鍋屋木おでん

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鍋屋木おでん

ショートショートをメインに長編書いたりしてる人です。 【逢魔時の妖怪嫌い】、更新中です。よろしくお願いします。

腹痛

妹に腹痛ってなんであんなに辛いんだろな?って聞いたらそりゃあ身体から毒を出そうとするから毒に侵されて痛いんだよ。と言われた。 じゃあ小の方を我慢してる時も痛くなきゃおかしくないかなーとは思うがあっちはあっちで膀胱が爆発するって聞いたからどちらにしろじゃないか? 結局人間は神が作った失敗作なんじゃないか?と思いながら俺は漏らしていた。

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腹痛

Q、骨の魅力を教えてください。

ベストアンサー:骨は美味しいです、あの噛み心地と仄かに香る肉の香り、それから噛んでも噛んでも無くならない所が本当Goodです! ベストアンサーの返信:ありがとうございます、俺もそう思ってるんですが、飼い主はそう思ってないみたいで確認したかったんです!! 最近、私の飼ってるワンコが私のスマホをぺたぺた触ってるんだけど、あれ、なにやってんのかな……?

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Q、骨の魅力を教えてください。

【読み切りその1】ようかい!!

夢を見た… 「翔(かける)様!!これをあげます!!」 俺は女の子と話をしている。場所は…花畑か?俺はその女の子から花で作られた指輪を貰った。とても花で作ったとは思えない程、素晴らしい出来の指輪だった。 「わぁー!!!██ちゃん!!!ありがとう!!!じゃあ俺はこれあげる!!!」 女の子の名前の部分だけノイズの混じった音になり聞き取れなかったが俺はその子に花で作った冠をあげている。 「はわー!!翔様!!!」 その子はそう言って俺に抱きつく。彼女の体温が俺に伝わる。 「翔様!!もし私と翔様が結婚できる齢になったら…」 そこで急に視界がぼやける…そしてその子の背中から急に何かが現れた。羽…? 目覚ましの音で目が覚める。 「…」 今しがた見た夢は何だったんだ? 俺はボサボサの髪をくしゃくしゃと撫で付ける。 「まぁ、夢だからな」 そう呟くと俺はハンガーに掛けておいた制服に素早く着替える。 軽く身だしなみを整えたら自室から出て、一階のリビングに入る。 「母さん、おはよう」 「あー、翔、おはようさん、テーブルの上にハムエッグとパンがあるから適当に食べちゃってー」 母さんはそう言うとこちらを見ずに片手を挙げてそう言う。 母さんは一部マニアに絶大的な人気を誇る、【月間 モー】というオカルト雑誌の編集兼ライターをやっている。何でも今回記事にする内容がかなり大きな企画?らしくて、寝ずに書き続けているそうだ。…倒れないか心配になる。 俺はテーブルに置かれていたパンをトースターで軽く焼き、その上にハムエッグを載せ、口に運ぶ。うん、無難に美味しい。 母さんは仕事が忙しくないときはめちゃくちゃに手の込んだ料理を作るが、こういう繁忙期はこうしてとにかく早く作れてそこそこ美味しい物を作る。こんな忙しくても俺のために毎朝作ってくれるのだ、頭が下がる。 「んじゃあ行ってくる」 「はーい…お待ち、お父さんに挨拶したの?」 「あ、忘れてた」 俺は母のパソコン机の横から和室に入る。そこには仏壇が置いてあり、父の写真が飾られていた。 お父さんは死んだ…らしい。というのも俺が小学校高学年になった時に急にいなくなった。 今で言えば行方不明なんだろう。父の遺品も出てないし、どこに行ったかも不明。結局、警察は捜索を打ち切り、死亡扱いになったらしい。 (父さん…行ってきます) 「じゃあ行ってくる!!」 「はいはーい!気をつけてねー」 母さんはそう言って片手を挙げた。 家の近くのバス停で俺の高校【不知火高校】行きを待つ。手持ち無沙汰でニュースを見ていると奇妙な記事を見つけた。 「うん?…これ高校の近くじゃないか…」 記事を読むとこんな内容だった。 【不知火高校近くを不審者が?先週の月曜日、不知火市の不知火高校付近で声掛けの事案が発生した。不審者の特徴は2メートル近くある巨体にコートを着た赤髪の男で何でも不知火高校の生徒に『源の人間か?』という意味不明な質問をするそうだ。声掛けをされた生徒はいずれも怪我などなく男も危害を危害を加えるわけでもないそうだ。警察は高校に注意を呼びかけている】 「何だこれ?」 俺は記事を読み切り、変な事が俺の身近に起こってるんだなーと息をつく。 「おはようさん!翔!!!」 「うん?あぁ、道明か、おはよう」 俺の後ろから声をかけたこの元気の塊みたいな男は芦屋道明(あしや みちあき)、俺ので親友だ。 「おう!!…うん?何見てんだ?」 俺は例の記事を道明に見せる。