香翔

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香翔

餃子大帝国宇都宮

「どこやァァァ!ここはァァァ!」 ユージは言った。そんなユージは、まあまあでかい駅前にいた。駅の名前が書いてある。宇都宮駅 ウ、ツ、ノ、ミ、ヤ、エ、キ、かあ。 昔の頃の記憶を元に、この宇都宮駅、という漢字を解読することができた。 「だって、俺が生きている、おっと、俺が生きていたあの時代は、漢字などないからな。」 ボソッと1人ごとを呟いた。 ザザっと人が駅から降りてきた。東京方面から来た電車が到着したらしい。降りてきた人々は次々に自らの目的地へ向かっていく。歩く人もいるし、バスに乗る人もいた。 「そっか。まだこの時代はバスとかいう効率が悪すぎるギュウギュウ詰めになるものがあったのか。」 誰にも聞こえないような声でつぶやいた。 ユージはしばらくその人々の行方を目で追っていた。人々は別々の方向に歩んでいく、と思ったのだが、意外にも多くの人が同じ方向へ進む。この集団がまるで肉まんのようだった。 「肉まんだとぉ?餃子に決まってんだろボケェ😡」 「はぁ?そんなの別に肉まんだっていいじゃねーかよ!」 「はぁ?こいつ何考えてんだよ😡ここは餃子大帝国宇都宮だぞ?」 「はぁ?」 と、今まで出したことの無い、「はぁ?」 を言ってやった。 ここでユージは気づいた。 「お前誰だよ!」 と言うと、その謎の声はこう言うのだった。 「おっと失礼。申し遅れました、私(わたくし)餃子大帝国宇都宮公式警備員の悪野取男(わるのとりお)と申します。どうかよろしくお願いします。で、先程の話に戻らせていただきますが、ここは餃子大帝国宇都宮です。この国の法律では、肉まん、アンマン等の餃子じゃない餃子に似てるものに関係する、または連想させる言葉を発するのは禁止されております。今回はスルー致しますが、これからは気をつけなさい。」 悪野取男に言われて周りを見渡してみると、そこにはでっかい餃子の像があった。 「なんだと?!」 言いたくなかったけれど、言わざるを得なかった。 「さすが餃子大帝国宇都宮.........。」 「ありがとうございますぅ」(悪野取男) 「まだ居たのかよ(呆)」 「はいぃ。もちろん居ますよォ?(圧)」 「あーそーなんですねー(棒)」 「ところでなんですが、あなた、どちら様ですか?見覚えがないので.........。」 (見知らぬ人に声掛けてたの!?) と心の中で強く思いながらも何とか耐えて口に出さなかった。 「あ、どうもどうもー。山本ユージと申します。」 「どちらからいらっしゃったのですか?」 「えっとー。とてもいいづらいんですけど、ざっと100年後くらいですね。」 「あー。なるほどねー。了解です。」 「驚かないんかい!」 つい言ってしまった。 「あー。驚いて欲しかったですか?ごめんなさいね。驚かなくて。」 「いや驚けよ!」 (話が脱線してしまいすみませんでしたBy作者) っとまあ!の話はいいとして、話に戻ります。 「100年後って、なんか某どこでも〇アとか某タケコプ〇ーとかって発明されたんですか?」 「いや、それはまだですが、他のすごいものが発明されましたよー!」 「ほんとですか!?実は私たち餃子大帝国宇都宮には、3年ほど前から抱えている問題いや、大問題があるんです。」 ユージは反応しようとしたが、その間もなく続ける。 「我が餃子大帝国宇都宮は餃子の消費量日本一だったのです。あの時までは.........。 実は最近、日本人の食の洋食化がとてつもないスピードで進行してるんです。餃子は日本食ではありませんが、中華料理もどんどん何故か人気が無くなってきてるんです。丁度それが3年前あたりで、そこからガタ落ちです。しかも、何故かそれが宇都宮市、おっと間違えた、餃子大帝国宇都宮ばかり減っていくのです。それで、毎年1位2位を争っていた静岡県浜松市の餃子の消費量が伸びてきてるんです。おかしくないですか?(圧)おかしいですよねぇ。まあこればかりはわが帝国民責めるわけには行きませんが、どうにかして餃子大帝国宇都宮の消費量を日本一を守らなくてはならないのです。山本ユージ様!(何故様付け!?)未来の技術を使って、どうにかできませんか?」 ユージはその悩みを聞いて、餃子大帝国宇都宮を助けたくなった。 「俺に出来ることなら全て、全力でやります!でも、未来の技術は使えるか分かりません。なぜなら、現代では考えられないすごい技術はあるものの、使えない技術ばっかだからです。例えば、空気を食べられるようにする技術とか.........。使えないっすよね笑」 「助けてくれるんですか?ありがとうございます!」 悪野取男は全力で頭を下げた。 こうして、ユージの(餃子大帝国宇都宮救出大大大大作戦)が始まるのだった。 次の日。(昨日は悪野取男の紹介で、駅近のホテルに泊めさせてもらった。)ユージは、朝4時半に起きた。お日様はまだ闇の世界にいた。でも、ユージの心は明るかった。100年前の世界がどんなものかを見るのが楽しみだったからだ。でも、4時半だから、誰も起きていない。悪野取男とは、宇都宮駅西口の餃子像で8時に待ち合わせをしてある。 「暇やなぁ。何しよかな8時まで。」 ここでユージは思いついた。 (餃子食おっかなー、、?) 「いや待てよ?まだ4時半。いくらなんでも餃子屋はやっていないだろう。」 それでもユージは、餃子屋の視察(食いたいだけ)も兼ねて、駅前にある餃子屋へ行くことにした。すると、5軒ほどある餃子屋の内、3軒ほどもうあいていた。 「さすが餃子大帝国宇都宮ーーーー!いえーい!」 