鉛筆

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小説家になりたいです

スランプ

空回り 自分の才能が無いんじゃないかと思い 焦り 雑になっていく 思うように行かない それがスランプ 精神のゆらぎ 精神的苦痛 精神の変化 それらの積み重ね いつもどうりにいかない それがスランプ スランプ スランプ そんなの誰にだって1度はある 焦り 精神的苦痛 ゆっくり休みながらやればいいんだよ スランプとはそういうものだから

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内心

心のどこかできっと自分は自覚している 無理なこととそうでないことを ちゃんと把握している でもギャンブラーなんだよ たった数パーセントにかけてしまう 無駄だった 心のどこかで自分に言い聞かせている 無理なことをハッキリ無理だよと ちゃんと警告している でも聞きたくないんだよ たったそれだけで間違えてしまう 無理だった 心のどこかで自分は決心している 無理だから諦めようと ちゃんと決めている でも辞めたくないんだよ たった数ヶ月の過去を思い出してしまう ダメだった 心のどこかで自分は… 数年後の未来に期待してしまっている

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内心

同じもの

正反対の人間とつるむのは難しいことだと前から思っていた。 なんであんなやつとつるんで仲良くしてきたんだ。バカバカしい。 いつもとなりに歩いているあいつはもういない。 「あーあ」 通学路の途中にある丘の上で俺は今日も学校に遅刻するのを試みる 「ここだとよく眠れんだよな。なぁ?」 視線を横に向けてわれにかえる。 「…」 まだ自分にも名残りおしさがあるのかもしれない。そんなの認めたくは無かった。 「クソッ」 地面をおもいっきり拳で叩く。 俺はもうあいつとは関わらないって決めたんだ。あんなやつ。あんなやつ。 俺はその後もまた丘の上で足を組んで寝そべる。 「あ…勝太…」 ふと声がした方を見るとそこにはおどおどした様子で立っている叶汰がいた。 「なんだお前もう俺に近づくなよ!!」 俺は叶汰を睨みつけた。 「ごっごめん」 叶汰は泣きそうな顔をして去っていった。 「ちっ」 この時間じゃもう叶汰は遅刻だろう。めずらしいな。温厚な性格の叶汰が遅刻だなんて。俺はもう大嫌いな叶汰を気にしてしまう。 頭をかきむしりスクールカバンを持って学校に行く。 なんで俺はみんなを敵にしてまで叶汰を助けちまったんだ。なんで叶汰と仲良くしてしまったんだ。 小石をおもいっきり蹴飛ばす。 本当にムカつく人間は叶汰みたいな人間なのだろう。 いじめられてもしかたなかった。 そうだあいつはいじめられていた。 去年はクラスも違かったし叶汰のことなんて認識もしていなかった。 ただ今年同じクラスになって俺はざんこくなクラスを目に見た。 俺はすかさず動いちまった。 「やめろよ。おめえら去年もこんなことしてたのか?くだらねえ!!いじめるなら俺にしたらどうなんだ!!あ?強いやつがてめえらは苦手なんだよ!!だから弱いやつをねらう。どうだ?俺をいじめてみろよ!!」 俺はあの時声を荒らげて言った。 そしたらみんな1歩後ずさって教室を出ていった。 「あっありがとう。」 おどおどとお礼を言う叶汰に俺は笑った。 「俺がこれからお前を守ってやる。俺なら安心だろ?友達になろう!!」 最初はこれが正義だ。これでいいと思っていた。でもだんだんもやもやができはじめたんだ。 これでよかったのか。叶汰とずっと仲良くしてて俺は本当に楽しいのか深く考えてしまう。 正直俺と叶汰は正反対だった。 スポーツもできて強くてみんなをあっとうさせるバカと温厚で真面目でどんくさくてスポーツもできない叶汰とではまったくあわなかった。 体育で同じチームになるとよく足を引っ張る。でも俺はがまんしてがまんしてがまんし続けた。 どんなに叶汰が責められても 俺は必死にかばった。俺も叶汰にイライラしていたのに。 「大丈夫だ。気にするなか叶汰。お前もお前なりによくがんばったよ。」 「ごてんね。ごめんね。勝太」 何度も謝ってくる叶汰に苛立ちを覚えた。 謝るより先に強くなれよ。ふざけるなと怒鳴りたい気持ちをおさえた。 「謝んなって」 そこからだ。俺が叶汰に不満を持ち始めたのは 俺は叶汰と友達になんてなれないと間違っていたんだと。 おかげで俺と仲の良かったやつはみんな叶汰とつるむ俺から離れた。 いつも叶汰はそれを申しわけなさそうに謝る。 耳をふさぎたくなるくらいに 聞いた「ごめん」ももう聞かないですむと思うとせいせいする。 俺に向けられる「ごめん」かま1番ムカつく。 教室のとびらを開けるとそこにはまたいじめられる叶汰がいた。 俺はそれを見て見ぬふりして席にかばんを放り投げて座った。 「おい見ろよ。あいつ叶汰の味方しねえぞ?」 「ワロター」 くすくすと聞こえるささやき声 俺はこの声がどこに向けられている言葉なのかやかる。叶汰の味方をしない俺に最低という目で見られて言われている言葉じゃなく唯一の友達の俺が味方になってくれなくなってかわいそうという笑いを叶汰に向けて言った言葉だ。 ちらっと叶汰の方を見る。 すると叶汰と目があってしまった。 数秒俺は目をそらすことができなかった。 勝太。勝太助けてよ。目でそう言われてる気がしたからだ。 俺は苦しい。元友人のこの目を見る事が苦しい。 俺はゆっくりと視線をそらした 「風真勝太。後で職員室に来るように」 「は、はい」 急な呼び出しに俺は何をしたのか焦った。 「しつれいします…」 「おお来たか風真。お前に少し聞きたいことがあってな。叶汰のことなんだが。」 叶汰の名前が出た瞬間俺は動きと呼吸が止まった。 「最近、叶汰とお前がつるんでないようだが何かあったのか?叶汰は、人とつるむのが苦手でいじめられがちだったんだ。風真とつるむようになっていじめもなくなって先生も安心していたんだが、最近また叶汰へのいじめがみられる。 風真何か知らないか?」 心臓が早鐘をうつ。 「いえ、何も。」 これをいうのがせいいっぱいだった。 先生はそのまま俺を教室に戻らせた。 廊下ではまた叶汰がいじめられている。 俺はそれを見ないように横を通った。 俺とあいつはあわない。俺とあいつじゃあわない。 そうやって心でずっととなえている。 俺の何が悪いんだよ。叶汰が悪いだろ ずっとそうやって思い続け責任のがれをしてきた。 俺と叶汰は正反対の性格と誰が見てもわかる。 でも俺は叶汰とずっとずっと仲良く授業中そんな事を考えてむしゃくしゃしていた。 俺の席の前を飛びかう紙くずを目でおうと背中を丸めて縮こまっている叶汰が目に入る。 カシャッ 何度も紙が床に落ちる。 俺はこんな音を聞いてはいられなかった。 でもたえた。たえた。守る事ではない何かの欲に。 「叶汰お前勝太に見捨てられてこれからどうすんのー?」 「俺らのパシリになってくれるのー?」 「ぼ、僕は…もうパシリなんかにはなりません。」 「はぁ?なめてんの?」 「僕は勝太みたいに強くなるんです!!」 俺はその言葉を聞いてがまんできなかった。いじめられてる元友達を見て苦しいってのはあったのかもしれない。 でもたかが元だ。俺は叶汰のところに歩いていく。 「勝太…」 こっちを見てつぶやく叶汰を俺は、グーで殴った。 叶汰をいじめてたやつはも目を丸くして数歩後ずさる。 叶汰はその場でしりもちをついた。 「勝太。なん…で」 とまどう叶汰を俺はにらみつけてこう言い放った。 「お前俺みたいに強くなれると思ってんのか? 勉強しかできねえ弱いお前が調子にのんじゃねえ。俺は後悔してんだよ。ずっとお前を助けたことを!!お前と友達になったことを。 ああやって言えば俺がまた助けてくれるとでも思ったか?バカじゃねえのか? 俺はてめえを絶対許さねえ。 てめえのせいで俺らのチームは体育祭で逆転負けされたんだよ!!」 「ご、ごめん。ごめんよ勝…」 俺はまた謝る叶汰をにらみ叶汰のすぐ横の壁をけりあげた。 びくっ叶汰の肩が震える。 それでももう俺はおさえきれなかった。 「俺とお前じゃ性格があわなかったんだ。分かったら二度と俺の名前を呼ぶな。」 「うん。分かったよ。」 俺はそう言って教室に戻った。 そうだ。俺と叶汰がこんな風になっちまったのも叶汰が全て悪い。 体育祭の時俺が1位で叶汰にバトンをわたした。 クラス全員リレーの種目だ。 点数は俺らA組がC組より少し高いぐらいでここで負けたら逆転負けってところだった。それを叶汰は。 叶汰は俺がバトンをわたしたあとすぐすっころんだ。 そして他クラスに抜かされ。 俺らのがんばりは無駄になった。 C組の逆転勝ちで終わった。 俺はそのときかんにんぶくろのおが切れた。 すぐに叶汰は俺のところに来て謝りに来た。 「勝太。ごめんよ。俺のせいで」 「ああ、そうだな。叶汰。A組はお前のせいで負けた。」 「うん。分かってるりほんとにごめ、」 「いいかげんにしろよ。お前本当は口だけなんじゃないのか?」 「そんな事ないよ。」 必死に否定する。叶汰を苦しい言いわけだなと見下した。 「俺は思うんだ。お前と俺とはあわない。確実に」 「そ、そんな」 「もう俺は叶汰と仲良くしたくないな」 その日から俺は叶汰と距離を置いた。 何度も謝ろうと俺の方に来る叶汰を俺は来るなという目でにらみ続けた。 そして俺は今。叶汰とは真反対の立場にいて。 前までの俺とは違う自分が居た。 「おい叶汰ーお前おごってくれよー」 「いっいや、僕は。」 反抗しようと口をひらく叶汰を俺は止めた。 「叶汰。俺サンドイッチな。」 「え…」 数秒の沈黙の間叶汰は目を丸くして俺を見つめる。 「んだよ。お前文句あんの?」 俺と叶汰がみつめあってると叶汰をいじめてたやつが俺の方を向いてこう言った。 「勝太いつから叶汰をいじめるよつになったんだ?もう叶汰を守らなくていいのか?」 少しニヤニヤしながら聞いてきた。 「今日からだ。叶汰を守る?そんなもん体育祭の日にとっくに終わってるわ。」 そう言って俺は叶汰の制服の襟を掴み叶汰を壁にうちつけた。 「いっっ」 小さな声が叶汰の口からとれる。 俺はそれでもやめなかった。 「お前ちょっとは反省しろよ。体育祭のこと俺はまだ許してねえぜ?少しは反省して俺らのパシリになれよ。なぁ?w」 俺はそう言って他のやつらをみた。 