だkedサブ

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だkedサブ

訳あってメイン垢使えなくなったのでこっちでお願いします

魔女の鬱蝉

魔女の鬱蝉 第十五話 烏羽は息を飲んだ。 夢を諦めて──。 その言葉が真白の口から放たれた事がとても想像出来なかった。 彼女は烏羽の顔を見て笑う。 「『想像出来ない』って顔してるね」 「え、そ、そんな分かりやすい……?」 「うん。数日しか会ってないとはいえ、分かるよ何となく」 微笑する彼女を見て、烏羽も釣られて笑ってしまう。 「……でも。どうしてそんなことを……? 何か理由があったんじゃないの?」 彼は真白に尋ねる。 悲しい顔で、彼女は空を見上げる。 何かを思い出すかのように。 「……樹。魔女の魔力は、体のどこで錬成されてると思う?」 「え……?」 突然の問いかけに彼は目を丸くする。 首を傾げ、唸りながら烏羽は考える。 先程の真白のセリフ。 『私達魔女にとって。魔力は"血"で、魔法は"神経"みたいなものなの』 人間の体での例えでそうなるのなら──。 彼は恐る恐る答える。 「…………心臓?」 「……まぁ、大体正解。正確に言うなら、私達の"心"から生まれてるんだよね」 「こ、心?」 「そ。魔力っていうのは、魔女の感情とかのエネルギーから生まれるんだ」 真白は自分の胸元に手を当てて言う。 烏羽は「へぇー」と感心したように声を上げた。 だけど、真白は違った。 「……それだけなら聞こえは良いけど……問題はそこにある」 声のトーンが一気に変わった彼女に、烏羽は思わず寒気が走る。 まるで別人になってしまったかのようだった。 「私達魔女の魔力は、その人の心から捻出され、体中を巡り、魔法を使ったり傷を癒したりと、何かと便利なもの……だけど、その魔力は……その人の"負の感情"から生まれるものなの」 「……負の、感情?」 「うん。悔しさ、憎しみ、怒り、悲しみ。そう言った負の感情から。魔力は生まれ、体中を巡るの。要するに、魔力って言うのは負のエネルギーとイコールになるものなの」 彼女は悲しみを押し殺すかのように言う。 「魔法を使おうとすればする程、魔力は生み出され、体中を巡る……人の体に負のエネルギーが充満したら……その先に訪れるのは」 彼女のその言葉に、烏羽は鳥肌が立った。 負のエネルギーに満たされた人間は……いずれ破滅の道に進んでしまう可能性が高い。 魔女──魔力や魔法という存在は、彼が夢見た程のものでは無かった。 「私はそれを知って、みんなにそれを伝えて、魔法を使うのを止めたかった──だけど……」 「止められなかったのが…………瀬玲奈さん?」 真白は「うん」と悲しい声で首を曲げる。 唇を噛み締めて、泣き出しそうなのを堪えているようにも見えた。 「だ、だけど。ちゃんと説明したのにどうして?」 「……私達魔女にとっては。魔法や魔力は体の一部。それを軽々しく手離すことなんて、簡単にはしない……特に、瀬玲奈みたいな、魔法に"救われた"人なら尚更……」 「……」 「だから。瀬玲奈はあんなふうになってしまったの…………昔は、あんなに攻撃的じゃ無かったのに……」 真白は右目の端から涙を流してしまう。 そんな彼女に、なんと言葉をかけて上げれば良いのか、烏羽には分からなかった。 魔女達の背景には、一般人では想像がつかない程のことがあったのだと、理解は出来た。 だけど、烏羽は魔女達とは同じでは無い。 事情を知れた所で、親身になって寄り添うことも、何かを言うことも出来ない。 だが、それでも彼は──。 「……そうだったんだね」 「うん……だから樹……もう樹は、私達に関わらなくて──」 「ううん。俺に、最後まで手伝わせて」 「……え?」 「正直言うなら……魔女の事は本当に分からないし……俺なんかで何か出来るわけが無いとは分かってる……それでも……奈々がここまで苦しんで、悲しんでも……諦めていないんだ」 彼は深く息を吸い込む。 「……ここまで来たら……俺も逃げないよ」 「……ッ!」 真白は息を飲むと、バッと烏羽から背を向けた。 烏羽は首を傾げる。 「え? 奈々どうし」 「今顔見ないで! 見たら体中真っ黒に塗りつぶすからね!?」 「ええっ!? わ、分かったよ……」 彼は彼女特有の脅しを受けて、大人しく視線を逸らす。 真白の顔は涙に濡れている──訳では無く。 「……もう。樹の……女誑し……」 まるで自分の魔法に当てられたかのように真っ赤に染まっていた。 続く

