湊星浩夜
78 件の小説湊星浩夜
どうも!みなせです!! 他ジャンルの小説を書きます! 沢山観てくれるとうれしいな! 初作▶︎惨禍乃夜(ホラー) 次作▶︎事故旅館(ホラー) 三次作▶︎根の国(ホラー)
天才
僕は三十歳の今、Barでピアニストをしている。 この三十年間、音楽に膨大な時間を尽くし、気が狂う程 練習を積み重ねてきた。 産まれる前から両親にクラシックを聴かされ、生後は 英才教育を受けさせられた。 親は会社を受け継がせる野望と、芸術家として成功させる 野望の両方を押し付けてきた。 思春期には反抗したものの、それまでの努力を無駄に するわけにもいかず音楽と勉強を無心で続けた。 こういう完璧な人間は何て言われると思う? 『天才でいいね』 羨ましいと思われて当然だ。 しかし心のどこかでは亀裂が着々と広がっていた。 結局親の理想通りに生きたが親の基準は到底満たせず、 そのまま社会人になり、大手企業に就職した。 音楽は切り捨て、ひたすら仕事で成果を出そうと尽力した。 しかし親の言いなりに生きてきた自分には目標も何も なく、結局続けられずに辞めた。 親は心底失望し、家族を失った。 そこでピアノを始めた。 それまでの25年分の経験値があったからすぐに弾けた。 コンサートを開いたり、テレビに出たり、それなりに 楽しんだし知名度も上がった。 しかし世間はまた僕をこう言った。 『天才で羨ましい』と。 他人からすれば、たった数年でピアノで実績を残せる 僕が羨ましかったのだ。 友人やSNSで虐められるようになった。 幼稚園から孤立し虐められていた自分にとって、慣れた 事のように感じたが本当は辛かったのだろう。 世間から誹謗中傷を受け、居場所を失った気がした。 『努力もしないで何でも出来るってずるい。』 なんて言われた時には息が詰まりそうになった。 どこに行っても、誰と出会っても言われる言葉は ずっと同じだった。 親の言いなりに生きてきて、それなのに親を失望させて 破門になって、世間からも除け者にされて、近付いて きた友達も悉く離れていった。 寂しかった。天才でいる事が苦しかった。 普通でありたかった。 完璧で居続けるのが辛かった。 せめて、ただ一言、 『頑張ったね』と言われたかった。 そんな天才という言葉に苦しみ苛立ち忌み嫌った、 あるひとりの男の子の物語…。
十年後の私へ
20代はあまりにも苦しかった。 詐欺に遭って多額の借金を得たこと。 鬱になって会社をクビになったこと。 その先で友達が居なくなったこと。 彼女が突然の失踪を遂げたこと。 そして、余命10年と宣告されたこと。 ドラマの様な話だけど全て実際に起きたこと。 正直未来が見えない。 何も残せず誰にも必要とされず、暗闇で死んでゆく事が 怖くなって、最近は夜も眠れない。 後悔だけが心を埋め尽くす。 だから10年後の自分に手紙を残すことにした。 『十年後の私へ 生きていますか? 借金は返せましたか? 何かこの世界に遺すことはできましたか? 友達はできましたか? 失踪した彼女は元気で暮らしていますか? その人生に、悔いはありませんか? 孤独に死ぬ事だけが怖いです。 どうか生きた証を残していてくれたら嬉しいです。 二〇二六年の私より』 この手紙を、未来の私に向けて遺す事にした。
水占い
「ねぇ、水占いって知ってる?」 学校で友達に訊かれた。 「知らないなぁ。」 私はそう答える。 「満月の夜に独りでトイレに入って器に水を張るんだ。 そして、カミソリを口に咥えて水を覗くと、未来の 運命の人が見えるんだって」 「そんな噂私は信じないよー!」 「でも彼氏と将来もずっと一緒に居たいでしょ?」 「いやまぁそうだけど…。」 実際にクラスメイトが何人か水占いをして、運命の 人を見たと言うのだ。 私は信じなかったが、心のどこかで彼氏への不安もあった。 その夜。 「いや、まぁ嘘だと思うけどやる価値はあるかなぁ」 私は好奇心に負けて水占いをする事にした。 