他のやつも俺に同情して叶汰を責める。 叶汰は今にも泣きそうだ。 ああなんて最高なんだ。 いじめるってこんなに快感だなんてムカつくやつのこの顔を見るだけで俺はスッキリしたしもっとだ。もっとこの快感をと叶汰をいじめる快感を欲しがった。 俺の心の中の声は高笑いをしていた。 俺は何でこんなやつの味方になってたんだよ。と昔の自分をバカにしてやりてえぐらいだった。 「はやく買ってこいよ!!」 怒鳴ると叶汰は泣きそうな顔でサンドイッチや他のやつの昼飯を買いに行った。 「は、ははははあーはっはっはっあーはっはっは」 俺は笑った。こんなに最高なことは無い 腹をかかえて笑った。 他のやつは俺が急に笑い出して引いていた。 「しょ、勝太どうした?」 「あはははは、え?どうしたもこうしたもねえよwいじめるのがこんなに楽しかったなんてあは、あははは最高だ。あーはっはっはっ」 「だ、だよな。」 他のやつらは俺の急変にとまどっていたが俺はもう叶汰をいじめない日は無いだろうと思う。 「買ってきたよ。」 数分して叶汰がコンビニ袋を持って帰ってきた。 「お、サンキュー」 叶汰の持ってるコンビニ袋を奪い取り中身を出した。 「ん?んだこれ俺らこんなの頼んでねえぞ?」 「あ、えっとそれは僕ので」 「あ?」 聞き捨てならない言葉に俺は叶汰の分だというパンを先に食ってゴミを叶汰に放り投げた。 「え、勝、太それは僕ので」 「てめえ自分の分買ってきていいなんて俺ら言ってねえよな?お前が普通に食えるわけねえだろ」 「そ、そんなのひどいよ」 「うっせえっ!!」 水がまだ少ししか減ってないペットボトルを叶汰に向かってぶん投げた。 「お、おいさすがにやりすぎなんじゃ…」 いじめのリーダーであった大村竜が俺を止める。 「うっせえ!!」 止めようとする手を振りはらう。 「てめえらもこうやってやったんだろ?俺にもやらせろよ!!」 意外だと言うような目で俺を見上げる竜達をほうって俺は叶汰のところに詰めよる。 「勝太、もう、やめてよ。勝太」 震える身体。震える唇。怖いものを見るような目。 俺はこの叶汰の様子がたまらなく面白いと感じるようになった。 「お前、今日からゴミ箱な」 「え、」 「え?!」 かぼそい叶汰と俺のことを見えたいじめてるやつ達が驚きの声をあげた。 「お、おいこれはまずいんじゃ」 「なんだ怖いのか?」 「い、いやそういうわけじゃないけど」 「俺は変わったんだよ。元友達1人傷つけるなんて容易にできるようになぁ!!」 笑みがこぼれる。 ずっとたえてきた。叶汰に対するいじめを俺のこの手ですることをずっとがまんしてきた。 俺が守ると決めた。友達だったから。手を出してはいけないと勝手に思っていたから。 でも1度手を出してしまったからにはもう止められなかった。 まるで薬物でもやってるかのように叶汰へのいじめは最高だった。 午後の授業を終え、下校するとき 叶汰はまた荷物を持たされてパシられていた。 ニヤ。 俺は叶汰を使った面白い遊びを思いついてしまった。 学校の校舎の裏に砂利がある。 大きめの石を俺のかばん1杯につめて叶汰に渡してやろう。 そうくそみたいな事を考えていた。 「おい叶汰。これもよろしく。」 「う、うん」 さあ持てそのカバンを持ちやがれ。 「うわ!!」 まんまと引っかかった叶汰を見て俺は笑った。叶汰の目の前で盛大に笑ってやった。 「お、おいこれ何入ってんだよ勝太。」 「石だけど?校舎裏から取ってきた」 「まじかよ」 「わるいか?」 「いや…」 気づけば俺はいじめのリーダーを越すいじめのリーダーになっていた。 それでもいいこのいじめの楽しさを味わえればそれでよかった。 このいじめだけが俺のストレス発散方だった。 「勝太!!勝太は僕をいじめるような人じゃないって思ってる。もうやめてよ。」 「俺は!!正義なんかじゃねえ。」 「勝太は正義だよ。」 「黙れぇ!!」 俺は叶汰の方に走り拳をにぎってその拳を叶汰の顔面におもいっきりふるった。 ボコッ… 「お、おい勝太!!落ち着け!!勝太!!」 竜達が俺をおさえる。 叶汰の眼鏡はゆがんでいた。 口からは血が出ていた。 「おい!!何してるんだ。」 タイミング悪く先生がこっちに来る。 「これはどういうことだ。竜お前か!?」 「ちっ違いますよ!!勝太です!!」 「なに?勝太お前が叶汰に暴力をふるうわけないよな?」 先生はこっちを見てくる。 俺は先生ではなく先生の向こうにいる叶汰の目を見た。 目と目が合う。 は… 俺は驚いた。叶汰が口の動きで何かを俺にうったえかける。 「俺じゃありません 嘘ついて」 そう俺に伝えている。 とことんムカつく野郎だなと心底おもった。まだ俺をかばうか。 俺の体はもう制御できない。 拳を握り直し 先生の言葉を無視して叶汰の方に向かう。 「おい。聞いてるのか?勝太」 「まだ俺をかばうか。」 「え」 「先生。今から俺のすること見ててくださいよ。」 「おい勝太、そんなことしたらお前」 竜は止めようとする。でも俺は止まらない。 「何をするんだ勝太。」 「叶汰、お前そろそろ現実みろ。俺は平気でお前を殴れる。」 そう言って握り直した拳を叶汰の腹にくらわせる。 「うっ」 「お、っおい!!勝太!!やめなさい!!」 先生は俺の手から叶汰を離した。 「職員室に来なさい。」 「…」 「来なさい!!」 俺は先生に引っ張られ職員室につれていかれた。 「勝太!!勝太!!」 叶汰は最後まで俺の名前を呼び続けた。 「何があったか説明しなさい。」 「…」 「勝太お前どうしたんだ?いつからいじめるようになった。叶汰を支えてやれるのはお前だけだったんだぞ?」 「俺は。」 その後の言葉が出てこない。 何を言えばいいんだろう。 何をどう説明すれば良いのだろう。 「俺はなんだ?」 「…」 それでも黙る俺に先生は呆れたようにため息をついた。 「まあこの話は後に聞くとしよう。とりあえずこんなに大事になったんだ。竜達は2週間の停学。 勝太は3週間の停学だ。いいな」 「はい。」 「次このような事があれば、竜達かお前誰かは必ず退学になると考えておけ。」 「退学ですか。」 「あたりまえだろう。」 「わかりました。」 職員室を出ると竜達が待っていてくれた。 「お前3週間の停学か」 「まあ俺らも2週間は停学だけどな」 「叶汰は?」 「帰ったよ。病院行った。にしても勝太あれはやりすぎ。何も先生の前で殴らなくても。」 「フッムカついたからな叶汰にはもっと殴ってやってもいい」 「…お前変わったな」 「ハハハ変わったんじゃねえよ。多分本性はこっちだったんじゃねえか?俺とあいつとじゃ正反対じゃん?w 俺も失敗したと思ったわー。まあでもいじめるって楽しいんだな!!」 「ま、まあな…」 竜達は少し俺を引いたような目で言う。 「あ、あれ叶汰じゃね?」 「うそ!?」 竜は身を乗り出す。 あそこは俺と叶汰がいつも朝登校の途中寝そべる丘だ。 後ろからだとよく見えないが、寝ているのだろうか。 少しなつかしさを感じてしまった。 「行こうぜ。」 「おっおう。」 俺は気にせず竜達と帰った。 「じゃ俺こっちだから3週間後」 「おっおう。」 「ちょっと勝太!!」 母が俺を怒鳴りつけた。 「あんた学校から電話が来て3週間の停学処分ですって!?いったい何したのよ。」 「達殴った。」 「はぁ?」 母は今にも平手打ちをしそうだ。 「友達を殴った?それどういうことよ。」 「いじめにくわわっただけだ。」 「いじめですって!?あんたをそんな風に育てた覚えは無いわ!!出ていきなさい!」 「あ?なんで?」 「反省して来なさい!!」 「あー分かったよ出ていきゃいいんだろ?」 バン!! 俺は家を出た。というより出された。 俺は悪くない。俺は悪くない。 そう心に言い聞かせながら夜道を歩いた。 いつもの丘に行くともう叶汰はいなかった。 当たり前か。 俺は丘の上に寝そべる。 日中の青い空とは違って夜は雲が厚い。 今にも雨が降りそうだった。 「俺は後悔なんてしてない!!」 そう叫ぶと同時にぽつぽつと雨が降り始め、すぐに強い大粒の雨になった。 体がどんどん雨に濡れて冷えていく。 「うわーーーー!!」 雨の中俺は叫んだ。 今までのストレスを全てこの声に。 叶汰で発散したはずなのに。ストレスはまだ山のようにある気がした。 「はあはあはあ」 髪の毛が顔にへばりつく 「勝太?」 すると後ろから気に入らない声がした。 「叶汰。」 「風邪ひいちゃうよ。」 そう言って俺に傘をさし出してきた。 「ふざけんな!!」 俺は叶汰の傘をふりはらった。 傘が地面に落ちて転がる。 「本当に勝太かぜひくよ?」 今日の叶汰はやけに下がらないなと思いつつ俺は声を荒らげた。 「いつまでお人好しなんだよ!てめえは。まだ分かんねえのか?俺はてめえが大嫌いなんだよ!!俺はお前を殴ったんだいい加減分かれよ!!」 俺が声を荒らげるのと同時にいっそう雨が強くなる。 叶汰は何も言わず俺の目を見つめてくる。 「なんだよ。俺はなぁ退学だろうが停学だろつがまたお前なんて殴れんだよ!!」 「嘘だ。」 いつもよりハッキリと言う叶汰にイライラしてくる。 「あ?今なんて言った」 「嘘。本当は勝太は怖いんだ。退学も停学も。」 「んなわけねえだろうが!!」 「だって勝太震えてるよ。それに目が怯えてる。」 「は?震えてんのは雨に打たれて体が冷えてるからだ。お前に俺の目の何がわかんだ。」 「分かるよ。友達やってきたから。覚えてる?この丘。よく2人で寝そべってたのね。」 ヘラヘラと昔話を始める。 叶汰を俺はにらんでにらんでにらんだ。その目を見ても叶汰は怯えることも無く続ける。 「僕、勝太が僕を殴るのが怖いように見えるよ。」 黙って聞いてりゃ好き勝手言いやがって。 俺は殴ることなんて怖くもねえし退学になったって別にいい。 「叶汰。お前また殴られてえのか!?俺はな。本当はにお前なんかすぐ殴れんだよ。」 拳を握る。 「うおーーー!!」 拳をおもいっきり叶汰の方にふる。 バシッ… 「!!…」 俺が見た光景は俺が叶汰を殴ってはいなかった。叶汰が俺の拳を手で止めた。 「叶汰。お前。」 俺は拳をおろした。 「ハァ、ハァ、ハァ、」 なんでこんなに息が上がってんだ。 何でこんな焦ってる俺がいるんだ。 俺は無言でその場を離れた。 ようするに俺は逃げた。 叶汰ごときに圧で負けた。 「クソッ」 路地裏で壁を、おもいっきりたたく。 なんで俺があんなやつに。 もう叶汰の顔も声も聞きたくなかった。 トボトボと家に向かう。 