雪雲

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雪雲

今は「クリスマスまで」という連載を書いてます。 私の作品を読んでくれると嬉しいです!m(_ _)m

クリスマスまで 第6話

どうしよ、どうしよ、どうしよ! イケメンと何故か相合い傘をしている! ヤバいよ……肩が!雨に濡れないように内側によると宮坂の肩に触れてしまう! 濡れていいから、離れとこう。心の安全のために。 チラッと宮坂を見ると、いつもと変わらない、少し無愛想だけどしっかりイケメンな顔で平然としている。 なんだか、私だけアワアワしているのが恥ずかしくなってきた。 でも、ここまで動揺せずに、しかも宮坂から相合い傘に誘うって、こいつは天然なの?鈍感なの? こんなことを他の女子にもしてたら、みんな勘違いしちゃうって。宮坂が自分のことが好きだって。 そんなことを考えていても、気まずい空気は変わらない。 トルシーネから駅まで徒歩で10分程度。 雨は傘の中を簡易的な密室にしてしまう。周りの音が聞こえにくく、相合い傘なら相手の声や呼吸する音まで聞きとりやすい。 店を出てから、何にもしゃべっていないから、普段、そんなにおしゃべりな性格ではない私でもこの沈黙はキツくなってきた。 何か話さないと… 「お前さ、なんであそこで働いてる?」 意外なことに宮坂から、話を振ってきた。沈黙が続いても平気なタイプだと勝手に私が思ってたのは間違いらしい。 「あそこって、トルシーネのことだよね?なんとなくかな、特に理由はないよ」 そう、失恋した次の日に親友にプレゼントをあげたいと急に思って行動してしまっただけなのです。 「そうか」 「なんで、聞いたの?」 「大体、女は俺目当てであの店に来る」 ……って、おおう。イケメンならではのトークを前を向いたまま平然と話す。 「トルシーネのケーキが好きだから、俺目当てでくるやつが嫌いなんだ」 「そっか…」 確かに、宮坂がトルシーネのケーキを食べてるときは、ケーキがどれだけ好きか伝わるな…あのニコニコだと。 「だから、女子が嫌いなの?」 「まぁ、それだけじゃないが学校でも大体そんなことばっかりだから」 「私は大丈夫?無理してるならバイトやめるよ?」 クリスマスまでのバイトとはいえ、宮坂が女嫌いなら、やめた方がいいのではないだろうか。私なら、お金を稼げるなら別のバイトでもいいし……… 「やめるな」 「えっ。でも…」 無理してるんじゃない?そう言おうとしたら、今度はちゃんとこっちを見て、私としっかり目を合わせて 「お前が他の女子と違うとはもう分かってるから」 と宮坂が言う。 「!」 どうしてだろう。認めてもらった嬉しさだろうか、胸がぽかぽかして、ドキドキして自然に顔が熱くなる。 「お前こそ、無理してないか。お客様の態度、お前だけ違うときあるだろ」 「気づいてたんだ……大丈夫だよ。無理してないし、上杉さんは優しいし」 「それならいいんだが」 「うん。それとお前って呼ぶのやめてくれない?私も名前があるんだしさ」 「そうか、じゃあ、お前の名は」 「もう、ちゃんと覚えといてよ。私の名前は日野遥華」 「そうか、日野だな。覚えた」 今日は、なんだか宮坂に近づけたな。

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クリスマスまで 第6話

お年玉あるある

「はい。お年玉」 新年、おばあちゃん家に帰省していると、お年玉をくれた。 「ありがとう!」 やった! これで本買える!最近でたばかりのやつ気になってたんだよな… いくらだろ。 中のお金を確認しようとしたら、 横からすっと手が伸びてきて 「はい。預かるから」 貰ったばかりのお年玉をとられてしまった。 「お母さん!?」 「銀行にちゃんと預けておくから」 いやいや。そういうことじゃないー! 理不尽! どうせ、お年玉を貰ってもお母さんにとられちゃうんだもん。 私のお年玉はいつもこうでした。

