しらづ

82 件の小説
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しらづ

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偽愛社

「お電話ありがとうございます。偽愛社です。」 「すみません。私を愛していただきたいのですが…」 朝目を覚ますと 隣には綺麗な女がいた。 彼女は名前も年齢も知らない女で ただ美しい容姿をした女性だった。 「おはよう」 声をかけると 「おはようございます」 にこやかに挨拶をしてくれる そして私を強く抱擁してくれる その女性の体の温もりを感じて 迎える朝はとても幸せだ。 その瞬間アラームがなりその女性は慌ただしく支度をする 「楽しかったですよ。また呼んでくださいね」 そう言い残し、家を出た また呼んでもいいのか。 その言葉に少し浮ついてしまう けれど途端に心が締め付けられた。 また1人になったと 孤独になった心を埋めようと 私はまた違う女性を呼んだ。 次に来た女性は先程の人とは違い 容姿は綺麗とは言えず 塗りたくった化粧に 品性のない服装。 おまけに臭いと感じさせる程の香水も漂わせ 横柄な態度で自宅に入ってくる。 そのままその女は私の服を脱がせ 一言言う。 「こういうことしたくて呼んだんでしょ?早くしよ」 積極的な感じで少し可愛いと思った。 「うん。して」 エロティックな匂いと、香水の匂いが 部屋に充満する 乱れきったあと、その女が私にいう。 「うち今回初めてだよこういうの。割と楽しいね」 私は驚いた。 だって私が変だから 普通じゃないことも知っていた。 だからこういう行為を楽しんでくれる女性もいるのかと喜びを感じたと同時に不安も募る 「私みたいな人ってやっぱりいない?」 愚問だったかもしれない。 彼女は仕事で来ただけで、私は消費者で それ以上でもそれ以下でもない。 でも以外と見た目に反して優しくて 「あんた。うちのとこ結構常連でしょ。有名だよ女なのに女を呼ぶ変わったヤツって、でもね私は嫌じゃないよこういうの」 私はその言葉に返事ができなかった。 最近じゃ当たり前になってきたが 『レズビアン』なんて当事者はなかなか勇気を出せない。 だから救われた気がした。 『レズビアン』じゃなくても相手をしてくれる女性がいることに まだ世間の目が私のアイディンティティを否定する でもここはそれをも許してくれる。 仕事を名目に、してくれる。 だから私は求め続ける。 彼女が帰ってまた携帯を手に取る。 「お世話になっております。偽愛社です。お好みの女の子を選択してください。」 「私レズビアンなんですけど…」 「ありがとうございます。問題ないですよ。私達皆、レズビアンなので…」 「え…」

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何回目の誕生日

もう何年経っただろうか ただ過ぎ去る四季を 微かに感じながら 会社に向かう 桜吹雪にあい 照りつける日に汗を流し 枯れ散る葉を踏み鳴らし 肌を切りつける寒さを越え 落ち着く間もなく日常がすぎていく。 いつも通る道も人も 皆同じ日を時間を過ごしているはずなのに 毎日何もかもが変わっていて 不思議とそれに嫌気は無く。 身体が適応しているのだと思った。 ある日 変わった館が目に入った 「あなたを見ます」 何故か私は足を止めた。 そしてその文字を掲げる館に入った。 「ご要件は…」 中には黒ずくめの女がいた。 黒いローブを深く被り 皺が少し見える。 老婆だろうか 「あなたを見ますと貼り紙を見たもので」 恐る恐る老婆に話した 「君はいくつだい」 仕事でもよく聞かれる話題なのに 私はその時答えることが出来なかった。 「年齢は分からない…です。」 知られたくないと本能的に嘘をついた 「なぜ…」 静かに老婆は言う なのに、見透かされているかのような そんな気がした。 「私は年齢を言うのが怖いんです」 自分の声が震える 「どうして…」 老婆の問いに自然と想いを言った 「自分の年齢を言うと皆、私を捕まえ警察に突き出すのです」 老婆は笑う 「はっはっはっ、それはそれは面白い」 私は怒り感じた。 皆なぜ笑うのか。 私は理解ができなかった 老婆が笑いながら私に言う 「今日は何月何日だい?」 「え…」 唐突に聞かれる。 今日が何月何日か 仕事を始めてから日付の感覚がない。 「えっと…」 私は戸惑う 思い出そうとしても分からない 「今日は5月3日だよ」 私はハッとする 5月3日は私の誕生日だ 老婆は知っていたかのように薄気味の悪い笑顔で 私を見つめた 私はその顔を見て、館を飛び出した 家に着き、鏡を拾い顔を見る 久しぶりに見た自身の顔に私は驚愕した 長く無造作に伸びきった白髪に白髭 よれた服に古びたサンダル ずっと現実から目を背けていた。 「私はずっと…」 項垂れるようにゴミ袋に体を倒す 生臭い匂いにももう慣れていた。 だって私の家はここなのだから… 皆が、私を見る目もようやく理解できた。 「ホームレスになったのか…」 何回目の誕生日。 私は何歳までこうしているのか

