英一

6 件の小説
Profile picture

英一

小説執筆初心者。旅の思い出も文章にしたいと思っています。

旅の思い出⑤

伊勢神宮へ行った時の話 人生に迷子というほどではないが、そこそこ迷ってる時。ここは一丁、平将門の首塚とか行って弱い自分に勝てる方法を得ようか、と思って計画を立てていた。 だのに何故だか今伊勢神宮に行かないといけない、と思い立ち弾丸遠足へ繰り出した。 伊勢神宮へは近鉄特急 賢島行きビスタカーで。 五十鈴川駅で下車し、バスに乗って外宮へ。 実は外宮と内宮を反対に勘違いしていて、外宮行きのバスに乗った時位置情報を見ながら「何故反対に行くんだ!?」と少し焦った。後から調べると伊勢参りでは外宮から参るのが作法とあって、結果間違えて正解の順序となった。 連日雨続きの中その日は快晴。ど快晴。さらに行楽シーズンを外したというのに人が想像以上に多く、もっと閑散としているかと思っていた。流石伊勢神宮。 伊勢神宮内は木々が多く空気が澄んでいた。内宮内の五十鈴川の水は透き通っていて多種の魚を観察することが出来るほど。 外宮の参道にも店はたくさんあったが内宮は比ではない。内宮参道には外宮より多くの店が立ち並びその上「おかげ横丁」という商業区画が整備されている。 行楽には食事が付き物だが、想像以上の人の多さと気温に食べる気を失ってしまい伊勢うどんや松坂牛、赤福は食べ損なった。 地酒の甘酒と伊勢の塩サイダーは熱した体にはちょうど良かった。塩サイダーは後口に塩味があって初めての味だった。 お土産にはわらび餅と酒麹饅頭にした。 この文では参拝というより観光になっているがちゃんと詣でているから安心してほしい。まったく、外宮と内宮に分かれているのも調べてなかったし外宮と内宮が3キロほど離れているのも知らなかったし、宮中があんなに広いとも思っていなかった。 ついでに伊勢神宮の近くにある猿田彦神社にもお参りした。「行く道へ導く」とかなんとかで、人生に迷子になりかけの自分にはちょうど良い。縋れるものがもう神しかいないのだ。 そんなこんなで途中で体力尽きて早々に切り上げて帰路に着いたわけだが、不完全燃焼も良いところだ。名物も食べてないし。 また必ず行く。その時は人生に迷ってなければいいが……。

4
0

旅の思い出④

山陽タイムアタック? 前に岡山にある長船刀剣博物館へ縁あって電車で行った。 JR姫路から播州赤穂行きに乗り換え、播州赤穂から最寄駅の香登駅に乗り換え。電車の数も少なく香登駅は無人駅で周りには店もまばら、博物館までは徒歩で20分ほどあった。 特別展示のある時はシャトルバスが出ているようだが……。 長船刀剣博物館では備前長船派の刀剣の展示および鍛造の工程が見られる。私が訪れた時は行っていなかったが、刀匠が実際に鍛造しているところも見学することができる。その時期にはかなり混雑するらしい。 展示をみて、駅に戻り、寒空の下電車を待った。ほぼ拭き晒しだが屋根と壁のある待合があったので助かった。なにせ11月の肌寒い日で、小雨もパラついていたから。そこで食べたビスコは特別な味がした。 その帰り、播州赤穂で乗り換えるため、ついでにそのまま下車し、大石神社に訪れた。大石神社までは駅から徒歩20分くらいだったと思う。 大石神社は「忠臣蔵」でお馴染み、大石内蔵助良雄、以下四十七義士命と中折の烈士萱野三平命を主神とする神社だ。 社殿を中心に「義士宝物館」、「義士木像奉安殿」などがあり、他には国家「君が代」の一説にある「さざれ石」もあり、見どころの多い神社だ。 赤穂では塩が有名だ。その中で塩饅頭は外せない。また大石神社で食べた赤穂の塩を使った塩うどんも中々に美味だった。 次に訪れたのは姫路城。 しかし問題が発生する。 姫路駅に到着する時刻が閉場10分前、駅から城までは徒歩20分であった。さてどうしたのか。 走った。めちゃくちゃ走った。 こんなに若さをありがたいと思ったことはない。 駅から姫路城までは一直線、公園内からはなだらかな坂道。今まで博物館の往復、神社の往復と歩いて疲労もピークだったが関係ない。 最後に頼れるのは自らの脚だ。 閉場2分前に滑り込み入場をし達成感に包まれる中、今度は「あと30分で門が閉まります」のアナウンス。これはなにか? 私はこう思った「あと30分以内に天守の上まで行って降りてこないといけないのか?」。 走る、わけにもいかないのでかなり早歩きをした。城内は急な階段が続くが若い脚はぐんぐん登っていける。 なんとなく運動部がしていた「階段ダッシュ」に似ているな、などと思った。 無事姫路城を駆け登り、駆け降りて、次は隣の好古園に。夜のライトアップが行われていて、夕日と紅葉が美しく照らされていた。 電車が一時間に一本しかなく、割とタイトなスケジュールにはなった。 まあ、こういったかなり無茶な旅程をたてられるのも一人旅の良いところなのだ……。