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魔女の鬱蝉

魔女の鬱蝉 第十四話 街から離れ、人通りの減った住宅地に二人はやってきた。 小走りだった為、二人共息が上がっていた。 真白が烏羽に声をかける。 「大丈夫?」 「う、うん。大丈夫だよ」 「そっか……良かった」 安心したように笑う彼女の顔は、どこか元気が無い。 烏羽は声をかけようとするが、すんでのところで躊躇ってしまう。 葛藤の最中、彼女の顔を見る。 そして目を丸くする。 真白は──泣いていた。 笑顔を貼り付けたまま、両目から抑えられない程の涙を流して泣いていたのだ。 鼻をすする間に、笑い声も混じっている。 嬉しいから……ではないのだろうと、はっきり分かる、空気の様な声が。 「…………やっぱり。無理だったのかな? 私……伝えられなかった……」 「……奈々」 名前を呼ぶも、なんと声をかければ良いか分からず、烏羽は口を噤む。 乾いた笑いを零し、彼女は天を仰いだ。 「そりゃそうだよね…………皆に……認められない無茶なことを……ずっと言い続けてたんだから……友達じゃないって…………当然だよね」 ボロボロと涙を流す。 烏羽は彼女のことをじっと見つめた。 真白は相当傷付いた様子だ。 瀬玲奈と真白が昔どんな仲だったのか、他の魔女がどんな人なのか。 彼には分からない。 だから、瀬玲奈の言う通り、烏羽は干渉できる立場にはいない。 だが──。 悲しみで涙を流す少女を目の前にし、彼は黙っていられるはずが無かった。 「……そんな訳無いと思う」 「え……?」 「……俺は瀬玲奈《あのひと》の言う通り……奈々達魔女の事をこれっぽっちも知らない。だから、あんまり偉そうに何かを言える資格は無いと思う。だけど……どんな事情であれ、奈々が魔女達に何かをしてあげたくて動いてるのは……俺でも分かる」 「…………」 「だから……他の人にも……瀬玲奈さんにも……多分伝わってると思う」 烏羽がそう言う。 彼にはこの言葉が、真白に対する慰めになっているのかは分からない。 だけど、今の正解はこれだろうと、烏羽なりに判断した。 真白は暫く彼を見つめ、涙を流しながら微笑んだ。 「……ありがとう。樹はやっぱり優しいね」 「そ、そんなこと無いよ!」 「……やっぱり。樹には話しておくべきだったよね。私が瀬玲奈達に何をしたのか」 彼女が涙を拭いながらそう言う。 烏羽は真白の話を真剣に聞こうと、一度大きく呼吸する。 彼女もどこか覚悟を決めた表情で口を開く。 「──私達魔女にとって。魔力は"血"で、魔法は"神経"みたいなものなの。体内で錬成される魔力を、肉体に刻まれた魔術式に流して魔法を放つ。貴方達一般人が心臓から血を生み出して、体内の神経に巡らせて体を動かすこととほとんど同じ」 真白の説明に、烏羽は頷く。 魔女にとっては、魔法や魔力の存在は生まれた時から当たり前で、一般人にはその"当たり前"が存在しない。 瀬玲奈が先程言っていた『私達の事を軽々しく口にしないで』という言葉にも納得が行く。 「つまり。魔女は魔力や魔法があってこその存在──そうほとんどの人が思ってた」 「違うの?」 「……違くは無いよ。間違ってる訳では無いから」 そう彼女は言うが、彼女はどこか腑に落ちていない様子だった。 「……瀬玲奈はね。小さい時に、事故で声があまり出なくなっちゃったの」 「え……そうなの?」 「うん。私達魔女が初めて会った時も、素の声はほとんど出せて無かったよ」 悲しそうに言う真白に、彼は一つの問いを投げた。 「……でも。あの歌も声も……瀬玲奈さんのものなんじゃ……?」 「そうだよ。あれは瀬玲奈の魔法の力。音を魔力で増幅させることでああなってるの。拡声器みたいな感じかな?」 彼女の説明を聞いて、烏羽は納得する。 あれは彼女の小さくなってしまった声帯を、魔法で補っていたのだ。 彼は今の説明を受けるまで全く気付かなかった。 魔法というものの性質がよく理解できた。 「……樹だったら。声が人より出せなくなったら……どうする?」 「……俺だったら……別の方法を考えるかな。戻る方法とか、別の意思疎通方法とか」 「……そうだよね。普通の人ならそうなるよ……だけど……瀬玲奈には叶えたい夢があるんだ」 「夢?」 烏羽が首を傾げる。 真白が視線を下に落とし、少し言葉を発するのを躊躇う。 そして短く息を吐いて言った。 「……瀬玲奈はね。小さい頃からずっと、歌手になるのが夢だった」 その一言を聞き、烏羽はようやくことの顛末を悟った。 瀬玲奈は歌手──すなわち、歌声を最も必要とする役職を夢見ていた。 そして事故で喉を壊しても尚、魔法の力でその夢を見続けていたのだろう。 「……本当に酷いよね。私」 「え? どうして?」 真白は呆れたようなため息をつき苦笑した。 視線を斜め下に逸らし、彼女は言った。 「──私は……瀬玲奈に夢を諦めてって言ったの」 続く

