餃子大帝国宇都宮

「どこやァァァ!ここはァァァ!」 ユージは言った。そんなユージは、まあまあでかい駅前にいた。駅の名前が書いてある。宇都宮駅 ウ、ツ、ノ、ミ、ヤ、エ、キ、かあ。 昔の頃の記憶を元に、この宇都宮駅、という漢字を解読することができた。 「だって、俺が生きている、おっと、俺が生きていたあの時代は、漢字などないからな。」 ボソッと1人ごとを呟いた。 ザザっと人が駅から降りてきた。東京方面から来た電車が到着したらしい。降りてきた人々は次々に自らの目的地へ向かっていく。歩く人もいるし、バスに乗る人もいた。 「そっか。まだこの時代はバスとかいう効率が悪すぎるギュウギュウ詰めになるものがあったのか。」 誰にも聞こえないような声でつぶやいた。 ユージはしばらくその人々の行方を目で追っていた。人々は別々の方向に歩んでいく、と思ったのだが、意外にも多くの人が同じ方向へ進む。この集団がまるで肉まんのようだった。
香翔