理さんの手際が思ったよりも良くって」 先生が褒めてくれた。素直に言ってくれること、あまりないから嬉しい。 「でも、早く終わったら地獄の判子が待ってるかも」 シーンとなった。月美里先生は相変わらず笑顔で作業している。その笑顔がすごく怖い。背景に色をつけるとするのならば、黒と紫だ。 「…聞かなかったことにしておくか」 そして私たちは黙々と作業を進めた。 2時間後… 「完成!!」 約120冊ほどある本の補強を全て終わらせた。 「こんな早く終わるとは思わなかった!」 「柊が来てからすごく速かった」 「そうか? でもあれ意外と楽しかったな」 「それは柊が完璧だからだよ…」 柊は鈍感だからわかんないんだろうが、隣の月美里先生、感動で泣きそうになってたんですよ。知ってました? ほら、両手で顔覆ってる。 急に柊がこっちに振り返った。 「月美里先生が俯いてんだけど、どうしたんだ? 速く終わらせるのは良くなかったのか?」 「………」 柊が状況もわからずあたふたしている。そんな柊の両肩を月美里先生はガシッと掴み、「そのままの柊君でいて…」とぶつぶつ言っている。柊はまだ混乱したままだ。 「はあ…とりあえず、判子押してこ。この時間が勿体無い」 「あ、それはいいのよ。これなら、すぐに終わらせられるから」 手をぱんと叩いてそう言った。 「で、でも…結構冊数あるけど…」 月美里先生は首を横に振り、笑顔で話し出した。 「いいのいいの。2人とも、こんなに頑張ってくれたんだもの。今日はもう帰って来週からの生活に備えなさい」 “あまり遅くなると怖いでしょう?“ 最後の言葉は目で訴えてきたのだが。 「はあ、わかった。先生も遅くならないうちにね」 「ふふっ、私は子供じゃないのよ? じゃあ、またね」 「うん、ばいばい」 バタン、と図書室の扉を閉めた。 そうして昇降口へと歩き出した。
私の悩み
「なんだよ、気色悪いなぁ!」 「は⁉︎ 無理なんだけど〜!」 「アイツ、そんなんだったの?」 「死ねよ! あんな奴いたって何にもならねえよ!」 あーあ ずっと飛び交うこの言葉。 いつ聞いてもいい気がしない。 それって私だけ? あなたがそう言われてたら、どう思うの? なんて返すの? そんなの、できないよね? もっと言葉を考えたほうがいい。 気分が悪くなる人だっているんだから。 「ねえ、一緒に体育館行こ!」 「答え見せて〜」 「○○ちゃん、大好き!」 そういう人に限ってすぐ裏切る。 人の気持ちを考えないくせに。 自分だけが良ければ、なんでもいいくせに。 だから、嫌われる。 だから、居場所がなくなる。 なんでわかんないかな?
お題
「はあ、あっちぃ…」 あたし、季節の中で1番夏が嫌いなんだよね。 暑いし、生きてるだけで汗だくになるし… おまけに体育の授業は水泳。 喜んでる奴らもいるけど、あたしにはいまいちよくわからない。 今の、先生を待っているこの時間も肌が焼けてシミが多くなる。 早く学校おわんないかな… 「今日のSHRは終わりです」 「ありがとうございました」 はあ、やっと終わった… みんなは今から部活か。 大変だな、特に外部活。 「早く行こーぜ、今日は練習試合だろ!」 「痛ってぇな、叩くなよ。俺も楽しみにしてんだから」 はあ、騒がしい。 「…早く帰ろ」 電車に乗っても、すぐにドアが開くから冷気が逃げる。 「暑い…」 家までの道のりは長い。 まだ駅から十分しか歩いていないのに汗だく。まだ家にはつかないのか。 −ミーンミンミンミンミンミーン− 蝉の声を聞くともっと暑く感じる。 この時ぐらいは静かにしてくれ。 「はあ、やっとついた…」 家に帰ってすぐに風呂に入る。汗で濡れたワイシャツも下着も全部脱いで、直行。 この時が1番好き。 それから髪乾かして、部屋に行って、エアコンをつける。 ゴォーという音とともに冷たい風が生まれた。 …ああ、やっぱり。 夏はここが、1番だよ
始業式2