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魔女の鬱蝉

魔女の鬱蝉 第十三話 二人の魔女の間に、黒い空気が漂う。 一歩間違えれば、互いに全力で衝突してしまいそうだった。 烏羽はその中に取り残され、最早言葉を交わす事も出来ない。 真白は怒りに満ち溢れた瀬玲奈をじっと見つめる。 今にも泣き出してしまいそうな、悲しい瞳で。 「……うん。瀬玲奈の言う通り。私の言ってることは、魔女としては異常だと思う。私達の前の魔女達《ひとたち》も……きっとそう思う」 どこか悟った声色で彼女は淡々と言う。 「ごめん……でも、それでも……皆は友達だから。諦められない」 「…………」 瀬玲奈はそんな真白の言葉を最後まで聞く。 そして顔を右手で覆うと──。 「──あはっ」 笑った。 本当に心の底からおかしそうに笑う。 ただその声には──楽しさが色付いていない。 「いい加減にしてよ。何が"友達"? そんなの……私はとうの昔に名乗ってないわよ」 「……っ」 「あんたが初めて私達に"あんな話"をした時から。私はあんたを友達となんて思わなくなったわよ」 平然とした口調で彼女は鋭い刃物の様な言葉を真白にぶつけた。 真白の体が、その言葉に呼応するようにビクビク震える。 烏羽はそれを見て歯をギリッと鳴らす。 瀬玲奈はその行為に動じず、苛立った表情で彼を睨む。 「あんたもね。奈々に何を吹き込まれたのかは知らないけど……私達の事を軽々しく口にしないで」 「……」 彼は反論出来ずに黙り込む。 瀬玲奈は奈々に視線を戻す。 その瞳は、とても友達に向けるものとは思えない程冷たく、殺意すら感じ取れる。 「これが、最後の警告よ。とっとと私の前から消え失せ──」 彼女が真白に言いかけた時、ピタリとその動きが止まった。 二人が首を傾げた時、瀬玲奈が急に咳き込み出す。 よく見ると彼女の口を抑えた手の指の間から、赤い血が流れている。 それに気がついた奈々が思わず叫ぶ。 「瀬玲奈っ!?」 急いで彼女に駆け寄り、奈々は必死に呼びかける。 「瀬玲奈! 大丈夫!? 早く治療しないと!」 奈々は瀬玲奈に右手を差し出す。 だが瀬玲奈はその手をパシンと叩き。 「"うるさいっ! 触るな!"」 彼女の音波攻撃が、奈々の至近距離で炸裂する。 あまりの衝撃に、奈々の体が後ろに吹き飛ばされる。 鈍い声を上げて地面に激突した彼女に、烏羽は駆け寄った。 奈々の体を抱き上げる。 「奈々っ! 大丈夫!?」 彼の呼びかけに、彼女は言葉にならない呻き声で答え、頷く。 ギリギリで意識は残っているようだ。 烏羽は安心し息を吐くと、瀬玲奈に視線を向ける。 「ぐっ……な(の……こ\%き……の……こと……」 「……え?」 彼は彼女の言葉に首を傾げた。 心做しか、瀬玲奈の言葉には、昔のテレビの砂嵐の音の様なノイズが所々に挟まれていた気がしたのだ。 血反吐を吐いているから当然なのかも知れないが。 烏羽の頭の中が混乱していると、彼女は舌打ちしながら走り去って行った。 彼は追おうとしたが、真白の容態を優先した。 「奈々……大丈夫?」 彼女はふぅと大きく呼吸をし、微笑を浮かべる。 額からは大量の汗が流れている。 ダメージが大きかったのが素人目の烏羽にも分かった。 「だ、大丈夫。これくらい」 彼女はそう言って立ち上がると、ふと後ろを振り返る。 路地裏の向こうで、沢山の人が何事かと覗き込んでいるのだ。 幸い、多くが二人には気付いていない。 真白は烏羽の服の袖を掴む。 「急いで移動しよう。人が集まっちゃう」 烏羽は彼女の強引な足並みに続いた。 真白は足が少しだけふらついている中、せっせと路地裏を抜け出した。 その背中に彼は続いていた。 続く

