ノヴェル!
24 件の小説ノヴェル!
ファンタジーを主に書いていきます。何なら読むものもきっとファンタジーばっかりです。 初心者ですので、コメントで指摘等をしていただきたいです。 【連載中】 姐さんと可愛い(?) 魔力値上げなきゃ俺がタヒぬ!? 【完結済】 風と月は古より
【お知らせ】アカウントを変えます
タイトルの通りでして……。 最近執筆中にアプリが落ちてしまうことが多くなってしまい、書いたものが消えてショボンな状態が続いてしまうんです。 そんなわけでweb版に変え、連載も新しく始めます。 つまりは中途半端に終わってしまう作品があるというわけですな……。読んでくれていた方々、大変申し訳ないです。 新しいアカウント名は『ノヴェルⅡ』にでもする予定です。割とノヴェルって名前気に入ってます笑 新しいアカウントでの投稿がいつになるかはわかりませんが、この投稿後に移動しようと思います。 今までありがとうございました。そしてこれからもよろしくお願いします!
#4『走馬灯』
「マスター、これからどうしますか?」 「うーん、わからない」 「もっと脳を動かしてから発言してください」 「冷たくね?」 ひとまずの目標、現状把握は終わった。 つまり俺は異世界に来てしまったようだ。いわゆる望む人は望む『異世界転移』だ。 となると、次に行うべきは安全確保か? 「あ、安全の確保をしたいです……」 「はい。では国か街でも探しましょう」 アルマスが冷たい。流石氷の刃。いや俺が嫌いなのかもしれない。 そんなアルマスと共に草原を歩く。 一時間、二時間。そして三時間。 お互い無言で進み続ける。 戦闘時でさえアルマスが敵を瞬殺してしまうので、危なげもなく、会話もなく。 気まずいです。て言うかせっかくアルマスが目の前にいるのになぜ俺は話しかけないんだ。 「あ、あの……アルマスさん?」 「なんですか?」 「えっとぉ……なんで戦ってくれるのかな〜って」 しまった! なんでこんな重そうな話題振った!? 「恩があるからですね」 「へ? 恩?」 「マスター、私が『ガチャ』から出るまで私はどんな状態だったと思いますか?」 「え……っと。わからないっす」 「走馬灯を見ているような状態が続いていたのです」 「走馬灯?」 曰く、召喚されるまではずっと昔の記憶を観ていたようだ。 武器として戦場に輝いていた頃を。業物の剣として讃えられた日を。守りきれなかった人への罪悪感を。 「『武器』として戦場で踊り、その度に喜びや悲しみを味わって来た、そんな過去をずっと観ていました。永遠に変わることのない数百年の記憶を。今こうして、『武姫』としてまた、記憶を増やし続けられることがとても嬉しいのです」 「そっ……か。じゃあこれからは、いっぱい思い出作ろうな!」 俺が笑顔を作ると、アルマスが薄く笑みを作ってくれた。 メガネの奥に見える綺麗な蒼い瞳に見つめられて、少しドキッとしてしまった。 「ええ、マスターの命が続く限り、私もあなたの『武姫』ですから。お互いのためにも、私は全力を出しますよ」 前に向き直るアルマスは進める歩の行先へと目を向けた。 「マスター。おそらく人の集落を見つけました」 「? どれ……あっ本当だ!」 ガチャで出てきた『望遠鏡』を使って見てみると、確かに人工の何かがあった。 望遠鏡がなくては俺は視認出来なかった。 ほんとアルマス様頼りになる……! 「よし、あれを目指そう!」 「了解しました」 目的を持って歩き出す。 「そう言えばマスター、あの場所が国だった場合、どうされますか?」 「……入れるか不安だけど……もし入れたらまずは資金調達が出来そうなことを探さないとな」 「魔獣もいる世界です。きっと魔獣退治は簡単につける仕事だと思います」 アルマスとちょっと喋れてる……! オタクにしてみれば夢の世界だ。話の内容はともかく、感動している。 頬も真っ赤に、上機嫌に歩いていると、また魔獣が現れた。 「コボルト? ちょうどいいですね。マスター、コイツを倒してあの人工物まで持っていきましょう」 「え? お、おう」 何か考えがあるようだ。
【Red Days】成人の日