郁真悠…知ってる! 似たような名前の人、知り合いにいた気が… バチっ あ、また目、あった。今度は郁真くんと。今日はよく目が合うな。 …あ、確か、郁真くんと小学校のクラブで同じだった。私は音楽部で、家も近所だったからたくさん話した…気がする。 中学に上がってからは郁真くんが転校して、それ以来会えてなかったんだ。 …これは、感動の再会というべきであろうか。 あ、郁真くんが壇上から降りて行った。 今年の一年生は成績の良かった子たちが多いみたい。とはいっても、うちの学校、偏差値50ちょい上くらいだから、入ろうと思えば誰でも入れる。その上指定校も多く、就職率もまあまあ高い。だからいつも倍率もそこそこ。だが今回はそれも高かったらしく、落ちた子もいつもの倍くらいいたらしい。 どんまいとしか言いようがないが。 そうこうしているうちに始業式が終わった。教師たちは生徒を各教室へと促している。うちの担任も「急いで戻れ」と叫んでいる。いちいちうるさい。 その後、教室へと戻った生徒たちは各役職を決めていた。学級委員はいつも通り雨宮くん。私は図書委員。柊も。紀伊馬君は体育員、瑠璃川さんは美化委員、怜桜はなし。手伝いくらいですかね。 それから今年の行事のことについて軽く説明。(主に修学旅行)もろもろ話終えた後、仲良くなるためにカードゲームで遊んだ。全部勝利した。この手のゲームは得意です。 その後、担任から景品をもらい、今日の学校は終わりを告げた。
始業式
始業式。 それは学校生活の中でかなり退屈な時間だと、私は記憶している。 無駄に長く、ありがたくもない校長の話に、頼りなさそうな教師、委員長の話。 何もしていないのに飛んでくる先生からの叱責や各部活動の部長からの言葉。 今日は新年度初の始業式なので、生徒勧誘目的の言葉が多い。 現実とは大きくかけ離れた言葉。 マイクを使っているのに無駄に大きい声。 良かれと思ってやる行動、発言。 私には何も響かない。聞こえない。感じない。 叶うわけのない願いや目標を決めて、何になるというのだろう。 高く希望を持った分、叶わなかった時の喪失感が大きいというのに。 …いつからそんな風に思うようになってしまったのだろう。 「本日から新しい学校生活が始まりました」 また生徒会長である雨宮さんが話している。大変だな、生徒会長。 −バチッ (あ、目、あった) 一人一人の顔を見ながら話しているのか。苦労するな。てか、一瞬笑ったように見えたんだけど。まだ朝のしっかり覚えているのか?早く忘れていただけると嬉しいんだけどな。 「それでは、新入生代表の言葉−」 ああ、去年もそんなのあったな。確か、雨宮さんがやったんだよね。うわっ、もしかして、次期生徒会長候補がやるとか…!そんなわけないか。 「新入生代表、郁真悠!」
プロローグ
昔々、ある王国に、それはそれは可愛らしい4人の子供たちがおりました。 1番上の男の子は聡明で、次の王にとても相応しいと誰もが思うような子供でした。 2番目の女の子はとても美しく、世の中の男が一目見たら絶対に自分の嫁にしたいと考えてしまうほどの美貌を持っていました。 3番目の男の子はこれまた頭が良く、運動能力も高い、まさに狼のような子供でした。 そして、1番下の女の子はずる賢く、好奇心旺盛で、何かとしでかしてしまう、いわゆる問題児でした。街を歩けば誘拐にあい、庭に出れば木の上で降りられないと泣きじゃくるような女の子。その周りにいる者は“毎日とても大変だった“と口を揃えていうでしょう。 これは、この国を動かす4人の子供の物語。 この子たちの名は…
いいな…
