しらづ
69 件の小説気づく感情の沼
「お疲れ様!」 君はそう言って私の肩をポンと叩く。 ドキドキさせないで欲しい 私に気なんてないくせに… 彼は私がよく行くバーの店員で ある時から仲良くさせてもらっていた。 年下のただの飲み屋の男の子。 そういう認識だったのに 彼は仕事の愚痴や、私の話を真剣に聞いてくれる 私が意識し始めたのは 些細なことで 彼が私の好きな物を身につけていたこと。 「これ、好きって言ってましたよね? 俺も実際見て見たらすっごくハマっちゃって なんと、キーホルダー買っちゃいました! あ、一応色違いのお揃いのあるんで、 良かったらどぞっ」 そんなこと覚えててくれて、 しかも私のために… 自惚れるなと自我を抑えるが どうも考えるだけで口元が緩む (かわいいっ…) そう思った。 ハッとした時はもう遅くて、 でも自覚もしたくなかった。 「好きかも…」なんて ーーー 「ねぇ、これどう思う?」 私は一連の流れを友達に相談した 「え?んー。好きなんじゃない? てかそれ考えてる時点で、 好きだろうよ。付き合わないの?」 「それは…なんか付き合っていつかは離れるかもって思うの嫌じゃん。だったら友達のまま付き合っていたいかも」 「まぁ、色んな愛の形ってあるしね。 タイミングとかね。 でも逃しちゃダメよ。あんたの方が歳上なの。 行く時に行かなきゃほんとに後悔するよ?」 「わ、分かりました。」 友達の喝をしっかりと受け取り 私は自分の気持ちを再認識する。 ーーー バーにて 「いらっしゃいまs…あれ!?今日早いね!どうしたの!」 「いや私も早く仕事終わって飲みたくて?てか1人なの?」 「そーなんですよ!少ししたら他も来ると思いますけど!あ、あのさ今日俺早上がりなんですけど…良かったらその時間に一緒に上がりません?」 「飲み足りなかったら抜けないよ?」 「俺が奢るんで別のとこで飲みましょうよ」 「なんで?終わってからここで飲めばいいのに〜!」 彼が急に真面目な顔をする。 「2人きりで話したいことがあるんです。」 私は目をそらす。彼の眼差しが真っ直ぐで 引き込まれそうだったから 「あの。良いですよね?」 目をそらす私の顔を覗き込むように 彼は悪戯な笑みを浮かべて私を見る 「やべ、かわいいっす。」 私がその言葉に驚いて彼を見ると 彼はもう目の前に居て すぐに目をつむる私の唇を 彼がそっと口付ける。 「んっ。」 2人きりのバーで少し声が響く。 すぐに口付けを外した彼から。 「俺が2人きりになりたい意味分かりますか?」 どうしてドキドキすることを言う。 ヤリたいの?好きなの? でもそんなことは聞けないし。 私だって少しの下心はあるし。 ずるい。 「わかんないよ」 ボソッとつぶやく私に。 彼が優しく微笑んで。 「好きだから。ですよ。」 そこからはあまりお酒の味を感じなくて、 少しいつもより酔いが回る。 彼の肩を借りてようやく自宅につく。 彼の匂い。彼の声。彼の体温。 全て酔っててもはっきり覚えていて、 忘れられない。 彼も同じ気持ちでいることを教えてくれる。 大人になって、こんなことで好きになるなんて 思ってもなかったけど、 好きって気持ちは単純で、 気づいた時にはもう沼だ。
紐
見慣れない天井。 「どこ行くの?」 寝ぼけ眼で女を見る。 「仕事行くの。これでご飯とか買っていいよ。」 机の上にポンと置かれた1万円。 「今日はうちにいるの?」 「何?いて欲しいの?」 「別にそういうのじゃないんだけど…。急いでるから行くね!適当に過ごしといて!」 慌てて出ていく女。 「1万円かぁ。なんも出来ねぇじゃん」 溜息をつきながら スマホのトーク履歴を漁る ーーLINE名「ヒモ1」トークーー 「なぁ、今日空いてる?」 「空いてるよ?えっ、珍しいね!