淡路 結波
46 件の小説液体時計
十二時ピッタリに鳩が飛び出す鳩時計からヒントを得て、時間ぴったりになるとトロトロに融ける液体時計が発売された。液体なので夏場はクーラーの代わりにもなり、腕時計タイプは携帯クーラーとして評判だそうだ。ただし融けるときは毎回全部集めないと、パーツが足らず元に戻らなくなってしまう。
ヒノモト
日光、それは大地の恵みの素であり、人間の必須成分の一つである。その必須成分というものは、長らく欠損してしまうと不利益が生じることがある。我はその不利益を被りヒノモトに出られぬ生活を強いられてしまった。ヒノモトは宝の山である。だがそれはいつも陰に隠れていて見えない。失ってはじめてそれを認識してしまった。認識してからは必死に取り戻そうと努力した。そしてその結果、木漏れ日程度は取り戻すことができた。だがすべてを取り戻すことはできなかった。一度壊れたモノのヒビを消せないからである。だから壊れる前に引き返して欲しい。
退屈
朝起きて 食べて 家を出る 出社して 仕事して 帰宅する 食べて 風呂入って 眠る 終わりのない日常かな
きもちつたえて
たいらなきもちをまるくした ところピキッとおれちゃった それをなんとかカタチになる こころおれてもピシッとする きちっとつまれたモノたちへ そうしてうまれたオクリモノ カタチのなかみにつまってる あふれんばかりのアイのネを みせてつたえてもっていけば きみのナカがつたわるかもよ
進路
小さな集団として集められた六年は長く濃密だった 幼きたましいに自我が育まれる程度に 少し大きな集団として集められた三年は一瞬だった 思考のいしずえが仕事始めした具合に まとまった集団として集められた三年は圧密だった 夢をいだきて道をみがく志が芽吹くのに 粒ぞろいの集団として集められた四年はバラバラだった お揃いからの独り立ちの練習で 個性派の集団として集めらるであろう二年は 少数派になるであろう二年で スパっとドロリな日々になる
恋と愛
小さき頃はカラだった まわりを食べて食いつくし 自分の中につくってく 小さき頃はミチだった 右往左往に赴くまま 自分の熱源さがしてた 変わる頃に異を唱え 君を追うこと逢うことへ 大きし君を待つことに 自分の時を注ぐ日々
一年(その2)
新しい緑と色づく花 だれしも気づくその空気 わからぬ僕は属せずに 青いうみと白いくも だれしも見えるその境 わからぬ僕は涙した 荒れる嵐と移ろう紅葉 だれしも感ずるその変化 わからぬ僕は空虚にす 積もる雪と冷えた風 だれしも籠るその季節 わからぬ僕は白く消えた
死
死にたいけど死ねない 怖いから 死にたいけど死ねない 幕を下ろせないから 死にたいけど死ねない 社会を斬れないから あぁ 月よ ひかりよ あれを つかみ たい 死にたくなるけど死なない あの娘の顔を滲ましたくないから
さいかい
また逢ったね! といいたくて また逢えたね! ともいいたくて また背が伸びた? といいたくて また可愛くなった? ともいいたくて 色々あったね 大変なこともあったね 楽しいこともあったね 嫌なこともあったね 今までのことを話してもキリがないから 明日からのことを話そうよ これからも
せかい
世界は広くて狭いもの 新たな輝きに触れたくて テンにミチに踏み入れる 世界は熱くて冷たいもの 楽に有利に進めさせたくて まわりのイシに振り回される 世界は明るく暗いもの 欲としるべと闘って 一つのカミへ誘われる