なんで私はいつもこうなの? なんで私ばっかこんな目に遭わなきゃいけないの? 私だって楽しく生きたいよ 君みたいに、明るく笑っていたい こうなっているのは、私のせいだってわかってる わかってるけど、前に進めない なんで? みんなの知ってる私じゃないから? 私が今までの言葉以外のことを発していたら変だと思われるから? …もう、わからない 私はなんなのだろう どうしてここにいるのかさえ、わからなくなってきてしまった ああ、無邪気に笑う君がとても輝いて見える みんなの中心にいる君が とても愛おしくて、憎い 嫉妬だ 輪の中心にいるって、どんな気持ちなんだろう 楽しいのかな? 嬉しいのかな? いつか私も…だなんて、 願っても、誰も聞いてくれないんだろう 「私が悪い」 それはわかってる でも、やっぱり、羨ましいな 今は難しいかもだけど、 いつか私にも、 そういう日が来るといいな
目覚めから
「っは、はあっ、はあ……夢か」 悲しい夢を見た。 あれはなんだったんだろう。 とりあえず目覚ましを止めた。 「今日から学校、か。面倒…」 私、春野茉理は、神奈川県にある花咲高等学校に通っている。 なんとこの日は始業式。 2年生に進級し、新しくも何も変わらない生活を送ろうとしていた。 「さすがに、サボることはできない、か」 初日から休んでしまっては怪しまれてしまう。 仕方なく、登校する準備を始めた。 制服を着て、ご飯を食べて、水筒、タオル、財布、その他必要なものをバッグにつめ、 「弁当は…いらないか」 午後の授業はないはずだから、早めに帰宅できる。嬉しい。 「茉理、もう時間よ」 「はーい。行ってきます」 ドアを開けた時、心地よい風が流れてきた。 やはり、春の風は気持ちいい。 と、ちょうどその時。 「おう、茉理。おはよう。今日はちゃんと登校するんだな」 さっきの綺麗な心も風と一緒に流されてしまった。 「おはよう柊。“今日は“って何、“今日は” って…」 「事実だろ?」 ああ、せっかく心が洗われようとしていたのに… それを遮ったのはこの男、石黒柊だ。 幼稚園の頃からの幼馴染で、ほぼなんでも話すことができる相手。だからよく相談に乗ったり、聞いてもらったり… でも最近は私がよく反抗するようになった。 なぜかって? それは…ムカつくからですもちろん。 今日は久しぶりに会ったということもあり、話がとても弾んだ。この休みの期間中何をしていたか、あの人気ドラマを見た感想とか。 「私は奏と理玖がくっついて欲しかったんだけど」 「それはお前が理玖推しだからだろ」 「ぐ……」 とまあ、こんな風に語っていたところ、もう学校に着いてしまった。すでに大勢の人が登校しているし。クラス表も出てる。 「あ、おっはよ〜!…あっ、」 「う、おわああああ!」 ズドンッと2人で倒れてしまった。私の上に乗っかっているのは… 「あ、綾! ちょっとどいて! 早く、みんな見てるから…」 「え、ははは〜 ごめん、茉理に会えたのが嬉しくて…」 そう言ってくれたのは私の唯一の友達、てか大親友の中本綾。明るくて運動もできて…めちゃくちゃ可愛い! 「おい、またやらかしたのか、綾。…2人とも大丈夫?」 そう言ってきたのは元宮翔。運動ができる、クラスの人気者。学級委員に選ばれることも多かったっけ… 「おはよう翔! 元気にしてた?」 「昨日も会ったじゃないか…」 そう。何を隠そう、この2人は付き合っているのだ。しかも、中2から。もう4年目に入る。なのにこんなにラブラブ。羨ましい。私にも彼氏欲しい。こんな、みんなの憧れの的になってみたい。…無理な話であるが。 「あ、そういえば、もうクラス発表されてるよ! 私4組だった」 「俺は3組な! 綾と一緒になれなくて残念だったよ」 「でもでも、体育の授業は一緒に受けれるよ! 楽しみだね!」 「おう!」 いつまでもラブラブで羨ましい。本当に。 「おい、ボケっとしてないで俺たちも見に行くぞ!」 「ボケっとしてない、ボケッとは! でも私は見に行かなくてもわかる」 「そうかもしれないけど万が一、間違っていたらどうするんだ。行くぞ」 「あっ、コラ! 引っ張るな! “私は“わかるんだって!」 まあわかると思うが、力は当然柊のほうが強い。抵抗しても無駄だと知っているので途中からは大人しく付いて行くことにした。