わたし
2 件の小説どうしようもなく汚い私の話
なんで私って生きてるんだろう。 朝起きると、毎日のように思っている事だ。いつも何をしてても呪いのように頭の片隅にそんなことが思い浮かぶ。 私は、顔がアイドルのように可愛いわけでも、歌がものすごく上手いわけでも、頭が凄くいいわけでも、運動がスポーツ選手並にできるわけでもない。 ただ、平凡にそこに生物として存在しているような、そんな感じだった。 朝起きて、学校へ行っても周りのみんなと自分を比較し、あの子は頭が悪いけど、顔が可愛いからな、あの子は運動は出来ないけれど頭が凄くいいからな、あの子は勉強も運動も出来ないけど歌が凄く上手いしな、と。こんなことばっかり考えて上ばかり見る自分も嫌いだが、それと同じくらい嫌いな自分もいる。 あの子、本当に可愛くないな。運動も出来ないし友達もいなくて何が楽しいんだろう。 あの子は、すごく頭が悪いのになんであんなにヘラヘラしていられるんだろう。 あの子、運動も何も出来ないのに部活なんか入って変な子。 など、自分よりも下のような人達を見て嘲笑うかのように考えてしまっている自分が存在していることを、私は強く否定出来なかった。 12月の朝、私は眠気に目を擦りながら目覚めた。 私は、クラスの子達より、顔がちょっと可愛くて勉強も運動も平均か、それより少しだけ上か下かそのくらいだった。 顔がちょっと可愛くても、アイドルやモデルになれる訳でも、スカウトされて逆転人生という訳でもないし、勉強も運動も平均並ということは別に、特別でもなんでもない。何か、ずば抜けた才能が無いと、何にもならないのだ。 私は、将来の夢は何ですかという質問と、特技を教えてくださいという質問が、本当に本当に嫌いである。 私はなにも、全てがどん底という訳ではない。 中途半端に満たされているからこそ、苦しいのだ。周りの人にこんな、相談なんて死んでも言わないだろう。 「可愛いんだからいいじゃない。」 「平均取れていたら問題ないよ。」 「平均点行ってるんだから、学力に問題はないと思うけどね。」 「ユナちゃんは、可愛いから大丈夫だよ。」 返ってくる答えはたぶん全て、予測できるような薄っぺらい何の励ましにもなっていないようなものばかりが返ってくるだろう。 だから、答えなんて聞く気にもならない。 私は、急にあの子の事が気になった。 小学生の時仲の良かった、████だ。 あいつは、私の事を憧れにしていて、いつも後ろを追いかけてきて、私の好きだったバンドグループも、コスメブランドも全てを真似して来て、なれるわけなんかないのに私になろうとしていた。 あいつは、身長が小さくて、目も小さいし、髪なんて整える気ないくらいボサボサで、私の真似ばかりしてきて、私は██に内心腹立たしい気持ちをいつも抱えていた。 中学に上がったくらいの、タイミングだろうか、あいつは隣町へと引っ越していった。 久しぶりにあいつのSNSアカウントを覗いて見たら、そこにはすごく可愛くなったあいつが居た。 「え、、」 私の声じゃないみたいな酷く掠れた声が漏れた。 なんで、なんでなんでなんで、あんなにブスだったのに、いつも、私の真似ばかりしていたのに、なんで、、、? 私はひどく混乱していた。 悔しかったのだ。あいつはきっと、努力したのだろう。メイクを研究して、自分に似合う二重幅を研究して、カラコンを何度も試して、服の系統を変えたりしたのだ。 私の真似ばっかりしてたくせに、くやしい。 私は自分が踏み台にされたかのようなそんな胸糞悪い気持ちになった。 私は、その瞬間自分じゃないような自分が考えたと信じたくないような事を思ってしまっていた。 あぁ。なんであいつがあんなに幸せそうなんだろう。 とんでもなく、信じられないほど不幸になっちゃえばいいんだ。 こんなことを、思ってしまった自分に心底吐き気がした。胸の奥をザワザワと刺していくかのような、嫌悪感とあんな奴に嫉妬している自分を認めたくなかった。 どうして、私はこんなに胸がザワついているんだろう。 羨ましいわけなんかではない、なのに、すごく嫌だ。目が離せない。 あの子は、あんなに変わったのに、私は何1つ変われてない。こんな小さいことで、こんなに、こんなに、悩んでるなんて、馬鹿みたいだ。
14歳の夏休み
