古都綾音

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古都綾音

ライトノベル等書いてます よろしくお願いいたします 主に巫女ものがすきです 和風ファンタジー どうぞいらっしゃいませ ド天然おばさんでーす 一緒に書こうよ 幸せを💞がモットーでーす\(^o^)/ 元 蛍里 時雨です 風の標しは16年も前の小説を書き足してます なのでね出てくる携帯が ガラケーだったり 自動改札が普及し始めたりも❣️ノスタルジックな冒険をお楽しみください

風の標し第2部 その11

じゃ……りぃ……  黒い足が アスファルトをしだく……  月が紅い  少年は 走った  肩から塾の鞄が 滑り落ちる  がしゃあ……ん  鞄がぶちまけられて 缶の筆箱が 激しい音をたてた  サイコロ鉛筆が ころころと転がる  から……ら  鉛筆は ぴたりととまって  ――今日はラッキー――と告げた  わあああ……  ばっ……  赤い飛沫が 月に舞う  ぼたり……  何か 重いものが落ちる音……  ばぎ……り  骨が へし折られる音がする  鉛筆を 赤い 絵の具よりも赤い血溜まりが浸す  ぴちゃ……り  黒い塊は 少年の骸に犬歯をたて あたたかい血で口腔を 満たす  ご……くり……  その喉が動いた  ばづ  少年の首が切断される  瘴鬼は その肉に牙をたてた  金紅色の眼が てらりと輝く  瘴鬼は その牙を 黒い毛を 鮮血に染めて 月に吼える  うぉるぅぅうぅ……る  赤い月が 魔性の色をもって 深く辺りを照らす  今日は満月であった  ……!……  電車の中で 令の背がぴくりと跳ねる  嫌な気配……!  まさか……  令は 背後の窓に 身を張り付ける  暗い……  車窓は ただ令の 姿をうつしこむのみで 黒く輝いていた  瘴鬼……!  おりなきゃ……  次は矢崎だ  が……ぐ……ん  電車が急に減速する 「!」  令は 座席から滑り落ちそうになった  慎が 支えてくれる 「なに?」  ――只今 減速致しましたのは 線路上に 不審物質が 確認されたためです――  ぎぎぎぎぃ……い  電車は 確実に速度を落として停止する  ――確認の為 少々停車致します――  令は 扉に 走りよると 身を押し当てる  この感覚は……やっぱり……  令が扉の ガラスを バンッ……っと 叩いた  ガラスは 車内を写す 鏡面になるのみで 外を確認する事は出来なかった  確か この辺りは 踏切だったか……!  うぉるぅぅうぅ……る 「音」が耳を震わせる 「音」いや「声」  ――確認のためしばらく停車致します 確認が済むまでお待ちください――  令が バンッ……っと もう1度扉のガラスを叩く  いけない……!  

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風の標し第2部 その11

風の標し第2部 その10

令は ミルク壺を 指で取り上げると つっ……っと落とす  ミルクは 美しく透き通る 紅茶の紅に 吸い込まれてひろがっていく  沈む様が まるで令の 今の気持ちを表しているようだった  かち……り  カップにスプーンがあたる  慎が 楽しそうにアラバギとラキに 話しかけているのを 虚ろげに聞いた  ガー……  自動ドアが開き 中年の夫婦が入って来る  2人共 仕立ての良いコートを着ている  令達は 彼等が隣に座るのを 潮時に 席をたった  店を出ると 駐車場は満杯だった  5台しか駐車出来ないのだ 無理もない  令は 少し肩を立てて歩いた  夜風が冷たい  駐輪場の灯りが そこだけ煌々と煌めいていた  が……しゃん……  高校生が 自転車を出す音がする  駐輪場の角を曲がれば 駅前ロータリーだ  4人は 話しながら ロータリーに出る  矢崎なら この時分は閑散としたものだが 翁町はちがった  カラオケに行く人  クラブに行く人  デパートに目指す人  ケーキ屋の折箱を 抱える人も数多い  皆 それぞれに向かっている  令は 母にお土産をと 1際明るい ケーキ屋フランに入った  自動ドアの周辺では 焼き菓子やキャンディーなども置いてある  ホットドリンクの保温ケースが 隅にあった  令は ケーキの並ぶウィンドウに 駆け付けると 僅かに腰を折る  タルト  ベリーソースをかけたヨーグルトケーキ  チーズケーキ  そして定番の ショートケーキ  ティラミスやチョコケーキの類いも人気だ  この店の目玉 と いうか 人気商品は ふんだんにベリーを使った ミックスベリーのタルトだ  ラズベリー に カシス ブルーベリー……  他にも 手に入りずらいベリーも使用されているらしい 粉砂糖が 優しく雪の様に はら……りとかかっている  タルトの生地も絶品だ 「すいません ミックスベリーのタルト 6つください」 令が ウィンドウに指をかける  うっすらと 指紋の跡が ガラスに浮いた 「はい ミックスベリーのタルトですね」  可愛らしい  高校生くらいの マロンブラウンの髪の店員が ちょこんと首をかしげる  本当に愛らしい アーモンドの瞳をしていた 「此方はただいま 製造中となりまして 店頭に 今 5つしかございません」  申し訳ありません  可愛いらしく ちょこりと 頭を下げる 「代わりと言ってはなんですが オレンジピールとチョコレートのタルトが お安くなっております」  いかがですか?  にっこり……と頬をくずされて 令は 迷った  オレンジピールとチョコレートのタルトは ほろ苦いオレンジピールが 人気で 更に甘くないビターチョコレートのタルトだ  うう……  ウィンドウの上段と中段を見比べて首をひねる  個人的にはレアチーズも捨て難い  思案した挙句  令はミックスベリーのタルトを3つとオレンジピールと チョコレートのタルトを3つ買うことにした  店員は 白い手を危うげに動かしながら タルトを折箱に入れる  フランの折箱は 一応 プチセレブの ステイタスで 薔薇色の箱に 銀の 筆記体のカリグラフィーで パティシエ・ド・フランとある  自信の表れでともいえる クラウンを頂く  令は ちょっぴり手痛い出費をしながらも ワクワクしていた  パティシエ・ド・フランのケーキ  考えただけでも 目がハートになりそうである 「ミックスベリー450円3つと オレンジピール420円3つで2610円になります」  カチカチ ちょっと旧式のレジの隣には 桜色のケーキのモデルが置いてある  令は お財布から1万円札を出した  綾子が 朝持たせてくれたものだ 「1万円からのお預かりで 7390円のお返しです」  店員は 両手でもって お札と釣り銭をくれる 「はい」  令も両手で受け取って 折箱を抱えた  ちょっぴり重い  財布はかなり軽くなったけど  ありがとうございました  店員達の 華やかな声に 見送られて 令達は 店を後にする  雑踏は 若人から 熟年層へと移ろっていた  肩を組んで 歩いている上機嫌な おじさん達もいる  調子っぱずれの 演歌を うなって あっはっはと笑った 「楽しそうだね」  慎が 1つ ウインクを投げてよこす  こうして見ると つくづく平和だなと思えてならない  しかし裏側には 鬼が現れる  令は トートバッグの紐を きつく握り込んだ  もし 一般人が襲われる事にでもなれば……  人間は ひとたまりもないだろう  令達の様に 特殊な能力を持たない人間は まるで狩りで獲物を狩るように殺られてしまう  もしかしたら 今もどこかで  令の手指が己の身体を抱きしめる  うお……ぉん  遠くで 犬の遠吠えがした    

