苺だいふく

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苺だいふく

今更活動再会しようなんて思ってないし、時が来ればこのアカウントも消してしまうでしょう。 1年前の自分があまりにも幼稚で世間知らずすぎて嫌気が差してくる。ネットでの" 礼儀 "を学んだ自分には感謝しかない。 今は、懐かしの人と話してみたいと思った。 そしてその日が来たら、私はひっそりと姿を消す。

番外編〈中〉素敵で忘れられない素敵な夜に

◇ レイ視点 「ん? なにやらお化けの形をした炎が空に舞い上がってなかった?」 「え? ホントですか⁈ えぇ、見たかったぁ」  そう言ってしょんぼりとしたリリアさん。僕は、そんなリリアさんを見てふふっと笑う。 「そんなにしょんぼりしなくたっても大丈夫さ。僕が見せてあげようか?」 「えっ! ……あー、でも大丈夫です。そこまでしてもらうほど見たくて堪らないわけでもありませんし」 「そうか?」 「はい。今日はハロウィン祭を精一杯楽しみましょう!」  10月31日。伝統あるマイティ学園では毎年、ハロウィン祭という祭りが行われている。  生徒達は様々な仮装をし、一般市民の立ち入りも許可されるワクワクでドキドキなそんな祭り。そんな中で、僕ら4人はのんびりと校内を回っていた。 「あっ、ユイト君。また髪跳ねてる! って寝ちゃダメ!」 「……」  高1の2人がそんな会話をしてるのをなんだか微笑ましいものを見るような目で見た。ユイト君はもう眠そうにうとうととしている。  実際、今は9時なので小学生くらいは眠る時間帯かもしれないが……はやすぎないか? 「お二人とも、仲良しですね」  そう言ってニコリと綺麗に笑ったのはマコトさん。  今は、この4人組で校内を回っている。なんでこの4人組なのか? まぁ、単純に会ったからだ。 「も〜! ユイト君は〝キョンシー〟なんだから、ちゃんと起きてないと! 前見えなくて転んじゃうよ?」 「……ん…」 「立って寝ないで?」  うつらうつらと言った感じでこくんと頷くユイト君に真顔で突っ込むリリアさん。  ユイト君は、リリアさんが言ったようにキョンシーの仮装をしていた。中華風のカッコいい衣装に身を纏い、なにやら呪文が書かれたお札を貼り付けられた大きめの帽子をかぶっている。  だから、前が見えずらいというのはたぶん本当だ。というか、あのままで寝たらちょっと危ないまである。  そして、そんなユイト君を注意するリリアさんは〝シスター〟の仮装をしていた。  黒と白を基調としたふわふわのワンピースを見に纏い、特徴的な帽子を被っている。十字架のついたネックレスもつけていて、可愛らしいシスターになっていた。 「も〜……! マコトちゃんもなんか言ってよ〜!」 「ふふ、寝るのは良いことですよ? まぁ、場所が場所なだけに起こしたほうがいいですが」  終始笑顔を外さない今日のマコトさんは〝ポリス〟の仮装をしていた。  紺を基調としたワイシャツに、黒くて短めのズボンを履いており、綺麗な美脚を晒している。腕には長い手袋(?)みたいなものをつけて露出がないが、足には長めの黒靴下を纏っており、いつもとは少しだけ雰囲気が違っていた。 「ほら、ユイト君。移動するよ?」  僕がそう話しかけるとユイト君はまだ寝足りないのかふるふると力無く首を振る。  もう、困った後輩なもんだ。  僕は苦笑してから、眠そうなユイト君を抱えた。すると、少しだけ驚いたように目を見開いてからトン、と僕の胸あたりを叩いてきた。 「…先輩、僕、自分で歩く。降ろして」 「それは失礼」  僕はそう言ってゆっくりと丁寧にユイト君を降ろした。すると、周りから「ほぅ」という感嘆にも似たような声が聞こえる。 『あの人、マジの王子様みたぁい』 『それな。カッコいい〜っ』 「先輩、人気ですね!」  リリアさんが僕のそばに来てニッと笑う。僕は困ったように笑って「本当?」と聞き返した。  今年の僕は〝王子〟の仮装をしている。いつもセットしていなかった髪も少しだけ固めて、前髪を一部分あげてみた。着飾りしすぎないようにいらないフリルや装飾は消して、至ってシンプルな感じにしている。色素の薄い水色のワイシャツに黒のネクタイをつけ、白いコート(?)を羽織っている。耳には、少しゴツめのアクセサリーをつけてみた。ちなみに、ネックレスは指輪の形をしている。 「まぁいいや。それじゃあ少し移動ーー」 「ぅわぁぁあッん!!」 「⁈」  いきなりビックリするくらいの大声が聞こえて、僕達は声のした方向を振り返った。  そこには、大泣きしている小さな女の子がいた。 「どうしたのでしょう。迷子……ですよね?」 「うん、たぶんそうだと思う」 「助けなきゃ‼︎」  マコトさんと僕が顔を見合わせてる中、リリアさんが走ってその女の子に駆け寄った。  驚いた女の子は「ヒック……う、うぁぁん!」とまた泣き始めてしまう。 「あ、えっと、大丈夫。大丈夫だよ〜……?」  わたわたとしながらリリアさんが女の子を宥める。そんなリリアさんの元に僕とマコトさん。目を瞑ってるユイト君が駆け寄った。 「……ヒック……ぅぁ、お、おねぇちゃん……たち、だれ?」  震えた声でそう聞き返した女の子。胸がキュッと閉まるような感覚がした。 「私達はここの生tーー」 「私達は、君達を助けに来たお化けです」  リリアさんが「ここの生徒」と言い終わる前にマコトさんが笑顔で被せてくる。  リリアさんは驚いたように目をぱちぱちさせてから、なにかを察した。 「ひぇっ、おば……け?」 「……はい! 君を助けに来たお化けです♪」  少し怖がる女の子にニヤリとした笑みで返すリリアさん。まぁ、僕も合わせますとしますか。 「あぁ。君は迷子なのだろう? 僕達お化けはそんな君を放っておけないんだ」 「わたしの……まま、探してくれる?」  いつのまにか女の子の涙は引いていて、その瞳には若干の怯えの色が見えた。  僕達は同時にこくんと頷く。ユイト君も、寝ているはずなのにコクンと誰よりもちゃんと頷いていた。 「ほんと……? ありがとぅ……!」  ニコニコと笑った女の子。それに微笑ましい気持ちになってると、ユイト君が僕の服の裾を引っ張った。 「ん? どうしたんだい?」 「あっち、女の子探してる人……います」  1つの方向を指差してユイト君はそう言う。  あー、確かユイト君って人の心が読めるんだっけ……? それの影響かな。 「それじゃあお姫様。僕の手をお取りください」  少し芝居がかった口調でそう言い、女の子に手を差し出すと女の子はにぱっと笑ってその手を取った。  そうして、僕達はユイト君が示した方へぞろぞろと歩く。  その途中、何人ものお客さんに見られたのは言うまでもない。  実際、僕も他のみんなも凝った衣装を着てるからね。 「! おかあさんっ!」 「……⁈ ゆい!」  女の子は1人の女性を指差すとぱたぱたと駆け寄る。それを見た女性もホッとしたような顔をして、女の子に抱きついた。 「おかあさんっ……!」 「ゆいっ! どこ行ってたのよ……!」 「ごめんなさい……。でもね、お化けさん達が助けてくれたんだよ‼︎」  家族の再会を微笑ましい目で見ていたら女の子が不意に僕達の方を見た。 「このお兄ちゃんが、わたしを連れてきてくれて」  僕の前で止まって、キラキラとした目を向けてくる女の子。今度は、リリアさんの方に行った。 「このお姉ちゃんが私のこと見つけてくれて」  そして今度はマコトさんの方へ。 「そして、この人がお化けだって教えてくれたの!」 「あら」  お母さんがふふっと、おかしそうに笑っているのなんて気付いてない女の子は最後にユイト君の方へ行った。 「このキョンシーさんはね、わたしのね、ままがいる方向教えてくれたんだよ!」 「⁈」  その発言に、誰よりもユイト君が驚く。  その、「見られてた、のかッ……?」とでも言いたそうな顔に僕が笑ってしまった。 「ほんとうに、ありがとうねっ」  女の子はぐるりと僕達を見回して微笑む。  僕達も一瞬顔を見合わすとニコリと微笑んだ。  マコトさんが不意に女の子と視線を合わせるためにしゃがむ。 「この世には、わる〜いお化けもいればいいお化けもいます。今回はいいお化けだったけど、お化けについてっちゃいけませんからね?」  そう言って冗談めかしで笑ったマコトさん。その言葉を真剣に聞いていた女の子はコクコクと頷いた。そして、 「わかった! 気をつけるね!」  と笑った。 「本当にありがとうございます!」 「いえ、当然のことをしたまでです」  何かお礼をしたいという女の子のお母さんの申し出を丁寧に断って、僕達は元きた道を戻っていく。  女の子と別れる時、女の子があまりにも手を振るものだから1つ魔法で花火を上げてしまった。 「わぁっ、花火だっ!」  そう喜んでいる女の子を見て僕は微笑んだ。      ◆ 「あ、あの〜……」  女の子達と別れた瞬間くらいに様々な人に囲まれる。それも、個人個人が。  マコトさんの周りにも女性。リリアさんの周りにも女性。2人はニコニコと愛想を振り撒いてるが、女性に囲まれたユイトくんはと言うと…… 「…………」  無言を貫き通していた。というか、虚無状態にまでなっていた。 「えっと、どうしたのかな?」  少し苦笑い気味にそう言うと女性はスチャッとカメラを構える。あぁ、そういうこと。 「写真を撮らせてもらいたいくて……ッ!」 「あぁ〜……。いいですよ?」  そういうと女性の皆さんは嬉しそうに笑顔になる。  マコトさんとリリアさんはすでに撮られていた。  ユイトくんは虚無。  これは……長くなりそうだな……。      ◆ 「ありがとうございますッ」 「は〜い、まだまだ楽しんでくださいね〜」  あれから何分経っただろう。ずっと撮影会が続いてる。そろそろ疲れてきた。  数人で終わるのかな、と思ったらだんだんと人は増えて、リリアさんやマコトさん、ユイトくんを撮った人がこっちにきたりしていてだいぶ過酷になっていた。  撮る人の要望に応えるようにしているけどそろそろ表情筋が疲れてくるものだ。  すると、グイッと腕を引かれてバランスが崩れる。 「おっ、とっ……と?」 「……」  僕の腕を引っ張った子を見ると、そこには若干ほおを膨らませてるユイトくんが。 「どうしたんだい?」 「写真……、みんなで、取りましょう」  たぶん、ユイトくんもこの撮影会の効率が悪めなのに気づいたのだろう。その後、僕は女子2人を呼んで集団で撮られる形になる。 「えっ、えっと……それじゃあハロウィンっぽいポーズでお願いします!」  ハロウィンっぽいポーズ……?  僕がよくわからなくて首を傾げてるとリリアさんがコソッと耳打ちしてくれる。 「仮装している人達がやりそうなポーズですよ!」 「ん……?」 「私はシスターだからちょっと病んでるっぽく十字架を見つめる感じ」 「私は警察なので銃を構える感じですね」  わぉ。女子2人はノリノリだ。  そんな感じで僕は王子様がやりそうなポーズ(?)をした。ユイトくんは無表情のまま手を前にあげる。たぶん、キョンシーのポーズだ。 「それじゃあいきます! はいチーズっ!」  パシャリと複数の方向から音が鳴り、一旦休憩。  その間に僕は僕達を撮っているみなさんに華麗に一礼して見せた。 「みなさま、本日はお越しいただきありがとうございます。僕達を撮られるのはかまいませんが他のところもぜひ、お楽しみください」 「そーですよ! どこもかしこもとっても面白いですから!」  ひょっこりと後ろから顔を出したリリアさんが自慢げにそう言うと、無表情ユイト君もコクンと頷く。  すると、マコトさんが空に銃を撃つ振りをして先ほど僕が出したように花火を上げた。 「わぁ‼︎」  あたりに拍手と歓声が湧き起こる。 「みなさん、今夜は素敵で忘れられない夜にしてくださいね?」  僕はニコリと笑い、そう言った。  ーー僕達のことを見ていたファンの人達が卒倒してしまったと聞いたのはもう少し後のこと。      ◆  おはようございます! 苺だいふくです!  ……いやぁ、『ただいま!』とかほざいてから何週間経ったんだろう……。1週間とか2週間は経ちましたよね。  試験もあったり、首をやったりと大変でしたがやっと〈中〉書き終わりました。  てかヤバい。  ハロウィンの番外編なのにそろそろ11月終わっちゃう。本当、ヤバい。  後編はとりあえず早めに書き上げます……。  リアルもネットも忙しいわたくしですが、一応たまには浮上するので……。  投稿は亀と同じになりますが、今後とも見てくれると嬉しいです。  それでは、次回で会いましょう。  バイバイ〜♪