14歳の夏、外はセミの鳴き声がミーンミーンと忙しく鳴き、頭がおかしくなりそうだ。ブラインドから差し込む光は、鬱陶しいほど眩しくてクーラーは付いているはずなのに、教室はジメジメとしたまとわりつくような暑さが充満していた。じっとりと汗をかいた服が気持ちが悪い。 授業が終わり10分休憩になるとクラスのみんなはそれぞれ仲の良い友達の机まで駆け寄り、笑顔で会話をしている。うちのクラスは男女関係なくみんな仲がいいそうだ。 だけど僕は誰にも話しかける事無く静かに教室を出て水飲み場へと向かう。ふと、廊下に目を向けるとクラスメイト達が小声で話しながら列を作っていた。次は移動教室なのかとぼんやり思いながら僕も急いで列に加わる。教室に着いたがみんななかなか席に座らず立ちながら仲良しと話していたりするが僕はそれらを見えないフリをして指定された席へと向かい着席する。しばらくして教室がシーンとなり話していたクラスメイトたちは急いで各自の席へと向かう。先生が授業を始める。解説する声、黒板にチョークがうちつけられる音、ノートにシャープペンシルを走らせる音だけが、50分間を支配した。つまらないな。そう思い窓の方を見つめる。いつもそうだ。 4限目が終わり昼食の時間になった。 僕はいつもどうり4人班の話に入れずただ、黙々とサラダを食べていた。ふと、入学当初から誰も座っていない机が目に入り、見つめていると班の女子が僕に気づき 「あ、あの机水瀬さんのだよね。」 と会話を始めた。すると他の班員も 「水瀬さんってやっぱり不登校なのかな?私学校にいる所見た事ないかも。」 「顔もわかんないよ。」 など、水瀬雪子について話し始めた。そして班員の河野さんが口火を切った。 「なんか水瀬さんって、学校来てないなんて、舐めてるよね。あの子虐められてる訳でもないでしょ。」 と話し始めると他の班員も 「逃げてるだけだよね。うちらも毎日頑張ってるのに」 「水瀬ってもう学校辞めたんじゃね笑」 など、話し始めた僕はその会話もあまり気にとめずいつもの根も葉もない噂話かと聞き流していた。 僕は、運動も勉強もあまり出来なく友達もずっといない。その事実を嘆くくせに何も変わろうとしない自分に嫌気が差しているしそんな自分に慣れてしまい感覚が麻痺している事実も、受け入れたくもなかった。 今日も僕は何も成し遂げる事も無く眠ついた。 次の日の朝僕はいつも通り、学校へ向かう校門の前に着くといきなり視界が真っ白になり吐きうになった。登校している他の生徒の話し声や笑い声、視線が全て僕に向けて僕を嘲笑い囲いはやし立てているように感じ、耐えられず僕は学校と反対方向の海沿いのあぜ道に走り出した。 公園のベンチに座りぼうっと空を見つめる。もうどのくらい経ったのだろう。時計を確認すると8時半だった完全にサボり認定だ。 もうどうでも良くなり海沿いの道を歩く。人は誰もいない。海水の音しかなく世界に1人になったような不安感に襲われ海をぼんやりと見つめる悲しいほど広く、情けないほど青く吸い込まれそうになり地上と海の境目ももう何も分からなくなり自分が溶けてなくなってしまいそうで何だか懐かしく切ない気持ちになった。 ふと浜辺の堤防に目をやると白いフリルのお姫様みたいな格好をして、手に高いヒールの派手な靴を握りしめた女の子が立っていた。僕は、声なんてかけるつもりは無かったが気づいたら 「そこにいて、落ちない?」 とこえをかけていた。 女の子が振り向いた僕は衝撃が走り頭の上からつま先まで電流を流されたかのような気持ちになった。 その子は信じられないくらいに可愛かったのだ。 背中が隠れるくらい長く、ツヤツヤと宝物のように光る綺麗な黒髪に透き通るように白く綺麗な肌僅かに紅潮した薄い薔薇色の頬、綺麗なアーモンド型の平行二重の大きく伏し目がちな黒く潤んだ瞳に目のふちには溢れるばかりの長くカールしたまつ毛が生えていてツンと尖った高い鼻ふっくらとした桜色の唇は光っていた。全てのパーツが美しく、芸能人やアイドルなんていうレベルじゃなかった言葉では言い表せないような芸術作品かのような美しさだった。彼女はこちらを見て 「落ちたら、助けてくれる?」 と振り返って僕に向かって微笑んだ。 笑顔がとても可愛く僕はその光景を一緒忘れないと心に誓った。 「じゃあね、私もう行くね。また会えたらいいね。」 そう言って引き止める間もなく、彼女は歩いて行った。 僕は、あとを追いかけることも、声を張上げて呼び止めることもしなくただ、力なく、手を振って彼女後ろ姿を見ていた。 学校に戻るのは抵抗があって、家に戻った。家に戻ってもどうせ、親は仕事が忙しくほとんどいないし授業参観なども、小学生高学年程からほとんどと言っていいほど来なくなったしもう、自分に関心が無くなったのだろうと、虚しさが僕を襲う。 