湊 友栄(みなと ともえ)

64 件の小説
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湊 友栄(みなと ともえ)

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隣り合わせ

隣り合わせ 教科書を忘れた君が机をくっつけ クスッと笑う 恥ずかしそうに笑うその顔に 僕は釘付けになってしまっていた。 隣り合わせ… 僕の鼓動が激しくうごめく チャイムが現実に引き戻す 机が離れ、君が離れる 隣り合わせ。 大人になって君を見つけた 誰かの隣に佇む君を 隣り合わせ 君の隣は僕ではなかった

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擦り付け殺人犯

ある日テレビをつけていると 近所で無差別連続殺人事件が起こっているニュースが流れた 「うわぁ怖いな。物騒なことが近所でなんて…」 そう思ってると ピンポーン… インターホンが鳴った。 覗き穴を見ると宗教勧誘のおばあさんが立っていた 仕事で上手くいっていなかった僕は 包丁を手にドアを開けおばあさんを家に入れた。 そして、おばあさんを殺した 遺体は山に破棄し、その場を後にした。 しばらくは殺人を犯したことに恐怖と不安が込み上げていた。 また今日もニュースを見る 僕が殺したおばあさんが出ていた。 しかし犯人は連続殺人者と疑われていた。 その時の安堵は異常だった。 「これは使える…」 僕は人に罪をなすり付けながら殺人を次々に犯した。もう連続殺人犯は捕まったというのに… それを知ったのは警察が家に来た時だった。

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蝋人形のなき声

今日は娘の命日 最愛の娘が行方不明になった場所に 嫁と来ていた。 当時の思い出に浸りながら 僕は古びた館に目を惹かれ 忍び足でドアを開けた。 「ごめんくださーい…」 軋む音と共に広がった光景は無数の蝋人形達だった。 リアルな蝋人形は少し気味が悪かった 奥から1人の老婆が 「この店に入ってくるなんて珍しいねぇ 1つタダで蝋人形をやろう。」 そう言って僕は亡き娘に似た蝋人形を抱え家に帰った。 ちょうど娘とこの蝋人形の大きさは同じくらいだったろうか。 部屋の隅に置くと、嫁が突然その蝋人形を壊し始めた 「嫌よ!何か気味が悪い!こんな蝋人形壊してやる!」 少し人肌を感じさせるような柔らかい蝋で出来たもので簡単に剥がれた すると一気に来る腐敗臭と共に浮き彫りになってくる人の顔があった。 嫁は恐怖の余り気を失い。僕は言葉を失った。 その蝋人形の中には… 行方不明になったはずの最愛の娘がいた。

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バズりたい

バズりたいから投稿する バズりたいから夢中になる バズりたいから努力する 流行りを常に勉強し 周りの評価を気にしていく いいねが付けば付いていくほど それは高揚感へと変わっていく。 そうなりゃ僕は有名人 世の中求めるものは変わる 流行りに乗り続けていても 『僕』という人に興味が薄れる 過去の栄光を手にしたものは 同時に失ったものにも気づく。 価値のない僕を求める人は 価値ある時に失った。 1番近くにいる人に 感謝を忘れては行けない。 バズった嬉しさとは裏腹に 1人になった虚しさを知る。 それでも君は一時のバズりに人生賭けるのか

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理科室の人気者

僕は理科室に置いてある人体模型が嫌いだった。 みんなは近寄り、いたずらに触り、遊んでいた。 けど僕は好きになれなかった。 模型と言えど、人間の中身がおっぴろげである。 気持ち悪い、目障りだと思っていた。 1人で学校を歩いている時、理科室の前で足が止まった。 僕を見つめる人体模型と目が合ってしまった。 自然と足が赴くままに人体模型の前まで行き、僕はそいつを壊した。 まるで殺人を犯したような気分になった。 その日の夜はあまり眠れなかった。 あの人体模型の顔が妙に鮮明に浮かぶ そのまま視界が暗くなり 次に目を開けた時は理科室を見渡していた。 隣には先生、目の前には友達。 いつもと違う目線に違和感を感じた。 身体がかたまったように動かない。 休み時間近寄ってくる友達に助けを求めようとしても お腹をつついてばかりだった。 その時後ろから先生が僕を持ち上げた。 「こらこら、人体模型で遊ぶんじゃない。片付けるよ」 そう言って準備室に連れていかれ、 窓に映った僕は… 「あの時壊した人体模型だった。」