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魔女の鬱蝉

魔女の鬱蝉 第十二話 聞こえてきた美しい歌声に耳を澄ませると、段々と音が近づいて来ていることに気がついた。 烏羽と真白は顔を見合せて頷いた。 探していた"魔女"が、こちらに向かって来ている──。 「……」 烏羽は息を飲み込んだ。 美しい歌声が響き渡っている空間は、何人も発言を許さないといった緊張感を放っていた気がした。 そんな中、真白は口を開いた。 「……瀬玲奈? 瀬玲奈なんだよね!?」 二人の目の前に、歩いてくる一人の人影が見える。 真白はその人影に問いかけていた。 すると、周囲で聞こえていた歌がピタリと静まり、同時に人影が立ち止まる。 「……あんたも。大概しつこいわね。奈々」 苛立ったため息を吐きながら、人影はそう答えた。 先程の歌声と、同じ声色だ。 影から現れた人は、長い茶髪の髪の背の高い女性だった。 その女性は烏羽に気付いていないのか、真白の方をギラリと睨んでいる。 真白は一瞬安心した表情になるが、即座に真剣な視線で茶髪の女性を見つめる。 「……瀬玲奈。何度もごめん。でも、やっぱり私……」 必死になって何かを訴えようとする彼女を見て、瀬玲奈は舌打ちをする。 「何度言われても。私は変えるつもりは無いって言ってるでしょ? それとも何? 私を納得させられる言い訳を考えて来たの?」 瀬玲奈は苛立った様子で長い髪を払う。 未だ相手にされない烏羽は、チラリと真白の方を見つめる。 彼女は真っ直ぐ瀬玲奈の方を見つめる。 「……確証を持って言える訳じゃ無いんだけど──」 真白は息を深く吸い込んだ。 「瀬玲奈や他の……魔女の皆を助けたいから……」 「……へぇ。それで、助ける為に……私達に"あんなこと"を言ったって訳?」 「……うん」 真白は迷い無く頷く。 すると瀬玲奈は鼻で笑う。 「そうなんだ。あんた……私達魔女ってものがどんな存在か。それを分かった上で言ってるんだよね?」 「……分かってる」 「そ…………だったら。あんたと話す事なんて無いわよ」 「ま、待って!」 立ち去ろうとする瀬玲奈を真白が必死に瀬玲奈を呼び止める。 瀬玲奈が舌打ちして彼女に向き直る。 「三回も性懲りも無く会いに来て置いて、そんな説得力も欠けらも無いのね……はっきり言ってウザいから消えてくれる?」 「……っ」 瀬玲奈の強い発言に、真白は縮こまってしまう。 それを見た烏羽は思わず前に出て声を上げる。 「そんなこと……言うなよ……!」 瀬玲奈は彼にやっと気づいたかのように目を丸くする。 怪訝そうな様子で烏羽に尋ねる。 「あんた、誰?」 「俺は、烏羽樹。奈々の……友達」 「……は? あんた何言っ……て」 瀬玲奈は彼の姿を見て言葉に詰まった。 すると信じられないものを見る様な目になった。 「……あんた。この前学校にいた……」 「え? ……あ。あの時」 烏羽は思い出した。 数日前に、学校での異変に遭遇した際に、ローブを羽織った人に襲われた事。 「……まさか。君が?」 「どうしてあんた……そんなに平然としてんののよ! あれを受けて、数日程度で動ける訳……」 動揺しながら瀬玲奈は真白の方を見る。 「……あんた……まさかあの後助けたの?」 「……そうだよ。巻き込んだ責任があるから」 「……へぇ? あんた、昔は魔女の正体は隠蔽したがってたのに、どういう風の吹き回し?」 「……知ってもらった方が良いと思ったからだよ」 真白が真剣な声色で言う。 対して瀬玲奈は呆れた様に息を吐く。 「つくづく意味が分からないわね……イラッとする」 「……瀬玲奈。聞いて、私達魔女には、これは必要な事なの」 彼女は必死に訴える。 瀬玲奈が舌打ちをする。 今にも彼女は憤慨してしまいそうな雰囲気だった。 真白は続けた。 「このままだと、私達は皆……壊れてしまうの」 「…………あんたは本当に……そればっかり! 少しは別の言葉を使えないのかこの馬鹿!」 瀬玲奈は大きな声で叫んだ。 真白は一瞬怯みながらも、言葉を続ける。 「こうとしか言いようが無いの! 私達魔女は──」 「──"うるさい"っ!」 ノイズの混じった様な大きな音が、烏羽達の脳内に直接響いた。 全身に駆け巡る痺れの感覚に、烏羽は激しい痙攣を起こす。 あの時と、同じだ──。 学校で烏羽が受けた音波攻撃。 それと感覚がほとんど一緒だった。 瀬玲奈は荒い呼吸をしながら、二人を睨みつける。 「あんたの言いたい事なんて分かってる! 私達魔女は"魔法を使うと心が壊れる"って! そう言いたいんでしょ!?」 「……うん」 「何を根拠にそんなこと言えるの……? あんたが言ってることがどれだけ異常な事なのか分かってるの?」 「……」 真白は何も答えなかった。 烏羽はそんな二人を交互に見つめていた。 二人の間には、黒い空気が流れていた。 続く