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風の標し第2部 その10

風の標し第2部 その9

陽は下り 宵闇が 街の脚を浸す頃  薔薇の女は 会った男と 洒落たホテルの一室で 一時の情をかわしていた  灯りを落とした 部屋のベッドが軋む  女の息が漏れる  女はウェーブのかかった 肩口までの髪を指でかきあげ 息をつめた  ふ……  健康的な 艶めかしいまでの 小麦の肌が 反る  女の手が 男の胸板を滑った  き……  パールピンクの爪が男の肉に食い込む  あ……  女が 跳ねて ぎりっと 爪が肌をえぐる  ふぅ……  女は 男の胸にしなだれながら 小さく息をもらした 「……した……い」  ナチュラルベージュの唇が 艶めかしくぬれる 「……し……たいの ……たいわ……」  緩やかに上下する 情熱的なラインに 声が重なる 「ねぇ…… …………ていい」  甘く男は 耳元で囁かれて 目を閉じる 「ね……」  耳朶に ねっとりと唇を這わされ男は 息をもらす 「ねぇ」  女は 耳朶を噛み く……と引いた  ねぇ……  貴方を…………たいの  たべたい……の  女の指が 手刀となり 男の胸に埋まる  ぼっ  皮膚を 皮肉を そして筋肉組織を打ち破って 女の手首迄が 男に埋没する  がっ  男は 大きく反った  抜かれない手刀を 溢れる血がぬらす  食べさせて……  女は 滑らかな唇をピチャ……リと 舐めた  おい……し……そう……  令は 口に運んだラザニアを はたと とめる  今……何か……  空間が哭いた気がした  何かが弾けたような  不安の琴線を 爪弾くような気配  アラバギも オムライスを すくうスプーンを 止めている  ざわ……  何処か 貪欲な  しかし 微かな気配  鬼……?  令は アラバギと 視線を合わせた  アラバギは 静かに耳を澄ませている  ぽ……ちゃ……ん  微かな波紋  気のせいだろうか  ラキは ハンバーグを1切れ頬張って 咀嚼している  多分 気のせいだ  令は そう思うことにした  ハンバーグセットを食べ終えた 慎は 紙ナプキンで口を拭くと 静かに言った 「何だか街が哭いてるようだ」  令も フォークを置くと 耳を澄ませる  何も……聞こえない  なのに 哀しい  その時 静かに 田園の調べが流れた  ヴァイオリンから始まる美しい流れ 「あ……」  慎が セカンドバックを探る  取り出したのは 赤い携帯電話  ぴっ  慎の指がボタンを押す 「はい……ああ美鈴」  親しげな口調で彼は語り始める 「うん……うん……飛鳥ちゃんのCDの発売日は明日だよ」  楽しそうに 髪を揺らして微笑む  令は 女性であろう電話の相手に 僅かな嫉妬を覚えた  テーブルの 上の手が 指を握り込む 「うん 明日な……約束」 ぴっ 彼は電話を切って顔を上げた  さら……り  茶色の髪が横顔を彩る  斜めに分けた髪は 前髪が長く 左右に分けられている  令は 指先を見つめた  恋人かな……  一応 ヤスリをかけて 整えた爪がなんだか切ない 「誰だい?美鈴ちゃんって」  ラキが 興味ありげに目を向ける  令も顔を上げる  なんとしても 聞きたい  ううん 聞かなきゃ…… 「幼馴染みです」 「へーかわいい?」  ラキは 興味津々そうだ  令は 少しほっとした  幼馴染みか どんな人なんだろう 「いっこしたの 高校生でね 妹みたいな奴かな」  ちょっと照れたように右手で後ろ頭をかく 「まあ 可愛いですね 僕が言うのもなんですけど……  シャンパリーズのカイちゃんに似てるかな」  カイちゃん  シャンパリーズのギター  ボーイッシュなボブに 目のくっきりとした少女  沖縄の人のような目鼻立ち  声は 鼻にかかったハスキーボイス 「声は 甘ったれ声なんですけどね」  すごく大切な人を語るみたいに 目を細める  食後のダージリンの 金のスプーンが かちゃ……りとなった  