満月の夜、私は支度をして学校に忍び込んだ。 そしてトイレに行った私は桶に水を入れた。 私はカミソリを口に咥えて水を覗こうとした。 プルルルルル!!! ちょうど水を除いた所で友達から電話だ。 「ねぇ、注意だけど、カミソリは絶対に落としたらダメ!」 そう言われた時、私の目前には運命の人が見えていた。 (えっ、誰この人…!!) そう思った時には既に口に咥えていたカミソリは 水飛沫を上げて水面に落ちていた。 「あ!落としちゃったー。ねぇ、落としたら何って?」 「…私知らない!」 友達は電話を切ってしまった。 それから十年、私は事務員として働いていた。 「結局あの彼氏とは卒業前に別れた。運命の人よ 早く私の前に現れて!!」 中々運命の人と出逢えない。 そんな事を思っていると、向かいから歩いてくる人と ぶつかってしまった。 「あっごめんなさい。」 あ、この人じゃないな。私はそう思った。 その人は明らかに普通じゃない。 私は過ぎ去ろうとした。 しかし男は私の手を強く掴んだ。 「何ですか!謝ったじゃないですか!!」 振り返るとその男はマスクを外した。 その顔は、ズタズタにされて見るに堪えない姿だった。 「きゃあ!!」 私は逃げようとしたが男は手を離さない。 「離して!痛い!!」 私は必死に手を振り解こうとする。 しかし男は頑固として離さない。 それどころか執念のような物をひたひたと感じる。 そして男は遂に口を開いた。 「…よくも俺の顔をズタズタにしてくれたな!」 その男をよく見ると、水面に浮かんだあの顔だった。 しかし面影は殆ど残っていない。 「あ…、あなたが…、そんなわけない…!!」 私は涙ぐみながら言い返した。 「お前がカミソリを落としたせいで!俺の顔はこの様だ! お陰で十年、生き地獄だったよ。」 私は悟った。 あの日友達が言おうとしたのはこの事かと! 「ご…ごめんなさい…。」 「お前だけは赦さない。」 突っかかる様に言い返してきた男の左手には包丁があった。 「や、やめて!!」 「お前が悪いんだ。同じ目に遭えばいい。」 男は刃を私目掛けて振り下ろした。 それからの記憶はない。 次に目が覚めた時には病院にいた。 「あぁ、目覚めた!目覚めたわ!!」 母が必死に看護師を呼びに行った。 そして看護師と医師、そして両親が集まった。 「非常に伝え辛いんですが…、」 医師が口を開く。両親は泣いている。 「貴方は男に何度も何度も切り付けられた後、 手足を切断されました。」 「…え?だって感覚はある…」 私は目線を体に向けた。 手足は無かった。 向かいにある鏡に写っている私は、まるで怪物だった…。 水占い。 実際に存在するらしい。 貴方はそれでも運命の人を知りたいですか?
第三章二十二話 裏切り“”
大和「お前どうして…」 大和の腹部を剣で貫いたのは、なんと優太だった! 八神と隻眼も驚くように見ている。 八神「優太!!何をしている!!」 隻眼「何でこんなこと…!」 大太郎法師は見下して笑っている。 優太「ごめんねぇ皆。実は僕、人間じゃないんだ。」 大和「なんだと!?」 優太「僕…、いや、俺は八大龍王が一人、徳叉迦だ。」 八神「いや、でも修学旅行の途中に根の国に来た所を…」 優太「俺は嫁、鬼子母神が神の子を産む為に魂を集めて いた。そこに偶然お前達が現れたから修学旅行生に 扮して優太として仲間になったのだ。」 信じられない。三人はそう思っていた。 大和「でも何のために俺達に混ざった?」 優太「お前だよ。大和。お前の黄金の血が目的だ。」 隻眼「まて、お前じゃあ唯が死んだ時何してた?」 優太は不吉な笑顔を浮かべる。 優太「あぁ、あれか。喰ったよ。」 八神「なんだと!?」 優太「お前らおかしいと思わなかったか?俺が居ない時に 敵が居ないのも、俺が喰ってたからだよ。」 大太郎法師「同胞喰いも力になるからな。」 優太「そうだ。まぁ大した力にはならないがな。 