ちゃんと付いて行っているというのに、私の右手は繋がれたまま。子供じゃないんだから逃げ出さないよ、別に。 「あ、俺たち2組だわ」 “俺たち“。知っていましたもの。だって夢で見たんだから。私の予知夢が外れるわけない。1回も間違ったことないんだから。苦労したことはあるけど… やっとこれで4人全員のクラスがわかった。出席番号も。ま、それはいいとして… 「2組、今年は変な奴ばっかいるよな…大丈夫なのか?」 翔がそう漏らす。「確かにな」と柊。 私と綾も同意。なぜかって? そりゃ、 「今年の2年2組、“先生も生徒もおかしな奴ら“ばかりだってさ」 あ、知らない人に言われてしまった。そう、その通りなのだ。このクラスには5つの派閥があると推測される。まず1人目。あのグループの中央にいる茶髪でヘアピンすっごいつけてる男。紀伊馬迅。運動がものすごくできる、ムードメーカーになりそうな人。私は別に興味ない。 2人目。あの女子に囲まれている女の人。綺麗な黒髪ロングの優等生っぽい人。瑠璃川立華。あまりいい噂は聞かない。確か、父親が何かの社長だったような… 3人目。あの真面目そうなメガネくん。もう1人で席に座り、じっと先生の指示が来るのを待ち続けている人。雨宮清滝。この高校の生徒会長です。てかアンタ、始業式の司会やらなくていいの⁉︎ …4人目。私が一番関わりたくない人。京極怜桜。喧嘩っ早いヤンキーで、親はヤクザなんじゃないかって裏で言われている。そして私の従兄妹です。 「はあ…どうしてこうなった」 そして5つ目は、私たち、何もない人グループ。…仲良くやっていきましょう! 「おい茉理、怜桜に挨拶しなくていいのか?」 「誰がするか! 私だって学校では関わりたくないんだよ! 噂になるのが怖いんだって!」 「いや実際従兄妹…」 私が怜桜を嫌っている理由。それは…クラスに入る前に私が来ることに気がつくということ。そして、私のことが大好きすぎるということだ。 「おう! 茉理〜! 久しいな、元気だったか? お? 俺は会えて嬉しいぜ!」 ほうら、来た。 教室の扉を開けた途端、抱きついてくるとは…記録更新じゃないか? 「わ、わかったから離して! 怜桜、く、苦しい…」 「俺は離さんし逃さんぞ! なんせそのために春休み全部を注いで筋トレしていたんだからな! …あ?」 一瞬、怜桜の力が緩んだ。この時を使い、逃げ出そうとするが…無理だったな。柊がなんともいえない顔で見下ろしているのがムカつくが…てか、なんで離してくれないの? 力強すぎない? 「おい、手ェ離せやクソメガネ! お前殴られたいのか、あ?」 クソメガネ? って、え? 生徒会長? なんで? 「俺はそこを通りたいから掴んだだけだ。それと、その女は嫌がっているだろう。離してやれ」 「はあ? 茉理が嫌がるわけがねえだろ!」 「いいから、離して… 式、始まっちゃう」 「ほら、“離して“と言っている。あとそこどけ」 「…チッ、ほらよ、もう俺に指図すんな。次は殴る」 「ああ、構わないさ」 颯爽と歩いて行く…なんと! 私を助けてくれた! 嬉しい! しかもあの怜桜を言い負かした、だと…! めちゃくちゃかっこいいじゃないか! 「お前は一目惚れしすぎなんだよ」 「ふん! 一目惚れじゃないです! ただちょっとキラキラして見えただけです!…ん?」 なんだろ…周りが急に静かになった気が… 「茉理、ごめん。お前が嫌がっているとは知らず、ずっと抱きついていたこと、許してくれ」 え、嫌な予感… 「この通りだ」 みんなが一斉にこちらを見た。そりゃそうだ。あの怜桜が私に頭を下げているのだから。 「い、いいよ、別に。そんな謝ることじゃないし。ま、学校でやられるのは困るけど」 「そうかそうか! 許してくれるか! 茉理は優しいな! ありがとう!」 また抱きつかれた。なでなでしてくる。気持ち悪い… 「柊もよろしくな! …茉理に何かしたら許さないから、覚悟しておけ」 「わかっているから、どいてやれ。