たった二文字。
春風が、僕の頬を横切る。
普段は優しい風と思えるのに、どうしてだろう。
今はなぜかそれさえも痛く感じる。
…新学期が経って間もないはずなのに、
僕の心は未だ空っぽのままだ。
「おはよっ、優也くん!」
いつもなら、隣の席の優奈がそう言って俺の肩を叩く。
そんなはすだったのに…
…それなのにどうして、今は隣にいないの?
…もう、学校が始まって一週間も経つのに。
「...優奈、進学先変えたんだってさ。美術コースらしいよ」
誰かの噂話が、僕の耳に深く刻ませる。
毎日、何気なく交わした言葉。放課後、窓辺で一緒に宿題をした時間。たわいもない話に笑い合った日々。
そのすべてが、遥にとっては「好き」という言葉に変わっていでも…伝えられなかった。
…いや、伝えないまま終わらせた。
「ーバカだな、俺」
机の引き出しの奥に、ずっとしまってある未送の手紙。
春の光の中で、僕はそれをそっと指先でなぞった。
「優奈、今どこにいるんだろうな・・・・・」
ふと、窓の外に目をやって見た。
一人の女の子が校門の前に立っていた。
風に揺れる長い髪。
一まさか。
僕は息を飲んで立ち上がった。
…もう、今しかないんだ、渡せなかった「言葉」も「手紙」も「大好き」も、今しか伝えられないんだ。
そう思うと、気づいたら僕は校門に駆け出していた。
「…え?」
僕は思わず言葉を失った。
僕が好きなあの子は、今、他の誰かと手を繋いでいる。
その時、僕は初めて悔やんだ。
「…もっと早く伝えていれば、変わっていたのかな。」
たった二文字、それを言えなかっただけなのに。
気づいたら僕は、目から悲しみが溢れていた。