あやめ
3 件の小説華恋草
「おつかれー」 君の声がした。 君の声はちょっと間抜けで、でもすごく優しくて、ずっと聞いてると眠くなる。 私は、胸の高鳴りを何とか抑えて「おつかれ」と返す。 私は君の声が好きだ。 同じアーティストが好きなことがきっかけで、私たちはすぐに仲良くなった。 初めての君とのお出かけはご飯だったね。 学生の懐にとっても優しいお店に入って4時間半も話し続けたのを覚えてるよ笑 そのまま一緒に買い物もして、たまたまやってた祭りも見に行って、まるで擬似デート笑 水族館にも行ったし映画も一緒に観た。 こんなに仲良くした男子、君が初めてだよ。 どの男子よりも過ごした時間が長い。 どの男子よりも過ごした時間が楽しい。 どの男子よりも過ごした時間が尊い。 そして、どの男子よりも一緒に居たいと願ってる。 スマホの写真ホルダを開くと君と遊んだ時の写真がずらりと並ぶ。 1枚1枚が輝いてて、思わずニヤける。 気づけば、君は私の記憶にどんどん入り込んできてる。 あぁ、こんなの初めてだよ。 学校からの帰り道。何気なく近くの花屋に寄ってみる。そこにはスイートピーの甘い匂いがした。 胸がときめく、甘い匂い。 何となく、君に似てる。 いつまでも、この匂いを感じたい。 そう、願った。
雛菊
ほんの一瞬だった。 その瞬間で分かった。 貴方が私の煌になった。 袖丈が迷子になる季節。 不安と期待がごちゃ混ぜになりながら、1人寂しく歩いていた廊下。 そこに貴方がいたんだ。 名前も、出身も、趣味も、特技も、何も知らない。 なのに気になって気になって。 気づけば目で貴方を追っている。 貴方がいる授業は、妙に張り切る。 可愛い服を着て、背筋を伸ばして一生懸命。 貴方に気づいてほしくて。 あぁ、貴方と話してみたい。 なのに、それなのに。 貴方の世界に私はいない。 同じ教室にいても、同じ授業を受けてても、貴方を知る機会は訪れない。 近くて遠い。 貴方は雛菊。
待雪草
貴方に会える日。 いつもと変わらない朝なのに、なぜか朝日がやけに眩しくて。 いつもと変わらない私の寝癖なのに、なぜかあると嫌になって。 いつもと変わらない玄関なのに、なぜか空気が美味しくて。 いつもと変わらない通学路なのに、なぜか心が高鳴って。 いつもと変わらない教室なのに、なぜかずっと居たくなって。 いつもと変わらない帰り道なのに、なぜか泣きたくなるくらい寂しくて。 貴方に出会ってから、貴方が私の側に居てくれるようになってから、いつもと変わらないものが素晴らしく特別に感じられて。 それを見つけるたびに嬉しくて。 私は、また貴方に、恋をする。 ずっとこんな日々が続いていけばいい。そう思っていた。 貴方も、私と同じように見つけていたんだね。 でも、私と同じものじゃなかった。 私と一緒に、特別を感じることはなかったんだ。 静かに世界が白くなる、いつもと変わらない帰り道。 貴方を想い出す。 さようなら、私の特別。 貴方の特別が、いつまでも続きますように。 待雪草を、貴方に添えて。