どうしたの」 「いや、○○に会いたくなってさ、家いるなら行っていい?」 「うん。いいよ!」 「じゃすぐ行く。あっ、タクシー代ないな」 「電車で来なよ笑」 「えー、歩きたくないじゃん。」 「会いに来てくれないの?」 「会いたいけどなぁ。」 「もう!タクシー代あげるから来て!」 「あざーっす、ほんと○○優しくて好きー」 「思ってもないくせにー」 バカな女。 でも俺からしたらいい女で 他人から見たら都合のいい女で 全部ひっくるめていい女。 「待ってたよ〜!」 「ん」 玄関に入るなりキスを交わす。 女のキスは愛情で。 俺のキスは挨拶だ。 服を脱ぎ、寝具を揺らす。 タバコに火をつけ 女に言う。 「俺さ。働こうと思うんだよね」 「えっ、どうしたの?なんで?」 「お金無くて以外にある?だからもう会えない」 「えっ、でも休みとかでも会えるよね??」 「しんどいじゃん。会いたいけどさ、でも1個だけ方法あるよ」 「何?」 「タクシー代。渡してくれたら笑」 「うーん笑。渡したらほんとに来てくれるの?笑」 「ちゃんと目見て、ほんとに行くよ?だって好きだから」 照れる女。 優しく顔を近づけて唇を交わす。 そしてこくりと頷く。 「はい。1万円!」 「ありがとう」 「帰るの?」 「家に帰らないとね。また来るよ」 「そっか」 今日はどうしようかと。 トーク履歴を遡る。 俺は女の子と紐(ヒモ)で結ばれている。 この子にしよっと… また何も考えず通話をかける 「今日さ家行っていい?どうやってって、、タクシーda………」 今日も俺は誰かの家に 紐を繋いで、好きと金をたぐり寄せる
朝、俺は振り返らない
ピピピッ… 大きな欠伸と共にベッドを出る。 軋むベッドを背にベランダに向かう。 朝起きて、タバコに火をつける 歯磨きをして、ご飯を食べる。 服を着替えて 寝癖の着いたロングヘアーの女が寝ぼけ眼で寄ってくる。 「今日も居ていい?」 今日の予定を頭で考えながら 「ごめん帰って。夜予定あるから鍵かけてポスト入れといて」 鍵を渡して、外に出る。 毎日のルーティーン 仕事が終わって、ポストを漁る。 鍵をとって開ける。 「部屋綺麗だねっ」 そう行ってくるボブヘアーの女。 「綺麗かな?」 「なに?他の女の子でもいたの??笑」 笑ってるけど疑ってるんだろう。 俺は思ってもない言葉を連ねる 「え?いないよ。てかまじで〇〇ちゃん来るから綺麗にしたの。」 「えー?ほんとー?どうせみんなに言ってるんでしょ!」 「言ってると思ってるんだ?なのに来ちゃったんでしょ。そーいうとこ可愛くて好き」 満更でもなく女は俯く 「好きだよ。1番」 軋むベッド。 朝起きる。 タバコ吸って、歯を磨く。 ご飯を食べて、服を着る。 「ねぇ」 俺は振り返らない。 今日も鍵を置いて家を出る。 「夜予定あるから帰ってね…」
純愛歌
路上ライブは虚しくて 通りすがる人たちを横目に意味の無い歌詞を 吐き続ける。 『今日も空っぽか』 もう何曲描いてきたのか覚えてもない。 ただ俺の歌詞は空っぽで 必死に歌っても伝わらない 下を向いて弾き語る。 ただのそんな日々を過ごしていた。 その日は珍しく ずっと立ち止まって聴いていてくれた女性がいた。 「明日もしますか?路上ライブ」 「えっ、あっはい。」 「分かりました!明日また聞きに来ます!」 丁寧に頭を下げ その場を去る女性を後目に 俺は楽器をしまう。 ーー 今日もまた空っぽの歌詞を歌う。 昨日いた女性は今日もいた。 ライブ終わりにその女性と 一言くらいの会話を交わす。 こんな日常が続いた 空っぽの歌詞に 少しその女性への想いを綴った歌詞を書いた物も増えた。 ある日から女性は来なくなった。 せっかくの歌詞もまた空っぽになった。 半年後、ライブ中にあの女性の姿が見えた。 終わったあと、その女性は 深々と頭を下げ 「来れなくてごめんなさい!」 