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番外編〈中〉素敵で忘れられない素敵な夜に

番外編〈上〉ハッピーハロウィン‼︎

──ねぇ、知ってる?  今宵は10月31日。暗い暗い夜空に浮かび上がる金色の満月があるハロウィーンの夜。  人間共がお化けに仮装してお菓子を頬張る。  楽しそうな声、可愛らしい子供共の声、悲鳴まで聞こえるや。  ふふふっ、今宵は楽しい楽しい宴になそりそう。  あぁ、そういえばハロウィーンの夜って死者と生者が最も近づける日なんだ。  だから、死者共が仮装しても気づかれっこない。  さぁて、今宵は誰が暴れるのか。オレもどうしようかなぁ。  ……、決めた。オレは好きなように暴れる。今宵は──の仮装をして……そうだな。  あの学園にでも潜り込んでみよ〜っと♪      ☆ シモン視点 ★ 「ふ……ハハハ! 等々やってきたな、ハロウィンが!」  学園のメインストリートで高らかに声を上げると何人かの生徒が俺を見てくる。フッ、今夜の俺はいつもとは一味違う。みんな、俺に惚れたか? 「テンション高いね、先輩?」 「ん? あぁ、スミレか」 「はい♪ こんばんわ」  ニコリと微笑んだ俺の一つ下のスミレ。相変わらず人懐っこい笑顔を向けている。 「スミレは……黒猫か?」 「そうです! 今年は黒猫にしてみました」  スミレはくるりと一回転して猫のポーズをする。  頭に生えている猫耳は本物のようにふわふわで尻尾もゆらりと揺れている。手は大きな猫の手ぶk……ゴホンッ、人間だった手が猫の手に変わっていて肉球は可愛らしいピンク色。首元には黒い首輪をつけていた。  服装は真っ黒なワンピースをきていて、黒タイツに黒のローファーを履いている。どこからどうみても黒猫の仮装だ。 「よく出来てるな」 「ふふっ、ありがとうございます♪ そういうシモン先輩はヴァンパイア?」 「フッ……よくぞ突っ込んでくれた。そう、今年の俺はヴァンパイアだ!」  俺はそう言って表が黒、裏が赤のマントをバサッと広げる。キラリと光る八重歯に今夜は真紅のカラコンをつけてみた。  真っ黒なワイシャツを着て、ヴァンパイア感を出しているのだ。  我ながら、カッコいいと思う。 「ハロウィン祭を一緒に回るか?」 「はい、よろこんで!」  俺がそう提案するとにぱっと微笑むスミレ。  ハロウィン祭。それは、このマイティ学園の10月に行われるメイン行事だ。  生徒達は各自好きな仮装をして、お菓子を頬張る。そして、この時だけ一般の人達もマイティ学園に立ち入ることが許されているんだ。  だから、メインストリートには俺達みたいな生徒よりも一般市民の方が多めだ。 「あ、カスミ先輩だ!」  ピッと奥の方を指さしてパタパタと駆け寄っていったスミレ。俺はその後ろを少し早足で通る。  そちらに着くと、もう既にカスミ先輩とスミレは話し始めていた。話に割り込めれず少し困っていると、カスミ先輩の横から視線を感じた。 「む。……アクヒ先輩じゃないか」 「よう、ヤエガシ」 「なぜカスミ先輩と……?」 「んー、まぁ、会ったからだな。それにしても今回の仮装はずいぶん凝ってるんだな?」 「フッ、わかるか。この完璧たるヴァンパイアの仮装を‼︎」 「あー、うん、まぁ」 「反応薄ッ⁈」  アクヒ先輩の反応が思ったよりも薄すぎて突っ込んでしまう。そこは乗っかってくれてもいいのに〜! 「そういう先輩は、医者?」 「あぁ。今回は医者にしてみた。闇医者っぽくて面白くね?」  ニタ、と笑ったアクヒ先輩とその衣装がいい感じにマッチしてる。  ぐぬぬ……俺には劣るがカッコいいな。  アクヒ先輩は中に黒色のワイシャツを着て、薄い水色と紫が混じり合ったような色のネクタイをピッシリとつけている。そして、その上に真っ白な白衣を着ているのだが……その白衣にところどころ血痕がついてる辺り、ハロウィンっぽく感じる。  いつもつけてる手袋は今日は黒色で、黒のズボンを履いている。そして、いつもはつけていない黒のメガネをつけて医者っぽさを際立てていた。 「先輩。その衣装、自分で作ったんすか?」 「んなわけないでしょ。勝手にクラスの女子共が作って渡されたから仕方なく着ただけ」  俺はこの衣装を自分で調達したが……やはり先輩は女の子からなのか。く〜ッ、人気者で羨ましいなぁ。  俺も欲しかった〜……。 「だーかーら。来いっていってんだよ‼︎」 「話聞けないの? “あぁ?」 「っ?」 ◆ 第三者視点 「カスミ先輩〜!」  スミレがニコニコの笑顔でカスミに手を振ると、カスミはくるりと振り返る。 「わ〜、先輩可愛いっ! もしかして、洋館メイドですか?」  スミレがキラキラの瞳でカスミを見ると、カスミはぎこちなくコクリと頷く。  カスミは緑を基調とした、スカート丈の長いワンピースみたいな服を着ていた。襟はキッチリとしまっており、黒のリボンをつけている。  いわゆる、メイドの姿だ。だが、普通のメイドではなく洋館メイド。カスミの頭の上にはワンピースと同じ深い緑色のカチューシャをつけている。  目を引くのはカスミの目の下にある黒っぽいメイク。唇には赤い口紅を塗っており、目の下、くまのあたりは黒く染めてる。  ちゃんとハロウィンの衣装って感じだ。 「スミレさんも……かわ、いいですよ」 「本当ですか? えへへっ、ありがとうございます!」  にぱっと微笑んだスミレは本当にネコミミが生えていたらピクピクと動いており、尻尾もゆらゆら揺れていただろう。  そう容易く想像できるくらいにはスミレは黒猫姿がに合っている。 「ね、オネーサンたち」    近くで……というか、隣の方で男の声がしたので2人は不思議そうに振り返る。  そこには20代くらいの男達が6人いた。雰囲気からして一般市民だろう。 「どうしました? 迷子になったんですか?」 「俺のこと心配してくれんの? 嬉しいなぁ。でもね、俺らは迷子なんかじゃないよ?」  そう言う男達の視線はカスミの顔だったり、スミレの露出した足や肩などに釘付けだった。  カスミは嫌な憶測が立ったが穏便に済ませたいと思ったので彼らの次の言葉を待つことにした。 「俺ら〜、オネーサン達とタノシイことしたいんだ」 「楽しいこと……?」 「そ。俺ら上手いからきっと楽しめると思うよ?」 「写真も撮りたいし〜」 「ね? いいでしょ?」   そんな調子でジリジリと詰め寄ってくる男達。スミレはチラリとシモンの方を見やるがアクヒと楽しそうにお喋りをしていた。  スミレもこの男達が何をしようとしているのかは察しがいった。  この一般市民は自分達が規格外生徒であることをわかっていない、まだ手を出されていないのに手を出すわけにはいかない。その考えがスミレの頭を埋め尽くしていた。  そもそも、制服姿ならノンスタ専用バッチをつけているので一般市民は規格外生徒に近寄ろうとしない。だが、ハロウィン祭の時は違う。  生徒全員が仮装してしまうのでバッチをつけていないのだ。この一般市民はなんとも馬鹿らしいことをしているがそれに気づくことはないだろう。 「ごめんなさい。私、一緒にお祭りを回る人がいるので。お引き取り願います」 「そんなこといわずにさぁ、俺らと遊ぼうよ〜」 「ね〜?」  男達はカスミとスミレに近寄ってくる。通行人がチラチラとこちらを見てるが全員知らんぷりだ。厄介ごとに巻き込まれたくないんだろう。 「それにしても可愛いね〜? そこの黒猫ちゃんは」  男の1人がそう言ってスミレの太もも辺りを触った。少しイラッとしたスミレはその手をパシッと叩く。 「さっきも言った通り、私はあなた達について行く気はありません。はやく退いてくれませんか?」  中学生とは思えないほどのドス黒い笑みを浮かべ始めたスミレ。無言で睨みつけてくるカスミ。  どちらにキレたのかはわからないが男の1人が不意にスミレの華奢な腕を掴んだ。それも、強めの力で。 「痛ッ……」 「だーかーら。来いっていってんだよ‼︎」 「話聞けないの? “あぁ?」  いくら規格外生徒でも女の子が大の男の力に勝てるわけがない。  スミレは痛そうに顔を顰めた。  そのスミレを助けようとカスミが魔法を発動させようとした瞬間。 「え、お前ら何やってんの?w」 「成人した大人が、恥ずかしいとは思わないのか?」  そんな男2人の声が響いた。 ◆ シモン視点に戻る  は〜。年々こういうダメな大人はいるんだな。  そう思いながら俺は侮蔑を込めた瞳で男達を睨みつける。アクヒ先輩もニッと笑いながらガンを飛ばしていた。 「は? なに、お前ら。この子と関係あるわけ?」  男達はそんな俺らが気に食わないのか殴りかかってきそうな勢いで俺らにガンを飛ばす。  俺らが規格外生徒とわからないなんて……飛んだ間抜け野郎だ。 「関係あるかも。だって同じ部活だし」 「は? 同じ部活?」 「ごめんね〜ぼくくん達は退いてくれるかな? これは俺らとこの子の問題だから」  男の1人がニコーと笑顔を振り撒く。なんだコイツ。吐き気がするな。 「五月蝿いな。はやくスミレから手を離せよ。汚い手で触るんじゃねぇ」  俺がドスのきいた低い声で言うと男達は驚いたように目をぱちくりさせる。  通行人が俺らを見てないふりをしている理由。一般市民は厄介ごとには巻き込まれたくないから、だろうけど……生徒達は「自分らが助けなくともノンスタ持ちの生徒なら大丈夫」という絶対の自信があったからだろう。 「喋らせていればツラツラと……俺らには向かうんじゃねぇよ!」 「大人は怖いんだよ〜?」 「殴るぞ」  犬っころが吠えてるようにしか感じないな。  人並み以上には魔力はあるようだがこんなの俺らに攻撃すらできないんじゃないか?笑 「立派に仮装しやがって……お前らウザい」 「サンドバックにしちゃうけど……いい?」  まだまだ俺らに反抗心むき出しの男達を見て俺とアクヒ先輩は「フッ」と笑った。 「サンドバック? それ、誰に言ってるんだ?」 「本当、お前らってつくづく馬鹿らしいね」  俺はカスミ先輩とスミレに「大丈夫」とアイコンタクトを送った。 「は? お前ら何言ってんだよ。頭おかしいわけ?」 「頭おかしいの? って聞きたいのはこっちなんだけど〜?」  アクヒ先輩がわるーい笑みで話し始める。 「お前らさぁ、俺らとその女の子が誰だかわかって絡んでるの? いや、わかるわけないよねぇ、ごめんごめんw」 「“あ?」 「マイティ学園に来てるなら知ってるでしょ? 規格外生徒くらい」  アクヒ先輩がそう言うと男達の顔がみるみる青ざめていく。 「は? お前らまさか……」 「そう、そのまさか! 俺もコイツも女子達も。みーんなノンスタ持ち。ねぇ、まだ俺らにかまうつもり?」  アクヒ先輩はそこで一言区切ると1オクターブ低い声で一言。 「俺がお前らをサンドバックにしてもいいんだけど」 「ヒィッ」 「すみませんでした〜!!」  男達は怯えたようにそう叫んで、バタバタとどこかへ消えていく。 「くっ、あははw ダッサ」 「アクヒ先輩、シモン先輩、ありがとうございます!」  とてとてとこちらに歩み寄ってぺこりとお辞儀をするスミレ。ゴミでも見るかのように嘲笑うアクヒ先輩。今だに無表情でガンを飛ばしているカスミ先輩。  不意に、周りからパチパチと拍手が送られた。そして、 「よくやった!」 「めっちゃスッキリした!!」 「流石ノンスタ持ち!」 「え⁈ ノンスタ持ちなの⁈」 「キャー! こっち見て‼︎」  とたくさんの賞賛の言葉をかけられる。  そうされるのは少し久々でちょっと恥ずかしくなってきた。  だが、ここで恥ずかしがっちゃカッコよくない。俺は不敵にニッと笑って紳士に礼をする。 「沢山の賞賛、ありがとう。今宵は素敵な夜にしてくれ」  そんな俺を見たスミレが俺の隣に来て爪を立てるポーズをする。 「たくさんのお化けに囲まれて、ドキドキで忘れられない夜にしてくださいね!」 「わるーいお化けに喰われないように注意してね?」  アクヒ先輩もそれに乗っかってニコォと悪役っぽい笑みを作った。  周りが「キャー!」「カッコいい‼︎」「規格外……イケメンと美女しかいねぇじゃん!」などと声が上がる中、静かにカスミ先輩が指を宙にあげる仕草をした。  すると……、  ゴオッと強い風が吹き、あたりの葉が揺れた。それと同時に俺は器用に炎でお化けの形を作って空に浮かばせる。 「見て! 炎のお化けだ!」 「わっ、スゴい!」  周りの観客達がそう話す中、俺はニッと笑って3人と顔を合わせた。 「ハッピーハロウィン‼︎」      ◇  こんばんわ、というかお久しぶりです!  苺だいふくですっ♪  さて、今回はハロウィンスペシャルということで〈上〉を出させていただいたのですが……これ、中と下もあります(できてないけど)。  ということで中下は近々出すつもりです。  そろそろ活動休止を解除してもいいかなぁ、というかしようとしてたんですけど、今試験期間なのでもう少しだけ休ませてもらいます。  本当に申し訳ない‼︎  その分、帰ってきたらいいものを書くのでお楽しみに。  あ、今回の表紙は……シモン君のつもりです。ハイ。うん。  あと、ほぼ1ヶ月ぶりにこの物語を書いたのでこんなキャラであってるっけ? 状態で書きました。  なんか思ってたんと違うと思ったらすみません。  ということでこれで終わりかな? 番外編なのに本編なのは表紙が生徒なのと……活動報告じゃないからですね!  それでは、また近いうちに会いましょう。  バイバイ〜♪

