とあラノ
4 件の小説とあラノ
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3話「予期せぬ来訪者」
俺は帰路についていた。 ここ数日、孤児院の周りを見慣れない黒装束の男たちが徘徊していることに俺は気付いていた。 (ようやく動き出したか) というのが俺の率直な感想だった。 並木道を抜けた辺りで俺は足踏みを止める。 さっきから後ろをついてくる気配を俺は察知していた。虚空へ言葉を投げ掛ける。 「いつまでそうしている?」 「ほう、察しがいいな小僧……」 俺の呼び掛けに答えるようにして、黒装束を着た男らが三人、俺の目の前に姿を見せる。 「お前らを葬ることだけが俺の生き甲斐だ」 「ふん、ぬかせ小僧。貴様に我々がやられるものか、いけっ!!」 そう代表格の男が指示すると、横で待機していた他の二名が俺へと襲い掛かった。 が、その場で凍ったように動けずにいいる。 「う、うごけませ、ん……」 指示された黒装束の男たちは驚いていた。俺は言葉を紡ぐ。 「どうした?こないのか?」 「貴様何をしたァッ!!」 「ふん。この程度か」 「き、貴様ッ!!」 「なんだ、次はお前か。下っ端にさしずするだけの口だけ野郎だと思っていたぞーー」 「な……何をしたッ……貴様ァ……」 突進してきた代表格の男の動きも、目と鼻の先で静止した。 「お前らは、動物を相手にするとき、素手で立ち向かうのか?」 「貴様……何を……言っているッ⁈」 「俺なら狂暴な動物相手に飛び道具を使うな」 「……」 代表格の男は俺が何を言っているのか理解できていないようだった。 (だからお前らは、俺の手から妹を奪うという愚行を犯してしまったんだよ……) 俺は続ける。そして、手には白い端末が握られていた。 「お前らの欲しがっていたT1はあらゆる|物《・》|質《・》|構《・》|造《・》に干渉することができる。お前ら下っ端風情は知る由もないか……」 「き、貴様ッ!!いったい私に何を……したッ」 「この玩具の動作チェックをしただけさ。お前ら懐の携帯から電磁波を|奪《キャッチ》し、|振動《きょうめい》させ、|俺の《T1の》|特殊能力《オフホワイト・コンストラクション》でお前らの行動制限の全てを|奪《ジャック》したのさッ!!」 オフホワイト・コンストラクション、T1はあらゆる物質の構造に干渉する、形を変える、力を有する。 (まるで信じられない話さ) そして、時に物質自体の存在意義すらも、|力《これは》無に還すことができた。 刹那、黒装束の男の全身の関節はありえない方向へ仰反る形で曲がった。いや、|俺《・》|が《・》|曲《・》|げ《・》|た《・》|の《・》|だ《・》 「うおおおおおおおおおおおおおおっっっっっっっっっ!!!!!!!」 代表格の眼球から血が流れ、涎を垂らした。 俺はハエを見るような眼差しを黒装束の男らへと向けた。 「朽ちて死ね、最愛の妹を奪った暴徒の仇よッ!!楽に死ねると思うなよッ!!」 俺は続ける。 「消えろッ!!!」 俺の突き出された腕から放たれる螺旋状の白い霧に、黒装束の男らは飲み込まれて行く。 やがて、灰一つ残さず、俺の目の前から消え失せた。 そこで、聞こえてはならない声がした。 「レ、レイッ……?」 俺の表情は一瞬にして凍り付く。なぜここに、ミルキーがいる……? 「レ、レイ?説明して、いったいいまのはなに……?」 並木町の脇を振り返ると、書棚の整理をしているはずの同級生、生徒会仲間でもあり、俺が秘密を隠していた白の騎士団ミルキー・N・ルックがそこで、目に驚きを浮かべ立ち尽くしていた。
2話〜篠宮桜花高等学園編〜「日常」