そこでだ。大和の黄金の血を奪う機会を伺っていたわけだ。」 大和「…俺の血が何になる。」 優太「お前の血は卑弥呼から継がれし穢れなき血。 その血があれば龍王で最強になれるのだ。」 八神「そんな凄いのか。」 優太「ただ、鬼子母神が産む千一人目の神の子が持つ 魔障の能力が必要だ。その力は世界の破滅どころか 怪を人間界へ送る事も可能だ。 ただ、神の子を産むのに黄金の血がどうしても必要だった。 大和「それで俺達に近付いたって訳か。」 優太「ああ。大太郎法師のお陰だよ。ありがとう」 大太郎法師「我は楽しませて貰った。あとは自由にしろ」 優太「あ?何を言ってる?」 気付けば大太郎法師は半分に斬り落とされていた! 大太郎法師「何!!?お前恩を仇で返す気か!」 優太「お前の魂でも少しは役になつだろうな。」 龍王の力を解放した優太は空間を操る。 優太「じゃあな、お前らも苦しませず殺してやるよ。」 そして八神、大和、隻眼も息途絶えてしまった。 優太「…どいつもこいつも雑魚いな。」 優太は一人歩き始めた。 グサッ…!! 優太「?なんだこれは。」 優太の背中に見た事の無い剣が刺さっている。 「卑弥呼とスサノオはかつて対比して存在していた。 卑弥呼から授かった神獣鏡、そしてスサノオから 授かった草薙剣。それは日本で最大の武器と化す。」 優太「神刀叢雨…か。」 大和「そうだ。叢雨は死神を司る。お陰で蘇ったよ」 優太「厄介な野郎だな。だが黄金の血はもう無いだろ」 大和「そんな物要らない。それより自分の体を心配したら?」 優太「は?」 優太に刺さっている叢雨が急に優太の生命エネルギーを 吸い取った! 優太「お前…、絶対に許さない…」 そう言い残して優太は塵となった。 大和「お前達、救ってやるから待ってろ。」 そして大和は叢雨の力で四人を生き返らせた。 八神「…生き返ったのか…?」 隻眼「大和、お前がやったのか。」 大和「そうだよ。良かった。」 沖田「優太が敵だったなんて信じられないよ。」 遥「私は気付いていた。でも確信は出来なかった。」 隻眼「気付いていたのか!」 遥「うん、だって不自然な言動が多かったから。」 八神「そうか。残念だが助かって良かった。」 大和「今回皆を救えたのは、優太の龍王の力があった からで、生命を蘇らせる事はもう不可能だと思った 方がいい。」 沖田「そういえば今回の戦利品は?」 大和「蒼赫珠が一つと、天変地異を操る魔導書。」 隻眼「魔導書は遥が使え。」 遥「分かった。」 隻眼「そして我々は弱すぎる。」 八神「ああ、もっと強くならねば。」 沖田「魅穢の関ヶ原に入る前に、舞荊で強くなろう。」 大和「そうしよう。」 一人減り、五人は舞荊市で特訓を始めた。
第三章二十一話 禍神登場
六人はやがて大きな街、凰廻市へ辿り着いた。 沖田「ここを越えると緋御禰か!!」 八神「その先は次の県、魅穢か。」 遥「この世界では本当に休めないね。」 優太「早くこの世界から出たいですからね!」 大和「出来ればこのまま遭遇したくないな。」 隻眼「だがそうもいかなさそうだ。」 隻眼が渋い顔で話す。 八神「湖の方を見てみろ。」 四人が湖の方角を向く。 優太「なんだ…!あの巨大な怪物は!!」 隻眼「この湖にまつわる怪…、ダイダラボッチか。」 遥か先で蠢く怪物が見える。 沖田「迂回したらバレないか…?」 遥「あれは湖から出られないはず。」 ?「誰がそう決めた?」 野太い声が全員の耳に聞こえた。 六人「誰だ!??」 隻眼「禍神のお出ましだ。」 遠くに見えていた禍神があっという間に目の前まで 来ている。 ?「我は創地弩兵大葬大太郎法師。贄駕禍神である。」 大和「どうやって俺達を見つけた!」 大太郎法師「何も、最初から見ておったわ。誰の土地だと 思うておるのだ。」 隻眼「我々が強くなるのを敢えて待っていたと言う事か。」 大太郎法師が見下している。 大太郎法師「お主らの様な塵屑が卿都禍神を倒したとは 信じられん。