にゃすけ

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にゃすけ

恋愛やホラー、ミステリー、サスペンス系が好きです!よろしくお願いします!

雨のおと

雨が降っている。 目をつぶって、雨音から逃れるように、布団を被る。 雨の日は、必ずあの日を思い出す。 ココが僕の目の前から消えた、あの日。 一瞬すぎて分からなかった。 目の前にいたココがいなくなってて、代わあめりに大きなトラックがあった。 ....吹き飛ばされたと、その時轟いた音によって分かった。 雨が降って、僕の虚空を埋めた。 ココ。 いま、何してるんだ? ココ。 大好きだった。 まぐろが好物で、よく走り回る、元気なココ。 いま、何処にいるんだ? 僕が10歳の時から飼っている、人懐っこい三毛猫。 僕があの時、ボールを投げていなかったら。 ごめんね、ココ。 愛してるよ

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主人公のいない、ハッピーエンドの転生後の話

「......ライアン.....?」 転校初日。 かのように、教壇の上に立たされ、自己紹介していると突然、1番後ろの、窓際の席に座っていた少女が、そう呟いた。 いや、呟いた、ではなく、叫んだ、に等しい声量だった。 本当に勘弁してほしい。 ただでさえ、〖御厨 騎士(みくりや ないと)〗っていう厨二チックな名前なのに、それを後押しするように、今流行りの〖異世界転生〗のように、見知らぬ外国の名前を、まるで遥か昔から知ってました、また今世でも会えたね!かのように叫ばれると、こちらが羞恥心に耐えられんのだ。 案の定、周りの奴らにくすくすと笑われてしまった。 「なんだー?知り合いか?2人とも」 「.....いえ、初めてですが.....」 「え、あ、覚えてないの.....?」 やめてくれー!!泣きそうになりながら、心が叫んだ。 その意を込めた眼差しで睨んでみる。 しかし。 「....ずっと前に、私たち、一緒に戦ってたじゃない!でも、結局、あなたが.....」 「〜〜〜〜っ!?」 声にならない悲鳴が、喉元で唸る。 途端、ドッとクラスに笑いの渦が巻き起こった。 .......もういやだ......。 「お前何してくれんだ!」 ホームルーム後。 さっきの奴の机に向かい、俺は小声で怒鳴った。 「.....?何って....?」 「さっきのやつだよ!おかげで恥かいちまったじゃねぇか!」 転校初日なのに....と泣き崩れる。 すると奴は、はぁ...と呆れたように眉をひそめ、しかし、確かに嬉しそうに微笑んだ。 そのさりげない表情に、少なからず男の俺は、ちょっとドキッとした。 .....よく見ると、コイツ、結構整った顔をしている....。 よく整った眉に、切れ長の瞳、薄いピンクの唇は小さく、可愛らしい。 綺麗に切りそろえた、腰まで伸びた艶のある黒髪に、良く似合っていた。 「.....嬉しいよ、また会うことができて」 ほんのりと頬をピンクに染め、照れくさそうに言った。 しかし、綺麗な眉は下がっており、少し、寂しげな表情だった。 「......」 どう反応すればいいか分からず、ただぼんやりと彼女の机の中心に、視線を送る。 彼女が言っていることは、本当のことなのだろうか。 .....しかし、嘘を言っているようにも見えない。 ......もし、本当なら.........。 少しだけ、信じてあげてもいいのだろうか。 もし、嘘だったとしても、別になんか減るもんじゃないしな。 .....ちょっとだけなら、信じてやるか.....。 「......よし、他の者にも言いに行くぞ」 「.........ん???」 先程までの憂いの表情とは一変。 まるで新しく手に入ったおもちゃを他の者に自慢しに行くかのように、嬉々とした顔で、強引に腕を掴んできた。 .....しかもコイツ、めっちゃ力強い.....。 「お、おい、どこに.....」 「屋上だ」 皆が待ってるぞ、と俺の知らない皆の所へ、駆け足で半ば強引に連れて行かれたのである。。。 「皆!ライアンだ!ライアンが、転校生だった!」 屋上の重い錆びた扉をいとも簡単に開き、高々に声を張り上げた。 