宮野 哀人(ミヤノ アイト)

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宮野 哀人(ミヤノ アイト)

趣味で小説書いてます。 Twitter▶️@Mari_G8189

心の花

今日もどこかで一つの生命が誕生しようとしている。 真っ白なところにいた。 目の前には変なのがいて話しかけてきた。 「私は精霊のアノム。ここはまだ夢の中で今からあなたが何者になるかを決めましょう」 「何者…なるか…?」 「私は人間の生命エネルギーにより誕生したの。そして、あなたも同じく生命エネルギーにより誕生した。」 アノムの話が難しくて全然分からない。 アノムも頭を悩ませている。 「そうだった…あなたの精神年齢は人間でいう5歳程度だったわね。」 「私たち、生命エネルギーにより誕生した者に与えられた生き方は三つよ。 一つ目が精霊、二つ目が人間、三つ目が植物」 「君と同じか、お人形さんかお花…」 アノムは頭を少し下げて暗めの声で話を続けた。 「精霊になる代わりに記憶を失い、人間になる代わりに感情を失い、植物になる代わりに行動を失う。これがこの世の理。」 「お人形さんになる」 アノムはしっかり説明出来ない自分を攻めつつ、まだこの子には理解できないことだと割り切った。 「じゃあ、うち、いや、私にタッチして」 「はい、タッチ」 そして、この瞬間、また一つ生命が誕生したのだった。 目覚めたら、目の前にはアノムはいなくなっていて代わりにお爺さんが立っていた。 お爺さんは目をキラキラ輝かせ涙流しているが何も思うことは無かった。 「おぉ、ついに、ついにわしの夢が!!」 私は晴れて感情を失った人間となったのだ。 私は美咲と名付けられた。 「よしよし、花ジーですよー。」 それから、小学、中学、高校と進学し、高校生活を送っていたある日のことだ。 「美咲は将来何になりたい?」 私は将来なんて微塵も考えていないし興味もない。 「わしと同じ研究職か?」 「うん」 適当に返事をしておいた。 花成はある大学のパンフレットを持って私に渡してきた。 「ここなんて、どうじゃ?植物学部があるぞ」 「うん、そこにする」 そうして、高校三年生の受験期に植物学科があるN大学を受験した。 四月になり、私は学校近くの寮に入ることになった。 「美咲ぃー大学で心の花を咲かせて帰ってこいよ」 花ジーから発せされたこれほど大きな声は初めてだったが、特に思う感情はない。 あれから一年が経ち、美咲は帰省した。 美咲は学校で作った彼氏の紹介もしようと考えていた。 「花ジーただいま〜!」 花ジーはいつものように出迎えてくれた。 「お帰り、さぁさぁ上がって」 リビングでくつろぎ、美咲は彼氏について言及した。 「私の彼氏の西方陽(にしかた ひかる) 彼は植物園で働くのが夢なんだよ」 「どうも、西方陽です。」 そういうと、花ジーは険しい顔をして言った。 「よろしく…… 実は昨日異常気象で日照時間が一 日三時間になってしまったんじゃ…」 私は分からなかった。その本当の意味が 「まぁ、年寄りの戯言だ。 今日は泊まって行きなさい」 その夜、私が寝た頃に、西方と花ジーは男の話をしていたらしい。 〜深夜一時〜 「西方君、君は美咲のこと好きかい?」 「はい、もちろんです」 花ジーは、美咲が生まれてきた時のことを話し出した。 「美咲は、実験台だったんじゃ」 「は?」 「わしは植物から生命を生み出す研究をしていた。美咲は、普通の人間ではない。日照時間が減った今、美咲は太陽光が足りず死んでしまう。わしにはどうすることもできない」 淡々と話す花ジーを横目に西方は泣いていた。 「俺は、それでも最期まで美咲を愛します」 花ジーは何も言わず西方の手を握った。 のちに、明日の三時間が寿命だと知らされる。 次の日、布団の上で私は彼と目を合わせる。 私から見た西方は少し違和感があった。 「今日は、お前のお爺さんの農家を一緒に回ろうと思う」 美咲は、元気よくうなづいた。 朝食を食べ、三人で農家を回る。 近所の人と話をしたり、収穫を楽しんだり思い思いのことをした。 そして、日が暮れ出した。 すると突然、眩暈がした。 「うっ………」 目の前がぼやけて… 花ジー…………陽くん……… 私は目を閉じた。 「おーい、おーい」 そう、声をかけてくれたのは妖精アノムだった。 「どうだった?楽しかった?人間は」 私は、ようやく死んだことを自覚した。 でも、涙は出なかった。 「楽しかったよ。人間」 温かい気持ちがよく伝わったから

