タキシード猫

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タキシード猫

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そら

プラネタリウム 夕月夜が顔を出すころ、子供たちの声が消えていく。 その静けさの中で、どうしても彼を思い出してしまう。 遠く遠く、この空のどこかに君はいるんだろうか。 そう問いかけながら、私はひとりで夜空を見上げている。 夏の終わり、二人で抜け出した公園。 制服の袖を少し折り曲げて、背伸びするみたいに見上げた空。 「この星座、なんだか覚えてる?」 君が笑いながら指差したあの瞬間は、今も記憶の中で鮮やかだ。 会えなくても、記憶をたどれば同じ幸せを見られる。 そう信じている。 あの香りとともに花火がぱっと開く。 打ち上げられた光は 一瞬で消えてしまうけれど、 光の中に、君の面影が浮かぶ。 花火はお盆に上がるもの——送り火のように、 君を思い出させる。 会いたくて、君のところへ行きたくて。 真っ暗で何も見えなくても、怖くても大丈夫。 だって、数えきれない星空が、今も変わらずここにあるから。 泣かないよ。だってあの頃、 君と見た空は本当にきれいだったから。 あの道に響く二人の靴音が、今も耳に残っている。 影が長く伸びるのを見つめながら、私はただ想う。 どんなに願っても、君はもういない。 それでも「君のそばに行きたい」と、 心の奥で何度も繰り返してしまう。 小さくてもいい。手を伸ばせるなら、 1番に君を好きだと伝えたい。 願いを流れ星に唱えてみても、届くかどうかは分からない。 それでも——泣かないよ。きっと君に届く、きれいな空だから。 会えなくても、同じ幸せを見つめたい。 花火が再び開いた瞬間、君の手を握った感触が甦る。 そのぬくもりを思い出すたび、どうしようもなく泣きたくなる。 でも、それはそれはきれいな空だった。 だから、泣いてしまってもいいのかもしれない。 あの日から時は流れて、 私はひとりで大人になった。 冷たい夜風に頬を撫でられながら、それでも君を探してしまう。 君と見上げた空は、今も変わらずそこに広がっている。 泣くと君が悲しむから、 私は強がって「泣かない」と言い聞かせる。 でも、もう大丈夫。君はいつも見てくれてるから。 だから私は今日も空を見上げる。 ——昔、君と見たあの空に。

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な。

Hope 覚えてる? 初めて二人で笑いあった日のこと。 小さな公園のベンチに座って、ただ笑い転げてた。 涙も混ざったけど、それさえも温かく感じたのを、 今でも覚えてる。 あなたの手のぬくもり、肩に触れたときの安心感―― あの感覚が、私の胸の奥にずっと残ってるんだ。 心が不安でいっぱいのとき、あなたを思い出すと、 なぜか力が湧いてくる。 言葉にできない想いが、私を前に押し出してくれるの。 怖くて立ち止まりそうな夜も、 思い出すだけで少しずつ勇気が増えていく。 どうして諦めそうになってたんだろう? 一人で抱え込まないで。 夢も想いも、決して一人で背負うものじゃない。 だって、私たちはずっと前から「一緒に夢を叶える」って決めてたんだから。 目を閉じて耳を澄ませば、答えはきっとここにある。 胸の中で、そっと光ってるんだよ。 青く広がる世界の果てには、まだ見たことのない景色がある。 あなたとなら、どんな道も怖くない。 泣きそうな夜も、失敗した日も、 一緒に笑えたら、それだけで救われる。 そうやって繋がった想いが、 私たちの道しるべになるんだと思う。 まだ届かない声に胸が押しつぶされそうな日もあるけれど、 信じていよう。 朝日が差し込む瞬間、きっと一緒に迎えられる。 変わらぬキズナを抱きしめて、どこまでも歩こう。 遠く離れていても、想いは消えない。 私たちは永遠に、遠い昔から決めてた場所へ戻るんだよ。 まだ見ぬ海へ、まだ見ぬ未来へ。 光を胸に、手を取り合って歩こう。 どんなときも、私たちは信じてる。

