ふぇるまーた
14 件の小説せーしゅん集め③
4月1日、エイプリル・フール。 悪戯や嘘をついてもいい日らしい。 「つーばきっ!」 夏紀がニコニコしながらこちらへやってきた。 なにかいいことでもあったのだろう。 「今日嘘ついた?」 「え?あぁ…エイプリル・フールだからか」 「ついてないならさ、いっそ1人づつついておこうよ。 どうせ今日しかついちゃダメなんだしー」 夏紀は屈託なく笑いながら、提案してきた。 まぁ私もついてないから…と承諾する。 「じゃあ私からねー。 ズバリ、今日私は朝ごはんを食べていません!」 夏紀はふふんとドヤ顔をしながら言ってきた。 「うわぁバレなさそう笑」 「でしょでしょー!それっぽい嘘ついた! じゃー次椿ね〜」 次は私の番。どうしよう。 もう余命のことを言ってしまっていいだろうか。 それとも、もっと大事な時に言った方がいいのだろうか。 でも、こういう時に言ってしまった方があとが楽。 そして最悪の場合嘘だと流すことができる。 「…実は私、余命3ヶ月なんだよね」 …い、言ってしまったあああああああ。 でも本当のことだししょうがない。 言ったって未来は変わらないしね。 「え?そんな、え? 嘘だよね椿?流石に…ね笑」 混乱する気持ちもわかるよ夏紀。 でもね、本当のことなんだよ。 「…ねぇ夏紀。 エイプリル・フールはいつまでかって知ってる?」 「え?そりゃ…4月1日全部じゃないの?」 「…実はね、嘘をついていい時間って正午までなんだ」 「…てことはつまり……」 うん。今は1時過ぎ。もう時間は過ぎてるんだよ。 だから、あれはほんと。嘘じゃない。 「……ねぇ…椿…なんか言ってよ……。 私信じれないよ……」 夏紀が崩れ落ちて泣いているのが見える。 ごめんね。もっと大事な時に言った方がよかったよね。 こんな…変な感じで伝えない方がよかった。 「椿…なんで…!もっと前から言ってくれなかったの! 私…まだ心の準備できてないよ……」 「大丈夫だよ夏紀。まだあと2ヶ月くらいあるからさ」 「もう2ヶ月しかないんだよ!」 そうなるよね。うん。私も最初そんな感じだったよ確か。 怖かったよ。辛かったよ。苦しかったよ。 「…ごめん。ごめんね」 夏紀のそんな姿見てたら、私も泣いちゃうじゃん。 その日はずっと、泣いてしまったんだ。
君を目指した
だいすきなあの子を目指してた。 私よりも、ずっとずっと先を行ってるけど。 レンアイもよくわからなくて。 自分自身のこともよくわかってなくて。 嫉妬と妬みと、ちょっぴり尊敬心。 あの子にどうしても追いつけなくて。 目から流した雫なんて。 全部夜に流れたんだ。 夜が隠してくれたんだ。 しょっちゅう転んで、どんどん距離が開いて。 私が転んで立ち上がるまでの時間。 あの子は止まらず先を行くの。 それがちょっとだけ悲しくて。 その代わり、追いつこうと頑張れるの。 追いつくだなんて、きっと一生無理だけど。 月を目指しているみたいだけど。 それでも、あの子になりたいんだ。 私にないものを全部持っているの。 悔しかったけれど。 妬ましかったけれど。 でも、あの子を目指したんだ。 いつか追いついてみせるから。 いつか、私が転んだら振り向くようにしてみせるから。 レンアイとかわからない私だけど。 あなただけにでも、追いついて抜かすから。
儚色
それは、儚い色だった。 とーめいで、空色っぽくて。 でも、ほんのり虹色が入ったような。 それが私だった。 私の人生は儚色。 ふわふわしてるだけで、終わっちゃった。 いつ生まれたのかもわからない。 でも、いつの間にかふわふわ浮いていた。 そのままどこまでも行けちゃいそうで。 雲の上?お空の上? いや、もっと遠い宇宙とか。 ふわふわゆらゆら。 行く場所はなかったけど。 ふわふわゆらゆら。 いつまでも浮いていた。 でも、あるときパチンって。 消えちゃった。 あっけなく、終わっちゃったんだ。 私の人生は儚色。 パチって弾けて終わっちゃったけど。 どこまでも、淡くいれたんだ。
せーしゅん集め②
2限目、歴史。 「1番眠たい時間に歴史か…」 とため息を漏らした。 シャーペンをくるくると回す。 私の中での授業時間を減らすため。 いわゆるサボりというやつか。 実際聞いたってなんにもなんないし。 将来歴史の先生になりたいなんてサラサラ思ってない。 人生の中で使うときなんかないよね。 ルーズリーフのはしっこに、「青春とは」って書いてさ。 その周りをしかくく囲って。 中にそれっぽいものを書いていく方が、よっぽど楽しかった。 真っ青な空を窓から見て。 「・青空の下で制服のまま水遊びをすること」 って付け足してた。 死ぬまでに1回くらいやりたいな。 頭の中がとーめいになっちゃって。 ほわほわって気持ちになっちゃって。 その後パチって弾けちゃうの。 「集中しろー椿ー」 先生に呼ばれちゃったね。 夏紀がくすくす笑ってるのが、目に見える。 そろそろせーしゅんから抜け出さなきゃね。