俺も期待はしていなかったため 「大丈夫」 と素っ気なく返す。 すると 「私への曲はもう捨てちゃったんですか」 俺は顔を赤らめる。 バレないように書き綴ったはずの歌詞がバレていたこと。 恥ずかしく思えた。 いままでの気持ちも伝えたくて口を開こうとすると 「私病気なんです。だから来れなかったんです。」 突然の告白に唖然とする それでも言葉を振り絞って 「俺は毎日歌ってるから…また来てよ」 ーー 俺の曲を聴く度に毎回言ってくる 「私の曲はもう捨てちゃったの?」 笑って彼女は俺の隣で微笑む。 奥さんとして… とても幸せな時間だった。 病気がなければもっと君に愛を唄えていただろう。 懐かしの路上ライブ。 機材をセットして、昔と変わらないはずの風景を懐かしみ 今日は空を向いて歌うよ。 「聞いてください。『純恋歌』」
俺の本音
俺は騙している 「好きだよ」と… ーー 俺はモテる。 営業会社だから見た目のいい女も結構いる。 正直何人ヤッたか覚えてない。 教育係に任命された時、何も知らない初心(ウブ)そうな女だなと思って 快く受け入れた。 「あの。先輩…教育係っていつまでなんですか?」 不安そうな顔をした後輩に俺は揺さぶりをかけようと俺は言う。 「あ〜。1ヶ月くらいじゃないか?もうそろそろ終わりだな。どうした?不安ならずっと教育してやろうか?」 あからさまに動揺が見えたと同時に確信に変わる 「いける」 ちょろくかわいい女を前に顔が綻ぶ こういう女は勘違いする。 ろくに男も知らず恋愛経験も乏しいのだろう。 だから慣れない言葉で大人しくなる。 ーー 「ではカンパーイ!!」 今日は新卒の歓迎会。 社会人になって初めて飲み会で緊張しているのだろう。 あえて距離を取り様子を伺う 「なぁ、今回の新卒どうよ!お前の教育してる子胸デケェよなぁ?」 人が食いつく女を自分のモノにする時は何よりも気持ちがいい。 同僚の言葉を軽く流し、腰をあげる その時、俺の事を昔から毛嫌う女が新卒に声をかける。 「ちっ、めんどくせぇなぁ」 ここであらぬ事を吹き込まれ俺の作戦が 台無しになるのはごめんだ 引き剥がそうと向かうと 「私、す、好きとかじゃないですから!」 少し声を荒らげた新卒が顔を真っ赤に言う 俺はチャンスだと思い 「おい。酔すぎ」 そう言って後輩の腕を引き、店の外へ出る。 強ばった表情をする新卒をみて 少しの沈黙の後、口を開く。 「好きじゃないって俺の事?」 俺の事だとはわかってる。 その一言で揺らぐ姿を見るのも 最高に興奮する。 だから自分でちゃんと理解するよう。 目を見て自己判断が鈍った今 私は好きなんだと植え付けるように 自覚するよう脳に刷り込む 「このあと時間ある?仕事以外も教育してあげないと…な?」 堕ちた顔を見るのは酒より美味い ネクタイを軽く緩めながらスイッチが入る 女は本能ではダメだと拒む。 ただその状態に陥った時点で 俺の手のひらだと理解はしていない。 どうせ、お酒のせいにするんだろうと 俺も逃げの言い訳だけを考える ーー 「先輩、良かったんですか?」 「何が?」 「私として、、良かったんですか。」 事後、よくある会話だ。 思っても無い言葉を並べ適当に返す 「良かったよ。これからも教育してあげるから、夜空けててな。」 否定もしない。 この子は俺のことを考えて 日々を過ごすのだろう。 俺の気が向いたら声をかけるつもりだったが 何な言いたげな顔を見て察する 「私って先輩の…なん…っ」 キスをして続きを遮る。 わかってる。 何度もそうやって塞いできたから。 「俺たちは先輩後輩。それ以上でもそれ以下でもないよ。」 明確に、今のうちに、熱が覚めないうちに 期待を持たせたまま、その場を出ようとする 「キスしたくせに…」 そうやって心に俺がいて いつか離れないようにと すがってくればいい。 その時はまた愛してあげるよ。 男と女として 今日もまた別の女の匂いをまといながら 会社に向かう。 俺は女を騙している。 「好きだよ」と…