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死神と僕

『死にたい』 最近の口癖だ 『死んでどうすんだよ』 死神が言った 俺は先日2年付き合った彼女にプロポーズした。 振られたが… それから死神が見えるようになった。 『お前が見えるようになってから1ヶ月、俺が死ぬ気配がないんだが』 死神の方を見ると「さぁな」と言わんばかりに顔を背ける 『俺はもう生きる価値を失った。奪うなら奪えよ。命』 将来を誓いたい相手に振られて希望が見えなくなってたところだ。 この先を考えることを放棄していた。 『もう喋るな』 死神が冷たく放った 深くため息を着いて 俺の首元に鎌の刃を向ける 『死にてぇんだよな。何震えてんだ?』 自分の震えた姿を認識し。 死ぬ覚悟が出来ていないことを実感した。 『お前はまだこの世に未練があるんだろう』 自分のやり残したことを考えた。 癇癪を起こしそうになるほど張り巡らせた。 あれこれ出てくるのは全て叶うはずのない欲望の話。 俺には無理だと諦めていたはずの思いばかり ただ一つだけ 親、友達に必要とされたいと まだ一緒にいたいと思えた。 『そうだ。それがお前のこの世の未練だよ。』 死神は口角を上げ不気味な笑みで語りかける その日から俺は友達に連絡し 飲み明かした。 仕事も友人との関係にも満足して いつしか死神の姿は見えなくなっていた。 落ちた人生だったはずなのに 死神のおかげで今は人生を謳歌している 順風満帆の日々 そんな俺にもまた春が訪れる 素敵な女性とお近付きになれる日が来た。 再度起きる人生の絶頂期 そこで俺は事故にあった。 見知らぬ天井と遠く聞こえる複数の叫び声 『どうだ、残りの人生は』 聞き覚えのあるドスの効いた声だけがはっきり聞こえた 『しに…がみ…?』 視界には複数の人影 それを塞ぐかのように大きな黒い影が 俺の視界を覆う 『お前の死期は元々近かったって言うことだ。』 俺はこれからの人生の生きがいを見つけたのに どうしてこのような残酷なことを課すのだろう 『死相丸出しの魂は美味くないからな。ピンピンした魂じゃないとなぁ』 意識もおぼつかない中 親族や友人たちの叫び声を聴く 「結局未練ばかりだ」と涙がこぼれた。 『夢が叶ったじゃねぇか』 「バカ言え。死んだら何も感じないじゃないか」 親族や友人の声ももう届いてない。 俺は必要とされていたのか 最後まで聞けなかった 『じゃあな』

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醜い大人

捻くれてた大人になった 人は経験を得て成長する。 僕は幼少期失敗という経験をした。 校長室に呼ばれるような悪事もした。 親から怒られて、散々な思いをした。 だからもう怒られたくないと。 怒られまいと人目を気にした 喧嘩をした友達を見た。 本音をぶつけ合って揉めたそうだ。 俺はその時に思った 『言わなきゃ揉めなかっただろうに』 『もう友達に戻れないかもしれないのになぜ喧嘩をするのか』 当時の僕は本当に理解ができなかった。 意思はあった。 したいことも。 でも人は陰口を言う。 やりたいことをしている人間に 裏でコソコソ言っている。 それを聞いてきた。 だから何かを始めることを怖がった 人と衝突することが怖かったから そのせいだろう。 今大人になってその思考は捻くれだと。 そんな人間は生きている意味が無いのだと。 個性を出すからこそ存在価値を見いだせる。 俺にはそれがない。 ただ合わせて、生きてただの数合わせのようなもの これからは自分と向き合い自分の気持ちをちゃんと伝えないといけないと心の底から思うようになった。 醜い大人になっていい。 自分の気持ちをはっきりと伝えることが大事なんだ 自分と向き合って、やっと相手と向き合える。 だから信頼関係が生まれる。 成長の時だ

