まる
5 件の小説野球少年の初彼氏
「お前さ、俺の事好きなの?」 突然言われた言葉に息が止まる。 彼の奥、少し離れたところで友達が気持ちの良い笑顔で親指を立てた手を上へ掲げてる。 (やってくれたな、あの野郎。) そんなことより、まずはこの状況をどうするか。 「好き!」って言ってみるか、いいや「俺は好きじゃないけどな」とか言われたら、もう明日からどんな顔して学校に行こう。 「好きじゃないけど」とか言ってみる?いいや、好きなのは事実だし、好きな人に恥はかかせたくない。 そもそも彼はどういうつもりで聞いてきてるんだ。 小学校では陰湿な意地悪しかされてない。みんなの言う好きな子には意地悪しちゃうやつ、とかでは決してないレベルだ。 そんなこと言ったら、そんな彼を中学になって好きになった私もどういうつもりなんだって感じではあるが。 というか、中学でほぼ関わっていないのに急に私にそんなこと普通聞くか?正気か? なんてことをこの数秒で考えれる自分が少しばかりすごいと思ってしまう。 (まあ、今更隠したところで…か。) 「うん。好きだけど。」 絞り出したこたえが、こんなにも可愛げがないことをどうか許して欲しい。 「ふーん…。」 「じゃあ、付き合う?」 (え?) どういうことだ?付き合う可能性あった? つい一年前までめっちゃ私の事嫌いだったじゃん。なんかの罰ゲームか?それか彼女欲しいだけ?あっ絶対そうだ、そうに決まってる、それしかない。 いくら好きでもそんな人と、 「え!いいの? お願いします!」 こうして初彼氏ができるも、 3ヶ月後に、 「俺プロスピの詐欺師だから別れた方がいいと思う。」 と彼女は振られました。
わたしのお母さん
母は孤独な人だった。 母は母に子として接せられることなくまるで所有物のように、邪魔な物のように。 母の父もまた孤独であり、怯え苦しみ、幼い母を置いて自ら命を絶った。 母は愛をしらなかった。愛を知りたかった。 母は愛されたかった。愛したかった。 必要とされるがまま、相手の欲求を満たすことで、自分の心を満たした。 それが愛だと思った。 親戚の人、近所の人、大学の教授、部活の先生 相手に妻子がいようと 求められることに幸福と安らぎを覚え 自分の体を雑に扱った。 父は母を見ていられなかった。 こんなにも自分を大切にできない人を見たことななかった。 自分がどうにかしてやりたいと、 まともな幸せを安らぎを一緒に過ごせたらと。 同時に母を許せなかった。 自分の好きな人が、愛している人の過去を なかったことにできなかった。 母は父と出会い また自分を必要としてくれる人だと思った。 しかしこれまでとは少し違い 一生自分を必要としてくれる。 母は父に全てを捧げようと決めた。 そうすれば父が許せない自分の過去もいつか許されるかもしれないと。 いつでも父のそばに、家事をし、四人の子を産み、育て 何を言われようが、叩かれようが、なぐられようが耐えた。 これまでの自分のせいだと、自分のためだと、愛しているからだと思った。 いつか許されると。 終わらなかった。 父の愛は歪んでいく一方だった。 そばにいてほしい、 でも近くにいると辛い、苦しい、許せない。 当たり前に母として振る舞っているのが許せない。 母は限界が来た。 もう自分は許されるべきだと 自分は許されるくらいには頑張ったと。 母は外に出て働きだした。 お金が貯まると別居すると家を出ていった。 さほど時間はかからなかった。 働き始めて数ヶ月経った頃、 母は職場で出会った男とその母と住み始めた。 母は自分の過去を知らない、 自分を正当に評価してくれる 自分を正当に愛してくれる人と出会ったと歓喜した。 母はその男の母の介護を毎日していた。 父の元を離れた時についてきた娘をひとり家に残して。
やさしい
やさしさってなんだろう。 みんなよく誰かのことを「やさしい」って言う。 わたしも「やさしい」って言う。 わたしの誰かに言う「やさしい」はその人を良い気分にさせるためだったり、その人や周りの人に「誰かをやさしいと言えるなんて良い人だ。」と思われたいからだったりする。実際そう思われているかはわからない。 心から誰かをやさしいと思ったことはない気がする。あっても思い出せない。 大切な人も家族もやさしいから好きで大切なわけではない。その人がその人だから好きだ。 でも、その中には「やさしい」も入っているのかもしれない。 わたしは好きな人にだけやさしくできればいいと思っている。 好きな人には好かれていたいし、「やさしい人」と思われていたい。 だからやさしくする。 いつだってわたしの「やさしい」には下心がある。打算が働いている。 そんなわたしはやさしい人ではないと思う そんなわたしだから、誰の「やさしい」にも下心があるし、ださんが働いているはずだと決め込んでいる。 誰かにやさしくされたら嬉しいしありがたいと思う。(でも、きっとこの人も周りによく思われたいだけだろう。だからこれは「やさしい」ではない。)同時にこんなことを思っている。 なんてわたしは意地悪なんだろうと思う。 だけれど、あながち間違ってはいないはずだ。 こんなことを考えている間は、「やさしい人」ではないし、なれないだろう。 死ぬまでに「やさしさとは」という問いにこたえられるよう生きていこうと思う。
ことば
「期待するとさ、そうならなかったとき悲しくなるよね。」 「そうだね。」 「でもさ、信じてたり信頼した人に裏切られたり、思った通りにならなくても悲しくなるよね。」 「そうだね。」 「期待をするのは良くないとされて、信じることは良いこととされてる感じあるじゃない?」 「あるね。」 「どっちにしても上手くいかないと悲しくなるし、信じてる人には期待も重なっていると思うの。」 「うん。」 「調べてもふたつの意味が違うことは理解できるの。でも心の中では一緒でしょうっと思ってしまう。」 「うーん、難しいね。」 「うん。」 「君は僕に期待している?信じている?」 「どうだろう。きっと期待はしている。信じているかはわからない。」 「僕はそんな君を信じているよ。そんな僕に期待もしている。」
流星
「あっ、流れ星!」 その声に反応して顔を上げた。 また見れなかったと少しだけ残念に思う。一体いつになれば私は流れ星が見れるのだろう。そんなことを思う反面、いつ流れるか流れないかも分からないもののために真っ暗な空を見てられるかと思ったりもする。 「俺意外とロマンチストだからさ、流星群とか好きなんだよね。」 暇を持て余すキッチンには彼の声がよく響いた。 彼は四つ上のバイトの先輩。白く細身でいつもへらりとしている掴みどころのない人だ。 先輩の話によると今日はふたご座流星群らしい。会話に参加してないない私はいい情報を得たと少し嬉しくなる。ソワソワと落ち着かなくなり時計を見るともう上がる時間だ。 「お疲れ様でした。」 先輩を含めた人達に軽く頭を下げ帰ろうとする。 「おつかれ!そんなに急いでさては彼氏だな?」 ニコニコと話しかけてくる先輩を軽くあしらい足早に帰宅した。 家に着いた私は携帯を片手に晩御飯を食べていた。 どうも流星群は二十三時頃からのようだ。明日は学校あるからなと頭に過ぎったが知らないふりをした。 生まれて十八年、人生初の流れ星かもしれない。そんな期待を沈めるように口までお湯に浸かった。 二十三時を過ぎたことを確認すると、いつも下ろされているシャッターを上げベランダに出た。 「さぶっ」 お風呂で温まった体がキュッと縮むような寒さだった。