Jack
11 件の小説Jack
Jackです。 自分の作りたい世界を作って勝手に共有します。同性愛を取り扱った話や、社会課題に踏み込んだ話が多々あります。 いつもは、みなさんの素敵な世界を覗きに行っています。 いつも新しい世界を見せてくれてありがとう。 __時々つぶやく100字は私か、それか別の人。あるいは、存在しない人。
ピンヒールで踊れ。
君はやる前から諦めていないかい。 みんなに不可能と言われて、不可能だと思って、それを諦める理由にしてないかい? 一度でもチャレンジしたのかい? 環境のせいにしていないかい? 強い信念だけで踊り出すことができたのなら、それが本物の成功だとは思わないかい? 君はそのピンヒールを脱ぎ捨てて踊り出すことができるかい? ピンヒールでも踊れ。 そのピンヒールが君の足から離れないなら、それでも踊れ。 踊り出せたのなら、君の勝ちだ。 そのピンヒールがいずれ君の飾りとなる。
散る。
春は、別れと出会いの季節。 僕は新しい出会いを喜ぶより、別れの悲しみから抜け出せない。 何かが変化することを恐れて、最小限の変化で生きてきた僕でも、この大きな変化だけは避けられないと知っている。 桜散るこの春に、瞼に溜まった涙がこぼれ落ちないよう、僕はただただ頭の上を舞う桜を数え続けることをやめられない。
多分多分。
多分、私の親友くんは格好良かった。 身長も高いし、優しいし、モテてた。多分ね。 彼はかなりの面食いで、私が昔仲の良かった可愛い女の子が好きだった。そう話す彼の顔を見ながら、私は多分なんとも思わなかった。 「お前は好きなやついんの?」って聞かれた時 「多分いる。」って答えた。 私はいつも、「多分」で自分を守ってた。 多分あいつは親友だったし、多分あいつも私を慕ってくれていた。 卒業する時、「寂しいだろ」と言われて、 私は 「多分ね」と言った。 多分。多分。 私はいつも「多分」でその言葉の本質をぼかしていた。 でもさ、 「ねえ。アンタさ。私のこと好きだったでしょ。」 「多分、ね。笑」 アンタの多分は全然ぼかせてないよ。
泣けるほど優しい。
君は、優しかった。 泣き叫びたくなるくらい。 目を逸らしたくなるくらい。 君と言う存在を忘れてしまいたいと思うくらい。 優しくて、暖かかった。 君の笑顔は大きく弾けるようなものではなかったけど、 君が笑ってくれた時は流れ星を三つも見つけた時くらい嬉しい。 君に優しくされると 喉が塞がって、息ができなくなって、うまく喋れなくなる。 “俺に優しくしても、なんもなんねえよ、” “何かして欲しくて優しくしてるわけじゃないよ” 君はまたそうやって流れ星みたいな笑顔を見せる。 君のその笑顔を見ると やっぱり泣きたい。 俺は君に執着する。 恋とか、愛とか。わからないけど。 消えそうなくらい優しくて、泣きそうなくらい優しい。 そんな君に恋をしたと言っても、君は俺に優しくできるだろうか。 君の優しさが消えるなら、俺が今消えた方がいいんだ。 君の優しさに免じてさようなら。
どうすればいいかわからなかった。
今日、親友が死にました。 俺は馬鹿なので何故死んだのかわからないし、本当に死んだのかもわかりません。 でも、親友はきっと死にました。 俺は馬鹿なのでアイツがいなくなった今、色々後悔してます。 昨日、親友が死にました。本当は殺されたということがわかりました。 俺は馬鹿なので何故殺されたのかわかりません。 でも、親友は死にました。 俺は馬鹿で単純なので、犯人を憎みました。殺してやりたいと思いました。 一昨日、親友が死にました。殺した犯人がわかりました。 俺は馬鹿なので復讐を決めました。 でも、親友は死にました。 俺は馬鹿なので犯人を殺しました。 それでもやっぱり、親友は死んだままです。親友のためにできることがなくなりました。 俺は馬鹿なので、 俺も一緒に死にました。
アイの形。