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風の標し第2部 その9

風の標し 第2部 その8

黄昏て行く街を 令達は歩いていた  4人の影はアスファルトに伸び 長くある  ロータリーの人混みも 大分落ち着いてきたようで 帰宅するサラリーマンやOL これから遊びに行く 若人達が増えていた  前を 革のジャンパーに 革のパンツの ロッカー風の1団が通り過ぎる  腰に鈍い銀の鎖が3重に 巻いて垂らしてある  1団は 手に手に楽器やら機材を運んでいた  揃いのブラウン系のメイクをして 髪を立てた1団は 令達の前を行き  クラブ エレファントに雪崩ていく  クラブ エレファント  確か 有名バンドが良く来るとの事で知られている  この前は サウザンドの生ライブがあった  令はアラバギを振り返る 「晩御飯食べていく?」  令は慎が一行に加わったことで すこぶる上機嫌だった 「美味しいレストラン知ってるの」  ニコニコと笑いながら 3人を振り返る 「そう……だな……」  アラバギは薄いエメラルドグリーンの綿のシャツを  着慣れない風で 受けた  綿は 少し冷たい  そのシャツは 慎が調達してきてくれた物だった  3人の服は 所々破け アラバギに至っては 血染めで  慎がデパートの紳士服売り場で選んで来てくれたのだ  令は ジャンパーを脱げば まだましで 破れたニーソックスは 脱いでしまった  したがって 素足にローファーだが 致し方ない  ぺた  素足が ローファーを吸い付ける  ラキは意外にも 破れは少なく 目立たない程度だったので 気楽そうに辺りの女の子を物色している  それにしても 最近の女の子は 露出が多い  体の線がくっきり浮き出す ニットの短いワンピースに素足の子や 春先だと言うのにホットパンツの女の子までいる  一際目をひくのが 薔薇色の ヴェルの ボディ・コンシャスをきた ウェービーヘアーの女性  彼女は ラキの鼻先を ふい……とすり抜けて バス停の先の喫茶店に向かった  シャラ……リ  形の良いヒールの足首に 金のアンクレットが 輝いている  しかし ラキは 彼女に不穏なものを感じていた  なにかが……  なに……かが……人と違う  気配  感情?  ラキは後ろ髪を ひかれながら 3人に続く  嫌な……嫌な予感がする  ぴるるるるる……ぴるるるるる……  令は レストラン ―レリーフ―の 禁煙席に陣取って 1人だけ出入口に立った  ピンクの携帯……  ワクワクしながら 指でボタンをプッシュして家を呼び出す  携帯を耳に当てると 呼び出し音がする  ぷっ……っ 「はい 芳川ですが」  あ……でた……!  令は 携帯を握りしめる 「令です」 「あら……令なの 携帯は買えた」  あたたかい 綾子の声がする  ノイズがまったくない 「うん 今かけてるのが 携帯からなんだけど 番号」 「そうなの……!まあ よかったじゃない 待っててねメモするから」  母は ガサガサとメモを探しているようだった  引き出しを開ける音がする 「ああ……はいはい……いいわよ……教えて」 「080-△094-5○○7です」  令は はっきりと区切って伝えた  綾子が メモに書き取る 「080-△094-5○○7ね わかったわ」  綾子は 少し間を置いて 「今日はかえってくるんでしょう」  と聞いた  帰ってくるんでしょう  ひどく胸に痛い言葉だった 「あ……はい 帰ります」  令は 携帯を握る指に く……と力をこめる 「夕御飯は……食べて帰ります」  何だか申し訳ない気がする  きっと母は 5人分用意してくれたのだろう  でも  もう少し 外に出たい  それが令の 素直な気持ちだった      