僕は誰もいない僕だけが取り残されてる家で久しぶりに泣いた。 次の日、僕はいつも通り学校へ行く。教室にはいる時おはようなどと小声で言うがみんな、僕の小さな声なんか気づかず日常の一コマにも及ばないように、会話が続行される、騒々しい教室の中僕は自分の席にそっと座った。僕だけが、厚い壁の中に閉じ込めれてるみたいで、頭の奥がふいに冷たくなった。 授業が始まり、みんな真剣に授業を聞きノートにメモしたり、あるいは小声で友達と話しクスクスという笑い声が聞こえたり、いつものようにクラスメイトをぼんやりと見つめたあと窓側に目をやる。海が近く、昨日の女の子の事を思い出し、また会いたいなと考えている。名前はなんて言うんだろう。何歳なんだろうか。と考えても分かるはずはないのに悶々と頭の中を駆け巡る。 今日も相変わらず、水瀬さんの席には、誰もいなかった。 帰り道僕は、昨日の女の子に会いたくて海沿いのあぜ道へと走った。 その子は昨日と変わらず、海をぼんやりと見つめていた。 「あ、またサボり?」 といたずらっ子みたいなクスクスと笑いながら話しかけてきた。僕は 「今日はちゃんと行ったよ。」 と返す。内心とてもドキドキしていたが、感じ取られないうに、なんでもないように答えた。 その子はひとしきり笑ったあと 「ふーん。学校って楽しい?」 と聞いてきた。僕は 「楽しくないよ。僕運動も勉強と何も出来なくて友達もいないんだ。」 と初めて、人に弱音をはいた。そんな言葉がふと出た自分にとても驚き、多分瞳孔が開いたと思う。でもその子はなんでもないというように、表情1つ変えずに 「なまえ、なんていうの」 と聞いてきた。 「田口海、きみは?」 と聞いた。その子は 「わたしは、水瀬雪子。よろしくね田口くん私たち仲良くなれそうだね。」 とニッコリ笑って手を差し出し握手した。 水瀬さんは、なんにも無かったかのように 「じゃあね田口くん!また明日!」 と颯爽と走り去ってしまった。僕は、あの子が水瀬さんだということの衝撃で足がしばらく動かなかった。 その日を境に、僕らは何も言わずとも放課後習慣的に毎日会うようになっていた。僕は水瀬さんの事を下の名前で呼ぶようになっていたが、雪子は相変わらず屈託のない子供みたいな笑顔で僕の事を田口くんと呼ぶ。数日間話し、雪子はやっぱり学校に行ってないことがわかった。ある日、僕が 「雪子は、なんで学校に行かないの?」 雪子は相変わらず表情1つ変えずに柵にもたれかかりながら 「うーん。なんだろう学校って楽しくないんだよね。個性個性言いながら、かたにはめるとことか?」 と雪子は少しだけ笑いながらはぐらかす。僕は 「でも、学校に行かないと将来とかなんか、雪子は不安じゃないの?」 と聞いた。雪子はこちらを向いて首を傾げながら 「人生ってなんだろうって考えた時に思うの。6年間小学校に行って3年間中学校に行くの。でも高校にも行かないと中卒だとか、いい職に付けないとか。大学を出てもね、働かないと生きていけない。最終ゴールが働くことだとしたら人ってすごく長い時間働いて、動いて、学んで、人生において休息って無いなって。思ったの。そんなことなら私は立ち止まってずっと休んでいたい、周りのみんなに置いていかれてもって、思ってたの。こんな世界ちょっとおかしいって、でもこうしないと世界は回らないし仕方ないよね」 雪子はそう言って笑って僕を見つめた。僕は、なぜだかその笑顔が泣いてるように見えた。僕は、呆れながらも 「答えになってないけど、雪子らしいよね。雪子はすごく自由に生きてる感じがして、狭い教室で根も葉もない噂話を広めてるクラスメイト達とは全く別の生き物みたいだ。」 と雪子の笑顔に見とれていたのを隠すかのように、僕は理屈っぽく返した。雪子は相変わらず、ニコニコと屈託のない笑みを浮かべている。 僕はそんなに雪子を見てると、なぜだか全てがどうでも良くなりすごく、安心するのだ。 僕たちは放課後だけ会える秘密の友達というような優越感に浸りながら、いつもと変わらない平凡な日常を過ごしていった。 平凡な日常の少しの休息、といっても宿題は大量に出たが、夏休みに突入した。 僕は、放課後の時間ではない。朝の9時に海沿いのあの場所へと歩いて向かってみるとそこには、雪子がいた。雪子は、いつもどうり個性いっぱいで全体的に赤色できめたロリィタファッションだった。フリルの多いスカートが海風に揺れていて、リボンやレースが朝の光を受けてきらきらして見えた。 