「第二回、れっどでぇ〜いず!」 『はいはいレッドデーイズ。前回から一週間経ったけど、今日はなんで祝日なの?』 「ぬふふ……なんででしょ〜?」 『冬休みの延長?』 もう冬休みも終わりですね……。今年も頑張ります! 「今日は成人の日!さて問題、成人って何歳?」 『今日は問題ばかりね。知ってるわ、十八でしょ?』 「流石にナナリでも知ってるかー。若者の自己決定権を尊重するために十八歳まで引き下げたんだけど……間違えやすいことが一つ!」 液晶の前のお友達! 特に未成年のお友達! このお話を見ている方は絶対に覚えて帰ってくださいね! 「お酒とタバコは二十歳からなんです!」 『あらそうなのね。てっきり成人を迎えた人は飲んでもいいものだと思ってたわ』 「あっぶな〜い! ナナリは成人式終わったらすぐ飲んじゃいそうだね……」 『さっきから私の知識の無さを弄ってくるけどやめてくれるかしら?』 自己決定権が尊重されてはいますが、お酒やタバコは体が未発達な二十歳未満では危険です。 二十歳未満での飲酒は法律により、違反した場合は五十万円以下の罰金が課せられます。 絶対に、興味があっても二十歳になってからです。 「知識を得たみんなは、ナナリみたいに未成年でお酒は飲まないでね!」 『飲んでないわよ!! いい加減にしないとこの作品に〔性的、または暴力的な描写を含む〕にチェックを付けざるを得なくなるわ?』 「え……ナナリこれから性的な……」 『そっちじゃなくて暴力的な描写!!』 ここから二人は荒れそうなので、この辺で終わろうと思います。新しく成人になる方に祝福を!
【Red Days】元日
「れぇ〜っど……でぇーーいず!」 『ユウナ、新年早々に叫ばないでもらえる?』 「だってぇ〜、私たち主役の連載だよ? テンション上げていこーよー!」 状況の飲み込めないであろう皆様、チャンネルはそのままで。この度、新連載【Red Days】を始めさせていただきます。 この連載では元気な性格で、祝日に詳しい「ユウナ」と、ちょっと冷たい性格の、祝日知識皆無の『ナナリ』による《祝日解説》の物語です。 「さぁてナナリ。今日、『一月一日』は何の日でしょーか!」 『流石に知ってるわ。元旦でしょう?』 「ブッブ〜! 今日は元日で〜す!」 『なんかすごくイラつくわね。顔かして』 「ひぃ!? 危険が危ない!」 新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします(?) 「元日は一月一日のことを指すんんだけど、元旦は……ここでクイ〜ズ!」 『スッと教えなさいよ。面倒臭い』 「だってぇ……まだ四百字なんだもん」 『そう言うこと言っちゃ駄目でしょ!?』 二人には頑張ってもらいまして。 「クイズ! [元旦はどの期間のことを指すでしょう]」 『一月中ずっと?』 「ブッbu……ゴメンゴメンって!?」 ナナリが手をあげそうになったのは秘密です。 「ヒントは漢字をよく見てみてね!」 『“元旦“と”元日“は元の字は共通よね。じゃあ旦と日の違いね?』 「そう! さぁ、何でしょ〜!」 皆さんも考えてみてください! どちらも似た文字ですが、違う部分を見ればなんと無くわかるかと思います。 分かりましたか? 次のページで答え合わせです! 「せーかいは……〔元旦とは、元日の朝の時間帯〕でした〜!」 『漢字と関係があるってどう言うこと?』 「元旦の旦の字には、”日“の下に一本線があるよね? これが地平線だと思って! すると日の出ってことになるの! つまり、元旦は朝の時間帯ってこと!」 『旦って日の出をかたどってるのね。初めて知ったわ』 間違いやすいこの二つですが、一月一日の祝日を表すのは『元日』です。 今年は旧年より良い一年となるといいいですね! 最後は二人に締めてもらいましょう。 「『明けましておめでとうございます。今年からよろしくお願いします』!」
7【休暇】配信忘れたわけじゃあないんです……