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風の標し 第2部 その8

風の標し 第2部 その7

 第2章  唇が 滑らかな顎から首筋にかけて 伝い這う  男の手が 女の背を撫で 緩く抱いた  ああ  千尋の髪が 絹の褥に さら……と散った  やわらかい 弾力のある唇が 女の唇をふさぐ  2人は御簾影で 月の 白々とした輝きを受けながら 睦んでいた  は……  女の顎が天を向く  紙燭のあかりが ふい……とかき消えた  ざら……  御簾が 風に揺らぎ 男にすがる女の姿を月が照らす  露姫  明けの月  通り名なら数あれど  清らかな玉の肌 月の光をうつして 尚も白く 照り映える  静……  静…………  静………………  逝こう………………  宵の月が 恥じるまで……  開ける都に華を咲かそう  守り刀の 刃先を月光が 露のように 煌めく  女は 刃先を見つめ1つ息を飲んだ  それは まるで月光の露を飲むようで  さら……り  褥に広がる 単の絹が 裸身の脚を滑った  男は 女を はんなりと胸に抱き……  目を閉じる  貴女が 逝くのならば 私も逝こう  女の刀を喉に当てた  刺して……下さい……  静は 珠の言葉を朱唇にのせる  死は 怖くない……  彼と 愛する男と逝けるのならば  転生して……  転じて共にいたい  男の手に 細い白い指が 漆の刀を握らせる  黒漆に龍  静が 嫁がなければならなくなった 皇の印章  静は 白い喉を 刃先に滑らせる  刀は 女の肌など容易く裂くだろう……  刃紋が ちらり ちらりと 紙燭に 煌めく  刺して……  静が 白い指を 男の喉元にそわせた時  鈍い風はおきた  月光に 雲が 流れる  バシッ  守り刀が 刃半ばで ぱきりと折れる  待ちや……  柔らかな……しかし厳しい……  怒気に満ちた声音がする  女……  静は 慌てて 白絹の夜着をかきよせた  神族と 契るのは禁忌 知っておろうな?姫巫女  天照  否や……汚れた巫女に大御神が 降りられるわけは無い  月光に降りたのは 美しい能面の 表情のない女神《おんながみ》だった  流れる黒髪を 飾り櫛で 結い上げ  薄い蓬の 絹衣に 榊を持っている  ぱし……り  女神は 神経に障るように 白い塗られた指に榊を打った  飾り櫛は石楠花か 女神は 小さい唇を重く開く もう……宿っておろう  榊が 静の胎を差す  やや子よ……  能面の瞳が 月光に細まる  常なら……処分するところ  しかし……静……産ませてやろう  呪われた禁忌の赤子……  戦う巫女の血  穢れた巫女よ  まいれ  女神が 細腕を天に向けると  静の 裸身は天高く 舞い上がった  その頚は 細い指に絞められ 美しい静の 面はこわばった  高天の岩屋へ来よ  女神立ち消える  男は 折れた刀を握りしめ 絹の褥に 突き立てた  静……  男は 白麻の着物を纏うと風と消えた  すぐ……行く……    

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風の標し 第2部 その7

風の標し 番外編 犬神様 Love

麗らかな陽射しの中 散歩中らしき女性たちが肩を並べてすわっていた  と 可愛らしい 尻尾ありコーギーが こちらにかけてくる  尻尾を ブンブンふって  かわいらしい 茶色の目をクリクリと動かした  とても 嬉しそう  令が 手をのばす  撫でたい!  なんとも 人懐こい子で 令の 手をぺろぺろと舐めた コーギーの飼い主さんと 思しき人が にっこりとわらった 「すみません」  礼儀正しい女性で にっこりと笑う  眼鏡がキュートな温かい人  令は 一度に好感をもった  かわいいなあ!  ブンブンと振る尾っぽ  ラキが ガバとすわりこんだ  いい子だ!  