Nico

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Nico

はじめまして、よろしくお願いします。

宝物を探して

神様神様 どうして僕らは生まれるの? 宝物を見つけるためだよ 神様神様 宝物って素敵なの? かけがえのないものだよ 神様神様 宝物はたくさんあるの? 宝物はひとつだけ その人にとってたったひとつ 自分だけの宝物 だから見つけたら 何よりも大切だと思うんだよ 神様神様… 僕にも見つかるかな宝物 楽しみだな どきどきするな なんだか泣けてきちゃうな あれ?なんだろう 僕を呼ぶ声がする * そうして僕の宝探しがはじまったんだ 名前ももらって 服ももらって おとーさんやおかーさんに たくさんのことを教えてもらって 大きくなって旅に出た 宝物を探す大冒険 たくさんたくさん探したよ 綺麗なものがたくさんあったから 間違えないように 間違えないように 僕だけの宝物 たくさんたくさん探した なかなか見つからないな これも綺麗だけど 僕の宝物ならもっと綺麗なはず これも魅力的だけど 僕のならもっともっといいものなはず あれも違う これも違う もっと探すんだ もっと頑張るんだ もっともっともっと… なんだよ 全然見つからないじゃないか どこにもないじゃないか 嘘つき * そうして立ち止まった僕が ふと顔を上げると あの人が宝物を持って歩いてた とっても幸せそうだった あの人も宝物を持っていた とっても幸せそうだった あの人も持ってた あの人もあの人もあの人も… どうして僕だけ持ってないんだ どうして僕だけ見つからないんだ どうしてこんなに頑張ってるのに どうしてあんなに努力したのに それにしてもあの宝物は綺麗だな こっちの宝物も綺麗だな …僕あれがほしいや * あの人が持っていた綺麗な宝物 横取りして走って家に帰った 机に並べて眺めていたら 綺麗で綺麗で 嬉しかった これでいいんだ 多分きっと今僕は 心がみたされているはずだ だけどあんなに綺麗だった宝物 数日経ったら ただの石ころになった だから僕はそれを捨てて 新しい宝物を拾ってきた だけどそれもまた 数日すると石ころになった なんでだろう あの時はあんなにも 美しく見えたのに 宝物ってこの程度? たくさんたくさん横取りしたから 気がついたらもう 僕の近くに来る人は 誰もいなくなってた * ある日また僕が顔を上げると あの人達を見た するとどうだろう 僕が横取りして ただの石ころだったそれを 大切そうにまた持っていた ただの石ころだったそれが また前みたいに綺麗に光ってた なんで? どうして? 僕じゃダメなの? 僕だって 宝物が欲しかっただけなのに みんなと同じように 宝物を見つけたかっただけなのに なんで僕には見つからないの? なんで僕には何もないの? あんなに頑張ったのに あんなに努力したのに どうしてお前達ばっかりが そうして気がついた あぁ… 僕は石ころだったんだ 汚い汚い石ころだったんだ だからなんにも見つからない だから… 誰にも見つけてもらえない もう疲れた もうどうでもいい もう 何もいらない * 僕はコロコロ転がった ただただコロコロ転がった だって僕はただの石ころ 転がることしか出来ないから * コロコロ転がっていたら ある日水たまりに落ちた 汚い汚い水たまり お似合いだと思った もがくことも 這い上がることもせず ただ沈んでいこうと思った これで明日を待たずにすむのだから …あれ?なんだろう 僕を呼ぶ声がする 助けて!助けて!誰か助けて! ふとそちらに目をやると 石ころが溺れてた 小さくて 汚くて つつけばすぐ壊れてしまいそうな 石ころが溺れてた 気にする必要はない 僕は関係ない 僕は知らない 僕には何も出来ない! 気付いたら僕は その石ころを引っ張り上げていた どうして? * その石ころを見ていたら なんとも言えない惨めな気持ち なんだかムズムズしたから 汚い汚れを落としてあげた ついでに綺麗に磨いてあげた 手を取って 元の道に戻れるように 君はお行きよ 僕はここから動けないけど 君はまだ転がっていける さようなら 元気で 石ころは僕を見た 僕を見て動かなかった 僕が動かないから 石ころも動かなかった ここは寒くて汚くて冷たいのに こんなところにいちゃダメだ でも石ころは動かなかった 僕が動かないから動かなかった だから仕方なく僕はまた コロコロ転がることにした 石ころはコロコロついてきた 僕の後ろをついてきた 面倒なものを拾ってしまったと その時は思った * 僕は何もしたくなかったのに その石ころがついてくるから なんだか何かをしなくちゃいけない 気がして 面倒だけど色々やった 食べ物を食べたし 掃除もしたし 身体も動かしたし 勉強もはじめた そうしたらなんだか 少し前の腐ってた気持ちが 少しずつ消えていく気がして はじめは面倒だったのに 明日は何をしようか? 明日はどこに行こうか? 明日は 明日は 明日…? 君の好きなことはなんだろうか… * なんだ 世界って 結構きれいだったんだ * そしてある日突然君はいなくなった わかっていたさ だって君はとても綺麗だったし きっと本当は強いから 僕がいなくても進めるんだって わかっていたさ だって僕はとても汚いし そして本当に弱いから 君といても幸せに出来ないって わかっていたさ こんな日が来ること わかっていたさ あんな毎日がいつか終わること わかっていたさ わかっていたよ わかっていたのに 寂しい 寂しい 寂しい そうか 僕はこんなに君が大切だった かけがえのないものだった * 僕はもう宝物は探さない 僕は 今度は 君を探すよ * 僕はふたたび旅に出た 君を探す大冒険 たくさんたくさん探したよ 綺麗なものがたくさんあったけど 間違えないよ 間違えないさ 僕だけの君 たくさんたくさん探した そして君を見つけた時 君はにっこり笑ってくれたね やっと見つけてくれたのね 私にとってあなたは あの汚い汚い水たまりで 何より綺麗に光ってた 私にとってあなたは あなたと出会ったあの日から かけがえのない 私だけのあなた * 神様神様 生まれた意味を見つけたよ もうすぐもうひとつ 宝物に会えるんだ 僕と君でたくさんのこと教えてあげるよ それでね それが旅立つその時に 大丈夫だよって抱きしめてあげるんだ 頑張れって背中を押してあげるんだ 負けるなって頭を撫でてあげるんだ 神様神様 生まれた意味を見つけたよ 簡単じゃなかったけれど 何度も道に迷ったけれど けしてけして 綺麗なばかりじゃなかったけれど ちゃんと僕は 誰かにとっての宝物になれたよ だからもう なんだか何も怖くないんだ * そんな僕らを神様が にっこり笑って眺めていた そのことを僕と君が知ったのは まだまだずっと先のお話 * おしまい

