しらづ
89 件の小説ハッピーエンドバッド
俺は幸運の持ち主だと思っている。 自分の身に起こる出来事が全て幸せな事だから。 俺のそばに寄り添ってくれる最愛なる彼女たち 今までいい顔をしてくれる女性が沢山いた。 好きだったんだ。 喜ぶ姿も 怒る姿も 泣く姿も 悲しむ姿も 全部好きだった。 その顔にさせる度に俺は幸福に感じた。 この時間がいつまでも続くといいなと … 僕は不運の持ち主だと思っている 自分の身に起こる出来事が全て難解だからだ 僕のそばに寄り添ってくれる最愛なる彼女たち 今まで仲良くしてくれていた女性が沢山いた 好きだったのに ある日を境に僕を見ると叫び逃げだし 最低と怒号と共に浴びせられる平手打ち 警察に突きつけられたこともある。 でも僕には全て身に覚えのないことばかり 全てわけがわからなかった。 この生活から脱却したいと心から願った。 そんな時1人の美しい女性と出会った。 その方は可憐で一際目立つ女性だった。 僕は一目で恋をした。 この人は絶対に逃さないと。 … 「あの、私と付き合ってください」 「はい」 いきなりの告白に多少の動揺をしたが 僕にも春が来たと心から思った。 嬉しかった一目で恋したあの子が僕の彼女になったのだから 「ねぇ、なんで僕って言うの?告白で緊張した?」 少し不思議そうに笑う彼女を見て僕は困惑した 「え?いつも僕は僕だよ?」 彼女もまた不思議そうな顔をしたまま頷いた … 「おはよっ」 彼女が待ち合わせに来る 「おはよー。今日もすごく可愛いね」 僕も緊張したまま頑張ってかける言葉に張り切る。 「ねぇ、あのね、今日も、ね?」 少し恥じらいながら上目遣いで僕を見る 「え?」 何かわからないまま連れてこられたホテル。 「今日もしてよ、あれ」 僕はなんのことだから分からなかった。 君とはホテルにも言ったこともましてやスキンシップさえしていなかったのに。 たどたどしい僕を見て彼女は痺れを切らした 「ねぇ、今日は何時もとおかしくない?好きだって今日も沢山抱いてあげるって言ったじゃない!もう10回目もデートしたのに!」 全てがおかしかった。 僕の記憶では2回しかしていないはずなのに 「10回?待って誰としたんだよ!」 「もういい!」 カバン持ちホテルを出ようとする彼女の首を僕は絞めた 「はぁそれその顔だよっ好きっ」 その発言でさえ僕にとっては他の男と重ね合わせてるようで苛立ちを加速させた。 「殺してやる他の男と一緒になるくらいなら」 そして僕は彼女の息を途絶えさせた。 手を殺めた恐怖と彼女を自分で最後にしたことの喜びでハイになっていた。 「あはは、もうどこにも行けない。僕だけの君だよ」 … 「お前がやったんだろ!」 机を叩きつける音と共にガタイのいい男性が詰め寄る 「だから俺はやってねぇよ。だりぃな。」 「亡くなった女性とお前が入るところが監視カメラに映ってたんだ」 「チッ、もっとうまくやれよ…」 その言葉に警察官が胸ぐらを掴む。 「お前はその他に交際経験のある女性を全員殺したな」 「あーあバレたか」 そうだ俺は今まで付き合ってきた女性は全て手にかけた。 だがホテルで亡くなった女性は俺じゃない。 「いいよ説明してやる。その女性を殺したのは…」 その先の記憶はまったくない。 ただ牢屋に入っていた。 殺しが自分のハッピーエンドだったのに 俺の運も底を付いたかと思った。 まぁ楽しい人生だった。 僕の人生はバッドエンドだったのに 僕は最愛の人はずっと心にいてくれる いい人生だった 「幸せだね…」
息抜き