言いながら コーギーを 撫でる と もう1人の 女性の足元からぴょこと 黒柴の 女の子がかおをだした  お洋服を着ている ちょっと 人見知りさんかな? ラキは かまわず 特攻していく 「わー」  ラキにしっぽがあったなら  フルスイングだろう  可愛い子だね?  ラキが  手を差し出した  そして「ん?」と  小首を傾げてみせる  黒柴ちゃんは 少しおびえていたが  ラキの優しい笑顔にひかれてか ちかづいてくる  そして  しっぽを 振ってくれる 「嬉しいなあ」  ラキの目が細くなる  そして  きゅっと  黒柴ちゃんの頭を抱いた  黒柴ちゃんは喜んでいるのか  ラキに撫でまくらせてくれている  ラキは動物好き  令はみていて  しあわせであった  あのラキの優しさには どんなに人馴れしていない子でも ついて行くのだろう  黒柴さんの飼い主は ハキハキとした  明るいお姉さん  もしかしたら  2人は姉妹かな? 「かわいいですね」  ラキがにっこり2人を見上げる  お名前は? 「コーギーの方がギンちゃん」  とはコーギーの飼い主さん 「黒柴はふうちゃんですよ」  とは 黒柴の飼い主さん  令が嬉しくてニコニコしている  アラバギもくわわってしまって  3人はなごみまくった 「ふうちゃん怖がりなのに 珍しいです」  噴水かパシュッとあがった 「お昼なら 少し先の桜の下のベンチあいてましたよ」  2人が勧めてくれる 「はい」  令はぴょことお辞儀をして  歩き出した 「ギンちゃん ふうちゃん そして可愛い子ちゃん達 またね」  ラキは 半ばアラバギに引っ立てられるようにして 手をふりまくる  令が ふわと 笑った 時はながれて きゃああああ! 「バギ」  令が アラバギの袖をひく  この声昼間のお姉さん! ラキが 声の方へかけだした  瘴鬼だとしたら  危険だ  アラバギも走り出す  慎は 令の背を追う 2人は端の茂みを背にしてカタカタふるえていた  やっぱりだ  昼間のお姉さん達 目の前には白い体にブチのある  大きい犬がたっていた 「犬神」  ラキがつぶやく  バウバウと  目の前の瘴鬼に吠えたてている 犬神の張った結界の周りを 鬼火が くるくるとまわっていた 「ラキ!」  アラバギは足を止めラキの背を呼んだ 「犬神くんだよ バギ きっと ずうっと まもっていたんだね」  なかなか強い 神性を持った子だ ラキが犬神の隣に立った 「名は?」 「ココアです」  とはお姉さん 「おっしゃ!ココちゃん!」  いってみよっか?  ラキが 地を蹴ると同時にココアも地を蹴った  ココアの身体を鬼火がつつむ  目が凛然と光った  ガウ…… ココアの顎が 瘴鬼の腕に食い込む 「やるねぇ」  ラキはニッコリする  ラキの掌底が  瘴鬼にきまった!  瘴鬼は 伝わる鬼火から逃げようと 腕を振る 「ココ」  飼い主さんが叫んだ  ラキは下段からの蹴りをいれ  水の弾丸を放った  びず……  瘴鬼の皮膚が爛れ落ちていく  バウ  ココアは一回転すると  瘴鬼の喉に食らいついた  ぎゃううう 瘴鬼は たたらを踏みながら 払いのけようともがいている 「なりたての鬼さんかな?  きっと邪気にあてられたんだろう  それとも邪気を飼っていたとか?」  バギが一閃!  鬼の足を払う ぎゃおう! 鬼は 犬神の炎の前に抗うこともできなかった  おおーっ  ラキが感心すると  ココアはスタリと着地した  そして飼い主さんをぺろぺろ舐める  ……いつもいるからね……  ココの愛情表現なのだろう  2人はそうっと眠りについた  ラキはココアの頭をなでると にっこり笑った  あいしてるんだね  2人のこと  そっか  えらいよ  ラキがココアの首を抱いてやる  そうだね  安全な場所へうつそうか?  ラキがそうっと2人を抱き寄せると 「転」と呟いた  もう2人は大丈夫  さあついててあげてね  ココちゃんや  ラキの笑顔に バウとココアが吠えた  いい子だ これはラキのストーリー  犬神様永遠なれ いつもあなたの傍にいますよ!  みまもってるよ さーて 本ストーリーいきますか?  