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番外編〈上〉ハッピーハロウィン‼︎

無邪気な笑顔

 無邪気な笑顔で笑う君を見て、僕はどれほど救われただろう  花が咲くかのように可愛らしく、愛らしく微笑んでいる君に  僕はどれだけ心を奪われたのだろう。  君の笑顔なしじゃ生きれないくらい、僕は君の笑顔に堕ちてる。  楽しい時、嬉しい時、喜ぶ時、  失敗しても、焦っても、悲しい時も、  君は笑っていたね。  僕が惚れたのは、君の〝無邪気な笑顔〟  無理して笑う君は、君らしくないや。  笑うのはいいこと、楽しいこと。  笑ったら、周りも伝染するように笑う。  それを自分に言い聞かせて、笑ってはいない?    君は君のままが一番綺麗。  そして、僕が心を奪われるの。  だから、だからね。  無理して笑わなくたっていいんだよ。  笑いたい時だけ、笑えばいいんだよ。  僕が一番好きなのは笑顔な君だけど、  悲しんでるとこが嫌いなんて言ってないから。  好きなときに笑って、好きなときに泣けばいい。  もし泣くことができないなら、僕がずーっとそばにいてあげる。  君を優しく抱きしめてあげる。  だから、君は  好きなときに、好きな表情をして、  本物の笑顔でまた僕を惚れさせてよ。

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無邪気な笑顔

月を見上げる

 月が昇る。  白く、眩く、妖艶な光を放つ月がわたしの目に焼きつく。  どこか儚いようで、どこか幻想的なその月にわたしの目は釘付けになる。  一瞬の瞬きすら勿体無いその月が空の頂点へ昇るまで見つめ、  空の頂に昇り切った時。  日にちが変わる。  それは自然現象であり、わたしにどうこう出来る話ではない。  だけど、思い返してみるんだ。  今日を悔いなく生きれたか。  自分のしたいことをできたか。  自分の気持ちを全面に出せたか。  作り物じゃない、〝本物〟の笑顔で笑えていたのか。  もし……。もしもどれかが出来なかったのなら。  また次できるようにすればいい。  過ぎ去った時間はどれだけ足掻こうが戻ることはない。  なにか重大な間違いを起こしたとしても、  時間を巻き戻すことはできない。  だから。  過去を振り返るな。  後ろを見たってなにも変わらない。  どれだけ叫んだって過去の自分は気づけない。    今……、今、やりたいことをしなければ。  今、自分の気持ちを叫ばなければ。  自分の気持ちには気づけないんだよ。  だから、どれだけ苦しくても、  どれだけ悲しくても、  どれだけ、辛くても、  前を向いて生きるしかないんだ。  後ろに光がなくたって、前に光があるかもしれない。  その希望だけを信じて、前に進め。  その途中、泣いたっていい。  悲しんだっていい。  叫んだっていい。  キミが生きてるなら。それでいいんだ。  過去だけを見るな。  前だけを見ていろ。  また次、日にちが変わった時、  その時だけ。  過去を思い返せばいい。  その時だけで、いいんだ。  昨日の自分に負けるな。  無駄な1秒が無いように、悔いなく生きろ。  明日生きてる保証はない。  明日、おはようって言える保証はない。  明日、笑える保証はない。  だから、  だから。  前だけ見て、悔いなく1日を過ごしてください。  