閉められていた鍵はもう開いていた。 カチャ 「お帰り。風呂入りな。」 母は何事もなかったように俺を家に入れた。 「お風呂から上がったら少し話しましょう。」 「また説教か?」 「違うわよ。まず詳しく聞かないと。」 「うん。」 風呂に入りながら俺は叶汰に負けた悔しさで頭がおかしくなりそうだった。 「クソックソックソッ…」 水面を何度もたたいて顔にはねてくる水をふりはらう。 ザバッ 風呂からあがると母はジュースを入れてテーブルで俺を待っていた。 「サンキュ」 ジュースを少しゴクリと飲んで母の目をみる。母の目は悲しそうだった。 「なんでそんな顔すんだよ。」 「あんたがお友達に暴力をふるったからよ。いったい何があったの?話してみなさい。」 「…」 俺は話そうか迷った。 こんなこと話したって何にもならないと思ったから。 でも母は何も言わずにずっと俺が口を開くのを待っている。 このまま待たせるのも申し訳ないと心のどこかで思ったからポツリポツリと今までの経緯を話した。 怒られるかと思ったけど母は何も言わなかった。 「怒らねえの?」 「怒って欲しいの?」 「別に。」 「今日はもう寝なさい。」 「うん。」 自室に戻ってベッドに飛び込む 「ハァー…」 今日はなかなか寝つけない。 思い出しちまってしょうがねえんだ。 叶汰との日々を。 毎朝俺らは遅刻しない程度あの丘で2人で寝そべっていた。 2人で寝るあの丘は最高に気持ちよくずっと卒業まで行き続けると思った。 でも。俺は俺はなんてことをしてしまったんだろう。 そう頭によぎったがすぐに振り払う。 また正義になるつもりか俺。 俺は何も悪くない。 俺の本性はこれだ。 そう自分に言い聞かせた。 もしかしたらこれが現実逃避ってものなのかもしれない。 「この丘本当気持ちいいよな。」 「うん。ありがとう勝太」 そんな会話をふと思い出し すぐに今日の夜、あの丘で叶汰に会った事を思い出してしまった。 「僕、勝太が僕を殴るのが怖いように見えるよ。」 ふざけんな。ふざけんな。 部屋の天井を見ながら歯を食いしばる 明日また会ったら今度こそ殴ってやるそう決心して俺は眠りについた。 朝俺が目覚めた頃にはもう10時だった。 「やっべ遅刻じゃん!!」 と思ったけどそういや俺停学だった。 起きると同時に昨日の事がフラッシュバックしてきた。 顔を洗いに洗面所に行く。 パシャッパシャッ 「…」 ふと鏡を見ると生気のない顔が映った。 「コレが叶汰を殴れない顔?目だと。…知ったような口ききやがって。」 鏡の中の自分をにらみつける。 「俺はなんであんなやつを助けたんだよ。何のために。」 叶汰を殴った右手を見つめる。 数秒の間ずっと右手を見ていると自分の右手が震えていた。 「あ、あ、違う!!違う!!俺は、違う!!うわぁぁぁーー」 リビングの真ん中俺は叫び狂ったように頭をかかえてしゃがみこんだ。 「ハアハアハア。俺は、俺は強い。俺は叶汰を殴れるほど強いんだ。」 その場にうずくまってから何時間経っただろうか。 「ハア、ハア、ハア、」 まだ息があがっていた。 まるで弱い人間になっちまったみたいだ。 叶汰みたいな。いや違う。俺は強い。 ずっとずっと強い。 ふはぁっと立ち上がり階段をのぼる。 ピンポーン 家のインターホンが鳴った。 誰だ?宅配便だろうか体を玄関の方にむけて階段を下りる。 ずるっ ぼーっと階段を下りていた俺は足をすべらせた。 「わっ…」 小さくこぼれた悲鳴。 ドン!! 「う…」 すぐ手すりを掴もうとしたが間に合わなかった。 すぐに玄関の鍵が壊されドアが開いた音がした。 「!!勝太!」 この声は叶汰? 「大丈夫?!勝太」 叶汰は俺をていねいにゆさぶる。 「すぐ救急車を呼ぶからね。」 スマホを取り出す叶汰の手をおさえる。 「ちっ」 いつまでもムカつくやつだなと思った。 俺に触れるな、俺をほうっておけよ。 お人好しが。 「ふざけんな!!」 「勝太。」 「お前何しに来た!!」 「プリントを渡しにきたんだ。3週間停学なんだろ?」 「いらねえよ。」 「え?」 「いらねえっつってんだろ!!救急車も呼ばなくていいしプリントも私に来なくていい!!迷惑だ!!」 「そんなつもりは…」 「帰れ!!」 「でも勝太、頭とか打ったら大変だよ。」 「帰ってくれよ!!頼むから。… 帰って…」 声は震えていた。叶汰の声も顔も聞きたくも見たくもない。 いつまで、いつまでこんなくだらん演技をしてるつもりなんだ。 「無理だよ。勝太俺は友達を放っておけない。」 「ふざけんなっ」 気づいたら拳が叶汰の顔面をまた殴っていた。 叶汰は顔を手の平でおさえていた。 俺は声も出せなかった。 「ほっほら見ろ。殴れたじゃねえか。ハッハハハお前なんて簡単に殴れる。」 ブチッッ… 急な頬の痛みを感じた。 「は?」 口からは軽く血が流れていた。 「お前今俺のこと殴ったのか?」 そう聞いても叶汰は答えなかった。 「おいてめえ、俺を殴ったのか?どうなんだよ!!」 ボコッ 叶汰は無言で俺のことを殴って来た。 「う…」 こいついつの間に俺を殴れるようになったのか? 体の震えが止まらなかった。 「勝太」 俺はいつから、いやいつまで。こんなことをしてるんだ。 今の俺は昔の叶汰みたいだった。 そして叶汰はさっきまでの強い俺。 「勝太。強がらなくていいんだよ。」 「あ?なに?」 「だから勝太。強がるなよ。」 いとも簡単に俺に強がるなと言ってくれたな。 まるで俺が弱いみたいだ。 「はw強がる?俺は元から強いんだよ。てめえに何が分かる!!」 「分かるよ友達だから。」 「俺とお前はもう友達でも何でもねえ!!」 叶汰の方に向ける拳をギリギリで止める。 弱い強い弱い強い。 弱い弱い弱い。 自分の頭の中がこんがらがる。 「俺はもう帰るよ。」 そう言って叶汰は帰って行った。 騒がしかった玄関はしーんと静まり返る。 俺は叶汰に殴られた頬をおさえた。 まだ熱をおびている。 叶汰になバレてるのかもしれねえな何もかも全て。 その日俺は飯も食わず暗い部屋のベッドで寝そべっていた。 叶汰が俺を殴った。 なんでだ。なんで殴りやがった。 あんなやつに。あんなやつに。 俺らは正反対の人間なんだぞ!? それを何で何でだよ。 叶汰の目。俺はあいつの目が怖い。 「ん…?」 目を覚ますともう部屋は明るく朝が来ていた。 ぱちぱち… 目をぱちぱちさせて体を起こす。 ぞくっ… 急な寒け。また?またか?俺は。変われないのか? ガタガタとベッドの上で震える俺。 やっとやっと強くなれたのにか? とりあえず気分転換に散歩でもしよう。 本当は停学処分中は外出してはいけない。 でも家にずっといると気がおかしくなりそうだ。 外の空気を吸わないと。 停学処分の人が外出してるなんてバレたらやばいから少し離れたところに行こうと思い財布を持って近くの駅に向かった。 「この時間帯はすいてるな。」 そう思いながら隣町の切符を買う。 「あれぇ?お前風真勝太か?」 聞き覚えのある声がした。 「やっぱり勝太だ。久しぶりだなあ」 「お前結構いい高校行かなかった?こんな時間にこんな所でなにしてんのー?」 こいつらは俺の中学校時代の同級生だ。 そして、中学の時俺をいじめてきたやつらだった。 今までの俺は偽りの俺。 高校ではいじめられないようにと強くみんなに見せて予防線をはっていた。 「聞いてんのかぁ?」 「てめえらこそこんなとこで何してんだよ。」 「は?てめぇら?誰にそんな口聞いてんだ?」 「俺は変わったんだ。」 「意味わかんねぇで?優等生のお前がこんなところで何してんだ?」 「停学になっただけだ。」 一瞬沈黙がはしった。 「お前が停学?なんで?w」 「達を殴った。それだけだ。」 「へー面白い。お前にそんな度胸があったとはな。ちょいと遊ばせてよ」 最悪だ。なんでこんなとこまで散歩に来ちまったんだろう。1番会いたくないやつに会っちまった。 「俺はもう今までとは違う!!お前らと遊んでるひまはねえ」 俺をいじめてきた3人をにらみつける。 「は?てめえ調子乗んなよ?」 「のってるのはてめえらだろうがっ」 声量を上げる。俺はいじめのリーダーだったやつめがけて拳を振り上げた。 しかしいとも簡単に防がれてしまった。 「はっはははなぁんだ。何も変わってねえじゃねえかよ!!」 その場でしゃがみこむ。 口からは血がしたたり落ちていた。 「おらっ」 ブチッッ もう1発殴られる その衝撃で中学時代の嫌な記憶がよみがえってしまった。 「ヒャッハーおい勝太金は?」 「てか俺の飯はー?」 なんで始まったのか分からない。 俺へのいじめ。 中学に入学して一学期は普通に友達もいたし楽しかった。 でも二学期に入って嫌がらせがおこるようになった。 三学期に入る頃にはどんどんいやがらせはいじめに発展した。 パシリはもちろん。俺はあいつらのストレス発散の道具だった。 一学期まで仲良くしてくれてた友達も俺へのいじめを見て見ぬふりをして誰1人助けてくれなかった。 3年になると毎日のように殴られ口からどれだけ血を吐いただろうか。 「イラつくんだよ!!てめえは!!」 「うっ…僕が何したっていうの?」 「うっせえ!!」 ガン!! フェンスにうちつけられ背中がヒリヒリする 「ごめんなさい。ごめんなさい。」 謝る毎日。どんなに謝っても許してくれない。逆に暴力が多くなる。 本当にぺこぺこ頭を下げる俺が俺は大嫌いだった。だからきっと俺に何度も何度もも謝る叶汰にイライラしてたんだとおもう。 「くっ…」 昔のことがフラッシュバックしてうまく手が出せない。 ずっと。ずっと強く見せて自分は強いと自分に言い聞かせて演技をしてきた。でもこんなくだらない演技なんて意味が無かったのかもしれない。 「久しぶりにお前に会えたんだ。もう1発ムカつく顔面にたたきこんでやるのオラッッ」 あいつの拳が俺の目の前までくる。 恐怖で座りこみそうになる。 でももう遅い。とっさに目をつむった。 ボコッ にぶい音が鳴る。でも俺に衝撃が来ない。 恐る恐る目を開けてるとそこには叶汰が立っていた。 「おいてめえらどこのどいつだ。俺の達に手出すな!!」 聞いたこともない叶汰の低い声。 あの温厚そうな人とは思えない。 「お前何もんだ?」 「だから俺は勝太の達だ」 「は?」 俺はつい言葉がもれてしまった。 誰がお前みたいなやつの達なんだ。ふざけんな!! 今にも叶汰にとびかかりたかった。 でも足がすくんで動くことすらできない。 この目だ。叶汰のこの目が怖いり まるで、まるで昔人をいじめてたみたいだ。 