道明はしばらくウンウンと首を振りながら読んでいたが、やがて読み終わったのか、俺と同じ反応を見せた。 「…変な事案だな」 「だろ?こんな大男が高校の付近で声掛けなんてさ」 「…あれ?そういえばこの源ってお前の名字じゃね?」 「は??」 そういえば記事には「源の人間か?」と声掛けされていたな。んで、俺の名字は確かに源だ。 「…いやいや、流石に関係ないだろ?」 「源って源平の源もあるか…じゃあそいつは弁慶の生まれ変わりか?」 そんな牛若丸…源義経公を今の時代に探す弁慶オタクなんかいないだろ。と内心、苦笑した。 そうこうしていると、バスが到着。 「さ、こんなどうでもいい記事は置いといて乗るぞー」 「あ、俺の渾身のネタを躱したな!!!」 高校に着くと、校門前で見慣れた姿を見かける。 「あ、加茂君」 「うん?あぁ、源か。それとおまけの芦屋」 「おまけは余計だろうが!!」 加茂朱角(かも あけすみ)君、次期生徒会長の声が高い、生徒会副委員長だ。俺と道明の親友でもある。 「加茂君、生徒会の?」 「あぁ、今日は持ち物検査の日でね。源は真面目だから確認する必要ないな。行っていいぞ。あぁ、芦屋お前は駄目だ。鞄の中を見せろ」 「だー!!なんで俺だけ!?翔に甘すぎんじゃねぇか、お前!?」 「お前は毎度変なものを持ってくると生徒会で目をつけているんでね。こうなりたくないのであれば最初から持ち込まぬことだね。源を見習え」 結局、加茂君の検査で道明のカバンからゲーム機が見つかり、無事没収された。 「たく!!厳しすぎんだろ!加茂の野郎!!!」 「いや、そもそもゲーム機持ち込んでる道明が悪いだろ…」 俺がそう言って苦笑すると、すでに教室に着いていた。 「じゃあ放課後な」 「うん、俺は多分、いつもの場所にいる」 俺はそう言って自分のクラスに入った。 「翔様、見つけましたわ!!」 【放課後】 「烏天狗か…」 俺はいつも通り、図書室で妖怪図鑑を見ていた。俺は帰宅部で家に帰っても何もすることがないので基本、図書室でダラダラと本を読んでることが多い。 俺は昔からとにかく妖怪が大好きだった。 理由は未だに不明だが、母がそう云う雑誌のライターなのでその影響もあるのだと思う。 特に俺が大好きな妖怪は烏天狗という妖怪だった。 烏天狗はかつて源義経、幼名牛若丸の剣の師匠だったとされる妖怪だった。俺の名字が源というのも関係しているかもだが、なぜか好きだった。 「そういえば今朝の夢…」 夢の中のあの少女、夢から覚める前に黒い大きな翼が有った気がする。 「…いやいや、夢だしな。こうやって烏天狗の絵ばかり見てるからそういうのを見るんだ」 そんな事を呟いていると図書室のドアが勢いよく開く。中で読書をしていた生徒たちが迷惑そうな顔でドアを見る。 そこには道明が立っており、生徒達にぺこぺことお辞儀をして俺の方に来た。 「翔、ごめん!!急に部活のミーティング入ってしまって今日は一緒に帰れなくなった!」 「あー、分かった。そしたら俺はもう少し本読んだら帰るよ」 道明はすまんなと頭を下げながら図書室を出ていった。 「5時か」 時計に目を向けると外はもう、ほの暗くなっていた。秋口は日が沈むのは早いな。 そんな事を思いながら帰宅の準備をする。 もう2、3人程しか残ってない図書室を後にした。 行きは急ぐのでバスに乗るが帰りは基本徒歩で帰っている。徒歩でも30分くらいで家につけるから軽い運動だと思っている。 辺りはもう真っ暗だった、本当に日が沈むのが早い。 「??」 前から人が来る。人…?大きすぎないか?外人?その人影は俺の身長(165だが)の二倍は有りそうだった。 急に今朝のニュースがフラッシュバックして震える。 例の不審者か?俺は俯いて足早にすれ違おうとした。 「スンスン…貴様、源の人間だな?」 俺はその言葉で足が止まる。冷や汗が止まらない。俺を源だと断言している。 俺は恐怖に震えながらその不審者を見る。そして心臓が止まりそうになる。そいつは全身が真っ赤、髪も真っ赤、そして鋭い二本の角、そして牙。 それは正にお伽噺や妖怪図鑑でしか見たことのない、赤鬼の姿そのものだった。 「ククク、やっと見つけたわ。この高校にいると聞き、ウロウロしてたかいが有ったのー」 「お、鬼…!?」 「そうじゃ鬼じゃ。貴様は今から食われるのさ」 「な、なんで!?!?」 「ある方のお話では貴様を食うととてつもない力が手に入るそうだからな。貴様を食らって儂は更に強くなるのだ!!」 言っている意味が分からない。食べる?俺を??俺は震える足に力を入れて反対方向に走ろうとした。だけどそれより早く俺の体は鬼に掴まれた。 「ぐっ!?」 「逃げるな逃げるな。安心しろ、儂が一口で食ってやる。多少痛みがあろうが、すぐ消える」 巨大な鬼の手で掴まれた俺の体が徐々に浮き、そのまま鬼の巨大な口に運ばれていく。誰か… 「誰か助けて!!!!」 「無駄じゃよ、もうこの空間は儂が加工している。普通の人間では何も見えんさ。残念じゃが観念するんだな!!!」 