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How to Love 音を上げてくれ。 ほんの少しだけでいい。 俺の声が、あの子の奥まで届くように。 父親が刑務所に入り、家は崩れた。 母親の再婚相手は暴力的で、 彼女は夜の街に逃げた。 悪い仲間、悪い男、薬物。 気づけば風俗で働き、 妊娠がわかった日、診断書には「HIV」の文字。 その瞬間、未来の扉は静かに閉じた。 けれど、別の道もあった。 両親が離婚したあと、母親の新しい彼氏に、 母さんがいないときに暴言を浴びせられたこともあった。 嫌でたまらず、靴も履かずに家を飛び出した日もあった。 それでも母さんはその彼氏と別れ、 彼女は祖母の家で暮らすことになった。 それから月日が経ち、 制服のまま放課後は机に向かい、 努力の先に大学が待っていた。 そこで出会ったのは、真っ直ぐで優しい男。 やがて結婚し、子どもが生まれ、 笑い声が家いっぱいに広がっていった。 二つの人生。 分かれ道は、ほんの小さなきっかけだったのかもしれない。 友達のひと言、見知らぬ誰かの手、 あるいは、あの日、そっと差し伸べられた温もり。 君は知らないだろう。 蝶の羽ばたきが遠くで嵐を呼ぶように、 小さな出来事が人生を大きく変えることを。 だから覚えていてほしい。 君は最高の女性だということを。 美しいよ、本当に。 普通なんかじゃない、特別なんだ。 逃げても、いい。 怖くてもいい。 君のいる世界は、ほんの少しの、勇気で 声をあげたその瞬間から、この世界に光が差し込から。

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ツキミソウ 夕暮れの茜色が街を染めるたび、 どうしても君を思い出してしまう。 いつも二人で歩いた、家から駅までの道。 左側には君がいて、笑いながら僕の手を握ってくれた。 あの柔らかい感触や、肩に触れる温もりは、 今でも胸の奥に残っている。 強がって平気なふりをして、 あの時もっと素直になれなかった自分を、今も責めてしまう。 君を傷つけたくなかったのに、 自分の弱さが二人の距離を作ってしまった。 どうしてあのとき、言えなかったんだろう。 どうして気づけなかったんだろう。 あの時、時計の針が止まったみたいだった。 君の言葉で、僕はひとりになった。 どうして僕だけここに残されたんだろう。 涙を流しても、答えは返ってこない。 今も茜色の街を見上げると、つい君を探してしまう。 笑い声も、手の感触も、もう届かないのに、 どうしてか心は君を追いかける。 あの街の角、あのカフェの前、 二人で笑い合った景色が目の前にちらつくたび、自分の不器用さに胸が締め付けられる。 家から駅まで歩いたあの道―― いつも左側には君がいた。 でも、もう君と一緒には歩けないのかな? ふと横に目を向けても、大好きで、大嫌いな 君はそこにはもういない。 あの手の感触も、 夕日が沈むように少しずつ薄れていくのかもしれない。 あの時に巻き戻して、 君に優しく出来てたなら、、、 もう遅いよね....

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べてる

ペテルギウス 君と離れて、もう何年経つだろう。 でも、あの約束は今も胸に残っている。 「輝くのは二人一緒だって」——あの日、 君が笑いながら言った言葉。 親の転勤で、僕らは遠く離れて暮らすことになった。 子供だった僕たちは、ただ一緒にいることさえ叶わなかった。 それでも、引っ越しの前日、どうしても君と もう一度だけ空を見たくて、公園に行った。 夜風がひんやりと頬を撫でる中、僕たちは並んで芝生に座り、 頭上を見上げた。 あの頃、夜中にこっそり抜け出しては、 公園で星を見上げていたこともあった。 街の灯りも、寝静まった家々も、 二人の世界には入ってこなかった。 「ねぇ、あれは?」 君が指差した先には、ぽつり、ぽつりと赤い光が瞬いていた。 「星だよ。ペテルギウス」 君が教えてくれた。 赤く揺れる光は、まるで僕らみたいに寄り添っていて、 泣いたり笑ったり、 全部を繋いでくれるように思えた。 これまで、何十回も何百回もぶつかって、言い合った夜もあった。 でも、どんなに離れても、僕らを照らす光は昔の星のように、 忘れたころに届いてくれる。 手を取り合い、肩を並べて歩くことを約束したあの日の気持ちは、 今も変わらない。 不安な夜は、僕はつい強がってしまう。 「大丈夫、僕がそばにいる」 本当は、君のいない夜の長さに何度も負けそうになる。 でも、同じ空を見上げていると思うと、少しだけ胸が温かくなる。 赤く光るペテルギウスを見つけると、心の中で君に呼びかける。 ——聞こえる? ちゃんと繋がってるよ。 その光はきっと、君のもとにも届いているはずだから。 あの頃の僕らはまだ小さくて、でも今は―― 大人になって再会した僕らは、肩を並べて同じ空を見上げる。 あの日、公園で見上げたペテルギウスのように、 今は二人で輝いている。 泣いたり笑ったり、繋いだ想いを胸に抱えながら——。