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魔女の鬱蝉

第十一話 烏羽と真白は、まだ茜色に満ちた街を並んで歩いている。 人の流れもまだ激しく、立ち止まることは許されない様な気分になる。 真白は足早に人混みを抜けようと歩く。 烏羽が彼女の歩幅に全力で着いて行きながら尋ねる。 「ねぇ! ど、どこに向かってるの?」 「この先に……多分。瀬玲奈がいる」 「え……? なんで、分かるの!?」 「分かるよ……皆の気配くらい!」 人混みを半ば強引に掻き分け、彼女は乱暴に歩を進める。 周りの人間を意に返さないその歩みは、何かを焦っているようにも思えた。 烏羽は彼女に必死に訴える。 「まっ……待って!」 直後──真白が何かに足を取られ、地面に転倒してしまう。 ドシャッと彼女が地面に崩れ落ちる。 通行人が彼女を避けながらすれ違う。 すれ違いざまに舌打ちをする声も聞こえた。 烏羽は反射的に真白の右手を掴み、立たせる。 「え」 彼女の間の抜けた声に反応せず、人の少ない路地へと小走りで入る。 烏羽は上がった息を整えて深呼吸する。 そして真白の方を見て尋ねる。 「奈々。大丈……夫?」 彼は不思議に思い首を傾げる。 真白は彼から明らさまに目を逸らしており、繋いでいる手が小刻みに震えている。 彼女は目を逸らしたまま言う。 「……あ、えっと……ごめんその……て、手が……」 「え……? あ、ご、ごめん! 嫌だった?」 烏羽は慌てて手を離して、真白に謝る。 彼女は頭を横に振って、震えた声で言った。 「ち、違うの! 嫌な訳じゃなくて……て、手なんて握った事……無くて」 「え。あ、え? そ、そうなの?」 「あぁー……えっと……」 俯きながら何か言いづらそうな雰囲気になっている。 よく見ると、頬が少し赤くなっている。 「……し、仕方ないでしょっ!? お、男の子と仲良くした事なんて無いんだからさ! ふ、触れた事も無いし! 話した事すらもないのに!」 「お、落ち着いてよ奈々! ご、ごめんって! 俺、あの時なんか必死になっちゃって!」 烏羽は慌てて弁明していると、真白は呼吸を整える。 「あ、ありがとう。樹のせいじゃないから安心して。私が男の子に慣れてないのが原因……じゃなくて、焦り過ぎたのが原因だし!」 「……そっか」 「……逆に樹って女の子と仲良く出来る?」 「……一人。友達がいるよ。なんだか、騒がしくてテンション高い子だけど……凄く優しくて、話してて楽しいんだ」 烏羽はそう説明すると、真白が目を丸くする。 そして彼女は目を細めて笑った。 「……そうなんだね……いいな」 「え?」 「ううん。なんでもない。じゃあそろそろ探しに行こっか」 彼女が再び歩き出すと、烏羽がふと何かに気付く。 真白の右膝が少し赤くなっている。 先程転倒した拍子に擦りむいてしまったのだ。 「奈々、その足……」 「ん? あぁ、このくらいなら──」 擦りむいたところに彼女は手のひらを添える。 すると、傷がゆっくりと塞がって自然と元の肌色に戻っていた。 烏羽は口を開けて呆けてしまう。 「……そ、それも魔法?」 「んー……ちょっと違う。魔法というよりは魔力による力。回復できる魔力を単純に傷に送り込んで塞いだって感じ? 魔法を打つ為の魔力とはまた別物」 「な、なるほど。複雑だけど凄いのは分かった」 「……それ分かってるの?」 烏羽が「うーん」と唸ると、彼女はそれを見て小さく微笑む。 二人で今度こそ移動しようとした時──。 「『Under the spreading chestnut tree──』」 どこかからか、美しい歌声が聞こえて来た。 続く

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魔女の鬱蝉

第十話 烏羽は家に帰宅すると自室のベッドに横になる。 白い天井を見上げながら、彼は有村に言われた言葉を思い出す。 『ついに樹にも女が……』 「……いやいや。違う違う」 彼は自分に言い聞かせる様に口にする。 「奈々が魔女だったから珍しかっただけで……それに手伝う約束もしたし……うぅん……?」 彼は自分の心に問いかける。 奈々は自分の見てきた人間の中で、様々な意味合いで特異だ。 魔女であることと同時に──何か別のものを感じる。 だから烏羽は気にとめていた。 だがそれは果たして恋愛感情なのだろうか。 彼には分からなかった。 「……」 彼は自分の胸に手を当て、真白の事を思い浮かべる。 自らを魔女だと言いながら、スイーツで喜ぶ純粋さ。 男性慣れしきれずに照れてしまうところ。 そして、そこまで闇の感じられない笑顔。 「……可愛い……とは思うけど」 どうしてであろう。 ──何故か、心に引っかかる。 すると、突然スマホから通知音が響く。 噂をすればというもの。 「……奈々からだ」 彼女からの連絡はこうだった。 『明日の夕方会えない?』 たったそれだけだ。 烏羽は真白のメッセージに返信する。 「分かった! どこに集合?」 『駅前とかどうかな?』 「分かった! 楽しみにしとく!」 そう返すと、彼女から『ありがとう』と淡白な返事が返される。 彼はそのまま眠りについた。 明日の学校に備えて。 次の日の放課後。 「いっつきー! 帰ろーぜーい!」 彼は有村に声をかけられて言葉に詰まる。 数秒考えた後、烏羽は彼女に両手を合わせて謝る。 「ごめん! 今日はちょっと予定があって……」 「あーりゃ。そっか。最近忙しそうやね」 「うん……ほんとごめんね。また今度必ず行くから!」 「……分かったよー。なんだかんだちゃんと埋め合わせしてくれるもんね。樹」 有村が「ばいばーい」と手を振って彼を送り出す。 樹は学校を出て、気持ち足早に駅へと向かう。 通り慣れた道のりを歩く足並みが、軽やかに感じられる。 真白に会うのが、内心楽しみなのだ。 駅前の広場にやって来て、烏羽は彼女の姿を探した。 「あ! 奈──」 彼女の姿を見つけた時──。 真白は何かを口づさんでいた。 「『 Under the spreading chestnut tree
There we sit both you and me
Oh how happy we will be
Under the spreading chestnut tree』」 美しい歌声だった。 人目も気にせず歌い続ける彼女の歌は、不思議とどこかで聞いた事のある様な気がした。 彼はその歌声に思わず魅入ってしまうも、ハッと我に返り、真白に話しかける。 「奈々……お待たせ」 「あ。うん。別にそこまで待ってないよ。行こ」 二人で並んで歩き始める。 今日の要件を聞く前に、何故だか彼は気になった事を尋ねた。 「……さっきの歌って……何?」 真白はそれに一瞬反応するも、すぐに微笑を浮かべる。 「あれはね。瀬玲奈に教えて貰った歌なの。魔女の歌なんだって」 「そ。そうなんだ」 「うん。小さい頃からのお気に入りの木の下で、この歌を友達と歌ってたんだって。それを私達にも教えてくれたんだ」 「……本当に仲良かったんだね」 「うん……」 彼女は少し悲しそうに笑った。 だけど彼はそれに気づかなかった──。 続く