途端、一瞬だけ沈黙があった皆という奴らが、俺を見た瞬間、うわあああ!!ライアン!!っと悲鳴に近い声を上げた。 「ライアンだ!本当に、本当のライアンだ!」 「うわあああん!!ライアーン!!会いたかったよー!」 「ライアン様!!良かった、ご無事だったのですね!」 泣き付かれ、抱きつかれ、肩を寄せられ、何がなんだか分からない。 ライアン?誰だそれはと叫びたくなる。 しかしその場にいる者全員が、ライアンと叫んでいて、本当に俺の名前がライアンだったかと錯覚してしまう。 思わずさっきの女に助けを求めると、奴はくすっと笑った後、皆を落ち着かせた。 「まぁ、ちょっと落ち着け。.....コイツは、確かにライアンだが、実のところ前世の記憶がない」 「え!」 その言葉に、さっき俺に泣きながら抱きついてきた水色のセミロングの女が悲鳴を上げた。 しまいには、再び俺を抱きしめ、泣き喚いてしまった。 「.....」 「いやだぁ!ライアン!もう二度と遠くに行かないでぇえ!!」 ....ちょっと、いやかなりヒステリックな子に好かれていたようだ、前世?の俺は。 でもこの子もまた、可愛らしい顔立ちをしている。 .....まぁでも、恋人ってよりかは妹って感じだな。 「....ライアン様。本当に、何も覚えてらっしゃらないのですか?」 1人の、白いボブヘアの少女が縋るように聞いた。 その手の組み方といい、喋り方といい、彼女はどうやら聖女らしい。 彼女もまた、端正な顔立ちである。 「.....ああ、申し訳ないけど、本当に何も」 「んだよそれ!俺のことも忘れちまったのか!?ライアン・ナサニエル!!」 ....フルネーム.....。 今度は、赤い毛をバンドにまとめ、活発そうな筋肉質な男が怒り始めた。 .....きっと前世では親友的な存在だったのだろう。 悔しそうに歯を噛み締め、地団駄していた。 「チッ....世界のヒーローが記憶なしで生まれ変わってくるとか.....どんだけ報われてねぇんだ」 次は黒髪の紅い切れ長の目をしたイケメンが、切なそうに笑いかけてきた。 身長がかなり高いため、見下ろされるような形になる。 しかしさほど威圧感は感じず、すこし悲しげな雰囲気を纏っていた。 「....本当に、悪いんだけど、何も覚えてないんだ」 皆の反応があまりに悲しげで、少しの罪悪感を覚え、気まずそうに謝る。 するとさっきの女が、ぽん、と優しく肩に手を乗せてきた。 「......気にする事ないわ、みんなが覚えていても、あなたが覚えていないのにはきっと、理由があったはずよ」 ほんのりと、柔らかい笑みを浮かべるそいつ。 その時に、ふわりとやつの黒髪が揺れた。 「.....!」 その様子に、不覚にもドキッとしてしまう自分がいた。 なんとか顔が赤くなるのを誤魔化すように、視線を皆に向けてから、聞いた。 「.....皆の、名前は?」 すると皆が、嬉しそうに笑った。 さっきの女は、前世の名をキャロル・ロードット、現世を岩村 歌(いわむら うた)と、 水色のセミロングは、前世の名をシャーロット・ダニエリ、現世を三上 美珠(みかみ みみ)と、 白いボブヘアは、前世の名をエラ・エリザベス、 現世を榊 光莉(さかき ひかり)というらしい。 前世岩村は女騎士、三上は魔法使い、榊は俺の予想通り聖女だったそう。 残りの赤髪と黒髪はそれぞれ前世の名を、ルイス・オーウェン、ノア・メイソンといい、今は矢ヶ崎 洸希(やがさき こうき)、西園寺 歩(さいおんじ あゆむ) と名乗るそう。 矢ヶ崎は前世体術師で、西園寺は戦士だったのだと。 .....どうやら生まれ変わっても厨二病な名前だったのは俺のみらしい。 岩村なんて、普通にいそうというか、なんというか、地味だ。 しかし、結局名前を聞いても何も思い出せなかった。 「.......」 やっぱり嘘だったのか。 しかし、もし嘘ならコイツらの演技力やら発想力やらは並の大人以上だ。 .....それに、別に嘘でもいいじゃないか。 今更誰かに騙されたとしても、別に。 別にもういいじゃないか。 ......もう、たくさん嘘をつかれたし、嘘をついたろ。 この世界は、嘘にまみれているのだから。 𝓉ℴ 𝒷ℯ 𝒸ℴ𝓃𝓉𝒾𝓃𝓊ℯ𝒹…………

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