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Wherever you are 私たちが初めて出会ったのは、高校生の頃。 廊下の窓から差し込む午後の光の中で、あなたが友達と笑っていた姿を、今でもはっきり覚えている。 あの時は、こんなにも深くあなたを愛する日が来るなんて、 想像もしなかった。 季節が巡るたび、私たちは少しずつ大人になった。 放課後の駅前、手を繋いで歩いた帰り道。 小さな喧嘩やすれ違いも、振り返ればすべてが愛おしい。 泣きたい夜も、夢中で笑い合った日々も、 全部が今の私たちをつくってくれた。 2人にとって、一番目の記念日は出会った日。 そして二番目の記念日は、6月15日。 私たちが家族になった日。 あの日の空は少し曇っていたけれど、 私の胸の中はこれ以上ないくらい晴れやかだった。 あなたは、私が笑っていられるように、 どんな時もそばにいてくれた。 「泣かせたくない」って、何度も言ってくれたこと。 「ずっと一緒にいる」って、まっすぐに見つめてくれた瞳。 その一つ一つが、私の宝物。 理由なんていらない。ただ、あなたと生きていたい。 この先も、同じ景色を見て、 同じ空気を吸って、同じ夢を追いかけたい。 あなたとなら、どんな日々も愛おしい。 もし人生に終わりが来る日があっても、 その最後の瞬間まで、あなたの隣で笑っていたい。 「ありがとう」って言葉じゃ足りないくらい、あなたを愛してる。 心から愛せる人。心から愛しい人。 これまでも、これからも、 ずっと——Wherever you are。 どこにいても、あなたと一緒に。

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Way of lif 〜これが、私の生き方 幼い頃から、私の周りはいつもざわついていた。 パパはもういなくて、ママはいつもどこか遠くを見ていた。 怒鳴り声と割れた皿の音が、日常のBGMだった。 泣き叫ぶ私に手を差し伸べてくれたのは、妹とママだけど、 みんな、毎日を必死に耐えていた。 公園で拾った小さなBB弾が、私の小さな宝物だった。 ボロボロの靴も、綺麗じゃないけど一生懸命磨いた。 そんな毎日を、ただ「生きる」ために過ごしていた。 学校へ行くとき、 イヤホンから流れる2pacの声が心を支えてくれた。 あの声は、まるで「ここで諦めるな」 と私に語りかけているようだった。 どんな壁も乗り越えられないものなんてない。そう信じて、 私は少しずつ前に進んだ。 誰かに助けられることもなく、 自分のことは自分でやると決めた日。もう振り返らない。 過去の痛みも、辛さも、全部私の一部。 あの時感じた孤独があったから、私は強くなれた。 夢はまだ遠いけれど、 音楽と共に進む私の道。 いつか、あのママに「ありがとう」と 伝えられるような自分の作品を贈りたい。 今はまだ小さな一歩だけど、確かなスタートラインに立った。 生きることは時に厳しくて、涙が溢れる日もある。だけど、 それでも私は諦めない。 これが私のWay of lif(生き方)。 誰にも代わらない、私だけの生き方。

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冬の幻 11月の夜明け前、私はそっとこの世界を離れた。 まだ寒さが胸に染みる頃、君の知らない場所へ旅立った。 あなたと出会う前の私は、愛なんてただの言葉でしかなかった。 体を重ねるだけで、心なんて必要ないと思っていた。 でも、あなたは違った。 寒がりなあなたのシャツにこっそり手を入れると、 「冷たい!」 って笑って手を引き戻す。 そんな何気ない仕草に、何度も心が溶けていった。 冬が好きだったのは、あなたが笑うから。 粉雪が降る日、はしゃぎながら抱きついてくれたあの温もりが、 今でも忘れられない。 今、あなたは震えた声で、かじかんだ手で、私を探しているのね。 どこにもいないとわかっているのに、探し続けるあなたの姿が胸を締めつける。 「逢いたい」――その言葉が夜空に響いている。 泣き虫で怖がりだったあなた。 どうか、泣かないで。 その涙は、あなたの頬を冷やすだけじゃなくて、 私の心も痛ませるから。 もし神様が奇跡を起こしてくれるなら、 私の願いはただひとつ。 もう一度だけ、幻でもいいから、あなたに逢いたい。 粉雪よ、止まないで。 手のひらでそっと消えないで。 儚い命のように、私たちの思い出も消えてしまわないように。 君を見つけられなくて、苦しくて眠れない夜。 でも私はここで、あなたの心の中に生きている。 涙はもう流さなくていいよ。 白い景色に私を映して、あの日の笑顔のままで。 私はずっと、あなたのそばにいるから。 だから少しずつでいい。前を向いて歩いて。 あなたの温もりを感じながら、ゆっくりでいいから。 いつかまた、暖かな冬が訪れたら、 その時は笑って「寒いね」って、また手を繋いでほしい。 私はここで、あなたの幸せを願いながら、静かに見守っている。 愛してる。ずっと。