私の本気
私は騙している。 「好きなんだ」だと… ーー 私は新卒で営業会社に入社した。 営業会社だからなのか見た目のいい人も多い。 私の教育係になった先輩は社内でも人気の男性だった。 「あの。先輩…教育係っていつまでなんですか?」 営業回りを独り立ちをするタイミングが不安でもあり、問いかける。 前を歩く先輩が振り向いて 「あ〜。1ヶ月くらいじゃないか?もうそろそろ終わりだな。どうした?不安ならずっと教育してやろうか?」 その言葉に私は動揺する。 それを見た先輩はイタズラな笑みで笑う。 その余裕のある笑顔に心が締め付けられる。 ちょろいなぁとわかっている それと同時に実感するのだ 好きになってしまったのだと。 ーー 「ではカンパーイ!!」 今日は新卒の歓迎会。 社会人になって初めて飲み会。 緊張もあり、お酒が進まない。 「ねぇ、先輩ってどんな感じ?」 同僚の女の子が、教育係の先輩の様子を聞いてくる。 やはり人気があるだけ、先輩を狙う女性社員も多い。 そこで女性社員の先輩が間に入って話をし始める。 「あいつはやめとけよ〜。泣く羽目になるよ〜」 呂律も回らぬ状態で肩を組まれ、そう言われる。 「私、す、好きとかじゃないですから!」 お酒もあり、少し声を荒らげてしまった 少しその場が静かになる。 すると 「おい。酔すぎ」 そう言って教育係の先輩に腕を引かれ、私は店の外へ連れられる。 怒られると思って身構える。 少しの沈黙の後、先輩が口を開く。 「好きじゃないって俺の事?」 唐突の言葉に私は言葉を失う。 先輩はそのまま私の目を見て 「このあと時間ある?仕事以外も教育してあげないと…な?」 ネクタイを軽く緩めながら仕事中とはまた違う意地悪な笑みを浮かべる先輩に 私の本能はダメだと理解はしている。 でも私はお酒のせいにして、先輩に連れられる ーー 「先輩、良かったんですか?」 「何が?」 「私として、、良かったんですか。」 結局、夜の方も先輩に教育されてしまった私は 心も体も虜になってしまっていた。 ただ不安になって口に出してしまった。 「良かったよ。これからも教育してあげるから、夜空けててな。」 私はその返答を聞いて 今の状況を飲み込む。 理解していない訳じゃないけど はっきりさせたくて聞いてしまう。 「私って先輩の…なん…っ」 何かを察した先輩は遮るようにキスしてきた 「俺たちは先輩後輩。それ以上でもそれ以下でもないよ。」 それは先輩からの忠告で、私の立ち位置を明確にする言葉だった。 「キスしたくせに…」 だから私はこっそりと気持ちに蓋をして、 今日も先輩に教育される。 先輩と後輩の立場で それでもいい。 ほかの女と同じように教育するように 私もその1人なのだと… ただこの時間だけは 愛のある教育をしてくれる。 私は私自身を騙している。 「好きなんだ」と…
女の子は裏腹に
「私の好きなタイプですか?笑」 その声に僕は耳を傾けた。 僕はモテない。 陽キャも嫌いだし。陰キャと言いつつ女の子と楽しくお話できるやつも嫌いだ。 でもギャルゲーの中ではすぐに女の子を攻略できた。 「ふっ、この女も俺にかかれば一瞬だな!」 バイトの日。 「初めまして!今日からお世話になります。萌奈(もな)です!」 俺は一目で恋をした。 まさに理想。ギャルゲーに出てくるような容姿で何度も攻略してきた俺は行けるとまで確信していた。 休憩の時 裏で女性バイトたちが喋っているのが聞こえた。 「私の好きなタイプですか?」 そういったのは新入社員の萌奈ちゃんだ。 俺は耳を傾けた。 「ん〜。