1
0
旅の思い出④

旅の思い出③

「天空の城 竹田城」などと聞いたことはないだろうか? 兵庫県にある竹田城。「日本のマチュピチュ」と言われていた気がする。そこにはバスツアーで行った。 当然山だ。バスも途中までしか行けず、城跡までに中々に長い坂道を歩く。道はしっかり舗装されているので登山ではないから安心してほしい。 竹田城跡からは山下が一望できる。ガイドさんがあっちは何で、こっちは何だと説明してくれた。 自然も多く城跡も楽しめたし展望にはとても満足だった。 ただ行くなら涼しい季節をお勧めする。どうしても城跡に行くまでの道のりと、城跡に着いてから周りに遮るものがないため夏はかなり厳しいと思う。 その帰りに砥峰高原(とのみねこうげん)に行った。大河ドラマのロケ地になったとかいう。 見渡す限りの山。山。草。山。山。 素晴らしい!整えられた草っ原にゼンマイが生えていたり生き物がいたり大自然を満喫できる。 抹茶ティラミスをスプーンで掬って食べるようにスプーンで食べられそうな滑らかな緑の山。 遠くから見たら近そうな距離も実際に歩くと滅茶苦茶遠く、この場所の規模を思い知らされた。 砥峰高原では夏は天体観測が行われ、秋はススキで緑の景色が真っ黄色になるらしい。 車がないとかなり不便な山奥だがまた訪れたい。

2
0
旅の思い出③

旅の思い出②

親の実家の話。旅というより帰省なのだが……。 親の実家は島だ。船でしか行けない。 自転車でも1時間かそれくらいで島を一周できるくらいの大きさだ。 最近その島が観光地化し始めている。店も増えて今年か来年にはホテルができるそうだ。 だが島自体は過疎化が進み親の実家もかなり荒れ始めている。 昔ここで祖父母も交えてバーベキューをしたな、ここで着替えをしたな、海水浴の休憩をした……など思い出が鮮明に蘇ってくる。今では荒れ放題になっていてなんとか形が残っている程度。 どんどん荒れ、観光地化で変わっていく思い出の土地。 変わっていくのは少し悲しいけれど私の思い出はいつまでも綺麗なままで、きっとこの海もいつまでも太陽の光を照らしいて輝いているのだろう。 そうあってほしい。