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月を見上げる

第五話,集結

 まじか……。じゃあ、本当にここはどこだ……?  そんなことを考えているとエマとリティがこの部屋に入ってきた。そして、少しするキオとロウバイ。そして、知らない人達が2人、入ってきた。 〈登場人物〉 ソア・スフォルツア      ♂15歳(高1) ロウバイ・エナミ・ラメン   ♂  ⁑フィリア・ジアター キオ・サーオツェル      ♂ ヴィルス・サータ・リサシティ ♂ クエン・ラブラド・ライト   ♀  ⁑ヒイラ ゴア・ハーツ         ♂ リティ            ♀ ニゴ・エーゼント       ♂ エマ             ♀ レム・ルイサイト       ♂ ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎  ーー少し時を遡って。  ゴアやクエン。ロウバイやニゴ。そして、ソアが真っ白な空間に入った時。その場には、リティ、エマ、キオ、ヴィルスの系4人が残っていた。  話すことも何もなく、ただただ沈黙が辺りを包む。すると、ヴィルスが不意に眉をピクッと動かした。  ジッとどこかを見つめるヴィルス。〝それ〟に気づいたキオもただ静かに一点を見つめた。 …ザッザッザッ  どこからともなく聞こえる足音。人数は1人ではなく2人くらい。まっすぐとこちらに向かってきているのはこの場にいる全員がわかった。  女子であるエマとリティを後ろにキオとヴィルスが前へと出る。そして、警戒心を剥き出しに足音のする方向を睨みつけた。 「「「「…………」」」」  驚くほどの沈黙。誰1人としてその口を開こうとしなかった。  足音の主と対面したというのにこの静けさっぷりは全員初対面であり、信用がないからであろう。 (人……? まぁ、弱いわけでは…なさそうだな)  ヴィルスは見定めるようにやってきた2人をジロリと見る。  1人は真っ白な髪をウルフカットにしている青年だった。片目は隠れてしまっているがその真っ赤な瞳が特徴的で、パーカーを来ていた。普通に顔は整っている方だとヴィルスは感じる。  そして、その青年の隣にいるのは少し背が高い少女だった。  黒く長い髪を三つ編みのハーフアップにしており、紫の瞳をしている。その雰囲気は暗く、話しかけるなとでもいいたげなオーラが漂っていた。 「……だ、れ?」  そう言葉を発したのはヴィルス達の後ろにいるリティだった。怯えの色を瞳に宿して、ジッと現れた2人を見つめている。  その瞳に見つめられて口を開いたのは白髪の青年だった。 「……誰…ね。俺だって聞きたいよ。あんた達、誰?」  警戒の色は薄れていないがそう問いかけてくる青年に今度はキオが答えた。 「……僕達は、ここに転移させられた者。……『目的地』…を目指してここまで、きた」  そういうと、長髪の少女が一瞬だけ目を丸くした。そして、 「じゃあ、私達と境遇が一緒ということ……ですか?」  そう言われれば4人はコクリと頷く。2人は考えるそぶりを見せた後におもむろに口を開いた。 「……とりあえず、中に入る?」  白髪の青年がそう言う。ヴィルス達は何も反論はなかったが名前を名乗らなかった2人にはまだ警戒している。  ただ、自分達と同じ境遇であったということは先に入ったソア達と同じなわけで。その中に変な人…はいたが自分達に危害を加えようとする人はいなかったと感じ、少しだけ警戒心を解いて中に入ることにする。ゴア? あれはカウント外だ。  エマとリティを先に入らせた後、ヴィルスとキオが中に入る。その後すぐに白髪の青年と長髪の少女が中に入った。      ◇  白い空間に足を踏み入れたものはみな、例外なく煙に巻かれたように消えた。  そして、開け放たれた純白の扉は誰に触れられるわけでもなくひとりでに「ギイィ……」という歪な音を立ててバタンと閉まる。  すると、その神殿はその場に無かったとでもいうようにシュンッと消えた。  果たしてこの神殿は何なのか? なぜ消えたのか? それを彼らが知るのはもう少し先の話であり、そもそも彼らは神殿がこの場から消えたことなど気づいてはいなかった。      ◇  ーー現在に戻る。  突如、知らない2人が中に入ってきたことによってこの場の雰囲気がピリッとし、緊張感が駆け抜けた。  キオの方を見つめるとキオは僕の視線に気付いてこっちを向く。キオはずっと無表情だから何を考えているのかはわからなかったが後ろの2人のことはちゃんと認知しているようだった。 「ねぇ、誰?」  一番早くに声を上げたのはやっぱりクエンでその次にゴアが訝しげに2人を見つめる。  入ってきたヴィルスやキオが2人を紹介しないあたり、たぶんまだ名前を知らないんだと思う。  入ってきた知らない2人も話す気はさらさらないと言った感じだ。  少し困ったと思い眉をハの字にしてしまう。 「なァ? お前達はーー」  ゴアが何か言葉を発しようとした時だった。  脳内にノイズが走るような感覚がして少し頭が痛む。この感覚を僕は覚えている。  そう、これは一番最初の…。 《やぁ、子供達よ。無事終結できたようだね?》  神様(仮)みたいな声が脳内に直接再生された。  周りをチラリと見ると全員もその声が聞こえるのか驚いていたり、感情の読めない顔をしていたりと様々な感情の表情をしている。 《立っているのもなんだろう。長話をするからその机に座るがいい》  そう言われて皆は真っ先に長机の周りに置かれている椅子に座っていった。誰も反抗することなくスムーズに座っていき、全員が腰を下ろした時にまた、脳内に言葉が紡がれる。 《まずは、全員が無事、ココに到着できたこと嬉しく思うよ。腕試しの結果も上々だ》  本当に嬉しそうな声色で神様(仮)はそう言う。腕試しの結果……とか、無事に到着できてよかった……とか。まるで危険があるのだと最初からわかっていたみたいな言い方。  本当に彼は何者なんだろう。  そういえば、最初に語りかけられた時はもう1人違う人がいたような……。 《さ、本題に入ろう……と言いたいところだけどね。困惑している子も多いだろう。今は1人席を外しているから戻ってくるまではなんでも答えてあげるよ》  どことなく上から目線な言い方にゴアの雰囲気が重くなった気がするのは気にしないことにした。  さっきまではなぜか口を挟んではいけない気がしていたが今はなぜか口が動きたいと思う。  僕が声を上げるよりも前に、ロウバイが質問を投げかけた。 「あなた達は、何者……?」  そう小さく呟いたものを神様(仮)に反応した。 《何者……かぁ。まぁ、君達が考えているものとさほど変わらないさ。私は、幸せを増やす神様。気軽に幸神とでも呼んでくれ》  幸せを増幅させる神……? ってことは、それ以外の神様もいるってこと?  そんなことが脳内で考えられるが今はそんなことよりも今の状況を理解しなければ。 「おれ達をココに集めた理由は?」 《それは後で知ることになるさ》  ニゴの質問にスッと答えてきた幸神。後で知ることになるって……。なんでも聞いてくれって言ったのはそっちじゃん。 「あ! じゃ〜あ〜、この神殿の扉を開けた時に白い空間が広がってて、そこに入ったらココに転移できたのはなんで?」  クエンは思い出したように大きな声で上に向かって話す。確かに、この場所に転移する時、だいぶおかしな点があった。  なんかの装置があるならまだしも真っ白な空間で勝手に転移だなんて珍しい。 《ん〜。それはまぁ神だから? 想像すればなんでも作れちゃうんだよ》  ……。僕はこの時思った。 「神様だから」  という言葉はなによりも説得力があるなって。神様だから何か作れる。神様だから何か罰せれる。神様だから、なんでもできる……。神様ってやっぱりこの世のトップに君臨するんだろうなぁ、とそんな考えを持ってしまった。 《他にはあるかい?》 「……」  特に僕から聞きたいことはなかった。  わからないことや気になることは多いけどそれはきっと後で教えてくれる。だったら僕は黙ることにしたんだ。 《ないんだね? ……そうか、じゃあ一つ君達に教えたいことがある》  そう言って幸神は一瞬言葉を濁らせた。そして、 《君達の共通点……すなわち、なんで集めたのが君達なのかをお話ししようじゃないか》  そう言った幸神の顔なんてわからなかったけど、なぜか微笑んでいると言うことだけはわかった。      ◇  はーい、どうも〜。苺だいふくで〜す。  今ぁ、布団で寝転がりながら描いてるんですけどね? いやぁ、ほんッと眠い。このまま寝落ちしそうです。  それに課題も終わらないし……。今回範囲広すぎだろ。  ……ン、ンンッ! すみません、取り乱しましたね。さて、今回は記念すべき全キャラ登場です!   名前がわからない、という2人ですが登場扱いとさせていただきます。  そして、第5話をもちまして全員集合。そして、やっと神様達からお言葉を受け取ることができるようになりました。  続きが気になる場所で止めた気はしますがまぁそれは次回をお楽しみにと言うことで。  コメントや感想はバンバン待ってるんで、お願いします。  ちなみに、今回の表紙はヴィルス君の予定です。まだ作れてないんで後日更新ですが。  あー、そうだ。それと一つ報告があります。私、苺だいふくはたぶん1〜2週間くらい物語を投稿しなくなると思います。  理由としては、中間試験とバレーボール大会が重なったからですね。ハイ。ちょっと忙しいです。  あ、まぁでもコメントは返しますのでご心配なく。  ま、これで話は以上かな?  それでは! 次回お会いしましょう! バイバイ〜♪