そうですねぇ、私は女慣れしてなくて、インドアな男性が好きですね」 俺は目をかっぴらき。俺ではないか!!と高揚した。 自宅に帰りギャルゲーを開く。萌奈ちゃんに似たキャラクターを何度も攻略する。 「よし。俺は告白するぞ!!」 翌日 耳を疑う言葉が聞こえた。 「萌奈ちゃん!同期の〇〇くんと付き合ったんだって!」 「あの子高身長でスポーツもしててサッカー部だったんでしょ?」 「この前もインスタでお出かけしてるの見たわ!」 「あの子モテるでしょうね!女慣れしてそうだけど、イケメンだもの」 俺は混乱した。 「タイプが女慣れしていない、インドアって言ってたよな…」 そうだ。噂の彼はそのタイプとは真逆だった。 何かがおかしい。俺はすぐにパソコンに向かった。 女性タイプ。女性心理、女性嘘。 何を調べても出てこない。ギャルゲーは上手くいくのに。どうして現実だけ… 俺は。どうしても理解出来ず。勇気を振り絞って聞いた。 「も、、もも、萌奈ちゃん!あの。」 「なんですか…えっ。ど、どうしました…?」 「萌奈ちゃんのタイプって、その女慣れしてないインドアってきききき聞いたんだけど、か、かか彼氏って〇〇くんなんだよね…ま、真逆だなぁって言うかなんか。その。」 「えっ…、あぁいや、私ももちろん女慣れしてない方がいいですし、インドアなのでその方が楽っちゃ楽ですけど、まぁどのタイプにしても、イケメンに限りますよ笑」 俺はその時現実を見た。 ギャルゲーのしすぎで、忘れていたのだ。 ギャルゲー主人公もイケメンという設定だということを… だから僕は決めたのだ。 2次元しか勝たん
隣り合わせ
隣り合わせ 教科書を忘れた君が机をくっつけ クスッと笑う 恥ずかしそうに笑うその顔に 僕は釘付けになってしまっていた。 隣り合わせ… 僕の鼓動が激しくうごめく チャイムが現実に引き戻す 机が離れ、君が離れる 隣り合わせ。 大人になって君を見つけた 誰かの隣に佇む君を 隣り合わせ 君の隣は僕ではなかった
擦り付け殺人犯
ある日テレビをつけていると 近所で無差別連続殺人事件が起こっているニュースが流れた 「うわぁ怖いな。物騒なことが近所でなんて…」 そう思ってると ピンポーン… インターホンが鳴った。 覗き穴を見ると宗教勧誘のおばあさんが立っていた 仕事で上手くいっていなかった僕は 包丁を手にドアを開けおばあさんを家に入れた。 そして、おばあさんを殺した 遺体は山に破棄し、その場を後にした。 しばらくは殺人を犯したことに恐怖と不安が込み上げていた。 また今日もニュースを見る 僕が殺したおばあさんが出ていた。 しかし犯人は連続殺人者と疑われていた。 その時の安堵は異常だった。 「これは使える…」 僕は人に罪をなすり付けながら殺人を次々に犯した。もう連続殺人犯は捕まったというのに… それを知ったのは警察が家に来た時だった。
蝋人形のなき声
今日は娘の命日 最愛の娘が行方不明になった場所に 嫁と来ていた。 当時の思い出に浸りながら 僕は古びた館に目を惹かれ 忍び足でドアを開けた。 「ごめんくださーい…」 軋む音と共に広がった光景は無数の蝋人形達だった。 リアルな蝋人形は少し気味が悪かった 奥から1人の老婆が 「この店に入ってくるなんて珍しいねぇ 1つタダで蝋人形をやろう。」 そう言って僕は亡き娘に似た蝋人形を抱え家に帰った。 ちょうど娘とこの蝋人形の大きさは同じくらいだったろうか。 部屋の隅に置くと、嫁が突然その蝋人形を壊し始めた 「嫌よ!何か気味が悪い!こんな蝋人形壊してやる!」 少し人肌を感じさせるような柔らかい蝋で出来たもので簡単に剥がれた すると一気に来る腐敗臭と共に浮き彫りになってくる人の顔があった。 嫁は恐怖の余り気を失い。僕は言葉を失った。 その蝋人形の中には… 行方不明になったはずの最愛の娘がいた。