「姐さぁぁあん!! お留守番ありがどぉーー!」 「はいはい、どういたしまして。それとあったぞ鍵」 祈が帰ってきた。ただいまもおかえりも省略する。 「ありがとう、どこにあったの?」 「ニャイルの寝床」 「もぉ〜! また取っちゃったの? 可愛い奴め〜♡」 「゛にゃぁぁぁああ?!」 頭を撫でてきた祈に対して、ニャイルが爪を立てた。まるで威嚇しているようだ。 「何度か取られてるのか?」 「うん! 休み明けの月曜日とかよく取ってっちゃうんだよね〜」 きっと、祈がいないと寂しいんだろう。 「……あのぉ姐さん? ちょっと言いづらいことがあってぇ……」 「サントルカップのこと?」 「本っっっ当にごめん! 『例のブツ』無かったの!」 祈がそう言うと、パチンと手を合わせ頭を下げた。 「別にいいよ、お留守番くらい。祈りのお願いなら対価なんて本当は無くてもいいんだから。でも『例のブツ』って言い方はやめて」 「えへへ、似合うかなと思って……。でも対価は必要だよ! だから、夕飯くらいは食べて行ってよ!」 確かに今日はもう外が暗い。お腹も減っているし、お言葉に甘えよう。 祈が料理をしている中、きなりとニャイルが見ないうちに仲良くなっているのを動画に撮った。 そうして四十分後。祈が作ってくれたカレーを皿に盛り、囲んで食べる。 「いやぁ、今日はありがとうね、姐さん」 「気にしなくていい。祈の頼みだしな」 「いやぁ、本当に申し訳ないよぉ〜。姐さんだけじゃなくて『リスナーのみんな』にもねぇ〜。姐さん独り占めにしちゃったぁ〜」 リスナー……リスナー!? そう言えば動画編集も終わってないし、今日だって配信予定だったはず。すっかり忘れていた。 ……でも……今日はいいか……? ここ最近、ほぼ休まずに配信していたし、ちょっとした休暇と思って休むことにしよう。 スマホを取り出してSNSに『配信を中止』と言う内容で書き込んだ。 「あー……。姐さん、変に時間かけさせちゃった? ごめんねぇ……」 スマホに響いた通知、おそらく私の書き込みについてだろうが、それを見て祈は申し訳なさそうに謝った。 「いいや、今日は久しぶりに休暇ってことで休む。最近動画のネタも枯れてきているし」 「姐さんゲーム上手いんだからなんでもいけるって!」 「じゃあ何か良い案ある?」 「私ゲーム詳しくないよ? ……うーん、『ど◯ぶつの森』とかどう?」 「リスナーがそれをやってる私を見てどう思うかね……」 多分求められてるものと違う気がする。……ネタ回としては良いかもしれない。 久しぶりに誰かと食事をした。 カレーなんて十五分あれば食べられるのに、なんだか一時間ほどかかってしまった。 その後、祈の冷蔵庫からハムとレタスを一枚づつ拝借し(返す予定はない)、きなりに食べさせてあげる。 「相変わらずヒラヒラしたものしか食べない?」 「そうだな。雑食だったりもする」 「へぇ〜、不思議な生き物だ……!」 「不思議だなんて最初からのことだろう?」 今日はゆっくり、祈と過ごすことにした。
#3『アルマス』
すごいデジャヴを感じる。 瞼の奥から日差しが激しく主張する。 重力はヘソから背中に向かってかかっている。つまりは今寝っ転がっている。 「……はっ!?」 「おはようございます、マスター」 落ち着いた声で隣で剣を構えている綺麗な女性がいた。 青く長い髪に、青い瞳。そして青い衣装。青以外の色があるとするならメガネの縁の黒色くらい。 アルマスだ。 「ああああアルマスさん!?」 「マスター、だだ今戦闘中なので自己紹介等はまた後ほど……はぁ!」 見ると黒いライオンらしきモンスターと交戦中だった。 数は三。動物園で見たライオンより、一回りも二回りも大きい気がする。 そんなライオンに対して蒼い片手剣を振う。 斬りつけた場所に透明な結晶、氷が残る。 血は噴き出ないし、動きも封じている。 切りつけたライオンを無視して他二体を相手する。 一度斬りつければ、後は一方的だった。 「戦闘終了です。……初めまして、マスター。『アルマス』です」 「え、あっ。は、初めまして……? えっと助けてくれてありがとう」 「いえ、私こそ感謝したいです。召喚していただいたことを」 いや勝手に召喚して勝手にピンチにしちゃっただけでは? 全面的に俺が悪いだろう。 