夜さり
12 件の小説文字を喫する。
最近、物忘れがより酷くなった。 さっきまで置いてあった物が、 何処にあるか分からない。 思い出したい人を、思い出せない。 お母さんは、薬のせいだと言っていた。 母は看護師で、精神系の薬に詳しい。 普段私は、鬱病から起こる感情の起伏や希死念慮を抑えるために、精神安定剤を服用している。 母の話では、精神系の薬には脳の活動を弱めたり、 若年性認知症の恐れがあるそうだ。 酷く不安定な気持ちになると、 また薬に頼っては脳の活動を無理やり抑えつけている。 これが正しいとも悪いとも言い切れない。 たまに、ふと不安になる。 ある日突然、誰の事も思い出せなくなり、 自分の事さえ忘れてしまうんじゃないだろうか。 そんな不安感に押し潰されそうになると、 本を読むようにしている。 知らない物語や文字は、 頭に新たな情報として満たし続けてくれる。 知らない単語があればまた調べ、 知識の幅を広げてくれる。 空っぽになっていく私を、 文字が一つ一つの繊細な形を成して、 “自分”という存在を作り上げる。 文字を読み続けられる限りは、きっと大丈夫。 私は今日も、文字を喫する。
普通に生きる。
普通に生きる事の正解が、 私には分からない。 学校を卒業したら、 就職して。 結婚して。 子供を産んで。 それが社会の普通だ。 箱の中で生きる私達は、 そんな当たり前を強要され続ける。 そろそろ就職しないの? いつ結婚するの? 孫の顔を見るまでは、生きないとね。 もう、面倒だ。 普通という縛りが、私という生き物を殺し続ける。 社会という箱庭に合わない生き物は、 徹底的に排除するルールだ。 貴方は、普通でいられてますか? 恋愛してますか? 就職をしてますか? 子供を産んで、皆に喜ばれましたか? 普通という人生は、 どうやったら歩めますか。
愛で、いる。
“安心”とか、そんな不確かな言葉じゃないと思う。 自分の足りない部分は何処か探すように、 哀愁の漂う部屋で、二人は息を切らしていた。 全てが終わる。 さっきまで一人だったはずなのに、 ずっと二人だったような感覚に包まれる。 −一生一緒にいれるなら。− 誰かの歌詞のような言葉が頭を過ぎる。 ねえ、この瞬間、 貴方はいつも何を考えてるの。 夕暮れ色に灯る光の中、 君の顔がやけに霞んで見えた。 私の胸で、 少し寂しそうな顔を浮かべる君。 近づくと離れていってしまうような、 歯痒い距離感が私を苦しめる。 仕事で忙しい私達は、 週末の度、この場所に辿り着く。 神泉、激安ホテル。 この場所が私たちを繋ぎ止め、 生かし続ける為の唯一の居場所。 踏切の音が、やけに鼓膜に響く。 耳の奥で木霊する社会の残像が、 私と貴方を引き離して。 次会えるのは、また来週。 この気持ちが分からなくなっても、 それでも私は、 愛で、いる。
街灯
街灯に照らされ、母の手を繋いで歩く。 『今日、夕飯何にしようか』 「なんでもいいよ」 『それが、一番困る』 父親も居らず、夜勤が多かったあの頃にとって、 私と母の少ない思い出だ。 『学校は楽しい?』 「うん・・・」 いじめられるようになって、 だんだんクラスの子とうまくいかなくなっていた。 でも、そんなこと言ってお母さんを困らせる訳にはいかない。 もう少し、 もう少しだけ頑張ってみるから。 「なんか最近は、体調悪くてさ!」 『そっか・・・。アンタのペースでね』 街灯の灯りが消えかかる頃、 母の表情はぼやけていた。 住宅街を抜けて、家までもう少し。 煮物の香り。 お魚を焼く、いい匂い。 これは、シャンプーの香り。 少し違うなぁ。柔軟剤の香りだ。 家の近くの目つきの悪いおばさん。 こちらを覗き見ながら、洗濯物をしまっている。 街灯に照らされ、帰路に着くと母はこぼす。 『ご飯にしよっか』 「うん!」
小説
重い瞼をあげ、一行の文字を追うことにひたすら集中する。 一つの行すらまともに読めない私にとって、 小説とははっきり言って苦行だ。 読んでいくうちにだんだん文字がぼやけてきて、 他の行と読んでいた行が重ね合わさる。 意固地になって更に集中して読んでは、 文章の中の単語を汲み取り、 頭の中で他の事に連想していく。 難しい・・・。 私の目は、片目が斜視なようで、 不細工な顔がより滑稽に映る。 更に、精神科のお医者様の意見では、 ASDにADHD、鬱病とまで言われてしまっている。 「ああ、そういうことか」 と、事の真相を明らかにしては、 また生き辛い日常がやってくる。 だけど、文字を読むのも、書くのも、 私はやめてあげない。 不可思議なことに、文字を追っている時だけは、 難しいことを考えなくていいし、 安堵した時間がやってくる。 私にとって、日常とは難しい事の連続。 ぼやけた文字を何度も読み返して、 心の拠り所を探し続ける。
追悼(五)
会話中にマウントをとってくる奴と、 私のことを下に見てくる奴は総じて消えるべき。 リアル鬼ごっこで名前呼ばれろ。 善意で見せてるつもりやろうけど、 自分の価値観で丸め込もうとする奴ガチきしょい。 お前の世界に私を引き摺り込もうとするな。 ヴィジュアル系バンドか??? 人間の何が嫌って、 その人が欲しい言葉と違った時の目と声色、 本人も気付いてない強い言葉。 スピッツが好きすぎて、 なんかもう私が草野さんになりたい。
追悼(四)
誰かに自分の人生任せたり、 なんとかしてくれるだろなんて100%ない、まじで。 受付が一生Indeedでパート募集してる心療内科は気をつけてください。まじで対応がクソ。 なにもしたくない。このまま屍になりたい。 あわよくば、ポンデリングになりたい。 来世は猫になりたい。 好きな人の家猫なら尚良。
追悼(三)
毎日、全てを捨てて消えたくなる。 将来の夢はヒカキンになること。 何でそんな普通の顔して生きれてるんだ。 バイト中死んだ目で買うハンギョドン。 (ハンギョドンのクレープ)
追悼(二)
普通に仕事して、普通に生活してる人に尊敬でしかない。 普通に生きれるって本当に凄い。 まず、“普通”ってなんだっけ。 ワクチン接種完了。 (二郎系ラーメンニンニクヤサイアブラ) 特に仕事はフルで気を使う。 本当に人と関わるのがもう嫌だ。 こう思われてるとか、 絶対この人に嫌われてるとか人一倍感じやすい。 もう喋るのも、関わるのも疲れた。 明日には変われるやろかーーーーー!!!! (クリープハイプ、イノチミジカシコイセヨオトメ)
追悼(一)
誰かに責められてるわけじゃないのに、一生誰かに責められてる気がする。 結局大人なんて誰も信じられない。 これでしか救われない夜、あと何度訪れるの。 (ストロングゼロ ダブルグレープフルーツ) 馬鹿みたいな顔して、頭の中性のことしか考えてない酔っ払い大学生に、馬鹿みたいな顔でお酒を出して、ラストオーダーも取って。 嫌な対応されても、怒らないで、逃げないで。 店長に理不尽なこと言われたって、挫けないで生きてる。 毎日、頑張ってるよね。