もう駄目だ。鬼の口が目の前だ……死ぬのか…嫌だ… 俺は強く目を瞑る。 風を切る音がした、その瞬間、例の鬼の叫び声が響く。俺の体が落ちる感覚がしたが、誰かが俺を抱えてくれた様だった。 俺は恐る恐る目を開ける。俺を抱えていたのは黒い羽で空を飛ぶ美しい女の子だった。 「ぐー!!!貴様何者じゃ!?」 「烏天狗の椿。この御方を御守りする者だ」 その女の子は鬼を睨みながら言う。混乱している俺がその子の顔を見ると俺の視線に気がついた彼女は少し顔を赤くしてニッコリと微笑んだ。 「翔様、申し訳ございません、駆けつけるのが遅くなってしまいました、お怪我などはありませんか?」 「え、あ、え??」 「申し訳ございません、混乱しておりますよね?今すぐこの悪鬼を倒してしまいますから、こちらでお待ちいただけますか?」 そう言って彼女は俺をゆっくり優しく、地上に降ろしてくれた。 「儂の邪魔をするか!!!」 鬼を見ると俺を掴んでいた腕がなくなっており、そこから青い液体がボトボトと地面に落ちている。 「邪魔?やはり鬼は脳が小さいのか?先程行ったぞ。この方を御守りすると。貴様はここで死ね」 「なんじゃと??なんじゃと!?この小娘!!!!!」 鬼はそう叫ぶと残った腕を大きく振り下ろし彼女を攻撃する。 「安直な攻撃。やはり頭が悪い様だな」 そう彼女が呟くと振り下ろされた拳をひらりと避ける。地震が起きたのかと錯覚する程、地面が揺れ、アスファルトを見ると拳型にえぐれていた。 「すごい力…」 「ぬう!?避け…」 またも風を切る音が響く。 次の瞬間、鬼の首が中に浮いた。首からは青い液体がスプリンクラーの用に辺りに撒き散らせれる。 どんと言う音と共にその巨体は地面に倒れ込み、しばらくすると黒い煙になって消えた。首の方も同様に消えていた。 「ふん、この程度で翔様を食べるなど笑止」 彼女は刀を素早く鞘に戻すと俺の方に近づいてきた。 「ひ!!頼む!殺さないでくれ!!し、死にたくない!!」 「か、翔様、どうか落ち着いてくださいまし!私は貴方を御守りする者でございます!!」 彼女はそう言って焦った顔をした。あれ、この子何処かで…? 「翔様、お忘れになってしまいましたか?幼い頃ですものね、忘れてしまって当然ですわ、私は椿、鞍馬椿(くらま つばき)と申します」 彼女…椿はそう言って深々と頭を下げた。 椿…?何処かで… 「椿…ああ!?!?!?つ、椿ってあの椿ちゃん!?!?」 今になってすべて思い出した。あの夢は嘘じゃない。過去の出来事だ。 まだ俺が幼稚園生の時に俺の家の横に住んでた蔵馬さんの家の娘だった。 彼女とは本当によく遊んだ。そして彼女は人間じゃなかった。烏天狗という妖怪で、その証拠を俺にだけこっそり見せてくれた。普段は隠している美しい黒い羽。 「なんで今まで忘れてたんだろ!?小学校に入ってから引っ越しをしちゃったんだよね!?」 「あぁ!!!思い出していただけて光栄です!!はい!事情がありまして引っ越しました。今は山奥で旅館をしていますわ!」 椿ちゃんは嬉しそうにそう言うと俺の両手を握った。 「痛!!」 「あぁ!!申し訳ございません!強く握りすぎてしまいましたね…」 「いや、違う、少し傷が…」 それを聞いた椿ちゃんは急に怖い顔をした。 「先程のあの悪鬼に傷を!?あのクソ妖怪が…」 椿ちゃんのあまりにも汚い言葉に俺は絶句した。椿ちゃんは空に向かって叫ぶ。 「佐助!!!いるか!?」 すぐにそれから誰かが降りてきた。黒装束の男性で大きな黒い翼が見えた。 「こちらに」 「翔様がお怪我をされた。家で治療を行う。私では力を入れてお運びしてしまう恐れがあるから、お前がお運びしなさい。くれぐれも丁重にな」 「御意」 佐助さんと言うその男性は俺の前に来て立膝を付いた。 「翔様、佐助と申します。これより貴方様を我が領地までお運びさせていただきます。至らぬ点が多々御座いますでしょうがお許しください。それでは失礼いたします」 そう言うと佐助さんは俺をお姫様だっこの形で抱えた。 「え、え!?」 「翔様、どうぞ私の首に手をお回しください。飛行中は揺れますが完璧に貴方様をお運びしますので、どうかご辛抱を」 空を飛んでいる。飛行機なんかじゃない。烏天狗に抱えられて飛んでいる。 「風があまりかからない速度で飛びなさい。翔様に負担を掛けるなよ」 「御意」 飛行機程の高度ではなくビルくらいの高さを飛んでいる。風が顔に当たるが速度を落として飛んでくれているのか、全然苦しくはなかった。 「翔様、大丈夫でしょうか?」 佐助さんが俺に声を掛ける。 「え、ええ、ありがとうございます。気持ちが良いくらいです」 俺がそう言うと佐助さんは「それは良かった。何かございましたらどんな些細なことでもお申し付けください」と言って微笑んだ。 まるで王様みたいな扱いだな…そう思っていると目の前に山が現れた。その山の頂上に明るく光る物が有った。 「翔様、お待たせいたしました、我が領地、鞍馬家でございます」

