もちもち金斗雲
87 件の小説もちもち金斗雲
書きたいままに、頭に浮かんだ映像を文字にしています。たまに二次創作も書きます。基本サムネは自分が旅先などで撮った写真かフリー素材です。いつもいいねありがとうございます! 投稿頻度が高まったり落ちたりしますが、隙を見計らって投稿していきます。
あの日交わした約束はいつまでも。
「毎年あなたと見る桜は格段に綺麗」 僕の妻は結婚する前、僕にそう言って 逆プロポーズしてくれた そう。あれは四月十九日のこと。 まさかそんなこと言われると思ってなかったし そう思ってくれていたなんて知らなかった。 自分の実家はThe日本家屋で山にあって 庭が広くて大きな桜の木があったから、 わざわざ他のところに行って お花見なんてしなかったんだけど 妻は毎年見るのが楽しみみたいで 毎年毎年違う場所で一緒にコーヒーを飲みながら 他愛のないおしゃべりをするのが恒例だった 桜はいい。 目に優しい色をしているし 八重桜の八分咲きは洗って塩漬けにすれば 桜茶になる。 ああそういえば 毎年母が卒業式に持っていってたな。 まぁ妻は、事故で他界してそれっきり。 塞ぎ込んだ僕は桜を見れなくなった。 でも3年がすぎた今なら お花見もできる気がする。 今度、君が僕にプロポーズしてくれた場所で 2本の缶コーヒーを買って お花見をするとしよう。 一緒にあの桜を見よう。 四月十九日 午後一時に 東丘公園の桜の木の下で。
愛する人は無口なまま。
空と地面の間に、君がいた。 儚い色を纏った君。 触れたら崩れそうで 声をかけたら消えてしまいそうだった 僕は臆病だ だからいつまでも 僕は花束を抱えたまま 声をかけることも 花を手向けることも出来ない 君は笑顔が素敵で 作る料理はどれも美味しくて 手先が器用で 感受性豊かで 慈愛に溢れた人だった そんな君は 3年前の今日 道路に飛び出した子供を庇って トラックに轢かれた 僕は本当に 「どうして君が死ななきゃいけなかったんだ?」 と心の底から思ったんだ。 誕生日にして命日の今日は 三年経った今でも 笑うことはできないよ 今日は 下界に来ることが許されたんだね。 今でも僕のことを 君は覚えているのかな
ソフトクリーム
溶けてなくなりたい 溶けて消えてしまいたい 溶けて... ソフトクリームを見る度に そんなことを言う君。 そんな君は 僕が食べてあげるよ 今夜は寝かせない。 後悔しても 遅いからね?
生きる屍と電池
プツンと 自分の中で何かが切れた 私は地面に倒れ込む 世界が反転している 何が起きたのかは分からない でも すごく 眠い 今なら永久に眠れる 安らかに... 電池が切れたように... 私が… 会社から居なくなったら… 仕事、回らなくなるんだろうな… 私は笑う 大声で ビルとビルの間を反響して みんなの耳に届くくらいに 私はそこから覚えていない 人間は 電池式なのだ
ちいさな世界
空から降った 飴 モグラがくれた 金平糖 鯉がくれた 羊羹 狐が咥えていた かりんとう ハクビシンが見つけた 金つば 君がくれた 緑茶の茶葉 太陽が少し傾き始めた頃に みんなでお菓子を持ち寄って お茶会をしようね。 僕らはみんな生きている。
取り扱い説明書