「達?wなんだ勝太お前ぼっちじゃねえのか?w…うっ」 いじめっ子が倒れるり 「勝太の悪口をまだ言うつもりか?」 こいつがこいつがもしかしたら本当の偽善者。 こうやって俺を守ってタイミングを見計らって今までの倍にして返そうとしてるのか?俺はまたボコボコにやられるのか? 変われたと、変われたと思ったのに。 スッ また叶汰が殴るかまえをる。 「ちっいっ行くぞ」 「おっおう」 中学時代俺をいじめてたやつは逃げていった。 「ふう。大丈夫?勝…」 俺は叶汰から距離を置く。 「お、お前。お前は、偽善者なのか?」 「偽善者?」 震える口を動かす。 「叶汰。お前は…昔いじめてたのか?人を。罪のない人間を!!いじめてたのか!?」 「何言ってんだよ。」 叶汰が俺の方に向かってくる。 「来るな!!」 心臓がバクバク音を立てている。 殴られる。俺が殴った時の倍痛いのがくる。 身構える。 「誤解だよ。勝太。俺は偽善者なんかじゃないし昔誰かをいじめてたりなんかしてないよその逆だ。」 「逆?お前も中学校の時いじめられてたのか?」 「違うっていじめられてる人を助ける側だ。」 「嘘だ!!」 俺は簡単に叶汰を信用することが出来なかった。 「だって、だってお前は俺をいじめてたやつと同じ目をしてたんだ。前俺の家で俺を殴った時も同じ目を」 「でも違うんだ!!」 叶汰は必死に俺を説得しようとする。 「俺があの時、あの時勝太を殴ったのは中学時代の衝動みたいなもんだ。 これ以上お前をいじめる側にさせるわけにはいかない。もう、こんなことやめて欲しかった。 さっきのは勝太を中学校時代いじめてたやつらだろ? 勝太!!お前はいじめられたことがあるのに何でいじめなんかする?!お前がいじめられる側の気持ちを1番知ってるんじゃ無いのか?! だから俺をいじめから守ってくれたんじゃないのか?」 俺は結局何をしたかったんだろう。 叶汰をいじめて。でも俺はあの時本当に楽しいと思ってしまった。 いじめられた事があり、殴られたこともあるのに俺は叶汰を殴った。最低だ。 「分からない。分からないんだ。強くなりたかったんだ。中学とは違って強い自分で居たかった。」 叶汰は黙って俺を見つめる。 今にも手が出てきそうで足は震えている。 「勝太?」 叶汰が俺の方に来る 怖い、怖い、 ズッ… その場にしゃがみこんでしまった。 こんなはずじゃなかったんだ。 俺はもっと強かったはずなのに。 「勝太。俺の話を聞いて俺は中学の時勝太が俺を助けてくれたように口でいじめを止めることが出来なかった。俺は暴力でなんでも解決しようとしてしまったんだ。」 「お前まじ汚ぇよなー」 「本当。学校来んなよ」 ブチッッ 「痛てえんだよ叶汰!!」 「もうやめろ。お前らの心の方がよっぽど汚ねえよ!!」 「黙りやがれっ」 ボコッ 叶汰はいじめっ子を殴って殴って黙らした。 どうやらそのせいで簡単に人を殴るやばいやついじめでも暴力を振るうのはよくないと周りから軽蔑されるようになった。 「あいつ殴っていじめ止めたらしいで」 「殴るとか最低ー」 「そっちの方がいじめだよな」 誰も叶汰に近づかなくなったんだ。その時叶汰は気づいたんだ。 暴力はどんな理由があろうとダメなんだと。正義だと思っていた。ずっと殴って人を助けたら正義だと思っていたらしい。 「だから俺は高校では中学のやつが誰もいない遠くの高校に行くことにしたんだ。高校ではできるだけおとなしくして弱い自分を見せていたんだ。」 驚いたな。叶汰の過去にそんな事があったなんて。 だから俺はずっと口を開けてぽかーんと聞いていた。 「ずっと嘘をついてごめんな」 叶汰は強い。俺はそう思う。 だっていじめられても手を出さずに今まで。 道理で俺の拳を簡単に止める事ができたのかと納得する。 「家で殴ってごめんな。」 「いやいいんだ。俺が間違ってた。」 傷だらけと顔で叶汰に笑みを向ける。 「叶汰」 「勝太」 声が重なる。 「わけ分かんねー」 俺は笑った。 「だな。勝太…お前は強い。」 強くなんてない。 だって何も中学と変わってない。 中学の頃の同級生にも今勝てなかった。 「お前の方が強いよ。よくいじめられて手、出なかったな。」 「みんなから一線を引かれるのが嫌だからね。」 「そうか。…俺は強くなんかないよ。勝てなかった。」 「勝ち負けじゃないよ勝太、中学の時いじめられてたのに俺を助けに来てくれたろ? その勇気がすごいし、それでもう充分強いよ。」 そうか俺はあの時怖かったのかもしれない。 最初は、こんなやつを助けて後悔した。 そのせいでやっとできた友達と俺から離れていった。 もし叶汰も俺から離れていったらと怖くて仕方なかった。 でも俺は、叶汰から、俺から離れたんだ。 「悪かったな。」 俺は帰ろうとする。もう叶汰と話すなんて俺には出来ない。 失うことが怖いのに自分から手放したからだ。 「どこ行くの?」 叶汰が俺を止める。 「家に決まってんだろ。」 「俺はさっ」 叶汰が軽い足どりで俺の前に立つ。 「またあの丘で勝太と寝っ転がりたいと思う。」 強いまなざしで俺の目を見て言ってくる。 いいのか?俺が叶汰の隣に居て。 そんなことが頭をよぎる。 「大丈夫だよ。今度は俺が勝太をら守るからさ」 「へへっ…バーカ俺がお前に守られるわけねえっつの」 叶汰の肩を軽くたたく。 久しぶりの丘だ。 今日俺は1人で丘に寝そべっていない。 隣には一生こ親友、叶汰がいる。 「何見てんの?w」 叶汰は俺に問う。 「別にー」 「懐かしいね。いつぶりだろう。勝太とこうやって寝そべるの」 「分かんねえ。」 俺は叶汰と喧嘩して関わってこなかった少しの間がとても惜しい。 もったいないと思っている。 「なあ、お前と俺関わって来なかった。いじめた頃の時間がすげえもったいないと思うんだ。」 叶汰に言うと叶汰は眠っていた。 俺も目をつむる。 最近はイライラしてこの丘で寝なかったな。叶汰はどうなんだろ。 そんなことを考えていると日がかたむいてくる。 気づけば俺は眠ってしまっていた。 「勝太。勝太起きろ」 空はもう暗い。 「やべー寝てた?」 「すげえ寝てたよ。がーがーいびきかいてた。」 「帰るか」 俺と叶汰は並んで帰った。 「じゃあな」 「おう」 叶汰と別れてゆっくり家に帰る。 「俺と叶汰は似たような嘘をついてたのか。」 正反対の性格と思っていた。 俺と叶汰じゃ合わないと思っていた。 でも似たような嘘をお互いついていたなんて、案外気が合うんだな。 俺は叶汰と出会えて良かったと思う。 それは高校だけじゃなく一生。 3週間後 「えーじゃあ、校内マラソン大会の後のクラスマッチの二人三脚のペア決めをするぞー」 「勝太ー俺組まねー?」 一緒に叶汰をいじめてた竜がこっちに来る。 「あーごめん俺叶汰と組むからさ」 「は?」 ガタッ 竜は俺の胸ぐらを掴む。 「てめぇ叶汰とはもう友達やめたんじゃねえのかよ。ふざけんじゃねえ」 かなり怖い、叶汰に打ち明けたことで本当の自分を自分で認めたからか、竜に昔立ち向かい叶汰を助けたことがあるのに怖かった。 殴られると思った。 「お前殴られねぇのか?あ?こねえならこっちからいくぞ?まあ俺と組んでくれれば見逃してやるけど?」 「断る。」 「は?てめぇ正気か?」 「俺は叶汰と組む」 「ふざけんじゃねえぞ!!」 竜は俺を殴りにかかる。 でもその拳を止めたのは叶汰だ。 「何?」 とまどう竜を叶汰はにらむ。 こんな顔俺が中学の同級生に3週間前に会ってボコられた時助けてくれたときより鋭い目だ。 「な、なんだよ叶汰てめえまたいじめられに来たのか?こりねえなあ!!」 竜は俺から手を離し叶汰の方に体を向ける。 「叶汰、手は出すなよ?」 小声で耳うちすると叶汰は小声でこう言った。 「分かってるよ。もう間違わない。殴ることが正義じゃないって分かったから。」 「いい加減にしろよ?」 「な、」 叶汰の低い声は教室によく響いた。 教室の空気が凍りつく。 「今の誰の声ー?」 女子がヒソヒソと言う。 俺はとっさに叶汰を見た。 叶汰は大丈夫だろうか。急に怖くなったと一線を引かれる恐怖があるのじゃないか。 叶汰の顔はどこか怯えていた。 汗もかいている。冷や汗だろうか。 「殴れんの?俺も、勝太もお前に」 「は?たりめえだろ!!」 竜の振った拳は叶汰に簡単に止められる 「俺が勝太にいじめられた時にみたろ?お前もああなるぞ」 「ひ…すみません…」 腰を抜かす竜を解放して叶汰は俺の方に来る。 「ペア組もうぜ!?」 「ああ、そうだな」 もう叶汰は足を引っぱらない。 本当は運動もできるらしい。 「俺たちで1位とろうな!!」 「だな」 クラスマッチ当日 俺と叶汰は練習で怪物並の速さを見せたためアンカーをすることになっている。 もう少しで俺らの番だというのに叶汰が意味のわからないことを言っている。 「なあ…」 「あ?なんだよ、集中しろ」 「俺らいつまで仲良くあの丘で寝れるかな。」 「ふざけんな。」 俺らにバトンがまわってくる。 「一生に決まってんだろ!!」 息ぴったりのスタートにみんな驚いている。 もう抜かされて負けるなんてこと無い。 もし俺らかまあの時仲悪くなっていなかったら、俺も叶汰も嘘をついたまま叶汰は弱さをずっと見せ続け、このクラスマッチも負けてたかもしれない。 俺たちは変わった。 そして気づいたんだ。 正義は殴って誰かを守るためじゃない。 昔の自分と同じような状況に人が陥った時、その人の本性は簡単に隠せないことに。 「A組が1位でゴールしました!!」 放送の声とともにA組は飛びあがった。 「ナイスだー!!勝太ー叶汰ー」 「やったな叶汰」 「おう!!」 叶汰も今までにない笑顔。 まだ俺らは2年だあと1年叶汰と無駄なく過ごしていきたいと思う。 「あーあ疲れたー」 いつもの丘で寝ころぶ 風が体をなでて気持ちいい 「だな。でも楽しかった。自分を出すのが怖かったけど。いじめられていた時よりみんなの足を引っぱるのり全然いいや。」 やっぱり、演技だとはいえ疲れるだろう。 俺もたくさん神経を使った気がする。 弱くていいと分かって気が楽になった。 「来年もさぁ!!」 俺は元気よく叫ぶ。 「丘で寝ころぶよな!?」 「当たり前だろ」 うれしいなあ。 俺は1番青春してると思う。 青春ってこういうことを言うんだと俺は思う。 性格は正反対な俺らだけど。 自分の本性を隠していた似た者同士だ。 これからは、ありのままの自分で ありのままの叶汰で 何年経っても崩れない友情を築いて前に2人で進んで行こうと思う。 永遠に 終わり