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【読み切りその1】ようかい!!

某週刊少年の様に読み切りを3つ書きます

ご無沙汰してます。 鍋屋木おでんです。 ちょっと今書いてる小説がかなり行き詰ってしまったのでちょっと私のリハビリと気分転換を兼ねてちょっと某週刊少年誌みたいに1話読み切りの短編を3つ書こうと思ってます。 以下にとても簡単なあらすじを書いておきます 1.ギフテッドと呼ばれる特殊能力を持つ人々の戦い系 2.これも特殊能力ですが、こちらは都市伝説を退治する能力者達のお話(1は対人間が主ですが、こちらは対怪物が主です) 3.妖怪と人間が協力して敵を倒す系(逢魔時と違うのはあちらは妖怪が武器になりますが、こちらは人間はあくまで補助、メインで戦うのは妖怪って感じです) 以上の3作品を考えております。 近ければ今週中に1本は公開したいですが、場合によっては伸びるかもしれません。 そして、この三作品、勿論、読み切りで書くつもりですが、人気がどれかも今後の活動に助かるので、どれが読んでみたいかをコメントで書いていただけるととてもとても嬉しいです!(出来れば理由も是非!!)(欲張り) それではまたの投稿をお待ちください、ではでは!!!

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某週刊少年の様に読み切りを3つ書きます

キュインキュイーンリターン

銀行口座を見る。 残り2000円……これで来週の月曜日まで過ごさないといけないのか…… 俺は財布を意味も無くもう一度見る。 150円(しかも50円が全て十円玉)しかない。 これではカップヌードルを買って終わり…いや、物価高でカップヌードルすら買え無いかもしれない。 格安スーパーでごつ盛り(80円)を買って飢えを凌ぐしかないのか。 えい、ままよ! 俺は2000円を銀行から引き降ろし、そのまま近くのパチンコ店に突っ込む。 2階の1パチコーナーの浜物語の50回転の台を選んで座る。 財布からなけなしの1000円札を投入口に入れ、貸出ボタンを押す。 ジャラジャラと喧しく音を立てながら、うわ皿にパチンコ玉が流れてくる。 1パチは貸出が安いから、基本、うわ皿以外にも下皿にパチンコ玉が流れる。(と言っても15玉くらいだが) 俺はハンドルを捻り、祈る。どうか当たってくれ…!俺の生活がかかっているんだ!!! 玉がチェッカーに1つ入る。 次の瞬間、【キュインキュイーン!】 あぁ!!!あぁぁぁ!!!鳴った!!鳴った!!!! この音で俺は狂うんだ!!! ハマグリの役物がド派手に画面全体に落ちてきて、それがこの世には存在しないのではないか?と言うほどの派手に光り輝く。 図柄が揃った!! アサリの7図柄!! あぁ、救われたんだ!! 俺はそれまでのイライラ、焦燥、不安が全てふっとんだ!あぁ!俺は勝ったんだ!!今日は焼肉が食える!!! は???? 俺はパチンコ屋の前で座り込んでいた。 あれ?どうしてこんなとこに…?さ、さっきの勝った金は?? 酷い頭痛に襲われる。 吐き気もする。イライラと焦燥感、不安がぶわぶわと蝕む。 冷水が血液を流れ心臓を凍らせる様な…そんな非常に気味の悪く薄ら寒い物が喉の奥からせり上がってきて思わず口を塞ぐ。 震える手で財布の中を確認する。そして大粒の涙を流しながら、その場でのたうち回った。 思い出した、そうだ、俺は勝って調子に乗って…1万もあったのに…そのまま、またパチンコ屋に戻って4パチを打って…… 俺は財布の中に入っていた500円でカップヌードルとストロングゼロのレモンを買いフラフラと帰路に着いた。

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キュインキュイーンリターン

小豆洗いの音楽隊

私が同僚の家に行くとリビングに大きめの段ボールが置かれていた。それについて尋ねると彼は「あぁ、その段ボールかい??とある人物から送られてきてねぇ…長い話なんだがそれを受け取った経緯を話させてくれるかい??」と言うので私は興味を惹かれ、彼の話を聞くことになった。 あれは僕が10歳のころ…今から20年前の話になる。僕の実家はね、かなりのド田舎で裏山が有ってね。そこで夏とかはカブトムシを捕りに行ったりしてね。そんな時に彼らと逢ったんだ。私はカブトムシ捕りに夢中になるあまり、普段通ることのない川沿いに出ちゃってね。さすがに怖くなったんで帰ろうとしてたら不思議な音が聞こえてきたんだよ。まるで物のこすれる様な音でシャッシャッて音で僕はそれが気になって音のする方向に向かったんだ。そしたらびっくりしたよ。僕と同い年くらいの男の子5人がざるを揺らして楽しそうにしてるんだ。それで僕が気になって彼等に近づくと僕に気が付き、驚いた顔をして一目散に逃げようとしたんだ、僕は大きな声で「待って!!」って言うとみんな、ぴたりと動きを止めて恐ろしそうな顔でこちらを見てきた。僕はニッコリと笑って「驚かせてごめんね、何してたの?」と無邪気に聞くと彼らはおずおずとこちらに近づき、警戒した声で「お、俺等は小豆洗いっていう妖怪の子供だ、お前は人間か?」と聞いてきたから僕は首を縦に振り、「小豆洗いって妖怪の本に書いてあった!」と言うと小豆洗いはくすくすと笑いだした。「おめぇ面白れぇ人間だな!俺等の姿を見て逃げねぇなんて!!」確かにその小豆洗い達はよく見ると確かに普通の人間とは違った。と言うのも、顔には不思議な模様がある上に、頭には一本の短い角が生えてたんだ。でも僕は不思議と怖く感じなかったし、むしろこの子たちと遊びたいなと思ったんだ。田舎だったから、学校に通ってる同年代も少なかったし、友達も中々出来なかったからかもしれないね。とにかく僕は「怖くないよ!」と答えると小豆洗いは嬉しそうに笑い、僕に質問を投げてきた。「お前たち人間はオンガクっていう文化があるんだよね?」僕は「うん!僕の学校でも音楽の授業があるよ!」と答えると「いいなぁ。俺たちも音楽やってみてぇー。俺達、小豆洗いは小豆を洗うのが仕事なんだけどよぉ、この小豆を洗う音がすげぇいいだろ?それで俺たちはいつか、人間の世界で言うオンガクグループ??って言うのに成ってみてぇんだよなぁ…」と言うので僕は目を輝かせて「小豆で音楽をやるの!?楽しそぉ!」と言うと小豆洗い達は僕を取り囲み声を上げた。「お前、よく分かってるじゃん!!お前は俺達オンガクグループのファン?の一人にしてやるよ!」と言ってキャッキャッと楽しそうにはしゃいでいた。僕はその日から彼等と友達になって、毎日、裏山に遊びに行った。ある日は彼等の音楽を聴いて、良いところと悪いところを言い合ったり、またある日はオーディオプレイヤーを持っていき人間界で著名なアーティストの音楽を聴いたり。音楽の授業で配られた楽譜を彼等に見せて、音楽を練習した日も有った。そんな日が永遠に続くと思っていた。でもそれから数か月後に僕は東京に家族で引っ越すことになったんだ。僕はたくさん泣いた。学校が変わるのなんてどうでも良かった。彼等ともう会えないと思うと涙が止まらなかった。僕はいつもの様に裏山に登った。いつもの所で待っていた小豆洗い達は凄く驚いた顔をして僕を取り囲んだ。僕が泣きながら事情を話すと、小豆洗い達も悲しそうな顔をしていたが、しばらくすると僕の背中を叩き、ニッコリと笑っていた。「こんなに良い人間がいるなんて俺等知らなかった!俺等の為に涙を流してくれるなんて!俺等妖怪は恩は必ず返すんだ!お前に教えて貰った人間界のオンガク、俺等に色んな夢をくれた!お前がどこにいても必ず探し出してまた会いに行くよ!!」そう言って小豆洗い達は僕を抱きしめてくれた。僕はまた涙が溢れ出してわんわん泣いていたよ。 それから20年後の1週間前、この前の事だね。仕事休みで家でボーッとテレビを見てたら最近流行りの音楽アーティスト特集をやっててね。僕はそれを見た瞬間、飲んでたコーヒーを吹き出しちゃったよ。【AZKI】っていう小豆を洗う音で音楽を奏でる5人組アーティストが出ててね。顔には幼い頃に見た模様が有るんだ。間違いなく子どもの頃、裏山で遊んだ小豆洗いだって思ったよ。僕はテレビを茫然と見てると、家のインターホンが響いた。僕は受信機の前で「はい?」って答えると、びっくりだよ、件のAZKIの一人が映ってたんだ!僕は急いで鍵を開けて外に出ると、急に抱き着かれたんでびっくりして声が出そうになった。「久しぶりだな!!」小豆洗いの一人がそう言ってニッコリ笑った。僕は声が出せなくてその顔をじっと見ていると、彼は「恩返しをしに来たぜ!」って言って僕にさっき君が言ってた段ボールを渡されたんだ。「忙しいからゆっくり出来ないんだが、それだけは渡したかったんだ。またな!」そう言って踵を返して後にしようとしてたから僕は「ど、どうしてここが分かったの!?」って聞いたら、彼は昔見た笑顔で「必ず探し出して会いに行くって言っただろ?」って言ってあっという間に走り去ってしまったんだ。 と言う訳でその段ボールが玄関に有ったって事なんだ。うん?中身??あぁ、素敵なものだったよ。彼等のデビューアルバムのサイン入りCDとそれを埋めるくらいの凄まじい量の小豆が入っててね…