正直、この街でその格好はかなり目立つはずなのに、雪子はそんなこと気にも留めていない様子で、海を眺めながら鼻歌を歌っていた。僕は駆け寄って、 「来る約束してないのに、まさかいつもこんな時間からここにいたの?」 と驚きながらも、雪子に聞くと 「海、好きだし、夏休みはもっと好き。」 と雪子は、嬉しそうにいつもより笑った。頬が紅潮しピンク色になって綺麗だった。僕は笑いながら 「学校は嫌いなのに、夏休みは好きなのか。雪子は毎日が夏休みじゃん。」 と少しだけ揶揄うと雪子は 「田口くんってたまに毒舌だよね」 と笑いながら頬を膨らませていた。 僕はその様子が可愛くて吹き出してしまうと雪子は 「またバカにしてるでしょ。」 と笑いながら言ってきて、僕らは少しの間二人で笑いあっていて、久しぶりに心から楽しいと思えた。素敵な夏休みの始まりだなと心のどこかで胸が弾んだ。 雪子はひとしきり笑ったあと、ベンチへと駆け寄り勢いよく座って、僕にこちらに来るように手招きしてきた。僕も雪子の真似をしてベンチへと駆け寄って勢いよく座った。それを見てまた2人で笑う。いつもの時間では無いだけでこんなに、他愛ない事で、沢山笑って、この時間が夏休み中ずっと続けばいいのにと思った。 ふいに、海を見つめてぼうっとしていた雪子が僕の顔をまじまじと見つめながら 「田口くんって、顔整ってるよね。すごく綺麗。」 と言い出しこちらに近づいてきた。海の潮の匂いと石鹸の匂いが混ざり、鼻先をくすぐる。僕はすごくドキドキして 「えっ?あ、、急にどうしたんだよ。」 と、とても動揺してしまった。たぶん雪子にも、伝わるほど焦ってしまった。恥ずかしくなり顔を赤らめながら、雪子から目を逸らしてしまう。雪子はなんにもないという表情で顔色ひとつ変わらず 「やっぱり、きれいだよ。前髪が目にかかって顔があんまり見えないのが勿体ない。」 と何に対してかわからないが、雪子は、少し腹を立てていて、その様子に緊張がほぐれていく。良かったいつもの雪子だ。ふと、雪子がいたずらっ子のように笑って 「田口くんがホントはイケメンって知ったら、友達が沢山出来るかもよ。女の子にモテちゃうかもね!」 と冗談を言って、クスクスと笑い始めた。僕は 「なんだよ。失礼だな。僕が友達いないのは雪子に会いに来てあげてるためなんだからな。」 と僕も、冗談交じりに返すと雪子は、呆気にとられたような顔でこちらを見て少し頬を赤らめながら 「えっ。それってほんとう?」 と聞いてきたので、僕は雪子にデコピンしてやった。そして 「ばーか!嘘だよ。騙されてやんの」 とクスクスと笑いながら言うと雪子は、笑いながらも 「なんだーー。嘘か。残念だよ。私泣いちゃいそう」 と、バレバレの泣き真似をし始めてそれがおかしくて、また二人で大笑いをした。 雪子が 「田口くん、明日も来てね。」 と笑いながら言った。 僕は 「明日は暑いらしいから、日傘持っとくといいかもね。」 と、いつもの雪子みたいにちょっとはぐらかして答えた。雪子は何も言わず嬉しそうに微笑んでいて僕も、ちょっぴりいや、かなり、嬉しくなった。 次の日も、僕は海沿いの場所へと歩いて向かった。近づくにつれ、いつもとは全然違う非日常に胸が弾み、所々走りながら向かった。僕がベンチに座り雪子を待っていると、急に首筋にキンキンにに冷たいなにかが当たり僕は、悲鳴をあげ後ろを振り向くと、雪子が笑いながら立っていた。手には買ってきたばかりであろう、炭酸飲料を持っていた。 「くふっふふふっ、田口くん、きゃあってきゃあだって、ふふ女の子みたい。ふははは、あはっ」 と他人事かのように僕を見て、大爆笑していた。 僕は、まだ少し驚きの余韻がありつつ雪子を見て 「雪子は、こんな意地悪するくせに僕の分もジュース買ってきてくれてるの優しいね。意地悪なのは変わらないけどな!!!」 と、雪子に負けない大きな声で、からかった。 雪子は、頻繁にイタズラを仕掛けてくるがそのどれもが小学生男子が考えたみたいで愛おしいのだ。雪子は、少し悪態をつきながら、 「えー、田口くん私の事意地悪だと思ってたのね!!もう嫌い。ジュースも私が全部飲むんだから!!!!」 と不貞腐れながらも、三ツ矢サイダーを1本手渡してくれた。ひんやりと冷たいサイダーを二人で並んでベンチに座り飲んでいるとその空間だけ時間がゆっくり進むかのような、そんな生ぬるい安心感を感じて、不思議な気持ちになった。雪子はサイダーを飲みながら、ポロッと話した。 「田口くんってさ、お祭りすき?」 