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贖罪

最低だった 『楽しいね』 ただ最初はそれだけだった。 彼女は心からそう思ってくれていただろう。 本音も言えない僕を待ち続けてくれた 優しく素敵な女性だった。 だから言えなかった。 傷つけたくなかった。 だから嘘をついた それが1番傷つけることを知っていたのに 会う度に好きが増していく この感情と裏腹に 罪悪感が芽ばえる 好きが増せば苦しくなる。 でも、会いたい気持ちを優先した。 それほどまで、魅力的な女性だったから… 彼女は僕に尽くしてくれていた。 僕には足りないものを全て持ち合わせていた だから惹かれたのだろう 何度か会い、夜な夜な電話もした。 その時 『付き合いたいと思っている』 そう言われた 僕はとても嬉しかった。 ただ素直に付き合いたいと思った。 でも言えなかった。 自分がついた嘘が その邪魔をした この嘘がいつかバレる。 その時のことを考えた。 泣く彼女のことを想像した。 どれもダメだった。 どのルートを辿っても泣かせる未来しか見えなかった でも、それ以上に好きだった。 好きな気持ちに甘えたのだ。 それはお互い様だったのかもしれない。 僕は相手の気持ちをわかった上で 関係を続けてしまおうとさらに甘えたのだ 『待って欲しい必ず答えをだす。』 そう言った。 僕は地獄に堕ちるだろうとまで思った。 素直に待つと縦に首を振ってくれた 今はそれだけで幸せだったのだ。 それから会い続ける度 彼女がしてくれること、理解してくれること 今まで自分を知られることが怖かったのに 受け止めてくれる人がいることに安心していた。 何度も待ってもらった答えを言おうと試した。 でもその度、罪悪感がその言葉を遮る。 せめての気持ちを伝えるために 僕は『好き』の2文字で誤魔化し続けた。 月日が流れる 相手の言動に限界が来た。 自分の嘘が剥がれる音もしていた。 だから焦っていた。 この関係を続けたかったから その先を望んだから その資格なんて最初から自分で手放したくせに ずっと自分のことを守り続けた。 守ることだけを考えた。 人を愛することを許される立場ではなかったのに でもその時は自分で必死だった。 理解をしてくれている彼女は そんなこと見え透いていただろう。 ケジメをつける準備をしていた。 確信をつく話が増える 僕はその話を避けたかった。 彼女の悲しむ顔や傷つく姿を想像して どうにかそんな顔をさせないように 嘘に嘘を重ね取り繕った 結果は変わらないのに。 『私は貴方を優先していた。貴方のことに尽くした』 その言葉が僕の心をえぐる 十分に理解していたから、伝わっていたから 何度も向き合おうと努力した けど、吐き出す言葉は言い訳と 自分を守る言葉ばかり。 なんで素直になれないのか 悔しくて仕方がなかった。 自分が一層嫌いになった。 辛いのは彼女なのに。 こんな時でも僕のことを考えてくれていた だから尚苦しかった。 いつの間にか 僕の好きは独りよがりの好きに変わっていて 行き場を無くしていた。 酷く後悔した。 これが自分の招いた結末だと。 自分で自分のことを何度も笑った 『馬鹿だな。なんで傷ついているんだ?』 『これがお前自身で起こした結果だろ?』 『辛いのはお前より彼女の方だろ』 最後まで自分の口から 『付き合って欲しい』 と言えなかった。 簡単な言葉なのに。 後ろめたい気持ちさえなければ 簡単に言えたのに 戻らない過去に縋り 何度も自分を責めた そこから彼女の言葉に 大きく距離感を感じるようになった。 その距離感を感じる度に こんなにも好きだったのだと 改めさせられる もう戻らないかもしれない。 二度と振り返ってはくれないかもしれない。 今までの自分ならそれで諦めてた。 相手を傷つけた代償は 償い切れないものではある。 僕は1人の女性の人生を狂わせた。 そうやって背負って生きていかないと行けないと実感した。 僕を正してくれる人なんて あなたの他にいないよと 心の底から思った この人となら… 未来が見えると思えていたのに 幸せな家庭も築けると 確信に近いものを薄々感じていた。 愛情が守りたいに変わっていた。 でも全て自分で壊した。 傷つけた分。 逃げた分。 失った信用分。 取り返しはつくものではないけど 今度は俺が傷つき向き合っていく いつかまた俺を見てくれるなら。 その時は今までの謝罪を込めて 責任をもてる人間になって もう一度あなたに 『僕があなたを幸せにしたいと』 伝えれるように成長していたい。

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故人へ

亡き人よ。 貴方の顔を眺めながら 私はこう思う。 美しいと… まるで眠っているような とても綺麗な顔をして 普段は流れるはずのない 不本意な涙 先立たれた怒りなのか。 悲しみなのか。 寂しさなのか。 はたまたその全てなのか。 わかる余地もなく。 ただ、あなたの顔を見た。 もう一度笑ってくれるのか。 不器用でも苦笑いでも。 なんでもいい。 もう一度その口角を上げて 笑ってくれないだろうか。 人の死を受け止めることが どれだけ苦なことか。 わかって欲しいわけではない。 笑っていてくれよ。 そう思っているのかもしれない。 笑っていたかったよ。 本当なら。 ただ、そう思えば思うほど 流れる雫を俺は止めては行けないと思う。 思い出に。 その生活に。 私たちが目に見えぬところに 私たちがいて、 私たちを想ってくれていたのだと 実感する。 最期に何を考えて、何を思っていたのだろう。 最後の別れを前に 俺は貴方を『友』だと。 強く思った。 貴方のことだ 『幸せになれよ』 なんて台詞を言うのだろう。 なってやるよ そう返すのがいいのだろうな。 しかし私はそうは思わなかった。 貴方がいてこそ私の幸せだと。 辛かった。 幸せの一が減ったように。 あなたがいなくなることで 幸せが辛いに変わるのだと。 関わり持てば幸せなんだ。 関係値なんかの問題では無い 失えば辛いんだ 貴方の隣に飾られた。 思い出の数々 私たちが知らない場所で 知らない誰かとの思い出を見ても 貴方を思う人たちの 多大なる思い出があったこと 私はその思い出を 視ることができた。 笑って欲しいと思っているだろう。 笑ってやるよ。 ただ、今は… 貴方が生きたいと願った分 私にもその報わなかった思いを 流せなかった涙を 貴方の代わりに 泣かせてはくれないだろうか。 最期の瞬間。 苦しかっただろう。 私たちには分からない苦痛を味わっただろう。 そんなことも分からせないほど 綺麗な顔で眠ってしまって… 散りゆく貴方を 私たちはいつまでも… 安らかに 亡き人よ 哭く人よ 貴方達に 幸あれ