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小豆洗いの音楽隊

鵺の鳴く森

その森の噂は俺たちの地元では有名だった。何でもその森には正体不明な生物が潜んでいると言うのだ。声もどの生物にも当てはまらない気味の悪い声で、その姿は虎のような猿のような…とにもかくにも気味の悪い話だ。で、俺を含めた3人の大学のオカルト研究会がこの夏、その森に行く事となったのだ。 「やっぱり気味の悪ぃ森だよな…」親友の幸助がそう言うともう一人の親友、奈々子も頷く。「本当に気味が悪いよね…ここって自殺の名所でもあるんでしょ??」奈々子はそう言うとブルッと身震いした。「おいおい、お前らビビりすぎだろ…」俺が呆れながらそう言うと幸助がフンッと鼻を鳴らす「信也、お前だって怖いんじゃねぇか?足震えてんぞ?」幸助はそう言って俺の足を見る。確かに俺は震えている。正直真っ暗だし、さっきからざわざわ森が騒がしいし怖い。だが、二人がいる手前、そんな事をおくびにも出せない。俺は胸を張って「武者震いだよ!」と答えた。 「良し!準備は良いな?行くぞ!!」俺たちは車を脇に止めといてそのまま森に向かって歩く。手に持ったスマートフォンのライトを使い、足元に気を付けながら歩いていく。ライトを使っても奥まで見えない森に恐ろしさが更に募っていく。幸い、道は整備されていて歩きやすい。ただ、それでもたまに前につんのめりそうになったりしていた。30分くらい歩いて、ちょうど腰掛に使えそうな石が有り、そこで休憩することにした。「本当にそんな生物いるのか??ここまで歩いてきたけど例の鳴き声なんか聞こえなかったぞ?」「確かにね、ここまで歩いても聞こえるのは鴉の鳴き声だけ…本当にいるのかなぁ??」二人はそう言った後にため息をつく。「まぁ、噂だからな…でも先輩は聞いたって言ってたし…」「それじゃあもう聞こえててもおかしくないじゃん」奈々子がそういうので俺はムッとして、奈々子に食って掛かる。「知らねぇよ!俺が聞いたわけじゃねぇんだから!!」「怒んないでよ!!」俺と奈津子が睨み合ってると急に幸助が急に手を上げる。「す、すまん、ちょっとトイレ行ってくる!!」そう言うと幸助は凄いスピードで少し離れたところに有った公衆トイレに向かっていった。俺たちはそれを見て気が抜けてしまい、二人で見つめあって思わず吹き出してしまっていた。「まぁ、とにかく噂程度で終わってもオカ研が検証した!って言えば、記事ぐらいには出来んだろ」「そうだね」そう言って奈々子が伸びをした時だ。今まで聞いたことのない不気味な声が響いた。それを聞いた瞬間、俺の体中に冷や汗と共に肌が粟立つのを感じた。「今のって…」「逃げよう!!」俺と奈々子は立ち上がり、そのまま、森をめちゃくちゃに走り回った。途中、奈々子は何度もこけそうになっていたが俺が身体を抑えてやった。「はぁはぁ…幸助は!?」「あんな状況だ!!さすがに声も聞こえただろ!?逃げてるよ!後でどこかで会えるように電話して…」そこまで言いかけると再び、例の鳴き声が響く。しかも今度はもっと近い。俺は素早く再び、奈々子を連れて逆方向に走ろうとしたとき誰かの声が俺たちを呼び止める。「君たち!!何をやっている!?」俺たちは文字通りその場で飛び跳ねながら絶叫しているとその声の主はこちらに近づいてきた。その人は70代ぐらいの男性だった。俺はこの森に来た目的と鳴き声を聞いたことを話す。男性は呆れていたが、どこかホッとした顔をしていた。「とにかく君たちが無事で良かった…本当にこの森には怪物がいるからね…」「え!?」「この森に自殺者が多いのは聞いたことが有るかね?その自殺者の死体が無残に食いつくされていたりして良く警察がこの森に入るんだがね、その警察の人も言うんだよ、虎の様な面妖な生物がいると…」俺はそこまで聞くと鳥肌が止まらなくなった。「とにかくこの森は危険だから、最近は儂みたいな警備会社の警備員が見回りをしておるんじゃ…とにかく無事でよかった…」男性がそこまで言うとまた例の鳴き声がして震えた。「さっきから近いのぉ…うん??」男性はそこまで言うと、木の幹に乱雑に放置されたCDプレイヤーを見つめ、それを持ってきた。そして再生ボタンを押すと、先ほどの鳴き声が聞こえる「な、なんだ、CDプレイヤーの音だったのか…」俺も奈々子も一気に力が抜けてその場に座り込んでしまった。だが男性は相変わらず渋い顔をしている。「どうしたのですか?」「これ、電池で動くタイプのCDプレイヤーじゃからずっと動いてたことになるのぉ…」「??ええ、そうみたいですね」「これにCDなんぞ入っておらん」次の言葉に俺は再び肌が粟立つ感覚に襲われる。「この録音ボタンがずっと押されてるまんまだったようじゃ…」 「ふぅー!すっきりしたー!!」幸助はトイレから出て清々しい顔でそう言った。「しかし、さっきの変な音何だったんだろう…?」幸助はトイレで聞いた金属音を思い出して言う。「さてさて、あいつらのところに戻るかな!」そう言ってトイレを後にする。その後ろから虎の身体に猿の頭を持つ奇妙な生物がゆっくりゆっくり近づいてるとも知らずに……