「まぁ嫌いじゃないけど小学4年生くらいから自然と行かなくなったな。」 「そうなんだー。田口くんって小学生の時は友達いたの?」 「雪子って、たまに割と失礼なこと言うよな。」 「あははっ。ごめんごめん。」 「よく思い返したら、いたか、いたな。結構いた気がする。」 「なにそれーー」 などと、他愛のない話をしながら、僕は小学生の頃は沢山友達がいて、どこから出来なくなって、なんで出来ないんだ、と雪子と話しながらだけど頭の片隅でそんなことがグルグルとまわっていて、理由もわからないのに胸の奥がチクチクと痛む感じがした。雪子はそんな僕を見て、違和感を感じ取ったのか 「明日のお祭り一緒にいこうよ!!田口くんどうせお友達いないから私が一緒に行ってあげる!」 と、急に立ち上がり少しだけ顔を赤くしながら僕の方を向き手を差し出した。雪子のお気に入りのフリルをふんだんに使ったピンク色のスカートの裾がフワリと、揺れた。僕は、急な展開に困惑しながらもそっと、雪子の手を取りベンチから立ち上がった。 「いいけど。雪子なんで立ち上がったの、?」 「わからない、、。」 「あと、結構失礼なこと言ってたよね?」 「あは、いや、でも!嬉しいでしょう。こんな美少女とお祭りに行けるなんて。全部チャラみたいなものだよ。」 「そんなことはないだろ。」 と言い二人で顔を見合せて笑うと心の奥のモヤモヤも胸の奥のチクチクとした不快感も、吹っ飛んだような気がした。 「でも、田口くんこんな美少女と二人でお祭りにいるなんてクラスメイトに会ったら変な噂流れるんじゃないの?」 と雪子は、不安そうに僕に聞く、その辺は僕も気になっていたところだ。 「うーん。雪子も、クラスの人には会いたくないよね。僕も会いたくない。」 二人で首を傾げながらうーんうーんとしばらくの間唸りながら考えていると、雪子がぱっと顔を上げた。 「あ!じゃあさちょっと遠いけど電車乗って隣町のお祭りに行こうよ!」 と、提案してきた。正直、雪子より僕の方がクラスメイト達に会いたくなかっただろう。僕はちょっぴり雪子を気遣うように言ってしまったのを後悔していたが、雪子はそんな小さいこと気にもとめてなかったみたいだ。僕はニッコリ笑って 「そうしよう!楽しみだ。」 と、雪子に包み隠す事無く、本心を語った。すると雪子は、見とれているかのように 「やっぱり、田口くんってすっごくかっこいいね!」 と意味のわからないことを言って 「じゃあ!また明日ね!お祭り楽しみ!遅れないでよね!」 と、何故か慌てた様子で走りながら帰っていってしまった。もう少し雪子と話したかったなという、後ろめたい気持ちを抱えながら僕は、去年や一昨年とは絶対に違う楽しい夏休みが始まることを、確信していた。 次の日、海沿いの場所に行くか駅に向かうか少しの間迷ったが、雪子なら海を見てから行くかなと考えて僕は海へ向かうと、予想通り雪子がいた。 雪子は浴衣で来るかと思ったがいつも通りの、ロリィタファッションだった。 白を基調にしたブラウスに、雪子のお気に入りの赤色のチェックのジャンパースカート靴下には小さなリボンがワンポイントとしてついてて赤ずきんちゃんみたいなリボンのついたヒールの靴を履いていた。僕は、駆け寄りながら、 「雪子!」 と名前を呼ぶと、雪子は少し驚いたように肩を竦めたあと、こちらを振り向いてにっこりと笑って 「田口くん!」 と僕の名前を呼んだ。僕は 「浴衣じゃないんだ」 と雪子に問いかけた。雪子のことだから、やっぱり浴衣で来ればよかった戻るわよ田口くんなどと言う可能性の方が高いからだ。雪子は小さく鼻歌を歌いながらくるりと回って 「浴衣も嫌いじゃないけどね。今日はこっちの気分なの♪」 と嬉しそうに微笑む。僕は、そんな雪子を見て自由に生きてる感じがすごく好きだなと毎回思わせられる。 雪子はスカートの裾を小さく持ってこちらを向いて少しだけ首を傾げて 「どう?田口くん、可愛いでしょ?」 と聞いてきた。僕は、雪子にニッコリと笑って 「うん。すごく可愛いよ。雪子っぽい」 と言うと、雪子はすごく嬉しそうに頬を赤らめて 「でしょう!お祭りのときでも、私は私でいるのが正解なのかもね!」 と微笑み、またくるくるとまわって鼻歌を歌っていた。雪子のその言葉は、軽いものなのに僕の心には妙に残っていた。僕は上機嫌な雪子を見ながら 「雪子が自分らしく、可愛く生きててくれて良かった」 と微笑むと、雪子は照れたように 「当たり前でしょ。