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お年玉あるある

クリスマスまで 第5話

トルシーネのバイトを始めてから、1週間。 いつものようにトルシーネに向かっていると急に雨が降ってきた。最悪。傘持ってない! 急いで店の中に滑り込むとお客さんの対応をしている、宮坂が目に入る。 (同じ高校生なんだけどいつも来るの早いんだよな。同じ時間からのシフトなのに…) そんな宮坂の制服姿はもちろんキマっていて、お客さんの目的は、ケーキだけではなく、宮坂と話したり、宮坂を見たりすることが目的な人がほとんどだということも、働いているうちに分かってきた。 だって、私が対応するときと、宮坂が対応するときではお客さんの反応が全然違いすぎるもん! まぁ、しょうがない。彼はイケメンだもの。私は大人しく裏方にまわりますよ。 私も素早く、バックヤードで学校の制服から制服に着替えて、宮坂の隣に並び、お客さんの注文を聞く。 「ショートケーキと、チョコのケーキと……他にオススメはある?」 ココで遥華の注意ポイント★ これは、一見私に言っているようにみえますがお客さんは、30代くらいの女性。 つまり、だいたいの場合、私ではなく宮坂に聞いています。そのため、私が答えるとブッブー。お客さんから睨まれます! そう、この1週間で私は学んだのだ。 すると、宮坂も分かったようにしゃべりはじめる。 「オススメはですね………」 と宮坂がお客さんに向かって、普段、絶対しない、キラキラの宮坂営業スマイルでしゃべっているときにお客さんが宮坂を見つめる、目! ウルウルでキラキラしてるもん。この目が私が話すと睨むからね。気をつけないと。 お客さんと宮坂がしゃべっている横で、私は箱にショートケーキとチョコレートケーキ、宮坂がオススメと言ったケーキを綺麗に詰めていく。 1週間、だいたいこんな感じ。 そして、閉店時間が間近に迫ると私の心はある問題にぶつかる。 今日は、ケーキが余るかな。である。 今日はショーケースに5個のケーキが余っていて、そのときの私の心は、店員として、“完売して”という気持ちと、“ケーキ食べたい”という欲望がごちゃ混ぜになっているのである。だが、ここで大切なのは隣で、働いている彼もそうだということ。 チラッと隣を見ると、彼の目にはケーキしか映ってない。いくら、お客さんがいないからって…… 「遥華さん、涼くん、今日はもうあがっていいよ。雨が強くなってきたしね」 奥からひょこっと顔を出して言う上杉さん。 『『えっ』』 てことは? 「あっ、今日はケーキが余っちゃってるね」 おねだりの顔がでてないことを祈りながら、上杉さんの次の言葉を待つ。 「遥華さんと涼くん、好きなの持って帰っちゃって」 やったあああ! が、しかしあることに気付いてしまう。 私、傘持ってないよ。 こんな雨の中、ケーキを傘なしで持って帰る? ダメだ。せっかくの美味しいケーキがダメになってしまう。じゃあ、リュックに入れる? 教科書でケーキが潰れちゃうよ… 「今日は、私ケーキいらないから宮坂くん全部持ってっていいよ」 苦渋の決断を宮坂に伝える。 私が張り合ってこなかったことに彼は驚いた表情をして戸惑いつつも 「じゃあ、全部貰うわ」 と言い、慣れた手つきで箱にケーキを詰めていく。 ああ、食べたかった…… だが、仕方ない。 ささっと制服から着替えて、リュックを背負う。 「お疲れ様でした−」 店を出ると雨がザーザーと降っている。 どうしよ。コンビニに行って、ビニール傘を買わないと、この雨はキツい。けど、ここら辺、近くにコンビニないよ! 店の前で、立ち尽くしていると遅れて宮坂が出てきた。 宮坂は、ちゃんと天気予報を見てきたのか、手には黒の傘を持っている。 「………」 「なによ」 無言でイケメンに見つめられると心臓に悪い。バクバクする。 「傘持ってないのか?」 「うん」 「たがら、今日ケーキもらわなかったのか?」 「うん」 「じゃあ、入れよ」 「うん」 えっ、まって。瞬間的に、頷いてしまったけどヤバいんじゃないの。 今、入れよって言ったよね、この人。 つまり、1つの傘に2人が入る、相合い傘になってしまわないか???