ーー校内のチャイムが鳴り響いた。 俺は鞄を手に、素早く教室からの脱出を図る。 「レーイー!!」 「やあミルキー、そんな怖い顔してどうしたんだ?」 「どうしたじゃないー!!」 「わかったから、そうぷんぷんするなって。いけばいいんだろ」 「生徒会はちゃんと行くっ!これ当たり前なのっ!!」 後ろを振り返ると、クラスメイトのミルキー・N・ルックが仁王立ちしていた。オマケに俺を睨んでいる。 先日行った中間試験で俺は学年首位の成績だった。急遽枠を広げだした生徒会は、ミルキーの強い推薦により俺を迎えた。 「蓋を開けたら、なんだその有り様は。ただ会長と茶をすするママゴトじゃないか」 「そ、それはそうだけど……逃げるのはよくないでしょー!」 「学園のマドンナが膨れっ面してたら、ファンが減るぞミルキー」 「まーた、レイったら馬鹿にしてっ!それより、レイ……あのね……放課後なんだけどーー」 「ちわーっす!!」 もじもじし始めたミルキーを遮り、見慣れた顔が教室の扉の前に現れた。 いいところで来たぞフォート。女子が男子の前で気恥し気にしている最中に、のうのうと割り込めるお前は天才だ。 俺は教室に入って近付いてくる友人を笑顔で迎えた。 「フォート悪いな、昨日頼んだのはどうなってる?」 「いやぁ〜、それなりに時間かかったよー?」 「そうか、で、どうなったんだ?」 「もちろん、できてますとも」 フォートは眼鏡の奥の目を輝かせた。 フォートの推すアイドルまゆぽん。偶然、単独ライブチケットをスーパーの抽選場で当選させた俺は、まゆぽんを|出汁《だし》に、ある依頼をフォートにしていた。 フォートが鞄から白い端末を取り出し、俺はそれを受け取った。 「それはなにレイ!怪しいものは学園にもってきちゃだめよっ!!」 「いや、ただの音響機器だよ。最近、俺のスマホの調子が悪いんだ……だから代わりに」 フォートに頼んだわけさ、と俺はフォートに向けてウィンクする。 実際は音響機器でもなんでもない。フォートは悪そうな笑みを浮かべて乗っかった。 「そう?それならいいけど!それよりフォート、勝手に教室に入らないってこの前言ったでしょーー!!」 「ちょ、イタッ、ミルキーさんイタいッて!もうしませんからぁ!!」 隣でミルキーに叩かれるフォートに羨望の眼差しを向けるクラスメイトたちがいた。きっと、ミルキーファンクラブ連中はミルキーに平手されようが、ふんづけられようが、喜ぶに違いない。 その純白で華麗な篠宮桜花高等学園の制服を着たミルキーはまゆぽんなんて比ではない。 いつもの光景をよそに、俺は教室の隅に視線を向けた。 いつもの光景といえば、あいつもそうだった。 教室の隅で、風に銀髪を靡かせ、外をぼーっと、眺めている。 TCK1。通称T1。それがあの無口な女の名前だ。年齢不詳。パッツン。目はまるで虚ろだ。 (こいつらがあいつを見たらどう思うんだろうな) まだフォートとミルキーはじゃれていた。そんな二人を見て俺は思う。 T1は俺が全てを失った夜に、他人事のように現れた。 「レーイーッ!!」 「……ん?どうした……?」 「もう、何考えてるの?怖い顔したよ?」 「あぁ、悪い悪い」 「ううん、大丈夫。あ、やばい。生徒会遅れちゃうぅー!」 「いこうか」 どうやら、俺は怖い顔をして考え込んでいたらしい。すぐに笑顔を取り戻し、ミルキーらと生徒会室へ向かう。 廊下を歩きながら、俺はミルキーに話し掛けた。 「あぁ、そうだ。ミルキー、放課後なんだけど、ちょっといいかな?」 「え……うん……」 「会長に生徒会室の書棚整理を頼まれててさ、放課後外せない予定があるんだ。任せられるかな?」 「わ、わかったー!」 ミルキーは期待に胸を踊らせる様子で話を聞いていたが、すぐに要件が雑用だとわかると落胆した。 そんなミルキーをみて何やらフォートは笑っていた。 おそらくフォートが来る前俺にミルキーが言いたかったことは、一緒に帰ろう、というお誘いだったに違いない。俺は先手を打ち、断っておいた。 学園以外でお前らの世話をするなんて甚だ面倒事でしかなかった。 俺は仮面を被った復讐の権化なんだよ。 皇帝クロイド・Y・テンペラー。 俺の母を殺し、あまつさえ妹までも俺から奪った憎き父親の名前だ。 (かならず、あいつを殺してみせる)
序章「月光」※訂正しました