朝起きて 隣の女を見る 名前も知らない女を尻目に 朝の支度を始める 「ねぇ」 「ん?起きたの」 「どこ行くの」 「仕事」 「昨日好きって言ったよね…」 「ん?んな事言ったかな。」 昨日のおぼろげな記憶を遡る 「あ〜、あれ?言ったね」 「私も」 「そっか」 だいたいの人は真面目に捉えてお付き合い。 なんて考えるのだろう。 でも俺は違って 息抜きだった。 知らない女に腰を振って その時の昂りに心を任せ 互いに高ぶるために言葉を吐く ただそれだけの事 濁すことも面倒になって 淡々と自分の都合を押し通す。 「仕事行くから一緒に出て」 … 仕事終わり 溜まった連絡を返す 何も考えずただ赴くままに 「今日はこの子か…」 誰だって良かった 疲れた心と体を女で一時的埋めてるだけ。 ストレスを発散するために スポーツをしたり 映画を見たり どこかに出かけに行くように 同じ感覚で女を抱く。 それが息抜きで いちばん心癒される時だから 「今日は他の子じゃなかったんだ」 「ん?君が良かったんだよ」 誰だっていい。 君が良かったって言葉も間違ってない。 だって君の予定が俺と合って 一緒にいるのも嫌じゃなかった。 息抜きができるから だから君が良かった。 ただそれだけの事。 「ふーん」 あからさまに嬉しそうにする君 「何、嬉しいの?そっか、俺もだよ」 そのままふたりベッドに転がる 「ねぇ」 裸の君が声をかける 「ん?」 「好き」 「そっか、ありがとう」 俺だって好きだよ 息抜きに付き合ってくれるから 相手も少し理解して 心から俺を消そうと努力している もう俺に向けるその「好き」も 俺から離れる予告なのだと こちら側も理解する。 だから後ぐされなく。 対応を変えず、ただ相手の出方をみる 真面目な時もあった クズを嫌っている自分もいた しかしその時は全てがストレスになって 何をしても発散しきれない感覚が ずっと残っていた。 自分がクズと言われるようになってから 生活を見返すと 生活は何も変わらなくて、 真面目に生きているよりは華やかだった。 真面目に何かを考えることも減り 周りの評価も全て気にならなくなった。 だからかもしれない。 成すこと全てが息抜きに変わっていった。 真面目な時とは打って変わって、 失っていくような感覚も増えた けどそれも全て気にならなくなった。 だから今日も俺は息抜きをする。
復讐のその先
僕は真面目に生きてきた。 学生時代。 引っ込み思案の僕は彼女が出来ても奥手で でも、言い寄ってくる女の子は多かった。 皆から羨ましがる目線も心地よく感じた。 でも、彼女が出来ても何故か寂しかった。 『本当に好きじゃないから』 自分の本当に求めている人は もう既に誰かの手の中にあって、 僕自身には手にできない代物だった。 初めての年上彼女。 最初は好きじゃなかった。 他の人と変わらない女性だった。 ただスキンシップもしてくれた。 その人自身に心地良さを感じた。 でもそんな心地良さも長くも続かなかった。 それも他の男に寝盗られた。 俺はまだ手にしていなかったことなのに。 全て奪われた気がした。 だから僕は自分の奥手さを酷く責めた。 そして諦めることに逃げた。 それから数年。 元彼女となった人とふたりで会うことになった。 数年前のことだし、何事もないように接した。 男女としてすごくいい感じだとも思った。 でもすごく違和感を感じていた。 よそよそしい感じに不思議と疑問を持った。 昔のことを思い出しての気まづさなのか。 それしか思い当たる節がなかった。 それでもあまりにも距離を感じた。 その日は何事もなく場をあとにして 後日知らされる 友人との車の中。 友人はタバコも吸うようになって、 俺が知る頃よりも変わっていた 車内で俺に元彼女の話を振ってきた。 『そういえばお前の元彼女この前家誘ったらのこのこ来てさ、良かったよ。そういえばお前もしたんでしょ?』 僕は言葉が出なかった。 ひたすらに悔しいと思った。 でもその時に本当に好きだったのだと 思い知らされた。 なぜ俺はダメだったのか。 何が原因だったのか。 地獄に落ちてしまえなんて思ったこともあった。 その時に、彼と自分の違いを出した。 彼は真面目でもなんでもなかった それは自分になかったものだった。 