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風の標し 番外編  犬神様 Love

風の標し 第2部 その6

 令は ぺたりと座り込んだ  3体 凄まじい戦いだった  土で汚れた頬を 汗が伝う  人里に鬼があらわれるなんて  これが 頻繁になるのだろうか  令が 身震いした  ミニスカートの大腿を両手の爪がかく  ぎり  胸が締まった  ラキはアラバギの手当てにまわり 慎は令の脇にしゃがみ込んだ 「大丈夫……?」  穏やかにのぞきこんでくる  茶色の 瞳は どこまでも 澄んでいて清浄だった  慎の手が 令の頬に触れる  長く形の良い人差し指が 令の頬をいたわった 「あれは なんなの……」  じぃ……ぃっと 瞳を見つめられて 令は身じろいだ  到底……隠せるものではない…… 「鬼よ……私達は 鬼と戦っているの」  ぽたり……令は呟いた  言ってしまって 隠さずにいられた 安堵感に癒される 令の指が ミニスカートの裾の 縫い目をくった 「鬼……」  慎は考えるように……思いを巡らせるように 目を落としながら拳を握った…… 「君は……君は一体何者なんだ」  令は その問いが 慎から向けられたものと思い 瞳を翳らせた  友達になれると……おもった  でも……それも……  ううん  否定とも 肯定ともつかず 令が首を振る  しかし その問いは アラバギが  慎に 発した言葉だった  半裸のアラバギが 普段見せないような 厳しい 冷たいほどの 眼差しを慎に向けている  慎は 真っ向から アラバギの眼差しを噛んだ 「僕は……ただの大学生ですよ……ただ空手が 黒帯なのと 気功が少々出来る 普通の大学生 それだけです」  穏やかな面立ちが きり……としまると 鋭利な刃物を思わせる 「空手……あれは 普通の体術じゃない!神気がのっていた 君は何かを隠しているはずだ」  アラバギの探るような瞳が 慎の水晶体すら 見透かす様に 慎の真意を探った 「いや……ただ気功が効いただけですよ 徒手空拳でしたけどね」  慎は滑らかに髪をかきあげる そしてひとつ頷いた 「いや……君は」  アラバギは 強い光を視線に宿して 慎を射る  ――あれは神族の光だ――  きり  手指を握った  確かに あれは高天の光だった  普通の人間が 発せられるはずは無い  それは慎が 令 もしくは アラバギと同等ということを意味する  神族なのだろうか  それとも巫女……もしくは神主の家系か……  戦力には違いない 「慎……君 済まないが しばらくは我々共に動いてはくれまいか」  アラバギは 形ある何かを飲み込むようにつぶやいた  力をかしてほしい……  それが 何を意味するのかを知っていながら……  きっと ……令は  いや……きっと……それで  それでいいのだ……  人間と神族間の契りは禁じられている  もし……もし……それを破れば……  人間が 灼熱の炎に焼かれる事になる……  ちょうど……あの方のように  愛しては……愛してはならない……あの……  土の精霊を愛してしまったがために……  静……  イト  2人の系譜が 姫巫女の家計  令は精霊の血を遠くに引いている  アラバギが きつく眉を寄せた  前任の姫巫女 静は 戦いの後 眠りにつくはずの精霊  イトとの間に子を成し  高天の民の怒りにふれ  業火に焼かれた  イトは イトは 己で命を断ち  許されないと知りながら 転生を 望んだ  生まれ変わって 生まれ変わって静に出会いたい  彼は喉を 猛毒の土蜘蛛に噛ませて 高天の岩屋で果てた  逢いたい  令が自分との アラバギとの恋愛を 契りをのぞんでしまったら  彼女は焼かれてしまう  例えそれが  姫巫女であっても!  令がもし 令が人間との恋愛を望んでくれるなら……  私は……私は……  ぎりぃっ  血が滲む程 握りしめた  アラバギの手に血管が浮いた  胸が 心臓が熱い  燃え出してしまいそうだ  令が 他の誰かの胸にいること……  そして 他の男の唇に触れること  どれを思い描いても 全身がよじれる  アラバギは 熱くなった顔を冷やす様に上を向いた 「頼む」   ☆閑話休題   きゃああああ! 「バギ」  令が アラバギの袖をひく  この声昼間のお姉さん! ラキが 声の方へかけだした  瘴鬼だとしたら  危険だ  アラバギも走り出す  慎は 令の背を追う 2人は端の茂みを背にしてカタカタふるえていた  やっぱりだ  昼間のお姉さん達 目の前には白い体にブチのある  大きい犬がたっていた 「犬神」  ラキがつぶやく  バウバウと  目の前の瘴鬼に吠えたてている 犬神の張った結界の周りを 鬼火が くるくるとまわっていた 「ラキ!」  アラバギは足を止めラキの背を呼んだ 「犬神くんだよ バギ きっと ずうっと まもっていたんだね」  なかなか強い 神性を持った子だ ラキが犬神の隣に立った 「名は?」 「ココアです」  とはお姉さん 「おっしゃ!ココちゃん!」  いってみよっか?  ラキが 地を蹴ると同時にココアも地を蹴った  ココアの身体を鬼火がつつむ  目が凛然と光った  ガウ…… ココアの顎が 瘴鬼の腕に食い込む 「やるねぇ」  ラキはニッコリする  ラキの掌底が  瘴鬼にきまった!  瘴鬼は 伝わる鬼火から逃げようと 腕を振る 「ココ」  飼い主さんが叫んだ  ラキは下段からの蹴りをいれ  水の弾丸を放った  びず……  瘴鬼の皮膚が爛れ落ちていく  バウ  ココアは一回転すると  瘴鬼の喉に食らいついた  ぎゃううう 瘴鬼は たたらを踏みながら 払いのけようともがいている 「なりたての鬼さんかな?  きっと邪気にあてられたんだろう  それとも邪気を飼っていたとか?」  バギが一閃!  鬼の足を払う ぎゃおう! 鬼は 犬神の炎の前に抗うこともできなかった  おおーっ  ラキが感心すると  ココアはスタリと着地した  そして飼い主さんをぺろぺろ舐める  ……いつもいるからね……  ココの愛情表現なのだろう  2人はそうっと眠りについた  ラキはココアの頭をなでると にっこり笑った  あいしてるんだね  2人のこと  そっか  えらいよ  ラキがココアの首を抱いてやる  そうだね  安全な場所へうつそうか?  ラキがそうっと2人を抱き寄せると 「転」と呟いた  もう2人は大丈夫  さあついててあげてね  ココちゃんや  ラキの笑顔に バウとココアが吠えた  いい子だ これはラキのストーリー  犬神様永遠なれ いつもあなたの傍にいますよ!  みまもってるよ さーて 本ストーリーいきますか?      