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沢山の良かったは突然に

雨が降っている。 いつも思うが雨も晴れも私にとって憂鬱だった。理由なんてないのかもしれない。何となくあるとするなら雨はみんな嫌いだし気が滅入る。晴れは私よりもずっと清々しくて私をバカにするかのように眩しくて嫌いだった。 曇りは好きなのか?と聞かれても好きだとは答えられない。曇りなんて私の心までもが曇る。 雷はうるさくて私の心が暴れるからダメで晴れてるのに雨というのはまるでどちらか決められない優柔不断な私のようだと思い嫌になる。 唯一好きだと言えるとすれば雪だ。 白くて美しいと個人的には思うし心までも白くなりそうな浄化されそうな感じがするからだ。まあロマンチックってのもあるだろう。私には似合わない言葉だなと自嘲する。 「おはよう晴香。」 母親がそう私の名前を呼ぶ。 「うんおはよう。」 素っ気ない返事をする。 母親は反抗期だと思ってるのか気にしてない。私はずっとこの名前が嫌いだったら名前負けしてる気がする。晴香だなんて。晴れという漢字が入ってるのに私の性格、顔全てに雲がかかっていて似つかない名前だなと思う。 なんでこんな名前にしたのか母親を恨みたくなる。 「パン焼いてあるからね」 「うん。ありがと。」 うちの家は母子家庭だ。 離婚じゃなくて父親の他界だ。 それに母親は車椅子生活だった。 あの時から。 あれはまだ私が小学4年生ぐらいの時だろうか、いつも仕事で忙しい父親が日曜日珍しく遠出しようと言ってきた。私はうれしくて飛び上がった。母親もその時はちゃんと自力で立っていたしみんな健康そのものだった。 そして私たち3人は遊園地に遊びに行ったのだ。 近くのパーキングエリアに1度車を止めてトイレ休憩を取ろうとした時猛スピードでトラックがこちらに突っ込んできた。 「逃げろ晴香!琴音!」 琴音は母親の名前だ私はこっちの方がまだいい名前だなと思っている。 父親がそう叫んで私たちを抱えてトラックを避けようとした。 でも父親は口だけは頼もしいが力はあまりないか弱い人だったため1人で2人を持ち上げて即座に移動すると言うのは出来なかったようだ。 仕方なく父親は私たち二人を突き飛ばした。私は急いで手を地面についた。 母親は直ぐに手が出ずに足で体制を整えようとしたため足を強打したんだ。 「いった。」 「あなた!!」 母親がそうやって父親の方を見て叫び手を伸ばした。 キキーーッッ ドン! ブレーキ音と鈍い音がした。 私はすぐ目を瞑った見たくなかった。でも母親の悲鳴でゆっくりと目を開けた。 「あなた!あなた!」 そこには見たこともないほどぐちゃぐちゃになった父親がいた。 「お父さん?」 小4の私はわけも分からず混乱した。 母親は見せないように私の目を覆う。 その後のことはよく覚えていない。 トラックの運転手は過失運転致死傷で逮捕されたが死んだ人は戻らない。いくら罰せ様と死刑にしようと 失った人間が生き返るわけじゃないのだ。 父親は私たちを庇って死んだ。 楽しい楽しい久しぶりの家族での遊園地は行くことなく終わった。 母親は足に重度の怪我を追って骨折。リハビリに通っているが治る見込みが薄いため車椅子生活をしている。 「行ってきます。」 「行ってらっしゃい!」 時々母親は悲しいような寂しい顔を見せる。その顔の心情は私には読めない。 でも空元気を使って私を送り出したことは確かだった。 雨の中私は傘をさしてとぼとぼ歩く。 傘は母親が中学の入学祝いで買ってくれた傘だった。 「…」無言で歩く私を近くを通る人は 怪訝な目で見てくるのがわかる。 視線が痛い。私はより俯く。 ポツポツと傘に降かかる雨の音がうるさい。 ふと近くのコンビニを通ったので顔を上げる。そこには若い頃の母親が映っていた。私も少し母親に似てきたのだろう。 似なかったのは性格くらいか、そう思うとこの母親に生まれてきたのが馬鹿らしくなってきて傘を強く握った後傘をおろし乱雑に閉じてコンビニのゴミ箱に突き刺した。 ガサッガタン! 勢いよく刺したのでゴミ箱が倒れるそれもお構い無しに私は学校へと歩き出した。 「ちょっちょっと晴香びしょびしょじゃん!どうしたのよ」 友達の海夏が話しかけてきた。 「い、いやぁ傘が途中で壊れちゃったんだよねえ」 笑いながら言うと海夏はびっくりしたような顔をして言った。 「え!?そんなに風強かった?」 「うちの使い古してたから」 適当な嘘で誤魔化す。海夏は騙されやすいのでそんな適当な嘘でもあっさり信じてくれた。 私は正直海夏の顔には裏があると思っている。 もちろんみんな表裏はある。 私だってみんなにはいい顔してるけど裏では陰気でネガティブでゲスい人間だと思っている。 海夏はそれの上を行くと思っている。ただの噂を信じるのもあれだが、海夏は何度も人の秘密をばらしたこともあるし人の彼氏を平気で取るし。 みんなからぶりっ子と言われて嫌われている。 少し腹黒い人間だとみんな言っている。 本当にそうだとは思えない喋り方も普通だ。でもそうやって信じていると後で省かれたり痛い目にあうのだ。だから私は適当な相槌を海夏にはしている。いつでも距離を空けれるように。 でも海夏は私にばかり着いてくる。 なにか作でもあるのか、構ってくれるのが私しかいないのかただ本当に友達と思ってくれてるのかは分からない。 でも信じきらないようにしている。 正直家族以外は信用するべきじゃない。 「晴香?」 「え、あ、ううんなんでもない」 そんなことを考えていたら海夏に変に思われたら大変だ。そしたら私は完全に一人になってしまう。 それだけは何がなんでも嫌だった。 腹黒だろうが1人そばにいる人間がいないとみんなから変な目で見られるだろう。恥ずかしいと思うし三者面談で母親に友達がいませんとか言われたら大変だ。私は恥ずかしい思いをするし母親に心配をかけてしまう。それだけはどうしても避けたかったのだ。 なのにまさかあんなことになるとは。 授業が終わるとすかさず私の席に来るのは海夏だった。 「ねねー今日の昼どこで食べるー?」 「んー、雨降ってるし空き教室かな?」 「おーけー適当に先生に鍵借りとくー」 「ありがとう」 笑顔で返事をしたつもりだ。 自分の笑顔がどんなものか分からないから不安になっていたがそれはもう仕方ないどうにでもなれ。 昼の時間になると一瞬で海夏がお弁当を持ってやってくる。 「早く行こ1回理科室の借りた」 「わかった」 私はそうしてバックを開けてお弁当を取り出そうとしたんだけど。 「あれ、」 「どした?」 「お弁当忘れたみたい」 すっかりキッチンからお弁当を回収するのを忘れてしまっていた。うっかりしているなと自分でも思う。 しかたなく購買で買うことにした。 「ごめんね海夏」 「ううん大丈夫だよ早く買っておいでー」 話し方は丸くて優しい雰囲気のある海夏だが、こんな人に裏があるとは考えたくなかった。 まあみんなそうだろう。 私なんかの裏を知ったらみんな絶句レベルだと心底思う。 「何買ったー?」 購買から出てくるとすかさず海夏が質問する。 私は焦らず淡々と質問に答える。 「今日はあんぱんと牛乳にしたよ。」 「いやなに?w張り込みー?w」 クスクスと笑う海夏を私は軽く叩く 「なわけー」 そう言ってまるで本当の友達かのような。青春を楽しんでるかのような会話をする私たちを皆はどんな目で見るのだろう。仲の良い友達として見るのか、 海夏に騙されてる可哀想な私として見るのか、不釣り合いな二人と見るのか。 それは人それぞれだろう。 お昼はたわいのない話をして時間を潰す どちらも多分心そこから楽しいとは思ってないだろう私も海夏も少しは顔に出てるはずだ。 それはお互い気づいてるに違いない。 それでも私たちは居場所を作るためにしかたなく仲良くしてくれる人間につかなければならなかった。 放課後になってやっと別々になれると安堵した。 私たちは帰る道は反対方向どちらもそこまで二人でいたい訳では無いので どっちかに着いてくとかはしない。 「じゃまた明日ねー晴香ー」 「うん!じゃあねー海夏ー」 この挨拶は何度目だろうか。 また行きと同じ道を辿る。 毎日飽きるほど見てきた景色だ。雨は上がっていた。 傘を捨てたコンビニを通る。 母親にあら傘は?と言われるのは気まずいので持って帰ることにしたそしてゴミ箱に行くと傘がなかった。 あー、回収されちゃったか。と落胆するもしかたないと思いまた家に向かう。 家に着いて鍵を開けようとして逆の方向に回ることに気づいて鍵が開いていた。 「もう、お母さん本当に不用心」って思いながら玄関を開けて中に入る。 いつもより寒気がするほどしーんとしている。 