だから真似したらいいんだと思うようになった その時初めてタバコに手を出した。 真面目を捨てられると思ったから 自分が生きた道を踏み外し知らない世界を知れば そうなれば欲しいものを手に入れられると思った。 ナンパも勇気をだしてしてみたり 女の子に自発的に連絡を取ったり そうなればみるみる自分の思い通りにことが進んだ。 最初は楽しかった。 復讐しているようで。 悔やんで欲しかった。 あなたのせいだよって。 でも、それも当たり前になって 得るものより失うものの方が大きく見えた。 いつしか、好きの感情はなく。 虚しさだけが残る。 心に嘘をつき続けて それも上手く表せなくなって言った。 結局欲しいものは手に入らなくて、 そこは変わらなかった。 どう頑張っても中途半端で、 僕は普通なのだろうと。 復讐したつもりだった。 あなたが許した相手はこういうやつだよって。 こういう人に魅力を感じるんだろうと 自己満の優越だったかもしれない 久しぶりにインスタのストーリーを目にして、 その子が真面目な男性とお付き合いをしていた。 俺にはない幸せを何故あなたが手にしているのか 復讐のその先は 地獄に落ちるのは僕の方みたいだ…
底無しコップ
『会いたい』 そう連絡してきたのは君の方。 心配はするものの 彼女と同棲している僕は行くに行けなかった。 『ほんとに会えない?』 追いメッセージが来る。 僕は彼女に少し嘘を着いて 家を出た。 「友達だから」 そう言い聞かせて、友達という名の女の家に向かう 「会いに来たよ」 そういうと友達は僕の手を引きベッドに押し倒す。 『寂しくて…』 僕は無意識に拒む。友達だよって それでも君はいいと言った。 だから友達として要望に答えた。 でも君は切ない顔をして僕はそれにも気づいていて 肌を重ねて、君の体温を感じ 一時的には温もりを感じたけど、 それも徐々に冷ましていく。 『もう大丈夫?』 その一言はかけるけど 僕は気づいている。 寂しいと思っていることも、 僕に特別な好意を抱いているだろうことにも 一瞬にして心は寂しさを現す でも僕はあえて触れなかった。 知らないふりをし続けた。 きりのない寂しさに 君の穴の開いたコップに水を注ぐことを 塞ぐのは自分の役目ではないと 鈍感な自分で相手に思わせておけば 勝手に相手は諦めるだろうと。 好きになっても 穴を塞いでくれないと 答えられない 塞ぐのは僕の役目。 いいや違う。 心の穴を塞ぐのは君の役目。 寂しさを埋める唇もも 体の温もりも くだらない毎日に少しの色付けも 全て埋められる。 でもそれを受け止めて、貯めておかない君のせい。 そうやって友達とお別れした。 でも彼女以外のそのコップに注ぎすぎる僕も また底のない心を持っているのだろう。
二等辺三角関係
平等なんてあるものか。 … 「おーはよっ!」 俺の肩に強く手を下ろす 「痛ってぇな!朝から元気すぎだろ苺花(いちか)!」 「へへっ壱馬(かずま)が、ひ弱なだけじゃない?」 「違ぇだろ!なぁ優作(ゆうさく)!」 「う、うん、苺花ちゃんも優しくしてあげなよ」 俺たちは幼なじみで生まれた時から一緒にいる。 ガキ大将みたいな苺花と物静かで優しい優作 そしてやんちゃ坊主風な俺。 「てか私達ももう高校生なんだね…」 「そうだな〜優作と苺花は同じ高校だよな。俺も行きたかったなぁ」 「でもすごいよ壱馬もサッカーのスポーツ推薦だっけ?全国クラスだって聞いたけど、僕応援してるね!」 「あんがとよ。ぜってぇプロになってやっからよ!」 「あんた威勢だけはいいからね〜」 「何笑ってんだよ。いいだろ!勢い大事だしな!」 「…」 「優作?どした?なんか湿気った顔して」 「あぁ、いや?なんでもないよ」 「そうか」 俺は優作の曇った顔に違和感は感じたものの 気にも止めなかった。 … 中学卒業式 「壱馬っ!卒業式おめでとう!