レイ
6 件の小説無能の王
大きく炎があがる小さな別荘の中で私はいまその命を散らそうとしていた ゴウゴウと炎の音が響きわたる 逃げなければ死ぬがもう私には逃げる気力はおろか声を出す気力すらも残っていない 死にたくないとは思う しかしこれが運命なのだと受け入れている自分もいる この国に無能な王などいらない 王太子に…一番に生まれただけで王になる無能だとよく噂されていた つい先日も私は大臣を辞めさせたばかりだ 大臣は有能だと評判だったので皆の不満を買ったのだろう 腹違いの弟も昔はよく一緒に遊んでいたのだが王妃に止められここ10年は顔も合わせていなかった つい先日顔を合わせたときには笑顔などなく昔の面影は消えていた おそらく王妃に王になれと教育を受けていたのだろう 王妃は私のことをよく無能だなんだと嘲笑っていた 昔から皆が私を嫌っていた 王である父も義母も使用人でさえも皆いろいろな目を向けてきた まだ小さい子供だった私は訳も分からず向けられるその目が恐怖以外の何物でもなかった この国の者は皆私に死んでもらったほうが都合がよいのだろうな この国を守るそれが母と交わした一番大切な使命だった 私は…この国を愛していた 今は亡き母上が愛したこの国を民をそのすべてを愛していた だが、母亡き今…私がこの国に執着する理由は果たしてあるのだろうか 牙を向ける国をこの人間たちを果たして守る必要はあるのだろうか いや…もういいか こいつらの都合なんざ関係ない 暴君だ?笑わせるな この国を、ハイベルンを守っていたのは私だ!お前らじゃない 無能はどっちだ このまま死んでたまるものか 私が愛した、まもろうとした国は死んだ もはやこの国に、人々に慈悲などいらぬ 私からこの国に祝福をやろう 呪いという名の祝福を… 滅びてしまえ王も国も人々も さぁ…始めよう この国に 「ハイベルンに栄光と祝福を」
愛してる
俺はいわゆるストーカーと言うものにつけられている 気づいたのは2ヶ月ほど前だった そいつは特になにかするわけでもなくただついてきているだけだ 時々愛してるとつぶやいていて少し気味が悪い 彼女がいることがばれてなにか危害が及ぶといけないと思い 彼女とは理由は言わずに1ヶ月前に別れていた 別れてすぐにストーカーが行動に出た 俺が道を聞かれていると、ずいぶん前に潰れたはずの店の2階から鉢植えを落としてきた 少しずれていたので道を聞いていた人に当たらずにすんだが、もしかすると死んでいたかもしれない 彼女に危害が及ぶ前に別れていて良かったと俺は心から安堵した そんなことがあってから1週間もたたないうちに俺はまたつけられている 大分イライラも溜まっていたので俺はストーカーに文句を言ってやることにした コツコツと聞こえる足音が近づいてきたとき俺は後ろを振り返った やっぱりそこにストーカーはいた 腕に大きな傷をつけて その状態のままストーカーは俺の方へと倒れてきた 俺の前には1ヶ月前に別れた彼女がいた 彼女は包丁を持った手を震わせながら叫んでいた 「…あんたのせいよ あんたが私と別れるなんて言うから!全部全部あんたのせいよ!」 と叫びながら走って逃げていった 俺は、俺に覆いかぶさるようにして倒れている女を見ながら考えた 今までの嫌がらせは、全部別れた彼女がやっていてこの子は俺を守ってくれていた…? そうだ!実害があったのは彼女と別れてからだった 彼女が俺に逆怨みしていたんだ そう思うと辻褄が合う いきなりストーカーが行動に出たのはおかしいと思ったんだ 俺は疑ってしまったことを謝りながら女に声をかけた 「疑ってごめんよ…今からでも君の気持ちを受け止めてあげられないかな」 そう俺が声をかけると女は嬉しそうに顔を上げて俺に愛してる愛してると言ってきた 「わかったわかったとりあえず病院に行こう、お前の愛をちゃんと受け取ってやるから…」 そう言うと女はもっと嬉しそうに俺に抱きつこうと両手を上げた 「愛してる…」 続いてのニュースです 今日昼ごろ住宅街で男女二人の遺体が発見されました 男は胸元を刃物で刺され死亡したとみられ女は自分に包丁を刺し死亡したとみられています 警察はこの事件を自殺と見て調査し……