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馬鹿な女

私は馬鹿な女だ。 少し友達とBARで飲んでいた。 タバコの煙とお酒と少し騒がしい雰囲気に 気分が悪くなってきた。 酔いが回り外の空気を吸う。 「あっ」 外に出ると。 寂しそうな横顔。 煙を吐く男性に少し惹かれた。 「隣どうぞ」 男はこっちを見ずに私を椅子に座らせる 「お兄さんも酔っちゃったんですか?」 そーっと話しかけてみる。 「うん。酔ってるかも。」 掴めない雰囲気を醸し出す男に 私は何故か気になって仕方ない。 ソワソワしてると 「ねぇ、お姉さん。この後、暇?」 「えっ?」 「なんかお姉さん見てると人肌が恋しいなって…」 私も酔っていたんだと思う。 その言葉に「はい」と返事してしまう。 手を引かれ、ホテルに向かう。 初めて会う男性と会ってすぐ。 絶対にないと思ってたのに。 今日は何故か受け入れてしまう。 「うまっ…んんっ…」 うますぎる。 気持ちいい。 チカチカして息が荒くなる。 遊んでる男なのはすぐに分かった。 行為を終えてシャワーから出る。 少し酔いも冷めて来た。 ソファーでタバコを吸う男を見る いつ見ても寂しそうな顔をしている。 気になって彼に話を聞く。 「なんでそんな寂しそうな顔をしてるの?」 「ん。そんな顔してた?」 「してた。」 「なんでだろうね。」 「私を抱いたのはなんで?」 「えろかったから…?かな。」 「本当に?それだけ?」 「うん。本当にそれだけ。それに、これっきりだよ。」 私はほっとけなかった。 「もし必要なら私の事頼って。初対面だけど、あなたが気になって仕方がない。」 「ははっ、お姉さん。優しいね。そんなんじゃ俺みたいな狼に騙されちゃうよ?」 「うん。いいよ。騙されたいの。あなたには」 彼は目を見開いてまた寂しそうな顔をする。 「騙さないよ。そんなまっすぐ見られたら…」 「…?」 私はその言葉を理解できずにいた。 「どういう…」 遮るように彼が言う。 「君はほんとに面白いね。騙されたいなんて。騙されるのはこっちなのにね…ごめんこんな話。ねぇ、騙されたいんだよね。ならまた。騙されてよ。もう1回…」 私は頷き、体を委ねる。 また甘美な声をあげてしまう。 彼はまだ寂しそうな顔をしていて 切なそうな目をしている。 私はそんな彼を受け入れるしか無かった。 ーーー 1度の過ち。 何度だってあるわよね。 でも、また会えるのではないかとBARによる。 「あっ、」 「また会えたね。お姉さん」 「今日も1人?」 「そうだよ。1人で飲みに来た。あと。お姉さんも来るだろうなと思って」 「また私に騙されろって?」 「騙されてもいいんでしょ?お願い。」 「はぁ…」 わかってる。こんなの。ダメだって。 でも気になって仕方ないんだ。 この人の事。 私のことを遊びだとしても。 女のとしての寿命(時間)は限られている。 そんなことわかっている。 この人と幸せになんてなれない。かもしれない。 じゃあその後の幸せに向かってこの人を捨ててもいいのだろうか。 なら私だって利用しよう。 他のいいひとが現れたら捨てたらいい。 それまで依存してもいいよね。 今、私はこの人に尽くしてあげたい。 未来の幸せは未来の時に来る。 今後悔して、未来も後悔したくないから。 「ありがとう」 「どういたしまして、1個聞いてもいい?」 「何?」 「今何考えてるの?」 「俺って空っぽなんだよ。」 「え?」 「俺、本当になんも無いんだ。」 「何にも?」 「あぁ、昔いた彼女がいたんだよ。」 「うん」 「好きだった。凄く」 「うん。」 「信じてた。甘えてたんだ。」 「ん?」 「彼女は突然いなくなった。事故で。」 「えっ?」 「そこから心に穴が空いたように過ごしてた。この前会った時、君が凄くその彼女に似てたから抱いた。心に空いた穴が塞がるかもって、その子も騙してもいいからそばにいてって猛アタックしてくれてさ、いつの間にか俺が好きになってた。だからびっくりしたんだよ。こんなことあるんだなって。でも、正直埋まらなかった。」 「うん。いいよ。甘えても。私も利用するからあなたのこと。そういう契約にしよう?」 びっくりしたけど、何故か落ち着いていた。 彼の行動に発言。普通の人ならすぐに振ってるだろう。 でも、私も彼に縋りたかった。 さっきの話が作り話で嘘で騙されていたとしても。 好きになってしまったのだから。 何が好きかは分からない。 けど彼を見て彼を知ってわかる。 彼は不安なのだろう。 1度愛した女が突然居なくなることが 怖くてたまらないのだろう。 好きでもない私を知ってしまって 情が湧いて依存して 私を物にして失ってしまうことが だから本心は言わない。 もう彼は抜け出せない殻にいる。 だから私はその殻ごと包んであげようと思った。 馬鹿な女になってあげよう。 身を粉にしてもそばにいてあげる。 私の事が不必要になっても あなたが殻から出れるまで。