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クリスマスまで  第5話

クリスマスまで 第4話

私に当てられた仕事のケーキを詰める作業もだいぶ上手く出来るようになり、18時からまた開店するようで、実践になる。 「じゃあ、それまで休憩にしよっか。このケーキ、2人で食べちゃって」 と私がダメにしてしまったケーキをちらっと見て上杉さんは言うと奥に行ってしまった。 「怒らせちゃったかな…」 「大丈夫だ。上杉さんはこれくらいで怒る人じゃない」 「そっか。ありがと」 なんだかんだ、宮坂は案外良いやつなのかもしれないと、この数時間で分かった気がする。 「じゃあ、このケーキは俺がもらうから」 さっと、素早く宮坂が動く。 「は!?それって、お店ナンバ−ワンの人気ケーキって、上杉さん言ってたやつだよね?」 「そうだが?」 「食べたかったのに〜」 「はっ」 なぜ、そこでドヤ顔をしてくる。 やっぱり、宮坂が良いやつなのかもしれないと思ったのは気がしただけだ。 それと、ケーキをさっさと選ばないと、宮坂に全部持っていかれそうなのは、今ので確信した。 ケーキを選んでいると、 「遥華さん−。コーヒー、飲む−?」 奥から、上杉さんの声が響いて届く。 「はい。いただきます−」 上杉さんは奥に行ってしまったと思ったら、バックヤードの簡易キッチンでコーヒーをいれてくれていたようだ。宮坂の言う通り、上杉さんは怒ってなさそうでよかった。 よしっ。食べよっ。 私が選んだケーキは定番のショートケーキ。頂上にそびえ立つ、みずみずしそうな苺がホイップクリームの上にどーんと乗っていて、とてもおいしそうだ。 いただきま−す。 パクッ。 う〜ん〜!クリームのしつこくない、さっぱりした甘さに、苺の甘酸っぱさがアクセントになってて、美味しい〜! ケーキを楽しんでいると上杉さんがバックヤードから出てきた。 「はい、コーヒー。遥華さんのもブラックにしちゃったから、苦かったらクリームを溶かして飲んで」 「ありがとうございます」 受け取ったコーヒーは、確かに私には苦くて、言われた通り、ショートケーキのクリームを溶かす。 ほぅ。苦さがやわらいで美味しい。 なんだか、開店にたいする緊張もほぐれてきてだんだんと周りがみえてくるとある異変に気づく。 えっ!イケメンがケーキを食べながらニコニコしてる!! 「上杉さん、あれって…」 ニコニコしている、彼に気づかれないようにこっそりと上杉さんに聞く。 「あー。はははっ… 涼くんは大の甘党でね。特にケーキが大好きで、ここで働く前はよくうちのケーキを買ってくれてたんだよ」 「へ−…」 ああ、なんていうことだろう。 とても宮坂が可愛い。 どういうことだ。普段、あんなに俺様だと知っているのに、今は彼が可愛い笑顔の表情をしているただのイケメンに見えてしまう… 普段の彼を知っているから、さらにそう見えてしまうのかもしれないが… ヤバい。イケメンスマイルの破壊力をなめてた…