せーしゅん集め①
赤くなった夕日が街を照らした。 そろそろ帰ろっかと、親友の夏紀と共に公園を後にするところだった。 「そういえばさぁ、大好きな漫画がアニメ化することになったんだよね」 「は?いや、まぁ…それはおめでとう」 夏紀は少々困惑しながらも、こくりと頷いた。 こういうところが優しくて好きだ。 きっと何の話かよくわかってないと思うけど。 「そんでそんで、推しの声優当てようと思ってめちゃ考えてさ。 そしたら見事どんぴしゃで当たってたんだよね」 「あんたそういうとこの勘鋭いよね」 ノリノリで話す私と呆れながらも返答する夏紀。 タイプ正反対っぽいけど仲良いのちょっと嬉しい。 「椿さぁ、歌い手とかは好きじゃないの? 最近流行ってんのは〈五つ葉〉?だっけ?」 「残念ながら、歌い手とかにはキョーミないんだよねぇ。 てか五つ葉ってあれ?男性五人グループだっけか? キョーミないけどさ」 私がオタク気質っていうのを夏紀は嫌というほど知ってる。 ちょくちょくアニメ布教して一緒に語ってる。 いつかはあの漫画を布教して語ろうと、勝手に計画立ててんだ。 自転車をキコキコ漕ぎながら、人のいないコンビニを通り過ぎる。 地面はすっかり影が伸び、ぼやけていた。 「ねー椿。帰りにアイス食べん?」 「いーじゃんそれ!採用する」 あはは、と笑って、自転車の向きを変えた。 スクールバックにはお揃いのペンギンのキーホルダーが付いていた。 それは、風に揺られてふわふわと踊っていた。 2人の後ろ姿は、淡く脆く、消えてしまいそうだった。
君と、夏。
君がいない夏なんて、つまらない。 なんだか息がしづらいんだ。 買って飲んだサイダーも、どこか物足りなかったんだ。 どうしても、笑うことができなかったんだ。 君がいる夏が、楽しかった。 空がいつもより青かったんだ。 夏に、溶けていきそうだった。 心の底から、笑うことができたんだ。 いなくならないで。 置いていかないでね。 どうしても、背中が掴めなくて。 1歩先を進んで行ってるの。 夏を上手く扱えないの。 人よりほんのちょっとだけ、不器用だから。 君といる方が、楽しいんだ。 夏を精一杯、感じられるから。
せーしゅん集め
ぼんやりと、病院の前に立っていた。 「余命3ヶ月です」 と、医者から言われたことだけ覚えてる。 その他はなんにも覚えてない。 それだけ衝撃的だったんだろう。 「……余命、3ヶ月か……」 1度、口に出して言ってみるが、実感が驚くほど湧かない。 今を生きているからだろう。 「そっか、もう3ヶ月しか生きれないんだ」 そう思うと、涙が溢れてきた。 やりたいこと、ちっともできてないのに。 「…余生を思いっきり楽しもうかな」 涙をぐいっと拭いて、言ってみた。 もう3ヶ月しか生きれない。 でも、そんなこと関係ない。 今を、残りの人生を、思いっきり楽しんでやるんだ、と。 やりたいことを、全部やってやるんだ、と。 そう心に誓った。 椿のせーしゅん集めは、ここから始まる。 ____ ふぇるまーたです。 初の連載ですが、なんとかやっていこうと思います。
ぱれっと
ある日の授業。 ぼけっと窓の外を見ながら。 窓際の席ってサボれちゃうから快適だなとか思ってた。 こんなこと思ってるから成績あがんないんだけどさ。 黒板に書いてあることをノートに写すこともしないまま。 こっそり手紙をまわしたり。 先生の口癖ビンゴしたり。 でっかい練り消し作ったり。 これが俗にいうアオハルとかかなって。 みんなで語り合ったり。 屋上でTikTok撮ったりさ。 そんなことを、窓の外を見ながら考えてた。 空は真っ青でさ。 深い青の絵の具を塗ったみたいだったよ。
ある日。
夕方五時過ぎ。 カラスがカーカー鳴いていた。 山の奥が真っ赤に燃えて。 影も伸びているある夏の日。 空になったラムネ瓶も、真っ赤になってたんだ。 もう1日の終わりに近づいてる。 真っ黒なスクールバックを振りながら家路を歩く。 ふと、ラムネ瓶を見た。 全部きれいに飲み干しちゃって、中身はもうないけど。 除くと向こう側が見えるんだ。 未来が見えそうで、ちょっとおもしろかった。 瓶を持ち上げて、空に透かしてみたの。 山の奥の真っ赤な夕陽が透けて見えてね。 1日の終わりを模った感じがした。 今日もありがとう。世界。
夏秋日
屋上の扉を大きく開けて、思いっきり秋風を吸い込んだ。 夏が終わり、秋が来た合図だ。 ふわってスカートをなびかせた。 フェンスに座ってサイダーごくごく。 体を揺らしたら落ちちゃうね。 学校での最後の思い出。 ありがとうってみんなに伝えなきゃ。 さよならって世界に言わなきゃな。 スマホのメモ欄に文字をぽちぽち。 「ありがとう。そしてさよなら」 フェンスの下にスマホを置いて。 ぐらって体を風に委ねて。 世界がぐるぐる回ってる。 空が真っ赤なのがよくわかる。 またね、世界。 ぐしゃっと鈍い音がして、地面が真っ赤に染められた。