「愛してるって言って」 「アイシテル」 「違う、そうじゃない。」 「愛してる。そう言って欲しいの。」 「アイシテルヨ。スゴク。」 「嘘はいらない。本音を言って? 貴方の優しさに溺れてしまいそうだから。」 「ウーン。哀してる。」 貴方のアイには、いつだって 哀憫の意が込められていたことを。私は知っている。 そして私も、いつも自分が哀れだった。 私なんかに嘘でもアイをくれた貴方の、ほんの少しの優しさに、悲しくなった。深海に沈められ溺れて息ができなくなるようだった。 貴方もまた哀憫であった。 こんな私のそばで嘘を吐き続けることを選んだのだから。いや、それを選ばざるを得なかったのか。 どちらにせよ、 私たちは、 哀し合っていた。
彼女はチューインガム。
彼女はいっつもチューインガムを噛んでいた。 「美味しいの?」 と聞いたら、 「ずっと噛んでるから味はしないよ」 「美味しくないって意味」 と答えた。 「何故噛むの?」 と聞いた。 「口が寂しいから」 と答えた。 僕はいっつも彼女と一緒にいた。 「楽しいの?」 と聞かれた。 「楽しくない」 と答えた。 「何故私といるの?」 と聞かれた。 「寂しいから。」 と答えた。 彼女が味のしないガムを噛むように、僕は味気ない君のそばにいた。 だって、寂しいから。 −彼女はチューインガム。
止まった時間。
「いつまでいるつもりだ。」 「え?」 放課後の理科準備室。 電気はついていなかった。 「帰るべき場所に帰りなさい」 「ええ〜。帰りたくないなあ。だって先生寂しいでしょ?」 「何言ってんだよ」 「なんのために私がここにいると思ってんのよ〜。先生が寂しそうだからだよ?」 一人の男教員と女子高生が、向かい合い座っていた。 男は次の日の授業の準備をしていた。 女子高生が着ている半袖のワイシャツと、透き通るような白い肌は、夕陽の心地よい朱色に染まっていた。 「寂しいわけあるか。」 「私は寂しいのになあ」 「…余計なことを言うな」 「ごめんなさあい」 男は女子高生の顔を見た。 女子高生は笑った。 男は眉を八の字に下げて悲しそうに微笑んだ。 女子高生は笑った。 「ごめんな。気づけなくて」 理科準備室の扉が3回ノックされた。 扉が開いて、一人の女子生徒が顔を出した。 「先生、あのこれ、」 「あぁ、今日の授業のやつか、預かるよ。」 「ありがとうございます。、その、」 「ん?」 「先生、誰と話してたんです、?」 そうやって不思議そうな顔をした女子生徒は長袖のワイシャツを着ていた。
俺の天使。
「おじさん。これ、誘拐になるんじゃない?」 「勘弁してくれ。おじさんが君に誘拐されたようなものだろ。」 「ふふっ、人聞き悪いなぁ。助けてあげたんだよ?」 仕事も家も無くした40代後半の男が、あてもなく夜の世界を彷徨い歩いてるだなんて、 滑稽で恐ろしくて、不愉快極まりないだろう。 そんな可哀想な大人の男を救ったのは、小さくて可愛い、 “羽が生えた女の子“だった。 「それでさあ、君は誰なの?」 「誰でもいいよ」 女の子は誰でもいいと答えた。 「好きに想像して?」 「……天使に、見える。」 正直に答えた。 綺麗な羽が生えていて、何故だか顔はぼんやりと霞んでいてよく見えない。それでも彼女がどん底である俺に束の間の幸せを与えてくれている気がした。 「会いたい人はいる?貴方のいうように私が天使だったら、もう天国に行った人にもあわせてあげられるかもよ?」 大人っぽく喋る子だなと思った。 幼稚園生年長か、それか小学一年生くらいだろう。 俺の娘も生きていれば、これくらいの年だったのだろうか。 娘は生まれてすぐ死んだ。 ああ、娘に会いたいな。 「死んだ娘に、会いたいかな。すごくすごく、会いたい。」 「うん。」 −−「私も会いたかったよ。」
その明るさは優しくない
体がだるくて動かない。 足も手も放り出して、目線だけを動かしベランダにある一つの背中を眺めた。 その背中は、さっきまで俺のそばにいたのに、今となってはどんなに手を伸ばしても届かないところにいるようだった。 部屋は薄暗かった。 涼しい風が、素肌に触れて、肌寒かった。 “愛のようなもの“は沢山貰ったのに、俺の心は哀しみと惨めさで溢れていた。 こちらに背中を向けていたはずの彼は、ゆっくりとこちらを向くと 「まだ寝てな」 そうやって笑って、ライターをカチッと付けた。 タバコから煙が上がる。 彼は微笑む。 暖かいはずの火も、少しずつ顔を出す太陽も、彼の笑顔も。 やっぱりどこか冷たいや。