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クリスマスまで  第4話

クリスマスまで 第3話

月曜日。 いつも通り、学校に行く。 朝は結衣と話して、 授業は催眠術を絶対使える先生の話を聞きながら、あくびを我慢する。眠い。 昼休みは、結衣と一緒にご飯を食べる。 トイレも結衣と一緒に行く。 (何故か、女子って団体行動するよね) 午後の授業も、眠いのを我慢しながら、ノートに黒板の文字をうつして、授業の終わりをつげるチャイムがなったら、 やっと、放課後だー! 「ごめん、結衣。今日からバイト始めたからしばらく放課後は遊べない」 「バイト!? なんでまた」 「へへへっ、秘密!」 「気になるなー。まぁ、頑張って」 「うん。バイバイー」 「またねー」 「トルシーネ」について、店の中に入ると今日も今日とて、いい匂いが店中に充満している。 これから、ここで働くってことは味見とか、余ったケーキをもらえたりして! 「おい。突っ立ってんな。お客様の邪魔になるだろ」 誰ですか、私の幸せな妄想をぶち壊したのは!? 案の定、今日も整った顔でイケメンな宮坂 涼が、不機嫌な顔で私を見下ろしている。 「ごめんなさい」 一応、謝罪はして、彼の横を通り過ぎる。確かに、今の店内には昨日いなかったお客さんがいて、私は邪魔になっていたから。 上杉さんに昨日言われた通りに、バックヤードで、私の名前が書かれたロッカーを探す。おっ、あった。中には制服が置いてあって、学校のカバンをここに置いて制服を着る。おお、ぴったり。サイズ完璧。制服を着ると働くってことがぐんと本当になった感じ。 で、これからどうすればいいんたろ… コンコン。「おい、開けるぞ」 ドアをノックして、入ってきたのは宮坂 涼だった。彼ももちろん、ここの従業員なので、私と同じ制服を着ている。イケメンと同じ制服を着てるのってなんか、はずかしい。 「今から、お前の仕事を教えるからついてこい……まずはその長い髪を縛れ。ケーキに髪が入ったらどうする」 「あっ、はい」 素早く、髪をしばる。 「じゃあ、ついてこい」 「はい」 あーもう、俺様だなー。 ついて行って着いた先は、ショーケースの前。 「お前には、お客様が選んだケーキをこの箱に詰める作業をメインにやってもらう。俺はレジをするから詰めるだけだ。いいな?」 「はい」 あー怖い。でも、ショーケースの中のケーキは美味しそう。 そういえば、さっきまでいたお客さんがいない。 キョロキョロと辺りを見ていると 「お客様には、帰ってもらった」 私の視線に気づいたようにいう。 「なんで?」 「お前に作業を教えるためだろ。表の看板も閉店の看板にしておいたから。安心して作業の練習をしろ」 「はい」 で、ケーキを詰める作業をやってみたんだけど………これがちょームズイ。 ケーキは食べると、幸せになるふわふわさ。これがこの作業を格段に難しくさせている。ケーキの種類を聞いて、箱の大きさを選ぶところまでは簡単なのだ。だが、ケーキをトングで持ち上げようとすると、ずぼっとトングがケーキに沈んでケーキをダメにしてしまう。 もう、ケーキを何個無駄にしたことか… そして、失敗するたびに横の人からイライラが伝わってきて怖い。空気が重くなる中、上杉さんが現れた。 見かけないなと思っていたら、ケーキを作っていたようで、上杉さんの両手は補充用のケーキをたくさん持っている。 「すみません、上杉さん。ケーキを無駄にしちゃって…」 「大丈夫だよ。遥華さん。最初はそんなもんだから。気にしないで。それと、涼。あんまりイライラしない。遥華さんに圧をかけて余計しにくくなるだろ」 「はい…」 イケメンがしゅんとなってる! えっ、ちょっとかわいいんだけど。ギャップ萌えってやつ? と思っていると、ギロッ。 可愛いって、思った私はバカだ。怖いこわい。

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クリスマスまで  第3話

クリスマスまで 第2話

服装よし! 髪型よし! 顔……たぶんよしっ! 今日は面接の日。受かって、バリバリ稼いで、結衣にクリスマスプレゼントを! 昨日乗った駅で降りて、チラシが貼ってあったケーキ店に向かって歩く。 ここだ。「あなただけのケーキ店 トルシーネ」 時間もまだ余裕あるし、ちょっと中覗いてみようかな。 こんなことを思ったのも、外にいてもわかる、このいい匂いのせいだ。絶対。 甘い物が好きな私は、ケーキももちろん大好き。 カランコロン。店内に入ると甘い匂いは、さらにグッと濃くなった。 うあー! 店内のショーケースには、定番のショートケーキや、あまり見たことがないものもあるが、どれも、 「美味しそう…」 「すみません、お客様。まだ開店前なのですが、表の看板が見えませんでしたか」 声をかけられた方を見ると、おおっ。かなりのイケメンが私のことを見下ろしている。まつ毛長っ… 「あの−、お客様。聞こえていますか?」 「あっ、すみません。あの、アルバイトの面接に来たんですけど…」 「チッ。お前が新しいやつかよ」 というなり、イケメンは奥に行ってしまった。 えっ、あのイケメン、私に向かって舌打ちした!? お客様じゃないとわかったときからの対応が変わりすぎでしょ! イケメンと入れ替わるように、奥から、30代くらいの眼鏡の男性がこちらに来た。 「面接に来た、遥華さんですか?」 「はい。そうです」 「店長の上杉です。じゃあ、早速面接を行いましょうか」 「はいっ」 先程、イケメンが消えた奥の方にある部屋に案内された。 バックヤードらしく、ロッカーや簡易的なキッチン、テーブルに椅子が2つ。そこに、私と店長の上杉さんが向かいあって座る。 「じゃあ、面接を始めますっていってもこれにいろいろ書いてくれればいいからさ」 「じゃあ、雇ってくれるんですか!」 「うん。元々、人手が欲しかったんだ」 「ありがとうございます」 やった。雇ってもらえる! すべて記入して、上杉さんに紙を渡して先程から気になっていたことを上杉さんに聞く。 「上杉さん、あのさっき男の人がいたんですけど…」 そう、お客様じゃないと分かったら対応をすぐ変えるやつです! 「あ−、あれは宮坂 涼くん。たしか、遥華さんと同じ高校生だから仲良くなれると思うよ」 「いやぁ−…」 あのイケメンと仲良くなんてぜえぇぇっっったい無理です。 「今、僕と涼くんしか、ここの従業員がいないから涼くんには、負担をかけちゃってて…」 「大変じゃないですか」 「僕には奥さんがいて、元々トルシーネは僕と奥さんの店だったんだけど、奥さんは今妊娠してて休んでもらってるんだ」 「そうなんですか。私たくさん働きたいのでシフトガンガンいれてもらっても構いません!」 「あはは。それは助かるけど、無理しなくていいからね。じゃあ、早速明日から、入ってもらって色々覚えて欲しいんだけど、いいかな?」 「もちろんです」 無事、面接を終えて、今は自分の部屋にいる。落ち着く……緊張した…… あれから、上杉さんとはシフトのことでいろいろ話をして、帰るころには、開店時間ギリギリだったけど、あのイケメンとは、合わなかった。 上杉さんは優しそうだし、ただ、涼というイケメンが気にかかるけど、まぁいっか。

