とぅと
7 件の小説あたまのお菓子な小説
兎がね、ぴょんぴょんと飛び跳ねる様を見た事があるかい? 飛び跳ねる際にね、耳がひこひこと動くんだよ。 不思議の国のアリスじゃあ兎は立って走っていたのに飛び跳ねるだなんておかしな話だね。 アリス、と言えば……僕の叔父上は大層変わったお方で、金色の髪に青い瞳がお好きなのさ。 まるでそれは正にアリスのような見た目だろう? けれど叔父上からすればその見た目をしている少女は決まってロイスという名前になるようなんだ。 なんだかこれもおかしな話だね。 けれど叔父上からすればお菓子のように甘いお話だそうだよ。 叔父上の娘がアリスのような見た目で幼かったからかな。 あれ、なんの話をしていたんだっけ? まあいっか。お菓子でも食べよう。君の脳内を可笑しく犯しながらでもね。
今更ながらにご挨拶
はじめましての方ははじめまして。 とぅと、と申します。 物書きをするのが好きな人間です。 特に短編や短編にも満たないものを書くのが得意です。 ですがそれ以上に言葉遊びをするのが好きでして。 言葉のひとつひとつに意味を込めて、まるで雪見だいふくのように包み込む書き方をする癖があります。 (雪見だいふくの餅部分をオブラートとし、包まれているアイス部分を直接的には表現はしないものの伝えたい真意とする事) また、以前書いた『アイスクリームを君と。』に登場するセリフの『あいに来ちゃった』のように複数の意味合いを持たせる遊びもする事があります。 (会いに来ちゃった、愛(し)に来ちゃった、逢いに来ちゃったという意味合い。会いには友人であり幼なじみとして。愛(し)には一方的な想いを伝える為に。逢いには恋人となりたい、逢瀬でありたいとの思いより) ですので人によっては意味の分からない小説となる事もあるかと思います。 その点はご了承ください。 遊びが好きな物好き故に。
【a】気ままな休日
そうだ、ゆっくり過ごそう。 確かに遊びに出掛けるのも楽しいかもしれないが、そもそも出掛ける事が面倒だし疲れてしまう。 やはり家が落ち着くというものだ。 あなたはそうと決めると朝のルーティンをせっせとこなし、趣味に没頭するようにした。 いつもはあまり出来ない事も、休日なら出来る。素晴らしい事だ。 そうして暫く趣味に没頭していた時、ふと時計を見ると時間が幾らか過ぎていた事に気がつく。 なんとも不思議な事に好きな事をする時は時間が過ぎるのが早いものだ。 昼食はどうしようか、何を食べようか。 そんな事を考えるあなたにそれは訪れた。 グラッと机に置いてある物が独りでに揺れて、そのまま床に落ちたのだ。 物が独りでに勝手に落ちた、という事実に背中にぞわっとしたものを感じるのと同時に落ちた音が耳元で妙に響き渡る。 今のはなんだったのだろう。 決して落ちるようなものでは無かったのに。そもそも触れてすらいない。 あなたはその事実と先程見た光景に恐ろしくなって慌ててベッドに向かうと、頭から布団を被った。 こうすれば、こうすれば安心する。ここは大丈夫。 きっとそう、大丈夫。大丈夫………。
【b】気ままな休日
そうだ、遊びに出掛けよう。 家でゆっくりと過ごすのも良いが、やはりこういう休日こそ外に出て日頃のストレスや鬱憤を晴らすべきなのだ。 何処に行こうか。そもそも今日予定が空いている友人はいるだろうか。 急に誘っても気にしなさそうな友人をリストアップしつつ、何処に行こうかと考える。 いや、だがその前に済ませる事は済ませるべきか。とりあえずとあなたは朝のルーティンをせっせとこなす事にした。 …………… 朝のルーティンもこなし、行きたい場所も決まった。 さてそれではリストアップした友人を誘おうかとあなたはメッセージアプリを開く。 