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第五話,集結

第十七,いつも通り

 高1組のアクヒ君とキク君も強者のオーラをガンガンに飛ばして余裕を見せつけた。僕も、ニコリと微笑む。 「さ、控え室に行こう」  そう言って、僕達は控え室へと向かった。 🔥 ⭐️ 💧 ⏳ レイ視点 🍃 🧊 🌸 🧪  僕達は、係員の人たちに連れられて控室へと着く。扉を開けて中へ入ると意外にも広くて驚いた。  真っ白な部屋に白の机と椅子。鏡とクローゼットとなんともシンプルな部屋だがそれが丁度良い。  椅子はご丁寧に人数分きっちりと用意されており、なぜか白いソファもあった。 「ソファだ〜!」  それをいち早く見つけたコハクさんが猛スピードで走ってソファにダイブする。その小さい身体はソファの中にすっぽりおさまった。  って、小さいって言っちゃダメなんだっけ?  まぁ、いいか。言葉には出していないし。 「コハク。くつろぐのもいいが開会式もあるんだからな。あまり羽目を伸ばすなよ?」  ヒスイ先生がやれやれと言った感じにコハクさんにジト目を突き刺すが、コハクさんはその整った顔立ちを一瞬歪めて、吐き捨てる。 「わかってる」  にしてもコハクさんのヒスイ先生嫌いは治らないものだなぁ。ヒスイ先生も大変そうだ。  そんな同情を抱えながら僕は荷物をクローゼットの中にしまって椅子に腰をかける。  みんなも僕と同じようにそうすると、不意にゆーりゃ君が僕に近づいてきた。 「どうしたんだい?」  ゆーりゃ君を見てそういうとゆーりゃ君は口を開いて答えた。 「ほら、今回のルールは特殊でしょ? なんか、『フィールドを変える』みたいな……」  あぁ、確かそんなものがあったな。  僕は少し前に生徒会を交えて会議をした時のことを思い出す。 『だが、今回のルールはだいぶ簡単だな。「使い魔を使うのをアリとし、フィールドを変える」って書いてある。フィールドを変える…?』  そういったアオヤ君の顔が鮮明に思い浮かぶ。確かに今回のルールはだいぶ簡単なものだとは思う。  ただ、気がかりなのはフィールドが変わると言うこと。  僕が知ってる中ではフィールドはドームのようなものだった。中心部がフィールド地で、それを囲うようにぐるりと観客席が並んでいる。そのスタイルは今も変わらないと思っていたんだけどね。 「……そういうのもあったね。まぁ、それは僕達で対策を考えよう。早めに作戦も考えて共有したいからね」 「そうだね。うん、わかった。ありがと」  ゆーりゃ君はそう言ってペコリと軽く頭を下げると自分の席に戻った。  チラリと他のみんなを見ればキク君はぼーっとしていて、アクヒ君は今もパソコンをいじっている。てか、持ってきたんだ。  コハクさんはソファでほぼ寝てるし、ゆーりゃ君は熱心に作戦の土台を組み立てる。マコトさんは黙々と魔導書を読んでいた。  ちなみに、カスミさんには先に本部に行ってもらっている。  みんなの様子を見ているとカスミさんから心話が飛んできた。 〈レイ先輩、開会式開始は9時頃と思われます。8時半には応援者の入場も許可されるのでそのつもりで〉 〈了解。ゆーりゃ君に伝えておくね〉 〈ありがとうございます〉  そんな感じで会話は終了した。僕はゆーりゃ君の方に向かってそのことを話す。 「どうしようか? アップとかする?」 「うーん、してもいい気はするけど俺達は確実に午後からだからねぇ、あんまり意味はないかなって」 「そっか、じゃあいいや」  部屋に備え付けられている時計を見ると時刻は8時を指していた。この間、僕は暇すぎる。  ソファで未だ目を瞑っているコハクさんを見て、僕は苦笑する。  コハクさん、開会式が始まるまで寝るつもりだな……?! まぁ、眠たくて本気出せないは洒落にならないから全然いいんだけど。  そうだなぁ。暇を潰すにはアップをしている相手校を見るのが得策だろう。  そう思った僕は椅子から立ち上がるとゆーりゃ君に「ちょっと出るね」といって控室の外に出た。      ◇  外に出て会場に入るとやっぱり他の校の人達はアップをしていた。みんな、やる気満々って感じ。いいと思う。  まぁ僕達は昼からだからアップなんてするわけじゃない。いわゆる『敵情視察』ってやつだ。僕はスタスタと歩いてヘレティック学園の人達がアップをしている場所に着く。  まだストレッチの途中らしくて敵情視察とは呼べないけど僕は彼らをじっと見つめた。 (ん〜、やっぱりあっちの規格外生徒も貧弱なわけないか。魔力は上々……かなぁ?)  そうやって勝手に考察を始める。チラチラと対象者を変えて見てみるけどやっぱり普通ではないなぁ。規格外生徒っぽい。  すると、不意に後ろから肩を叩かれた。  少し反応が遅れてたからかびっくりするけどゆっくりと余裕を持って後ろを振り向く。 「私達の学園に、何か御用でしょうか?」  そう言ったのは少しだけ身長の高い女の子。たぶん、170くらいはあるんじゃないかな。  透き通るように綺麗な白髪のショートボブに、金色の瞳をしている。コハクちゃんとそう変わらない見た目だけどそれよりもしっかりしてそうな雰囲気だった。  というか、確かに今の行動は怪しかったかぁ。反省、反省。 「いや、少し様子を見に来ただけさ。お邪魔したね」  僕はそう言ってまだ話すとこはあると言いたげな女の子を置いて、その場を立ち去る。  敵情視察をできたのかと言ったらうーんって感じだけどまぁ、今年も強いと言うことはわかった。  そんなことを考えているとスピーカーから女性の声が聞こえた。 『これより、一般の方々の入場を許可します』  その言葉と同時にバーッと大勢の人が入ってくる。その学園の生徒や、保護者。教員。様々な人が入っていきその学園の椅子のところまで駆け足で行く。  もちろん、マイティ学園も来ていてうきうきとしているシモン君や、一般の生徒が見えた。  フィールドを囲うように配置されている高所の椅子に次々と人は座り、もうほとんどの椅子が埋まる。さすが、名門校があるだけ規模は多いし見る人も多いなぁ。  フィールドがよく見える高い場所は関係者席らしくてお偉いさんとかが座っている。  さて、このままここにいると注目を浴びちゃうし、先に戻ろう。      ◇  控え室に戻るけど全然みんなの位置は変わってなかった。コハクさんは爆睡してるし、マコトさんはさっきと同じく本を読んでる。アクヒ君だって高速でタイピングをしてるし……。  正直に言ってこれが前回の優勝者で今回の優勝候補には見えないよね。うん。 「ゆーりゃ君」  そう呼ぶとゆーりゃ君はくるっとこっちに向き直った。オッドアイの瞳がキラリと輝いているように見える。 「どうだった?」 「まぁ。今年もヘレティックの規格外生徒は強者そうだね。ま、負ける気はサラサラないけど」 「そう、ありがとう。あ、フィールドとかは異常とかあった?」  そう聞かれてさっきの記憶を戻すけど特にフィールドに異常はなかった。いつもの感じ、って感じ。 「いや、なかった」 「そっか。じゃ、第一試合を見て考えることにしよう」 「そうだね」  ゆーりゃ君と話し終わった後、爆睡を決め込んでいるコハクさんのそばに行く。このまま寝ていても何も問題はないんだけどコハクさんの寝起きってそこまで機嫌はいい方じゃない気がする。  使い魔であるクァクオンも今は席を外しているらしいから機嫌が悪いまま開会式出られるのはちょーっと困る。 「コハクさん、後数分で開会式が始まるよ」 「…………」  うーん、全然起きる気配がない。  まゆをピクッと動かしただけでそこまで表情の変化は見られなかった。本格的に困ったなぁ。どうしよ……。 「……ヒジリ先輩。そーゆー時はこうやってやるんですよ」  スッと後ろに現れたアクヒ君。  あれ、さっきまであんなに集中してパソコンいじってたのに。  バコッ 「…………」 「…………」 「…………」  まってまってまって。今何起きた?  うーん、アクヒ君がパソコンを思いっきりコハクさんにぶつけて……。いや、そこからおかしいな? アクヒ君にとってコハクさんって先輩だよね? あれ?  で、コハクさんが今、ゆらりと起きていて……。やばい、絶対怒ってる。  アクヒ君、何やってんの?! 「アクヒ。先輩の私に敬意というものはねぇのか?」  ゆらりと立ち上がったコハクさんの瞳はギラリと怪しい光を帯びている。それに平然ときているアクヒ君。  修羅場勃発だ。 「ないよ。俺、ホウライが先輩だと思ったことないし。それに起こしてあげたんだから」 「だとしてもパソコンで頭叩くっておかしくない⁈ 頭バグってんじゃないの⁈」  寝起きのはずなのにおっきな声で怒るコハクさん。まぁ、気持ちはわかるんだけどね。 「……起きれたしよくない? あ、ちなみにパソコンはホウライの石頭でも壊れないように頑丈だから」  サラリとコハクさんをいじるアクヒ君。  わーわーわー、今にでもコハクさんがアクヒ君を殴りそうじゃないか。 「石頭じゃないから‼︎ てか、頑丈すぎな⁈ めっちゃ痛いよ⁈」  そう言いながら頭をさすっている。それを見たアクヒ君は全く悪びれてなさそうに言い放った。 「まぁ、そろそろ開会式が始まるから。ギャンギャン吠えてないで行こう?」 「クッ……」  コハクさんは苦虫を噛み潰したような顔をした後「わかった」と言った。  よかった……。みんな、無事で。      ◇ 琥珀「よぉし。私、久々の登場じゃない⁈」 碧呀「自己紹介もしてないのに話し始めるなよ」 琥珀「わー、いつも通り〝氷の王子様〟は冷たいネ〜。アハハハ」 碧呀「なんだ、とうとう本当の馬鹿になったのか……?」 琥珀「ねぇ、やめて。アオ先輩。それはダメ。真顔でマジトーンでそんなこと言わないで‼︎」 碧呀「……。まぁいい。自己紹介始めるぞ」 琥珀「はいは〜い。まぁ、みんな知ってると思うけど、一応ね? どうも、みなさんこんにちは! 蓬莱琥珀でーす」 碧呀「なんでそんなにこなれてんだ……? まぁいい。俺は蛇神碧呀だ。よろしく」 琥珀「その顔で『よろしく』っていうと『夜露死苦』って変換されそうだね」 碧呀「一回殴っていいか?」 琥珀「えぇ〜! 先輩短気だなぁ。まぁ、私に殴るって言っても、当てれないだろうけどねっ☆」 碧呀「(蔑むような目)」 琥珀「アオ先輩、だからその目やめてよォ! ヤダァ!」 碧呀「なぁ、琥珀。お前のその茶番で尺が終わりそうなのだが」 琥珀「え? あ⁈ ホントだ⁈ ごめん、アオ先輩☆」 碧呀「…………はぁ。まぁいい。終わったものは仕方ないからな。今回のお題は次のヤツにパスするか」 琥珀「なんかすごく呆れられた気がする……。まぁ、気のせいか! よし、そこの君。ここまで見てくれてありがとう!」 碧呀「まぁ、次回も楽しみにしておけ」 琥珀「それじゃあ、次回で会おうねっ!」 琥珀「バイバイ〜♪」 碧呀「じゃあな」 琥珀「先輩、合わせてくださいよ」 碧呀「ヤダ。というか琥珀。一回体育館裏に来い」 琥珀「え、やですよ。何するんですか?」 碧呀「……」 琥珀「だんまりは怖いですよ! ねぇ、先輩⁈ あれ、怒ってる⁈ すごく寒いんだけど⁉︎」 碧呀「まぁ、くればわかる」(ニコッ) 琥珀「アオ先輩、その笑顔は怖いですってぇ‼︎」