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宝物を探して

待ち合わせ

何も覚えていないのでしょう。 私の笑った顔も、怒った顔も、悲しむ顔も。 いつだって貴方は死んだような目をしているんだもの。 前に進み続ける私を、ただ妬ましそうに睨みつけて。 貴方はまた、自分の世界に閉じこもるのよ。 どうせ自分には何もないと、居場所も愛も何もかも。 笑わせないでよ。 私が今立っているこの場所は、私が築いた私の城。 地面を這いずって、蹴落とされ、もう涙で前も見えなくて。 それでも、足だけを前に出したわ。 右、左、右、また左。 ここに来るまでの景色? そんなものいちいち覚えちゃいないわよ。 ただ、呼吸をするのが精一杯。 強さ?屈強な精神?努力? そんな綺麗な言葉、なんの役にも立ちゃしない。 ここに来るために必要だったのは、 この両足、両手、ただそれだけ。 貴方にも、同じものが付いているように見えるけど、それは飾りなのかしら? 私を睨みつけるチカラが、その双眼にはあるじゃないの。 早く、ここまで来てみせなさいよ。 待っててなんか、あげないのだけれど。

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待ち合わせ

お花見

「桜を見に行かないか?」 いつも万年寝て曜日の彼が発した突然の言葉に驚きながら、のそのそとベッドから這い出せば、 彼はこれまた珍しく、パタパタと私の支度を手伝ってくれる。 何が起きたと言うのだろう。 彼は別に、自然を愛でる様なタイプではないはずだ。 去年の春も、夏も、秋も、冬も。 出かけるのが好きな私の後を、いつも気怠そうについてくるだけ。 そんな彼が、桜だなんて。 そういえば毎年近くの公園で桜祭りが開催されていることを、忘れていた。 屋台に、気に入った食べ物でもあるのだろうか? そんな事を考えながら、一歩、外に出れば。 ああ、そういえば、こうしてめかし込んで出掛けるのは久しぶりなのかもしれない。 会場は、満開の桜に彩られた川沿いにあった。 そうだ、確か去年はこのあたりで…。 「ここにしよう」 君は、ここに座っていてくれ、何か買ってくるから。 そう言って彼は足早にその場を去る。 いつもなら、私が屋台であれこれ選ぶのをやはり後ろから眺めているだけの人なのに。 一人でぼんやりと頭上のピンク色を眺めていれば、一枚の花びらがひらひらと私の顔に落ちてくる。 そっと触れれば、優しく指先で踊ったそれを、可愛らしいと素直に感じた。 ああ、美しい。 そういえば、最後にそう感じたのはいつだっただろうか。 「待たせたか?」 戻ってきた彼は、いつも私が好んで選ぶものばかりが両手一杯に抱えられていた。 驚いて固まる私をチラリと見ながら私の横に腰掛ける。 「その、君は、これが好きだったろう?」 そんな風に覚えているとは思わなかった。 だって、彼はいつも私の後ろをついて歩いてくるだけだったから。 楽しそうにする私の後ろを、ただ、いつも、いつだって。 私はその時、振り返ったことがあっただろうか。 彼は、その時、どんな顔をしていたのだろうか。 震える手で、それを一つとる。 くちに含めば、甘い香りが鼻腔を擽る。 思わず笑顔になり、不意に彼の方を振り向けば、 彼は桜の咲いたような笑顔で私を見ていた。 貴方はいつも、そんな顔で私を見ていてくれたの? 「楽しいか?」 そっと頷くと、彼はそうか、と安心したように私から目を逸らせた。 私はそこで気が付いた。 彼は、私がこの所少し塞ぎ込んでいた事に気付いていたのだ。 彼はいつも、私の後ろを歩きながら、私の事を見てくれていたのだ。 彼を見ていなかったのは、わかっていなかったのは、私の方だったのかもしれない。 彼は私のやりたい事を、いつも黙って叶えてくれていたのだ。 この桜のような、静かな彼の愛情は、私の凍った心を溶かしていった。 「桜も美しいが、君の笑った顔が俺には一番美しいんだ。」 彼は目を逸らせたまま、小さく呟く。 真っ赤になった耳が、愛おしいと思った。

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