言葉
綺麗な言葉が好きだ 愛の言葉が好きだ 言葉は私の心を踊らせる 愛、奇跡、運命、夢、誓い でもそんなことを言うと 「ロマンチストだね」 と言われてしまう でもそれでも良かった 好きだからそんなことを言われても特に何も思わなかった 言葉は私の生きる希望でもあったから でも他の言葉は違った 愛の呪い、束縛、嫉妬、異常な愛 そんな言葉を好きだと言うと 「大丈夫?」 「病んでるの」 そう言われてしまう なぜだろうか どれも私にとっては綺麗な言葉で 私にとっては愛の言葉 全部私の心を踊らせてくれる素敵な言葉 おかしいだろうか 病んでるのだろうか 私は異常だろうか そんなことを私は今日も考えている だけど実はどうでもいい 病んでいようが異常者だろうが 私は好きだ 愛の言葉が、綺麗な言葉が私は好きだ 偽りたくはない 私の好きな言葉を私の見栄なんかのために 捻じ曲げたくはない おかしかろうが後ろ指をさされようが 私はこの言葉たちが好きだ 私の心を踊らせるこの言葉を 私は今日も好きになる
天使様
「天使様ですか?」 そう女に言われて目が覚めた こいつは何を言っているんだ、どう見たって悪魔じゃないか 俺の姿はコウモリのような羽を背中に生やし頭には角が生えていた 俺は昔に片方の角を罰として折られたことはあったが天使になんてなったつもりはない 周りを見るとどうやらここは教会のようなところだ 「天使様ですね!お会いできる日を楽しみにしていました」 そう言ってきた女は修道女のような服を着てこちらを見上げていた なんだこいつは、頭がおかしいんじゃないかと思ったが女が俺を天使と間違える理由がわかった 女は目が見えていないので俺の姿を見ることができない どうしてやろうかと考えたが、俺はずいぶんと暇をしていたので遊んでやることにした 女に俺が天使だと伝えると女はたいそう喜んだ 用はなんだと尋ねると女は懺悔したいことがあるといい話しだした 昔に助けてもらった人がいること、その人にまだお礼が言えていないこと、そんな話をした 俺は、人間とはなんと小さき生き物だと言った そんな昔のこと俺であればとうに忘れて気にもしないわ そう言うと俺はもっと面白い話を聞かせてやろうと俺が今までしたいたずらの話や町で見た面白いものなどの話しを聞かせた 女はくすくす笑いながら話しを聞いていた その姿はまるで花が揺れるように繊細で可愛らしかった 俺は何日もその女の元を訪ねた その度に新しい話しをしてやった 女はころころと表情を変えながら俺の話を聞いていた そんなある日俺の昔話をしてやった 昔に人間の命を救い同僚に角を折られたことを話した 話したあとにこれを話せば天使じゃないことがばれると思い女の方を見たが女は時々悲しそうな表情をするばかりだった そんな話をしたあとでも女は俺を天使様と呼んだ そうして過ごしている間に俺は女はのことが頭から離れなくなった 会っていないときは女に聞かせる話を考えながら早く明日にならないかとそんなことばかり考えていた ある日町の花屋の青い花が目についた 女のように可憐で美しい花だった 人間のふりをしながら花を買い女に会いに行った 花を握りしめ女に会いに行く姿はまるで恋をしている少年のようだった 教会に着いてすぐに違和感をおぼえた 女ともう一人違うやつの気配がした 明らかに人間ではない者の気配 嫌な予感がした いつものように笑った顔を見せながら女が現れてくれと願いながら扉をあけた ギィィという重い音を聞きながら俺は絶望した 女は血を流し床に倒れていて、そのそばには剣を持ち背中に真っ白な羽を生やした女が立っていた 俺は買った花が床に落ちるのもかまわずに女の元へと駆け寄った 腹部を刺され血を流す女を俺はただ見つめることしかできなかった 真っ白のな羽を生やした女は罪人を断罪したとだけ言い姿を消した すると女は目を開けた 俺は治してやると言いながら震える手を女の傷口にかざした 悪魔である俺にとって完治はできずとも医者に連れて行くまで生かすことはできた