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諦めろ 人生

人生が楽しい。 そう思えたのは高校生までだろうか。 俺は風間風斗(かざまふうと)26歳。 独身。彼女なし。 冴えないわけでもなく。 可もなく不可もなくってところか。 至って目立つ訳でもない。 至極真っ当な人間側だと思っている。 今日はそんな俺の人生を語ろう。 スーツを着て出社する。 人並みに紛れて満員電車に揉まれて 疲れ眼で仕事をする。 休憩中、オフィスの屋上でタバコを吸って黄昏れる 「はぁ、俺の人生には華がない」 そう呟くと すると1人の女性社員が屋上に来た。 「あれ、風間先輩?」 そう声をかけたくれたのは 社内で人気の後輩。 彼女の名は「美空美玲」(みそらみれい)24歳 確かに可愛い。愛嬌も。それに…スタイルも 非の打ち所のない女とも言っていいほど ルックスは完璧だ。 性格は…そんな知らない。 絡まないからな。 俺とは無縁な人間だ。 「なんだ?屋上になんか用か?」 「ランチに誘ってくる男性が多くて、逃げてきました」 なんだ嫌味か。私はモテますよって? 「いいんでねぇの?モテモテじゃない」 そういうと後輩は不機嫌な顔をする。 「嬉しいですけどね…先輩は女の子に興味ないんですか?」 その一言に俺はドキッとする。 え、まさか俺のこと好き?んな事ある? いやないな。現実を見ろ俺。俺は凡だ。 そう言い聞かせながら口を開く。 「興味が無いわけじゃない。けど期待はしていない。」 「期待…ですか?」 「あぁ、こいつ俺のこと好きなんじゃないかみたいな期待だよ。」 「ひねくれすぎじゃないですか?笑」 「ひねくれてるかもな。でも俺は自分が傷つくのはもう懲り懲りなんだよ」 タバコを吸いながら懐かしい記憶を思い出した。 あれは中学の時… ーーー 「好きです。付き合ってください」 「ごめんなさい。」 可愛くて仲も良かった女の子。 周りからも仲が良くて付き合ってるとも噂されていた。 俺は勇気をだして告白したんだ。 でもそれは勘違いで… 「あのさ、風斗」 「何?」 「俺、〇〇ちゃんと付き合ったんだ。」 「え…?」 「〇〇ちゃんから告白されてさ…」 俺の当時の友達。 もちろん俺の恋愛も相談していた。 だから好きな人に振られた次の日に その子と友達が付き合ってたなんて。 振られた時点で諦めようとはしていた。 でも嫌な思考は止められなくて。 〇〇ちゃんは俺の友達のことが好きで 逆にいつから好きだったのか。 俺と仲良くしてたのは友達に気があったからなのか。 友達は逆に狙っていたのか。 信じられなかった 考えても考えても無駄なことだと思った。 それでも気づくきっかけをくれたこともあった。 それは俺が告白された時。 当時から俺はどちらかと言うとモテる側で 何人か想いを伝えてくれることがあった。 好きではなかったため、断り続けていた。 俺もまた好きになった人に告白をしていたが 全て玉砕していた。 モテるという少しの自覚と期待があったのに。 どうしてこんなにも好きな人からは好かれないのか。 その時俯瞰して考えたんだ。 俺に告白してくる人は俺にとって興味もない人で。 だから振るし。 だいたい興味がないようにしてる人に惹かれていた気がする。 友達も〇〇ちゃんには興味がなく、俺以外で接点はなかったはずだ。 だけど〇〇ちゃんは友達を好きになった。 そこで俺は思ったよ。 あぁ、興味を持ったら好かれないんだ。ってね 確かにから回っちゃうし 好きになって欲しくて普段通りの行動より大袈裟にしたり。 そういうのが逆効果なんだと。 ならもう興味を持たず普段通りにしてしまえと そう考えた。 ーーー 「風間先輩?」 後輩が覗き込んでくる。 「あっ、すまん。昔を思い出してな…。まぁあれだな。興味ない人に好かれるし、興味ある人には好かれないよな。」 「分かります。あっ風間先輩、お昼一緒に行きますか?」 「え?あぁ。これ吸い終わったら行こうか。」 「はい!」 俺は期待しない。