あれ、優作は?」 「おっ、おめでとう。あぁ優作か?ちょっと他のクラスのとこ行ってるよ」 「ふーんそうなんだ。あ、てか話って何?」 「あぁ、えっと…」 「何よ急にもじもじし出してあんたらしくないわね」 「あのさっ…」 私は壱馬の真剣な眼差しにドキッとする。 「なに?」 「俺ら高校別々だろ?」 「そう…だね?」 少しの期待と緊張が入り交じる 「俺がもし。プロになったら俺と付き合って欲しい」 「はぁ!?な、、なにそれ」 想像の告白ではなかったけど… 「好きだ!って言ってんだよ…」 「いいよ」 いつもの壱馬に安堵感を感じて笑みがこぼれる 「へっ!?」 「告っといてあんたがビビってどうすんのよ!」 「いや、まさかと思ってさ。」 「でも、プロまで待てないから今付き合お」 「いいのか…?」 「他の人に取られてもいいの?」 「いい訳ないだろ!」 「じゃあそういうことで!よろしく壱馬っ!」 「おうっ!」 私が告白したみたいになったけど、 今日はいい日だからと思うようにした。 … 「あ、壱馬。お疲れ様。」 「おう。優作お疲れ」 僕は壱馬照れくさそうな顔を見て察する 「その顔は告白成功したんだね」 「ああ、ありがとう。無事付き合えた」 「そっか」 僕はどうしていいかわからなかった。 目の前で大事な幼なじみが好きな人と付き合った。 僕にとって大切な2人だからこそ。 複雑だった。 「優作あの…」 被せるように僕は言う 「壱馬なら苺花を幸せにできるよ。僕、壱馬の夢も2人のことも応援してるから」 「あぁ、ありがとうな」 「今日は一緒に帰るんでしょ、僕は先に帰るよ。別れたりして気まずくなるのは嫌だからね。」 そう言って僕はその場を後にした。 … 2年後 ゴーールッ! 「御嵩(みたけ)高校2年!桜庭壱馬(さくらばかずま)が決勝ゴールを決めました!!!来年からはプロの方に行くそうですからね。若きエースになってくれること、期待ですね。」 テレビ中継が流れる。 「みて!!優作!壱馬が決勝ゴールだって!!」 「ほんとに凄いな。そういえば最近壱馬とはどうなの。」 「続いてるよ。でも最近この通り会えてはないかな。毎日の電話くらいだよ。」 「寂しくないの?」 「寂しいよそれは。でも応援してるから。」 僕は最低だ。幼なじみの彼女をずっと諦められずにいるから。 … プロ初戦 壱馬のプロ人生がスタートしていた。 前半は1対1の競り合いの中 後半がスタートし、両チーム決定打が欲しいタイミングだった。 「壱馬。準備しておけ」 「…は、はい!」 監督からの指示に俺は緊張と楽しみを抱えていた 「壱馬、お前の得点力が必要だ。ここで1点決めてこい。」 その一言に闘志を燃やしフィールドに立った 残りわずか。壱馬のチームの攻撃が始まる 「壱馬!!」 「おう!」 チームからのパス 「これを決めれば…」 ズシャア… 相手のスライディングにやられ 俺は呆気なく前十字靭帯損傷の大怪我をした。 「くっ」 俺は涙を流した。 こんなにも。こんなにも順調だったのに。 プロになって、俺は苺花と連絡が取れてなかったが 支えて欲しいと思い連絡をする… … 「苺花っ…!」 「優作…」 「壱馬のやつ。音信不通なんだって?俺もだよ。もう半年も連絡取れないなんて」 「プロになったんだよ…仕方ないじゃない。」 「僕じゃダメか…」 「えっ…」 「僕は君のこと壱馬と付き合う前からずっと好きだった。彼女も作らず、苺花が好きだったから、幼馴染で居たかったから、どんな形でもそばに居たかったから!」 「そう…だったんだ」 「壱馬のことも大切だけど。僕は寂しそうにしてる苺花なんて見てられない。そろそろ僕を見てくれないか」 「壱馬こと裏切れないよっ…」 僕はそっと苺花を抱きしめた。 苺花の弱さに漬け込むように 罪悪感はあったが止められなかった。 好きな人が辛い思いをしている姿を 隣で見続けるのは 「僕がちゃんとそばに居てあげるから…だから…別れて僕にして欲しいんだ。」 