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風の標し 第2部  その6

風の標し第二部 その5

這った軌跡に 黒い腐汁が伝っている 「くっ」  令は 身を起こそうともがくが 全身が痛んで 言うことを聞かなかった  慎が 令の上体を抱き込む  なにか出来ないか……  歯噛みした 慎は 自分の荷物を探る なにか武器になるものは……ない  ある訳がなかった  あるのは 飲料用のペットボトル ペンライト フルート  水……  水?確かこの水は飲料水が無くなって 日本庭園の奥の鳥居の下で汲んだ水だった  鳥居……  もしかしたら  慎はペットボトルの蓋を開けて 血色の蛆に むけて水を放った  ばしゃ……っ  透明な水は 煌めいて 血色の蛆に降り注ぐ  びぃいい……  蛆は 反り上がると びじゅる と弾けた  ばじゅばじゅと 黒い腐汁が散る 「ほっ」  慎は 漸く息をついた  呼吸すら忘れる程に緊張仕切っている  令は 慎のシャツにすがり 神気を集めた  今は  今は 慎の機転で助かったが 次回は無いだろう  結界だけでも張りたい  ぼう  虹が 令を中心に 光彩を放つ  慎が 令の手を握った  りーーーーーん  鈴の音に似た 金属を打ち合う音  きんっ  気圧が張り詰めて 令と慎を包む  令の背を 抱く慎の腕に力がこもった  ざぉ  うねった邪気が 結界の表面をなぶる  ねっとりと粘着するほどに 黒い欲望の塊だった  令は きつく唇を噛むと 髪ゴムを 引き解く  勾玉  玉を 握りこんで 更に念をこめる  ぼう……  身体中に 無数に生じた擦過傷を翡翠の光が癒していく  翠の 滲んだ輝きは 傷に染み入って 皮膚を再生させる  令は 勾玉を慎に預けると ゆらりと立ち上がる  1人だけ 守られているわけにはいかない!  きつくタイルを踏み締めた  ……!  たちあがった令に 気をとられたアラバギを瘴鬼の爪が襲う  骨色の 厚い爪が腰から胸にかけてを引き裂く 「バギ」  令が 悲鳴をあげる  思わず 瘴鬼に体当たりをして 生じた隙間にアラバギを助け起こした 「ひどい」  麻のシャツか裂けて アラバギのしなやかな胸板がのぞける  しかし 鍛えられた上半身には 激しい裂傷が生じていた  鮮血が シャツを染める  アラバギ!  令は ハンカチを出して傷に当てる  しかし到底 そんなものでは 止血出来る傷では無かった 「くっ」  アラバギは それでも半身を起こそうとする  止血する令の背後に 瘴鬼が迫っていた  瘴鬼が 強靭な腕を振り上げる  アラバギが 令の腕を引いた  そして令の頭を 抱え込む  がどっ!  アラバギは 強く目を閉じた  しかしいつまで待っても 衝撃は来なかった  ざっ  砂袋を蹴るような重い音  続いて 連続する打撃音  アラバギは 令を抱く腕をゆるめて 目をひらいた 「……!」  瘴鬼の体が 白く煙をあげている  そして爛れた 皮膚が だらりと剥がれる 「…………っ」  鋭い気合いとともに 瘴鬼の肩口に しなりのきいた蹴りが埋まった  ばじゅう……  白く焼かれた 酸の煙が上がる 「慎……?」  令は ゆっくり身を起こすと 戦っている人影に 目をとめた  下段から 上段へ そして軸足を使っての回し蹴り  そして正拳が 瘴鬼の腹に決まる  慎は脚に 気を集中すると 跳ねてベンチに 片足をかけ 高く跳んだ  そこで 身を捩り回転をかける  右足の鞭のしなり  ばずん!  慎の飛び回し蹴りは 見事に瘴鬼の 側頭に きまった  ぎゅあああ  瘴鬼は 煙る頭を両腕で覆って たたらを踏む  がうっ  瘴鬼の身体が 池の柵を越えた  ざ……ぱ……っ  凄まじい 水音をたてて 瘴鬼の体は没していく 「…………!」  令が柵に 瘴鬼の姿を追って すがりついた  ぶ……くり……ぶ……くりと 水面に泡が浮くだけで 水面は静かに 鎮まっていく 「……は……」  息をつく令  慎は 静かに 穏やかに 身体を鎮めていた  体術で言えば ラキと互角  いや それ以上だ  そして あの威力……  神気が纏わっていなければ あの炎症は起きない  ラキは もう一体の 瘴鬼の胸部に 手刀を打ち込んで 真上に抜いた  噴き出した鮮血が ラキの頬をかすめる  ラキは 手刀をはらう 間もなく 2撃目に掌底を見舞った  ずが……  瘴鬼の顎が天を向き 首が伸びる  そこへ 神気をのせた 飛び蹴り……  べぎ……り  瘴鬼の首が 嫌な音を発した  首をへし折られた瘴鬼は ぐら……りと揺らぎ  後ろへと傾ぐ 「吽」  アラバギの言霊が 空を掴んで 瘴鬼の身体を包んだ  ぼぉう……  瘴鬼の身体は 蒼炎に燃え上がり ぎちり……と軋む 「破」  ばずん  皮膚を炭化させた鬼は まだ紅い血肉を露わにして 弾け飛ぶ  そしてびずびずと 焼けていった  血肉の焼ける匂いが 辺りに漂う  そして 赤いタイルに残るのは 消し炭のみ  それをにわかに巻き起こった風が流し去る      

