ユケパンク
4 件の小説サイダー
「サイダーとか持ってみたらいいかもね」 うちを見つめるレンズがそっぽ向いて、カメラを持った蓮が言った。 「うちがテーマなんでしょ?サイダー持ったらサイダーテーマになるじゃん」 「もっといたほうが夏っぽいし」 と、軽くあしらって自販機の方に行った 蓮はうちと同じ写真部で、最後の夏の大会が近くて、その一枚の為に今頑張っている あたしだけじゃ足りないのか… 「いえてる。」 いらないセリフが彼に聞こえないように、 小さく呟いていたら憎たらしい清涼飲料水を持った彼が帰ってきた 「もう少しサイダー近づけて」 「…。」 足りない私に夏を掛け合わせたら もっと可愛くなれるかな
アンサー
なんでもっと愛してくれなかったの いつも貴方は私と喋る時 目を逸らしてしゃべっている。 愛の言葉とプレゼント 宛先が貴方のしかない 例え心で愛しても それを証明する勇気がなければ その勇気を出す愛がなければ あたしの未来への呪いになるだけ 貴方のことは好きだったけど 貴方の愛の完成を待つほど暇じゃないの さようなら
僕の終電
感性で生きているところがあると自負している 夕焼けや、近所のお婆さんの白髪を綺麗と思えるし、電車から見える街の人口光にも飽きない 人の死にも綺麗、綺麗じゃないといえのは見出せるのではないだろうか。 そう思って、私は手を掴んだ ホームから転落しようとする男の手を 名前も知らない手の死に様を 間一髪で引き戻し、終電が来た 男は死の淵を見たが、不思議と、どことなく落ち着いた笑みを表していた。 「あの、私これ終電なので行きますけど、また倒れ込んだりしないでくださいね!?」 少々荒げた声で男に向かって発した、が、 「いや、僕もこの電車に乗りますので、大丈夫です。」 青白い照明が揺れる車内で、私は男に尋ねた 「あの、どうして自殺なんてしようとしたかって、聞けますかね…?」 「いや、自殺しようとしたわけではないですよ。 ただ、自分の価値を試したまでですよ。」 「と…言うと?」 不思議になり、男に尋ねた 「ここが私に生きる意味を見出したなら、助けてくれる。 見出さなければ、無関心に見殺しにする。」 「こうやって、自分の価値を計っているんです」 馬鹿げた話だ。だが、これは相当… 「もしかして、何か大変なことでもあったのですか?」 男はケロっとした態度で、 「いやいや、そうわけではないですよ。誰だってふと、自分の生きる価値が分からなくなる時はありますよね?その頻度が多いだけですよ。」 「いや、生きる意味は誰にでもありますよ」 「本当にそうかな、自分が死んでも別に世界は滅ばないし、何も変わらないだろう?」 「そんな、悲観的なっ…」 「悲観的じゃないよ、当たり前のことなんだ。 家族なんかがいたら、別なんだろうけどね。」 私は何かを察して黙り込んでしまった。 きっと、その男は天涯孤独になったが故にこの様な狂気的な行動に移ったのだろうと、予想したものの 彼の顔は変に落ち着いており、まるで本当に生まれた時から今まで、 自分の価値をないと決定していたかの様に見えもしたからだ。 「…とにかく、線路に飛び込むのはやめて下さい。他の人の迷惑になるので、」 男は少し濁った顔をした 「よければ、私が貴方の価値を決めますよ。横柄な言い方ですけど、今日のことを話し合えますし、 線路に飛び込むよりはマシですよ」 男は、 「…そうだね、君とならラフに話せそうだし、毎日退屈しなさそうだ。」 いきなりな事を言われて少し顔を赤くした。でも、少しの間、この男の価値創りに協力することにした。 「そういえば、名前聞いてなかったですね…」 「僕?芝田。芝生の芝に田んぼの田。」 シューッ… 「じゃあ、私はここなので」 「また、明日」 扉が閉まる。 冷静に考えれば、ただのかまってマンだった可能性もあるが、彼との会話は本質をついている様で、飽きなかった。 「次、何話そっかな…」 翌日 「速報です、昨日午後9時にホームで男性が突き落とされ電車に轢かれました。 突き落とされた男性は"芝田健斗"30歳。 逃走した容疑者は、田中麗子37歳。 容疑者は、 あいつのせいでダイヤがずれて患者を手術できなかった。許せなかった と証言しています。」
イマジナリー彼女
僕の隣にいるのは、 小五の時に付き合ったあの子と同じ笑い声をしていて、 中一の時に付き合ったあの子と同じ目つきをしていて、 そして、存在しない。 「なにー?この問題わからないの?」 そいつは授業中も、夕飯食べてる時も、寝る前にも話しかけてくる。その割、そいつはすぐに消えて、また現れて、すぐ消える。 今日まではただ邪魔だったっただけだった。 そう、“今日までは。” 教室に座って、左上に見える机、 その上に座る彼女。僕は正直、彼女が好きになっている。 授業中も、昼休みも、振り向きさづらそうな席でこっちを向いて話しかけてくれる。 でも、彼女と話している間にも、隣に現れる。 嫌い。でも、嫌いになれない。でも… ねぇ、私の事、嫌いになったの? そんな事ない。あの日の日常、あの日の思い出、 君の名前を見かける度、 君と行った場所を見かける度、 フラッシュバックして仕方がない。 何回もの夜を超えて、ようやくわかった。 今日、彼女に告白する事。 僕の中にあるこいつは、君には伝えない事。 こいつは、隠しても、嫌いになっても、 忘れてはならない、大切な軌跡だと 気づいたから。