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第十七,いつも通り

第3話,いや、落ち着けねぇ⁈

「インバリッド‼︎」  第四騎士団に無事到着したミアは、レイヴンと呼ばれる少年に流れ弾が飛んでいるのを見てレイヴンに今か今かとあたる流れ弾に向かう。そして、叫んだ。 ーードガァンッ!  とんでもない爆音がこの場に轟く。魔法訓練場にいる全ての騎士が驚いた様にミア達の方を向いた。 「…………ぇ?」  まだ状況を理解していないレイヴンが驚いた様に後ろを振り返った。  そして、一部始終の光景を見ていたルキフェルとリヒトは目を見開いて、言葉を濁す。 「えっ……と?」  レイヴンはその大きな紫の瞳を見開いてミアを凝視した。いきなり爆音がしたと思ったら少し息切れしている女の子が後ろにいるのだ。普通に驚く。  ミアは「ふぅ」と息を整えるとレイヴンを見て、ニコリと微笑んだ。 「助かってよかったぁ……」  誰にかけた言葉でもない独り言。だけどそれはレイヴンはもちろんのこと、この状況をあっけらかんと見つめるほとんどの騎士の耳に入った。 「は? ん? ……は?」  ルキフェルの頭の中は【?】マークで埋め尽くされていた。いつもは冷静……というかへらへらしているルキフェルの見たことのない動揺っぷり。その場にいた騎士達はミアの魔法とルキフェルの同様っぷりに困惑し、とてつもないくらいに動揺していた。  今この状況で冷静なものなど誰1人として存在しない。 (待て待て待て。落ち着け、俺。……いや、落ち着けねぇ⁉︎ なんだ、今何が起きたんだ⁈)  今までにないほどに困惑し、動揺するルキフェル。チラリと隣のリヒトを見るがリヒトも「は?」と言いたげなポカンとした顔をしていた。  ルキフェルは頭をフル回転させて先程の出来事を思い出す。  レイヴンの話をしている最中、突然かけだしたミア。ミアが向かう方向に目を向ければレイヴンに向かって跳ぶ流れ弾が。  誰か他の騎士が間違って放ってしまった魔法か。なんにせよ、レイヴンに危険が迫っているのは明白だった。そして、その流れ弾に向かって今尚走っているミアが危険なことも。 (あんな魔法、ド素人が当たったらタダじゃ済まないぞ⁈)  ミアの危険を感じ取ったルキフェルは叫んだ。 「おい⁉︎」 「ミアさん⁈」  ルキフェルとリヒトが叫ぶも、ミアは聞く耳を持たずに走り続けていく。そして、レイヴンに向かって跳んでいく流れ弾にピシャリと言い放った。 「インバリッド‼︎」  その瞬間、ルキフェルは何が起きたのかわかってはいるが理解はできなかった。  つまり、目で見てちゃんと確認したけれども、その現実を受け止めることができなかった、ということだ。  流れ弾は耳をつんざく様な轟音を発して弾けるようにして消滅する。その魔法がどの類かは騎士団の隊長を務めるルキフェルはよく知っていた。 ーー無効化魔法。  上級者、それもルキフェルの様に騎士団の隊長クラスではないと使用は不可能とされる高難易度魔法。それをシュヴァリエ家の令嬢がやってのけた。  ルキフェルの経験上、そんなことは有り得ない。  なぜ、あの令嬢があの魔法を知っているのか? なぜそれを実現できるのか?   聞きたいことはいっぱいあったがそれよりも困惑が勝ってしまう。 (あー、もう訳わかんねぇ。……無理だわ、理解すんの)  下手すれば自分と同じ実力を持つかもしれないミアを前にルキフェルの思考は呆気なく放棄された。 「あ、あの……大丈夫ですか?」  遠慮がちに上目遣いで言葉をかけるミア。そんなミアを見てレイヴンは「うっ」と言葉を詰まらせた。 (誰、この人? 誰⁈ てか、さっきの爆音なに⁈ ていうかこの人……)  頭の中でぐるぐると考えを巡らせるレイヴン。だが、一旦その思考を放棄して目の前で上目遣いをするミアを見た。  ふわふわとカールする桃色の髪。真っ赤な瞳。雪のように白い肌。走っていたのか少しだけ息があがっていて、その白い肌が少しだけ赤く染まっている。  女子との交流の少ないレイヴンでも、ミアが美少女なことくらいわかった。 (可愛い……)  率直にそう思い、レイヴンは少し頬を赤らめるもミアの次の言葉で冷静に戻る。 「あ、あの……本当に、大丈夫ですか?」  レイヴンが黙っていたからなのか焦った様に尋ねてきたミア。本当に焦っている様でなにも持っていない手が何をすればいいのかとソワソワしていた。  なぜここまで心配されているのかは全くもってわからないがレイヴンはぎこちなく頷く。 「えっと、はい! 大丈夫……です?」 「……よかったぁ」  へにゃっと気が緩んだ様に微笑んで、その場に座り込んでしまうミアを見下ろしてレイヴンは首を傾げる。  それと同時にこれまで止まっていたルキフェルとリヒトが動き出した。 「ミア‼︎ 大丈夫か⁈」  焦った様子で走ってきて、ミアの肩を触るルキフェル。そんなルキフェルを見て、ミアはぱちくりと目を瞬かせると首を傾げた。 「大丈夫ですよ?」  その「なぜそんなに心配しているの?」みたいな顔にルキフェルは面を喰らう。リヒトも一足遅れてミアのそばに駆けつけて話しかけた。 「本当ですか? なにか、身体に異常は……」  ルキフェルと同じくらいにミアを心配しているらしいリヒトにミアは内心で首を「うん?」と傾げる。 「無いですよ? そんなに負担がかかることはしてませんし……」  その顔を見てリヒトの頭には何個もの疑問が浮かび上がった。  第四騎士団副隊長であるリヒトも無効化魔法は知っている。というか、騎士団の中ではその魔法は有名だ。なにせ、【最強魔法】と謳われる系統魔法の一種なのだから。  リヒトにはその魔法ができないし、できるのはルキフェルや、隊長クラスの騎士だけだ。  それを使用したミアにリヒトはなんともいえない好奇心が湧き上がって仕方がなかった。ただ、ミアは客、もとい見学者。グイグイと話を気く訳にはいかず、その気持ちを胸の奥に押し留める。 (にしても、あの姿は……)  先程、無効化魔法を使ったミアのことを鮮明に思い出す。  その瞳が。言葉が。表情が。これまで女性にほぼ無関心だったリヒトの好奇心を大きく揺すぶった。 「……ミア」 「はい?」 「……ついてこい。リヒト、お前もだ」  渋面を作りながらそうとだけ呟くとミアの手を引いて強引に立ち上がらせたルキフェル。その手をがっしりと掴んで、半ば強引に室内へと連れていく。  リヒトも、聞きたいことは山ほどあったのでルキフェルとミアの後ろについていった。 「なんだったんだ……?」  そこに残されたレイヴンや、他の騎士は呆然と立ち尽くした。  レイヴンが先程ミアに助けてもらったと知るのはもう少し後のお話。      ◇ (う、う〜ん。なんでこんなところに連れてこられたんだろう?)  レイヴンへと向かった流れ弾を止めて、なぜかとてつもないくらいに困惑され、動揺され、心配され……。  挙げ句の果てにはルキフェルに知らない部屋に連れてこられてソファに座る様に言われて……。正直言って、何が何だかよくわからなかった。  ミアは必死に考えるがなぜここに連れてこられたのかの理由がわからず首を傾げる。  リヒトは紅茶を作ってくると言って席を外しているのでこの場にいるのはミアとルキフェルだけ。  ルキフェルはずーっとなにやら渋い顔をして黙っている。そのなんとも言えない緊張感がミアにはとても怖く感じた。 (私、なにかやっちゃいけないこと、やったのかな⁈ もしかして、あの流れ弾は訓練の一つだった……とか? そうだったらどうしよう)  脳内でギャン泣きしそうになる自分を必死に堪え、なんとかこの状況を耐え続けるミア。程なくして紅茶を持ってきたリヒトがやってきてミアは少しだけ息を吐く。  綺麗に並べられた紅茶のティーカップを取り、一口だけ飲むミア。 (あ、美味しい……)  なんとも言えない安心感に包まれ、ミアは頬の力を少し緩めて紅茶を飲んだ。ミアがティーカップを机に置いたことでルキフェルが口を開く。 「……で。さっきの魔法はなんだ、ミア?」 「? さっきの魔法って……あぁ、【インバリッド】ですか?」 「あぁ。なぜ、お前が無効化魔法を知っている?」  ルキフェルに詮索されるような瞳を向けられるがミアはまだきょとんとしている。それにますます眉間にシワがよってきたルキフェル。リヒトは無表情のままだ。 「えっと、それ、無効化魔法って言うんですか……ね?」      ◇  はい、どうもみなさんおはよーごさいますっ。苺だいふくです☆  さて、今回は……というか、今日の朝は軽く5キロ走ってきたんで足が鉛の様に重いですね、ハイ。疲れたぁ……。  さ、じゃあ本編のことについてお話ししますかぁ。  とりあえず、〝最強〟要素が入れられたのは嬉しいです。私は腐っても絶対にファンタジーが大好きなので。なにがなんでもファンタジーチックな世界観で描いちゃうんですよね。たぶん、これからもこの癖は治らないでしょう!⭐️  あ、あと本編とは違う話になるのですがわたくし、☆と⭐️を使い分けれる様になりましたっ。褒めて褒めて〜((いや、何を?  ま、2週間に一度とかそんくらいのペースになってますが次回も見てくれると嬉しいです。  で、今回の表紙はレイヴン君。もっと幼い感じにしたかったんですけどまぁいいですよね、カッコいいし!  まぁ、次回の作品でまたお会いしましょう!バイバイ〜♬

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第3話,いや、落ち着けねぇ⁈

第5話,いいですか?