こんな可愛い後輩と何故かお昼を 一緒するようになるなんて。 やっぱり期待しない方が上手くいくんじゃないか。 なんて本気で思ってしまう。 ーーー 少しオフィスから離れた定食屋に入る 「風間先輩はよくここでご飯を食べるんですか?」 「ん。まぁな。安いし美味い。美空は?」 「私は普段は同期と近くのカフェですね」 「やっぱりそっちの方が良かったか?」 いやまぁ、そうだと思ったよ。定食屋ってな。 てか周りのおっさんたちこっち見すぎだよ。 可愛いよな。わかるよ。ごめんなこんな俺がこんな美女連れてこんなとこ来て! って少し優越感と煽りを含む気持ちで注文をする。 「ご馳走様でした!」 「ご馳走さん」 「奢っていただいてありがとうございます!」 「いいよ。先輩だからな。」 店を出てすぐにタバコに火をつける 「あ、すまねぇ。くせでつい。タバコ嫌いだったか」 「いえ!全然!気にならないですよ!結構吸うんですね」 「まぁな。」 「風間先輩は彼女がタバコやめてって言ったらやめますか?」 その質問に俺は試されている気持ちになった。 よく考えてしまう。 あれだよな。「やめる」と言ったら 「優しいですね」 「いい人ですね」 で終わってしまうのだろうな。 逆に「やめないよ」っていえば 「結婚してもやめてくれなそう」 「クズだな」 なんて思うのだろうか。 こういう時はどういう選択をすればいいのか。 毎回思うんだ。 まぁ期待しなくなってからはいい印象を与えることはもうしていないからな。 そういう思考の末、「やめない」という選択をとる。 「やめないよ。」 「風間先輩って結婚したくないんですか?」 「まぁ、今はそんなに結婚願望もないな。美空は?」 「私は…今は無いですかね」 こんな会話も好きなら少しドキドキして話せたのだろうか。 期待をしなくなってから何も色が無いように思える。 もし期待をする人間でも、俺ならから回って引かれていただろうな。 なんて、今この美女を隣に歩かせている状況に幸せを感じて満足する。 オフィスに戻り、少しザワつく。 同僚や上司が俺を見る。 それはそうだ。 こんな美女後輩を連れて帰ってきたのだ。 ランチのお誘いをする社員が山ほどいる中 俺は努力せずに成功させてしまったのだから 「おい、風間。美空ちゃんと昼いったのか!?」 「え、ああ、そうだけど」 「ど、どういう流れで!?」 「屋上の喫煙所いたら、なんか来たから…?」 「はぁ??」 さすがにランチのお誘いを断って逃げてきたから屋上に来たなんて言える訳もなく… 「意味がわからない…」 そう同僚が言いながら仕事に戻る 仕事に戻ろうとパソコンに目を向けると 1通のLINEが届く。 (先輩LINEしちゃってすみません。なんか大変なことになってましたね笑) (あぁ、美空の影響力とんでもないな。ちょっと怖いわ。) (私もです。付き合ってるの?って同僚からLINEとか来てて、ちょっとびっくりしてます。良かったら明日も、お昼行けたら行きたいんですけどどうですか?) (昼の時間が合えばな。) (もちろんです!今日は奢って貰いましたけど、明日は自分の分はしっかり出すので気にしないでくださいね!) いい子過ぎないか。好きになっちゃうよ。 いや、ダメだ。そんな思考がダメになるんだ。 そう言い聞かせては居るが顔がほころんでしまう。 ニヤける顔を抑え仕事を終わらせる。 ーーー 「お疲れ様です!」 美空が俺を見つけて駆け寄ってくる。 正直、嬉しい気持ち半分と周りの目線が怖いという気持ちで、戸惑う。 「お疲れ様、もう終わったのか」 「はい!風間先輩も終わったんですね。」 「あぁ」 「一緒に帰りませんか」 「あ、あぁ」 この子はこのルックスで魔性の女なのであろうな。 俺でなきゃ好きになっちゃってるよ。 てか、もうこの子俺のこと好きだよね。 好きじゃなきゃこんなこと言わないよね。 そんな思いとは裏腹に 信頼なのだろうなとも思う。 周りの男は好きになるだろうし、期待もする。 逆に俺はそうならないだろうという安心感を抱いているのだろうと思う。 