想いが届いたのか苺花がそっと僕を抱きしめた。 … 「何しに来たんだよ」 優作がお見舞いに来る。 「壱馬に話がある。」 「苺花のことか?」 「あぁ、そうだ」 「俺は何もかもダメだったんだな。」 「そんなことないよ。裏切るような形ですまない。本当は僕にも苛立ってるよね…」 「あぁ、くっそ嫌いだよ。でも俺、優作が苺花のことをずっと好きなのも知ってた。だからお互い様だよな」 「知ってたんだね…」 「絶対幸せにしてやれよ。俺は絶対復帰して、お前の自慢の幼馴染になってやっから。」 「うん。」 … 二等辺三角関係 三角関係だったはずなのに。 優作と苺花の2人の関係だけが等しく幸せに見える… あの時の優作もこんな気持ちだったのかもしれない。 結局この世に 平等なんてあるものか。
沼男は不器用で、憧れの君
僕は不器用だった。 幼少期喋ることが苦手で 友達は少なかった。 でもその時に手を差し伸べてくれたのは クラスでも中心になる男の子で 彼は明るかった。 話も面白く俺の憧れだった 彼になりたくて、努力した。 どうしたら輪の中心になれるのか 最初は分からなかったけど 彼の隣にいて、彼と話すことが増え ひとつ気づいたことがあった。 「彼にはなんでも話してしまう」 心地よかったのだ。 彼の相槌・返答・行動。 全て彼の魅力的で僕はその沼に浸かっていた。 … 月日が経ち僕は高校生になった 憧れの彼とは進む道は離れたが 人脈にも恵まれた。 念願だった友達と呼べる人たちも増えた だが悩みも増えた。 僕はただみんなと仲良くしていたいのに。 昔は男女ともに会話もできたし それが全てだった。 大人になったと言った方がいいのだろうか。 いつしか友達も男女となり 上手く女性とは絡めなくなった。 その代わり告白される回数が増え その度受け流していると 関わりを閉ざされるのことが増えた。 どうしてなのか。 彼女達は僕を求めた。 僕はただ友達であるためにそれに答えた。 確かに男である快感は得られた。 でも、そうありたい訳じゃなかった。 ただ、友達でいたいだけなのに。 可愛いと思ったことに可愛いと言って何が悪い。 大切だと思ったことに大切と言って何が悪い。 男は皆ずっと対応は同じなのに。 ただ女の子はそれに変な期待を持つ。 気持ち悪かった。 心地よさそうにしていたのに。 僕だって心地よかったのに。 どこがダメだったのか。 結局わからなかった。 … ある日、1人の女性と接点を持った。 バイトを始めて関わりを持った大学生の女性。 バイト先の先輩だ。 彼女は綺麗だった。誰よりも この関係を崩したくないとも思っていた 彼女も僕と同じように、「友達」という距離感でいてくれていたから。 他の女性とは違う特別な感情を持っていた それでも僕はこの場の心地良さを優先させたかった 今まで何度も口にしたささやかな言葉を吐き 彼女が照れる姿を可愛いと思いながら お互いに幸せな空間が流れた時に 僕は彼女に気持ちを伝えた。 「先輩のそういう所僕は好きですよ?」 付き合いたい訳じゃなかった。 友達として好きだと思った その場の流れもあった すると彼女は 「ごめんね。私は君とは付き合えないよ。沼りたくないし、振り回されたくないから」 俺は理解が追いつかなかった。 友達として好きだと口にしただけなのに どうしてこうも簡単に離れられるのか 好きって言われて嫌がるのは何故か そもそも沼…ってなんだ。 彼女はそう言って席を立った もう友達ではなくなったのか… 俺は疑問に思った とりあえず彼女に言われたことを沢山調べた。 そして… 「見つけた!!」 そこに書かれていたのは、数々の自分の行いを照らし合わせたような文章。 俺が目指していたのは… そこでハッと気づく 俺は仲良くしたいと思っていた だがそれは、相手の心を惑わせていたこと。 