が、それも神器の力あってだ。」 八神「素直に通しては…くれないだろうな」 大太郎法師「だが我は機嫌が良い。十分は力を使わずに いてやろうではないか。」 隻眼「こいつからは…、逃げられないな。」 沖田「覚悟を決めるしかない。」 遥「元より覚悟は出来ている。」 大和「優太、お前に草薙の剣は預ける。お前が使え。」 優太「ありがとうございます。」 大太郎法師が不気味な笑顔を浮かべて言った。 大太郎法師「では、開始じゃ。」 六人は禍神の力も分からない中、攻撃を始めた。 隻眼「俺の紫苑雷切丸と八神の水口剣で先にやる。」 大和「俺の神獣鏡でサポートだ。」 八神「沖田と優太で銅鐸の時の神器解放だ。」 沖田「了解っ!遥はサポート頼んだ!」 遥「分かった。」 隻眼と八神が大太郎法師に斬りかかる! 水口剣が斬った傷跡に紫苑雷切丸が追い討ちをかけ、 禍神の内部から感電させていく。 大太郎法師「そんなものか?痒くもないわ」 その背後から大和が神獣を呼び出し、禍神に喰らいつく。 大太郎法師が振り返る。 大太郎法師「神獣か。それは厄介だな。」 大和「よし!効いている…」 大太郎法師「禍神じゃなければな。」 割り込む様に言う。 隻眼「今だ!開いた傷口に喰らわせろ!」 準備していた沖田と優太が神器を合わせ、全力で 斬りかかる!! 沖田優太「行けぇー!!」 神器は大太郎法師を貫通し、内部から爆散させていった! 大太郎法師「これはまずいな…。」 大太郎法師の腹部は抉れ、後ろに倒れた。 隻眼「やったか!?」 大太郎法師「…十分経った。」 八神「なに!!」 大太郎法師が起き上がると傷跡は消えていた! 大太郎法師「楽しかったぞ。人間よ」 そう言うと、禍神の周囲の土地が抉れて浮き出した! 大太郎法師「我の能力は天変地異。全てを自在に操る。」 隻眼「…チートだろ。」 八神「分散しろ!!もろとも死ぬぞ!!」 六人は分散して禍神に攻撃を始めた。 優太「僕が風の力で抑える!!」 大和「まて!あいつには…!!」 大和が言い切る前に優太は浮いた大地に踏み潰された! 五人「優太…!!!」 大太郎法師「こいつは阿呆なのか?天変地異を司る 我に効く筈がないだろう」 大和「くそっ、優太…。」 隻眼「草薙の剣も堕ちた大地の中か。絶望的だ。」 八神「これは…、逃げた方が良い…!」 沖田「無駄だ。こいつから逃げられる可能性が見えない。」 大太郎法師「無駄話していて良いのか?」 振り返ると、遥が串刺しにされていた。 遥「…油断した…。」 遥を刺していたのは氷柱だ。 更に遥を刺していた氷柱が浮き出すと、四人を目掛けて 飛んできた!! 八神「くそっ!!まずいぞ!!」 隻眼「八神お前の剣は相性が悪い!逃げろ!」 大太郎法師「ほう、そうか。」 ニタァと笑って禍神は八神目掛けて氷柱を飛ばした。 逃げる八神を遠慮なく貫く。 それを沖田が護ろうと前に立った!! 沖田「っぐは…!!」 八神「ぐっ…!!沖田…!どうして…!!」 沖田は護ろうとしたが叶わず、氷柱は二人まとめて 刺していた。 隻眼「八神!沖田!!」 大和「そんな…!!」 沖田「俺達昔から一緒だったじゃないか。」 八神「頼むから死なないでくれ…!」 沖田「ありがとうな…」 八神の背後で沖田は動かなくなった。 隻眼「八神!お前もまずい!動くな!」 八神「…分かってる。」 徐々に血の気が引いていく八神。 先は長くないと悟った。 隻眼「大和、動けるのは俺達だけか。」 大和「絶対許さない。」 大太郎法師「逃げも死、争えども死。どうする」 隻眼「逃げない。」 怒った隻眼は紫苑雷切丸に全ての力を与え、攻撃を 始めた!」 大太郎法師「そうだな、隣の奴は要らないな。」 大和が神獣を呼び出して攻撃する。 隻眼も死を覚悟で禍神に対峙している! しかし力及ばず、隻眼までが大地の力によって潰されて しまった!! 隻眼「…大和…すまない。」 隻眼と八神は辛うじて意識があるが、遥と優太、そして 沖田は既に息絶えていた。 大太郎法師「そんなものか。期待した我が愚かだった。 おや?お主、何故人間などと行動しているのだ?」 大和「俺は人間だ!!何を言う!」 大太郎法師「お前じゃないわ。」 すると、何者かが大和の背中に刃物を突き刺した! 大和「…!!?お前…どうして…。」