アルマスは眼鏡を掛け直し、尻餅をついていた俺に手を伸ばした。 「これからどうしますか?」 「ありがとう、そうだなぁ……現状を把握した冷た!?」 アルマスの手は冷たかった。氷みたいな冷たさだった。 「すみません、『氷の刃』ですので。私の体温はちょっと低いのです」 「これ……ちょっとなんてもんじゃねぇだろ」 凍死を疑われる冷たさ。でもこれがアルマス……! 感動した。 立ち上がり、辺りを見渡すとさまざまな魔獣が倒れていた。 「えっと……この状況をまず教えて欲しいんだけど……」 「はい、狼魔獣やら蜘蛛魔獣やらが、魔力を失って倒れているマスターを狙って彷徨いていたので分からせました」 「アルマス様、敬語を使わせていただきます」 「やめてください。マスターはマスターらしくあってください」 つまり、気絶中の俺を守ってくれていたわけだな。 「なんで俺気絶したんだ?」 「私の『コスト』のせいですね。私は魔力二十で召喚できます。そして、私のスキル『ローランの歌』で召喚コストを半減できたのです」 ローランの歌。このスキルは召喚コストの半減を指定した一番コストのかかるユニットにかけることができるのだ。ただでさえ『氷の刃』と言うスキルがあるのに、味方にも影響を与えることができるとは……。そう言えばゲームでも結構壊れキャラだったか。 「あれ? でも俺の魔力値って九じゃなかったか?」 「えぇ、私のコストを半分にすると十です。ですから、オーバーした分は『気絶』と言う形で肩代わりされたのでしょう」 おぉん……俺貧弱。下手に大きなコストに肩代わりが起これば最悪……死ぬ!? 待てよ? 「そうだ! それよりここはどこなんだ? 日本か? そもそも地球か!?」 「魔獣がいたのに地球だと思っているんですか? ば……いえ、なんでもありません」 「今『バカなんですか?』的なこと言おうとした?」 返答なし。悲しい! 泣いちゃう! いや一々感傷している場合じゃない。 「つまり異世界? そしてすんごいデンジャー。あれ? 俺生きていけるか!?」 「一人で会話しないでください。大丈夫です。私がマスターの剣となり剣となるので、任せてください」
#2『十一連ガチャ』
俺はガチャを回した。未知の世界で与えられたほんの少しの手がかりを見つけるため。そして、この世界を生きるために! ……なんて熱い思いがあるわけではない。ただの現実逃避だ。 「ネガティブになるとガチャ回して気分転換しようとする癖、なんとかしないとなぁ〜」 うん、いつか治そう。きっとそうしよう。 そんなことより、癖または欲望に忠実な自分はガチャを回した。 ガチャムービーは『ムーンログ』のままだ。 月が真っ黒な新月から満ちてゆく。上弦へと変わり、ゆっくりと減速する。 「行け行けがんばれ! いつもここで止まってるけど今回は信じているからな!」 静かながら派手な演出と共に月は満月へと満ちた。 〔N:食べ物(二)・望遠鏡・小ヒーリポーション(一)・小 マナポーション(三) R:疾風の槍 SR:イエロールーン(一) SSR:アルマス〕 「……え? えぇぇええ!?」 SSRキャラ『アルマス』は、このゲームの攻略サイトでもおすすめされるほどに素晴らしい性能のキャラた。 「まじか!? 十一連で出ちゃったよ! ぉ……っと。俺ってば知らぬ大地でなにガチャ一つで盛り上がってんだ……危機感はねぇのか危機感は……」 跳ね上がる嬉しさと、深く暗い不安が闘う。 この闘いは僅差で不安が制した。 「どーすんだよ……ガチャに逃げてどーすんだよ……」 スマホの画面をいじってみるが、驚いたことにホーム画面まで戻らないのだ。そう、『ムーンログ』いや、『月の道標』で固定されてしまっている。 脳を殺して適当にアイテムを漁ってみた。 「見覚えのあるアイテムばっかり……。なにしろってんだよ……ん?」 適当なアイテム(イエロールーン)を長押しすると、さまざまな表示が出て来た。 『使用・説明・取り出す・削除』 使用と削除はなんとなくわかるだろう。説明はアイテムの説明だろう。ちなみにイエロールーンはキャラの強化素材だ。 問題は取り出す。 「えい! ……お」 スマホの前に黄色い結晶が浮かび上がる。 