田口くん早くしないと電車に間に合わなくて美少女とのお祭りデートのチャンス逃しちゃうわよ!!!」 と言い、雪子は高いヒールの靴を履いてるくせに、走り出した。僕は雪子の後を置いながら走って二人で駅へと向かった。 駅のホームにつくと僕は、体力がなくヘトヘトになっていて電車が来るまでの時間ベンチに座り缶ジュースを飲んでいた。雪子は 「田口くんって本当に体力ないのね」 とあれだけダッシュしていたくせに汗ひとつ書いておらず平気そうな顔をして僕の隣に立っていた。僕は言い返す気力もなくはあはあと息を荒らげていた。するとここで事件が起こった。 僕たちの中学の隣にある中学校の生徒たちが数人雪子を取り囲んでバカにし始めたのだ。 「何その服。変なの。」 「お姫様気取りなの?ぶりっ子じゃん」 「気持ち悪いー笑」 など、心無い言葉を雪子に投げかけたのだ。僕は雪子が泣いてしまうに違いないと思い、疲れていたのもよそに立ち上がり制止しようとしたがそんなことをする前に雪子が 「あら、私は、気取りでもぶりっ子でもなくお姫様なのよ?あと私の可愛い服よりあなた達の人間性の方が変だと思うけれど。まあ価値観は人それぞれだから深く追求はしませんけれど。」 と間髪入れずに言い返したのだ。僕はビックリして飲んでいた、ジュースを吹き出しそうになった。中学生軍団もまさか言い返されるとは思ってなかったようで固まっていた。そんな、僕らを構うことなく雪子は 「まぁ。私の方が可愛いからどうでもいいんだけどね♪」 と言い返し中学生たちは走って逃げていった。 たしかに、僕もこんなに可愛い子に私の方が可愛いなど言われたら返す言葉も無く悔しすぎて泣いてしまうだろう。雪子はなんにも無かったかのように 「電車まだかなー。田口くんそのジュース飲まないならくださいな」 などと、喋っている。あんなことがあったのにジュースをくれとは図々しいな。いつもの雪子だ、と呆然としている僕を見て、雪子は 「もう、なんか話してよ。石像じゃないんだから。あなたそんな具合じゃ田口海じゃなくて田口石よ」 などと、かなり楽しみなのか意味のわからない冗談を言ってきた。僕は気が抜けてふっと笑うと電車がホームに到着し、僕と雪子は乗り込んだ。僕は雪子に 「さっき、雪子凄かったね。かっこよかったよ。」 と言うと 「可愛いのではなくて?まぁ、慣れてるからね!田口くんが、何も言われなくて良かった!」 と、雪子は冗談交じりに笑って僕の方を見た。 僕は、雪子ってなんでこんなに素敵なんだろうと思った。自分の好きなものをあんなに大人数でしかも知らない人にバカにされて傷つかない訳がないのにそれを引きづることもなく、当たり前のように僕のことを心配してくれて、僕は感動して泣きそうになり雪子に 「雪子って立派だね、僕泣きそうだよ。」 と言うと雪子がキョトンとした顔で 「田口くん、お母さんみたい。」 といって、大笑いしだした。雪子は、もし気にしてたら電車の中だろうと大きな声で泣くし、僕に気を使わせないようになど考えないし本心を隠さず自由に生きているのだから、もう雪子が気にしてないなら、僕が追求する必要は無いのだ。 そんなことを考えてる間に、隣町へと、電車は着いた。雪子は、相当楽しみなのか、乗っている乗客の誰よりも先にホームへと降りた。 お祭り会場に着くと、空気の匂いが少しだけ違っていた。 屋台から漂う甘く、どこか焦げたような匂いが混ざっていて夏を彷彿とさせるようだった。 雪子は目を輝かせながらずんずんと人混みをかき分け前へと進みこちらを振り向き屋台を見る度 「すごい!すごい!」 とはしゃいでいた。提灯が重なってキラキラと光る道を雪子はすすんでいく。白いブラウスも赤いジャンパースカートも、元から、祭り会場の一部だったかのように馴染んでいる。 「やっぱり、隣町のお祭りで良かったね」 と雪子は焼きそばを食べながら、僕に話しかけた。 「そうだね。焼きそば口についてるよ」 僕は笑いながら雪子の口についた焼きそばの欠片をウエットティッシュで拭ってあげた。雪子は、照れる様子も無く焼きそばを美味しそうに食べていた。僕は、その横でラムネを1口飲んだ、瓶の中のビー玉がカラン、と涼しげな音を立てた。 雪子はふと食べるのをやめて 「私、来年も、田口くんとお祭りに行きたいな。」 と言った。僕は、雪子がそう思ってくれたのが単純に嬉しくて、かなり食い気味に 「絶対に行こう!約束だよ。」 と雪子に言った。雪子は少し驚いたような表情をして嬉しそうに笑い 「やった!指切りしよう!」 と言い小指を絡めて来た。