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鵺の鳴く森

カッパ店長

俺のバイトをしているコンビニの店長はちょっとおかしい。と言うのもうちの店長はカッパなんじゃないかって噂されている。髪の毛はてっぺん禿げのその周りはふさふさの髪。まるでカッパみたいな見た目だし朝昼晩全部、キュウリ丸ごと一本食べてるらしい。しかも何も調味料を付けずに…まぁそれくらいならまぁ少し変わってるなぁーで済むのだが一番変なのは雨降った日だ。大雨、果ては嵐の日でも傘は持ってきておらず、それに先輩から聞いた話では、雨の中、嬉しそうに空を見上げていたそうなのだ。いよいよこの店長はおかしいぞ!と店長に詰め寄った先輩が言うには困ったような顔をしながら「ちがうよー、そんなカッパなんておとぎ話にでも出てくるような生物、いるわけないでしょう?」と言って否定されたらしいが俺はそれでも怪しいと思っていた。そんなある日、バイトも学校も休みだったんで、暇つぶしに音楽を聴きながら散歩していた。T橋という橋を渡たりかけた時、事件は起きた。橋の下の川の上流から上半身裸にトランクス姿の店長が気持ちよさそうな顔をしながら流れてきたのだ。俺は一瞬目を疑い、顔を強めに叩いて再び橋の下を見る。すると先ほどより少し先を店長が変わらず気持ちよさそうに泳いでいた。俺はもしかしたら溺れているのでは?と思い、急いで橋の右側から河川敷に降りていき、店長を追いかけて声をかけた。店長は俺を見るなり、ひどく狼狽した顔をして「ど、どうしてここにA君が!?」と言った。「店長こそ何して…いや、それよりも溺れてるのではないんですか!?」それを聞いた店長は困惑の表情を変えなかったが、やがて諦めたように一つ、大きなため息をつくとよっこらせと声を出して河川敷に上がってきた。「見ての通り、溺れてなどいないさ。なぁ、A君。これから話すこと、誰にも言わないって約束してくれるなら、どうしてこんなことをしてたか話してあげるけど」と言われたので、俺は強い好奇心に抗えず、二つ返事をした。店長はそれを聞いて軽く咳払いをした後、淡々と話し始めた。「私がカッパって呼ばれているのは勿論、A君も知っているよね?実はあそこでははぐらかしてたけどね、本当に私はカッパなんだ」俺は思わずえ!と声を出してしまう、今までふざけて言ってた事が本当だったとは…「私の食事に三食キュウリが入っているのは私の好物だから。私が雨の日に傘を差さずに雨に打たれるのはカッパの皿が潤うから。私の皿は普通の人間には見えない様にしてるがその部分だけ隠れるから私はこんな変な禿げ方している様に見えるんだよ。そしてどうして人間界でコンビニの店長をしているかと言えば、家族を養う為だよ」店長はそこまで言い切ると、川に近づき、そこの水を掬ってごくごくと飲みだした。俺が苦い顔をしていると店長はそれを見て笑顔を見せる。「カッパにとっては水は汚くても水…腹壊したり体壊したりなんてしないんだよ」再び店長は俺の横に座り、続きを話し始めた。「私たち一族はとある山奥から来たのだがね、その山は結構昔に、都市計画に伴って無くなった。仕方ないので我々一族はこの土地に移り住んだ。だがここは人間がかなり多い。それには我々は人間に化けて人間の生活を送るしかない。その為に、我々は家族経営でコンビニをやる事になったんだ。どうかこの話は秘密にしてくれ。我々がカッパだとばれたら人間の世界で生きていけないんだ!!」そう言って店長は俺の身体を掴んで揺らす。俺は何とか店長を落ち着けてから、絶対に話さないと約束をした。店長は涙を流して「ありがとう…ありがとう…」と連呼していた。その後、帰宅した俺は今日の体験を思い出して笑ってしまった。まさか本当にカッパだったとは…そして俺はスマホを開き、オカルト掲示板サイトを開いた。俺の愛用してるオカルト版だ。俺はそこに【俺のコンビニ先の店長がカッパだったんだがwww】とタイトルを書き、投稿する。するとすごいスピードでレスが進む。俺はそれの一つ一つに返信していく。俺はこの行為に最高の幸福感を覚えながら、返信を続ける。俺みたいな冴えないバイト学生がこんなに返信をもらえ、楽しんでくれてる。それだけで俺の孤独な心が満たされていくんだ。次の日、俺がバイト先を通りかかると、そこにはマイクを持ったりカメラを持ったりしている人々でごった返していた。それと一般人ぽい人々もスマホのカメラを使ってパシャリパシャリと写真を撮っている。しばらくその光景を見ていると店から店長やその家族(前に見たことのある奥さんと娘息子さんだった)が出てきてカメラやマイクに何やらしゃべっている。やがて奥さんの方は泣き出し、息子さんや娘さんは奥さんの背中をさすっていた。俺はそれを見て、流石にここまで騒ぎを大きくするつもりもなかったので少し悪いことをしたなと思った。一週間後、バイト先だったコンビニは潰れた。変な噂まで流れ始めて、お客さんが来ないどころか記者やテレビ局が毎日店の前で待機していた。そんな事が有っては続けられんと言って三日前に潰れる連絡だけ貰いそれ以降、連絡は来なかった。さすがにやりすぎたな…俺はそんな事を思いながら学校帰りの道を歩いていた。新しいバイト先も探さないとな…と思っていたら、急に俺の身体が浮く。えっと思った瞬間に俺はコンクリートの地面の身体が叩き付けられて、激しい痛みが身体中を駆け巡る。俺が痛みで混乱していると俺の胸倉を誰かが掴んだ。その顔は店長だった。「よくも…よくもバラしたな、貴様!!!」店長はそういうが早いか俺のジーパンを脱がし、パンツをはぎ取ると俺の尻の穴に右腕を突っ込んできた。俺があまりの痛みに悲鳴を上げると店長は大笑いした。「痛かろうな?だが貴様は痛みだけでは許さん!!」そう言うと店長は右腕を俺の尻の穴にさらに深くまで突っ込んでくる。俺はあまりの痛みに意識が薄れていく。そんな俺の耳元で店長が囁く。「あぁ、有ったぞ、尻子玉」俺はそこで意識が無くなった。 とある住宅街。刑事が足元を見て口を覆う。「なんだ、この干乾びた死体…頭のてっぺんの髪の毛だけ不自然に抜けてるぞ…」

