片白玲

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片白玲

カントリーマアムと推理小説が好きな田舎者です。 ユーザー名は適当に決めました。

魔王様日本旅行記2 北海道①

第一話 北海道① 勇者の剣が振り下ろされた瞬間、視界が白く弾け、魔王の身体は光の奔流に飲み込まれた。 ――我はここで終わりなのか そう思った次の瞬間には意識が遠のいていった。 落ちていく。どこまでも、底のない闇へ。引きさかれるような感覚と、重力とも違う奇妙な力に引きずられながら、魔王はただ沈んでいった。 やがて、ふっと力が抜ける。顔に光があたる。 まぶしさに目を細めながら、魔王はゆっくりと瞼を開いた。 ――ここは……どこだ? 湿った土の匂いがした。風が頬を撫でる。見渡す限り、緑の葉が揺れている。 規則正しく区切られた細長い区画に、水が張られ、太陽の光を反射してきらきらと輝いていた。そう、田んぼである。 遠くでは、鳥の声がする。 空は広く、雲はゆっくりと流れ、風は穏やかで、やけに静かだった。 ――魔王城がない…ここは人間界なのか? 魔王はゆっくりと身を起こし、周囲を見渡した。 どこまでも続く田園風景。舗装された細い道。 そして、聞いたことのないカーカーとうるさい鳥の鳴き声。 「……本当に、どこだここは?」 そのとき、 「魔王様~!どこですかここ!うわ!泥?はまりました~助けて下さ~い!」 と情けない叫び声が聞こえる。 シャルディナだ。 魔王はシャルディナを引っ張り上げ、歩き始めた。 畑の間の細い道を進み、遠くに見える山へ向かって歩く。だが、どれだけ歩いても人の気配がない。 「魔王様、あの山……ずっと遠くに見えたままですよ」 シャルディナがため息をつく。 太陽は高く、風は心地よいはずなのに、足は重くなっていく。 魔王はついに立ち止まった。 「……疲れた。我をこんなに歩かせる世界があるとはな」 魔王は空を仰ぎ、肩で息をした。 そのとき、畑の真ん中に立つ何かが目に入る。古びた帽子、色あせたシャツ、そして無表情の顔。かかしである。 しかし、歩き疲れた魔王たちには人間が立っているように見えた。 魔王とシャルディナはふらふらと近づき、真剣な表情で聞く。 「おい、そなた。ここはどこだ?」 当然だが返事はない。 シャルディナが呆れた声を出す。 「魔王様、これ人じゃないですよ…」 「そのようだな…しかし、なぜこんなに誰もおらぬのだ。」 魔王はかかしの肩に手を置き、ため息をついた。 そのとき、遠くからゆっくりとした足音が近づいてきた。 振り返ると、小柄な女性――白髪のおばあさんが杖を突きながら歩いてきていた。 おばあさんは魔王とシャルディナを見て、目を丸くする。 「まあまあ、あんたら……こんなところで何してるんだい?」 魔王は即座に答えた。 「迷った」 シャルディナも深くうなずく。 「迷いました」 おばあさんは困ったように笑い、二人を見つめた。 「こんな田んぼしかないところまで来て、しかも迷うなんて、珍しいねえ。家はすぐそこだから、休んでいきなさいな」 魔王とシャルディナは顔を見合わせ、魔王は小さく咳払いをして言う。 「……恩に着る」 おばあさんの家は魔王城に比べればこぢんまりしていて、靴を脱いで上がると、畳の匂いがふわりと漂った。 「さあ、座りなさい。お茶でも出すよ」 魔王は畳に座り、湯気の立つ湯飲みを受け取った。

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魔王様日本旅行記2 北海道①

魔王様日本旅行記1 プロローグ

さて、我は魔王である。突然だが、いま我は絶体絶命の大ピンチに陥っている。理由は単純――金が足りないのである。 あのジェットコースターなる乗り物に乗るには、どうやら1500円という通貨が必要らしい。だが我の財布に入っているのは、1000円と書かれた紙が一枚だけ。せっかく入園料なるものを払ってやったというのに、まだ金を要求するとは、人間はどこまで強欲なのだ。 ……ん? なぜ魔王がジェットコースターに乗ろうとしているのか、だと? ふむ、それにはふか〜い理由があるのだ。 我は元々、この世界とは別の世界で魔王をしていた。しかし勇者の侵攻により軍は壊滅、我自身も討たれかけた。最後の抵抗として全ての攻撃を反射する盾を使い勇者の一撃を防ごうとしたのだが、あやつめ――世界を破壊する斬撃などという反則技を放ちおった。ここではなんだ…チートというのか? 当然、防ぎきれず、我は死んだと思った。 だが気づけば、なぜかこの世界に転がっていたというわけだ。 ……で、ジェットコースターとのつながりが見えない? そんなもの決まっておるだろう。 楽しそうだからだ! 「魔王様!それには乗りませんよ!そんなの竜騎士隊の竜よりもはるかに劣ります!こちらのメリーゴーランドとかいう回る馬はどうでしょうか?」 ……ああ、シャルディナが呼んでおる。 話が出たついでに紹介しておこう。あの口うるさい小娘が、我が参謀シャルディナである。 今、我は遊園地という囲いの中でジェットコースターなる乗り物に乗ろうとしているのだが、シャルディナはどうしてもあの上下する馬――メリーゴーランドとやらに乗りたいらしい。 まったく、我はあんなものに何の魅力も感じぬわ。

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魔王様日本旅行記1 プロローグ