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REGRET あの日、君が少しずつ僕から離れていくのに気づいていた。 でも僕はただ、見ていることしかできなかった。 切れそうな糸を、どうして繋ぎ止められなかったんだろう。 あの夜、君の吐息がまだ僕の肌に残っているのに。 流れ出したものは、きっと君と同じ色だったと思う。 君が捨てていった言葉を、必死に拾い集めては、 何度も耳を澄ませて感じてみた。 届かない声に耳を傾けながら、 ただ寂しさだけが胸を締めつけていった。 君が溢した涙も、無理に飲み込もうとしたけれど、 そのたびに胸が痛くて、君の温もりをもっと求めてしまった。 街の片隅に咲く赤い花を見るたびに、 ふと君のことを思い出すんだ。 君と似たピアスをして、髪色をしてたりしてたね。 鏡の中の自分に君が映るたび、胸が苦しくなった。 あの頃は確かに二人で手を繋ぎ、 肌を重ね合った夜が何度もあった。 でも今は、その温もりが遠くて、心は虚ろに揺れている。 雨に濡れた映画の最後のシーンみたいに、 僕たちの物語は色を失い、静かに終わりを迎えた。 それでも繋いでいた手の感触だけは、まだここに残っていて、 眠るたびに君を思い出して、寂しさが胸に募っていく。 夢は永遠に夢のままで、 安らぎもまた夢の中だけでしか感じられないのかもしれないね。 伝えたかった言葉は山ほどある。 でももう遅くて、後悔だけが胸の奥で燃え、 ちりになって少しずつ消えていく。 その一方で、君が少しずつ薄れていくのが怖かった。 もしも時間を戻せるなら、 もう一度だけ君を守りたい。 ありがとうも、さよならも、ちゃんと伝えたかった。 どうか、色褪せないまま、綺麗なあなたのままで。

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道 あの道を歩くたび、君の声がよみがえる。 高校の春、 まだ制服の袖が少し長かった頃。 あの日、初めて君と並んで歩いた道。桜が頭上で揺れて、 風に混じる甘い花の匂いまで覚えてる。 私はずっと、君のことが好きだった。 でも、その気持ちを言葉にする勇気が出なかった。笑い合える今が壊れるのが怖くて、ただ隣にいる時間だけを守ろうとした。 そうしているうちに、君には好きな人ができてしまった。 その瞬間、私の中の春は音もなく終わった。 胸が痛くて、でも泣くこともできず、 ただ空の青さを見つめていた。 あの日の空は、やけに遠くて、 手が届かない君の心を映しているようだった。 卒業式のあと、 君が突然「最後に歌いたい歌がある」って言ったよね。 少し照れくさそうに目をそらして、あの歌を歌ってくれた。 「今日の日を忘れるなと…」 歌詞の意味なんて、その時は深く考えなかった。 ただ、震える声と、君の横顔だけを必死に焼きつけた。 あれから10年。 私の生活から君の姿は消えたけれど、 あの歌は不意に耳に入ってくる。街角のスピーカーから流れたり、友達のカラオケで誰かが歌ったり。そのたびに、時間が止まる。 景色も音も、あの日の卒業式に引き戻される。 君はあの後、どんな道を歩いたんだろう。 私は大人になって、それなりに恋もして、 泣いたり笑ったりしながらここまで来た。 でもね、君と歩いたあの春の道は、 私の中で色あせないまま残ってる。 もし、あの頃に戻れるなら、迷わず言う。 ――「好きだよ」って。 たとえその先に、同じ結末が待っていても。 離れても、愛しています。 君がくれた歌と春の匂いは、これからも私の中で生き続ける。 そして今、私はちゃんと幸せに笑えているよ。

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