 その時だった。   バサバサッ  という音と共にボク達に影がかかる。そして、後ろからこんな声が聞こえた。 「あー。新しいコ、みーつけたっ❤︎」 ◆◇◆◇◆    ゆったりと、そう語りかけてきた後ろの人。ボクは一瞬、ビクッと肩を震わせて後ろを振り向いた。 「ばあっ❤︎」 「ぅわっ?」  思った以上に至近距離にいた男の子にボクは驚いて変な奇声を上げながら3歩くらい後ろにバックする。  そんなボクを見てくすくすと可笑しそうに笑う男の子。ボクはその男の子を見て、少しゾッとした。  あの笑い方が、どこか兄さんに似てる気がするから。 「おい、ソラ。トキに迷惑かけちゃダメ」  一段と低くなった声で注意してくれたルアさんを見て、男の子は面白くなさそうに唇を尖らせた。 「えぇ? 反応面白いからいいじゃ〜んって思ったんだけど〜?」 「トキにはしないで。するなら、俺とか、シノとかにすればいいじゃん」 「え、ヤダよ。2人、反応薄いんだもん」  元の口調に戻ったルアさんの言葉をあっさりと躱した男の子をボクはジッと見つめる。  キラキラと輝きを増している銀髪の髪に、ルアさんと同じくらいにキラリと妖艶な雰囲気を纏う金色の瞳。ルアさんとおんなじくらいの体格で肌は白め。だけど、背中から綺麗な純白の羽根が生えている事が、少し驚きだった。  天使族……かな?  こてんと首を傾げながら考えてみるけど答えは浮かばない。  ろくに勉強をしていないボクがわかるわけないよねって話だ。  話が終わったのか2人がボクの近くにやってくる。ルアさんが無言の圧で銀髪の男の子を見つめると、その子は「はいはい」とボクの前にやってくる。 「俺はソラって言うんだ〜。さっきはごめんねぇ? つい反応が面白くって」 「本当にごめんね、悪意はさほどないから許してやってほしい」  ソラと話した男の子がゆる〜く謝ってきたのにルアさんがフォローを入れる。ボクは少し戸惑いながらも「よ、よろしくお願いします……」と頭を下げた。 「そぉいえば〜、ずっとこの羽見てる様だけど、俺は天使族なんかじゃないよぉ?」  ニコニコと笑いながら自分の羽根を指差すソラさん。  天使族じゃない? じゃあ、何族……? 「俺は堕天使っていう種族なんだぁ。いうならば、天使の落ちこぼれと言っても過言ではないねぇ」  くすくすと笑うソラさんだけど、いってることは少し悲しいものだ。『天使の落ちこぼれ』って……ボクみたいに、無能扱いされてたってこと……? でも、ソラさんからはそんな色は感じ取られないや。なんでたろう……? 「まぁ、そんなことはどーでもいいんだけどねぇ?」  そういって「よいしょ」とソラさんは羽根を引っ込める。  ……あ、それって収納可能なんだ……。 「さ〜ってと。俺もついていこーっと」 「? ソラはまだ仕事があるんじゃないの?」 「ん〜? 終わったようなぁ、終わってないようなぁ感じ〜」 「……」  あ、ルアさんの雰囲気が少し重くなった。  ソラさんは相変わらずふわふわしてるし。 「まぁ、いいや。トキ、中を案内するよ」  ルアさんは考えるのをやめたように肩をすくめると、ボクを別荘の中に案内してくれる。  ソラさんがボクより前にスッと出てきて、その重そうな扉を軽く開けた。 「はぁい、入って〜」 「お、おじゃまし……ます?」  なぜか疑問符を浮かべながら肩身を狭めて中に入る。そんなボクを見て、 「そんな畏まらなくても大丈夫だよ」  とルアさんが優しく声をかけてくれた。  中に案内されて、ボクは驚きを隠しきれなかった。  待って……。すごい綺麗……。  赤い絨毯は踏み心地がいいし、窓際とかに置いてある花瓶には生き生きとした花が植えてある。何よりも驚いたのは天井にあるシャンデリアで、これが一から作ったのだとは思えなかった。 「すご……」 「ふふっ、そうでしょぉ?」  ボクの呟きにソラさんがニコー❤︎という効果音がつきそうなほどに微笑み、自慢げに胸を張る。ボクは、そんなソラさんを見て軽く微笑んだ。  って、あれ? なんでボク、こんなに笑えてるんだろう……。笑ったことなんて、あの家にいた時は一回もなかったのに。 「さ、客室……というか、トキの部屋になるところを案内するよ」 「えっ? 部屋……」  思いがけない言葉に目を丸くしてしまう。ボク専用の部屋ってこと……? なんで? 「なんでそんなに驚いてるの?」 「え、だって、ボクは部屋が欲しいだなんて一言も言ってませんし……。なにより、ボクなんかに部屋なんて用意してもらわなくてもーー」 「トキはさ、もっと自分を大切にしたほうがいいよ」 「えっ……?」  ルアさんがそう言ってボクの言葉を遮る。ルアさんは、これでもかっていうくらい真剣な顔をしていて。その金色の瞳にボクの意識は吸い取られそうになる。  ルアさんは、少し言いづらそうに口を開けては閉めてを繰り返して、意を決した様に話してくれた。 「ルアの頬の傷も。お腹にあった傷も。背中や腕や足にあった傷も。俺はなんなのかは知らない。全て、治したし今更問うこともしない」  え? なんで知ってるの……? 「トキがどんな家庭状況で育ってきたのかは俺は知らないけど。俺が口出すことじゃないんだろうけど。でも、それでも、トキを傷つけた輩がいるのだけはわかる。トキは他人だ。けれども、キースが君を助けた時点でもう君はボクの仲間だ。異論は、許さない」  ジッと見定める様に見つめられてボクは居心地の悪さを感じる。  ソラさんやキース君のあの金色の瞳も。シノさんの淡い緑の瞳も。どれも綺麗で素敵で、不思議だとは思っていたけれど、ルアさんだけの瞳はなにかが違っていた。そんな気がする。  ボクはゴクリと生唾を飲み込んだ。「仲間だ」と言ってくれたのはなによりも嬉しいけれど、それでも、次に何を言われるのかわかったものじゃない。  それくらい、ルアさんは鬼気迫る雰囲気を発していた。 「……とまぁ『異論は許さない』とか言っておきながらこう言うのもなんだけど、ここにいたいかいたくないかはトキが決めて貰えばいい。いたいというのであれば、俺達はトキを仲間として一緒にいよう。いたくないというのであれば森の入口までは送るつもりだよ。ただ、俺はここにいて欲しいって思うかな。トキをこのまま帰らせたら、絶対に悪いことが起きると思うから」  そう言って切なそうに微笑んだルアさんの顔は美しかった。  ほぼ、見ず知らずの人だけど。この数時間を通して、ボクはあの家族よりもこの人達と一緒にいたいと感じていた。  数年も時を過ごした家族よりもルアさん達の方が信用できるってなんか笑える話だけどボクのこれをきっと本心で、これからも揺るがないと思う。  ボクはルアさんの手を、ぎこちない動作でとった。 「ん? トキ、どうしーー」 「ボク、は。ルアさん達といたい、です」  ルアさんの言葉を遮って本当の気持ちを口にすると、ルアさんは驚いた様に目を丸くした。さっきまでふわふわとしていたソラさんもお目目がまんまるだ。 「まだ、貴方達のことはよく知らないけど…。それでも、家族よりは、信用できる。安心……できるんです。だから、一緒にいても、いいですか?」  そういうと、ルアさんはぽかんと口を開けてから恥ずかしそうにぽそっと呟いた。 「うん、いいよ」 「ありがとう、ございます」 「いや、お礼とかいらないから! さ、部屋に行こう」  部屋へと行く途中、ソラさんが「トキ可愛かったよぉ」とからかってきたので、ボクは反応に困ってしまった。  あたふたしてるとソラさんはくすくすと笑って『おもちゃみっけ❤︎』とでも言いたそうな顔になってる気がしてパッと目を背けた。 「ここが今日からトキの部屋だよ」  一階の玄関から入って右側。端から3番目の場所にボクは案内された。 「隣にはソラ。前には俺がいるよ。で、俺の隣には『カイ』って人がいるんだ。……今は見当たらないから、あとで話に行けばいいよ」  ルアさんは手短に話すとドアを開けて、ボクを案内してくれる。  案内された部屋は、前まで使っていた屋根裏部屋よりも数十倍大きくて、高い天井に大きな窓。大きなベッドにタンスというシンプルだけれどもボクにはとってもありがたい設備が施されていた。 「え、こんなとこ……もらっちゃっていいんですか?」 「うん、もちろん。だってもうトキは仲間だからね」  そう言って微笑んでくれたルアさんに感謝してボクは部屋に恐る恐る入る。ベッドに体重をかければギシ…と沈んで、横になってみればふわふわであったかくて気持ちいい。それが癖になってしまったボクは2人の前でごろんごろんと何回も寝返りを打ってしまった。 「なんか、ネコみたい」  ソラさんのその言葉にピクッと反応してボクは起き上がる。ルアさんがぼさぼさになったボクの毛……というか、髪の毛を整理してくれた。 「言ってなかったけど女子は左側にいるから。シノとかに用があったら左側に行けばわかるよ。もしいなかったら、作業場にいると思うから。……そうだね、そっちも行くか」 「そこならサラもいるかもねぇ」 「それはそれで都合がいいでしょ」 「?」  何やら知らない人の会話をしている2人にボクは「?」マークが浮かんだが部屋を出る2人について行くことにした。      ◇  どうも、みなさんこんにちは! 寝不足気味な苺だいふくです。  いやぁね、私最近の平均睡眠時間が6時間半〜7時間で。「長いなぁ」って思う人もいれば「短くね?」って思う人もいる様な時間帯なんですけど私にとっては短いんですよ。  頑張っても7時間半は寝ておきたいんですね。ロングスリーパーとまではいきませんがショートスリーパーではないので。本当に寝不足気味でクマがヤバい。なきぶくろ? が大きいのでなんか誤魔化せちゃってますけど普通にマズイ。  なんで、今日は早めに寝たいと思います。  さて、本編に触れますか。今回はソラ君を登場させました。どうだったでしょうか? 前作からこの子描くの楽しみだったんですよね、こういう気分屋でのんびりやな人描くの楽しいんで。  んで、今回の表紙はまぁソラ君で〜す。  んー、もう話すこともないんでこれで終わりにしますか〜。  それじゃ、次の作品で会いましょう。バイバイ〜☆

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第5話,いいですか?

偉いね

 生きてて偉いね。  そう言われることは少ないかもしれない。  でもね、今この時。これを見ているってことは生きているってことで。  それがどれだけすごいのか、わかる?  命がどれだけ尊いもので、素敵なものなのか、知らない人がいるかもしれない。  もっと頑張れよ、とか。生きてる価値なんてない、とか。死ね、とか。  そんなことなんて耳に入れないでさ、自分が生きてることを褒めてあげてよ。  歩いている時に、上からものが降ってくるかもしれない。  寝ている最中に、運悪く変なところに頭をぶつけるかもしれない。  家にある包丁で重傷を負うかもしれない。  来た電車に突っ込んでいってしまうかもしれない。  でも、それをしなかったのは、君が生きたいからで。  不幸に見舞われなかったのは奇跡とも言えて。  〝生〟は〝死〟と紙一重で。    間違った選択をして、死ぬかもしれないし、生きるかもしれない。  運だけで命拾いしたり、運悪く死ぬかもしれない。  そんな中、生きているあなたは偉くて、素敵。  こんなこと、一生言われないかもしれないけど、私は君に言うよ。 「生きててくれてありがとう」  あなたが生きていることは、〝奇跡〟なんだよ。ってね?     

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偉いね

第四話,神殿?