嬉しそうにしている姿を見るのに楽しさを覚えていた事は事実ではあった。 だがそれが女性を沼らせるような言葉・行動だったことは無自覚ではいた。 今まで最低だと女性に言われ続けていたことが 線になって辻褄を合わせる。 俺はまた幼少期の自分に戻ることを恐れた … バイト先の先輩と別れ、 家路に着くと路上で痴話喧嘩を繰り広げるカップルがいた。 「最低!!」 パチン! 路上鳴り響く殴打音。 女性は去り 立ち尽くす男性に思わず声をかけた。 「大丈夫ですか?」 顔を覗き込むとそこには 昔憧れていた彼だった。 「あ、君は…」 「久しぶりだね…こんな情けない姿で再会なんて」 「今の彼女さん…?」 「恋愛って難しいね、、上手くいかないよ仲良くなりたいだけなのにね」 憧れだった彼は俺と同じ悩みを持っていた。 何故か嬉しい気持ちになった。 だから俺はにこやかに彼に言った 「俺…君になれたよ」
取引先
私は今の地位に満足していた。 二十三年務めた会社で、営業でトップに輝き 部長という立場を頂き 当時社内で一番人気で同僚である女性と 結婚し家庭を持った。 皆からは恵まれ物とも言われた 部長になれば、企画案に甲乙をつける側になり 責任もさらに伴った反面、いい気分だった。 … 「部長!お疲れ様です!」 「おお、お疲れ様」 勢いよく声をかけてくれた女性は 5年前に入社してきた女性社員そして今や部下だ。 入った当初私が一年間教育係を任された子である。 そして、その時に体の関係も… 今でも、妻に隠れて時々会っている。 「部長、今帰りですか?もし良かったら今夜…」 「おい、ここで話しかけるなと言ったろ。家内も働く職場だ。お願いだから大人しくしてくれ!シたくなったら私から誘うから」 最近困ったことに、その女性社員の行動がヤケに大胆になったのだ。 「部長は、いつもそうやって、奥さんの方をとるんですね、私もいい歳なのに。今日くらい抱いてくれたっていいじゃないですか!」 少し過度な発言に私は焦った。 「わかっ…わかった!だから静かにしてくれ頼む。ここまで積み上げたものが壊れてしまうのは嫌なんだ。」 「分かればいいんですよ!分かれば、じゃあまた後でね…部長」 私は不安に駆られた。ついにあの子を切らないと その直後。 「ねぇあなた。」 「ひぃ!!」 背後からの妻の声に私は凍りついた 「随分と親しげね、あの子あなたが教育してた子じゃない」 「そうなんだよ。未だに親しくさせてもらってるよ…ハハッ」 今日は妻がとても穏やかで少し心に濁りが残った。 「今日はこの後取引先との会食があるんだ、遅くなるから先に寝ててくれ」 そうして、妻の背中を最後まで見送った … 「部長!今夜はありがとう。すっごい良かった!ねぇ、奥さんと私選ぶまでもないよね?」 「すまない、しばらく控えたいんだ。こういうこと。妻が最近なにかに気づいているようで…」 「ふーん。そう。わかった。じゃあ会いたくなったら連絡してね」 やたらと今日はあっさりしていることに違和感などなく、ただ安堵だけが残った。 … 二ヶ月後 「プレゼンの資料見てください!」 男性部下が勢いよく聞いてくる。 「採用だ。よく頑張った。判を押してやる待ってろ」 「ありがとうございます!」 その時ノックが聞こえた 「どうぞ」 「失礼します」 そこに現れたのは妻と女性社員。 戸惑いを見せたが、己を律し平然を装う。 「どうしたんだね。」 「私の企画案に判を押していただきたくて」 妻は何も言わずただソファーに座りゆっくりしている。 私は恐る恐る資料に目を通す。 「こ、これは…なんだね」 「判を押してください。」 目の前にあるのは婚姻届。 私は意味がわからなくなってしまっていた。 とりあえずバレないように言い訳を連ねる 「いや、こ、この件に関してはね。別のところと取引しているところですし…」 「では判子はいただけないのでしょうか?」 強く出る女性社員。 