「ただいまー、おかあさーん?いないのー?」 居ないはずがない。靴はあるし。 でも家の空気がおかしかった。 重苦しいというか。 嫌な予感がしてならなかった。 リビングに、リビングに行くのが怖かった。でもここでずっとたってる訳にも行かず、私はゆっくりとあゆみすすめリビングのドアに手をかけた。 ガチャ…… ドアの向こうには信じられない光景があった。 私は息をのむ。 「…っお母さんっ!」 カバンを放り投げ 倒れてるお母さんの元に駆け寄った。そこには散乱した私が忘れたお弁当と 私がコンビニで捨てた傘が落ちていた。 私は喉がきゅうっと締まるのを感じた。 やってしまった。 私は深い後悔に襲われる。 お母さんの近くには沢山の瓶に入っていただろう錠剤が数粒散乱している。 しかもその瓶の箱が近くに落ちているということは新しいのに違いないそれなのにこれだけしか錠剤が散乱してないということは相当な数飲んだはずだ。 私はショックと後悔で涙も出なかった。 母親は私が弁当を忘れたことに気づいて届けようとした。しかしコンビニのゴミ箱に自分が娘にプレゼントした傘が乱雑に捨てられてるのを見てショックを受けて自殺してしまったんだろう。 だから弁当も届けることなく家に落ちている。 私はこの現実を受け止めきれなかった。 でもこれは事実であり、現実だ。 私はフラフラと体を起こし電話を手にして警察に通報した。 これは正しい判断だと思う。 だいたい家に帰ったら親が倒れてたなんて警察以外にどこに電話をしろと言うんだ。父親がいたらまだしもこの世にはもう居ない。誰にも助けを求められない。 その後警察が来て私は長い事情聴取を受けた。私は自分の予想である。母の自殺の理由を淡々と虚ろな目で語った。 警察はありがとう。とお礼を言って去っていった。 私は自室に戻りベッドに横になる。 冷静さを取り戻して気づいたことだが私はこれからどうするのだろう。母親も父親もいない。なにか施設に預けられるのだろうか。それとも一人暮らしするのだろうか。私は後者の方を選びたかった。 施設は監禁されてる気がするというか縛られてる気がしてどうも居心地が悪いと思ったからだ。 後に警察から電話が来た。 私は施設か一人暮らしが選べるらしい。 私はもちろん一人暮らしで、と言った。 葬式は親戚の人がやってくれるらしい。私はそれに参加する。 葬式に参加するのはこれで二度目だ それも親戚が死んだとかではなく。 生みの親、両親で2回。みんなが聞けば悲しい経験だ、可哀想と思うだろう。 別にそれでも構わない。 「晴香ちゃん。」 葬式の日私はたくさんの親戚の人に励ましてもらった。 別に励ましが要らない訳じゃないけれどその励ましにいちいち笑顔ではい、ありがとうございます。と頭を下げるとなると苦しかった。 「晴香ちゃん一人暮らしなんだって?良ければうちにおいでよ」 昔1番私の家に泊まりに来ていたおばあちゃんが言った。 でも私はそれに断った。 「ごめんなさい。今の学校を離れるのは寂しいからここにいさせてもらいます。」と、もちろんほぼうそに近い。寂しいという思いはこれっぽっちもないこれから先も卒業するときもこの学校を去るのが寂しいと思う時はないだろう。ただほかの学校で友達ができるかと言ったら保証は無い。だから今は安泰である海夏と仲良くして学校生活を送ることがなによりも安全でまだ楽なのだ。 翌日私は重い足を動かして学校に向かう。いつもできてるパンの匂いはなく、しーん誰もいないキッチンに私は朝立つ。適当なご飯を作ってそれを口に運ぶ。美味しくなかった。 母親の作った料理がこんなにも美味かったんだと今更ながらに知って涙が出てくる。葬式でも出なかった涙だ。 学校に着くといつもと様子が違うことに気づく。みんな私もいつも以上に、今まで以上に避けている。というか冷たい視線を送る。私は何かしたのか不安に駆られるがまあそれは慣れてるから別にいい話だ。そう思っていたのに。 「あら、おはよう晴香」 いつもより嫌味が混じったような声で話しかけられて背筋がゾクッとした。 「お、おはよう海夏」 私は笑顔で返事をする。その返事も虚しく私は海夏に思いっきり突き飛ばされた。 「邪魔よ。どきなさい!」 「いった。海夏?」 とまどいながらも必死に目を海夏に向けて問いかける。 すると海夏はギロリと私を睨みつけた。 体が硬直する怖くて動けない。なのに私の耳はハッキリと海夏が口にした言葉を聞き取った。 「可哀想に。母親も死んだんだ。 ご愁傷さまー」 軽すぎる、友達の母親が死んだのに軽すぎる。私は泣くのを堪えながら口を動かす。 「どうしてそんなこというの、、?」 海夏は当然のように顎をクイッと上にあげて微笑む。 「まだ気づかないの?お前は私の手のひらで踊らされてたんだよ!ばーか!」 強い口調で罵倒され私の体もみるみる萎んでいく気がした。 「可愛そすぎて泣けてくるわー」 そう言ってハンカチで目を擦るが本当は泣いてなんかいないのは知っている。 よく漫画で見るいい子ぶるシリーズだろう。私はその日から軽いいじめを受け始めた。誰がどこで知って海夏に知らせたのか分からないがみんな嘲笑うかのような視線を私に向けニヤニヤしていた。 ここで私は彼女、海夏の性格の悪さを初めて思い知らされた。 だから私は親もいないし心配をさせるという心配がないので学校にいくことをやめた。 数日ほどだった頃家のインターホンが鳴り私の体はびくっと震えた。 「はい、どちらさまでしょうか」 「晴香ー」 その声は海夏だ。 聞き覚えのある。でも私は決して玄関を開ける気は無い。 「帰ってよ。」 それだけ言って私はインターホンの通話ボタンを切る。 するとまたインターホンもう私は出なかった。めんどくさい。 するとカシャカシャと玄関先で物音がした。そっと行ってみるとポストにプリント類がくしゃくしゃに入れられていた。 私は眉根を寄せてそれを取り出すと恐ろしいことが書いてあった。 両親無しの可哀想な晴香。 不幸者の晴香 ご愁傷さまー 晴香も早く両親のところいけよ 死ね。死ね。 早く死ね。 と書かれていた。 「ひっ…」 小さな悲鳴をあげた後プリント類丸めてゴミ箱に勢いよく捨てた。 「う、あ、う」 嗚咽が漏れる。 私はそこで泣き崩れた。 足にも手にも力が入らなかった。 するとコンコンと窓ガラスを叩く音が私は真っ赤な目で窓ガラスを見るとそこには見たこともない人が立っていた。 「大丈夫ですか?」 そう言ってるように聞こえる。 でも私はその人を知らない。 同い年だろうか、学校が一緒なのだろうか。 分からないが私に大丈夫かと問いかけているのが口の動きでわかる。 私は俯いて黙り込む。 それでもその人は動かず私がドアを開けるのを待っている。 私は渋々ドアの鍵を開けた。 カチャ、 「大丈夫ですか!?」 大きな声で聞いてくるその人はすごく苦しそうな顔をしていた。 私の全てを知ってるような顔。 そういう顔はムカつくからやめて欲しい。 「大丈夫です。ありがとうございます」 そういってその人を帰られそうとしたがその人は帰ろうとしなかった。 「あのよければ僕の家に行きませんか?」 突拍子のないことを言い出す男性 「は、は?」 私はつい聞き返してしまった。 「ここは危険です。僕の家に来て平和に暮らしましょう。」 平和?自分の家が平和と言えるだなんて羨ましいなと皮肉に思う。 「あの、私は大丈夫ですから。」 「晴香さん!」 肩を捕まれ身構える。 でも直ぐにその手は外された。 「す、すみません。つい。 僕は晴香さんの、、」 そこまで言って男は話すことを辞めた。 「どうしました?」 気になって尋ねると男はパッとした笑顔になり首を横に振る。 「大丈夫です。すみません。」 それでも浮かない顔でいる男を私はたしなめるようにリビングの椅子に座らせた。 「なんかすみません。」 「いいですよ」 久しぶりに食器を取り出しお茶を入れる動作を行う。それだけで胸が苦しくなりそうだ。 途中で私は悲しさをこらえきれずコップを落としその場にうずくまった。 パリーンとコップが割れる音。 それを聞いた男はすぐに駆けつけてきた。 「大丈夫ですか!?なにかありました?」 私はしかたなく両親を無くした経緯を話た。 男は口を挟むことなく。 うんうんとずっと聞いてくれた。 「母が死んだんだね。」 急に敬語を辞めた男に私はびっくりして 男を見つめる。 「あ、ごめんなさい。」 不思議な人だなと私は心底思う。 なんか寂しそうな目をしていて昔から知ってるようで知らない。そんな近くて遠い存在にその男は見えた。 男はその後私を散々慰めてくれた。 なぜ初対面の人間にこんなことが出来るのか尋ねたが僕はお人好しなんですと言ってクスッと笑ってまた来ますといって帰ってしまった。 急に疲れが来たかんじがする。 