三章二十話 不動の呪物、銅鐸
分散してから一ヶ月。 六人は彌洲市で再集合を果たした。 隻眼「優太!生きていたのか!」 優太「逸れてごめんなさい…。」 大和「でも優太はやったぞ!」 八神「そうだ、優太がガタロウを捕まえた。」 隻眼「なに!お前よくやった!」 遥「…」 沖田「悔しがるなって遥。よかったじゃないか。」 遥「まぁいいけど。」 隻眼「ガタロウ。皿は返す。草薙の剣を出してくれるか。」 衰弱したガタロウは頷き、掌から剣を引き抜いた。 八神「これが草薙の剣か。」 隻眼「まぁ形代だがな。」 大和「形代?」 隻眼「これは沖田の天叢雲剣を模った偽物に、呪いを 込めて作られた形代。天叢雲は雲を司るのに対し、 草薙の剣は風を司る。」 沖田「そうなんだ。初めて知った。」 隻眼「これは大和。お前が使え。」 大和「俺が…。分かった。」 八神「これで四人は武器を持った。先を進むか。」 遥「ねぇ、あいつは何?」 五人が遥の方向を向くと、指を指している先に 何か不気味な怪がいた。 その方向から僅かに鐘のような音が聞こえる。 隻眼「なんだあれは。逆さになった人間…?」 八神「まるでクネクネだな。だが違う。」 大和「…なんか歴史の本で見た事がある。えーと…」 沖田「…銅鐸か。」 銅鐸(どうたく)と言えば鐘のイメージがある。 隻眼「銅鐸か。まずいな。」 優太「何がまずいの?」 隻眼「あの逆さ人間は怪では無いな。そして、あの辺りに銅鐸がある筈だ。銅鐸は、呪う為に作られた 最恐の呪物。それが怪として現れたのか。」 沖田「銅鐸はどんな攻撃を仕掛けてくるのかな」 隻眼「もう呪いにかかっている。」 八神「なんだと!?」 隻眼「銅鐸はかつて祈りに使われていたが、何か怖くなり 畏怖を感じた人々は破壊して土に埋めた。 その怒りから銅鐸は呪物となりこの地に現れたのだろう。 逆さ人間は鐘を聴いた生存者の成れの果てだろう。」 優太「そんな!じゃあ僕達ももしかして…。」 隻眼「ああ。青銅でしかあれは壊せない。呪いは 解けないと言うことだ。」 遥「怪より厄介だね。」 沖田「俺と大和の剣は元は青銅だよな?」 隻眼「いや、根の国においては青銅は使われていない。 あくまで元いた世界で使われていただけだ。」 大和「じゃあどうする。」 隻眼「時間は長くないだろう。どうしたらいいか。」 優太「…天叢雲剣と八咫鏡は本体と形代に分かれる。 本体の役割を形代が受け持つ。別つ二つを併せたら?」 大和「そうか!本来の力を取り戻せるかもしれない!」 大和の草薙の剣と、沖田の天叢雲剣。 二人は剣を銅鐸に向けて合わせた。 すると、二つの件は引き合わせて風雲となり、やがて 青銅の本来の姿に成った!! 八神「凄い。これが日本の三大神器の一つか。」 遥「窮鼠に取られた八咫鏡も本来の力を発揮して いなかったという事だね。」 優太「八尺瓊勾玉は元より一つしか存在しないらしい。」 八神「やけに詳しいよな。優太」 優太「勉強してたから…!!」 隻眼「沖田、大和。やれ。」 二人が持つ青銅の剣は風雲を纏い、大きな剣と成って 銅鐸を斬り落とした!! 沖田「どうだ!」 大和「やったのか…?」 周りにいた逆さ人間は昇華し、銅鐸は灰になって 消えていった。 隻眼「やったな!!呪いは解けたぞ!」 八神「よかった。ありがとう。」 遥「助かった。二人ともありがとう。」 優太「…すごかったね!」 六人は喜び合った。 灰となった銅鐸の中から青銅で造られた鏡が現れた。 隻眼「大和神獣鏡か。これは大和が持て。」 大和「俺が…、ありがとう。」 大和が手に取ると不思議と使い方が分かった。 隻眼「黄金の血は日本の人類の起源、卑弥呼の血。 その鏡は卑弥呼が持っていた鏡。大和、お前が 卑弥呼の血を継ぐ子孫だと言うことだ。」 大和「俺が卑弥呼の子孫だと!!」 隻眼「そうだ。だからお前が持つんだ。」 大和「分かった。」 隻眼「さて、これで次の街凰廻市に進める。」 六人は次の街へと歩き進めた。 まさかあんな事になるとは、まだ知らない。
