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5 件の小説3.千と一つの運命
━━どうして思い出してしまうのだろう。 千鶴の、あの笑顔がフラッシュバックする。 それから、運命がまるで引き寄せられるかのように、関わる機会が尋常じゃなく増えていた。 毎日「おはよう」も「じゃあね」も言えて、 些細な楽しい事があれば、簡単に伝えられたりして。 雑談だって、何故か千鶴と話していると止まらないんだ。 共通点とか、好きな事とか。 なんとなく似ていて、なんとなく違う。 その一つ一つが、少し嬉しくて、少し寂しい。 きっと、今の私なら、もし受験生になってスマホを取り上げられても、持つのはペンじゃなくて恋心だろうな。 …まぁ、クラスメイトの名言を真似しただけ。冗談だけど いや、冗談じゃないかもだけど。 …私は、千鶴が好きなのかな。 今日も、布団の中で一人悩んでゆく。 ps 投稿主の進展が少なすぎて全然かけないので当分このシリーズの投稿なくなります
2.秘密裏
「…あの人、実は好きな人いるよ」 時計の針が、遅くなってゆく。手が、動かない。 何とかして言葉を絞り出す 「…誰?」 今か今かと言葉を待つ。彼は気まずそうに口を開く 「俺の推測になるけど、結菜だと思う。クラスの男子達に、散々あいつが結菜のことでからかわれているの見たから」 「…もう、諦めた方がいいのかな」 「…わかんない、完全なるあいつの片想いだし」 正直、諦めた方がいい、なんて言って欲しかったな。 面倒くさいけど、心のどこかでは、終わらせたい気持ちがあった。あの時の私は、まだ何も気づいていなかった。 普段の私ならきっと、悲しい顔をするだろう。 でも、今回は違う。他の人が絡んでるからだ。 伝えてくれた千鶴にも、協力してくれていた結菜にも、悲しい顔の訳を理解して、責任を感じて欲しくなかったから。 …でも、そんな簡単に抑えられるわけない。 千鶴から話をされた次の古典、授業、先生がジェスチャーで「あはれ」の意味を体現していたりして、そのおかげで気晴らしにはなったけど、やっぱり… 二人が、仲良く話す姿を見た時、どうしても悲しくなってしまう。素直に、見守れないんだ。 「…まさしく、あはれ(あわれ)だな」 怒りを覚えながら振り返ると、そこには怜央がいた。 私の男子の親友だ。 「...それ、どういう意味?古典の?」 怜央は首を振って清々しい声で 「ううん!可哀想だなって!!」そう言いやがった。 正直、そのうるさい声に殺意すら湧きそうだ。 でも、なんやかんや、一番の気晴らしになったかもしれない。 その日は、怜央と放課後一緒に帰った。 「新しい好きな人作ったら?」怜央はそう簡単に言った 「相手が見つからないでしょー」 「…だったら、お前が勘でこの人だー!って思った人…とか?」 ━━━その時、私は一人思いついてしまった。 いや、思いつきたくなかった。
1.前の席の秀才
━━━━「…ごめん、夏海とは付き合えない」 今までの恋の中で一番素敵だった。でも…… どうしようもなく、辛かった 「もう恋なんてしない」 そう言ったはずなのに… …どうして、今、私はまた恋をしようとしてるの? 春風が、私の頬を優しく触る。 春休みが明けた昇降口は賑わいを見せている。 新しいことが沢山ある新学期。教室も、階数も、学年も、全て全て新しくなる。そして、新しい恋だってあるかもしれない。 …でも当然、それはクラスも新しくなるわけで… 「…そんな、嫌だあああ!!!結菜どうしよう!」 「どうしたの、夏海?うるさいよ?」 「…結菜と離れちゃった!!」「はいはい、頑張れ頑張れ」 そして、最悪のスタートを切り出した。 でもこの時は正直近くの人に話せばなんとかなるだろう、そう思っていた。そんなはず、だったのに… …まさかの、私の座席は全員男子に囲まれていた。 周りは当然近くの同性と話してて、半泣きになりながら孤立していた。その時… 「おはよう」机の中で蹲っていた顔を上げた。その時、見知らぬ男の子の顔が見えた。 「俺は秋山千鶴。これからよろしくね」 好感触で、いかにも明るい好青年って感じの人だった。正直、進級前。