茉理が死にそうだ」 ありがとう柊。やっと苦しみから解放された。 「茉理、誰かに何かされたら俺に言え。俺が殴ってやるからな!」 そんなニコニコキラキラ笑顔で言われてもなあ。 「あ、う、うん。ありがとう」 「じゃ、頑張ろうぜ〜!」 席に着いてしまった。なんだったんだ…まるで嵐が通り過ぎたよう… そんな怜桜と入れ替わりに担任となる人物が入ってきた。 「おー、みんな元気だな初日早々! いいぞ、俺はそんなみんなが大好きだぜ!」 2組担任、石倉賢吾。とても熱い先生。体育教師。私、大嫌い。 あれ…?2組ってもっと清いイメージだけど…? こんなむさ苦しい人が担任とか…萎える。 「今から出席取るから席につけ! おい、無視は良くないぞ!」 あ、無視されてる自覚あるんだ… 先生の呼びかけによってみんな着々と席に座り始めた。 「お、全員座ったな! 一応自己紹介しておこう。みんなも知っていると思うが…俺の名前は石倉賢吾。今日からみんなの担任だ。教科は体育」 「知ってますよー」と周りから野次が。この先生を知らない人はいない。 「ああ、そうだよな、すまんすまん。2年ぶりにクラス持つことになったから浮かれててな… というわけだから、1年間よろしく!」 「よろしくお願いしまーす!」とまたもや周りから。このクラス、石倉先生信仰してる人、多いのか? てか先生はさっきのみんなの言葉で泣きそうになってるし!もうめちゃくちゃだよお。 「あ、そういえば」 そういえばってなに! 「次の始業式、体育館でやるから、8時45分になったら移動、遅くとも55分までには整列しておくように。じゃ、俺は準備があるからよろしく〜」 よろしくって何が? てか始業式のことついでみたいに言ってたよね? 信じらんない。 「先週の火曜日さ〜」 「昨日のことなんだけどね、」 「暇だなー」 「………」 いろんな話が飛んでくる。5つも派閥があるんだし、そりゃそうか。そんなクラスにいる私は本を読むんだけどね。 「ねぇ、春野さん」 なんでこの話ってこんなに辛いんだろう。 「…ねえ、春野さん? 聞いていらっしゃる?」 しかもこの人の本、いつも誰か死んでるし…でもめっちゃ泣けるって凄くない? 「っ、聞こえていませんわね… 春野茉理!」 「うわっひゃ…はい、なんですか…って瑠璃川さん?」 「はいそうですけど…全く何も耳に入れていないようなので叫ばせていただきました」 そうだったんだ…気づかなかった。 「それで…私に何の用?」 「あ…えっと、その…」 人に叫んだくせにもじもじしだした。なんなんだこの人。 人に声をかけているのが珍しいのか、瑠璃川さん派の人がこちらを見てくる。鑑賞するものではないから見ないで欲しい。前髪ちょっと失敗してるし… 「あの、連絡先を教えていただいてもよろしいでしょうか…?」 一瞬考える。目が点になる。動きも止まる…え? 私の? いらなくない? 「あ、い、いいよ。LINEでいい? こっちの方が便利だからさ」 「え、いいのですか…! 嬉しいです、ありがとうございます…!」 そして私たちはLINE交換をし、ここの席へ戻った。 今でも疑問から解放されない真理なのであった。
自己紹介
はじめまして! 珠那です! 自己紹介する前に投稿してしまいました…! 私は本が好きで、ずっと物語を書いてみたいと思っていました。 何かいいのあるかな〜とアプリを探していたところ、ここを見つけたのがきっかけです。 それまでは自分で考えることはあったのですけど、書こうという気分にはなれず、ずっと悩んでいたのです。 今年は 「新しいことをどんどんやる!」 というのが目標なので1つの到達地点として書いてみたのです! …というきっかけの話はここまでとして、 これから自分のペースでどんどん投稿していこうと思っています! 楽しんで書くので、皆さんも楽しんで読んでくださると嬉しいです! 注 名前は仮なので変わると思います。ご了承ください。 よろしくお願いします! それでは〜