三章十九話 草薙の剣を求めて
6人は杜夜麻市へ入って行った。 隻眼「極力逢いたくないが、贄駕県の禍神も厄介だ。 大和、優太、遥。お前らの武器も拵えようか。」 そう、窮鼠に取られてから武器が無かった。 大和「でもどうやって手に入れる?」 隻眼「この市に存在する怪ガタロウから獲る。」 八神「ガタロウは現在の名で河童か。」 遥「倒すのはそんなに苦じゃない。だけど見つけるのが 大変だ。」 そう。ガタロウは伝説で言われる程数が少ない。 隻眼「そうだ。そもそも存在が希少すぎる。 しかもこの市にはオロチがうじゃうじゃ居る。」 優太「オロチって大蛇の…?」 沖田「それは厄介だな。その中で探すとなると…」 隻眼「それでだ。分かれて探そう。」 八神「確かにその方がいい。」 八神と大和、隻眼と優太、沖田と遥。 3組に分かれて捜索を始めた。 八神「次の町、彌洲で1ヶ月後に落ち合おう。」 沖田「分かった。気をつけて。」 隻眼「1ヶ月。分かった。」 六人は分散した。 そして気付けば3週間が経過していた。 八神「大和、ガタロウどころかオロチすらいないな。」 大和「本当にいないね。他の四人はどうだろう」 沖田「こんなに遭遇しないことってある?」 遥「絶対におかしい。」 一方隻眼と優太。 隻眼「くそっ、どこで逸れた!!」 隻眼は優太と逸れていたのだ。 隻眼「あいつ運はあるから大丈夫だと思うが…。」 心配を胸に独りで歩き進めていた。 そして1ヶ月が経つ頃。 優太「八神さーん!!」 八神「優太!?隻眼はどうした!!」 優太は八神大和ペアの元に辿り着いた。 優太「逸れちゃって。それよりこれ!!」 なんと優太がガタロウを引き摺っている。 大和「お前!それ!どうしたんだ!!」 優太「偶然見つけて、背後を狙って捕まえました! ガタロウは皿さえ奪えば動けないんで!!」 八神「お前、たまに凄いよな。まるでこの世界を 理解してるかのように。それで運がいい。」 優太「昔から運だけはいいんです!」 大和「でもでかした!運が良いことにオロチも出ないし このまま彌洲へ進もう。」 八神「そうだな。」 三人は集合地点へと歩み始めた。 同時刻、沖田と遥はオロチに遭遇していた。 沖田「なんで今更出てくるんだよ!」 遥「本当にね。そんなに甘く無かったね。」 二人を睨むようにジリジリと近付くオロチ。 奴はとにかく速い。毒を喰らえばお陀仏だ。 沖田「遥は逃げろ。俺が天叢雲剣で対峙する。」 遥「…分かった。」 オロチが沖田目掛けて飛びかかる! 沖田「俺は強くなった!行くぞ!!」 エネルギーを天叢雲剣に捧げ、剣が飛びかかる オロチを刺した!! しかしオロチは怯まない。 背後にいる遙が言った。 遥「オロチは耐性が強すぎる!!」 沖田「これはまずい…!!」 沖田を喰らう様にオロチが口を開けて飛び掛かる!! 沖田「諦めるか!」 沖田は全エネルギーを剣に与え、貫通した剣を更に オロチの背に貫いた!! 高エネルギーが剣を通して黒炎となってオロチを焼く。 流石にオロチに効いた様だ。 しかし何故か黒炎は止まり、オロチは沖田を喰らった。 沖田「…あとは頼n…」 遥が叫ぶ!! 遥「沖田!!だめ!!」 するとオロチが突然爆散した!! 遥「何!???」 沖田「は、助かった…!?」 二人は驚きを隠せない。 隻眼「間に合った様だな。」 沖田「隻眼!どうしてここに!!」 助けたのは隻眼だった。 隻眼「優太と逸れてな。だが大丈夫だろう。」 遥「そう…、よかった。」 沖田「とにかく助かった。」 隻眼「お前の力は毒持ちと相性が悪いから仕方ない。」 遥「それより、もうすぐ集合する時間でしょ?」 沖田「そうだな、仕方ないが先を急ごう。」 隻眼「ガタロウは他の奴らに期待するか。」 三人も彌洲を目指して歩き始めた。
