憧れ屋
12 件の小説雨
雨が降った。 ふと窓を見ると一滴の雫が窓の縁に落ちた。 横になりながら、こんな日も悪くないと目を瞑る。 雨の音を聞くと心が落ち着く、今日はゆったりと読書でもしようか。それとも、ベッドから見える外の景色を描こうか。 そんなことをずっと考えている。 雨に心を揺さぶられながら、 やりたいことを連想させる。 そのうち雨の音も強くなる。そしてまた弱くなる。動かない体と、よく動く心を雨に委ねて、病室の窓に映る景色を見ていた。
空
明るい空 薄暗い空 綺麗な空 悲しい空 色々な空がある。 空は自分の鏡 自分の感情が空に映る。 今日の空はどんな空でしたか。
星
今日も僕は嫉妬する。 こんなに悲しい夜でも星は見える。 今日も僕は嫉妬する。 辛く嘆いた夜も星は輝いている。 今日みたいに雲におおわれて星が見えなくても、 雲のはるか上で光を発したり、反射したりしている。 誰にも見られてない夜でも、星は輝く。 届いて欲しいと光る。 そんな星たちに、僕は今日も嫉妬する。
2つ生きる
頑張ると疲れます。苦しみます。辛くなります。 頑張らないと、楽です。苦しくないです。辛くないです。 頑張るか頑張らないか このふたつで生きています。
怖いこと
僕は今、とても重い病気にかかっている。 僕は男だから、外では怖がらないようにしているのだが、内心はすごく怖い。 そして、とうとう明日はその病気の手術の日だ。 震えが止まらないよ。 お母さんは言う、手術しなければもっと大変なことになるよ。と でも怖いものは怖いのだ。 後悔の念が僕の胸に押し付けられる。 早く終わって欲しい。 過去に戻りたい。 そんな何がしたいか分からない自分にもうんざりしてくる。 本当に怖いけど、頑張るしかないし、 辞めることが出来ない。 僕は人生の壁にぶち当たっているんだ。 この壁をぶっ壊して、次のステージに行くんだ。 そう言って自分を奮いだたせた。 よし、 虫歯に立ち向かおう。
ロボット
「いらっしゃいませ。」 僕は感情を持ったロボットだ。 やりたいこともできず、日々、同じセリフを繰り返す。 人間とそっくりにできてるから、普通に話しかけられることも多々ある。 そんな時はロボットですなんて言わず、人間を突き通すんだ。 でも僕はロボット、人間より出来が悪い。そして感情がある。 だから多分そこらのロボットにも負ける。 なぜ僕はロボットなのか、自由になりたい。 だから僕は人間になりたい
転がる石
だんだん自分がかけていくような日々 だんだん誰かに抜かれていきそうな日々 だんだん日が暮れて、 だんだん暗くなる。 だんだん怖くなって、 だんだん辛くなる。 だんだん疲れてくる。 だんだん嫌になる。 でも僕らは転がり続ける。
傘
傘をさそう。 傘は君を雨から護ってくれる。 しかし、そこに本質はない。 君が傘を持つことに意味がある。
絵空事
僕は絵空事 僕はまだ本気を出していない。 頑張ろうとしたことはあるが、結果は出なかった。 多分、本気でやっていなかったのだろう。 今日も僕は絵空事
苦い紅茶
僕には、密かに思いを寄せている人が居る。 その人は、僕の会社へ行く道の途中にある小さなカフェの店員さんだ。 カフェは海の目の前にあり、 夏は海水浴場の海の家にもなるそうだ。 彼女との出会いは1年前、新しく出来たこのカフェに同僚と寄ってみた時の事だった。「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりでしょうか。」 その時、僕は彼女に一目惚れしてしまった。ぱっちりとした目に、少し高めの鼻、くせ毛ひとつないポニーテールの髪とその間から見えるうなじ。 口では言い表せないが、とにかく運命的なものを感じてしまったのだ。 それから僕は毎日会社へ行く途中、彼女に会うために必ずカフェを寄った。 今日もまたぼくはそのカフェでブラックコーヒーを頼む。 「いらっしゃいませ。」 海のように透き通る声が僕の耳を捕まえる。彼女はいつものように黒のエプロンを着け、美貌な顔面を晒していた。 「ブラックで」 「はい、今日はお早いですね。」 「今日は大事な会議があるんだ。」 「そうなんですね。頑張ってください。」 「ありがとう。」 僕はいつものテラス席に座った。 彼女は微笑みしながらコーヒーを運び、僕の目の前に置く。 「お待たせしました。」 冬の海を眺め、ブラックコーヒーを1口。 元々僕は苦いのが苦手だが、このカフェでいつも頼み、克服した。理由は言うまでもない。 ブラックコーヒーを飲み終えると、すぐに会計をした。「100円です。」100円をカルトンに置き、店を立ち去ろうとする。「頑張ってくださいね。」 片手をポケットに入れ、軽く会釈をした。 今日は帰りが遅く、もう辺りは街灯の光だけで埋め尽くされる。 かじかんだ手をポケットに入れ、暗くなった海を眺めて歩く。 カフェはもう閉じているが、僕のいつも座るテラス席が、また明日も来いと導くように月の光を吸っているのが見えた。 次の日、僕は家の用事で昼から出勤することになった。 その日も欠かさずカフェに寄る。 いつものようにコーヒーを頼もうとしたが、この日は何となく無糖のレモンティーを頼んだ。 少し店員さんも驚いた顔をしていたが、すぐ、いつものにこやかな顔に戻った。 テラス席につき、すぐに紅茶が来た。 「今日は遅いですね。」 「今日はたまたま用事があってね。」 「今日は珍しく紅茶なんですね。」 「なんとなくだよ。特に理由はない。」 「そうなんですね。ではごゆっくり。」 レジに高身長の男性客が並んでるのに気づき、少し笑って小走りで戻る彼女。 そんな彼女を自然と目で追って、会計姿を眺めた。 苦い紅茶が舌を刺激した。