「あまりにも急ではないか?」 「時間がないんです。」 被せるように言う 「これにハンコを押すとね…2重契約になってしまうんだよ…」 「だったら今の契約先と手を切ればいいじゃないですか!」 「二十年も一緒に仕事をしているお得意様だ!簡単に、切れんよ!」 私も強く言い返す。 「では、もうすぐ出る新開発の商品はどうしましょう」 社員はそういいながら自分のお腹を優しく撫でる。 俺は目を見開き。社員の顔を見る。 本気の目をしていた。 「判子宜しくお願い致します。」 そして、部屋を出る。 それと同時に妻が立ち上がって呆然とした私に言う。 「私は今のままで結構ですから」
偽愛社
「お電話ありがとうございます。偽愛社です。」 「すみません。私を愛していただきたいのですが…」 朝目を覚ますと 隣には綺麗な女がいた。 彼女は名前も年齢も知らない女で ただ美しい容姿をした女性だった。 「おはよう」 声をかけると 「おはようございます」 にこやかに挨拶をしてくれる そして私を強く抱擁してくれる その女性の体の温もりを感じて 迎える朝はとても幸せだ。 その瞬間アラームがなりその女性は慌ただしく支度をする 「楽しかったですよ。また呼んでくださいね」 そう言い残し、家を出た また呼んでもいいのか。 その言葉に少し浮ついてしまう けれど途端に心が締め付けられた。 また1人になったと 孤独になった心を埋めようと 私はまた違う女性を呼んだ。 次に来た女性は先程の人とは違い 容姿は綺麗とは言えず 塗りたくった化粧に 品性のない服装。 おまけに臭いと感じさせる程の香水も漂わせ 横柄な態度で自宅に入ってくる。 そのままその女は私の服を脱がせ 一言言う。 「こういうことしたくて呼んだんでしょ?早くしよ」 積極的な感じで少し可愛いと思った。 「うん。して」 エロティックな匂いと、香水の匂いが 部屋に充満する 乱れきったあと、その女が私にいう。 「うち今回初めてだよこういうの。割と楽しいね」 私は驚いた。 だって私が変だから 普通じゃないことも知っていた。 だからこういう行為を楽しんでくれる女性もいるのかと喜びを感じたと同時に不安も募る 「私みたいな人ってやっぱりいない?」 愚問だったかもしれない。 彼女は仕事で来ただけで、私は消費者で それ以上でもそれ以下でもない。 でも以外と見た目に反して優しくて 「あんた。うちのとこ結構常連でしょ。有名だよ女なのに女を呼ぶ変わったヤツって、でもね私は嫌じゃないよこういうの」 私はその言葉に返事ができなかった。 最近じゃ当たり前になってきたが 『レズビアン』なんて当事者はなかなか勇気を出せない。 だから救われた気がした。 『レズビアン』じゃなくても相手をしてくれる女性がいることに まだ世間の目が私のアイディンティティを否定する でもここはそれをも許してくれる。 仕事を名目に、してくれる。 だから私は求め続ける。 彼女が帰ってまた携帯を手に取る。 「お世話になっております。偽愛社です。お好みの女の子を選択してください。」 「私レズビアンなんですけど…」 「ありがとうございます。問題ないですよ。私達皆、レズビアンなので…」 「え…」
何回目の誕生日
もう何年経っただろうか ただ過ぎ去る四季を 微かに感じながら 会社に向かう 桜吹雪にあい 照りつける日に汗を流し 枯れ散る葉を踏み鳴らし 肌を切りつける寒さを越え 落ち着く間もなく日常がすぎていく。 いつも通る道も人も 皆同じ日を時間を過ごしているはずなのに 毎日何もかもが変わっていて 不思議とそれに嫌気は無く。 身体が適応しているのだと思った。 ある日 変わった館が目に入った 「あなたを見ます」 何故か私は足を止めた。 そしてその文字を掲げる館に入った。 「ご要件は…」 中には黒ずくめの女がいた。 黒いローブを深く被り 皺が少し見える。 