ユージは昨日あんなに嫌がっていたセリフ、 「さすが餃子大帝国宇都宮!」 というセリフは、もうユージの口癖になっているようだった。 「すみませーん!」 3軒の餃子屋の中から、1番看板が赤い餃子屋を選んだ。(ユージは赤が大好き。) 「はいよー!おはようございますっ!らっしゃいらっしゃいー! お客さん!ご注文は?」 店主はお客が来た時の決まり文句のように、言い慣れた口調でサラサラとこの言葉を続けた。 「あっ。えっ。おっ。えー。あわ。 えっとー。おはようございます。」 ユージはあまりのスピードの店主の言葉に驚いて、まともに言葉すら喋れなかった。 それでも店主は、もう1回早口で、 「ご注文は?」 と、言った。 どうやら店主はお人好しらしい。 「とりあえず、この餃子チャーハンセットをくださいっ!」 ユージはそう、注文した。ユージの特殊能力である、尋常ではない人間離れした対応能力で全世界に衝撃を与えるように、この早口店主の口調に慣れていった。ちなみに、ユージは100年後の適応能力試験、通称、 「適能試験」 の最上位である、「神」の称号を得ている。 さあ、どうでもいい情報は置いておいて、ユージは店員に案内されたカウンター席に座った。イスはあまり言いたくないが、正直に言ってボロかった。もちろん口に出してはいないがな。 餃子屋の店主が頼んだ餃子チャーハンセットを運んできた。見た目は最高。匂いも最高。でもやはり1番肝心なのは味だ。餃子を醤油に付けてパクリ。 「うん。見た目のとおりうまい!」 ユージは満足した様子で食べ進めていくと、休憩している店主が近寄ってきて、こういった。 「お客さん!醤油もいいっすけど、醤油にお酢も入れた酢醤油もうまいっすよ?お試しあれー!」 ユージは今までになく驚いた。なぜなら、今まで自分の脳内では、餃子は醤油またはマヨネーズで食べる物、という絶対的な概念があったからだ。でもおすすめされたからには酢醤油で食べるしかない。今更だがカウンター席の調味料が置いてあるところには、しっかりとでかでかとした酢の瓶が置いてあった。小皿に醤油を5滴入れ、酢を9滴入れる予定だった。しかし、酢を入れるのになれてなく、ドバっと酢が沢山出てしまった。 「やっちもうたわ.........。」 と、呆然としていると、どんだけ暇なのか知らないが、また店主か寄ってきた。 「まっ、いいじゃないか。フッ。餃子大帝国宇都宮の本気だな。それで食ってみろよ。」 ユージはホントはこのいかにも酸っぱそうな酢醤油で餃子なんか食べたくなかったが、言われてしまったら食べるしかない。食べなかったら失礼だもの。 チョンチョンっと、少しだけ酢醤油を付けて餃子を頬張った。ここでユージは厨二病化した。 「なっ、なんだと、、、!?餃子は醤油とマヨネーズしか合わないと思っていたが、まさかこの酢だくだくの酢醤油が餃子に合うなんて.........。無念だ(ガクッ)」 と、思ったのだが、この酢醤油餃子は今までになくとても美味しかった。この様子を見て、店主がにやにやしながら、小声で囁いた。だから、確かに聞こえたとは言いきれない。 「フッ。あいつもまた餃子に取り憑かれたな‪w」 解釈の仕方次第で、良い意味にも悪い意味にもとらえそうなこの言葉だが、ユージは決して悪い意味だとは思わなかった。それは、こんなに美味い餃子を作る店主が、悪いことを言うとはとても思えないからだ。 餃子を全て(6個)食べおわしてから、ちっちゃいチャーハンを食べた。でも、正直言って、チャーハンはそんなに美味くはなかった。 「餃子に特化したこの街だから、きっと餃子以外はあまり美味しくないのだろう。」 と、ユージは考え、これは仕方ないのだろうと諦めた。そして、 「ゴチでぇす!」 と言って、金をちゃちゃっと払って店を出た。そして、宇都宮駅にある時計を見た。その時計は、午前6時半を指し示していた。 「わぁお!2時間もあの餃子屋に居たってのか!?自覚無さすぎる笑‬」 そう言って一人で笑っていた。もしかしたら周りから、 「なんだアイツ」 「ヤベー奴いるわァ引く引くー」 「きっしょ。」 「あいつ何考えてんだよ」 「警察呼ぶ?どうする?」 とかいう会話がされていた、かもしれない。ユージは反省した。100年後だったら、街中で笑っている人がいたら、みんなで笑い合って、みんなで家族じゃなくても楽しい空気が流れるのに.........。 今までいた未来の情景を思い出して1人で駅のベンチに座っていた。 「あーあ。8時まであと2時間あるわぁ。暇だな」 と思っていると、忘れてはいけないことを思い出した。 「やべっ!ホテルのチェックアウトまだしてない!やべやべ怒られるぅ⤴︎ ⤴︎⤴︎」 何故かテンション爆上がり。なんでだろ。 急いでホテルに戻って、チェックアウトした。 宇都宮駅前のロータリーに戻って悪野取男を待っていると、オジサンが号外を配っていた。 号外!宇都宮駅東口に浜松餃子店 《石山餃子 宇都宮店OPEN決定!》 という内容のものだった。号外を手にした人は「はぁ?」だの、「んがァァ!」だの、「ぐへぇ?」だの、とにかく怒りが隠せないようだった。 でも、ちょうど半数あたりの人は「おぉ!ついに!」とか、「気になるね。うんうん。」みたいに楽しみにしている人もいた。ユージももちろん号外を貰った。宇都宮と浜松の分裂がより深まる気がした。 そこから何やかんや、2時間待った。あまり見慣れない世界は楽しかったので2時間待つことは全然苦ではなかった。さらに言えば、石山餃子のことを考えていた。どうやったら宇都宮を餃子大帝国宇都宮の名ににふさわしい消費量を誇ることが出来るのか。そんなことを考えてたら2時間経ってたのである。無事に悪野取男と出会うことが出来た。 続く