しかし開かない。タイトルロゴが出て終わりだ。 おかしいなと一度アプリを閉じてもう一度開いてみるも同じくだ。それなら次はとスマートフォンの電源を一度落とし再起動してみるがどうだろう? もしかして何か不具合でも起きているのだろうか?それともスマートフォン本体の問題か? そう思いつつ再起動はしたがさっぱり改善はせず、あなたは仕方なく電話をする事にした。とりあえず電話で行けるか確認と同じ不具合が起きてないか聞こう。 ぴ、ぴ、ぴ、とダイヤルを押し友人に電話をかけるとコール音が二回続いた後に電話が繋がる。 もしもし? そう声を掛ける前にあちらから声が上がった。 「もーしもしもしもし?願いは決まったああああああああああああ???」 え。
【選択肢分岐】悪い夢
少女のような少年のような可愛らしい声が聞こえる。それは楽しそうに笑っているが、果たしてどこから聞こえているのか、笑っている主は誰なのかは全く分からない。見渡す限り真っ暗で姿形も何もないのだ。 だがその中で一瞬、二つの黄金の目がこちらを見つめているように見えて…… あなたは目が覚めた。 清々しい程の朝だ。カーテンから漏れ出た朝日で部屋の中がうっすらと明るく照らされている。 起き上がったあなたの体はどうしてだろうか、汗をびっしりとかいている事だろう。 なんだか悪い夢を見た気がするのだが、思い出せない。特別意味があるような夢ではなかった気がするが…… 考えても答えにたどり着く事が出来ないモヤモヤに加え、汗でとにかく体がべたべたして気持ち悪い。 とりあえずシャワーでも浴びようか。 …………… シャワーを浴びてスッキリしたであろうあなたは、カレンダーを見てそういえば今日が休日である事を思い出す。 ゆっくりと一日を過ごそうか? それとも遊びにでも出掛けようか? どちらをするにも楽しい休日が過ごせれるだろう。 さあどうしようか。 a.ゆっくりと過ごす b.遊びに出掛ける 【選択肢分岐とは】 こちらのシリーズの作品はあなたであればどうしたいか、どう動くかを想像し、二択から選んで次の話を読む分岐型小説です。 次話投稿時に分岐先の話が二話投稿されますので、選んだ方の話を読んで下さい。 選択肢分岐がある話には【選択肢分岐】の表記が、分岐先の話には【a】もしくは【b】とだけ表記があります。 (例) 今回ゆっくりと過ごすを選んだ方は【a】を読んで下さい。
誰かが持ってきた噂話
ねぇねぇ、なんでも屋本部って知ってる? 噂なんだけどね?なんでも願いを叶えてくれるらしいの。 でも一度に叶えられる願いは一つだけなんだって。何でかは分からないけど。 ネットの検索画面ってあるでしょ? あれで、なんでも屋本部って検索かけて一番下までたどり着くとホームページがあって、そこからお願い出来るみたい。 本当かどうかはやった事ないから分からないけど、そうらしいよ。 本当なら良いよね。テストしなくても良くなりますようにーってお願いしてみよっかな………… なんてね! あれ? どうしたの? もしかして今の話…気になっちゃった? 気になっちゃうよね。だってお願い叶うなら嬉しいもん。 例えばほら、お金持ちになれますようにーとか、美人になれますようにーとか、不思議なパワーが使えるようになりますようにーとか。 因みに僕なら『お菓子が空から沢山降ってきていーーっぱい食べれますように』って願うかなぁ。 でもねでもね? 良いんだよもっと別のコトお願いしても。僕らは願いを叶えるお人形…君の願いも沢山叶えたい。それでそれで、沢山沢山君のものちょーだい?いっぱい持ってるお金でもキラキラ持ってるタマシイでもいーよ?寧ろ僕はそれが欲しいな!欲しい!沢山食べたいお菓子(タマシイ)!あ、えへへ…自己紹介出来てなかったね、ごめんね。僕の名前は█████!仲良くしよーよ。それでそれで君の願いは何かな?もしかして気に入らないアイツのコト?それとも逆に気になるあの人のコト?じゃなくてじゃなくて、内に秘めてた願いのアレのコト?どれでもこれでも叶うよ。さあ、お願いしてみてよ…その可愛い可愛いお口でさ。さあさあさあさあさあさあさあ! 貴方ノ願イ叶エ〼