下弦の月明かりが|並木路《なみきみち》を案内していた。 青年の髪が風に揺れる。黒かった。髪が、だ。キリッとした瞼の下の瞳は蒼い。 手には買い物袋が握られていた。 しばらく夜道を歩くと、青年の前に古びた建物が門の奥に見えた。建物は二階建てで、どこか中世のような趣を赤いレンガ調からは感じられた。 門の前に着いた青年を、横の花壇に植えられた向日葵が出迎えた。横の石壁にはプレートがあり、|向日葵《ひまわり》孤児院と刻印されている。 門を開閉し、青年は中へと進んでいく。 子供が走り回るには十分な敷地には砂場があり、置き去りのシャベルが街路灯に|侘《わび》しく照らされていた。それを横目に、青年の気持ちは優しく笑った。 心なしか青年の表情も明るく見える。 青年は、辺りを異様な静かさが取り囲んでいることに気付かなかった。 そのまま中の照明が付いていないモザイクガラスでできた窓横の玄関の勝手口を開ける。 「ただいまーー」 青年の手から買い物袋が落ちた。 床で袋の音がし、落ちた拍子に中からジャガイモが床を転がっていく。転がるじゃがいもは段々と赤く染まり、何かにぶつかって止まった。 死体だった。 青年の瞳に写るのは、無数の死体と死体から溢れ出たであろう、血の海。 青年は部屋の中心で倒れている影に近付いていく。 やがて、青年の利発的な顔に戦慄が込み上げた。 「あかり先生……?」 幾度食卓をともにしただろうか。孤児院の子からも好かれていたエプロン姿の恩師は、悲痛に顔を歪め、転がっていた。 「ミレイ、ア……?」 青年は最愛の妹、ミレイアを辺りを見渡して探していた。 しゃがんでいた青年は血相を変えて立ち上がる。階段へと息を切らして走り、駆け上がった。 二階に着くと、縦に伸びた廊下の奥にある出窓から葉月の月色が射し込んでいた。 青年の目は大きく見開く。 ガクガクとその華奢なからだを震わせた。 「ミレイアッ」 廊下の中央でいたいけに眠る少女の姿が血の湖に見えていた。 薄明かりの下で少女の顔の肌は白く、髪は光で|黄金《きん》となり、血に沈んだ光景は、 まるで血のシーツを敷き、その上で安らかに眠る少女の絵画のように見えた。 絵画に触れるようにして、青年は近寄っていった。 青年が少女の頭を掬い上げると、まだシャンプーの香りがした。青年は下を向き、目から溢れる滴で妹の頬を濡らした。 「お……にい……さ……ま?」 「ミレイアッ!!!」 青年が俯いていた顔を少し上げると、長いまつげの下の金色の瞳が僅かに開かれ、兄を見つめ返していた。 「ミレイア?なにがあったんだ?」 「おにい……さま……いちどだけです…… ききとどけて……ください……ますか……?」 「あぁ、おにいちゃんはいつでもミレイアの傍にいるよ……」 青年の口から|嗚咽《おえつ》交じりに言葉は漏れていた。そして、少女の瞳は虚ろになりながら、懸命に最後の力を振り絞り青年へと伝えた。 この世で最も尊く、儚く、幸せに満ちた言葉を。 「あいして……います……」 少女はそう伝えると、首を横に力を失うように傾けた。青年の呼吸は止まり、少女の細いからだを強く揺さぶった。 「ミレイアッ!!ミレイアッッ!!!ミレイアァァァッッッッーー」 「力が欲しい……?」 その場で泣きじゃくる青年の耳にふと、その声はした。鼻から答えなんて求めていないような淡々とした口調でそれは青年に聞こえた。 「だれだッ……」 「力が欲しいの……?」 青年はいつしか、力とは何か考えていた。もし、自分に力があれば妹は死ななかったのか?と、女の呼び掛けは形を変え、やがて激しい憎しみが全身を込み上げた。 「くれ……」 「わかった……」 青年の声は冷たかった。 瞬間、辺り一面に強い光が一閃し、消えた。 元の|形相《けいそう》を取り戻した廊下に少女の亡骸はなく、そこにはただ|満《・》|月《・》の光を浴びて立ち尽くす|白《・》|髪《・》|姿《・》の青年がいた。 青年は片手を宙に上げると、短く叫んだ。 「オフホワイト・コンストラクション」 青年は、こんな世界消えてなくなってしまえ、と心で呟いた。妹無きこの世界を憐れむように、それは聞こえた。 青年の肘あたりから螺旋状となって白い|霧《きり》が放たれる。夜の|帳《とばり》を白が包んだのは、青年の頬に付いた血の色となった涙の滴が床に落ちたのと同時だった。
異世界チャーム$スカウティング!