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心の花

相反する青春

「はぁ〜」 ソファーでゴロゴロすることが日課になりつつある。 私の名前は、はゆん。 両親が特別で珍しい名前を付けたいという理由だけでこの名前になった。 私は自分の名前には興味が無い。 強いて、好きなものをあげるならアイドル好きかな。 俗に言う、ヲタクなのかもしれない 性格は引っ込み思案で、高校の友達はまだ居ない。 でも、唯一アイドルグループの1人であるリョク君が好きな人だ。 リョク君は歌とダンスが得意でメンバー1身長が高い。そして、私と同じ十八歳だ。 学校では、周りで恋愛話が流行っているらしく、私も混ざりたいので来週の握手会で人生初の告白をしようと考えていた。 でも、した所でリョク君を好きな人なんて不特定多数で一般人の恋愛よりハードルが高い。 でも、めげずにリョクファンに立ち向かった(妄想)。 握手会前日、はゆんは明日の萌えのため、準備に燃えていた。 握手会は、ライブCDの購入特典でCDセットAを購入で握手会券、CDセットBを購入でライブ抽選券が付いてくる。 でも、今月もギリギリの生活をしているのでCDセットAしか購入することは出来なかった。 しかし、はゆんは未だにどちらを買うべきか迷っていた。 「ライブも捨て難いし、握手会も、捨て難い……もぉーーー!!」 一人で悩んで完全燃焼の末、寝落ちた。 次の日の朝、はゆんは大きなリュックを持ち、会場へ向かった。 会場前には数千と人がいた。 私は迷わず、リョク君のグループのブースへ足を進める。 そして、ついに握手会の時が来た。 制限時間は30秒。 これの時間をどれだけ楽しめるかで30秒の価値が変わる。 誘導員に誘導され、勝負の30秒が始まる。 「今日は来てくれてありがとう」 その一言で、私の心は溶けそうだっ。 「あ、あの、」 ここで、心が揺らいだ。 顔を見て告白すべきか逸らすべきか 「リョク君が好きです」 私は、顔を見て言った。 その顔は丸くて艶があって顎に小さなほくろがあった。 「ありがとう。僕も好きだよ」 その返答と笑顔に私の心は溶けるどころか消えてなくなりそうだった。 あっという間に30秒は過ぎ、幸せの空間から引きずり出された。 次の日、いつものように学校に行き、授業を受けていた時の話だった。 先生が、二人ペアを作って、月について調べて発表するというを出した。 周りの子はみるみるうちにペアが決まっていく。 結局、私は余りものになった。 「はぁ……」 そんな時、同じく余りものだったのが 隣のクラスの諒介君だった。 彼は、無口だったが、話しているうちに少しずつ喋れるようになっていった。 私たちは、お互いに「はゆさん」「諒君」と呼ぶまでの仲になった。 「はゆさん、この部分は月のクレーターの話題にしてみるのはどうですか?」 「いいね」 そんな、こんなで話が弾み、授業で発表する資料も完成に近づいていた。 そんなある日、ふと諒君の顔を見ると 顎に小さなほくろがあった。 「リョク君と一緒だぁぁ!!」 思わず声が出てしまった私を見て諒君は驚いていた。 「あ、あの、リョク君ってのは…彼氏?」 「違う違う、私の好きなアイドルの名前なんだ」 少し悲しい表情をした私に諒君はこう呟いた。 「お、俺が、アイドルグループのリョクだ」 諒君はかけていた眼鏡を外し、髪の毛をかき上げた。 それは、もうリョク君以外の何者でもなかった。 「ま、まさか、同じ格好だったとはね」 はゆんはその場で崩れ落ちた。 そう、この学校の図書室で そして、泣き止むまで、ずっと隣で 「ごめんね、ごめんね」と 言っていた諒介だったが、はゆんの頭は上がってこない。 そして、頭が上がったと思ったら、、 「諒君、私と付き合ってください」 と、唐突に言い出した。 「諒介としてならね」 その後、私は安心して、さっきの涙は悲し涙じゃなく嬉し涙だったことを伝えた。 そして、授業の発表も成功し、新たな人生が幕を開けた。 私は私に表のアイドルの顔にはフラれたけど 裏の素の彼には告白成功したねと声をかけた。 そして、日記に恋を遠慮しなくて良かった そう綴ったのだった。

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相反する青春