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花咲く芽を摘む

「ねぇ、セックスしない?」 目の死んだ女性に僕はそう問いかけた。 女性は頷き、赴くままにした。 世の中には身体を重ね、淫らに乱れる女性。 逆に反応しない女性がいる。 僕は後者が好きだ。 何度も肌を重ねていくと 死んだ目も徐々に生き、 自分に価値を見出そうとする。 そうなった女は 「ねぇ、私のこと好き?」 そう聞いてくる。 だから僕は決まって、 「好きになった時点で僕は君と二度としないよ」 そう言って突き放していた。 そう言えば、女性は気持ちを押し殺し また僕と肌を重ねる。 極悪非道だと思う。ただそれが非常に気持ちよかった。 無反応の女を抱きながら、 僕はまた興奮する。 「あぁ、早く芽を摘みたいなぁ」

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盗撮の恐怖

私は守谷(もりや) 会社の同僚、新崎(しんざき)くんのストーカーをしている。 「はぁ。新崎くんかっこいいなぁ」 彼のことをそう思うようになってから ストーカーを始めて1年が経った。 毎日の尾行ゆえに、行動範囲。家族構成。人間関係。 だいたい彼のことを知っていた。 ただ、「もっと知りたい」そういう欲が私を駆り立て、 盗撮をしようという思考に陥った。 荒手だが、サイトなどで調べたピッキングで鍵を開け、 彼の家に侵入し目につかないリビングの上の方に小型カメラを設置した。 「これで良しっと〜、あとはスマホと接続して…できた!見える!」 あらゆる痕跡を隅々まで隠し、 私はその場を後にした。 「ただいまー、ふぅ、今日も仕事疲れたぁ〜」 彼が家に帰ったことを動画で確認し、音声も楽しむ。 「独り言言うんだ、可愛いなぁ」 彼のまだ知らない一面を見ることに興奮した。 しばらくして、彼が画角外に外れ「あぁ!」と大きな声を荒げ 直ぐに戻りソファーに腰をかけた。 「そういえばトイレットペーパー切れたんだった…」 盗撮されていることを知らないはずの彼が カメラの方を向きながら 「買ってきてよ。守谷さん…」 私は直ぐにカメラとスマホの接続を切った。

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最愛なる妻、死を持って

妻が浮気をしていた。 それも若い男と だがそれは見逃し許した 相手も若い男だったから そして妻を誰よりも愛していたから 俺のエゴかもしれない。 だけど、こんな若い男に妻との人生を壊されるのが腹立たしかった だからこれで恨みっこなしだ。 君が他の男に唾を付けられないように。 浮気の許しを乞う時のように 泣きじゃくりがらもがき、俺の腕をぎゅっと握りしめるその姿を。 「僕は君を愛しているんだっ」 首に残る締め跡を指先でゆっくりなぞり ベットで動かなくなる妻を僕はそっと抱き締めた。

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高嶺の花

隣のクラスに高嶺の花が居るらしい 男子の群れに混ざりながらその姿を目視した 他の言葉では表すことが難しい まさに男子の理想を具現化したような人だった。 理想が目の前に現れると男子たちは奮起した。 ただ僕は違った。理想はあくまでも理想。 完璧な人間などはいない そう思い心を沈ませた。 しかし、さすがの高嶺の花 そう思っていても、目で追ってしまう。 人気のある男子生徒による学校裏での告白。 いつもの移動教室の途中。 目で追うよりも探していると気づいた時にはその人のことが好きなんだと思っていた。 あの時までは。 人気のない教室で、若い教師とキスを交わす。 僕はその光景をじっと見てしまっていた。 ショックや戸惑いよりも 何故か安堵していた。 多分自分の中で何か腑に落ちたんだろう。 「あぁ、所詮人間なんだ」と

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非日常

日常に飽きた 恋人が居ないあの日々も 恋人がいるあの日々も 仕事をするあの日々も 転職したあの日々も 同じことを繰り返す そんな日常に。 でも新しいことを見つけたよ。 個性のある悲鳴。 数しれないやり方。 毎日が新しい 次は何処に隠そうか ニュースになれば悔しいが 焦りよりも快感が身を走る 現実からも逃げながら これが僕の『非日常』

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