雨傘空々
3 件の小説雨傘空々
初めまして、放置しすぎてアカウントを変えて低浮上となりますが投稿していきます。 前アカウントの『雨傘凪』のアカウントは人がいない状態ですので此方で更新していきます。
追憶の旅へと立つ−忘れた再開−
忘却という扉で私はこの部屋を閉じた。理由も分からぬまま私は此処で終わるのだと思っていた。けど、貴方がこの部屋に入って来た。 「久しぶり!メモリアって…覚えてるかな?」 困った顔で檸檬色の瞳を覗かせた。眉下で切り揃えたぱっつんの前髪は後ろで束ねておらず、髪は腰まで下ろしている。少し変わった薄墨色の妙に目が惹きつけられる。 「いいえ、申し訳ありません。どちら様ですか?」 「あはは〜…私はシャイン!ほらこの帽子を被っているから『魔法使い』のちょっと凄い人なんだ〜☆」 私は適当にそうなんだと返した。貴方は先程打って変わって神妙な面持ちで此方に向き直る。 「実はね…君の『精神療法』を次のフェーズに移そうと話が上がってね、君さえよければ一緒に記憶を無くす前の君が訪れた地を巡ろう。記憶が元に戻る可能性がある。」 「私は記憶を無くして…るのか?」 「じゃあ…この部屋中にあるこの付箋達と凄まじい量の本は何のためにある?」 部屋を見渡すと確かに天井まで何かがぶら下がっている。あれが付箋か、そして壁にも付箋がある。加えて本棚には所狭しと本が収納されている。何なら本棚に収まり切らない本は床積まれている。 「君の記憶喪失は医学的に言えば『解離性健忘(かいりせいけんぼう)』と言う病名。もっと細かく言うのなら…『選択的健忘(せんたくてきけんぼう)』。一定の期間の一部の出来事、または…心的外傷を受けた出来事の一部のみを忘れる病。思い出そうとすると何か突っかからない?」 貴方の言葉を聞いて思い出そうと瞼を閉じた。幼少期は覚えてる、小学生時代、中学生時代、高校生時代…じゃあ学生時代は覚えてるな…あ。この後が思い出せない。けどこの施設で生活した事は覚えてる。現在と学生時代の間を思い出そうにも出来ない。 いや。断片的なのは思い出せる。何か料理を食べたり、誰かと会話を交わし笑い合った。何か悲劇が起きて突然…私の人生が狂い出して…あれ?記憶に霧が掛かった。駄目だ。大事な部分だけ私は忘れてる。どうしよう。どうしよう。 「止めろ!!」 「はぁ…シャインさん…」 激しい動悸だ。 「ごめん、無理をさせた。フラッシュバックが起きたみたい…」 「やっぱり…出来ないか…よし、では改めて『精神療法』を次のフェーズに移行し、君の病を完治する為過去の君が訪れた場所を巡る。許可を頂き、私と同行して頂きたい。」 「よろしく。」
自己紹介
初めまして!雨傘空々と申します。2023年から使用していたアカウントが、使えなくなりましたので少し新しい名前にして再出発しました!(プロフィールに前アカウントが書いてありますのでその時の作品も見て下さい!) さて、本題の自己紹介をしたいと思います。 名前🫙ー雨傘空々(あまがさからから) 辞書に『空々』は本来なら『そらぞら』と読み、意味は良いとは言えないものですが、再出発という事で空っぽにしたというのを強調したくて空っぽを繰り返して空々(からから)です。 年齢📘ー学生ではあります。 性別🚻ー女性。 好きな小説📓ー住野よる様『君の膵臓をたべたい』 珠川こおり様『檸檬先生』 色んなジャンルを読む人です。皆さんお薦めの小説を読みたいので教えて下さい! 趣味🎧ーデッサン、読書、ボカロ曲鑑賞。 ボカロ好きな方いらっしゃいますか!語りましょう!考察とかを聞くのと考えるのが大好き。(プロセカ民、ニコニコ民では無いです…けど、いつかはやりたい…) 大好物🍚ーお出汁が美味しいお茶漬け!! お茶漬けはお出汁で決まる!!(持論) 活動についてー前アカウントの連載を此方で更新しようと思います。改めて最初から書いていった方が良いかなと思ったので書いていきます。 挿絵は基本、自作のイラストか自分が撮った写真です。 こんな感じの人です!これから宜しくお願致します。
今年の『夢見草』
「今年の桜はいつまで続くかな。」 欄干にもたれ掛かる。桜並木に押し寄せる人々の喧騒は他所にして、私は全体を見渡せる陸橋から見下ろしていた。桜雲のこの景色。此処は皆が知らず、特集もされていない穴場中の穴場。人が居ないという優越感が堪らない。 今年の桜は早咲きではあったが、咲いた後は冬が返り咲いたかのように寒くなったから長く持つかなと思考を巡らせた。正確な期間を言い当てるなんて妙で出来やしない話であるのに。 鳥のさえずりが喧騒を心地良さとして昇華した。 まだ花筏は出来ていないけど、この景色は春一色に染まり切っている。桜は咲き始め、私達を和やかにし、魅了する。流石は『夢見草』だ。 雀が花のまま落とすのも少ないがもう素敵な春が訪れ、私達が忘れるまで桜は咲き続ける。 花衣を身につけた未完成な戦士も、今日は花人となってこの混沌とした現世を笑かし、和ます。 さて、今年度も騒々しい良い暮らしをしようか。