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風の標し第二部 その5

風の標し第2部その4

 令は手に 蓮を 喚んで 瘴鬼の胸をうった  ばじゅぅう  蓮が触れた部分が ただれていく  びず……  まるで 酸を浴びせたかの様に 白く煙る  神気が 邪気と欲望の塊 そのものの 鬼の皮膚を焼く  令が 瘴鬼の腕の 一振りに圧されて ローファーが  ……ざり……とタイルをなじる  がず……  令を 目掛けて 落ちる 瘴鬼の拳を アラバギの刀が裂いた  びっ……  鬼の血が 生あたたかく令の顔を濡らす  アラバギは 反した刀で瘴鬼の腕をおとした  鬼は 空気を震わす咆哮を あげて落とされた腕を抑え  ジリと下がる 「令 落ちた腕を封じてくれ」   アラバギに言われて令は 鬼の腕をみた 「!」  ばくりと切られた 肉の断面から 細い触手があらわれ  蠢いている  それは血肉の蟲のようで 寒気を誘う  血肉の蟲は 混じる相手を 探して 貪欲に蠢いた 「蓮でやけばいい……」  瘴鬼の 剛腕に圧されながら アラバギが 声を絞る  令は 落とされた腕に飛び込んで 蓮を掲げた  びぃいい  触手は 虹の輝きに焼かれたように怯み  びじゅびじゅと蠢いた  令が 蓮を近づけると 触手の蟲は 互いを傷つけ合い腐敗した血汁を振り撒く  ばじゅん  触手の 薄皮が弾けて 潰れていく  令が 左手で 鼻を覆う  腐敗した肉のような それを 更に酸でとろかすような強烈な臭いがする  じゅ  令が 腕に集中する その背に 黒い影が ふってわいた 「!」  3体目の鬼  令は振り返る間もなく瘴鬼にはじかれた  ざっ……お  右肩から 腰に抜けて痛撃が走る 「令!」 「令ちゃん」  タイルを横滑る 令を慎が 受け止めた 「うっ」  口の中が錆臭い  令は 身を起こすことも出来ず じりと ねがえった  鉄錆の味がする  唇を拭うと 鮮烈な赤が袖を汚した 「くそ……」  慎は 令を 弾いた瘴鬼に 石を投げつける  瘴鬼は 投石に怯むことすらも 歯牙にかけることも無く  悠々と近づいてくる  慎は きつく唇をしめると にぎりこんだ おおぶりの 石を鬼の胸を目掛けて投げつけた  ばじゅ…… 慎の投げた石は 瘴鬼の胸に触れると じゅっ……と発光した 「……!」  アラバギが 驚愕したようにふりかえる  神気?  今のは 確かに神気の光だ  ラキは 瘴鬼が 怯んだ その隙に 間合いへと滑り込み  掌底を 瘴鬼の顎に叩きつけた  がうっ  ラキの瞬発力とバネを利用した一撃は 瘴鬼をにじらせる  がっ  その瞬間にラキの手刀が瘴鬼の喉を裂く  ばしっ  鮮血が 空間を鮮やかにはしった  赤い ぬらりとした 液体は 瘴鬼の獣毛をぬらしてぬめらせていく  血臭が辺りに満ちた 瘴鬼の喉は 深く裂け ラキが 回しげると  めきょり  と傷口から皮肉がちぎれた  バチャリ  血溜まりに 鬼の首が落ちる  しかし裂けて鮮血を噴き出す瘴鬼の上体が  ばじゅり……と触手をふいた  むりゅむりゅ  凄まじい勢いで 血肉の蟲はうねり上がり ぬらぬらと血色に光る 「くそ」  ラキは右手に 弾を喚んで 低く腰だめに落とした  そして弾に神気をこめる  玉は虹色に輝き 内に圧縮した 水圧が生まれる  ラキが跳んだ  弾に 両の手を添えて 瘴鬼の傷口に叩きつける  がざり がざり  鋭い回転圧と水圧の刃が触手を引きちぎる  びじゅる  触手の蟲はちぎれた 先端ですら 別の生き物のように蠢き タイルを這った  血色の蛆が 令を目掛ける  じわり  蛆達は 滑る身体をうぞりと揺らしながらタイルを這う    

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風の標し第2部その4

風の標し第2部 中のその3

ずだ……ん  頑丈な獣足が タイルを蹴り 空を舞った 「……!」  令は鬼を仰ぎみて背を反らす  がぉん……  反らした背の 背後から 轟と うなる風がとびこんだ 「……!」  反らした目線が とらえたものは もう1匹の鬼であった  まさか  こんな昼日中に しかも 人の多い場所に  こちらは3人  しかも 非戦闘員の 慎がいる  どうあっても不利だ  ここでは 誰かを巻き込みかねない  一般人に危害が及ぶのは避けたい  それに 一般人を 気遣いながら 戦って 勝てるほど瘴鬼はあまくなかった  がん……  瘴鬼の爪が 慎の袖にかすった 「……!っ」  令は 右手に 体重をのせて 思い切り慎をつきとばしていた  そうしてなければ 今頃は慎の 腕が タイルに転がっていた事だろう…… 「離れていて!」  突き放されて 欅と下生えに 受け止められた  慎に 令が叫ぶ その声は悲鳴にも似ていた  うおぁぉお  アラバギの腕を 風が渦巻く  そして虹を纏う刀が実体化した  刀紋をの刃先へ向かって 陽光が滑る  ラキが 全身をバネにとびだした  地に 軸足をついて 身を反し 反動で瘴鬼の 首筋を砕く  しかし硬い  まるで 鋼だ  弾力のある鋼  硬い獣毛が 手刀をチクリと刺した  ラキはそのまま 円舞して瘴鬼の腹に 掌底を叩き込む ぐぽぉ  掌底が くらいこみ 瘴気の背が丸く反った  掌底は ただの体重をのせた 突きではなさそうで  くい込んだ 腹の背中が 燐光を発している  ざお……  アラバギが 一匹に 斬りこんだ  ぎゃあ……ん  刃の上を 骨色が走り 耳障りな音をたてる  アラバギは 刀で押し返して 刃先をたてる  刀は 瘴鬼の喉を 軽く裂いた  ぴっ  僅かに 血が空を滑る  浅い!  アラバギは 身を下げて 刀をはらいあげた  刀の峰で 瘴鬼の顎をうつ  がちっ  鈍い音がして 峰打ちの顎が ばっくりわれる  骨すら僅かに 砕いたかもしれなかった  しかし瘴鬼は 怯むことを知らなかった  がう……  瘴鬼の腕が令の 頭をかすめる      

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風の標し第2部 中のその3