「取り扱い...説明書...?」 僕が部屋の掃除をしていると、2枚の手紙を見つけた。1番上には「取り扱い説明書」と書いてある。コピー機とかエアコンとかそういうものの類いかと思ったがどうもそうじゃないらしい。 「庄司...るな...」 対象者は庄司るなという女性のようだ。同級生...?幼なじみ...?いやどれにも当てはまらない。誰のことなんだ?僕は階段を降りて母と姉に聞いてみた。 「面白いもん出てきた。取り扱い説明書なんだけどさ。」 姉と母はテレビを見ながらふぅん。と相槌を打つ。 「庄司るなって言う人のやつ。書いたのは僕っぽいんだけど...誰か知ってる?」 紙をペラっと見せると母は 「庄司?あぁ..。高校時代の先生でしょ。あんたが嫌いだった、あの委員会の先生。」 姉も賛同する。 「ほらキレ散らかしてたじゃん。勝手に業者に出したとかで。」 母と姉は「あの時は大変だったわねぇ」と笑っている。 僕は少々腑に落ちないまま自室に戻る。 ベッドに腰かけ、手紙を開くとそこにはいくつかの注意点が書いてあった。 一、先生は二転三転する。決定事項の確認した2日後には言うことが真逆になる。 二、先生は八時十五分以降に出勤するため朝には会えない。 三、学校中探し回って会えない時はだいたい音楽室横の部屋にいる。 四、先生は確認していないものも勝手に業者に出す。 五、付箋やメモ書きを残しても高確率で読んでくれない。 六、先生の戯言には耳を貸さないこと。イラッとしても受け流すこと。 七、僕はあの先生を許さない。 僕は先生を許さない。一生。呪ってやる。 手紙はここで終わっていた。高校時代の自分はかなり火力が強かったのだなぁと思いつつ、高校時代の記憶は嫌なものが多かったからか、自分の脳は記憶の多くを閉ざしてしまった。だから今は覚えていない。これを読んでも、ぼんやりとしか思い出せないのだ。 あの頃の僕は、苦労していたのだな。 2日後、高校教諭である 庄司るな が突然死を迎えたのは、ここだけの秘密である。
虹は雨が降らねば出来ぬ物
ふわふわのお布団 ふわふわの枕 ふわふわのカーペット 新生活がもうすぐ始まる 大学生 高校生の時は高校生って感じがしないまま 卒業しちゃった 今度は大学生だなぁって思えるような 生活になればいいな 嫌いになってしまった勉強も自分のためなら きっと頑張れる 憂鬱な日々にさようなら 私の新しい生活は きっと桜色
心の染み
おみくじを引いたら学業の面で 「甘えるな」 って書いてあった 今は生きるのですら辛いのに 色々新生活の準備ですら辛いのに 勉強どころでは無いのに 私は 今 甘えているのだろうか 生きるのですら心が辛い私は 既に甘えているのだろうか 頭の中にあった引き出しは 南京錠がかけられ 錆びてしまって 開けるための鍵すらどこかに無くしてしまって 記憶が、知識が 出てこない 文章を読んでも 目が滑る 日に日に 「前はできていたのに」が増えていく やってみれば そういう現実が突きつけられるから 怖くて 辛くて 何も出来ない 底辺なりにも 努力していた高校時代の方が まだマシだったかもしれない やっぱり 生きているべきじゃなかったのかな 眠るように 死ねたらよかったのに
根無し草
ふわり ふわり 根無し草 行く宛てもない 待っている誰かも居ない ただそこに在る 流れる水に身を任せ 遠くに遠くに流れていく 流れるものは、1度たりとも同じでは無い 川の水も 雲も 時間も 僕は、ただそこに在るだけでいい 多くは望まない それで十分幸せなのだ われ ただ たるを しる(吾唯足知) 余計なものは持たない方が、幸せだった 来世は上手くやれるかな そう思う心も余計なのだろうか
桜色のクリップ
クリップで留めた書類 クリップで留めたページ クリップで留めた...自殺の遺書。 僕はもうクリップで留めることはないと思ってた。 でも今は僕の心は桜色 ふわふわしてて、明るくて何にでも成れる 僕は過去を消した 苦しい記憶も、辛かった過去も全部。 僕は心の中にある桜色のクリップで 楽しい記憶だけを留めていく。 僕は開放されたのだから。 姉がくれた桜色のクリップ 家族が支えてくれた 友達が静かに見守ってくれた 僕の手には 今 桜色のクリップがある 僕には、幸せに生きる権利がある 僕の心には、それだけが残った 幸せな記憶が散りませんように。