だからこそのこの関係だろうし 少しでも俺が好意を出せば崩れるような。 そんな関係だと俺は思っている。 「美空は、彼氏はいるのか」 「えっ。いないですよ。」 「好きな人もいないのか」 「えーっと、いますよ。」 身長差なのか。 上目遣いでこちらを見てるように見える! 俺ですか?俺なんですか!!俺ですよね!? こんな気持ちになって楽しんでる26歳。 童心を忘れないおじさんだなと感じてしまう。 少しドギマギした気持ちのまま それ以上深堀することもなく会話し 駅で別れ、帰宅する。 (お疲れ様です!先輩今日は送っていただきありがとうございました!) (お疲れ様。家ついたか) (はい!もう寝れます。愚痴も聞いていただいてありがとうございます!明日からも仕事頑張れそうです。) (あぁ、明日も頑張ろう。おやすみ) こんな毎日が続くことに期待と不安を抱き 俺も眠りにつく。 ーーー お昼時。 今日はやけに喫煙所に人が多い そういえば昨日喫煙所にいた事を同僚に伝えたからか。 ここまで影響力を与えるあの女は本当に怖いなと思い。喫煙所を後にする。 「おい!風間!」 同僚が駆け寄ってくる 「どうしたんだ?」 「まだ昼いってないよな。」 「あぁ、今からだけど」 「へぇ、じゃあ今から飯行こうぜ」 「あ、えっと…」 「お前に拒否権ねぇからな!美空ちゃんとお昼なんて行かせねぇ」 なるほど、やはりそういう魂胆か。 俺もなぜ美空と行こうとしていたのか。約束という約束ではなかったはずだ。 断っておこうか。 考えているうちに声をかけられる 「風間先輩!」 「あぁ、お疲れ様」 美空が俺をみつけ話し掛けてくる。 同僚が俺の言葉を遮るように声をかける 「美空ちゃん!今からご飯?良かったら2人でご飯行かない?」 「えっ、あぁ、」 困り顔で俺を見る。 すまん。これは助けられない。 という気持ちで見返す。 「無理だったら、風間とご飯行くから」 「あぁ…」 美空が返す言葉なく後ずさる。 こいつ本当に鬼みたいなこと言うよな。 可哀想だろ。 いたたまれなくなって俺が案を出す。 「3人で行けばいいだろ」 安堵する後輩と空気読めと言わんばかりにこちらを見る同僚。 どうしていいか分からずとりあえずファミレス向かう。 座席に座って同僚が口を開く。 「ふたりって付き合ってんの?」 美空を見る少し慌てた表情をしていた。 俺は 「付き合ってないよ。そういう感情はない。」 「ふーん?じゃあ美空ちゃんは?」 「わ、私は…私も先輩は優しくて、皆さんと違ってそういう目で私を見ないので信頼してます。」 だよな。そうだと思っている。 間違ってないよ。何も… 「へぇ?こいつも男だよ〜スカしてるだけで、美空ちゃんのこと狙ってるよな!」 こいつ。本当にガキか? さすがに俺もイラついてきたぞ。 「狙ってねぇ。お前みたいに節操無しじゃないんでな。だいたいこんな可愛い後輩とお前が付き合えるわけないだろ。これは俺にも言えたことだ。気が悪い。俺は別でお昼に行く」 言いすぎただろうか。 抑えられないイライラが募る。 俺はどこから期待していたんだろうか。 美空が俺をそう見ていないと思っていた。 「信頼しています」あの言葉を言われた時点で 俺は手を出すことを許されないだろう。 同僚が言っていたことも間違っていない。 俺にも多少の下心を持っていた。 少し。ほんの少しだけ。 美空が俺のことが好きだと期待していた。 期待していた自分にイライラしていた。 店を出る俺を追いかけてきてくれるんだろうと 期待している自分も苛立たしい。 嫌悪の雰囲気で出てきたからだろう 追いかけてくる気配もLINEも… 結局期待をしていいことなどなかった。 オフィス前の公園のベンチに腰掛け タバコを吸う。 また、期待して日常を失う。 少し楽しかった時間も長くは続かない。 この結末が見えていたにも関わらず 俺は今の幸せに手を出した。 俺は幸せになれるのだろうか。 それに気づくのはまだ先の話かもしれない。 期待しないと言い聞かせて実は期待しているんだろうな。小さな喜びを大きく感じられるように 「諦めろ人生」って