人が行き交う真昼間のショッピング街で今日も俺は、 「おねえさん、おねえさんっ‼︎」 「………………」 街行く女の子たちへ、 迷惑防止条例法違反《スカウト》に汗を流す。 俺の名は倉橋 カケル(24歳)の自称売れっ子スカウトマンだ。とまぁ、稼げると聞いて始めたバイトで今も俺は夢を見ている。 キャバ嬢風な見た目全身きらきら女は、無言で通り過ぎていった。 (別に話くらい聞いてくれたっていいじゃねえかよっ) ードンッ!! 突如、肩に軽い衝撃を受けた俺は、行き場のないフラストレーションをこの際、通りすがりの他人にぶつけてやろうと、威勢よく振り返る。 そして、思わず息を呑んだ。 「……ッ!!??」 シルバーグレイ一色の髪、長く伸びたまつげの下に覗く、くっきりとした大きな瞳。それは微かに銀を帯び、とても神秘的な光を宿していた。 「あ、あの、大丈夫ですか?」 目の前に立つスタイル抜群、超絶美少女は上目遣いでこちらを覗いている。 美しいものを目の当たりにすると、言葉が出ないって聞いたことがある・・・。 それ程までに、少女は美しく、まるで天使のように純白なオーラをその華奢なからだに纏っていた。 長いまつ毛の下の瞳は凛と揺れ、からだをしゃがむように少し屈曲させ、美少女は上目遣いで聞いてきたのと同時だった。 「だ、だいじょうぶですか…?」 「あ、あのさ。おれスカウトでっ!!」 「………………」 急に口を突いて出た言葉は、馬鹿正直で機転の効かないものであった。 (おいおい、おれなにゆってんだよ………) 黙り込む美少女を前に、俺は冷静にこの状況を分析した。 (だが待てよ普通の女の子であれば、スカウトだと認識した途端、先程の女みたく死んだ魚のような目で180度回れ右、という顛末になるはずだ) 俺は恐る恐る口を開く。 「あ、あのっ!!おねえさん綺麗ですねっ!!」 「………………」 返事は無い。 「その、おねえさんお仕事とかって…」 「ヘルス紹介できますか?」 「へいっ??」 ーまさか、こんな美少女が唐突にヘルス御所望ですか!? 「え、あ、はい。紹介できますけど……」 急過ぎる展開に、先月に続き今月売上ゼロの俺は、喉から手が出るほど美味しい状況に、あまり乗り気じゃない感じで返事していた。 ♢ ーバタンッ!!!!!!! 机を叩き、俺は席を立ち上がった。バナナ・ミルク・スムージーが零れ、床に滴っている。 「ふ、ふざけんじゃねえよっ!!」 「ふざけてないわっ!!」 「いいや、ふざけてるねっ」 俺は嘲笑うようにして目の前の美少女を見下した。 どこに一日100万稼げる店があるって言うんだ・・・。 「悪いが、そんな店どこを探してもないねっ」 「あるわっ!!」 銀髪超絶美少女は真剣な眼差しで口応えしてくる。 そろそろ美少女といえ、これ以上の冗談に付き合ってる暇はなかった。 ただでさえ、家賃も滞納し生活費に困る俺にとって、面接時のカフェ代だって惜しいほどだった。。。 「そうやって遊んで何がたのしいってゆうんだよ!?ああ?いちにち100万稼げるだァ?そんな世界あるならぜひおれを連れていって欲しいね」 頭の中で、美少女に囲まれふんぞりかえる金持ち勇者をイメージし、そんな異世界みたいな所ねえかなぁ、ともぼやいた。 「あるわっ!」 冗談のつもりだった。そこで美少女が折れて、からかったことに対する謝罪の言葉一つでも聞ければそれで良かったんだ。 「そうか、じゃあそこに行ってくれ…」 冷たく突き放すように言葉を残し、俺は店を出た。 ♢ 電車に揺られながら、 「今日も収穫無しか………」 と、ぼそっと呟く。 (あの野郎、人を馬鹿にしやがって) 今でも鮮明に昼の情景が脳裏に浮かび上がった。 銀色に輝く髪、ぱっちりお目目に銀色の瞳。華奢でいまにも折れそうな体。そのひとつひとつがまるで羊肉のように、あたまをひきずって離れなかった。 〜ティリリリリリ〜♪ティリリリリリ〜♪次は〜○○駅に止まります。お降りの際は、くれぐれも足元にご注意ください。まもなく〜○○駅、○○駅にご乗車致します。 最寄り駅のアナウンスが流れ、俺はドアの前に立った。 ープシュー 自動ドアが開き、ホームに足を伸ばし降りようとした時、 俺は強く肩を誰かに掴まれた。 「ッッ!!!!!!!???????」 慌てて後ろを振り返ると、 そこには、昼に遭遇した銀髪の超絶美少女が駅のホームで勇ましくこちらを睨んでいた。 「言ったわよね?」 「はぁ!?おまえなにゆって………」 銀髪野郎は再び俺のからだへと触れた。 優しく、今度は手のひらでそっと。 スーっと水が流れるように俺の意識はそこで朦朧とし始め、やがて平行感覚を失い、 ………あれ、前にもこんなことあったっけ。 記憶の糸を手繰っていた。昔、女の子を酔っぱらい客から道端で助けたときのことを俺は思い出していた。 俺は盛大にその男から顔面パンチを浴び、ぶっ倒れた。 あれ、あの時の子こいつに似てるような………。 俺の意識はそこで完全に、シャットダウンしたのだった。