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君の願いが叶う日まで

[プロローグ] 「おはよう!早く出てこいやっ!」 家の外から大きな声が響いてきた。その声の主は顔を見ないでもわかった。 「はいはい」 昨日のうちに準備したカバンを持って玄関へ降りた。玄関を開けると予想通り翔が立っていた。翔は小さい頃からの友達で、幼なじみってやつだ。 「おはよう。お前はなんで新学期からそんなに元気なんだよ。」 「だって新学期は新しいことが沢山待ってるでしょ?そんなもん楽しみで仕方ないじゃん!」 僕は翔と共に駅へ向かって歩いた。 翔は相変わらず、 「担任誰かなぁっ。もう藤本は嫌だよな。クラスも碧海と一緒だといいなっ。」 と心弾ませている。僕は特に新学期が嫌だって言う訳じゃあないけど、学校に行くのか家でダラダラするのかどっちがいい?と聞かれたら即家でダラダラがいい、と答えるだろう。僕の家から駅までは徒歩10分ほどで、ほとんど真っ直ぐな道を歩くだけだ。約半分というところまで来た時、翔が急に大声を出して、 「やべっ…宿題忘れた!」 と最悪な報告をしてきた。 「俺今すぐ爆速で帰って爆速で学校向かうから先行ってて!」 そう言い残して翔は走っていった。1人で駅へ向かう僕は鼻歌を歌っていた。 駅に着いて定期を改札にかざす。改札が開きホームへ向かう。電光掲示板には多くの発車標が並んでいる。“いつも”の電車に乗って学校へ向かった。

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