しかし女は俺の手を掴み顔を横に振った 「もういいんです、私は充分に生きました」 何を言ってるんだまだお前は生きるんだと言う俺を止めて女は話し続けた 「私はずいぶん昔に死ぬはずでしたがある人に助けられて私は生き続けました、なのでもうよいのです」 段々と冷たくなっていく女を前に俺は一つ話をした 自分が天使などではなく悪魔なこと、 ずっと騙していたことを話した 女は笑って知っていましたと言った 「私が生きているのはあなたのおかげです、私は昔にあなたに命を救ってもらいました」 「私にとってはあなたは天使様なのです、私を生かしてくれてありがとう…」 俺は静かに彼女を抱きしめながら何か願いはないかと尋ねた 彼女は最後に俺の顔が見たいと言ったので目を治してやった 彼女の目を治してやるとぱちりと目を開けた ちょうど俺が買った花と同じきれいな青色だった 「やっぱり天使様はこんなに優しい顔をしている」 とそう言いながら彼女は俺の頬をなでた 俺は涙が止まらなかった 悪魔は彼女が旅立つまで泣き続けた 空は彼女の死を嘆くように雨が降り始めた それから悪魔は彼女を連れてどこかに姿を消したとゆう これは一人の女を愛した悪魔の物語…
食べたかった
私達は姉妹だった 性格が真反対の私達はいつも小さなことで喧嘩してばかりだったけどいつも妹から誤ってくれてすぐに仲直りしていた 涙を流しながら謝る妹の涙を拭って仲直りをするそんな代わり映えのない日々 今日も些細なことで喧嘩した 私が妹のプリンをかってに食べてしまったことにとても腹が立っているらしい 「お姉ちゃんなんか大嫌い!死んじゃえ!」 私は頭にきて家を飛び出した そのまま数時間ほど公園や近所をうろついたあとふと目についたコンビニに立ち寄った 無意識にプリンを2つ買っていた …今回は私から謝って一緒にプリンを食べようと考えていると胸が熱くなった、涙が出そうになった ちゃんと謝ろう、そう思い私は家へと走った 運動は苦手でちょっとの距離でもすぐに息が上がってしまう私だけど今日は快適に走れた 家に着き玄関を通るとリビングからニュースが聞こえてきた 女子高生が通り魔に刺され死んでしまったと言う内容だった 私は物騒だなと思いながらリビングのドアを開けると聞こえてきたのは妹の声だった 「ごめんなさい、ごめんなさい…お姉ちゃん」 私に謝りながら泣きじゃくる妹 妹を囲むように座る両親 そんな家族の前に私は立った 泣きじゃくる妹の涙を私は拭わなかった いや… 拭えなかった 拭おうとしても体が透けて拭えない どんなに声をかけても声は届かない ここに居るのに誰にも私は見えない 私はニュースに映し出された自分の写真を見ながらぽつりとつぶやいた プリン…食べたかった
真っ赤な薔薇
私には好きな人がいる。 幼馴染で隣の家に住んでいるあのこ 「よう、今帰りか」 そう言って声をかけてきたのは隣に住んでる幼馴染だ 「じゃあな風邪引くなよ」 そう言って帰っていった 私も家に入り、部屋に向かったがなんだか気分が悪くなりすぐさま洗面所へと駆け込んだ 私は吐いた 真っ赤な薔薇を 私は怖くなり隣の家のあいつに助けを求めた 出てきたのはあいつの妹だった 私は先程あったことを話した 「それって花吐き病じゃない?」 そう返ってきた言葉に私は納得した 花吐き病とは片思いをこじらせ続けると発症する病気 治すには片思いの相手と両思いになるしかないとゆう病気だ 「お兄ちゃんが好きなんでしょ! 告白しなよ」 私がどうしてと聞く前に 「みんな知ってるよ!」 とそう返ってきた 「お兄ちゃんのとこ行こ!」 そう言って私は流されるままあいつの元へ向かった 幼馴染のあいつはずっと私のことが好きだったらしくそのまま私達は付き合うことになった それから5年が過ぎ、私達はまだ仲良くやっている 私は昔から自分の意見を言うのが得意ではなかった そんな私をあいつはいつもひっぱってくれた いつも強気で、元気なあいつ そして、そんな兄にそっくりな可愛いあのこ そうして私は今日も真っ赤な薔薇を吐いている