第一話 引っ越し
一台の車がアパートの前に停まった。 「早くしないと業者が来ちゃうって!!」 「お前が準備してないからだろ?」 親子が車の中で言い合いしている。 「早く中に入るぞ。」 父が息子優太に少し怒った顔で言った。 「わかってるって。」 優太も不貞腐れて言い返す。 「おぉー、陽当たりのいい家だな!!」 「俺よりテンション高いじゃん」 「いいだろ!別に!」 部屋は1DKの一人暮らし用アパート。 窓が大きく日光が室内を照らしている。 暫くして引っ越しトラックがアパートの前に到着した。 「では今から搬出を開始しますね」 優太は微笑んで言った。 「はい、よろしくお願いします。」 父が優太の顔を見て言う。 「優太、いよいよ一人暮らしだな。何かあったら 連絡してこいよ。」 優太が言い返す。 「分かってるよ。もう25だぞ?大丈夫だから。」 「そうか…。」 切なげな表情で父が答える。 25歳になったばかりの優太は、シングルファザーの 父と2人で過ごして来た。 優太は交野市に新たに出来た小学校の教師として 採用され、この街に引っ越してきたのだ。 「では搬入が完了したので失礼します」 「ありがとうございます」 引越し業者が帰って行った。 「じゃあな、そろそろ帰るわ。頑張れよ!!」 父が激励する。 「うん、ありがとう、父さん」 父は帰り、1人で残りの荷解きを始める。 「うーん、中々終わらないな。とりあえず残った ダンボールは押し入れに入れておくか。」 だらしない優太はさっさと済まそうと押し入れを開いた。 すると、差し込む日光を反射する様に、奥で何かが光った。 「ん?なんだろ」 押し入れの奥に小さな缶の箱がある。 「うわ、前の住人の忘れ物かな…。」 優太は一応手に取り、窓際に置いて作業を進めた。 そして夕方になった。 夕陽が差し込み、部屋は茜色に染まっている。 「よし、そろそろ終わるか!!」 ソファーに座って優太は考え事をした。 「…やっぱり届けた方がいいよな。あれ。」 優太は窓際に置いていた缶を手に取り、机に置いた。 「開けていいものか…。でも気になる…。」 暫く葛藤が優太を襲った。 「…ごめん!!」 優太は思い切って缶を開けた!! 「手紙…?と、鍵?」 中には一通の手紙と、半分に欠けた鍵が入っていた…。
神風に溺れる
目が覚めると見覚えのない場所に居た。 確か昨日は大晦日だった。 …友達と飲んでいて、barで勧められたカクテルを 片手に乾杯した記憶がある。 そのカクテルは神風と言って、度数は25度を越える。 酔った勢いでダーツゲームに参加したが、見事ゲームに 負け続け、数は20杯を越えた。 そうだ。それで酔い潰れてマスターに追い出され、 夜道を闇雲に歩いていたのだ。 ハッと意識が戻り、荷物を見ると中身がない。 盗られた。 しかも、遊びに大阪から名古屋へ来た最中だった。 そして今日は大阪で仕事。 近くのコンビニで時計を見たら、余裕で時間は過ぎている。 お金も何もない中で、駅員にお金を借りて帰って、遅れて仕事に行ったのだった。 これがトラウマとなり、その後三年間禁酒している。
三話 深層に眠る少女