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魔女の鬱蝉

第九話 烏羽と有村はいちごパフェのカフェへと向かい、雑談をしながらパフェを楽しんでいる。 有村は「うまぁぁ」と目を輝かせながらパフェを口に運んでいた。 烏羽はそんな彼女を見て微笑んだ。 「はー……やっぱりおいひい食べてみたかったんよねぇ……」 幸せそうに言う彼女は、続けて烏羽に言葉をかけた。 「ね。樹……もしかして飽きた?」 「え? な、なんで?」 「いやぁ。さっきから喋らないなーって」 「そ、そうだったかな……ごめん」 「んーん。きっと私とデートできて嬉しくて仕方ないんだよ」 「そ、そういうことだよ!」 「ぜってー嘘やんそれ。樹は分かりやすいんだから」 頬を膨らませながらも、すぐに「ふふん」と笑う。 「やーれやれ。ついに樹にも女が……うぅお姉さん嬉しいよ……」 「い、いつから俺のお姉さんに……?」 「生まれた時から?」 「俺ら幼なじみじゃ無いよ?」 「えーおっかしいなぁ。私の記憶では胎児の時から一緒だったようなぁ」 「双子でも無いよ……な、無いよね?」 「あっははっ。ジョーダンだよ! 素直だなぁ樹は」 有村は楽しそうに烏羽に笑いかける。 「もー……でも。有村さんと遊びに行くの楽しいよ」 烏羽がにっこりと笑う。 それを見た彼女は、一瞬驚きながらも微笑を返す。 「えっへっ。樹はやっぱり良い奴だなぁ」 「そ、そうかな? 俺は有村さんも良い人だと思うけど」 「……そっか。んじゃお似合いって訳だね!」 「えっと……そうなのかな……?」 二人はパフェを食べながら笑い合った。 「あー。美味しかった」 「良かったよ。気に入ってくれて」 店を出た二人は、ゆっくりと帰り道を歩いている。 有村はご満悦な様子で言う。 「ふふん。やっぱり樹は優しくて良い男だねぇ。誰もが惚れてまうよ」 「そ、そんな事無いよ。俺そんなにモテて無いし……」 「え? 知らないの? 樹って割と女の子から人気なんだよ?」 「ええっ!? そ、そうなの?」 予想外の発言に彼は目を丸くした。 「なーんか頼りになるのかならないのかが曖昧で、素直な可愛いところがよく好かれてるらしい。噂だけどね」 「……喜んで良いのかなそれ」 「いーでしょ! 私もそんなところが好きだし」 「……ありがとう?」 烏羽は首を傾げながらもお礼を言う。 有村は「えへへ」とにっこりと笑う。 「ねっ。樹」 「うん?」 「今日はありがとう。また明日学校で会お」 「うん! こっちこそありがとう!」 「……ふふ。今度は樹から誘って欲しーなっ」 「……うん。頑張って場所探す」 「やったー! バイバーイ」 そう言って彼女は、彼へ手を振って帰って行った。 続く

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魔女の鬱蝉

翌日、烏羽は学校で昼食をとっていると、スマホをボーッと眺めていた。 あれから彼女からの連絡は無かった。 思えば当然の事である。 手伝いといっても出来ることの方が少ないはずだし、そもそも毎日のように呼び出す理由も無いだろう。 だけど、密かに彼女からの連絡を期待してしまっている。 ただ何も書かれていないメッセージを、烏羽はずっと見つめ続けていた。 すると──。 「うぇーい! いっつきー!」 突如、有村の声が聞こえ、反射的にスマホをしまった。 有村は彼の顔を見てニカッと笑う。 「どーしたどーした? 驚いた顔してさ! さてはやらしいことでも考えてたのかー?」 「そ、そんなの考えてないよ!」 「ふぅん? ま、樹は確かにそんなえっちぃなことを考えたりしないもんねぇ」 「う、うん」 「ところで樹くーん? 今日の放課後お暇でありますか?」 「え? う、うん。暇だけど」 有村はそれを聞いてパアッと顔を輝かせる。 「なら。放課後私とデートしていただけませんか? 例のイチゴパフェのカフェに」 ニヤニヤしながらも、どこか怖がっていそうな表情だった。 だけど、烏羽には彼女が何に怖がっているのかが分からなかった。 彼は頷く。 「……いいよ。一緒に行こっか」 「やったぁ! じゃあ、放課後を楽しみにしているぜ!」 ピースサインをしながら彼女は去っていった。 放課後。 HRが終わり、生徒が次々と帰って行く中。 有村が烏羽の机に歩み寄る。 「それじゃあ。レッツラゴーといこうじゃありませんか! 樹!」 「うん。行こっか」 そう言って二人は歩き始める。 樹は既に真白と共にその店を訪れたことがある。 だから率先して道案内をおこなった。 「やけにスラスラと道案内するねぇ。さては……私とデートした過ぎて張り切ってたなー?」 「え……いや。違うけど」 「ふーん? なら、他の子とデートするための視察かぁ?」 「……ち、違うけど」 図星だった。 デートというより、他の子と出かけた場所ではあるからだ。 「……まいっか。それよりデートを楽しも!」 そう言って有村は「わーい」と声を上げた。 真白と有村──二人はそれぞれ違った人間だ。 二人とも楽しみにしてくれていたんだ。 だから楽しませてあげようと、烏羽は思いながら、歩き始めた。 続く