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カッパ店長

信楽焼きのぽんぽこりん

「あ、そうだ」俺の隣を歩いていた親友が急に声を上げるので俺は親友を睨む。「んだよ、急に」「あそこ見てみ?」そう言って親友は交差点の向かいの蕎麦屋に飾ってある信楽焼のタヌキの置物を指さす。「あれが何さ?」「いやな、俺の先祖の話を思い出してさ……」「先祖??」親友はそれを聞くと、顎に手を当てて話し始めた。大昔、そいつが言うには江戸時代の初期ごろ。蕎麦屋を営んでいた親友のご先祖様。その人がある日山で山菜取りをしていたらなんかの動物の激しい鳴き声が聞こえたそうだ。それで声の方向に行ってみるとそこにはとらばさみにかかったタヌキがいたそうだ。「おうおう、お前さん、可哀そうにな…誰の罠か知らねぇが俺の目の黒い内はこんなこと許せねぇのさ!」そう言うとご先祖様は罠を外してやってタヌキの足に手拭いを巻いて逃がしてやったんだとさ。そしたら後日、蕎麦屋に謎の小太りの男が来たんだそうだ。その男は愛嬌のあるかわいい顔でにっこりと笑い店主であるご先祖様にこう言ったそうだ。「旦那様!!あっしは昨日助けていただいたタヌキです!」って言ったそうでそれを聞いたご先祖様は「何言ってんだ、おめぇさん!確かに俺は昨日タヌキを助けたが、なんでそれをおめぇさんが知ってんだ?さては俺を騙そうって魂胆だな!?」とその男に殴りかかりそうになった。でもその男は違う違うと泣き顔で言いだした。男はそれから、着物の裏側から昨日、ご先祖様がタヌキに巻いた手拭いを取り出した。ご先祖様はそれを見てハッとして、男の手からその手拭いをかすめて、まじまじと手拭いを観察しだしたそうだ。「…かすかな獣臭にこの血液…間違いなく本物だ…!!」ご先祖様はそう言うと男の全体図を見てみる。よく見ると右足に何かにかまれたような傷が出来ていた。それはまさしくとらばさみで造られた傷跡に見えたそうで。「分かった!俺はおめぇさんの言う事を信じるぜ!!ところで一体どんな用なんだい??」ご先祖様が男にそう言うと彼は微笑み話を始めた。「実はあっし、犬神刑部狸って言う妖怪なんでさ!たまたま昨日は餌を取るために山をブラブラしてたら、あっしとした事があんな罠にかかって外れなくなる始末…あまりの痛みに人間に化けるのも忘れてタヌキ姿になってしまいまして…そしたら旦那様が通りかかってしかも助けていただいた!!あっしは感動しました!人間はこんなにいいやつだとは知らなかったんで!ですから旦那!あっしは貴方に恩返ししたいんでさぁ!」タヌキはそう言うと何でもお願いしてくれと言ったそうで、それに対してご先祖様は「なら俺の店を手伝ってくれよ!」と言ってそのタヌキを蕎麦屋の従業員として迎え入れたらしい。それから蕎麦屋は大繁盛!というのも、その店でタヌキ(名前は豆八と呼んでいたそう)は大変可愛らしく愛嬌がある上に、仕事も早い、対応も丁寧で口々で噂になって豆八を一目見よう客が大行列!!蕎麦屋はどんどんと店を大きくして、金持ちの大名などまでやって来るようになった。それから10年後のある夏。その前の年から体調を崩していた豆八がいよいよ危篤だとご先祖さまや家族で集まって彼の横になっている居間に来た。彼はご先祖様を見るなり、無理やり体を起こし、せき込みながらご先祖さんを見つめた。「へへ、すんませんね、あっしの身体も、もう限界みたいでさぁ」「ああ、豆八!頼むよ!俺を置いていかんでくれ!!」「旦那、大丈夫。全てはあっしの力ではねぇですよ、全部旦那の力だ」そこまで言うと再びせき込む豆八の背中をご先祖様は撫でる。「旦那、最後の恩返しをさせてくだせぇ…あっしの妖怪の姿…タヌキ姿の置物を蕎麦屋の前に立てて欲しいんでさぁ…」「あぁあぁ!!分かった!いくらでも作ってやる!!」「あっしは…旦那に出会えて…幸せでござんした…」豆八はそう言うと息を引き取ったという。それからご先祖様は有り金を全て使い、信楽焼のタヌキをたくさん作ったという。「ご先祖様の真似をしてそれからいろんな店で信楽焼のタヌキを置くようになったんだってさ。まぁ可愛いしその豆八の商売繁盛の願いがかかってるって噂でも聞いたら誰だって置いてみたくなるわな」親友はそう言って自身の店でもある実家の老舗の蕎麦屋で別れた。「なるほどなぁ」俺は思わず呟いた。親友の店の前に並ぶ20体近くの信楽焼のタヌキはこう言った理由で置かれてたのか。