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クリスマスまで  第2話

クリスマスまで 第1話

「はぁ…」 「もう、元気だしなさいよ。フラれたからって、遥華は何にも悪いことしてないんでしょ」 「うん……」 だけど、もし相手に悪いことしてたら? だから、フラれたんじゃ?結衣の部屋にある、ネコのクッションをぎゅっと抱きしめる。 「自信ないよ…」 初めて付き合った彼氏とは手を繋いだり、放課後デートや、デートを重ねて、交際1ヶ月目には初めてのキスもして、上手く付き合っていけてるって思った。 でも、2週間前、急に彼に別れようって言われて、上手くいってると思っていたぶん、私へのダメージは大きかった。 そこからは、どうして別れたのか分からなくて、悩んでる。 「ほら、1ヶ月後には、クリスマスだよ」 結衣の携帯の画面は、今日が11月25日(土曜日)だということを示している。 「それまでには、新しい彼氏つくって、今回のことは忘れちゃえば?」 「う−ん。でも、しばらくは付き合うのはいいかな」 「…そっか。まぁ、それで遥華がいいなら私はいいんだけど」 「相談のってくれてありがと」 「ううん。全然気にしなくていいよ。遥華のことが心配で、私が遊びに誘っただけだし。あっ、もしクリスマス予定なかったら私と一緒に家でお泊まりパーティーしない?」 「でも、結衣には彼氏が…」 「それよりも、悩んでる親友のほうが大事!」 「もう、結衣ったら−、彼氏に嫌われるよ?」 「それは困る」 結衣の暖かい部屋に2人の笑い声が響く。 やっぱり、結衣はすごいな。悩んでるのが嘘みたいに悩みがどっかにいっちゃうんだもん。 「じゃあ、そろそろ帰るね」 「うん。いつでも相談にのるから。悩みすぎんな。バイバイ−」 「バイバイ」 結衣の家を出ると、陽も落ちかけていて、だいぶ寒くなっていた。 冷たくなってきた手を、息で温めながら、早歩きで駅に向かう。歩いていると、イルミネーションや、オーナメントがところどころに飾ってあって可愛い。 (そっか。結衣が言ってたけど、あと1ヶ月でクリスマスだもんね。 彼とまだ付き合ってたら、クリスマスプレゼントを交換してたりしてたのかな…) って、ダメダメ。もう、彼のことは考えない。また、結衣にも心配かけちゃう。 今回のことでも、そうだけど今年は結衣にたくさんお世話になったし、クリスマスプレゼントを結衣に送ろうかな。 だが、ある事に気づいてしまう。 お金がない…… 最近、衣替えで新しい服を買ったり、ストレス発散でスイーツを結構食べたから私のお財布は今かなり寂しい。 と悩んでいると、アルバイト募集中のチラシが目にはいった。 ケーキ店のチラシらしく、クリスマスまででアルバイトしてみませんか?と書いてある。たぶん、クリスマスケーキを売るときの店員が欲しいのだろう。これなら、今の私にぴったりのアルバイトかもしれない。どうせ、クリスマスに予定なんかないんだし。さっそく、私はチラシに、書いてあった電話番号に電話して、面接を明日受けることになった。

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クリスマスまで  第1話