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魔女の鬱蝉

第七話 烏羽と真白は隣合って暗くなった街を歩いている。 「えっと……まずは"魔女"について説明しないとね」 烏羽は思わず息を飲む。 何故だか彼は、この話を聞くと"二度と戻れなくなる"気がしたからだ。 そんな事は露知らず、真白は話を始めた。 「私達"魔女"は古の時代から存在する特別な血筋の人間。魔力と魔法を生まれつき持っていて、歴代の全員が……まぁ当たり前だけど女の子だったり女性だっだり老婆だったりだね」 「……まぁ。それは俺も何となく知ってる……まぁ正確にはおとぎ話とか伝承で知ってるだけだけど……」 「うん。今の人達からの認識はそんなもんだよね。だけど、昔は魔女達と一般人は密接な関わりを持っていた。良くも悪くも、魔女の力は偉大だったからね」 「そ、そうなんだ……それは意外かも知れない」 魔女というものは、人々に知られないようにする為に隠れ住んでいるイメージのものもある。 知っているのもごく一部といった印象だ。 「まぁ。それはあくまでも"今"の話。魔女の持つ魔力は誰もが欲しがるくらいの代物だし、魔法は私みたいにそこまで目立たないものもあれば、概念的で派手派手なものまで様々なんだよ」 「……奈々の魔法も十分目立つ気がするけど」 「一般人から見たらね。歴代とか他の四人に比べたらこんなの、翼竜とヒヨコくらい違うわよ」 本当に当たり前の事を言うような態度の真白に、烏羽はゾッとする。 彼女の魔法もそうだったが、これ以上に凄いと言われている四人と、彼女は今敵対していると考えると、思わず体が震える。 「さて。では何故。昔は助けとなっていた魔女の力が……今ではあまり知られていない……と言うよりは魔女達が人々から力を隠し始めたのか……ま、勿体ぶってるけどあるあるな話だね。なんだと思う?」 「えっと……悪い人間に悪用されるとか?」 「まぁそれもそうだけど……他にも理由はあるよ」 「ほ、他の理由って……?」 「…………」 彼女は急に黙り込んでしまう。 あまり触れられない話題に触れてしまったのであろうと、彼の頭は察知した。 「あぁその……無理には聞かないから」 「……ごめんね。気を遣わせちゃって」 「いや。全然……その……他の四人以外にも、魔女っていたりするの?」 烏羽が尋ねると、真白は首を横に振る。 「それも不思議なことなんだけど……魔女って言うのは同じ世界に五人以上は存在出来ないらしいの。まぁ伝承では五人以上存在しなかったってだけだから、たまたまなのかも知れないけど」 「へ、へぇ」 「私達魔女でも。魔女の全てを知ってる訳では無い。分かってるのは自分の知る限りの力と、私達の見てきた事だけ。何せ歴代の人の情報も隠されてたり消されたりしてるから曖昧なのよ……という説明で大丈夫?」 「……うん。魔女のことは十分分かったよ。ありがとう。それで……なんで奈々は、他の子達を探しているの?」 烏羽が尋ねる。 すると真白は毛先をぐるぐる弄りながらそっぽを向いた。 その目は非常に強い悲しみと決意に満ちている。 「──皆を……救いたいから」 「救う……? どういう事?」 「……魔女の皆は今の自分達を受け入れてるのかもしれないけど……その奥底には悲しみや闇を抱えてるの……だから……私が……」 泣きそうになるのを堪えるように捻り出した声で、彼女は言う。 烏羽には真白のその独白の意味が分からなかったが、辛そうなことははっきりと分かった。 「……俺に出来ることは何でも言ってね」 「……ありがとう。樹だけだからね。こんなに魔女の事をペラペラ話したのは」 「う、うん……聞いたからには……頑張る!」 小さな子供のように両手をグッと握る。 真白はそれを見てクスリと笑うと、空を見上げた。 もう月が登り、完全に世界が眠りについていた。 「今日はもうここで解散しようか。明日は……その」 「ん? どうしたの?」 「…………えっと。毎回あのメモ渡されてもめんどくさいよねって思ったから……その……」 何やらとても何かを言いたそうな目で烏羽の事を見ていた。 すると彼女はポケットから板の様な物を──。 「……スマホ?」 「う、うん……れ、れれ連絡先交換して欲しいなって……」 「え……別に構わないけど……なんでそんなにオロオロして?」 「だ、だって……さ? お、男の子と、連絡先交換……だなんて……」 「…………」 お互いに言葉に困ってしまった。 しばらく黙り込んでいると、烏羽が咳払いしながらスマホを取り出す。 「……良いよ。俺は別に、気にしないから」 「ほんと? じゃ、じゃあ……」 二人はぎこちない動作で連絡先を交換した。 互いのアカウントが登録されると彼女はスマホで口元を隠した。 「じゃ、じゃあ。明日の事はこれで連絡するから…………またね」 「うん。おやすみ」 そう言うと真白は、夜の街の闇へと姿を消した。 続く