一年生の時の集会で何回か見たことはあったけど、実際に話すのは初めてだった。 でも、その緊張を解すかのように明るく喋ってくれた。気づいたら話は凄く弾んでいて、夢中になっていた。 その日から、気づいたら目で追っていたり、意識していたりした。でも、決して「好き」とは思わないようにした。 昔の好きな人が、まだ頭にあったからだ。 そして私は、その人を「好き」にならないように、あえて 昔の好きな人を、今の好きな人かのように装い、少しづつ協力してもらった。 そんなことをしたのは今ではきっと 「昔の好きな人」なんかじゃなくて「今の好きな人」だったからなんだろうなって、今なら分かるんだ。 その人とは、毎日日付を跨ぐまで通話で話していた。 正直、このままでもいいかな、とか、 このまま好きな気持ちを隠せばいいのかな、なんて思った。 でもそんなの、ただの仮初の気持ちだった。 他の人と話している姿を見ると、当たり前に嫉妬するし、 他の人にからかわれている姿を見ると、不安になる。 いつしか私は、「好きな人には好きな人がいる」 そう、予想していた。 その答えを、すぐにでも知りたくて、私は千鶴にお願いした 「…お願い!あの人好きな人いるか聞いてきて欲しい!」 千鶴は、気まずそうに答えた。 「...あの人、実は...」
不真面目でも一途。
「今日も頑張ってるな、瀬名くん」 図書室でひとり黙々と勉強する瀬名の横に、また現れたのはあの女の子だった 金髪に近い茶髪、ネクタイ緩めて、スカート短くて、授業もまともに出ない、問題児 「…椎名、またサボり?」 「ううん、瀬名くんに会いにきただけ」 にやっと笑う椎名の顔に、瀬名は目を逸らした 「意味わかんねぇし、邪魔」 「真面目すぎる男の子ってさ、そういうとこかわいいよね」 周りから浮いてるのは椎名の方なのに、なぜか彼女は人を惹きつける 笑顔も、冗談も、全部軽くて、でも心の奥を掴んで離さない 「なんで俺に構うんだよ」 「好きだからに決まってんじゃん」 「…ふざけんなよ」 「…ふざけてないよ。…だって、瀬名くんが一生懸命なとこ見てたら、苦しくなるくらい、ちゃんと好きになったんだもん」 真面目に生きるのが正しいって信じてた瀬名の世界が、あっけなく崩れる 不真面目で自由で、でも真っ直ぐな椎名の「好き」に、抗えなくなってた 「お前って、ほんとバカみたいだな」 「うん、バカだよ。でも瀬名くんが好きって気持ちだけは、誰より本気だから」 …こんなにも真面目な恋を、不真面目な君が教えてくれたんだ。
たった二文字。
春風が、僕の頬を横切る。 普段は優しい風と思えるのに、どうしてだろう。 今はなぜかそれさえも痛く感じる。 …新学期が経って間もないはずなのに、 僕の心は未だ空っぽのままだ。 「おはよっ、優也くん!」 いつもなら、隣の席の優奈がそう言って俺の肩を叩く。 そんなはすだったのに… …それなのにどうして、今は隣にいないの? …もう、学校が始まって一週間も経つのに。 「...優奈、進学先変えたんだってさ。美術コースらしいよ」 誰かの噂話が、僕の耳に深く刻ませる。 毎日、何気なく交わした言葉。放課後、窓辺で一緒に宿題をした時間。たわいもない話に笑い合った日々。 そのすべてが、遥にとっては「好き」という言葉に変わっていでも…伝えられなかった。 …いや、伝えないまま終わらせた。 「ーバカだな、俺」 机の引き出しの奥に、ずっとしまってある未送の手紙。 春の光の中で、僕はそれをそっと指先でなぞった。 「優奈、今どこにいるんだろうな・・・・・」 ふと、窓の外に目をやって見た。 一人の女の子が校門の前に立っていた。 風に揺れる長い髪。 一まさか。 僕は息を飲んで立ち上がった。 …もう、今しかないんだ、渡せなかった「言葉」も「手紙」も「大好き」も、今しか伝えられないんだ。 そう思うと、気づいたら僕は校門に駆け出していた。 「…え?」 僕は思わず言葉を失った。 僕が好きなあの子は、今、他の誰かと手を繋いでいる。 その時、僕は初めて悔やんだ。 「…もっと早く伝えていれば、変わっていたのかな。」 たった二文字、それを言えなかっただけなのに。 気づいたら僕は、目から悲しみが溢れていた。