イエロールーンが具現化した。 「お……おぉ! イエロールーン! 黄色い神秘! 待て待て待て、じゃあこれもか!?」 Rアイテム『疾風の槍』を長押しする。 『装備・説明・取り出す・削除』 装備と取り出すって何が違うんだ。 「うーん? とりあえず武器だし装備を……!?」 背中が引っ張られたと思いきや槍が背にあった。 なるほど理解。取り出すはスマホの前に、装備はあるべき場所にってことだろう。 「……いけるのか?」 キャラのページに移り、アルマスをタップする。 『召喚・育成・詳細・解散』 解散とか恐ろしい項目置くなよ!? と、とにかく……召喚……! 「いやぁ! 怖い! アルマスさん召喚すんの!? 本当に!?」 何を怖がっているのか。それは自分が初対面に弱いということだ。 しかし、ゲームキャラと直接会えるとなるとゲーオタとしては好奇心が勝つ。 深呼吸をして召喚をタップした。 また俺の意識はそこで途絶えた。
#1『月の道標』
水縁蓮《ミズベリ レン》。十八歳。そろそろ受験を迎える高校三年生。 「あぁ〜! 高一からずっっっっっと英語がわからん! 本当に受験生かよ俺は!」 時刻は午後十一時。スマホの明るいデジタル時計が目に苦しい。 「……ログボだけ一応貰っとくか」 スマホのロックを解除してとあるゲームアプリを開く。 『ムーンログ』 綺麗なグラフィックと綺麗なストーリーが魅力のソーシャルゲームだ。 ログインボーナスはガチャ宝石とちょっとした素材系アイテム。 「……相変わらずしけてんな……あ、十一連貯まったな」 ガチャ宝石が十連分(三千個)貯まると、一回お得の十一連ガチャができるようになるのだ。 「……よし、これを回して気分転換をしよう! こい! SSR!」 レア度R、SR、SSR。狙いは一番レアなSSRだ。 「……おーまいごっとぉ……」 出て来たのはSRまで。しかも大体はレア度の設定もついていない、このゲーム界隈ではレア度Nと呼ばれる物だけだった。 それにSRですらキャラでもなくアイテム『ブラックルーン』だけ。 「……Nだけかぁ……なんか悲しくなっちまっ」 俺の意識はそこで途絶えた。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 瞼の奥から日差しが激しく主張する。 重力はヘソから背中に向かってかかっている。つまりは今寝っ転がっている? そして背中からは草の柔らかな感触……? 「いやいやおかしいだろ!?」 思わず声を上げて起き上がる。 遠く、周囲を見渡して、その景色の印象は『自然ってきれ〜』だった。 なんと、太陽さんさんの綺麗な草原だった。 「お、おかしい……さっきまで『英語なんてわかんないぜ!』って言いながらゲームに逃げようとしてたはずなのに……」 近く、周囲を見渡すと、画面がつきっぱなしのスマホがあった。 『月の道標』 タイトル画面はムーンログと同じだったが、タイトルが違う。 「も、もしかして……ガチャ運の無さにがっかりした挙句、ショックで寝ちゃったか? な、なぁんだ! これは夢か! いやぁまいったな……?」 頬っぺたをつねってみると普通に痛い。そもそも夢なら気づくこともないだろう。俺は夢を夢と確信できた試しがないから。 状況もわからないので、道標になってくれるよう願って画面を触る。 映ったものは基本ムーンログと同じ。ただ、今まで集めたキャラもアイテムも全て無い。 あるのは三千個のガチャ宝石と自分のアバターだけ。しかもそのアバターはnameのところに『水縁蓮』と書かれている。 「な、なんで本名で登録されてんだ? ……ステータスも見れるのか」 体力 :百 魔力 :九 力(省略)……。 体力の百と言う数字は初期ステータスだ。ただ……。 「ま、魔力八て……魔法使うどころか『武姫《ブキ》』すら呼べないんじゃ……」 こんな状況ですらゲーム脳が出てしまうあたり末期かもしれない。 しかし、それ以外の手がかりというものもないのだから。 「……故に、俺はガチャを引く!」 早速ガチャ画面に移った。
【新連載(作品紹介)】魔力値上げなきゃ俺がタヒぬ!?