それを見つめると、それはとても綺麗な色のした蝶だった。 「……蝶……?」  僕はそう、小さく言葉を漏らした。  そして、道の端にチラリと覗くものに首を傾げた。 (いば、ら……? なんでこんなところに……?) 〈登場人物〉 ソア・スフォルツア      ♂15歳(高1) ロウバイ・エナミ・ラメン   ♂  ⁑フィリア・ジアター キオ・サーオツェル      ♂ ヴィルス・サータ・リサシティ ♂ クエン・ラブラド・ライト   ♀  ⁑ヒイラ ゴア・ハーツ         ♂ ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎  視界の端に映ったこの場にはそぐわないモノに僕は静かに首を傾げた。  先程の綺麗な蝶といい、このいばらはなんだろう、としゃがみ込む。そんな僕を見て、ゴアが後ろで首を傾げる気配がした。 「オヤァ? そこの男のコはもうお疲れかイ?」  煽られている自覚はあったがそんなことは無視して僕は目の前にあるいばらをジッと見つめた。 (さっきまでこんないばらはなかったし、あまり見たことのないいばらだ。呪いかなにかか……? いや、だとしてもこんな所に……。そもそもココがどこか分からないから何もわからないのだけれども)  自分で考え、否定して、また考え……を繰り返すがしっくりくる結論には至らず、結局首を傾げることしかできない。 「わっ、女の子だ!」  ぐるんっと首を動かして、クエンの方を向いた。僕の目はたぶん、獲物を捉える肉食動物みたいな目をしていると思う。なんか、めっちゃ瞳孔が開いてる気がするんだ。  理由は簡単。そこまで近くにいたのに、僕が気配を察知できなかったから。  クエンの方を見れば、クエンはニコニコの笑顔で手を差し伸べているとこだった。クエンが邪魔で、誰に手を差し出しているのかは見えないが相手がひどく怯えていたのはなんとなくわかった。 「どーしたの? 迷子……? なわけないかぁ。私より年上っぽいもんねっ」  そう言って「あはっ」と笑ったクエン。相変わらず、なぜあんな笑顔でいられるのかはわからない。  僕は気になってひょっこりと顔を出した。 「!」  そこには、小さな少女がいた。  150くらいの背丈に少しカールしている長い黒髪。瞳の色は灰色で、そこにはおびえの色が宿っていた。  でも、なんとなくわかる。クエンよりは年上だって。 「えっと、あの、その……」  僕らを見て、動揺を隠しきれていない少女。眉をハの字にして、困っているようにも見える。そんな少女にクエンは、 「だいじょーぶ。ゆっくりでいーよー」  と話しかけた。その言葉に少しだけ落ち着いたのか、少女はゆっくりと口を開く。 「わたし、リティ。目的、地。あっち……?」  率直な感想として、だいぶなカタコトだった。  それでも、意図は読み取れる。  リティと名乗るその少女の周りには先程僕の周りを飛んだ蝶達がいる。地面にはいばらのようなものが何個もあった。  ただ、それには触れずにリティの方を僕は向く。 「目的地はそろそろ着くと思うよ、一緒に行く?」  そう聞くと、リティは困ったように眉をハの字にした。そのことに僕が首を傾げていると、クエンがすかさず 「私達とおんなじ人だもんね〜、さ、行くよぉ」  と言ってリティの小さな手を引いた。リティは半ば引っ張られるような形で僕達と同行することになった。  これで、だいぶな人数が一緒に同行することになった。  僕、ロウバイ、キオ。ヴィルスにクエンにゴア。そして、リティ。系7人の初対面がここまで一緒に行動するのは普通あり得ないと思う。  それが実現しているのは、どれもこれもあの空からの声のせいだ。果たして、あの人達は僕に何をやらせたかったのか? それは、未だにわからない。      ◇ 「ついた〜‼︎」  やっと。そう、やっと着いた。『目的地』に。  明かりを見つけてはや数十分。樹木に隠れられるようにして立っていた神殿のようなものを僕達は見つけた。  たぶん、というか確実にコレが目的地なのだろう。  その神殿は白を基調とした壁面に、先の尖った屋根。大きな門に、大きなガラス窓。そこからは、少しだけ灯りが漏れ出していた。 「だいぶ時間がかかったな。オレは疲れた」 「いヤァ、ここまでかかるとは思わなかったねェ?」  ヴィルスとロウバイがそんなことを呟きながら神殿の方に進む。よく見ると、神殿の前に2つの人影があった。   ヴィルスとロウバイ。そして、僕の後ろにいるみんなもそれに気づいたらしく警戒し始める。  2つの人影もこちらに気づいたらしくこちらを見ながら首を傾げた。そして、1人がこっちに来る。 「やぁ、ごきげんよう。きみ達は……?」  綺麗にお辞儀をして話しかけてきたのは長身の男の子。月の光に照らされる銀髪の髪に紫と緑のオッドアイが特徴だ。  彼の後ろを見ると、そこには下ろしている茶髪に黒い瞳の少女がいた。その子は、彼よりも警戒心を強め、こちらを伺うように見ている。まるで、僕達に怯えているようだった。 「こんばんわ。僕達は目的地を目指してやってきた。君も、ココが目的?」  そう聞くと、彼はコクリと頷いた。 「ああ。おれもココが目的だ。……おれはニゴ。ニゴ・エーゼント。目的が一緒なら安心だ。敵ではないだろうし」 「そうだね。僕はソア、君の後ろにいる子は……?」  そう言ってニゴの少し後ろにぽつんと立っている彼女に目を向ける。  すると、彼女はビクッと肩を振るわせた。本当に、怯えているみたいだ。 「……彼女はエマ。おれと同じ目的だったからさっきまで一緒に行動してたんだ」   軽く説明を入れるニゴに感謝しつつ、僕はエマの方に近寄る。エマはよく見ると微かに震えているようにさえ見えた。その震えはどこからきているものか?  僕? それとも、ゴアとか? いや、だとしてもここまで怯える必要はないかな。 「こんばんわ。エマ」 「……こんばん、わ」  僕はそれ以上エマに何をいうわけでもなくエマの後ろにある大きな扉の取っ手に手をかけた。  金色の取っ手は心なしかキラキラ輝いているようにさえ見える。純白の扉には見たことのない紋様があり、少しだけ好奇心をくすぐった。 「開けるよ」  後ろにいる人達にそう小さく伝えると僕はグッと力を入れて扉を開いた。  だが、 「……?」  中は、何もなかった。  そう。なにも、なーんにもなかった。  ただただ、白い空間が広がっているだけで樹木も、あかりも、何も見当たらない。なぜ、この神殿の窓から灯りが差し込んでいるのかの理由がつかなかった。窓も見当たらないし……本当に何もない。  僕は不審に思い、首を傾げる。すると、後ろにいるクエンがはしゃいだように声を上げた。 「わぁっ、本当になんもないじゃーん!」  「ふふっ」と笑うようにそう言いながらクエンは中に入った。すると、    シュッ  クエンは煙に巻かれたように消えた。僕は驚いて目を見開くが中にクエンはいない。それに驚いているのは後ろにいるみんなも例外ではなかった。 「なんだァ? 人が消えたァ……?」  ゴアが不審そうにそう呟く。やはり、何度見ても二つの頭が首を傾げるのはおかしくて仕方なかった。 「まァ、入るか」  そう言いながらゴアはスッと足を踏み入れる。すると、またクエンと同じようにゴアは煙に巻かれたように消えた。  あー、もう意味がわからない。  僕は盛大に首を傾げながら後ろを振り向く。全員訳がわからなと言った感じに首を傾げたり、眉を下げたりと様々な反応をしていた。そして、不意にニゴが大きな声で言った。 「たぶん、どこかに繋がっているんだろう。入ろう!」  そして、その言葉通りにニゴは中へ入る。その後ろにロウバイもついていった。やっぱり2人とも消えてしまって僕は「不思議」とか「可笑しい」とかそんな言葉よりも「気になる」という好奇心が勝ってしまって足が勝手に動いていた。  そして、僕も中へと入る。  すると、少し眩しい光が僕を包んで…… ードコかに転移させられた。      ◇  眩しい光が収まり、暖かい光が僕を包む。僕はうっすらと目を開けた。  すると、見慣れない真っ白な壁や、白い花瓶に花が生けてあるのが見えた。 「ここ……は……」  少しクラクラする頭でそう考え、あたりを見回す。真っ白な壁に、天井。天井には暖かい光を持ったシーリングファンがゆっくりと回っていた。壁にはよくわからない絵画が何個か取り付けられており、そのどれもが僕達の背丈を上回る大きな絵画だった。  今、僕がいるのはリビングみたいなもののようで長ーい机に15席くらいの椅子が置いてあった。リビングから見えるところにキッチンみたいなものがあり、一軒家の構造だなと感じる。  だけど、机もあんなに長いことも、椅子の数があんなにあるのも可笑しい。絵画もよくわからないものばかりだし、少しズレた一軒家だと思った。  机と少し離れたところには長い白のソファに大画面のテレビがある。娯楽用か何かかと思った。  で、そこに先に入ったクエン、ゴア、ニゴ、ロウバイ……。そして、もう1人の人がいた。どうやら、話し合ってるようだ。 「ね〜、ね〜。君は誰? なんでここにいたの?」  クエンが興味津々に男の子に詰め寄る。その子は、なんか……いろんな要素が詰め込まれたような見た目をしていた。  いや、別に貶しているわけではない。それしか、言葉が見つからなかっただけだ。  髪の毛の半分が灰色、半分が茶色の少しボサボサな髪で肌は透けるように白く、スタイルは良さげ。一瞬女の子にも見えたが雰囲気的には男の子なのかなぁって思う。で、袖に矢印のマークのついた灰色のコートを羽織っていて、真っ白なTシャツに真っ黒なズボンを履いており、耳には音符のイヤリングをつけている。  だいぶ情報量の多い見た目をしているが、なによりも身長が低いのも少し驚いた。  リティとそう変わらない148センチくらいの身長。その子の周りにいる人達が大きいこともあってかすごく小さく見えてしまった。 「もしかして、君がさっきの神の声……?」  ロウバイも疑わしそうな目を男の子に向けたが男の子は不意にニコッと笑った。 「違う。オレは集められた側や。お前らとおんなじ。そうだなぁ……名前くらいは言ってもいいやろ。オレは〝レム・ルイサイト〟」  レムと話したその子には警戒の気配が感じとれた。愛想よく笑ってはくれたが全然僕らを信用しているようには見えない。  というか、避けてるし……警戒してるし、嫌悪感すら見える。まるで、人間そのものが嫌いだというように。 「? そっちも自己紹介するんじゃないの?」  コテンと首を傾げてこちらを疑わしそうに見るレムの言葉に応じて、僕達は自己紹介した。少し離れていた僕の名前もきちんと聞いてきたのできちんと応じる。 「それで、集められた側ってことは、まだココがなんなのかわからないってこと?」 「そう。いち早くココについただけであってなーんもわからない。少し中は見たんやけどねぇ。何もわからんかった」  まじか……。じゃあ、本当にここはどこだ……?  そんなことを考えているとエマとリティがこの部屋に入ってきた。そして、少しするキオとヴィルスそして、知らない人達が2人、入ってきた。      ◆  はいはーい、こんにちはぁ。   いきなりのアップデートに驚いている苺だいふくでーす♬  最初まではちゃんと使えたんですけどねぇ。途中から画面がガッガタになってしまったのでメモ機能を使っております。  さて、今回はドバンッとキャラを登場させました。勘づく方も多いと思いますが次には全キャラ投稿です。  あ、今回はですねぇ。キオ君が表紙です。我ながら頑張りました。でも、羽の場所がおかしかったり耳が羽にできなかったのは無念。どれだけやってもできなかったので諦めました。((オイ  さ、話すこともこんくらいかな。次回も見てくれると嬉しいです。  それじゃあ、次回に会いましょ〜。バイバイ〜♪  

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第四話,神殿?