僕らは、嬉しそうに微笑みあった。その時間はずっと続くものだと僕も、雪子も勝手に思っていた。 太鼓の音が遠くから響いてきて、人混みが多くなってくる。雪子はそれを見て、焼きそばを急いで食べ終わらせこちらを向いて 「田口くん!花火見るよね!!!!行こう!」 といってこちらの答えを聞く間もなく、僕の手を引っ張り走り出した。祭囃子が聞こえ人の笑い声や話し声もあったはずだが、僕の耳には雪子の笑い声だけが聞こえ夢見心地な気分だった。 花火が上がり始めると雪子は、もっとはしゃぐかと思ったが、何も言わずにただ静かに空を見上げていた。その横顔が一瞬だけ大人っぽく見えて僕は、不覚にもドキッとした。 「田口くん。」 「どうしたの?」 「こういう夜ってさ、なんでだろう。なぜかずっと続いていくような気がするよね。」 僕は、返事ができなかった。 代わりにさっきのラムネを1口飲んだ。 ラムネはぬるくなって、美味しくない。さっきまでキンキンに冷えていたのに、僕らの夜もこんな風にすぐ終わって思い出になってしまうのかと思うと胸が締め付けられるような、切ない気持ちになった。また、ラムネを1口飲んだ。その1口は最後の一口でなぜだか、甘くて少しだけ苦かった。 帰りの電車では案の定雪子は眠ってしまった。 相当疲れたのだろう。肩を叩いてみても起きなかった。僕は寝ている雪子の横顔を見ながら、雪子と会った時を思い出した。雪子は、なんにも変わっておらず自由に楽しく生きていて、人生に後悔などないみたいだった。僕は、そんなことを考えながら、祭りの余韻を楽しんだ。 きめた。僕は夏休みが終わったら、クラスメイトにも話しかけて見よう。最初は上手くいかなくても、雪子みたいに自分を出して行くんだ。そしたらきっとうまくいく。 そんなことを考えながら僕も眠りについていく感覚が体を襲い、意識が遠のいていく。 気がついた頃には、電車は終点へと到着していた。 「え?」 僕が、戸惑っていると寝ぼけている雪子も 「田口くん、ここはどこ私を攫うつもりなの?」 とか何とか言っている。 「ごめん雪子。乗り過ごしたっぽい。」 一瞬の沈黙が流れ気まずい空気が2人の間を漂う。 「………」 雪子が吹き出した。 「ぷっ。なにそれ!あははっ私たちって、ホントバカあははっ」 僕も、そんな雪子を見て釣られて笑う。 大失敗をしてしまったのに、この夏で1番楽しくて馬鹿げていた出来事で、僕の記憶にもずっと残っている。 最初の駅まで二人で歩きながら、沢山話した。 「ぼくさ、今年雪子に会えてほんとに良かったよ。冗談抜きで生きてて1番楽しい夏休みだった。」 雪子は、クスッとわらって 「田口くん、やけに素直ね。私も!私もすごく楽しかった。また来年もその次の年も田口くんと夏休み過ごしたいくらいよ。」 と雪子が満足そうに僕に言った。僕は、すごく嬉しくて、なんだか恥ずかしくて 「まぁ。気が向いたらね」 なんて、雪子みたいなことをいってしまった。 雪子は、間の抜けた表情をしたあと笑い出して 「あははっ。田口くん私みたいなこと言ってる!」 と言い、雪子がそんなこと言うのがおかしくて二人で大笑いしながら歩いた。僕はその帰り道を一生忘れない。 あと1駅の地点で雪子が寂しそうな表情をして 「田口くん」 「なに?」 「明日で夏休みが終わっちゃうじゃない?」 「そうだね。」 「そしたら、わたし放課後までいや、ずっと1人なの」 雪子が寂しそうな表情で僕に言う。気のせいか歩く速度も落ちている。僕は、そんな雪子が切なくて冗談交じりに 「なに?雪子ったらさみしいの?」 と聞くと雪子は目に涙を浮かべていた。 「当たり前でしょ。寂しいに決まってる!!!」 僕はギョッとして 「雪子、泣かないでよ放課後会えるでしょ」 とどうしていいか分からず当たり前のことばかり言ってしまった。僕も切なくなった。雪子は 「わたし、夏休みが終わったら学校へ行くわ。田口くんは、友達を作ってね。私たちの今出来てないことお互いに達成できたら成長って言えるわ」 雪子が急にそんなことを言う。僕は泣きそうになるのを必死に堪えながら 「僕は、友達なんて、雪子だけでいいよ。」 と言うと雪子は、 「ううん。ダメだよ田口くん。私も頑張るから一緒に頑張ろう。」 と言って僕に微笑んでくれた。僕は、それだけで勇気づけられた気がした。だから 「わかった。雪子も頑張るから、僕も頑張るよ約束ね。」 といって雪子の小指に自分の小指を絡めて指切りをした。雪子は嬉しそうに笑っていた。 気づくと、僕たちが乗ってきた駅に着いていた。 