カツ丼屋さん
8 件の小説Who are you
【妻】これで良かったのよね。お母さん。 ガチャ病院のドアが静かに開いた。 【妻】あら水平さん。もう検査の時間? 妻の通う病院の医院長 水平純平 である。 【水平】多田さん。何故まだ入院しているんですか。病状は悪化していないでしょう。 【妻】水平さんはいつからそんな強気に発言出来るようになったのかしら。 そう言い放ち、すっと スマホをチラつかせる。 【水平】...。 その事はどうかご内密にお願いします。 そう告げ、頭を深く下げた。 【妻】なにか悪いことをしてるみたいじゃないですか。頭を上げて下さい。 そう言い、不敵に微笑んだ。 水平がボソッと何かを言った。 【水平】...を.....し....。 【妻】あら、なにか言いました?。 【水平】いえ、なんでも。この病室は貸しますので、どうか。 【妻】どうもありがとうございます。 検査結果は夫にも伝えておいてください。 【水平】かしこまりました。
割り切れないの。
7時、 君が隣居ない、「別れたんだ。」 なんていって向かう。 11時、 ご飯が恋しくなる頃、ここ最近は即席飯ばかり。なにか違う。 13時。 あなたがお弁当の連絡を入れてくれる時間。 17時。 ご飯を作り始める時間。いつもより作りすぎてしまう。 19時。、 「おかえり」の無い家、テレビの音だけが響く部屋。貴方の匂いが薄れていく空間。 23時。 あなたからの電話の時間を待つ私。 1時から3時。、 やっぱり貴方のとこばかりで。 5時。、 『やっぱりあなたとじゃないとあまりある日々が割り切れないや。』
Who are you??
数日前... 「おとーさーん!ゆい大人になったらおとーさんと結婚する!」 父親としてすごく嬉しかったが少し意地悪したくなった。 「大人になったらな」 そんなこといわなければよかった。
Who are you??
「眠くて少し転んだだけだよ。」 そう言って笑っていた。 そんなじゃないだろ!!と言いそうになったが、 その次に 「娘ちゃんはおばあちゃんに預けたから心配しないで」続けざまに妻がいった。 私はハッとした。 妻の事で頭がいっぱいだったからか、娘が居ないことに気ずけなかった。 「父親失格だな。」そんな言葉が小さく出てしまった。 救急車に揺られ妻の安否を待っていると、 病院に着いた。 結果、少し重い病気らしく妻は一年以上は病院で迷惑になることになった。 そう決まった時に娘の安否が気になった。 家に帰り、娘を預かってくれているお義母さんに電話を掛けた。 tu...tu... 繋がらない、少し不安に思い妻にメールを送ってもらうことにした。 連絡はあっさりしたもので、 「男1人で面倒を見るは大変だと思うので由美が退院するまで預かります。だって」と、メールが妻から来た。 「はぁ...勝手すぎるんだよ。」 そう思いながらも、少し疲れたので寝てしまった。
Who are you??
1年前 「ただいま」 いつもの 『おかえり』 と返してくれる声が聞こえない。 不思議に思いリビングに向かう。 そこには倒れ込んでいる妻がいた。 私は頭が真っ白になったが、すぐさま救急車を呼んだ。 「息はまだしている。」 少しの安堵と、理解出来ない状況に頭が混乱していた。 来るまでの時間は永く、苛立ちを覚えた。 一秒一秒ゆっくりと進む時計を見ながら妻に声をかけていた... 救急車が到着し、車内での救命処置にて、少し喋れるくらいには回復した。 「何があった?」 私のその問いに妻は涙を流し、震えながら 答えた。
Who are you?
私は多田正信、一般企業で働いているしがないサラリーマンだ。 幸いなことに妻も居て、愛する娘が1人いる。 娘はまだ幼稚園に通う幼い子だ。 何も無い暮らしだが、「ただいま」を言ったら おかえり と返ってくる、これ以上の幸せもない。 そんなはずだった。 1年前までは。
逃避行
はぁ... 今年も終わりに向かい準備を進めている。 「仕事もクビになったし、退職金でパァっと遊ぶか!」 少し涙を堪え、家路につく。 今日位は酔いつぶれようと、夜もふけってきた道を歩く。あまり飲めないアルコールを買いに足を運ぶ。 こんな時間に女子高生が歩いているものなのか、少し目があってしまった気がした。 まだこちらを見ている。 「私が見えるんですか!」 何を言ってるんだ、肌も白く喋る声にもハリがある。なんてったって可愛い。 「見えますよ。」 急だったのもあり、少し味気ない返事をしてしまった。 彼女は泣きそうな顔でとてつもない安堵の顔をしていた。
現実の味
⚠︎︎煙草やお酒の助長はしていません。 私は夜空が綺麗な日に時折散歩をしている。 住んでいる場所は田舎で、散歩している人など1人も居ない。 さざめく虫の鳴き声。梟のさえずる音、全部を独り占めできる。 散歩の終着点にはぽつんと、ちょうど人1人座れるスペースがある。 私の特等席だ。 そこで1度肺に染み渡るまで綺麗な空気を堪能する。日常で感じている、灰のように散り積もるストレスを解消する。 例えるなら、秋積もる落ち葉をどこらからか吹いた木枯らしのように。 風は冷たく少し歩き疲れた火照った身体をすっと。浄化してくれる。 人に汚されて居ない純粋な空気を堪能している。味なんてなんにもしない。 ただ少し、風の冷たさとは裏腹に温かさを感じる。 空気を堪能しているといつも、 散歩のお供の五百缶のハイボールとタバコが呼んでいる。 飲みかけの五百缶をこくこくと呑みながら煙草に火を付ける。 この空気を汚してしまうのが勿体ないと躊躇いながら。 自分なりのルーティンなのだ。 一口目は口の中で煙を転がし、先程まで肺まで入っていた純粋な空気を抹消する。 少し現実を振り返る。 今日言った発言に棘はないか。 明日は何をするか、 いつから仕事なのか、 先程まで夜空にふけっていた自分を一気に現実に戻す。この瞬間が一番嫌になる。このまま逃げてしまいたくなる。 そこで飲みかけのハイボールを流す。 多分この組み合わせに依存しているんだろう。 吸い終わりの煙草は目の前で輝き、空に光る星よりも自己主張してくる。それを見たくなくて少し早めに火を消してしまう。 もう空の味なんかしない。現実の味。 ただその光は日頃溜まっていた愚痴を全て聞いてくれる。行き場のない感情や感動したことも。だから辞められないのだと思う。 私はいつも星を見て感動してしまうからだ。 煙草の二本目にはいつも一本目より少し不味いものを吸う。もうこの光に帰って来ないようにだ。 吸い終わりにまた空気を肺いっぱいに吸う。 分かってはいる。 吸い終わった煙草の味しかない。分かってはいる。 その後一つしかない街灯に背中を押されながら家路につく。そして振り返る。誰も居ないのに。 空の味は暖かく透き通っていて、毎日吸っている空気より幾分か美味しい。 だか、いつまでもその空気を味わうのは野暮だと思ってします。 だから日課にはしないようにした。 現実の味に帰れなくなってしまうから。 追記。 長々と読んで頂きありがとうございます。 自分なりに言葉に出来ない。あの田舎の空気や、寒い夜空で吸う煙草の美味しさや、虚しさを共感出来たらと思い、書かせて頂きました。 もしよろしければまたなにか書きますので片手間に読んで頂けると幸いです。