私はソファに腰掛けて呼吸をする。 「ふー、何だったんだろ」 それから私が学校を休むと毎日のように夕方私の家に男が来るようになった。 私はその男を何故か信用できた。 親近感が湧いたというかまあそれは彼の異様なオーラが放ってるのかもしれないが自然と家に招くようになった。 「最近晴香さん僕をすぐ入れてくれるね」 にこっと微笑まれ私は恥ずかしさを感じ、頬を赤らめた。 「そうかな?なんか信用できるって言うか」 私はごもごもと口を動かす。 男はよーく耳をそばたてて聞いていた。 なんて優しいんだろうと思う。 「そういえば自己紹介をしてなかったね僕は小柳歩夢。宜しく」 私は彼の苗字に違和感を覚えた。 「こ、小柳?」 「そうだよ?」 「私も小柳だよ。」 「えー偶然だね。」 小柳なんて珍しい苗字が2人もと私は内心いや顔に出てたかもしれないがビックリした。 私はその時から少し引っかかる感じがしていたが気のせいだろうと放置したまま 学校の人として接した。 時々私は学校に行くが状況は変わらなかった。 「またきたのぉ?晴香ー?」 前まで優しかった海夏はもう居ない。 軽蔑したような罵るような目や言葉で私を攻撃してくる。 私は拳を握り、ギュッと唇を噛んで耐えるしか無かった。 そんな生活を1ヶ月ほど続けていたある日、また海夏が私のところに来て罵ってきた。 「親もいない可哀想な娘。 でもいいなぁ、怒られたりしなくてぇ」 ちらちらと私をバカにするような目でみては微笑む。悪魔の目をしていた。すると 「やめろよ」 怒ったような低い見知らぬ声がした。 私と海夏達はサッと声のした方に目を向けた。 「君は、」 私はボソッとつぶやく、でもその声は届かなかったようだ。そこにいたのは私の知らない小柳歩夢だった。 すごい怖い顔をして海夏たちを睨んでいるのがわかる。 「は?あんただれ?」 海夏は強気に出る。 歩夢は私たちより年下なので海夏がそれを知ったらキレ散らかすだろうと思っていた。 「あんた1年?あんたうちらが何年生かわかる?2年生なんだよ。何敬語も使わずにうちらに命令してんだよ!!」 海夏は思いっきり歩夢をつき飛ばそうとしたが歩夢はビクともしなかったまるで足と床が接着剤でくっついているように。 「は、なんなのよあんた」 「謝罪しろって言ってんだよ。 晴香に謝罪しろって言ってんだ。」 いつも穏やかな口調で優しい性格をしている歩夢だが怒るとこんなに怖いのか、と自分でも歩夢の声にいちいち震える。 耐えきれなくて私は歩夢を止めに入った。 「い、いいよ歩夢」 「な?何?彼氏?」 私が下の名前で呼んだことがいけなかったらしい。海夏はまた違う怖い顔色に変えて私を睨みつけてくる。 「彼氏じゃない!」 キッパリと言い張る。それを歩夢はそっと阻止して私の目の前に経つと舌打ちをした。 「チッ…」 その音は周りの人達の動き、お喋りを止めるほどの意欲だったようだ数秒周りが歩みを止め、こっちを凝視する。 私は恥ずかしさで今にも逃げたい気分だ。でもそこで逃げたら歩夢に申し訳なくて、逃げる方が余計目立つし、怖くて足がすくんだ。 「な、なによあんた1年のくせに生意気ね」 海夏は多少ビビりながらもまだ歩夢につっかかってくる。 しかし諦めたのか今回は見逃してやると 漫画特有の捨て台詞を吐いて海夏はいってしまった。 「ふぅ、」 歩夢はほっと一息私はいやいや全然ふう、じゃないんですけどとツッコミを入れた。すると歩夢は申し訳なさそうにまたいつもの顔に戻った。 「ごめんね。少し目立っちゃったかな?」 その優しい目を見ると私の心は浄化されていく気がした。 だから私は全然大丈夫と言ってニコッと微笑む。 さっきまでの静寂は嘘のようにみんな何も見てないかのように歩き始めお喋りを再開させた。 歩夢はそのまま教室に戻っていく。 私は重い重い足取りで教室へと向かう事にした。 両足に鉛を付けられてるような錯覚に陥る。何もつけられていないのに呼吸が荒くなり苦しい。 「はあ、はあ、」 息が上がって呼吸を整えていると後ろからスタスタと足音が聞こえる。 通行の邪魔かと思って少し廊下に避けようとした。すると肩を軽い力で掴まれた。 驚いて後ろを振り返ると歩夢だった。 「歩夢。」 「こっち。」 今日の歩夢はいつもと違うみたいだった。さっきといい今も何も言わずに連れ出すなんてこと無かったのに。 私は不安に襲われる。 その不安をよそに歩夢は私を屋上へ続く階段へと手を引いて歩いていく。 抵抗するのもなんか悪いので黙ってそれについて行く。 屋上の扉の前、歩夢は足を止め扉をのぶを回す。ガチャ、と扉が開いた。 いつも立ち入り禁止で鍵がかかってるのになんで開けられるのか分からないがそれは振れないことにした。 歩夢はふうっと息を吐いて私を見る。 「とりあえず座ろう」 そう言って屋上の地べたに2人して腰を下ろす。 「無言でこんなとこまで連れてきてごめんね。授業に出たかったらいつでも言っていいから」 こんな時も私の気遣いを忘れないところやっぱり歩夢だなと思いながら首を振る。授業に出るなんてまっぴらごめんだ。教室にさえ入りたくないのに。 「それならよかった。」 そう言って歩夢は空を見上げる。 「僕と君が同じ苗字なのはね…」 そこで視界がぼやける。 「歩夢?」 私は歩夢に呼びかける。しかし歩夢はこっちを向くことなく。 視界が戻ることなく。思考はシャットダウンされ、目の前は真っ暗闇になった。 「歩夢。」 真っ暗闇の中私の心はそう言っていた気がした。 「晴香!晴香!」 私は意識がどんどんハッキリしていく中目を開けた。 ピッピッピッピッと機械音が聞こえる。 真っ白の天井少し横を見ると真っ白なカーテン。そして何人かの人が私の顔を覗き込んでいる。 誰だろうと思い目をこらすがまだハッキリとまではそれがなんなのか分からない。 ずっと目を閉じていたのか自分の目がかすれている。 「晴香。」 「姉ちゃん。」 「晴香。」 私の名前を呼ぶ2人の声と姉ちゃんと呼ぶ1人の声。 私は一生懸命目を凝らしその声の主が誰なのか探る。 視界がはっきりしていた頃私はハッと息を呑んだ。 「お、母さん。お、父さん。あ、歩夢?」そこには母親、父親、弟らしき人物がいた。 「そうよお母さんとお父さんと弟の歩夢よ」 お母さんが泣きながら言っているのがわかる。私の顔に何滴もの水が落ちる。 これは涙だった。家族の涙だった。 ガラガラ。医師らしき人物が入ってきて私の体を起こす。 少し朦朧とする意識の中私は家族3人の顔を見る。 あー知ってる。この3人の顔。 ずっと見てきた馴染みのある顔だ。 今までのは夢だったんだ。そう思うと安堵と共に涙が出てきてしまった。 少し恥ずかしかった。 どうやらあの時遊園地に行く手前のパーキングエリアでトイレ休憩をしようとした時トラックが突っ込んできたのは小4の話ではなく私が中学一年生の時だったらしい。そしてお父さんが私とお母さんとそれから記憶になかった弟を守ろうとして盾になった。でも私はそれを阻止したようだ。 「お父さんダメ!」 そう言って私は母の声を無視してお父さんを反対側に突き飛ばした。 お父さんが転けそうになるのを何とか耐えたが私はそのせいでトラックに跳ねられずっと眠っていたらしい。そして夢の中で色々な記憶が混じったものを見てしまったらしい。 「よかった。」 そう思った。家族が誰も死んでいないのもそうだが。 私が母がくれた傘を捨てていなかったこと。夢の中で弟は後輩として助けに来てくれたのかもしれないということ。 沢山の良かったが私の中にできる。 そしてもう1つ良かったことがある。 病院の窓から見える景色は 晴れだった。私は初めて私の名前にあった天気だなと思えた。 目覚めた日が晴れでよかった。 私の名前が晴香でよかった。 みんな生きててよかった。 また私は嬉し泣きをしてしまった。 退院をしたあとドキドキしながら学校に行った。あんまり記憶が朦朧としていて ごちゃごちゃで学校のみんなは夢のような人達なのかとか考えてしまったが、意を決して教室のドアを開ける。一斉に視線がこちらに集まり私は恥ずかしさと気まずさで俯く。 でもみんなからの視線は痛いものでは無いと感じた。 だから私はそっと顔を上げた。 そしたらクラスのみんなニコニコしながら私を迎えてくれた。 「晴香ーーー!!元気だったー!!まじ心配したー!!」 海夏が満面の笑みで手を振ってきたので私も振り返す。 そしてみんな口々にこういう。 「大丈夫だった?」 「ノート見せてあげるよ!」 「もう怪我は大丈夫なの?」 「寂しかったよー」 マイナスな言葉をかけられると思っていた私は拍子抜けしてしまい。 フッと鼻で笑ってしまった。 「みんな!ありがとう!」 私はそう言ってクラスの輪の中に入っていった。