雪子はニッコリ笑って 「田口くんまた!〝学校〟でね!」 と言って僕に手を振りながら走っていった。 次の日、夏休みが終わった。 僕は、学校でも雪子に会えるという期待に胸を弾ませながら清々しい気持ちで学校へと走った。周りの生徒は皆、心做しか夏休みの終了に後ろめたさを感じているようで空気はどんよりとしていたが、僕はそんなことお構い無しだった。 少しの緊張と期待を胸に膨らませながら教室に入ると、その気持ちは一瞬にしてなくなり、頭の奥がヒンヤリと冷えていくのがわかった。理由はすぐにわかった。 いつもある空席の雪子の机が無いのだ。 ポッカリと穴が空いたようにそこだけない。夏休み前まではたしかにそこにあったはずなのに。 僕は、嫌な予感がして、冷や汗が流れる呆然としたままホームルームが始まった。 ホームルームが終わり教室内がザワザワとし始め、みんな席を立つが僕だけ動かなかった。いや、動けなかった。 すると担任の山本先生に 「おーい田口。今いいか?」 と呼ばれ、やっとの思いでふらつきながら先生の所へ行くと、白いレースが縁取られた雪子のお気に入りのスカートみたいな便箋を先生に渡されて 「これ、水瀬からお前にって」 差し出された手紙には、雪子の丸っこい字が書いてあった。 田口くんへ 突然の報告でごめんなさい。私は、夏休みが明けたら引っ越すことが決まってました。私は、ずっとこの街が嫌いで学校なんかもっと大嫌いで、生きてても楽しいことなんかないと思っていて、いつもは絶対行かないのに海へと向かってました。そこで初めて田口くんにあって、そこから田口くんと友達になって、私は人生で初めてすごく楽しくてもっとこの時間が続いたらいいのに人生って楽しいんだなって思えました。 田口くんと他愛のない話をしてお祭りへ行ったり電車で寝過ごしたり、田口くんといる間だけ普通の14歳の女の子になれた気がした。すごく楽しかった。田口くんのこと、本当に大好きです。私の今までも、これからもきっとずっと一番の大切な大切な友達です。田口くんと出会えて夏休みを過ごせて本当に良かった。 私の事忘れないでね。 水瀬雪子より 僕の中で、音が消えた。 うるさいくらいに自分の心臓が鳴っているのがわかった。文はちゃんと読めているはずなのに内容が、意味が何も入ってこない。頭の中が真っ白になり、雪子との楽しかった時間がグルグルと頭の中を回っていく。 雪子の笑った顔、頬を膨らます顔、イタズラが成功した時の顔、そして初めてで最後にみた泣いていた顔、雪子の全てが僕の頭の中を駆け巡った。 絶対に忘れるわけなんかがない、一生記憶に残るに決まっている。 気がつくと、もう放課後になっていた。 今日どうやってここまで過ごしたか、ホームルームの後から記憶が無い。制服のポケットには雪子からの手紙がしっかりと入っている。 雪子はもうこの街にいない。 この事実を突きつけられて、僕は倒れそうだった。もう秋に近づいてきていて外は少しだけ夕焼けの色をしていた。 僕は、雪子はいないと分かっていたのに海沿いの場所へと、勝手に足が向かっていた。 そして、いつも話していたベンチに腰掛けて、夏休みの始まりに雪子がくれたサイダーを一人で飲む。なぜだかしょっぱい気がした。 海を見てるうちに雪子の声が聞こえてくるような気がして、僕はふいに目頭がどんどん熱くなってきた。いくら待っても雪子は来なかった。 ただ、波の音が僕を嘲笑うように、続いていた。 それから、僕は雪子との最後の約束を守った。 不器用ながらも、クラスメイトに話しかけていき徐々に会話も続くようになり、今ではおはようなんて言わなくても友達から声をかけてくれて自然に、話に入れてもらえホームルームが終わったあとも自分から席を立つようになった。 不器用だったけど友達を作った。 僕は15歳になった。 友達も沢山増えて、今年はたくさんの友達とお祭りへ行ったり海へ行く予定も立てた。 だけど、いくら友達が出来てもたぶん、僕の1番の友達は、これからも何があってもずっと雪子なんだろう。 雪子がいた14歳の夏は、幕を閉じた。 僕は、これからも雪子のいないこの街で、放課後も夏休みも過ごしていく。 雪子の他に、大切と言える友達は沢山出来たのに、雪子はもういないのに 「雪子」 と呼んだら 「はーい!なに?田口くん」 と、雪子が答えてくれるようなそんな気がした。 僕は、雪子と過ごした14歳の夏休みの中に1人だけずっと取り残されているような気がした。 ずっと閉じ込められているような気がした。