「あと三十回ですよ。頑張ってください」 「ちょ……も……無理ぃ……」 そうは言いつつも正面にかざしたてから魔法を組む。 「情けないですよ。まだ魔力なんてたったの二十しかないんですよ? 普通の人の五分の一ですからね」 「た、他人との比較……反対……!」 弱々しい声だとは自分でもわかっているが、会話を続けなくてはどうも意識が持たなそうだった。 本当に小さな魔法、火の玉一つ出す魔法を組み上げる。 「……ふぁいあ……」 「……気合い入れてください。私のご飯のためにも」 「君……前から思ってたけど、自己中に超をつけるくらいには自分大好きだね!?」 「えぇ、マスターの次に自分が大好きなんで」 「やだキュンとしちゃう」 「(きもっ……)今の発言で、圧倒的な差で自分第一になりました」 「今『きもっ』って言わなかった?」 まだ二番にいることを願って魔法を再度組み上げる。 「……ふれあ〜」 「もっと絞り出してください」 「……俺ってば褒められて伸びるタイプなんだよね」 「残念ですね。私は厳しく育てるタイプです」 「おぉん……」 容赦がねぇ……。 「もぉ〜、センパイ! ちゃんと褒めてあげましょうよ! マスター、ちっちゃい魔法しか撃てないの可愛い♡」 「やめいぃ! 褒めるなら褒めてくれ……その言葉あんま褒められてる気がしない!」 「あ、あれぇ?」 み、味方はいないのか……。 とは言え、俺はこの状況に満足感を覚えている。別にMの類の人間ではないが、こうして誰かとのびのびと過ごす日々が、とても楽しいのだ。そこに多少の苦労があってもお釣りが来る。 「ファイア!」 「……なんで火属性魔法しか使わないんです?」 「……他の魔法って、火属性みたいな形の定まったものじゃないじゃん?」 「見栄えを気にしているんですか?」 「いちいち見栄えにこだわっちゃう面倒臭いマスター可愛い♡」 もうやめてくれぇ……。 〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜 この連載に含まれる要素です!(予定) 男主人公、成長、若干の成り上がり、異世界ファンタジー、異世界転移、ガチャ、ハーレム、ギャグ、のんびり投稿 それと、サムネの子が出てくるのは三話目辺りです。気長にお待ちを……。
6【癒し】最強アイテム『猫じゃらし』使ってみた結果
——ピンポーン。 「祈、来たぞ……」 『マイヒーロー姐さぁぁああん!』 インターホンのマイクから声がしてすぐ、勢いよく扉が開いた。 「今度絶対あのアイス買ってくるから! 本っ当によろしくお願いします!」 「わかったから、早く行って来な? 既に遅刻してるんだから」 深く頭を下げて来た祈を急かす。 「うん! 行って来ます!」 「……逝ってらっしゃい」 こっ酷く叱られることは予想できる。帰って来たら祈のことを慰めてやろう。 祈の家の中に入り、鍵を閉める。 綺麗な家だ。 しっかり掃除もされていてただの床すら輝いて見える。 「……久しぶりに来たけど相変わらず綺麗ね……っと」 私はやや大きなバッグから『きなり』を出し、地面に置いてやる。 「にゃぁ?」 「『ニャイル』、久しぶりね」 何事かと出て来た黒猫はニャイルと言う。祈の猫で、基本人懐っこい。ただ、祈に対しては爪をたて、触らせてくれないそうだ。 ただ、帰りが遅くなった時などは甘えてくるそうで、いわゆる『ツンデレ』だそうだ。 そんなニャイルはきなりのことを見ている。 「きなりよ。大丈夫、良い子だから。……たぶん」 私はまだ、きなりのことはよくわかっていない。故に断言はできない。 注意深くきなりを見回すニャイル。 「……にゃぁ?」 「……?」 きなりもきなりで、ニャイルが気になるようでちょっとずつ近づき、頭で小突いている。 「ほら、玄関で遊んでないでリビングにおいで」 二人……じゃなくて二匹を呼んで手招きをする。 きなりは素直にこちらに来るが、ニャイルは不思議がって、きなりから離れてついてくる。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 三十分が経過した。 ニャイルはキャットタワーのてっぺんからきなりを見ている。 一方きなりは毛糸玉を見つめている。 ……静かだ。この二匹がこうも離れた位置でじっとしていると、なんだか私も下手に動いてはいけない気分になる。 ちなみに私は、二匹が見える位置で、邪魔にならないようにと、部屋の隅に椅子を置いてじっとしている。 ——チッ、チッ、チッ……。 部屋の中には秒針の刻む規則正しい音。 あまり人様の部屋を漁るのはよくないとはわかっているが、ここから見える範囲で見渡す。 この一部屋にはキャットタワー、観葉植物、テーブル、ソファー。テーブル下にカーペットがあり、私の座る部屋隅の対角線側にはダンボールが置いてある。 ダンボールは開いており、中には猫じゃらし等のおもちゃが入っていた。 「……試してみるか」 ダンボールから猫じゃらしを取り出し、ニャイルときなりの中間あたりで振ってみる。 ニャイルは飛びつくように遊び始めたが、きなりはじっと見つめるだけだった。 ……きなりは何なら遊ぶのだろうか。