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可哀想

私って本当に可哀想だと思う。 そう思わない? 恋愛にも恵まれないし 好きな人にLINEはブロック。 縁まで切られちゃって。 本当に可哀想。 私って本当に可哀想だと思う。 なんでそう思わないの? 特別頭いいわけじゃないし。 数学で37点なんて取っちゃって、 いつも80とかなのにね。 すごく可哀想。 私って本当に可哀想だと思う。 確実にそう思う。 友達にはブスって言われ。 最近友達のふざけた悪口が酷くなる。 もういい加減にして欲しい。 私って全てにおいて可哀想。

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可哀想

あなたは私が死なせない。

私は美香、実は好きな人に嫌われている。 まあ自業自得だし1度彼を手放したのは私だ。でも、私は未練たらたらで未練を乗り越えることが出来なかった。 そのまま2年間中学校生活を送っていた。 1年生の頃は仲が良かった最高の友達だったのに、、 あれは約2年半前のこと私はほかの友達とゲームしていたんだ。そこに彼が入ってきて最初はあんまり仲は良くなかったんだけど次第に彼とゲームをするようになってメッセージアプリでやり取りをするようになった。 私はそこですごく楽しくて彼に恋愛感情を抱いたんだ。 そこからも仲が悪くことは無くいや、少しあったけど彼の心の広さでなんとか仲直りしてまた話すという感じだった。 あのころはほんとにすごく楽しくて 毎日のメッセージアプリでのやり取りに私は心が高ぶるのを感じた。そして彼に好きバレした時は終わったかと思ったんだ。でも彼は何事も無かったかのように接してくるし逆にどんなところが好きになったのかとか深入りしてくるくらいに でもそれが私は嬉しかった。関係が壊れなかったからだ。 それから上手くいっていたと思ったのに..... 3月の14日、ホワイトデーの時だ私はバレンタインにチョコを渡してそのお返しを家に来て貰うという打ち合わせを彼としていた。でも全く来なかった。 メッセージアプリには「ごめん少し遅れる」というメッセージが来ていた。 来るのかな、と不安になっていたがちゃんと来てくれた。美味しそうなチョコのお返しを貰った。嬉しいな当分私はそのチョコの箱を大事そうに飾っていた。 時期があったもう遠い過去のように思えるしとても最近のように思える。 思い出す度に涙が出そうなくらい深い思い出だし忘れられない思い出なんだ。 そんな悲しんでる場合じゃないか。 そうしてホワイトデーも無事に終わってまた仲良くメッセージアプリでのやり取り!と思っていたんだけど、その後にメッセージアプリに知らされたのは衝撃的だった。 「俺菜々美と付き合った。俺から告ったんだよねホワイトデーお前の家来るの遅くなったのは告白に何分も菜々美の家でうろうろしてたからなんだww」ときていた。 何となくわかっていたあの二人が両思い何じゃないかぐらい。 菜々美は私の友達だすごく仲が良くて私の恋を、私の恋を応援していたはずだったのに。それでもまだメッセージが絶えず読み進めると「緊張が解けてハグしちゃいました」と来ていた。 ハグ、スマホに何粒か水が落ちた。 泣いていたんだ。これよりも過酷な未来があるなんて知らずに私はこんなことで泣いていた。 泣いていた。 泣いていた。 それでも私達はあまり変わることはなく話したし彼の恋愛相談は乗った。 少し迷ったが好きな彼のために彼の恋を応援しようと決めたんだ。 決めたはずなのに、私は未練を捨てきれず彼に諦めろと言われる始末だった。 こんなに心をズタズタにされたのは初めてだった。 悲しい、悲しい上手くいっていたと思ってた恋愛は崩れた。跡形もなく。 それから彼と私の亀裂は裂かれるばかりどんどん距離はあいていった。 LINEで話すのも最初の頃のちょこちょこと変わらなくなってきた。 私は思いきって自分の恋愛相談をした。 もう私は彼を諦めやっとほかの男子を見つけたところだったから。 でも彼は 「あっそ」とか「いいんじゃない?」 とか「へー」とかそんな一言、1文で終わらせてしまう。私は「反応薄いなーなんか他ないの?」と言ってみたが「しらん」ときてそれから知らんの一点張りだった。そこからどんどん口論に発展してしまった。 「なんかあった?」 「ねえよ」 「話しなよ」 「ねえって余計なお世話なんだよ」 「そんなこというなよ」 「いらねえって言ってんだろ」 沢山の強い口調の言葉が音を立てて私の画面に現れる。 私はその時ふと思った。 友達をやめよう、縁を切ろう、と そうすれば彼は私の呪縛から解放され私は彼を完全に忘れることが出来るとそんな甘い考えを持ったからだ。 私はそのまま思いとどまることなく縁を切った。彼はとめずに呆気なく縁を切られてしまった。 私のことが嫌いだったらしい。 嫌いだと聞いた時私は泣きそうだった。 後悔した、縁切ったことをもう遅いと分かっていたけれど、和解を試みた。今思えばばかばかしいよね。 そしたら彼は「俺はお前が嫌いだから友達には戻らない、話終わり」と言って話を終えられてしまった。 もう無理だと思った。 こんなに崩してしまったんだ。戻るわけが無いそれに最後に土台を崩したのは私自身だ、今更後悔したって遅かった。 そこで私は大事な友達を失ったことに気づいた。その時私はまた彼にすきの感情を抱き始めてしまった。 彼が好きだ!!!そう心が叫んでいたもうこれをかき消すことは出来なかった。 何ヶ月あれからたっただろう私はもう卒業生になっていた。 状況はあまり変わらなかった。疎遠以下 ほぼ知り合い程度という関係性だった。 もう私の思いを伝えることも出来ないんだと思ったそのとき 誕生日、、彼の誕生日が近いことに気づいてしまったんだ。 誕生日プレゼントをあげてみよう、 もらってくれないかもしれないけどあげてみる価値はあると思ったんだ。 私はプレゼントの用意と何を話そうか何か気持ちが伝わればそれでいいとよくよく、考えたんだ。 そして..... 当日になった。 「ねえ、これ、」 そう言って震える手でラッピングされた小さめのプレゼントを渡した。 「誕生日おめでとう。私、お前がいつでも頼れる人間になるよ、お前を守ってお前に毎日笑ってて欲しいな。 ごめんな。私だってお前がいないのは寂しいんだよ何か足りない感じがして 毎日毎日お前と話せないだけで環境がガラッと変わったみたいで。でも、お前が生きてればもうそれでいいやって思ったんだよね。 涼(りょう)、もう死のうとなんかするなよな、ありがとう」 長いかなそんなことを考えながらボソボソと言いたいことを並べる 練習してないから変な人みたいになってしまった。 最後私は涙を流していた。 立ち去ろう泣き顔は見られたくない。 笑顔でさよならをいうつもりだったのに、予定は狂ってしまったみたいだ。 その後私は頬をツー、とつたる綺麗な透明な水を拭うことなく、一人小さく「さよなら...」と呟いた。 近いはずなのに遠くに私の名前を呼ぶ先生の声が聞こえる。 クラクションがなった。 キキーーッッとブレーキ音 ドン!... と大きな衝突音が聞こえた。 大丈夫かな涼じゃないよね、と心配になったでも違かったこれは自分が自らとった行動、選択だ。 「美香さん!美香さん!」 先生の声が聞こえる。 目はあかない。 体も動かない。 でもこのたくさんの悲鳴やざわめき私を呼ぶ声に涼の声は微かに聞こえたんだ。 「美香バカ!!...」 少し強すぎた彼を自分の目で探して見ておきたかった。 どんな表情なのかな、 泣いていたかな。 知りたいけどもう目はあかないし、開けられない。 それでいいんだ。 彼を見てしまうとまた生き返りたくなっちゃうじゃない? 私後悔の人生だったからさ。 大丈夫、あなたは私が死なせない。 引き止めるから。ずっと守るから。

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あなたは私が死なせない。

彼の方程式

なんで? どうして? 疑問の二乗 彼の私に対する嫌いの方程式 私にはこの方程式の解を解くことは 難問だった 解いても解いても答えが出ない 答えのない方程式なんかじゃないよね? ねぇ、答えてよ 答えを教えてよ 私の嫌いな理由の解を 嫌いという方程式の解を もう降参降参だから それでも彼は教えてくれなかった まだ頭の中に浮かぶ方程式 いくつか考え方を変える でも一向に答えは見つからない この方程式は彼にだけしか解くことが出来ない もしかしたら解なんて無いのかもしれないね 嫌いってそういうことでしょ? それなら疑問の二乗はなくなる この方程式は諦めるべきだ 次の問題に進もうよ だめだ知りたい、この方程式の解を それまでは次には進めません

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彼の方程式

終わり

全てが終わった 恋も、心も、人生も、全部全部終わった アホらしい バカらしい 自分はバカでアホで 愚か 哀れだ こんなに好きな人から避けられて 同情なんていらない もう終わったことだ 終わったんだ 恋も、心も、人生も、全部全部失った もともとそんなものいらなかったんだよ 私というちっちゃな存在には 恋?なにしてんの? 心?そんなものいらない 人生?無駄な時間じゃん 恋愛感情も、普通の感情も捨て去りたい 偽りの笑顔をずっと貼り付けたい そんなの簡単だよ 全て終わった人間には何も残らない 恋愛なんてもってのほか 青春なんて求めてない 何もいらない 全て消えた人間に何を与える? 何も無いだろ? いらないんだよ 優しさも同情も 全部全部消えちゃえ

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終わり

過去

過去の話 これは過去の話 切ない過去の話 引きずってる過去 これは現在進行形 楽しかった過去 これは過去形 楽しかったから引きずってる バカみたいかな もう嫌いなのに 自分だけ好き これは現在進行形 おわろ? 諦めた 忘れた 諦める 忘れる 現在進行形にしよ? いずれこれも過去形にできるように 多分出来ないけど 頭の中の過去形はいつまでも 楽しい彼とも思い出 頭の中の現在進行形はいつでも 相手は嫌い 私は好き これは過去の話 自分の気持ちは現在進行形の話

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過去

有限

楽しいことは無限欲しいな あ、でもそんなにないか 有限で短い もっと欲しいのにな あれもこれももう終わったよ 有効期限切れちゃった 有限ってやだね 無限なら楽しめたのに 有効期限が切れました 頭に浮かんだ文字 売り切れのように もうない時間 もう戻らない時間 もっと話したかった もっと遊びたかった 無限だと思ってた ずっと続くと思ってた でも違ったね 私たちの時間って有限だったんだ 残念 君は無限は許さないかな 無限なんてさせないかな だってもう無いもん 売り切れだもんね 入荷なんてもうしないよね だって私の事嫌いだもんね

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有限