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禁距離リスナー4

今日はリア凸の日 人骨の件は私たちは被害者として捜査対象から外れ、少しの落ち着きを取り戻していた。 以前から連絡を取りあっていた0cm君から告白され 1ヶ月。ずっとDMをしている内に1度会うことに。 「ナズナ。お待たせ。」 「わぁ…0cm君だ…」 現れな男性が見た目がすごくタイプで息が詰まる。 「やっぱり近くで見るとほんとに可愛いね。やっと会えて嬉しい」 「私の顔見るのは初めてでしょ!もう!」 「遠くで見てるだけの存在だったからさ」 「配信で??」 「まぁそんなとこ」 心臓がはち切れそうなほどうるさい。 でも今日はそんなドキドキしてられないのだ。 なぜなら…私は彼を振るから。 デートプランは彼が決めてくれていた。 少し私の職場の近くばかりなのも少しヒヤヒヤしていたが。地元なのに知らないところが多く楽しんでいた。 その時。 「おー!菜々香!」 聞き覚えのある声がした。 会社の先輩だ。 「えっなんで先輩っ」 私は慌てて彼を見る しかし彼は少しニヤついた表情をしていた。 「菜々香なんしてんの?ん?男?なんだ男いたんだ…」 「えっ?いや違います!彼はその友人で!せ、す、好きなのは先輩ですからぁ!!」 私はあわててとんでもないことを口走ってしまった。 私は0cm君を気になっていた。 けど、告白された時ネット恋愛には正直迷っていたところもあった。その時に電話くれたのが先輩だった。その電話から1ヶ月話を聞いて貰っているときに先輩がそばにいてくれた。それで振ろうとしていたからだ。 今日はっきりしてから先輩に返事をするつもりだったから。 修羅場のような空気。 先輩が一言。 「とりあえず仕事戻るわ。今日は帰ったら絶対連絡して!じゃあ!」 私はそっと彼を見た。 彼は私を見ず。先輩が見えなくなった瞬間私の手を引いた。 「ちょ…いたっ」 彼の力が強い。 のと同時に怖いと思った。 私は逃げられないまま、彼の車乗せられた。 「なんでこんなことするの!!」 彼はしばらく沈黙の後 「はぁ?意味がわからない。僕と菜々香は結ばれる運命だっただろう!?なんであいつなんだ。俺の今までは完璧だったはずだ。なんで…なんでぇ…なんでだよォ!!!」 彼が1人で叫ぶ。 「おい。菜々香。なんで俺じゃなくて。あいつなんだよ。この前はあの元彼を捨てて俺にしてくれたじゃないか。」 「元彼?捨てた?どういうこと…」 「あの右手!あれ俺がポストに入れたんだぁ。あはっ、気づいてなかったよね。だって言ったら俺を選ぶじゃん。だからさ、自分から俺を選んで欲しくてあえて言わなかったんだ。そしたら右手を警察に届けたって。ああーあの時は震えたなぁ。やっぱり俺がいいんだって。なのに。なのになのに…!!!」 「0cm君が元彼を殺したってこと…?」 「あ?そーだよ。俺が殺った。」 「なんで…」 「ほら言ったろ?二度と会いたくないって。だから殺した。それに、亡くなったことを知った時もう一度会いたいって言ったろ?だから会わせてやったじゃん。まぁ右手の骨だけど笑」 「…」 「今日のデートコース。あの先輩という男と鉢合わせるようにルートも事前に組んでて完璧だったのになぁ」 「へっ!?なんでどういうことなの!?」 「え?なんでって、菜々香を見てたからだよ。あの日。初めてストーカーとして菜々香に切られたあの日から。」 「まさか…」 「そう。やっと。やっと一緒になれたと思ったのに。目の前であの男を振って俺を選ぶと信じてたのに。」 「やめてっ…!!!」 「俺じゃないなら0cmって名前も意味なくなっちゃったな。まぁもう大丈夫。後でお前が選んだクソ野郎と一緒にしてやるから。」 「へっ…?」 そこから私の意識は… ーーー ピンポーン 「はーい。」 「宅急便です。」 「え?頼んでないですけど、誰からですか?」 「えーっと…先輩さん?宛にゼロセンチ…??さんからですね。まぁお代はいらないんで受け取りお願いします。」 「あ、は、はぁ。」 「ありがとうごさいまーす。」 でけぇ箱だけど思ったより軽いな。 「てか菜々香のやつ。全然連絡くれねぇなぁ。電話かけてみっか。今日付き合ったしな。」 プルルル… その時… チャラーンチャラーン 聞き覚えのある着信音が箱の中から聞こえた。 「えっ?」 箱を開けると。 「うっっ、お゛えぇえええ…」 そこには首以外の女性のバラバラ死体が箱に詰まっていた。 ーーー 「ここがいつもの配信スペースかぁ。よく誰もいない時に入ったっけ〜」 配信ボタンを押す。 「皆さん久しぶりです。ナズナです!今日はみんなにご報告があります!久しぶりの配信お待たs…えっ?声が違う?えーでも近くにいるよ僕と禁距離に…なんてね…フフフ…」 ーーENDーー

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禁距離リスナー3

「きゃあああああ!!!!!」 大きな悲鳴で目覚める。 私は飛び起きて悲鳴の先に向かう。 「お母さん!?どうしたの!」 悲鳴をあげていたのは母親で、 腰を抜かしたように、ポストの前で座り込んでいた。 「ほ……ほっ、ほっ、ほねっ、骨がっ……」 指を指すポストの中を私も覗く。 そこには 綺麗な右手の骨が入っていた。 『イタズラ』 その言葉で済ませようともしたが、 イタズラにしては悪趣味だ。 誰かこんなことをするのか。 皆目見当もつかない。 私は咄嗟に 「警察に言おう。さすがに悪趣味がすぎるよ。ね?お母さん」 私はすぐにその骨をハンカチで包み警察に提出した。 「皆さん。今日は大事な報告があります。私ナズナ。しばらく休止致します。また落ち着き次第配信は再開致しますが、少し身内トラブルがありまして少しお時間かかるかと思います!でもみんな私の事忘れないでね!絶対だよ!ありがとう!!またねー!!」 たくさんのDMが送られてくる。 0cm君のDMに真っ先に返す。 「休止の件、大丈夫?話せないようならいいんだけど、俺がナズナの支えになりたいな。」 「ありがとう。この前の亡くなった元彼の話したでしょ?実はその件で少し警察に相談してて」 「警察?なんで?ナズナはもう関係ないんだよね?」 「無いはずだったんだけど、今日朝ね、ポストに右手の骨が入ってたの。怖くて警察に渡したら模型ではなくて、人骨だったの。しかも亡くなった元彼の右手の骨だったの。」 「そうだったのか。警察に渡したんだ。良かった。その判断で間違ってないよ。安心した。」 「当たり前でしょ!怖かったんだよ笑」 「そうだよね。このタイミングで言うのもなんだけど、俺、ナズナと付き合いたいと思ってる。苦しんでるナズナを支えたい。そばにいてやりたいと今回でめっちゃ思ったんだ今すぐにとは言わない。全部終わってからでいい。だから考えて欲しい。」 「えっ!?ほんとに言ってるの?…わかった。この件がスッキリしたら返事させて欲しい」 「うん。ありがとう。おやすみ」 「うん。おやすみ」 嬉しさと困惑と整理がつかないことばかり起こる。 ただ今起こっている問題を終わらそうと強く願った。 すると1件の着信が…

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