2
0

金に染まる

いつもの日常。 散らかった部屋を出て、埃臭い電車に乗りインターネットを見て時間を潰す。 降りたホームで人に揉まれて職場に行く。 無心で仕事をこなしてミスをしたら謝る。 残業もそこそこに人がまばらになった埃臭い電車に乗って帰る。 帰りにコンビニに寄って弁当やら酒やら栄養バランスの悪い晩御飯を買って帰る。 食べ物を口に放り込んでさっさとシャワーを浴びて寝る何にもない日々。 それが普通だった。 だが今日は違う。 いつものように散らかった部屋を出て電車に乗る、そこには異質なものがあった。 人だ。とても美しい人。 顔は小さく背はすらりと高い。白い肌に厚みがあり血色の良い唇。眼は大きく長いまつ毛がくるんとカールしている。背中まで伸びる金の髪は細くサラサラして体を撫でている。 遠くから見るとマネキンや蝋人形かと思うほどに美しい男の子。少年というには落ち着いている上、威圧感を感じるが、青年というにはどことなく幼さが残る。そんな不思議な人。 私はあまりの異質さに目を奪われて立ち尽くしていた。だがそれは他の乗客も同じようで皆乗車してすぐ立ち止まっては、ハッと正気に戻って早足で座席に座ったり端に寄って興奮した様子で携帯電話を触り始めたりしている。 彼は立っているとかなり窮屈そうなのに座ると隣のサラリーマンと大きさが大して変わらなかった。 彼が座席に座ることで車窓が額縁に、背景がすごい速さで変わる絵画が出来上がった。彼がいるだけでその場が芸術作品になってしまう、それくらい彼の容姿と彼の持つ雰囲気は凄まじかった。 私はその光景を見ながら「これは私の見ている夢ではないか?」と思い始めた。 毎日が退屈で仕方ない私が通勤途中に見る幻。 幻想だと思うほどに彼は美しくてこの世のものではない感じがする。眩い金色の髪、輝く濡れた瞳、透明感のある肌、どれ一つとして自分と同じもので出来ているなんて思えない。 永遠とも思える時間を過ごしているうちに車掌のアナウンスで現実に帰る。会社の最寄駅に着いたのだ。 ゾロゾロと人が降りる列に並んで私も下車する。彼は電車に乗ったままだった。 これからまた仕事をこなしてミスしたら謝って……退屈な“普通の日”に戻るのだ。 そうだろうか? 私は今日見たものを忘れない。 多分一生忘れはしない。 明日また彼に会えるかもしれない。もしかしたら今夜電車に乗っているかもしれない。今度はもっと近い距離にいられるかもしれない。さらには、いつか彼と話ができるかもしれない。 そう思うと私の心は浮き足立つ。ソワソワして落ち着かない。私の中から“退屈”の“た”の字も無くなっていった。 彼は突然私の世界の中に入ってきて、その金糸の色に染めていった。この際幻想でも幽霊でもなんでもいい。 金色に染められた、美しい人。 世界がその色に輝き始めた。

2
0
金に染まる

食べて

「玉ねぎって苦手なんだよね。辛くて」 目の前の友達は言う。 「焼いたり煮たりすれば甘くなって美味しいけど、生のあの辛さ」 「なんであんな辛いんだろ?意味わかんない」 なんでだろうね、と相槌を打つ。 彼女は別に辛みの成分や原理を知りたいわけではない。それをわかっているから共感を示す。 「私サラダ好きなのに高確率で玉ねぎ入ってるからほんと困る」 「玉ねぎだけのけるの難しいし」 辛くない生玉ねぎあるじゃん、お店のやつとかあんまり辛くなくない?と言うと彼女は「食べてみないとわからないから嫌」。 「知ってるんだよ玉ねぎって血液サラサラにしてくれるとか健康に良いんだってね」 「でも玉ねぎ食べたら健康になるって言われても私は生じゃ食べないからね」 そういって友達は私を目を細めて見つめてくる。 そろそろというか、初めから彼女が何を言いたいのかわかっている。 わかっていてあえて口にしないのだ。好き嫌いを私は嫌っているから。 だがこのまま彼女の話を聞いていてもなんの進展もないのだろう。状況も話も。 「食べようか。生玉ねぎ」 私がそう言うと彼女はイシシと眉をハの字にしてお皿を差し出した。

4
0