ロイ率いる先遣隊は地下要塞の深部へと進んでいった。 その頃地上では… 「おい!ナギがいないぞ!!誰か知ってるか?」 5番隊長シギルが叫ぶ。 「いえ、誰も確認していません!」 「恐らく中に入ったかと。」 5番隊のアルスが返答する。 「あいつならやり得るか…。放っておけ。」 「了解です。」 一方深層では先隊が最深部に辿り着いていた。 「おいフリーデンス、これは何だと思う?」 「隊長、私もこんなものは見た事がありません。」 目の前にあるのは銀行の大金庫に似た巨大な遺物。 「奥が続いているようだが、開け方がわからない。」 「俺がぶっ壊してやる」 ロイが能力で破壊しようとした。 ドゴォォォォォォォォン!!!! 「どうだ?」 「いえ、傷一つついていません!!」 フリーデンスが気を乱す。 「原始の地に何故未来の技術が…。」 「やはりこの世界は何かおかしい。」 「しかし、ここで引き下がる訳にも行かないな…」 「そうだ!ナギの無効化を使ってみよう。」 2人は巨大な扉の前で確信をついた! 「…みんなー…どこー…みんなー!…」 徐々に後ろから声が聞こえてくる。 「お前!何故ここに!」 1番隊の隊員が驚く声が聞こえる。 「呼んだー?きたよ!!」 なんと、ナギが1人で最深部までやってきたのだ! 「ナギ!お前の力を貸してくれ!」 ロイがまた笑ってナギを迎え入れた。 「あのロイさんが…笑ってる…!」 隊員は毎度驚いている。 「この扉を開けれたらいいんだね?」 「あぁ、やってみてくれ」 「うん!無効化!!」 特に変化はない…。 「無効化!!無効化!!あれ、効かない。」 「それほど未来の技術なのか…?何があるのだ…」 3人は悩んでいる。 「あ、真ん中に鍵穴があるよ?」 よくみたら確かにある。 「そういえば、目覚めた時から首元に鍵がかかっていたんだ これ使ってみるよ!!」 「ちょっと待て…!」 ロイの言葉を待たぬ間にナギは鍵を鍵穴に刺した。 すると、大門は大きい音を立てながら開いて行った! 「開いたよー!!」 「いや、何故ナギの鍵が…。まぁいいか、中を確認しよう」 ロイとフリーデンス、そしてナギの3人は中へと入った。 中は長い年月放置されていたようで植物に侵食されている。 「奥に何かあるぞ!」 「これは…コールドスリープ…?中に女性がいる。」 2人が怪しんでいると、ナギが先に進んでいった。 「ねぇ、君、起きて!」 何を言ってるのだと2人は見ていたが、瞬く間にカプセルは 開き、少女の姿が現となった!! 「…ん…」 「君!起きた?」 「…ここは…どこ?…私は…」 「君の名前はシエルだよ!」 ナギはコールドスリープカプセルを指差した。 「ここに書いているよ!」 「シエル…何も覚えていない。でも、何か大事な事を 忘れている気がする…。」 「まぁいいじゃん!一緒に行こう!」 「着いていってもいいの…?」 「いいよね?みんな!」 ナギはロイとフリーデンスを見た。 「ったく、だが気になる事も山積みだ。着いてこい」 ロイが顔を顰めながら言った。 「シエルの記憶が戻れば、世界について何か分かるかも しれないし、その方がいいみたいですね」 フリーデンスも顔を顰めて言った。 「よし!お前ら外へ出るぞ。」 「了解です!隊長!」 ロイ率いる1隊2隊は外へと戻った。 そして要塞入口 「おい!ナギ!勝手に行きやがって!」 シギルが怒って言った。 「ごめーん!」 ナギが笑いながら返事した。 「お前ら、問題はなかったか?」 ロイが各隊長に尋ねた。 「隊長、この周辺にはもう何もありません! 線路も安全です!私が能力で把握済みです。」 3番隊長クロームが答えた。 「よし、列車に戻るぞ。お前ら。」 「はい!」 「シエル、お前も着いてこい。」 「分かりました。」 隊員は来た道を戻って行った。 そして列車へ帰還する。 毎度の如く、市民が先遣隊を盛大に迎える。 「帰ってきたぞー!今回はどうだー!」 「うるせぇな。お前が対応しろ。」 ロイはフリーデンスに役割を託した。 「今回の出動により、原始の地の探索を完了しました!」 「おおぉー!!流石だ!」 市民が歓声を上げて喜ぶ。 「おい、帰るぞ。」 「はいはい、冷たい人なんだから。」 先遣隊は基地へと戻って行った。 「それで、ナギ。お前は勝手に動きすぎだ。」 「えへへ、じっとしていられなくて。」 ナギはヘラヘラと笑っている。 「もー怒らせる事言わないで!」 フリーデンスが怒っている。 「まぁいい。ナギ。お前に命令を下す。」 ロイはナギにある判断を下した!!