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信楽焼きのぽんぽこりん

ぬりかべこんにゃく

ある日、何気なく商店街を歩いていると変な屋台が出ているのに気が付いた。 それはちょうど八百屋と魚屋の間の細い路地の前に出ていたんだけど、何故か俺はそこが気になって屋台に近づいて行った。 「おやまぁ、いらっしゃい」 その屋台の店主である人のよさそうなお婆さんが俺を見てニコリとした。 「こんにちは。あの…」 俺がここは何を売っているのか聞こうとする前にお婆さんはニコニコ顔で話し始めた。 「ここはねぇ、ぬりかべこんにゃくっていうのを売っているのさ」 俺はそれを聞いて「は??」と思わず声を出してしまった。それを見てお婆さんはカカカと笑う。 「これはねぇ、食べるもんではなくてねぇ、壁などに穴が開いた時とかにこのこんにゃくを千切って伸ばして壁の穴に張り付けると忽ち、壁が元通りになるっていうもんなのさ」 俺はお婆さんの話を聞いて思わず吹き出してしまった。そんなコンクリートじゃあるまいし… だがお婆さんはいたって真面目で俺を真剣なまなざしで見つめてきた。それに段々と居心地が悪くなって再び俺は口を開く。 「で、でもそんな事って…」 「まぁ初めて聞いたら信じられんわな。お若いの、見てごらん」 そう言ってお婆さんは屋台の下からよっこらせ、と真ん中に大きな穴の開いた一枚の板を取り出した。 「板…??」 「そうさ。なにも壁だけじゃなくてこうやって穴の開いたものでもいいのさ」 お婆さんはそう言うと屋台の桶に入ってたこんにゃくを取り出し、そのこんにゃくを千切って指で伸ばし始めた。 不思議なことに千切れたこんにゃくは柔らかく、指で簡単に伸びている様に見えた。そして薄く延ばされたこんにゃくを穴の上に被せた。 そして俺は驚愕した。なんとこんにゃくがどんどん穴を塞いでいき、やがてこんにゃくは消えて、穴はすっかり塞がってしまったのだ。 俺が声も出せずその場を眺めているとお婆さんは再び、笑う。 「カカカ!びっくりじゃろ?これがぬりかべこんにゃくの実力さね」 俺はこれは本物だと思うと同時にこの前、家のアパートで家具をぶつけて壁に穴をあけてしまったのを思い出した。 「お、お婆さん!!それ、一個もらえますか!?」 「あぁ、構わないよ」 お婆さんはそう言うと値段を告げる。普通のこんにゃくより少し割高だったが全然気にならない。 業者を呼んで壁を直せば倍額以上は取られるだろうからだ。 俺はそれを受け取りニコニコしているとお婆さんがあっと声を出した。 「お若いの、このこんにゃくは間違っても絶対に食べてはいかんよ?大変な事になるからねぇ」 俺はそのお婆さんの言葉に二つ返事をして急いで家に帰った。 家に着いた俺は早速、穴の開いたところに駆け寄る。 家具をかなりの力でぶつけてしまっていて、結構大きく穴が開いている。 俺はこんにゃくを千切り、それを引き延ばす。やはりかなり柔らかい。まるでパン生地を伸ばしている様な感覚だ。 穴を塞げる程度の大きさに引き延ばすと俺は穴にこんにゃくをくっつけた。するとどうだろう、忽ち穴は塞がり、新品同様になった。 「おお!!本当に塞がった!!!」 俺は喜びのあまり、その場で軽く踊ってしまった。 「これ、すごいなぁ…そういえばお婆さん、これを食べるなって言ってたけど何でだろう…腹でも壊すのか??」 俺はお婆さんに食うなと言われていたこんにゃくを見つめる。だんだんとそれが食べてみたいという感覚に変わっていく。 こういうのをカリギュラ効果と言うのかと思いながらいよいよ我慢できなくなってくる。 「あんな効果があるんだ!きっとこのこんにゃくはほかのこんにゃくより美味しいに決まってる…!お婆さんが食べるなって言ったのはどうせ腹壊すとかそんな程度だろ!それに明日は大学も休みだし!」 俺はそう自分に言い聞かせて、さっそく料理に取り掛かる。と言っても、今日の晩飯用に作ろうと決めてた筑前煮にこいつを入れるくらいだが… 30分程経ち、ようやく料理が完成した。俺は早速こんにゃくを口に運ぶ。 「…うーん?普通にこんにゃくだな…」 俺はもっと不思議な触感を期待していたので酷く残念に思ったが、まぁ、半分こんにゃくは残してあるから良いかなと思い、その日の夕食を終えた。 真夜中、俺は目が覚め水を飲みたくなり体を動かそうとするが起き上がれない。それどころか足も手も動かない。目は開いてる筈なのになぜか真っ暗だ。 おかしい、こんなに真っ暗なのはどう考えてもおかしい。俺は助けを呼ぼうと声を出そうと思ったが声すら出ない。おかしい。おかしい!! 助けて!助けて!!助けて!!!誰か、誰か誰か誰か誰か誰か…… 「あの若者、食べてないだろうね?なんせあれはぬりかべの魂を入れたこんにゃく。あれを食ってしまったら食ったやつがぬりかべ…家の壁になっちまうんだから…」

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ぬりかべこんにゃく