アイスクリームを君と。
小さい頃の思い出というものは厄介で、まるで小鳥の刷り込みのようにこびり付いて離れない。 僕のこの想いもきっと正にそれなのだろう。 いつ頃だったか。君は僕がまだ幼かった頃に僕の家のお向かいに越してきた。真っ赤な頬っぺたと、それとは真反対の色をした髪留め。左右に髪を結った君はまるで可愛らしくて、僕は控えめにご挨拶をしたものだ。 『こんにちは』 『こんにちは!みーちゃんはね、みずきっていうの!』 自分の事をみーちゃんだなんて呼ぶ君は満面の笑みでそう返してくれて、僕も少し照れながら自身の名前を返した。 残念な事にこの辺りは田舎であり、僕達くらいの歳の子は僕と君と知ってる限りであと数人…当然の如く仲良くなるのは早かった。 春には花見に出掛けて、夏には川に遊びに行って、秋には一緒にどんぐりを集めて、冬には雪だるまを作っては崩した。 まぁ、君はどんぐりから虫が出ては泣いてたし、雪だるまを作るにも鼻には人参を刺すかきゅうりを刺すかで揉めたけど。けれどそれは万華鏡のように煌びやかで、お菓子のように甘い思い出だ。 だからなのだろうか。いつの間にか、みーちゃんをお嫁さんに貰うのは僕なのかな…なんて思っていた程度には君の事が好きになっていた。 舌っ足らずな君が好き。 真っ赤なランドセルを背負って一緒に手を繋いでくれた君が好き。 中学に上がっても一緒のクラスでホッとしてた君が好き。 どんな君も好きで、どんな君も知りたくて。 だから僕は欲張ってしまってのだ。 「欲張っちゃったから、あいに来ちゃったんだ。ごめんね」 「………」 僕は今までの思い出と思いの丈を目の前の人物へ語りながら、そう呟いた。静かな病室の中で相変わらず返事はないし、こちらをあまり見ようともしないけれど気にはしない。 …高校を卒業する前、瑞希は家出をした。 田舎というものはやはり退屈だったのだろう。瑞希のSNSのアカウントには『家を出たい』『田舎たいくつ。東京行きたい』『家出しよっかな』の文字が並んだ投稿が沢山あった。 その中でも家出女子というハッシュタグを使った投稿には沢山の反応があり、それを思い出す度に思わず僕の眉間に皺が寄る。 だがそれにああだのこうだのと言っては瑞希はもっとおかしくなってしまうだろう。 だからこそ、僕はお見舞いにと持ってきていたお菓子の詰め合わせを彼女の膝の上に置いて再度語りかけた。 「警察がさ、瑞希の家に行ったって父さんと母さんから聞いて…瑞希、大事にはなってないって。安心したよ、でも心配した」 「………」 「すぐじゃなくて良いからさ。ゆっくりでいいからまた良くなったら一緒に遊んだりしよう?最近近くに牧場が出来てね。そこのアイスクリームが濃厚で美味しいんだよ」 アイスクリーム、という単語に瑞希がこちらをゆっくりと見る。こんな時でなんだけれど、流石甘いもの好きだ。 だがトラウマがあるのか、男である僕の顔を見ると明らかに瑞希の顔が強ばり肩が震える。 「大丈夫、今はこっちを見なくてもいいよ。ゆっくりで、ゆっくりでいいから」 僕の顔を見れなくなってしまった瑞希と、何時までも待ち続ける僕。果たしてどちらが先におちるのか。 甘くて濃厚で、まるで僕らの思い出のような…そんなアイスクリームを君と。