老婆だろうか 「あなたを見ますと貼り紙を見たもので」 恐る恐る老婆に話した 「君はいくつだい」 仕事でもよく聞かれる話題なのに 私はその時答えることが出来なかった。 「年齢は分からない…です。」 知られたくないと本能的に嘘をついた 「なぜ…」 静かに老婆は言う なのに、見透かされているかのような そんな気がした。 「私は年齢を言うのが怖いんです」 自分の声が震える 「どうして…」 老婆の問いに自然と想いを言った 「自分の年齢を言うと皆、私を捕まえ警察に突き出すのです」 老婆は笑う 「はっはっはっ、それはそれは面白い」 私は怒り感じた。 皆なぜ笑うのか。 私は理解ができなかった 老婆が笑いながら私に言う 「今日は何月何日だい?」 「え…」 唐突に聞かれる。 今日が何月何日か 仕事を始めてから日付の感覚がない。 「えっと…」 私は戸惑う 思い出そうとしても分からない 「今日は5月3日だよ」 私はハッとする 5月3日は私の誕生日だ 老婆は知っていたかのように薄気味の悪い笑顔で 私を見つめた 私はその顔を見て、館を飛び出した 家に着き、鏡を拾い顔を見る 久しぶりに見た自身の顔に私は驚愕した 長く無造作に伸びきった白髪に白髭 よれた服に古びたサンダル ずっと現実から目を背けていた。 「私はずっと…」 項垂れるようにゴミ袋に体を倒す 生臭い匂いにももう慣れていた。 だって私の家はここなのだから… 皆が、私を見る目もようやく理解できた。 「ホームレスになったのか…」 何回目の誕生日。 私は何歳までこうしているのか
死神と僕
『死にたい』 最近の口癖だ 『死んでどうすんだよ』 死神が言った 俺は先日2年付き合った彼女にプロポーズした。 振られたが… それから死神が見えるようになった。 『お前が見えるようになってから1ヶ月、俺が死ぬ気配がないんだが』 死神の方を見ると「さぁな」と言わんばかりに顔を背ける 『俺はもう生きる価値を失った。奪うなら奪えよ。命』 将来を誓いたい相手に振られて希望が見えなくなってたところだ。 この先を考えることを放棄していた。 『もう喋るな』 死神が冷たく放った 深くため息を着いて 俺の首元に鎌の刃を向ける 『死にてぇんだよな。何震えてんだ?』 自分の震えた姿を認識し。 死ぬ覚悟が出来ていないことを実感した。 『お前はまだこの世に未練があるんだろう』 自分のやり残したことを考えた。 癇癪を起こしそうになるほど張り巡らせた。 あれこれ出てくるのは全て叶うはずのない欲望の話。 俺には無理だと諦めていたはずの思いばかり ただ一つだけ 親、友達に必要とされたいと まだ一緒にいたいと思えた。 『そうだ。それがお前のこの世の未練だよ。』 死神は口角を上げ不気味な笑みで語りかける その日から俺は友達に連絡し 飲み明かした。 仕事も友人との関係にも満足して いつしか死神の姿は見えなくなっていた。 落ちた人生だったはずなのに 死神のおかげで今は人生を謳歌している 順風満帆の日々 そんな俺にもまた春が訪れる 素敵な女性とお近付きになれる日が来た。 再度起きる人生の絶頂期 そこで俺は事故にあった。 見知らぬ天井と遠く聞こえる複数の叫び声 『どうだ、残りの人生は』 聞き覚えのあるドスの効いた声だけがはっきり聞こえた 『しに…がみ…?』 視界には複数の人影 それを塞ぐかのように大きな黒い影が 俺の視界を覆う 『お前の死期は元々近かったって言うことだ。』 俺はこれからの人生の生きがいを見つけたのに どうしてこのような残酷なことを課すのだろう 『死相丸出しの魂は美味くないからな。ピンピンした魂じゃないとなぁ』 意識もおぼつかない中 親族や友人たちの叫び声を聴く 「結局未練ばかりだ」と涙がこぼれた。 『夢が叶ったじゃねぇか』 「バカ言え。死んだら何も感じないじゃないか」 親族や友人の声ももう届いてない。 俺は必要とされていたのか 最後まで聞けなかった 『じゃあな』