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魔女の鬱蝉

第六話 烏羽と真白は揃って店に入る。 向かい合って席に座って、お互い視線を逸らしている。 会話をしようにも何も話題が浮かばない。 思えばお互いにまだ一回しか会ったことが無く、何も知らない。 学校で初めて同じクラスになった人と対面するのと同じような状況だが、今回は事情が違った。 烏羽の目の前にいるのは"普通の人間"では無い。 だから、彼にはどうすれば良いのか分からない。 「「……えっと」」 話し出そうとしたタイミングが重なり、視線を再び逸らす。 だが、烏羽は会話を投げる。 「……えっと。き、今日はどんな……あれで?」 「あー……うん。手伝ってくれるって言ってくれたから……色々説明しないとなって」 「あ。そうなんだ。てっきり怒られるかなって思ってた」 「怒らないよ。人の善意を裏切れないもん」 彼女はコホンと咳払いをする。 「まず。私達魔女は全員で五人いる。私。美玖《みく》。瀬玲奈《せれな》。香織《かおる》。撫月《なづき》の四人よ」 「……それぞれ。どんな人達なんですか?」 「……会う時に追々説明するわ。でも……皆いい子なのよ」 切ない顔をする真白に、烏羽は言葉を詰まらせる。 彼女はハッと口を手のひらで軽く覆う。 「……ごめん。その……わざわざ来てもらってこんな事……」 「ううん。大丈夫です。よっぽど……辛かったんだと思うので……」 「え……?」 「あ……その。何があったかも分からないのにおこがましいとは思うんだけど……余程辛いことがあったのかなって……」 「……ありがとう。樹は優しいんだね」 ニッコリと笑いかける。 その顔を見た烏羽は頬を赤らめる。 「まぁ。私達は魔女である以上。普通の人以上に辛いことは多い運命だから」 「……そうなのか……この前俺を襲ったのは誰なの?」 「あれは瀬玲奈だと思う。瀬玲奈の力は魔女の中でもかなり強力だったから……なるべく人を巻き込みたくはないんだよね」 「そ、そんなに凄いのか……奈々はどれくらいのレベルなの?」 「上から数えて三番目くらいだから。本当に真ん中くらいかな。だけど、上の二人が余りにも戦いの面では強すぎるから。あんまり宛にはしないで」 「となると……話し合いなのかな」 「上手くいく可能性は皆無だけど、それしかないね」 彼女はため息をつく。 あまりにも自身の無さそうな真白の姿を見て、彼は何か気の利いた言葉をかけられないか考える。 だがその直後、注文していたパフェを持った若い女性店員が席にやってきた。 満面の笑みで烏羽達に「お待たせ致しました!」と言う。 パフェ特有の独特な形をした入れ物に、ホイップクリームがたっぷり詰まっており、その上には中々の数のいちごと、シロップがかけられている。 烏羽もほとんど勢い任せで購入した為、少々ボリュームに驚いている。 彼はふと、真白の方を見る。 「……ふわぁ……!」 両目をキラキラと輝かせて、嬉々とした声を上げていた。 それを見た烏羽は目を丸くし、真白はハッと口を抑える。 そしてみるみる顔が赤くなっていく。 「…………何?」 「いや……パフェそんなに好きなの?」 「……うん。甘いのが好きで」 恥ずかしそうに頷く。 それを見て烏羽も何だか恥ずかしい気分になる。 「……食べようか」 「……うん」 二人は揃っていちごパフェを口に運ぶ。 すると真白は「んー」と声を上げて頬に手を当てる。 「おいひい……」 完全に蕩けきった顔で言う彼女に、烏羽は思わず笑ってしまう。 とても"魔女"とは思えない、普通の女の子にも思えた。 「あ……ご、ごめん。魔女の事説明しないと……」 「あ、いや……パフェ食べてからで大丈夫だよ。その方が良いでしょ?」 「……う、うん。ありがとう」 そう言うと彼女はパフェを再び食べ始めた。 二分後──。 二人はパフェを食べ終えて店を後にした。 「その……奢って貰わなくても良かったんだけど」 「良いのよ。こう見えて私お金持ってるし、貴方を巻き込んだお詫びみたいなものよ」 「そ、それなら……ご馳走様でした」 烏羽は真白にお礼を言うと彼女は「お粗末様でした」と返す。 彼女は日頃一日の終わりに甘いものを食べるらしい。 普通の女の子らしい習慣を持っており、彼は少し警戒しすぎていたことを心の中で詫びた。 真白は"魔女"とは言っても、普通の人間と遜色は無いのだろう。 「じゃあ。歩きながら話そっか……私達──"魔女"のことを」 続く

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